シナリオ詳細
ラサナイトフィーバー・ブラックサイド
オープニング
●スペードキーを手に入れろ
「カジノホテルに侵入してキーを手に入れたい。奴隷たちを解放するためのキーだ。ローレットには、その人員を依頼する」
砂漠に建てられたキャンプテントの前に、ぱちぱちと燃えるたき火がひとつ。
その前に腰を下ろし、背の高い獣種男性は語った。
長い髪に整った顔立ち。両肩にはタトゥーを入れ、新鮮な果実のような色気。
今にも同年代の女性をナンパしそうな外見をしていたが、どうやら中身は寡黙なタイプらしい。
獣種男性――カロルス・ガルシアは必要なことだけを話し、『あとは依頼書を読んでくれ』と手を振った。
たき火の向かいに座ったショウは片眉を上げ、わざとらしく肩をすくめてみせる。
「オレはそれでも構わないけど、多分会って話しておいた方がいいと思うな。ほら、噂をすれば」
火をつけた棒を振ってみせるショウ。遠くからは四人乗りのパカダクラ馬車が二台、並んで走ってくる。
「彼らが今回依頼を受けるメンバーだよ」
「誰が相手でも一緒だ。俺は俺の仕事を――おい嘘だろ」
とまった馬車のカーテンが開き、褐色の獣種女性がパチンとウィンクをした。
「あァらカロルス。一人前なこと言うじゃない。少しはオトナになったのかしら?」
「……姉上」
窓から顔を出したリノ・ガルシアを見て、カロルスは目を覆った。
「だから言ったでしょ」
ショウはそう言って、目で『続きをどうぞ』のジェスチャーをした。
「…………」
日の前であぐらをかいて黙りこくるカロルス。
その横に座って肩に手を回し、彼の頭をぐしぐしとやるリノ。
「あなた相変わらずひょろひょろねェ。ちゃんと食べてる?」
「…………」
恨みがましくショウの顔を見るカロルス。目をそらして笑うショウ。
カロルスはリノにされるがままになった状態で話を続けた。
「ゴルディード・ダン・ボルコフスキー。大富豪の商人で、この先にあるオアシス街の主だ。
表向きにはクリーンな商売をしてる人格者だが、裏では奴隷の販売を行なっている。今は幻想種(ハーモニア)ばかりを扱っているらしい。
その中には深緑から拉致されたとみられるハーモニアも多数確認されている。
商売がどんなに汚かろうが勝手だが、深緑と友好関係にある傭兵連合に拉致被害者の奴隷がいては困る。できればハーモニア奴隷だけでも里に帰したい。
しかし奴はオアシス街全てを買収している大富豪だ。失墜すれば何百人も路頭に迷うし、連合もそうそう動けない。
だから外部の、ローレットの手で『必要最低限の外科手術的切除』を行なうことになった。
俺は、その案内役も兼ねている」
カロルスはそこまで話すと、リノをぐいっと押しのけた。
「必要なのは『奴隷倉庫の襲撃』と『鍵の奪取』だ。仕掛けるのは同時に。どちらか一方でも欠けてはだめだ」
まず今回のメンバーは二つのチームに分かれることになる。
ハーモニア奴隷のとらわれている倉庫を襲撃し、奴隷たちを逃がすための『襲撃班』。
カジノホテルに直接潜入して奴隷たちの首輪を外すための鍵を手に入れる『潜入班』だ。
「鍵はこういうものだ」
カロルスが取り出したのは精巧なレプリカだった。
スペードマークのついた鍵で、鍵山は無く代わりに魔術線が刻まれていた。
「奴隷たちには、主人の命令に対し従順になる首輪を嵌められている。奴隷たちを解放できてもこれでは意味が無い。鍵も同時に奪うんだ。鍵は何パターンかあるが、いくつか奪取できれば魔術暗号を解読して他の首輪も外すことができる。全てとは言わないが、確実性のために目標数は確保したい」
「……で?」
リノは妖艶な笑みを浮かべて首を傾げて見せた。
「カロルス、あなたも一緒にやるんでしょ?」
「…………ああ、そうだよ、姉上」
カロルスは乱れた髪を手ぐしで直し、集まったローレットのイレギュラーズたちを見た。
「よろしく頼む」
- ラサナイトフィーバー・ブラックサイド完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年08月30日 23時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●黄金に眠れ、欲望が底を突くまでは
サックス奏者のスウィングを聞きながら、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はバーカウンターの椅子へとついた。
クリスタルを基調にした高級感あふれるバーのカウンターの中央。
「どうにも最近、この辺りがきな臭いわねぇ。幻想種の誘拐だとか、奴隷商売だとか……」
スクリュードライバーを注文すると、でてきたグラスを一気に飲み干してブロンド髪へと変化した。
「私、お金は好きだけど……こういうお金持ちは嫌いだわぁ。ねえ、リノちゃん?」
「本当にねェ……」
『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)はブラックカラーのカクテルドリンクを注文すると、カクテルグラスの首をつまんで掲げた。
「ところで、こうしてると天義のバーを思い出すわね?」
「あら偶然、同じこと考えてた所よぉ」
同時に片眉を上げるリノとアーリア。
席を立とうとしていたカロルスの肩をがしりと掴んで、リノがからむように身体を傾けた。
「教えてあげましょうか。私の大冒険」
「いや、いい」
「なあに? 久しぶりに呑もうっていうのに無口になっちゃって。
いいわ……ねえアーリア。カロルスって子供の頃には私の寝床――」
「やめてくれ。わかった、飲むから」
顔を覆い、諦めのため息をつくカロルス。
「そうこなくっちゃ。今日の仕事も楽しみにしてるわよ。なんせ私が仕込んだんだもの。きちんとできなかったらお仕置きするから」
「…………」
本当に頭が上がらないのか、カロルスはげんなりとした様子で出てきたグラスに口をつけていた。
「いーなー、美人の姉にオシオキされるとか。漫画みたいじゃん」
椅子の上で足をぶらぶらとさせていた『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)が、カウンターテーブルに突っ伏す形でカロルスの顔を覗き込んだ。
「なにも良くないぞ。魔性の女なんだ、この人は」
「…………」
彼らの会話を聞いていたのか居ないのか。『孤兎』コゼット(p3p002755)は炭酸飲料を満たしたグラスにしゅわしゅわとのぼる泡をじっと見つめていた。
(あたしは、奴隷として運ばれてる途中で、馬車から逃げれたけど……運ばれてたみんな、悲しい顔してた)
グラスに映っては消える、遠い記憶。
コゼットは一度目を瞑り、グラスを手に取った。
豪快にあおり、目を開ける。
「みんな、助けてあげよう」
「ね。可哀想だし? 一肌脱ぎましょ、文字通りに」
服の首元に指をひっかけてくいくいと引いてみせる夕子。
「相手が誰だろうと骨の髄まで甘く誑し込んで絡めとる……ね。カロルス、アレ出しなさい」
「……」
カロルスは具体的に述べられたわけでもないのに、腰のシザーバッグから数個のミニボトルを取り出して見せた。
夕子視点で言うなら、お弁当に入ってる金魚型の醤油入れに似ているが、中身は透明で水のように軽く動いた。
「効果は気休め程度だ。激しい運動やアルコールがあれば回りも早くなるだろうが……」
「充分」
夕子、コゼット、リノはボトルを一個ずつとり、それぞれ胸元にしまい込んだ。
「それじゃあみんな、また後ででねぇ」
アーリアたちはグラスを空にして、カウンターからばらばらに立ち去っていった。
●影は光によって生まれるのではない。元からそこにあったのだ。
カジノホテルと無数の行楽施設が密集するそこは享楽の町『ゴルディード』。
砂漠のオアシスを中心に広がる欲望のるつぼ。
それゆえに影は色濃く、そして醜悪に際立っていく。
「奴隷倉庫っていうのは、この先にあるんだよね?」
夜更け。土地勘の強い『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)は手書きの地図を片手に、スラムめいた裏通りを進んでいた。
路上に座り込む老人。健康状態の悪そうな娼婦。お腹を鳴らす子供。
ホテルの賑やかさとは裏腹に、幻想スラムもかくやという貧富の差がそこには生まれていた。
彼らがニーニアたちに手を出さないのは、そうすることが利益にならないと身をもって知っているからだろう。
その理由を考えて、ニーニアはぐっと唇を噛んだ。
「自分達の利益のために……それも人攫いなんて、許せないよ」
「みたとこゴルディードは仲介業者で、浚ってるのは専門のマンハンターっぽいが……片棒をがっつり担いでんのは間違いねえな」
腐ったものを見る目で遠く高いホテルビルディングを見上げるルカ・ガンビーノ(p3p007268)。
「音に聞こえたガルシア一族が首をつっこむわけだぜ。やりすぎたんだな、ここの連中は。胸糞悪いったらねぇな」
奴隷解放はおそらくキッカケにすぎないだろう。ラサ傭兵商会連合は利益のための連合。大きな損を抱えなおかつ人望の浅い人間が現われたなら、あらゆる方向から合法的に財産を奪い、野垂れ死にさせるという凶暴な側面も持っているはずだ。
まるで積み木の底を引き抜くように、ゴルディードはがらがらと破滅していくだろう。
「『クラブ・ガンビーノ』の売り時だぜ、まったく」
「こんな素敵な世界ですのに……」
『血風三つ穿ち』すずな(p3p005307)は空に漂うポポポ焼きの香りを吸い込んで、ため息のように吐いた。
「越後屋と悪代官みたいな輩は何処にでも居るのですね。
仕事の事情を差し引いても、見過ごすには余りある事件です」
「でもきっと、この町だけの問題じゃ無いよ」
『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)はギルドの掲示板に並んだ依頼書の数々を思い出した。
ここ最近になって急速に増えた『幻想種の誘拐事件』と『幻想種奴隷の悪質な売買』。
今回も無関係とは思えない。
「悪い事する人を手伝ってるのならお仕置きしなきゃだし、ね!」
アウローラがあえてにっこりと笑ってみせると、すずなもつられたように肩の力を抜いた。
強く頷くニーニアとルカ。
「一丁、一暴れしてやるか」
「そういうこと。がんばろうね、みんな!」
●フューチャーストライク
コンクリートとトタンロールでできた粗末な小屋があった。
さびたドラム缶にたき火を燃やし、手を翳す三人組の男。
肩から斜めに提げたアサルトライフルはそろいのラサで製造されたAKコピー品。安物である。
身なりもさして整っているとは言いがたいが、スラムの連中よりはだいぶマシだった。
この町の実質的支配者であるゴルティードが金で囲っている兵士には、こういう後の無さそうな人間が多いようだった。
倉庫の前でじっと立っている剣士や魔法使いも、きっとその一部だろう。
「なあ兄さん。倉庫の中の連中、これからどうなるんだろうな」
「考えるな。明日食う飯のほうがはるかに大事だ」
「おい、構えろ。誰か来る」
一人が銃に手をかけ、残る二人も手をかける。
倉庫の壁によりかかってじっと腕組みしていた剣士も、目を開けてそれを見た。
「こんばんは! 砂漠の夜って冷えるんだね!」
空色の髪をした精霊種の少女――もといアウローラが大きく手を振って歩いてくる。
とてもではないがスラムの人間には見えない。
三人は銃を構え、そして本能的な緊張からかドラム缶へと寄り集まった。
「そこで止まれ。ここはゴルティードの旦那が所有してる倉庫だ。手を出せば――」
「『奏でるは魔法の重ね唄!』」
約二秒。アウローラが電子的に記録された詠唱コードを唱えると、空間に開いた八つの電脳窓から虹色の星形エネルギー体が次々と放出され、ドラム缶に命中して爆発した。
射撃を行なう暇すらなく吹き飛ぶ三人組。
「先手を打たれやがった。あの役立たずどもめ」
刀を抜いて駆け出すインド系剣士。
ルカは対抗するように背負った斧に手をかけると、刃にオーラを纏わせて振り込んだ。
「このラサで、不義の商売は許さねえぞテメぇら!!」
大地を伝うように発射されたオーラがインド系剣士の足下で炸裂。
跳躍と宙返りによって衝撃を軽減すると、剣士はルカの顔面めがけて剣を振り下ろしてきた。
飛び退くようにして直撃を避けるルカ。
戦いに加わろうと刀に手をかける剣士と、青白い魔方陣を空中に呼び出す魔術師。
飛行状態から強引に戦場へと急降下着地をきめたニーニアが、革バンドで固定した魔術クーラーボックスを回転。ブラックジャックの要領で投擲した。
「――!」
ただの投擲でないと見抜いた魔術師は魔術障壁を展開。
障壁にぶつかって開いたボックスがあたりに白い煙を吹き上がらせた。
「冷却ガスだ!」
咄嗟に口に袖布をあてる魔術師。
一方で剣士は抜刀しながら煙をぬけ、鋭く走ってきた。
ゆらり、と剣士とニーニアの間にわってはいるすずな。
「同じ武士として――一手、手合わせ願います」
「拙者のような外道――武士(もののふ)にあらず!」
そうも言いながら、なずなへと鋭い横一文字斬りを繰り出してくる剣士。
すずなは垂直に翳した剣で斬撃を受けると、そのまま身体をスピンさせて相手の懐へと転がり込んだ。
歯車のようにぶつかる刀と刀が二度火花を散らす。
反対側へ抜け、回転の勢いを乗せて相手の背へと刀を放つ――が、剣士は身体をギリギリで反らして斬撃を回避。
二人はほんの一瞬だけにらみ合い、刀の間合いの外へと一度飛び退き合った。
そして再び、急速に距離をつめ、刀と刀が猛烈な速度で――。
●ゴールデンナイト
――カチン、とワイングラスが打ち合わされた。
度出の多い奇妙な服を着た夕子が、グラスに揺れるソーダ水の先にいた。
グラスをひき、中身を飲み干す夕子。
「ねえおじさま、おねがい。ちょっとでいいから」
猫なで声で隣の男に身体を預けると、夕子は胸元のリボンをほどいて見せた。
「お金貸してくれたら、後でいいことしてアゲル。なんだったら先払いでもいーよー?」
男は醜く苦笑した。
カジノという場所は激しく金が行き交うが、その波にいつまでも揺られていたくて全てを投げ出してしまう者も、決して少なくない。
カジノをほんの遊び場程度に思っている富豪たちのなかには、大枚をはたけば買える快楽よりもこうした偶然の広いものにプレミアを見いだす者もあった。
「おじ様だから言ってるんだよ? これ以上言わせないで」
身体を預けたまま、耳元に囁く夕子。
男はバーテンダーにホテルの鍵をオーダーすると、夕子をつれて部屋へと入っていった
去り際、ちらりと振り返ってサインを送る夕子。
サインを受け取ったアーリアは手元のスパークリングワインを一息に飲み干してから『うあー!』とみっともなく叫んで見せた。
おもむろに立ち上がり、平衡感覚が失われているかのように歩き、テーブルで静かに呑んでいる男の横にどっかりと座った。
驚く男の顎を中指でたぐるように自分のほうを向かせると、唇が触れるほどの距離で囁く。
「今日は本当についてないのよぉ。あなたはどぉ?」
うるんだ瞳がなにゆえか分からないうちに、今度は足を組んでみせる。
深いスリットのはいったワインレッドカラーのドレスは、容易に彼女の豊かな腿を露わにした。
「この気持ち、お酒じゃ満たされないわぁ。ねえ、一緒に『発散』しない?」
この投げやりな態度が、かえって相手を信用させた。
『手際のよい者は奇術師である』という言葉があるように、嘘に慣れた者にとって巧みな誘いは警戒を招くのだ。
トドメとばかりに、アーリアは胸の谷間に隠していた透明な小瓶をちらりと見せた。
「気持ちイイわよぉ」
とろんとした彼女の目にせかされるように、男は彼女を連れ立ってホテルの客室へと向かっていった。
アーリアや夕子が目的の男を部屋に連れ込むのを横目で確認しながら、コゼットはポールの周りをくるりと回って見せた。
水着とバニースーツが混ざったような格好をして、足の力だけでポールにしがみついて上半身をのけぞらせる。
一瞬のうちに目をはしらせ、コゼットは目的の男に狙いをつけた。
そして男にだけ分かるように、パチンとウィンクをしてみせる。
妖しく回るミラーボール。サックスの音色に合わせて踊るコゼットに、男は応えるようにグラスを掲げた。
ダンスが終わり、舞台が女性ソウルシンガーの歌唱に変わった頃。
丈の長い薄手のコートを羽織ったコゼットが先程の男のそばへとやってきた。
手にはシガーボックス。
「……」
コゼットはダンス中とはうってかわった冷たい表情で、男の手に葉巻きを一本握らせた。
「押し売りはゴメンだぞ」
「ダンス、見てくれたから」
サービスの意図を察して、男はニヤリと笑った。
シガーカッターを取り出しながらコゼットの格好を下から上までなめるように見る。
あれだけステージで見せつけていた身体が、コートの隙間から恥ずかしそうにのぞいている。
コゼットはあえてコートをつまんで身体を隠すようにすると、上目遣いに男を見た。
「いっしょに、話しませんか?」
隣に座れ、と促す男。
コゼットは言われるままに彼の隣に腰掛けた。
髪を整える……ように見せかけて、バーカウンターで静かに飲んでいたリノたちに合図を出した。
合図を受け取り、多めのコインと空のグラスを置くリノ。
「頑張りなさい可愛いカロルス。うまく出来ればご褒美をあげるわ」
頬にキスをすると、リノは手を振って去って行く。
カロルスは頬に手を当ててから、バーテンダーと入れ替わるようにカウンターへと入っていった。
回るルーレット。
この土地をまわる全ての金の持ち主とまで言われている男、ゴルティードは葉巻きをくわえたままルーレットの行く先を眺めていた。
からん、とボールが止まり、ディーラーが番号をコールする。
「おめでとうございますゴルティード様」
頭を下げるディーラーの先には、一点賭けで高く積まれたチップがあった。
何倍にもなったチップがゴルティードの前へと運ばれていく。驚き、賞賛の声をかける周りの客たち。
まさにそこは、ゴルティードのための王国であった。
「羨ましいほどの運ね、分けて頂きたいくらいだわ」
そんな彼の肩に手。滑るように鎖骨を撫で、胸の間へ流れていく両手。
リノは豊かな胸元をドルティードの頭に押しつけ、耳元へ囁きかけた。
「ガハハ、そうだろう。ギャンブルでワシほど強いやつはいない」
「素敵。私、賭け事に弱い女ですの。良ければご指南して頂ける? なんなら……アナタに賭けて(bet)してもいいわ」
わざと弱ったようなトーンで言うリノに、ゴルティードは笑って手を重ねた。
「ぜひそうしろ。きっと倍になる」
ゴルティードは席をたち、『チップはくれてやる』と周りの者に言いつけるとリノをつれて専用エレベーターへと乗り込んでいった。
●ナイトメアダウン
両手に魔方陣を構え、突撃してくる魔術師。
至近距離で発射された連続砲撃を、ニーニアは跳躍と飛行によるターンで二段階回避した。
「よそ見をしてる暇は与えないよ!」
フォトンメールを投擲。回避した魔術師だが、ブーメランのようにターンして戻ってきたハガキが魔術師の背へと命中。
手に纏わせていた魔方陣がぶれ、まるで壊れたデジタル腕時計のように点滅し始めた。
「まずい……!」
腕を突き出し、フォトンメールを無数に生成。チャージショットを繰り出そうとするニーニア。
魔術障壁を展開しようと手を翳すが、魔術はあえなく消失。ニーニアの放つ連続フォトンメールが突き刺さり、魔術師は激しく燃え上がった。
その一方ですずなは剣士とギリギリのぶつかり合いしていた。
「迂闊な対応では首が飛びますよ――!」
幾度となく剣がぶつかり合う中で、横から走ったアウローラのチェインライトニングが炸裂。
剣士だけを貫いていく星にしびれた一瞬。すずなは彼の腕を切り裂いた。
と同時に、ルカの斧がインド系剣士を吹き飛ばしていた。
回転して跳び、倉庫の壁に激突して倒れる剣士。
「俺ぁラサの傭兵、クラブ・ガンビーノのルカだ!
団の名に泥を塗るような真似は……出来ねえ!」
斧を杖のように突き立て、ぜえぜえと荒い息を整えるルカ。
倉庫のドアノブを破壊して中へ入ると、首輪の魔力によってぼうっと椅子にすわったままのハーモニアが大勢目に入った。
「待たせたな。お仲間がすぐ解放してくれっからよ」
丁度同じ頃、夕子は男がシャワーを浴びる間にルージュの伝言を残して、アーリアはホテルのトイレから口元をぬぐいながら、コゼットはソファで眠る男を背にコートの襟をたて、リノとカロルスはキーを小さく打ち合わせながら、それぞれスペードキーを持ったままホテルを後にした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――必要充分なスペードキーと、倉庫に捕らえられていたハーモニアたちを確保しました。
――首輪の確実な解除方法が研究され始めました。
GMコメント
ラサ傭兵連合に所属するガルシア一族からローレットへ協力依頼が入りました。
カロルスはその案内人兼今回のパートナーです。
■今回の相談会場:砂漠の大型テント
夜の砂漠に設置された10人用キャンプテント&たき火。
お酒や携帯食、キャンプ料理を持ち寄って交流を深めつつ、明日の作戦を話し合ってみましょう。
ロールプレイを交えるとお互いの癖が分かって楽しさも増すかもしれません。ぜひぜひお楽しみください。
■依頼内容
このシナリオには『襲撃班』と『潜入班』二つのラインに分かれて進行します。
自分の得意分野にあわせてチーム分けを行なっていきましょう。
メンバー分けは(カロルス含め)7:2~4:5くらいのゆるい幅で考えましょう。
潜入班は最低でも2人欲しく、襲撃班は戦力がある程度整うなら少人数でもOKです。
では、それぞれのラインにわけて解説していきましょう。
■襲撃班
ハーモニア奴隷がとらわれている倉庫を襲撃します。
奴隷たちは首輪の魔力によって置物のように座っているばかりなので、直接ひとりずつ担いで馬車にのせ運び出すほかありません。
そのため、倉庫を防衛する兵力を完全に制圧する必要があります。
要するに、純粋な戦闘パートということです。
倉庫のガードはゴルディードの囲っている私兵達で、数は多いですが実力はそこまで高くありません。
人数は6人ほど確認されていますが、こちらの実力があれば充分に制圧可能です。
戦力としては、銃器で武装した兵士3、侍風剣士1、インド系剣士1、攻撃的な魔術師1――といった配分です。
『後衛3中衛1前衛2』の適度に散開するフォーメーションを組んで倉庫を守る筈なので、それを突破するような布陣を組んでいってください。
■潜入班
奴隷たちの首輪を解くための鍵を一定数手に入れるのが今回の目標です。
最低でも2パターン手に入れたいので、このチームにはカロルス含め2人以上が必要です。5本奪えれば完璧、だそうです。
ここに配属されたメンバーは、オアシス街のカジノホテルに集まるゴルディード及びそのVIP客ひとりひとりに接近し、彼らの持つ『スペードキー』を奪います。
誘惑して部屋のベッドへ案内された所でサッとレプリカと取り替えてもいいですし、誰かが注目をひいてる間にスリによって入れ替えてもいいでしょう。
ただし暗殺や派手な破壊工作は目立ちすぎるためNGです。
コツとしては、カジノで遊んでいる対象への接触方法。隙を作る方法。そして奪い取る(レプリカと差し替える)方法の三つをプレイングにすることです。
例としてカロルスはボーイとして潜入しVIPを誘惑した後身体に仕込んだ非殺傷性の眠り薬を使って寝ている隙に奪い取るという手段を使うつもりのようです。
■カロルスについて
今回仲間として加わっているカロルスは傭兵連合に所属するガルシアファミリーの四男。七人兄弟の六番目にあたる黒豹獣種です。
基本的に寡黙で無愛想ですが、姉のリノには頭があがらず大体振り回されているようです。かわいい。
とはいえ仕事に対しての信頼性は高く、傭兵として数々の実績をあげてきました。
優秀な毒使いでもあり、強い毒耐性や薬物知識を持ちます。
余談。カロルス君は異性の誘惑はむしろ苦手分野ですが、顔立ち含め女受けがいいのでこの手の仕事がよく舞い込み、そして結構成功しています。血筋かな。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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