シナリオ詳細
イリスアゲートナイフと平和的な強盗団
オープニング
●イリスアゲートナイフ
薄暗いバーの喧噪のずっと奥。個室席に設けられたテーブルには皮のアタッシュケースがひとつ、開かれた状態で置かれていた。
二つのスロットが開けられたケースには、一本だけナイフが納められている。
刃渡り30センチ全長37センチ。
刀身はうっすらと透き通り波紋として美しい虹模様がはしっており、柄は深色の月桂樹でできているように見えた。
もしあなたに鉱石の知識や鍛冶の知識、ないしは骨董品の知識があったならこれがイリスアゲートナイフであることがわかるだろう。
イリスアゲート。和名でいう虹瑪瑙はその名の通り虹の女神(イリス)に由来する鉱石でこの石を通して美しい虹を見ることが出来、高い魔力を持つとも言われた。
「俺の親父が所有していたナイフさ。値打ちモンなのは確かでね、借金をこしらえた時に片方を担保にもっていかれちまったのさ」
そう語るのはケースとナイフの持ち主であり、今回の依頼人である。
「このナイフは持ち主に美しい夢を見せるっていわれててな、親父はたいそう大事にしてたんだが……片方無いままじゃ親父もナイフも不憫でよ。
そんな親父も去年ぽっくり逝っちまった。
その時ぁ必死だったが、借金も返し終えて暮らしも整って……今になって思うんだよ。
ナイフを二つ一緒に、親父の仏壇に供えてやりてえってさ」
話が見えてきた。
が、重要なのはそのイリスアゲートナイフがどこにあるか。
そして、どうやって手に入れるのか。
「でだ――相談なんだが、貴族から『強盗』してくれねえかな」
●L&S株式会社
練達を出身とする要注意団体『L&S株式会社』は異常存在を幻想や海洋の貴族といった富裕層の好事家に販売する団体である。
異常なものを専門とした商人、とでも言おうか。
L&S株式会社のスタッフはある貴族と取引をし、この『イリスアゲートナイフ』を引き渡す予定になっている。
勿論、商談を取り付けるどことか買い取ることすら一般の人間には不可能だ。
なのでイレギュラーズたちは現場に乱入し、強盗として彼らの金品を強奪するのだ。その中に『平和的なナイフ』も混ざるという筋書きである。
貴族の名はグリード・R・トレイン。トレイン家の家長であり幻想の貴族。
取引は彼の屋敷、その応接室で行なわれ、そのタイミングで強盗に入ることになるだろう。
目的はナイフなので死傷者含む貴族への被害は問われていないが、『逃げやすさ』という観点から見れば、与える損害は少ないほどいいだろう。
強盗である以上考えておくべき要素がいくつかある。
まず襲撃するための武力。これは依頼参加メンバーがそろっている時点で充分に満たされていると考えていいだろう。
そして逃走の足。馬車や軍用馬(ないしはそれに相当する乗り物)があればベストだが、なければ一般的な乗用馬を借りてくることになるだろう。
最後に『逃げやすさ』。先程も述べたとおり、例えばグリード氏が死亡すればその犯人を衛兵たちは血眼になって追いかけるだろう。家族や従業員への損害も、それが重ければ重いほど彼らは必死になるはずだ。
なので『強盗だと思われるライン』から下がることなく、かつ死傷者の数や財産に対する損害額を加減する必要があるのだ。
総合して、『スマートな強盗』が求められている。
「ローレットはできる奴らだって聞いてるぜ。そんなあんたらにしか頼めねえ。
正直結構な非合法だが、どうか親父のナイフを取り戻してくれ」
- イリスアゲートナイフと平和的な強盗団完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常(悪)
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年08月08日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ワルモノたちの夜
アタッシュケースを閉じ金色の鍵をかけると、依頼人の男は席をたった。
「あとはよろしく頼むぜ。盗賊に忍者に……あー、イレギュラーズ」
一人一人指さそうとして途中で迷ったのか、依頼人はぐるりと指で円を描いて『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)たちをまとめて呼ぶと、ポケットから金貨をとりだして入れ違いで個室に入ってきた店員にパスした。
『この場はおごりだ』というサインである。
運ばれてきたコーラとハンバーガーを前に、夕子は両肘をついてほあーとため息をついた。
「綺麗なナイフだったなー。欲しいなー」
「ま、気持ちは分かる……」
『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は聖樹の琥珀から削り出したというストーンナイフを取り出し、その表面を爪でついっと撫でた。
「奴の親父さん、いい趣味してるぜ。ただの強盗仕事だったら受けねえところだったが、アレのためならやってもいいね。
おっ、そうだ。依頼人の手に渡ったら、あとで盗みに入ってみるか?」
「イーネー!」
「いーねーじゃねえ、やめろやめろ」
届いたスパゲッティナポリタンでフォークを巻いていた『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)が苦々しく笑った。
「で、話をまとめるとだ……ナイフが目的だとわからんように奪い取れってことか。取引のあとに裏口からこっそり入っていただくってテは使えねえのか?」
「これだけのメンバーを集めてわざわざ強盗っていうくらいだから……ダメなんでしょうねえ、えひ……」
『こそどろ』エマ(p3p000257)はハンバーグとベイクドポテトの鉄板にナイフを通し、断面に醤油ベースのソースをちまちまと注ぎかけていた。
「簡単な鍵や壁は私たちにとってセキュリティとすら呼べませんからねえ。そりゃあお金を持ってるひとはかけますよ、そこに」
本当にどこへでも盗みに入れるなら、今頃王家は百回くらい滅亡していることだろう。三大貴族といわずとも、それなりの地位にある人間の屋敷は近づくこと事態が難しい。
「それで、外部から人を受け入れてる時を狙っての強盗なのね。
なんだか最近、しょっちゅう貴族から盗みを働いてるきがするわ……」
やれやれね、と言いながらパフェの頂点にのっていたチェリーをつまみあげる『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。
「いいじゃないか。世のため人のため悪を働く――義賊の仕事だよ。スリルも味わえて楽しそうだ」
『盗兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)はコーヒーを片手に人差し指の上でトランプカードをくるくると回転させていた。回転するたびに数字が変化しているように見える。
「確かにな。俺も奪って金にするという話なら断わったが、親父さんの仏壇に供えたいってところが気に入った。粋(イキ)な心意気というやつだ」
フィッシュフライのクラブサンドを掴み、豪快に噛み千切る『海侠』ジョージ・キングマン(p3p007332)。
「貴族が鞄いっぱいの金貨と引き替えに買い取るような品物よりも亡き父の遺志。なかなかできることじゃあない」
「まあ、なにはともあれ……」
『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)はざる蕎麦をひとたま箸で掴んで冷たいつゆの椀にひたすと一息にすすり上げた。
「……私は走狗で、ねこなのです。
ひとの摂理をも時には踏みこし、成すべきことを、成すのです」
彼らはローレット・イレギュラーズ。
時に悪を働けど、至はひとつ。世界の救済。
八人の『悪党』は、同時にマスクを被った。
●平和的な強盗団
ワイヤーフックが柱にかかり、振り子運動をかけて高く跳躍するエマ。宙返りして屋根に着地すると、こっそりと舗装道路の先を覗き見る。
雨樋の柱をするするとよじ登ったキドーと助走をつけた登攀によって転がるように屋根へ至るサンディ。一足遅れてロープを使ってよじ登ってきた夕子が顔を出すと、王都の通行人に扮して前を通るリェーヴルと一瞬のアイコンタクトを交わした。
振り返るリェーヴル。
目的のグリード・R・トレイン屋敷に馬車がとまり、門番たちが何かを問うよりも早く馬車の中から短刀が飛び出し、門番の一人に突き刺さる。
問答無用とでも言うように後から飛び出した秋奈が馬車に近づいた門番を蹴りつけていく。
「おらー! もってんだろー! いただきにきたぜぇー!」
「スクランブルだ! 動ける奴全員出ろ!」
秋奈は刀を抜き、剣で斬りかかってくる門番の攻撃を打ち弾く。
「まあ、運がなかったということで」
クーアはネコ型手榴弾のピンを抜くと、馬車の中から門めがけて放り投げた。
飛び出してきた交代要員の門番たちが思わず盾を翳す。
直後、激しい光が散った。
「フラッシュグレネードか、舐めやがって!」
目を細め、クーアめがけて襲いかかってくる門番たち。
クーアは馬車の反対側から転がるように離脱すると素早く距離を取った。
一部の門番たちがクーアを追って走り出す。
残された数人と秋奈。そこへ、それまで御者を務めていたジョージが助走をつけて飛び込んでいく。
「邪魔して悪いが、こちらも仕事でね」
「な――」
見上げた門番の顔面めがけ、屈強な腕によるパンチを打ち込んだ。
まるでハンマーで横打ちされたかのごとく転倒する門番。
ジョージは返す刀ならぬ返す拳で背後の門番に裏拳を入れ、そのあまりの衝撃に門番は吹き飛んでいく。
吹き飛ぶ門番からすれ違いざま、腰からさげた鍵を奪い取る秋奈。
「へいパス!」
「さんきゅう!」
屋根から飛び降り、秋奈たちとの戦闘にかかりっきりになっていた門番たちの横をすり抜けていくエマ。
投げられた鍵をキャッチすると、投げナイフの要領で発射。大きな両開きの扉に突き刺さった鍵が、魔術認証を行なって扉のロックを解除する。
サンディとキドーは同時にニッと笑い、跳び蹴りによって扉を強引に開いた。
「何だ貴様!」
「見たら分かんだろ! 強盗だ!」
サンディが火炎瓶を投げつけると、SPたちが飛び出してきて素早く魔術防壁を展開した。
日頃から命を狙われがちな貴族なのだろうか。門番と比べてSPたちの総合戦力はずっと高いようだ。
が、魔術師が次の攻撃に至るよりも早く、瞬間移動のように隣に現われたリェーヴルが魔術師の肩をポンと叩いた。
振り向きざまに指をパチンと鳴らすリェーヴル。花のような爆発がおき、魔術師は吹き飛ばされて壁に叩き付けられる。
その間を回転しながら飛んでいくトランプカード。
部屋から飛び出してきた兵士の眼前でカードが壁に突き刺さり、兵士はぴたりと足を止めた。
「余計な真似をすると……次のカードは喉笛に刺さるぜ?」
「ふざけるな!」
「ふざけて強盗してるように見えるか? おい、金庫を探せ! 俺がこじ開ける!」
「こじ開ける必要なんてありませんよ。えひひ……」
エマは鍵の突いた小箱へ魔法の針金をつっこんで一瞬で解錠すると、中から宝石を取りだしてポケットに詰め込んだ。
「――」
黒衣の影が飛ぶ。壁と天井をゴムボールのようにはね、エマへと襲いかかる影。
鋭く走った斬撃を察知して、エマはその場から瞬発的に飛び退いた。
切られたのはポケットのみ。宝石が床にまき散らかされ、エマは焦ったような顔をして相手を見た。
忍者刀を逆手に構えた黒衣に覆面を被った兵士だ。性別もわからない。エマは腰の後ろから素早く短刀を抜いて逆手のまま繰り出した。超高速で突っ込んで来た相手の刀と激突し、火花ががりがりと散っていく。
と、その一方。
取引現場のドアを夕子が蹴破った。
魔方陣を展開して構える魔術師。拳銃を抜く黒服の二人組。
ソファに腰掛けていたグリードとL&S株式会社の男はちらりと扉の方を見て動きを止める。
「なんて時に入って来やが――」
「やっほー。あーしと遊んでいかない? アブナい遊び」
魔術を行使しようとした魔術師よりも早く、夕子が親指で打ち放ったコインが魔術師の手首へ命中した。狙いがそれ、壁に突き刺さる氷の槍。
その隙に飛びかかった夕子が魔術師のネクタイを掴み壁まで無理矢理押しつけ、顎をつまんであげさせる。
「んー。こうしてみるとそれなりにイケメンじゃん? あーし好みだわ」
「バカヤロウなにやってんだ! いまは金だろ金!」
飛び込んできたキドーがナイフを突きつけ、グリードの前に置かれていたアタッシュケースごと金貨を奪い取った。
「キヒヒ、こいつは頂いていくぜ。まあそう怒るな、競ロバで倍にして返してやっからよ!」
軽口を叩きつつ、懐から取り出したゴブリンヘッド型手榴弾を投擲。
自分の商品にさえ手を出されなければいいというスタンスだったらしいL&S株式会社の護衛たちにぶつけると、夕子がキラリと目を光らせた。
「ああん。何このナイフ!? 超ピカピカしてる! あーしにぴったり!」
いただき! といってナイフを掴み取り、部屋から飛び出していく夕子。
「逃がしてはいけません。殺しなさい」
指で催促するL&S株式会社の男。ビジネススーツのネクタイをきゅっと締め直すと、深く息をついた。
立ち上がり、服に付いたホコリを払う。
「グリードさん。どうやら取引は中止のようです。我々は後日改めて商品の奪還を試みますが、まだ購入の意思があるなら代金の用意を」
「待て! 今すぐ俺の金とナイフを取り返さないというのか!?」
額に血管を浮かべて立ち上がるグリードに、護衛の黒服たちが拳銃を向けた。
その間に、L&S株式会社の商人は悠々と部屋を出て行く。
「別の商品をご希望の場合は見積もりをお出しします。では失礼」
●スマートなヴィランとは
『俺の金を取り返せ!』グリードはそう叫び、詰め所で待機していた兵士を総動員して逃げる馬車を追いかけさせた。
「やはり、タダでは逃がしてくれないか」
馬車の手綱を握り、馬を走らせるジョージ。
より身軽な軍馬に跨がった兵士たちが馬車の左右へと追いつき、兵士は勢いよく御者席へと飛び乗ってきた。
繰り出される剣を、気合いを纏った腕でガード。
ジョージは手綱を握ったまま兵士の顔面を三度殴ると、襟首を掴んで反対側へと放り投げた。
「「コイン、宝石、そしてピカピカナイフ! もー、これだからこの仕事は……ってきゃあ!」
馬車の中へと転がり込んでくる兵士。
夕子の持っていたナイフに手を伸ばそうとしたので、夕子は反射的にクナイを兵士の首へと突き立てた。
「あ、やっちゃった?」
顔を覗き込む……と、兵士がぎろりとにらんで彼女の首に手を伸ばす。
「でーあーふたーでー」
と、そのとき。馬車の横から伸びた手が兵士の襟首を掴んで外へと引っこ抜いた。
秋奈の手である。
強引に兵士を引きずり出すとそのままぽいっと投げ捨てた。
「続々きてるわよ。どうする? もっとカーチェイスする?」
私なら行けるけど? といって秋奈は刀の柄に手をかけてみせた。
その左右を併走しはじめるエマのパカダクラとサンディのHMKLB-PM。
「いや、まともに相手してやるほどの必死さじゃあない」
「ひひ……ですねえ。ここはコレでいきましょう」
サンディは火炎瓶を、エマは炸裂ナイフをそれぞれ手に取り、追って合流してきたリヴェールの馬車へと合図を送った。
「おもしれえ、カーチェイスってのはこうオチなくちゃあな」
ゴブリン爆弾の導火線に火をつけるキドー。
「そろそろ火を放ちたいと思っていたところなのです」
同じくネコ手榴弾のピンを抜くクーア。
「「せーの!」」
宙を舞う複数の爆弾。
馬を走らせ今まさに追いつこうとしていた兵士たちは、その数にハッと顔をあげ――直後、大爆発によって次々と落馬していった。
「くそっ! だいぶやられたぞ!」
「逃がすな! 金だけでも奪い返せ!」
爆煙を抜けて走る複数の軍馬。
「うええ、あれで倒しきれねえのかよ」
「どおりで貴族の財産と権力がひっくりかえらないわけですね」
苦々しい顔をするサンディに、クーアが『こうなりゃアレしかないでしょう』という顔でキドーをつついた。
馬上から眉を寄せて声を上げるエマ。
「やっぱりやらなきゃだめですかねえ?」
「目指すはスマートな強盗、だろ?」
キドーはパチンとアタッシュケースのロックを外すと、転んだフリをして馬車から取り落とした。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!! 俺の金があああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
わざとらしく馬車から手を伸ばし、クーアに羽交い締めにされるキドー。
地面でバウンドし開いたケースからは大量の金貨が飛び散り、それを目撃した市民たちは我先にと飛びついて金貨を拾い始めた。
「おい! お前ら! 金貨を拾うな! 拾うなと言ってるだろう!」
そこへ割って入る兵士たち。
走り去る馬車の中では、演技をやめたキドーがふうと息をついて座席に腰を下ろした。
馬に鞭をうち走らせるリェーヴル。
リェーヴルは御者席に立ち上がると、被っていたシルクハットを脱いで裏返す。するとどうだろうか。ハットから屋敷からちょろまかしてきたコインや宝石が次々に飛び出し、道ばたにばらまかれていくではないか。
「それ! 受け取りたまえ! 大盤振る舞いだ! こんなショー、エンターテイナー冥利に尽きるじゃあないか?」
愉快そうに笑うリェーヴル。その一方で、兵士たちは既に追跡をやめていた。
「思ったより暴れられなかったわね」
秋奈が物足りなさそうな顔で刀を納める。
リヴェールは肩をすくめ『仕方ないさ』と返した。
「兵士の目的は奪われたものの奪還。それを道ばたにばらまいた以上、それを回収するのが彼らの仕事さ。ナイフはあの段階ではまだ彼らのものじゃあないからね。僕らにできるなかで最もスマートな解決法だったと思うよ。それに……」
強盗の手口の中には、道中で金をばらまいて市民に拾わせ追っ手を妨害するというものがある。数々語られる強盗劇の中でも最も派手で愉快なのは、やっぱりこの手口だろう。
「義賊の盗みはこうでないとね」
リェーヴルは本当に愉快そうに笑った。
●名も無き酒場にて
後日談。もとい、後始末の話。
アタッシュケースにあいたスロットにイリスアゲートナイフを置き、二つそろったケースをパタンと閉じる依頼人の男。
「感謝するぜ、ローレット。これで親父も浮かばれる。
噂じゃトレイン家は相当キレてるって話らしいが、美術品を買ってる余裕もないってんでナイフのことは当分棚上げらしい。
今頃あちこちの闇市を流れてると思うだろうからな。気にかかった時には、もう俺への疑いもかからないだろうぜ」
男はケースを手に取ると、それをじっと見ていたキドーと夕子にピッと指を突きつけた。
「おい、盗むなよ?」
「いやいやいや」
「まさかまさか」
「えひひひひひ」
つられて引きつり笑いをうかべるエマ。
横で見ていたサンディが『どうする?』という顔でジョージを見た。
腕組みしたまま肩をすくめ、立ち去ろうとする依頼人へ振り返る。
「心配するな。もし盗まれたなら、俺たちに依頼すればいい。必ず取り返してみせる」
「その時はもっとバチバチに戦える奴たのむわね?」
タピオカドリンクをちゅるちゅるしていた秋奈が片手を翳して小さく手を振った。
リェーヴルはといえば、一仕事終えたという顔で椅子に座ってくつろいでいる。
依頼人の立ち去った後のテーブルには報酬のつまったコイン袋。
それを引き寄せてひもを解き、クーアは結構な額のコインを数えた。
「しかして、世はなべてことも無し……なのです」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
GMコメント
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
●おさらい
皆さんは強盗となり、貴族の屋敷に押し入って強盗を行ないます。
このとき目的の品である『イリスアゲートナイフ』を一緒に強奪し、持ち帰ることが成功条件となっています。
強盗に見せかける理由は元の持ち主である依頼人に疑いをかけないためです。
まずはざっくりとした流れをご説明しましょう。
●1.前段階
貴族グリード氏は自分の屋敷でL&S株式会社のスタッフと商談をまとめ、『平和的なナイフ』の引き渡しを行なっています。
普段から襲撃や暗殺を警戒しているのか屋敷の警備は厳重で、衛兵たちも結構な数が常駐しています。
衛兵ひとりひとりの戦闘力も割と高めで、それなりに鍛えたイレギュラーズも苦戦する衛兵が何人かいるでしょう。
ですが彼ら衛兵はけっこう離れた詰め所に常駐しており、屋敷に常駐しているのは数人です。ここが狙い目ポイントとなります。
●2.襲撃
一部のメンバーが衛兵と戦い、その間に残るメンバーが屋敷へと突入。
金品を強奪する一般的な強盗に見せかけつつ、取引中の『イリスアゲートナイフ』を奪い取りましょう。
このとき戦闘が必要になる場所は
【門番】:屋敷に不審者を入らせまいとする衛兵たち。エネミーサーチや感情探知を持っているため騙すのはほぼ不可能。
【応接室】:取引現場。グリード氏とL&S職員それぞれに護衛がついておりこれと戦う必要がある。
の二箇所です。
前情報ではどのくらいの実力かわからないので、単純に強盗役がうまそう(似合いそう)かどうかでチーム分けを決めてもいいでしょう。
●3.逃走
用意しておいた馬をつかって逃走します。
このとき詰め所から駆けつけた衛兵たちが必死に追いかけてきます。
襲撃段階においてグリード氏に与えた損害に応じて彼らの必死さがかわります。
※馬に乗ったまま戦闘する場合各ダイス判定にペナルティがかかります。これは『軍用馬』『騎乗』『騎乗戦闘』といった要素で軽減できます。
※『馬車』を用いる場合使用者がアクセサリーアイテムとして装備している必要があり、自動的に馬一頭が引いているものとします。ただし馬への搭乗や貸し借り、普通やらないような応用等は不可とし、馬車に同乗できる人数は御者含めて3人までとします。
※今回に限っては「俺が馬だ」「バイクは俺だ」といった自分が乗り物系のウォーカーは自動で『軍用馬』を使用したのと同じペナルティ軽減がおこるものとし、味方を騎乗させられるものとします。また細かい説明ははぶきますが、移動判定が省略されたりします。(おおむね不自然なことはスルーし、できそうなことはできる仕様です)
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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