シナリオ詳細
<R>戦神偽造計画
オープニング
●戦神偽造計画
森を、物乞いが歩いている。
ぼろ切れを纏い背を丸め、痛んだリンゴと野草しか入っていない籠をかかえ、行く当てもないかのように森の中をとぼとぼと歩く。
ふと、足を止め、物乞いはフードの下からきらりと赤黒い目を光らせた。
『チェック』
『適正反応なし。ジャミング良好。お入りください』
ハイテレパスによる通信を得て、物乞い……に見えていた男はその姿を一瞬にして変貌させた。
獣道から90度反れ、背筋を伸ばし目的があるかのように歩く。
ぼろきれは消え去り、鷹のような羽根とサソリの入れ墨が現われる。
片目をアイパッチで隠し二匹の蛇を身体に巻き付けた、それはそれは不吉な男であった。
男が『なにもない空間』を払うと、その内側へと潜り込んでいく。
森中。隠蔽魔術のカーテンに覆われた鋼鉄のコンテナ群が眼前に広がった。
ヘルメットをかぶりアサルトライフルを装備した衛兵が、男に対して敬礼する。
「お待ちしておりました、ギンナル様」
「敬礼はいい。『魔物遣い』の様子はどうだ」
「……ダメですね」
一瞬のためらいののち、ヘルメットの男がため息のように言った。
不吉な男ギンナルはその言葉を聞いても歩調を落とすこと無く、コンテナの一つへと歩いて行く。
「所詮憎しみで動く奴はその程度だ。頃合いを見て処分しておけ」
「処分……ですか?」
「駒が思い通りに動かないなら、ない方がマシだ。それに」
コンテナの前に立つと、シャッターがゆっくりと開いていく。
真っ暗な屋内に陽光が少しずつ差し込み、何人かの足を映し出した。
そこに並んでいたのは、地球の学生服……それもセーラー服近い装いの少女たちであった。
白い髪に青い目。両方の腰に奇妙な刀を装備した少女たち。
彼女たちを、ギンナルはこう呼んだ。
「――『偽神』はもう完成している。あとは」
自らの顔に手を当て、人相をぐにゃぐにゃと変えていく。
やがて声までも変わり、陰湿で鼻につく口調で話し始める。
「『本物』をおびき出すだけ、といったところでしょう。おもしろくなって来ましたね。フフフ」
●本物の戦神
「私をおびき出そうとしてる奴がいるって? おもしろいじゃない、ぶん殴りにいきましょう?」
『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈 (p3p006862)が長机に腰掛けてそんなことを言った。
幻想と鉄帝の間で、戦略的に無意味な土地にいつまでも金がつぎ込まれ兵士が無駄に死に続ける状態が意図的に作られている。連絡兵を送ったが現地への移動中に襲撃され情報はいつまでも寸断されたままだ。
この状態を解消すべく幻想貴族からという名義でローレットへ対応依頼が寄せられた。
具体的な内容は『連絡兵を襲う謎の部隊を撃滅せよ』である。
サラリーマン風の男が眼鏡のブリッジに中指を当て、弱った顔でうつむく。
「話を聞いていなかったんですか。ギンナルは砂蠍の残党で、『R財団(アール・ファウンデーション)』との武器取引を仲介していた男です。
危険因子と危険因子の掛け合わせ……接触するだけでも危険だというのに、ここまで見え透いた罠にはまりに行く必要はありません」
「けど、他に接触方法はないんでしょ? 『コレ』と」
秋奈が小指でトンと羊皮紙と写真シートをついた。かすんだ写真と手書きのメモ。
そこから分かるのは秋奈と酷似した……もとい、『奏』に酷似した装備をもち、軍隊の連絡兵と交戦している様子であった。
「通称『偽神部隊』の目的は激戦区と外部の情報を遮断し、いつまでも終わらない紛争を続けさせることでしょう。
ですがなぜか今になって『次に訪れる連絡兵を狙う』と予告した。牽制が目的なら早すぎる。この情報が我々に伝わった直後にこの予告が成されたことを鑑みて――」
「戦神を駒として動かしたい?」
上等じゃないの、と刀の柄を叩いて見せた。
「こういう仕掛け方をすれば私が動くに決まってる。そう読んだのよね。間違ってないわ。私は多分、一人だってこの戦場に行く。それに――」
「ええ……依頼として引き受けた以上は、解決の努力をせねばなりません」
ローレットから集められた八人のイレギュラーズは、こうして『偽神部隊』の撃滅作戦へと投入されることになった。
●偽神部隊
鼻歌をうたいながら、猛烈な速度で駆け抜けていく少女があった。
ストライカーからのエネルギー噴射で加速し、その勢いを利用して特殊な刀で相手を切断する。
鋼をも切り裂くその威力とは裏腹に、相手の攻撃をまるで避けるつもりがないかのような捨て身の攻撃を仕掛けていた。
戦うたびに傷だらけになり、青い目をぎらぎらと光らせては食らいつく。
獣のごとき彼女たちは、自らを『偽神部隊』と名乗った。
「次は誰が来るかなー」
「誰でもいーよ」
「そーそー」
「斬って殺せれば誰でも一緒」
「そして死ねれば何より本望」
彼女たちは『笑って死ぬ兵士』。世界人類を効率的に減らすための、兵士。
少女たちは、鼻歌交じりに戦って、死ぬ。
- <R>戦神偽造計画完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年08月18日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●『戦争は増えすぎた人類を最適化するための変換手段である』――ある政治家の言葉
鉄帝と幻想の間に広がる恒久的な紛争地帯。
といっても、その殆どは『すぐにでも幻想の豊かな土地が欲しい鉄帝軍』と『永久に鬼ごっこを続けて自軍の兵力を維持したい幻想』による愉快なダンスホールと化しており、戦争らしい戦争は起きていない。場所によっては両軍の前線部隊がズブズブに和解しており青空飲み会を戦闘と称して嘘の報告をするまである。
そんななかで異質な情報空白地帯。
両軍が訳も分からず互いに殺し合いつぶし合い、投入した兵力を愚かに消費し続ける戦場があった。
それが永久戦争地帯……通称『知られざる戦場』である。
その物理的情報遮断に用いられているのが、戦神を模して作られた戦士、偽神である。
「こんな、こんなことって……」
『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は両手を震わせ顔を覆い……覆ったところでくすくすと笑った。
「なんて。このくらい想定してたわよ。本当にやる奴がいるとは思わなかったけどね」
揺れる椅子の上。彼女たちをのせた馬車は今、『知られざる戦場』へ向けて走っていた。味方へ情報連絡兵であることを知らせるシグナルが馬車から立っており、偽神部隊はこの馬車を狙って襲撃しているということだ。
『時空を渡る辻斬り刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)が向かいの椅子で腕組みをし、肩にかけた刀を抱いていた。
「偽りの戦いの神……今は亡き特異運命座標の劣化コピーといったところだろうか?
『戦神』と仕事をするのは今回が初めてだが、どうにも親近感があったものだ」
放っておけないんだよ、とアレンツァーは目を閉じる。
外部に放つ兵士として、『戦神』はきわめて適切だ。
許可された攻撃目標を喜んで、それがどんなに攻撃しづらいものであっても撃滅し、余計な情報ははなから覚えず、尋問や拷問に対してほぼ無敵であり、捕らわれればその場のノリで寝返り引っかき回した末に死ぬ。勝手に自決するよりも扱いづらい敵、というわけだ。
「この計画、潰させて貰う」
「同感なのだ!」
『《力(ストレングス)》』ネメアー・レグルス(p3p007382)はむんと胸を張ってみせた。
「俗世の事はよくわからないのだ。だけど彼女達のやってる事には我も怒り心頭なのだ!
誰彼構わず殺すのはよくないのだ! 殺す者は選定しないと、イーゼラー様に良き魂を捧げられないのだ!
なので我は彼女達の為に彼女達を殺すのだ。死した後にイーゼラー様の元で良き魂に生まれ変われる様にするのが我の役目。故に全力を尽くすのだ!」
独特の信仰をもっているようだが、要約すれば正義の鉄槌である。
『戦神』という存在にとって、最も分かりやすい精神的対抗手段とも言えた。
こうして戦神に対する感情を高めている一方で……。
「御幣島 戦神 奏……ね」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は魔導書の表面を撫で、すこし昔のことを思い出していた。
(蠍との決戦で私達が殺した女の亡霊……いや、幻影とでも言おうかしら)
「最後に捕まった時に一緒だった方で……そのまま助ける事は出来ませんでした。彼女をこのように扱うのは見過ごせません」
隣に座った『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)もかつてのことを思い出し、深く呼吸を整えていた。
過去というものはいつも、形を変えて追いかけてくるものだ。
それは人の数だけ形をもち、それぞれの心の穴にかぎ爪をかける。
「……『神がそれを望まれる』」
唱えるイーリンに気持ちをあわせるように、弥恵が胸元へと手を当てた。
「計画した者が誰であれ、そして狙いがなんであれ……今ここで破壊しなくては」
「ええ、それ自体、我々の目的でもあります」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は開いていたファイルを閉じ、アタッシュケースへとしまいこんだ。
「永久戦争地帯を切り崩して、R財団に介入を強いる。あちらは此方を誘ったつもりでしょうが、R財団上位層の関与を誘っているは、こちらも同じです」
偽神の製造には相当のコストが必要だったはず。
金、時間、人員、そして技術。その全てを持っているのがR財団だ。
だが同じものが、こちらにもある。
貴族や幻想王家を後ろ盾にした財力と、ローレットという才能豊富な人材集合機関。その集合によって生まれる技術力と時間。
きわめてリアルなイレギュラーズネットワークを駆使することで、寛治は巨大組織に対抗しつつあった。
その実際的な対抗戦力が、『白綾の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)たちだ。
「その有り様、壊し、殺し、自らも死も厭わない。破滅的で刹那的な魔物たち。……早急に対処が必要ですね」
作られた環境。作られた少女たち。作られた戦い。
それらを作っている者たちを破壊するためには、まず作られたものから破壊しなければならない。
「まずは、手の届くこの場所から。ですね」
「いかにも、その通りだ」
『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)。
「金で死を買うとは、まさに死の商人だな。
無用な戦争を広げる存在。
無用な殺戮を続ける狂人共。
覚えたぞ、『R財団』――偽神計画は排除される、そう判断した」
レイヴンは黒い天使のような翼を広げ、そして。
――馬車が木っ端みじんに破壊された。
●偽神部隊
爆発、と表現していいだろう。
乗っていた馬車が破壊され、積み込んでいた藁や羽根が舞い散った。
「偽造戦神の戦術プランは、自身の被害を考えずに、敵に最大打撃を与えるもの。故に、初撃をいかにいなすか――」
襲撃のあった反対方向へと飛び出し、転がってから傘を開く寛治。
半透明な傘の向こう側から、壁にしようと配置した馬車へ大量の光の線が走って行くのが見えた。
一方で、上空に離脱し翼を広げるレイヴン。空戦ペナルティを受ける高度まであえて上がると偽神部隊を俯瞰した。
レイヴンには目もくれず、凄まじい速度と威力で馬車を破壊し尽くすと、その先に陣取っていたLumiliaたちへと襲いかかっていった。
舞い散るLumiliaの白い羽根を突き抜けて、剣がまっすぐに迫ってくる。
Lumiliaは編み上げたカランコエのエストック剣を打ち付けていなそうとするが、あまりのパワーにいなしきれず、肩を切り裂かれる形で飛び退くことになった。
「馬車が足止めにすらならないとは」
「御幣島様が9人いると考えれば妥当な結果でしょう」
寛治はレイヴンとLumiliaにサインを送ると、一斉砲撃を開始した。
ステッキ傘の先端を銃口にかえ、オート射撃をしかける寛治。
味方へ密着しはじめた偽神部隊を個別に攻撃すべく魔術砲撃を打ち込むレイヴン。
身近な仲間を支援すべく『神の剣の英雄のバラッド』の加護を展開し始めるLumilia。
「けれど、初撃による全滅は防いだ。ここからよ」
Lumiliaへの集中攻撃を防ぐため、『紅い依代の剣・真秀』を召喚したイーリンが追撃に飛びかかる偽神部隊の攻撃を引き受けた。
バランス良く攻撃をいなし軽減する……が、きわめて高い攻撃力で後先を考えずに破壊するという偽神部隊の攻撃能力は恐るべきものがあった。
合計六本の剣を受けたところで、至近距離から激しい衝撃を叩き付けられた。
思わず吹き飛ばされるイーリン。
さらなる追撃に走ろうとした偽神の剣を、青い稲妻が打ち払った。
否、稲妻では無い。
アレンツァーのあまりにも早い斬撃と『紫電【骸襲一蝕】』の赤いスパークが残像現象を起こし、青く錯覚させたのだ。
それを見て、偽神たちは一様に笑った。ぱっと花が咲くように、新しい遊び場を見つけた女子高生のように笑った。
「クソッタレ。笑って死ぬ狂戦士量産計画とはイカれてやがるな」
「イカれた者同士、仲良くヤりましょ」
秋奈はフットパーツにエネルギーを込めると、腰の左側に格納した『戦神制式装備第九四号緋月』を二本同時に抜刀。防御をまるで考えない偽神の腕を切り払うと、自らの腹に突き刺さる剣に小さく笑った。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
まるで茶番劇のように。最初から明確な目的などなかったかのように、偽神部隊の少女たちが一斉に秋奈へと振り返り、黒い目をギラリと光らせた。
四本二対の量産型姉妹刀を抜き、四方八方から飛びかかる。
「一人で引きつけすぎなのだ!」
ネメアーは馬車から飛び出し幾度か転がった後、拳を地面に叩き付けてパンプアップした。
長い袖が膨張した筋肉によって引き裂かれ、伸縮素材の水着だけを残して衣服が散っていく。
突撃。猛牛の角突きか、それとも自動車による追突か。偽神に叩き込まれた拳が、偽神のストライカーを破壊。狂ったエネルギー噴射によって転倒した偽神が、そのままはねて回転しながら馬車の残骸へと落ちていく。
「一部だけでも引きはがすのだ!」
「それならば――お任せください」
弥恵がビッと背筋に気合いを通し、美しい立ち姿を披露した。
人間は人間の形をしたものを無意識に目におさめ、その立ち姿が鋭く反ったとき、どうしても目を離せなくなるものである。
「月を彩る華の舞姫、津久見弥恵の参上です。さぁ、一緒に遊びましょう」
「「ヨロコンデー!」」
無邪気な子供のように笑い、急速反転と共に斬りかかってくる偽神たち。
弥恵は繰り出された斬撃を跳躍と回転によって回避。
しかし回避しきれなかった鋭すぎる衝撃を、さらなる回転と肉体運動によって逃がしていく。
少女たちが鼻歌を歌い始めた。示し合わせたかのように声を揃え、笑いながら斬りかかる。
きっと鼻歌一曲分も続かない、短い短い狂った戦争が、始まった。
秋奈へ突き刺さる何本もの刀。
対する秋奈はきわめてにこやかに笑うと、偽神の肉体を横一文字に切り裂いた。
肉体。そして装着されていたストライカーごと無理矢理切断。少女は笑いながらくるくると周り、そして笑顔のまま土の上に崩れた。
「貴方達には似た者同士な親近感が沸くのだ! 故に望み通り笑って死んでほしいのだ! イーゼラー様の元へ逝き、良い魂になってくるのだぞ!」
ネメアーがそこへ飛び込み、偽神の頭と頭を両手に掴んで強引にぶつけ合わせた。
あまりに大ぶりな攻撃であったにも関わらず、偽神はまるで避ける気が無かったかのように叩き付けられ、顔面と頭部を崩壊させてぐったりと手足から力を抜いた。
祈るように両手をめりめりと合わせるネメアー。
Lumiliaがミリアドハーモニクスを発動させながらネメアーたちにサインを出した。
「死や痛みを恐れぬ者ほど恐ろしい敵はいない……ですが、その勇猛は利用できます。あえて複数で密集し、範囲攻撃を誘発するのです。きっと『味方をかえりみずに』攻撃を行なうでしょう」
Lumiliaの狙い通り、偽神たちは味方の損害を無視する勢いで剣を振り回してきた。
『自分のために自分を勘定にいれない人間』はえてして、『味方を勘定に入れない』選択肢をとるものである。
その一方で、偽神を弥恵が横から軽やかに浚っていく。
新体操選手さながらのアクロバットを混ぜながら相手を誘い、駆け抜けていく。
どうあっても届かない位置にまで逃げ切られれば、接近攻撃自体が不可能であるとして誘引効果を失いそうなものだが、偽神たちは全速力で弥恵を追いかけ、回り込んでなんとかマークを試みるというかなり遠回りな対抗手段を執り続けていた。
「搦め手がここまで効くとは思いませんでしたね」
「あの子らしいといえばらしいけど」
「だが、好都合だ」
レイヴンは弥恵だけが先行離脱したところへルーン・Hを投下。乱れ撃ちをしかけていく。
「わからないのか?やりすぎたんだ、お前達は!」
そこへ、一度待機行動をとってから接近行動をとったアレンツァーが潜り込み、豪快な回転斬りを繰り出した。
偽神を二人いっぺんに切り裂き、赤い稲妻だけを残した超反応速度によって相手に何もさせずに高速離脱する。
「斬って殺せば誰でも一緒……昔はオレもそうだったさ! だが、今は、笑って死ねるオレでなくてね!」
背後でおこる爆発。出力を開きすぎたストライカーの赤い爆発だ。
最後に一人残った偽神へ、寛治はステッキ傘を畳んで上下逆に握り込んだ。
スイング、と共に発射される柄。
ワイヤーフックの要領で偽神へ巻き付くと、両腕を素早く拘束してしまった。
「今です! イーリン様!」
「――」
イーリンの放ったカリブルヌスが炸裂。
そのまま大胆に駆け抜けると、置き撃ちした『紫苑の魔眼・紅蒼』の魔力が爆発。偽神は白目をむいてその場に膝を突き、ぐったりと脱力した。
その様子を横目に、座り込む秋奈。
全身いたるところから出血していたが、まだなんとか生きているようだ。
「酷い冗談よね、■■■……。
あんたも、私達も、勝つために人形にされたって言うのに……それでこのザマなんて」
●弔い
ネメアーは手を合わせ、己の信仰にそって偽神たちへ祈っていた。
「死に様はこうでも、せめて亡骸はな……」
どこか穏やかな表情で土を掘り、死んだ偽神たちを埋めていくアレンツァー。
Lumiliaや弥恵たちも自分たちの応急処置を終えた後、その作業に加わっていた。
ふと振り返る弥恵。
そこには、生き残った偽神のひとりが気絶したまま拘束されていた。
イーリンとレイヴンがそれを見下ろしている。
「ねぇレイヴン。ありがとう」
「……言葉は不要、かな」
装備は念のためにはぎ取って転がして置いたが、その一部を拾い上げて秋奈が小さく唸っていた。
「……どうかした?」
「いや、これ、人類軍向けの量産型ストライカーじゃない。誰が作ったのよ、こんなもの」
「……誰が、とは?」
寛治が眼鏡の端を光らせる。
「説明が面倒だから、私の資料を勝手にあさって調べて欲しいんだけど……」
「はい? ええ、はあ」
なにか大事なところを端折ったようだが、寛治はあえて受け入れて続きを促した。
「そのなんとか財団って、戦神機構の技術者でもいるの?」
「…………」
顔をしかめる寛治。そんな彼をスルーして、秋奈はストライカーを叩いた。
「もらって帰っていい? 混沌のアイテムをこう、なんかアレして改造(進化)させればXストライカー並になりそうな気がするから」
「ええ、まあ……たいした装備ではなさそうですしね」
寛治はそう言いながら、倒した偽神たちの衣服を順に調べていた。
そして一人の、つまりはイーリンが生かしてとらえた偽神のポケットから、生体認証カードが見つかった。偽神の生存をキーにして開く情報記録媒体だ。
中身は複数の土地と名前のリスト。
その中に、魔剣供給ラインという文字と、『サファリング』という名前が並んでいるのが、見えた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――mission complete!
――『知られざる戦場』における強力な武器供給ラインを発見しました。
GMコメント
■依頼内容
『偽神部隊』にあえて襲撃させ、これを迎撃。
可能な限り全て殲滅すること。
生きて逃がしてしまった場合、確実に戦闘データが敵へ渡ることになります。
■戦闘への流れ
皆さんは馬車を二台用いて移動しますが、その最中に『偽神部隊』からの襲撃を受けます。
どのタイミングでうけるかは分かりませんが、少なくとも突っ込んでくるところは見て分かるレベルなので奇襲の心配はなく、索敵も必要がありません。
ただし派手な初撃を叩き込んでくるので、これへの対応、ないしはカウンター、ないしは派手な対抗を考えておくとよいでしょう。
■『偽神部隊』
攻撃の命中率と威力に全てぶっ込んだちょっとイカれた少女たちです。
真っ白なストライカー&ソードの装備を用い、猛烈な速度で突っ込んで思い切り斬るという戦法をとります。
数は9人。
あんまり考えて戦わないタイプのようですが全員が同じような思考で動いているため自然と連携がとれています。
正確なデータではないのであくまで予測になりますが
名乗り向上、豪鬼喝、ぽこちゃかパーティー……といったスキルを使用するところが観測されています。
こちらの連携をめちゃくちゃに破壊しながら好き放題暴れる、という戦術を、おそらくはとってくることでしょう。
これらのスペックと予想スキルから相手の行動や穴を予測し、対抗戦術を組み立ててください。
■オマケ解説
・『知られざる戦場』
今回話題にあがったいたずらに兵が死に続けているという土地の通称です。
幻想と鉄帝の戦争を局所的に何者かがあおり、物資や兵隊を送り続け、すさまじい回転率で兵が死に続けています。
これを解消するという大目的が、依頼人たちにはあるようです。
そのために今回の連絡兵を追い返してしまう謎の部隊が邪魔なのです。
・R財団
安くて便利な兵器を大量に生産する武器メーカー『Rインダストリーズ』を中心とした巨大な闇ネットワーク。
世界人類を大幅に減少させることで混沌世界が清浄化されるという思想をもっており、今回のように人類を効率的に減らす計画を進めている。
・ギンナム
砂蠍の残党でありR財団との仲介を行なっていた人物。
優秀な詐欺師で顔や声色や振る舞いまでも巧妙に演技することができる。
キングスコルピオンの思想に強く共感しており、世界人類の減少や破壊といったR財団の思想にも合うことから現在は財団のもとで偽神計画を進めている。
・戦神偽造計画
笑って死ぬ兵士を量産する計画。
ものすごく色々な部分を省いて説明すると、お得な訓練プログラムを販売することによって各国に大量のバーサーカーを生み出し、各国をつぶし合わせるというもの。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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