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シナリオ詳細

ナハトラーヴェに鈴をもて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ナハトラーヴェと巫女
 カラン――カロン――と等間隔にウッドベルが鳴らされる。
 手からつり下げるタイプの乾いた球状の実には硬い種が残り、これを振ることで清らかな音が鳴るとして『ナハトラーヴェの鈴』はこの地域で古くから祭事に用いられてきた。
 ナハトラーヴェというのは深緑外縁部にたつ霊樹のひとつをさし、太い筒状の樹幹の中に通った空洞がそのままハーモニアの集落として利用されていた。
「見て。鈴を持った巫女を先頭にして、白い衣を纏った女たちが列をつくって同じように鈴を鳴らして歩いて行くの」
 プルー・ビビットカラー(p3n000004)に言われるままに見上げると、直径100メートルほどの筒状空間を螺旋状になぞるように作られた階段を、白い衣の女たちがゆっくりと上っていくのがわかるだろう。
 上から吊るすようにして固定されたドングリ状の住居群には灯虫(あかりむし)が淡い緑色の光がともり、それぞれの生活の営みを思わせる。
 螺旋階段を上っていった巫女たちは住居群の中央にさがった大きな建物へと入っていく。
「あの場所は『ナハトラーヴェの心』と言われていて、集落の住人しか……それも成人した女性しか入ることが許されない場所よ。
 あの場所で定期的に祭事を行なうことで彼女たちの身や心は清められ、毎日を健康に過ごせるといわれているわ」
 実際、ナハトラーヴェという霊樹には心の平静を保つ力が備わっており、鈴もまたその力の一端が込められていた。
 ナハトラーヴェの民たちはみな清らかに、そして静かに生を全うすることをよしとし、殆どの者が生涯をナハトラーヴェの中で過ごすという。
 不便は無いのかと聞いてみると、プルーは苦笑して住居群を見上げた。
「ナハトラーヴェは栄養の豊かな実を毎日沢山幹の内側につけるの。彼らはそれを食べ、木本来の力で組み上がった水を飲み、過ごしているわ。そうした恩恵にあずかる代わりに、彼らはナハトラーヴェが病気にならないように毎日ケアをし続けたり栄養の偏りが起きないように状態を整えたりといったことを生業としているの。そんなせいで人数は少ないのだけど、古くから脈々と受け継がれてきた集落と文化なのよ」

 さて、このようにナハトラーヴェ霊樹へやってきたのはなにも観光のためではない。
 霊樹に住まう巫女からローレットが依頼を受けたからである。
 その依頼内容というのは……。
「昨今、幻想から流れてきたという荒くれた方々がこの霊樹を奪おうとたびたび襲撃を行なってきました。
 そのたびに我々は暴力の停止と話し合いによる解決を求めたのですが……」
 目を瞑って語る巫女の言葉を、プルーが途中で代行した。
「侵略者の要求はいつも横暴なものよ。霊樹を明け渡し奴隷になることを要求してきたわ。勿論受け入れられないのを承知でね」
「前回の接触時に断わったところ、次にこの集落を襲撃して奪うことを宣告して行きました。
 我々は先祖から代々受け継いできたこの場所を喪うことを……ましてああした乱暴な方々にナハトラーヴェが侵されてしまうことを深く悲しみました。
 ですがそんなおり、ラサの傭兵さまより皆様の話を聞いたのです」
「ここまで聞けば仕事は分かるわよね。襲撃を仕掛けてくるっていう連中を撃退するのが、私たちの仕事よ」

●森賊撃退作戦
 大樹ファルカウは勿論のこと深緑のあちこちにある霊樹は多くの人々がいつまでも暮らしていけるほど豊かな資源である。
 これを奪い取り金儲けをしたり乗っ取ったりという行ないをするのが森の賊……つまり森賊である。
 今回の敵もそうした森賊集団で、かつては幻想にてハーモニアの隠れ里を襲撃しては略奪や破壊を繰り返していた。
「森賊の頭目。名前は『クリフォト・ジャン・カイメス』……幻想で略奪行為を繰り返し指名手配になっていた男とその部下たちよ」
 クリフォトは剣と盾による格闘剣術の使い手で、部下たちもボウガンや魔術、格闘術などをそれなりの練度で行なう腕自慢の男たちである。
「皆にはナハトラーヴェを彼らクリフォトたちから守ってもらうことになるけど……その手順は皆の能力傾向や作戦に応じて決めてもらうことになるわ」
 最も工夫がいらないのはナハトラーヴェのすぐそばで待機し、やってきたところに束になって襲いかかるというものである。
 しかしナハトラーヴェが危険にさらされるリスクを負うことになり、楽ではあるが依頼人たちが危険な作戦と言えるだろう。
 その逆で依頼人たちの安全を守るなら、ナハトラーヴェの周囲に広がるうっそうとした森に展開し、ばらばらに移動して襲撃を警戒しているであろうクリフォト森賊団を各個に撃破するというものだ。
 このためには視界が通りづらい森の中で数百メートル離れた敵を見つけ出す能力と工夫が必要になるだろう。
「やり方は任せるわ。必ず、ナハトラーヴェを守って頂戴ね」

GMコメント

 森の中での迎撃作戦。
 こちらから探して撃滅するか、待ち構えて束になってかかるか。
 まずはどちらかを選択するところから始まることでしょう。

●探索と待ち構えについて
 森賊たちはナハトラーヴェの位置をなんとなくで覚えていますが、森の中を正確に進むほどこの土地に慣れているわけではありません。
 なので一度2人4組程度のメンバーに分かれて捜索し、場所をはっきりと確認してから襲撃するという方法をとっているようです。
 ということは逆に、バラバラに森の中を捜索している連中を各個に見つけ出して撃滅するという作戦がとれるはずです。
 この場合、こちらも3~4組のチームに分かれてそれぞれ捜索範囲を広げる必要があります。というのも、1組と戦闘中に別の組がナハトラーヴェを発見してしまうと色々アウトだからです。
 ナハトラーヴェを中心に、離れすぎずしかし近づきすぎない程度の距離を手分けして捜索していきましょう。

 森賊たちはそれなりの戦闘力を持っているという話ですが、油断せずしっかりと準備し、適切に対処すれば(ある程度の損害をうけはするものの)戦いきることが出来るはずです。

●異文化交流
 もしナハトラーヴェをしっかりと守り切ることができたなら、ナハトラーヴェの民が感謝と歓迎を示す宴を開いてくれることでしょう。
 素朴なナハトラーヴェの民と、普段ふれないような料理や文化を楽しむのもいいかもしれません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • ナハトラーヴェに鈴をもて完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月31日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アト・サイン(p3p001394)
観光客
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
鞍馬 征斗(p3p006903)
天京の志士
彼岸会 空観(p3p007169)

リプレイ

●森賊とナハトラーヴェの大樹
 あぐらをかいて刀の点検をする『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)。
 彼らの様子を、ナハトラーヴェに暮らすハーモニアたちは珍しそうに眺めていた。ディープシーが、もしくはカエル頭の人間が珍しいのだろうか。
「こうして小さな世界にとどまるというのも一つの生き方でござろう。それをならず者風情に侵されるのは何としても防ぎたいところでござるな」
 グローバルは悪いことではないが、逆にミニマムに暮らすことも悪くない。どうにしろ、どこに迷惑をかけるでなく平和に暮らしている人々を侵害することは明らかな悪といえた。
「ろくに抵抗できない相手を狙って酷い事をするなんて許しておけないよ!
 皆で森賊をやってけてナハトラーヴェの皆を守らなきゃね!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は槍をトンと叩いて戦いの気合いを込めた。
 一方。意気込みも強い彼女たちとは別に、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)はハナトラーヴェの前に集まっていた。
「幻想で指名手配になったあとは他所様の国で好き放題?
 器が小さいこと、そんなことだから簡単に落ちぶれるのよ」
 森賊たちの資料をくしゃりと握りつぶすルーキス。
 そのそばでは、『観光客』アト・サイン(p3p001394)が木から木へロープをわたしてナリコトラップを作っていた。
「そっちを引っ張って」
「こうですかー?」
 その手伝いをしている『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)。
 ぴんとはられたロープには木でできた簡単な仕掛けが施され、誰かが腰の高さほどのロープに触れたりこれを切ったりすれば巡らせた板がぶつかりあって音を鳴らすというものである。
「ウッドベルを使おうと思ったけど、あれは音が小さすぎるからね。僕が作ったもののほうがトラップには向いてるよ、やっぱり」
「けど、これでナハトラーヴェを全部覆うのは無理じゃないですか? 内側の空洞だけでも100メートルあるからえーっと……確実に300メートル以上はありますよ?」
「いいんだよ。通りそうな所にだけ設置できればね。第一……ここまで接近されたならもうレッドシグナルだ。今回僕らは『そうならないように』動かなきゃいけない」
「ま、そういうことだね」
 ルーキスが黒い銃のリボルバー弾倉に特殊な弾を込めていた。
「今回の作戦はマンハント。ただし標的がこのポイントまで達してしまったら私たちの作戦は崩れたことになる。依頼目的が達成不能になるほどじゃないけど、ある意味では負けだよね」
 そんな彼らとは少し離れた場所で、小動物たちに囲まれた『正なる騎士を目指して』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)がきをつけの姿勢で立っていた。
「伝統ある集落と文化を、身勝手に破壊しようとする賊。見過ごす訳にはいかない……だよね!」
「一方的な言い分での略奪はどの世界でも許されるもんじゃないし……ね」
 脇差の表面をそっと撫で、『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)は目を瞑った。
 世は弱肉強食ではあるが、だからこそ善なる思想を力によって押し通すことができる。
 そしてその思想に共感するか否かにかかわらず、ローレットという共同体に属し依頼を引き受けた以上は……。
「まぁ、出来ることをしよう」
「準備は整いましたか」
 彼岸会 無量(p3p007169)が錫杖をついて現われた。
 ナハトラーヴェの一族から儀式に用いる一般的な装束を借り、それを身につけてきたようだ。
 こくりと頷く征斗。
「好い場所なんだけどね……どうしてこう、無粋な輩が多いのやら……」
「それを排除するのが今回の仕事。さあ、賊狩りを始めましょうか」

●マンハント
 慎重に森の中を進むルーキス。
 フレンドリーファイアをさけるべく両手持ちした拳銃を斜め下に向け、意識を集中させる。
 彼女の意識の先ではリスが木々の間を走り、幹を駆け上がり、時に木の枝から枝へと飛び移りながら大きな動物の接近を警戒していた。こうした森林の中では鳥やネコよりこうしたリスや鼠といった動物のほうが探索に向いているものだ。
 一方では彼女とペアをくんだアトがリボルバー拳銃を上に向け、背後を警戒しながら進んでいる。
「ナハトラーヴェの高所に僕の『メルカート』を配置してのろしを上げさせるのはどうかな。仲間の帰還と森賊の接近を知らせるんだよ」
「どうかな。こんな森の中じゃのろしの視認性が悪すぎるし、あの大樹の高さから僕らの見分けってつくのかな? あの知能レベルで」
「……んー、どっちも微妙かも。微妙って言うか、無理かも?」
 もっというとのろしの色の使い分けもどこかでうっかり間違えそうな気がした。
「あと木に悪そうだよね」
「かな? まあいいや、それが分からなくっても酷いことにはならないし」
 アトは途中にしかけてきたスネアトラップのことを思った。
 木の枝をつかった古典的なトラップではあるが、これにかかってくれれば足止めになる。獣と違ってすぐに抜けられそうではあるが。(逆にアトが同じトラップにひかかかっても一秒足らずで抜けられる自信があるし、そのトラップで死ぬとは思えない)
「要は、この探索で森賊を見つけ出して倒せばいいんでしょ?」
「そういうこと……あ」
 ルーキスが銃の狙いを木の上へと向けた。
「3時方向に発見。行くよ」
「わかった……!」
 走り出すルーキスを追ってアトも一緒に走り出した。
 彼らの足音に気づいたのだろう。枝から枝へと飛び移っていた森賊の獣種が枝の上にとまり、こちらにボウガンを発射してきた。
「つっ……!」
 矢をうけ、銃での反撃を開始するアト。
 飛び退いてかわされたところに、すかさずアトは投げナイフを放った。
 今度のナイフは獣種の腕に刺さり木から転落。
 彼とグループを組んでいた別の森賊が木の陰から現われて拳銃を撃ってきた。
「銃撃戦は得意なんだ」
 ルーキスは木の陰に隠れて銃撃をやり過ごすと、身を出して『ブラックドッグ』を放った。銃弾が妖精にかわり、同じく木の裏に入ろうとした森賊の腕を貫いていく。
「さてと、ここからどう組み立てたものかな」

 ルーキスたちの銃撃戦は下呂左衛門の鋭い聴覚にも聞こえていた。
「あの場所で戦いがあったということは……別のチームがこの辺を移動している可能性があるでござるな」
「かもね」
 焔は宙に手を翳して精霊の濃度を確かめていた。
 ナハトラーヴェはそれ自体が特別な精霊のようなもので、焔の疎通能力でも対話ができそうなくらいではあったがそれはあくまで例外的なもの。一般的に存在する下位精霊の知能はその辺のタンポポくらいしかないのが常識である。
「精霊は沢山いたでござるか? なにか聞けたり……」
「沢山いるよ。でも普通の精霊だからなあ。意志疎通はできるけど、人と草の区別もつかないんじゃないかな」
 また人間が観測できないくらい遠くのことを精霊が急に関知できるとも、ちょっと思えない。
「よく知らないものが通ったことくらいは分かるはずだから。入れ違いになってたら分かるとおもう。そうなったら言うね」
「助かるでござる。……むっ、この臭いは」
 下呂左衛門はサッとかがんで鼻をならすと、焔に足を止めるようにサインをだした。
「風上から人の臭い……一人か二人か……近づいてくるでござる」
「早速だね」
 下呂左衛門と焔はそれぞれ木の幹に身を隠し、じっと息を潜めた。
 歩いてきたのはカオスシードの二人組。右手が義手になった魔術師風の男と、剣をもった盗賊上がりっぽい男である。
 下呂左衛門が『拙者が後から出て奇襲するでござる』とサインを出し、焔はそれに頷いて木の裏から飛び出した。
 勢いよく突撃し、槍を振ることで打撃を与える焔。
 槍に纏った炎が魔術師の腰を打ち、近くの木へと叩き付けた。
 焔のあげた槍の炎は魔術師の身体だけをもやし、近くの木や草には全く燃え移ることが無い。
 反撃に火花の魔術を放ったが、焔は全く気にすることなく魔術師の顔面に拳を入れた。
 そして、彼らを置いてとってナハトラーヴェへ向かおうとした盗賊風の男へ向けて手を広げる。
 手から放たれた炎が地面や木々について燃え上がり、盗賊の足を止めた。
「こいつ、森に火を放ったのか! 正気か!?」
「さあ、どうかな」
 盗賊が驚きと混乱で次の行動を決めあぐねたその隙に、下呂左衛門は盗賊へと素早く距離を詰めた。
 それに気づいて剣を抜くも、その柄頭を足で踏むように押さえ、駆け上がるようにして盗賊の首に足をひっかけ、全体重をかけて相手を振り倒す。
 倒した所で素早く身体を捻り、下呂左衛門はたちまちのうちに盗賊に関節技をかけて動きを封じてしまった。
「ナイスでござる、焔殿!」
「そっちこそ」
 焔がパチンと指を鳴らすと、森を燃やしていたはずの炎は風にふかれるように消えてしまった。どころか、草も木もまるで焦げ付いていない。
「幻……」
「そういうこと」
 焔は拳に炎を燃え上がらせると、魔術師の顔面を再び殴りつけた。

「ももんがー! ももんがー!」
 夕が両手を広げ、目を瞑ったまま身体を傾けたりばたばたしたりしていた。
「…………」
 その様子を黙って横から見ているシャルティエ。
 視線を察し、目を開けて振り返る夕。
「あ、あのほら、テレビゲームとかやってると身体動いちゃう人っているじゃないですか。私たまにそういうとこあってですね」
「ごめん全然わからないです……練達のオモチャかなにかかな」
「そうそうそういうあれですよ」
 夕はそう言いながらも片目を瞑ったまま、視界を森の中を駆け抜けるももんがちゃんとの共有視界に集中させていた。
 人間。自転車を運転しながらスマホでレースゲームができるような奴もまあいるとは思うが、そういうことをしていれば大抵事故るものである。
 夕も森の中をそこそこに進みながら、モモンガちゃんを使役して森を駆け抜け、さらにはたまにモモンガアイから透視能力を発動させたりしていた。なんだが脳が焼き切れそうな作業だが、戦闘と一緒にやるんでもなければまあ大丈夫……かもしれない。
「ほあっ! いたいた! いました! あっこれどこでしょうマップだせませんかマップ。Mキー!?」
「ごめんなんのことか全然わかんないです」
 片目を瞑ってキーボードをかたかたやるジェスチャーをはじめた夕に、シャルティエが軽く震えた。
 知らない人が見たらちょっとどうかしてる風景である。多分VRゴーグルに夢中になってるひともこんな感じなんだろう。
 14歳の真面目な少年が17歳のお姉さんのおかしな言動を見たら、まあ震えるものである。
「わかりました! うえ! じゃなくて北です!」
「北ですね! 行きましょう!」
 シャルティエは夕の腕を掴んで先導すると、剣の鞘に収めていたリキットペインを盾形態にして腕に装着した。
「エンゲージ! 共有視界を切って!」
 夕がももんがちゃんとの互換共有を終了させると、一瞬のめまいと共に目の前の視界が広がり、その中央には森賊たちの姿があった。
 格闘家風の男と剣士風の男。どちらも近接格闘に秀でたタイプだ。
 シャルティエはダブルシールド状態で二人へ突撃し、『かかってこい!』と叫んだ。
 跳び蹴りと斬撃が同時に襲いかかるが、シャルティエはそれを二つのシールドで防御。
「今のうちに!」
「分かりました――風の精霊さん、お願いします!」
 夕が両手を高く掲げると、空中に『風の穴』が生まれた。穴から飛び出してくる丸太が、空圧の推進力をもって格闘家へと叩き付けられる。
 悲鳴すらあげる間もなく、直撃した丸太が格闘家をピンボールのごとく撥ね飛ばしていく。
「よし――」
 シャルティエは盾を剣士に押しつけたままリキットペインを曲刀形態に変形。相手の腰の後ろへと回すと、ラップショットを用いて切りつけた。
 コンビネーションの勝利、である。

 戦いの音を、無量はその鋭敏な耳で聞きつけていた。
 歩くたびに錫杖の金物飾りを鳴らし、その反響に耳を澄ませる無量。
 横を歩いていた征斗がちらりと彼女の錫杖を見た。
「その音でわかるの?」
「いいえ。反響をはかっているのはついでです。熊鈴のようなもので、こちらの位置をわざと知らせているのです。この装いをして歩けば、森賊はふらふらと森を出たハーモニアと見誤るかもしれませんから」
 そうでなくても、確かめるために近づいてはくるだろう。
 これがかつての無量……つまりはもといた世界で過ごした完全なる無量であったなら、錫杖からの反響だけで相手の位置を特定することもできたかもしれない。エコーロケーションという技術を取得すれば、その再現もできようか。
「頼もしいね……」
 征斗はそう言いながら、両目をそれぞれ二匹の子リスに共有させていた。
 自分を頂点とした三角形に配置し、探索範囲を拡大するというものである。特に視界の通りづらい森の中ではこの方法は有効だった。
 とはいえかなり集中力をくうので戦闘中はそこそこに控えたほうがよさそうだが(そして戦闘中にまで使う理由が特にないので心配はないが)。
 たん、と無量が足を止め。一定方向を見つめた。
 征斗が足を止めたのもほぼ同時。
 二人がむいた方向から、森賊たちがやってくるのがわかったのだ。
 それも、頭目のクリフォト・ジャン・カイメスとその部下一名。
 剣と盾を装備したクリフォトと、魔術を用いるらしき杖持ちの森賊。
「挟み撃ちにできそうだ。自分は右、無量さんは左へ」
「承知しました」
 スッとわかれた二人は、クリフォトたちが現われるまで息を潜め……そして、同時に飛び出した。
「御帰りなさい、とは申しません。御首、頂きます」
 無量は錫杖飾りの付け根を握ると、仕込み刀を抜いて走らせた。
 咄嗟に杖で防御魔術をはった魔術師の腕が、防壁を抜いてはしった刀によって切断される。
「貴方方が先日御座した森賊団ですね。なはとらーべは加護により護られています。このような、加護に」
 返す刀で心臓を狙った無量から、魔術師は大きく飛び退いて反撃の魔術を乱射してきた。
「面倒は苦手だけど、戦うのは嫌いじゃないし……氷華よ舞え。紫電一閃貫き砕け!」
 そちらへ対応しようと剣を繰り出したクリフォト――の背後から、征斗が『アマルガム・ストレリチア』を発射。
 氷の華が舞い散りクリフォトの背へと突き刺さっていく。
「無量さん、任せるね……」
 一撃離脱でクリフォトの横を駆け抜けた征斗は無量の背後へと回って彼女を盾にし、破砕しない簡易的な氷の華を投擲しはじめる。
 無量のタフネスはかなりのもので、クリフォトと魔術師の連携に序盤~中盤こそ押されていたものの体力が三割をきった段階からかなりバランスのいい耐久力と堅実さを見せ始めた。
 そして勝負は――。
「そこです」
 無量の放った斬撃が美しいラインを描き、クリフォトの首をはねた。
 吹き上がる血があたりの草木と無量の儀式装束を赤く染めていく。

●ナハトラーヴェに鈴をもて
「少々血に染まって仕舞いましたが、お返しいたします」
 無量の返却した儀式装束にハナトラーヴェの民はぎょっとしたが、里を守る代償が少しの金貨と儀式装束程度で済んだのだからと快く受け取った。
「賊っていうのはこういうものだしね、見つけ次第パンジ・ピットに叩き落とすべきものなのさ」
 その一方ではアトが民を集めてナリコの仕掛けを説明していた。
 里が守られたことを知り、ナハトラーヴェの民はささやかながら歓迎の宴を開いている。
「自然の多い場所は穏やかでいいねぇ。こういう景色は好きだよ、何より落ち着くしね」
「料理もなんだか独特で……不思議な甘みがあるんですね、この実は」
 ルーキスとシャルティエは歓迎をうけながら、テーブルに並んだ料理を珍しがっていた。
 全てがナハトラーヴェからとれた実と水によって作られたもので、他には周りの森からとれるキノコやクルミ、食べられる葉っぱなどであった。
「ということは、こういう料理は珍しいはず!」
 機転のよさが夕の良さ。夕はハナトラーヴェの実でつくったパイを披露し、民を珍しがらせていた。
 食料に困ったことが無く常に健康なハナトラーヴェの民は食品加工という技術をほとんど保有していなかったらしい。
 実やパイを食べながら、下呂左衛門は周囲の顔ぶれを見回してみる。
「それにしても、深緑は女性中心の社会が多いようでござるな。その、まぁ、何だ。色々と緊張するわけでござるよ……」
「ここの民は皆女性ですよ。ナハトラーヴェは女子しかつくらないのです」
「ん?」
 征斗は言葉のニュアンスに首を傾げたが、特に追求することなく話は流れた。
 それよりも。
「鈴を鳴らしてあの小屋へ入っていく祭事があったよね。ボクも参加してみたいんだけど、いいかな?」
 焔がそう言うと、ナハトラーヴェの民は巫女となにやら話し始め……。
「はい。構いませんよ。あなたはナハトラーヴェの声が聞こえるようですから」
 そういって、焔に鈴をもたせた。

 静まる夕暮れ。
 鈴の音がハナトラーヴェの中へ反響する。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――焔が儀式に参加できたことで『ナハトラーヴェの子』という肩書きが加えられました。

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