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シナリオ詳細

<薄明>その心に身を任せて
<薄明>その心に身を任せて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 それは、蒸し暑い夏の夜に起こった。
 きっかけは、なんであっただろうか。
 確か、とても些細な事だった様に思う。
「お前、この前貸した飲み代、何時返すんだよ」
 そうそう、こういう話だ。
 腐れ縁の友人がギャンブルに負けると、ムシャクシャを酒にぶつけて解消する何時ものパターン。
 財布の中身をスッてしまっているのだから、支払いなんて出来る筈もなく、そこで泣きつかれるのが僕というわけだ。
「え、あー……次の給料が来月だし……まだいいだろ細かいんだよ、な? いつもみたいに待っててくれよ!」
「細かいってなんだよ」
 きっかけは、ソレだったんだろうか。
 不思議な事にその言葉は、僕の思考を揺さぶって、感情を噴き出させるんだ。
「細かいってなんだって、言ってるだろ!」
「がっ……」
 怒りだ。
 思わず殴り付けた友人の体が壁に叩きつけられ、痛みより驚きに支配された視線を受けてなお、僕の心には怒りだけがある。
 苛立ちだ。
 腹立たしい。
 その顔も、痛む拳も、何もかもが気に障る。
「ああもう、ああ、くそ、クソ!」
 それを少しでも晴らす為に、また僕は拳を振りかぶる。
「ひ、ひいぃ~!」
「おい待てよ、どこ行くんだおい、待てよ!」
 逃げて外へと転がり出る奴を、僕は追い掛けて行く。
 町は騒がしく、あちこちから五月蝿い叫びと怒号が上がっていて。
「まるで子供の癇癪だな……ああ……腹が立つ」
 きっとそのどれもが、怒りによるものだと、そう思った。


「え、暴動……?」
 ローレットにその報せが届いたのは、日付が変わりそうな時間帯の事だった。
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、手短にその情報を取り纏めると、その場に詰めていたイレギュラーズを呼び集めて一息。
「火急の案件がある」
 話を始める。
 ガサッ、と棚から取り出してき幻想の地図を机に広げて、ある一点を指差す。
 そこは、幻想の下方。
「南部にある小さな町。ここで、事件が起きている。人々が急に暴れだし、殺し合い一歩手前の騒ぎが起こっているようだ」
「それ、原因はなんだろう」
 挙がるのは当然の疑問だ。
 ローレットに持ち込まれる暴れ事件は大体、貴族への不満や魔物との戦闘が多い。
 今回、町の中で起きた異常の原因はなんなのか、知る必要があると、そういう事だ。
 勿論、ショウもそれは理解している。だから一つ息を吐いて、質問には頷いて、
「怒り、だろうね」
 答えを出した。
「怒り、憤怒の感情。知性を持つ生物であれば、理性という制御機能が抑える部分だけど、それがその町全体で働いて無い、みたいだね」
 もたらされた情報では、些細な意見の食い違いから殴り合いや、昔あったいざこざを蒸し返しての喧嘩。
 肩がぶつかったから、視線が交わった際に睨まれたから、顔がムカつく等々。
「理由としては本当に小さな事だ。でも、感情の抑えが効かない今、それは動機として強いものになっているのだろう。幸いまだ死亡の報告はされてないけど、時間の問題だ」
 だから、止めないといけない。
 それも、手段を限定して、だ。
 なぜなら。
「彼らに、言葉での説得は通じないと思われる。道徳とか倫理とか、そういう思考が怒りに塗り潰されている様だからね。力づくで止めるしかないだろう」
 いいかな? と、改めた前置きをして、ショウは言う。
「人工にして約100人程度の町。荒廃のゴーストタウンになってしまう前に、君達で止めてくれ」
 頼んだよ、と。
 笑みを浮かべてイレギュラーズを送り出した。

GMコメント

 ご無沙汰しております。
 ユズキと申します。
 一斉に起きた事件の末端、その描写をさせていただきます。

●依頼達成条件
 怒り狂う人々を止める。

●現場
 夜の町。
 建物は全部灯りが着いていて、視界は十分にあります。

●敵戦力
 約100人の町人。
 暴力への忌避感が無いため、躊躇いが無く、止まることが無い。
 止めようとすれば怒りはイレギュラーズに向き、殺到すると思われます。

 以上、簡単にはなりますが補足として。
 よろしくお願いいたします。

  • <薄明>その心に身を任せて完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月20日 23時05分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)
強襲型メイド
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
ぷろふぇっしょなる!
ハロルド(p3p004465)
聖剣使い
美咲・マクスウェル(p3p005192)
見敵必殺
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
ソア(p3p007025)
雷精
ディアナ・リゼ・セレスティア(p3p007163)
月の女神の誓い

リプレイ

 幻想南部に、小さな町があった。
 そこは平穏で、静かで、時折ある魔物や世界の事件に晒される以外、脅威のない場所。
 だったのだが、今、それは破られてしまった。
「どきっ! 激おこぷんぷん丸だらけの喧嘩祭りっ!
 って誰が得する企画なんでしょうかねこれっ! 誰ですかこんな企画書出して通したのはっ! 中止中止、即刻中止ですよお茶の間を凍り付かせる気ですかもっと考えてくださいよねっ!
 ねぇ、そう思うでしょう皆さんっ!」
 起きた事態に憤慨した『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)は捲し立てて同意を求めた。


「なぁ、どうして彼らは喧嘩をしているんだ?」
「怒りの感情がコントロール出来なくなっている......の、でしょうか......?」
「ただただ怒るとは、作為的なものを感じますわねー」
「まずは、暴徒と化した100人前後を殺さず止めるという、中々ヘヴィな要求をこなさないといけないね」
「理性が働いていない......まるで美味しそうなモノを前にしたボクだね、抑え効かずに衝動のままってわかるわかるー」
「何の関係も無い大衆を巻き込み、平和を乱す輩がいる。今は人々を鎮めるのが先だが、いずれ元凶を探し出さないとな」
 ......皆様、結構慣れてらっしゃいますね。
 ふぅ、と息を吐いた『強襲型メイド』ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)は、あれれヨハナの号令は聞こえなかったんですかねー! と賑やかしいヨハナへの対応を見て思う。
 今、ヘルモルト達が居るのは事件が起きている町の100m程外側で、それぞれが持ち合わせた地図を基に計画の確認を行っている。
「......また、呼び声案件、でしょうか」
 彼女の呟く声は、周りに聞かせないほど小さい。毎度、面倒な事だと思うし、てっとり早く手当たり次第、手加減無しで暴れればとも思う。
 しかし、まあ、ゴーストタウンにするわけにもいかない上に、イレギュラーズ達が出した今回の方針は基本的に不殺だ。
 だが。
「殺すな、と明確な指示はされていませんから」
 必要ならば殺す。と、そういう覚悟は持っておく。
「さて!」
 改めたヨハナが言う。
「チームを二つに分けましょう。今、ヨハナ達は南に降りてきて、町から見て北側にいます」
 細い街道の上だ。
 幸いというか、町の構造は分かりやすい四角形で、東西南北にそれぞれ関所に似た入り口が作られている。
「どうやら門番も機能してはいないようだ。入り込むのは楽だろうね」
 立つ位置から超視力で観た『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192)の言葉は、まず間違いなく他の方面でもそうなのだろう。
 入り口の左右に配置された物見櫓に人の姿は無く、立て掛けられた梯子には真新しい破壊の跡が見えた。
 それから手早く確認を済ませ、
「では、便宜上A班、B班と呼称して」
 ヨハナの言葉に 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は頷いて続け、
「左右、東西からの侵入を打ち合わせ通りに……ご健闘をー」
 八人は四人ずつ、左右の獣道へと分かれて行った。


「うわ……」
 西から入るA班の始まりは、静かなものだった。
 いや、静かだったのは動きだけで、実際、町のあちこちから聞こえてくる怒声と破壊の音は騒がしいものだ。
 超聴力を持つ『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)の耳は、その音のデカさにピクピクと揺れて動いていた。
「怒りと暴力は誰も幸せになれないから……ダメ、絶対!」
 拳をぐっ、と握り、止めなければいけないと強く思う。
 そのために聞こえすぎる耳をさらに凝らして、人々の位置を探り、美咲の用意した地図と照らし合わせて把握する。
「行けるよっ」
 それが完了すれば、後は作戦通りに進むだけだ。
「少し、大変でしょうね」
 同じく地図を見ていた『月の女神の誓い』ディアナ・リゼ・セレスティア(p3p007163)は、短い息を吐いて思う。
 ……これも、魔種が関係した事件でしょうか。
 背筋に通る寒気は、裏にあるかもしれない謎に対してだ。
 被害が拡大する前に気づけて良かったし、これから素早く鎮圧を為さねばならない。
「……ハロルド様が同じ班なら、もっと心強かったのですが」
 B班で力を振るっているだろう『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)への信頼は厚く、それだけに少しだけ残念にも思った。
 だが既に事は動いているし、前を行くヒィロはもちろん、直上を飛ぶ美咲や、横に並んだヘルモルトの実力も頼りになる。
「ポイントはこの先、ですね」
 だからディアナは今に専念する。
 見直した地図の上。自分達が居るのは西口から小脇に進んだ直線の通りにいて、突き当たりを直角に曲がればその先は、少し大きな十字路だ。
 そこならば戦闘に十分な広さと、どれか手薄な一方向を突破すれば離脱も容易いと思う。
 だから後、必要なのは、
「進路にはあまり居ないみたいだよ。どうする? 少し、呼ぶ?」
 散らばった町人達の引き付けだ。
「美咲様はなんと?」
 上で見ている美咲の情報は、超聴力でヒィロが聞く流れだ。
 お互いテレパス能力があれば相互のやり取りも出来ただろうが、
「見える範囲には数は無いって。ボクの耳も、そんなにたくさんの声は聞こえなかったから、大丈夫だと思うよ」
 二人の感覚とちょっとのジェスチャーで意志疎通は取れていた。
 だから、ヒィロは続けて、どうする? と言葉を作り。
「呼ぼうか」
 と、息を吸った。

「挑発ですね」
 安い手ではある。だが相手は、ちょっとした事で直ぐキレる状態の人達だ。
 直接的に注意を集めるには何より最善手であると、ヘルモルトはそう理解している。
 だから息を吸ったヒィロの第一声を待ち、敵が現れればこちらも便乗して声を挙げ、ポイントへの誘導を開始しよう。
 と、そういうつもりで片足を前にして、
「やーいバーカバーカ、バーカ!」
「誰だ今俺の事をバカにしやがったのはぶっ殺してやる!」
「あぁんだあクソてめぇごぶはぁ!?」
 家から飛び出してきた一人の男の顔へと蹴りをぶちこんだ。
「失礼、邪魔でしたので」
 勢いのまま蹴り倒した相手の腹へ、着地する踏み込みを続けていれて止めを刺しつつ、ヘルモルトは道を進むようにダッシュする。
 本番はポイントに着いてから。その場で暴れる事には執心しないというのが共通の認識だ。
 横を見ればヒィロはずっと直接的な罵倒を繰り返しながら走っているし、ディアナも保護結界を維持しながらそれに続いている。
 上に居る美咲は飛行状態なので、遅れないようにと先行して進んでいるから、ポイントに着く頃には丁度良く降りて来られるだろう。
「おっと」
 そういう状況の中で、すれ違う町人はお構い無しに攻撃を仕掛けてきた。
 蹴りだ。
 行く速度と迎える速度が、ぶつかり合って衝撃が強くなる。
 怒りで込めた力も強いのだろう。防いだ腕に伝わる痛みは重い。
「バカーっていったぁ!?」
 真正面から体当たりを食らったヒィロも、その威力は身を持って知っただろう。
 突き当たりを曲がり、チラリと来た道を振り替えれば、およそ数として10人。
「前に10人位居ます!」
 ディアナの声を加算して、合計およそ20人が集まってきた事になる。
「ノルマまで、半分も行きませんね、これは」
 嘆息の空気を吐いて、三人はそこから加速した。


 東側、B班の定めたポイントは、路地裏だった。
 薄暗い道は視界に支障を与えはしないが、どうしても出来る濃い影が多く、身を潜めるのに適していたからだ。
 それから、怒りに動く人々は鬱憤を晴らすために、そちらへ行かなかったと言うのも選んだ理由の一つだ。
「さてー」
 ほ、と配置に着いて一息入れたユゥリアリアのいる場所は、屋根の上だ。
「どうなるかなぁ」
 それからその下には『トラージャーハンター』ソア(p3p007025)が待機していて、じぃっと路地から見える大通りへ意識を向けている。
「この騒ぎ、おかしいよね?」
 自問するような声だ。
 ぴくりとした耳は視線の先にある音を拾い、ひくひくと動く鼻は辺りの匂いの変化を敏感に感じとる。
「人と人が争うのは知ってるけど、そこには理由があるものだろ?」
 ソアの声に、上のユゥリアリアも頷く。
 おかしい。そう思うと言って、
「大変、匂いますねー」
「え、嘘、なにか匂う!?」
「ああいえ、現場の匂いではなく」
「???」
 可愛らしいですねー。
 ほんのりと心は癒された。
 そうして、ふと、ソアは疑問顔を通りへ向け直す。
「ヨハナさんが動いたね」

「はい皆さん囮役一番のヨハナ・ゲールマン・ハラタが一発芸をしまーすまあ一番ってヨハナしか囮役いないんですけどはい置いておきましてっ。
 いいですか皆さん! ヨハナがですねまず皆さんに、いやー激おこだよおこ、おこだよ! と自己主張しますのでそれにおっとお兄さん早かっあ痛ぁーい!」

 怒りに駆られた民衆は、逃げるヨハナの背中を追った。
「殴られるのは予想通りですがネタ途中とは腑に落ちませんよっ!」
 何か言って余計イライラさせた。
「──!」
 加速する。
 ただの一般人が、アドレナリンの過剰分泌で、疲労や痛みを無視した力が込められる。
 慌てて路地裏へ入り込む相手を追い、壁を手で掴んで体をコーナーに回し、思い切り行く。
 そして。
「おう」
 横合い。積まれた荷箱の影から声が掛かった瞬間。
「テメェらの相手は俺がしてやる」
 訪れた衝撃に、追い掛けた人々は転がるように倒れた。
「あぁ? なんだこ──」
「ボクもいるぞ!」
 続いて入ってきた男二人に、ソアは突撃する。
 広げた五指の伸びた爪を振りかぶり、今、必殺の──。
「殺しはしないけど──ひっかきだ!」
 鋭い線をその身に刻み込んだ。
 鮮血が飛び散るが、傷は浅く、どたらかと言えば肌が斬り開かれた痛みのショックが強い一撃だ。
 一人はその傷口を見て白目を向き、精神的に堪えたもう一人は痛みを怒りへ変換して拳を振り上げると、
「ああー、申し訳ございませんー」
 上から降ってきたユゥリアリアの着地点とされて倒れ、止めの非殺術式を叩き込まれて気絶した。
「後で直して差し上げますから、今は、ご容赦をー」
 謝罪の気持ちを込めて踏み、大きく後ろへ跳びながらハロルドと立ち位置を入れ替わる。
 それから隣になったソアを確認し、後ろを振り返って囮を勤めたヨハナを見て、おや? と首を傾げた。
「んー?」
 目を凝らして、大きく息継ぎをする彼女の向こう、灯りと、なにやら音が聞こえてきている。
「後ろからたくさんの人の声が聞こえるよ!」
 ソアが言うのだから、それは間違いないだろう。
「あっ、補足で言うと前からも数人、お怒りカンカン感情が刺さってますねっ、挟み撃ちですこまったなぁっ!」
 ヨハネが言うのだから、さらにそうなのだろう。
となればここはどちらか一方を突き抜けて突破を計るか、もしくはここで仕留めきるかの選択だ。
「なら、三人で後ろを頼む」
 決めたのは、ハロルドだ。
 抜いた聖剣を横に刺し置いて、鞘に納めた刀に手を乗せて腰を落とす。
「問題は無い。負の感情が魔で在るならば、俺に断ち斬れぬ道理もないからな」
「それじゃあ覚悟完了って事でそれじゃあ、あユゥリアリアさん回復ありがとうございますそれじゃあ、鎮圧作戦再開ですっ」
 言って、四人は迫る人々へ突撃していき、
「ねぇ今それじゃあって三回言わなかった?」
 ソアの鋭い一撃が夜闇を切り裂いた。


 美咲は、何度目かの飛行をしていた。
 頭の中で思い出した地図と、視界にある町並みを照らし合わせてざっくり考えると、B班との合流地点はもうすぐそこだ。
 その間、数度のポイントで迎撃を行っていて、進路としては西から北へ回りながらの道程は、東から南へ行くB班と相まって町を余すこと無く回れる。。
 そして、こちらの班。積極的に引き付けをしていたヘルモルトとヒィロは、役目の象徴である傷を、眼下でディアナに治療してもらっている。
「大体30は寝かし付けられた、と、そう思いますが」
「正確には42人、だね」
 ……大の男を纏めて蹴り飛ばすって、寝かし付けるって言えるのかな……。
 疑問と共に、美咲は顔に浮かんだ苦笑いのまま手元に目線を落とす。
 手に握った数取器のカウントは42で止まっていて、随分と順調に進められているなと思う。
「……もう一息だね」
 飛行の制限時間を迎え、地上へ降りた美咲にヒィロが言う。
「そうね……ちょっと不殺がめんど、じゃなくてしんどく……でもなくて、大変。大変だったけれど、ああ、うん」
 もう少しだ。
 合流予定までもあと少し。
 B班がどれ程の成果を上げたかはまだわからないが、100人弱の約半分をこちらで寝かし付けたのだから、鎮圧完了のゴールは見えている。
 だから、
「まって何か聞こえる」
 ヒィロの制止に、三人は自然と身を固めた。
 シン……とした空気に、しかし音は聞こえない。つまり、超聴力で無ければ気づけないだけの距離があると言うことだ。
 まだ先手はこちらにある。
 そう思い、四人は身を隠しながら進んでいく。
「……相手も息を潜めて動いてるのかな。音が、途切れ途切れで小さいよ」
「まさか、私達の存在に気付かれている、のでしょうか……?」
 影から影へ。
 大通りを避けながら路地を進み、首を傾げたディアナの言葉に、ヘルモルトは一つ唸る。
「ヒィロ様がかろうじてわかる気配を、ただの町人が、ですか? そういう人が居ないとは思いませんが、この町に居るのか、と考えると……」
 第一怒りで我を忘れているにしては、身を潜ませるのはやけに理性的だ。
 ではこの相手は一体、なぜ……。
「あ、なるほど、確かにそうですね。この町でそういうことが出来るとすれば、私達イレギュラーズ位ですものね。ふふ、早とちりでした」
 くすっと柔らかなディアナの言葉に、三人は顔を見合わせ眉を歪ませる。
 その様子に、なにか変な事を言っただろうかと、ディアナは顔を見回して、
「何でもない。とりあえず、合流ポイント、行こっか」
 促されるままに進んだ。


「結論だけを言おう。100だ」
 警戒して、慎重に進み、感じて居た気配と出くわしたのは合流地点だった。
「なんてことはないです」
 要はお互いの存在を警戒しあっていたのだ。
 A班が寝かせた42人に、B班が路地裏と合流地点までに倒した数が60人。
 約100人の人口で、町を隅から隅まで渡ったのだから、それは信頼できる数字と言っていいだろう。
「つまり、もう残党狩りはありません、か」
「残党って」
 これで町の人達は、怒りに囚われていた時からは落ち着いて、理性を取り戻したはずだ。
 後はその成果を確かめるだけだが、その前に。
「無事か、セレスティア」
「はい。ハロルド様の方こそ──お怪我をなされていますね?」
 消耗した体のケアが先だろう。
 多くの相手を一度に相手取ったハロルドの肌には多量の傷があり、ディアナはその患部に手を当てて治癒の術式を施行する。
「ねえねえ美咲さん、町全体を怒りで染めちゃうのもスゴいけどさ、それを全員、一人も殺さないで止めちゃうなんてボクたちもスゴくないかな!」
 それから、気疲れに深い溜め息を吐く美咲へと、ヒィロは興奮した様子で近寄る。
 頑張った事を誇るようなその姿に美咲は微笑んで、そうね、と一つ言葉を挟んでから。
「前線を支え切ってくれたスゴい子には、後でご褒美、ね?」
 和やかな空気で、終わりの安心感を得た。
 ただソアは、懸念が残っている。
 自分が切り裂いた人達の事だ。
 命に支障が出る事は無い筈だとは思うが、しかし、手当てもしていないのは気にかかる。
「わたくしが治療に参りましょうかー?」
「え? あ、うん!」
 だから、その様子に気づいたユゥリアリアの提案に、きょとんとしてから、ソアは笑みを浮かべて頷いて、先導するように小走りに駆け出した。
「……うん、悪くない、悪くないですねこの終わりっ。腹を割って話合い殴り合い分かり合う……意外とギャグか笑い話になるのでは?」
「流石に無理がありますねヨハネ様。流石に無理です」
「二回言われましたねっ!?」
 そしてこの事件は、一先ず、ここで終息を見せたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 参加ありがとうございました。
 言葉ベタで上手いあとがきを思い付きませんで簡単にはなってしまいますが。
 皆さんのリプレイを書かせていただけて光栄でした、また機会があればよろしくお願いします。

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