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シナリオ詳細

龍顎遺跡の守護者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 かつてその地に住まいし龍信仰の民族が、その神殿を建立したという。彼らは秀でた魔法の力を持ってはいたが、かの地を襲った天変地異には抗えず、全てを捨て、他の地に逃れたと伝承は語る──しかし。

「これは……未知ですか未知でしょう未知ですね!」
 誰もが忘れ去ってしまったかつての神殿は、『未知への執着』アルーシャ・テーゼ(p3p001653)の手により永き眠りから覚めたのだった。
 致死性の罠。
 水没した通路。
 そして通路の奥には大扉の部屋があって、中央には台座に据え付けられた宝箱がある――そして、龍人型の守護ゴーレム。

 その鉤爪の鋭さと素早さが物語る宝の重要たるや、はたしていかなるものであろうか?
 無論、太古の龍信仰の民族にとって価値ある宝が、現代の人々にとってもそうであるとは限るまい……が、少なくともそれが秘められた太古の民族を知る上で、幾ばくかの手がかりにはなるだろう。

 さあ……守護者との戦いの時間だ!

GMコメント

 ……とは言ったものの守護ゴーレムは守護ゴーレムで貴重な気もする、るうでございます。

●遺跡
 神殿の遺構から地下深くへと続く、謎の遺跡です。幾つかのトラップが今も生きてはいましたが、全て場所は判っているため、回避して奥に向かいます。
 奥には『資格なき者の立入を禁ず』と書かれた、15m×15m程度の部屋があります。部屋の中央の宝箱の中身を回収するのが、本シナリオの成功条件です。

●守護ゴーレム
 素早さと表面加工のために、高い回避力と特殊抵抗力を持ったゴーレムで、資格なき者が部屋の中に入った瞬間に頭上から降ってきて攻撃してきます。
 負担がかかるため切り札の扱いではありますが、【必殺】や【防無】の行動マニューバも備えているようです。

●備考
 本シナリオは、SS『とある未知探求者の探索記録』からの派生依頼となります。今回は様々な状況を勘案した結果のリンクですので、今後もリンクが発生するかは未知数ですが、SSもシナリオ同様公式設定なのでそうなることもあるんだな、くらいにお思いいただけると幸いです。

  • 龍顎遺跡の守護者完了
  • GM名るう
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月09日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
銀城 黒羽(p3p000505)
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
フレイ・カミイ(p3p001369)
アト・サイン(p3p001394)
観光客
アルーシャ・テーゼ(p3p001653)
未知への執着
七鳥・天十里(p3p001668)
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

リプレイ

●龍の神殿
「まるで神殿、って造りだな……」
 そんなフレイ・カミイ(p3p001369)の感想も、きっと間違いではないように思われた。
 今、特異運命座標らが立つのは遺跡の最深部。振り返れば静寂に包まれた回廊が遥かに続き、“前室”とでも言うべき領域の罠たちが作る喧騒を遠ざけている。
 2つの領域の隔絶こそが、おそらくは、それだけこの場所が神聖であった証左であろう……もっとも、それが本当に龍が住まっていたためなのか、あるいは龍の偶像を崇拝するだけであったのかまでは、今の彼には想像するほかできないのだが。
 思索して、大きく吸った煙草の煙を深く吐く。いずれにせよこの先に、古代民族が“神”とした何かが眠るのだけは間違いなさそうだ……『凡愚』銀城 黒羽(p3p000505)曰く、『竜』とは悪魔や魔物の類として畏怖する存在であり、『龍』は神やそれに類する神聖性を帯びた存在とされることが多い。ゆえに、資格なき者の立入を禁ず、というのも頷けると黒羽は感じていたが……ではその資格とははたして何なのだろうか? 彼にもその応えは判らない。通ってきた道に限ったならば、“前室”にそれらしきものは見かけなかったはずだが――。

 ――少しばかり時を遡って思索してみれば、致死性の罠に満ちた“前室”は、『観光客』アト・サイン(p3p001394)にとっては絶好の“観光”スポットとして映ったようだった。
「それ生きてるから触っちゃ駄目だよ」
 当然みんな解ってるはずの警告を飛ばしつつ、いつか伝説を作るはずの長棒を伸ばす。その先はフレイの棒が押さえていた床の凹みで、そのまま器用に棒を操りながら丁寧に凹みの先の罠を解除してゆく。
 罠の場所は既に判明していて、為すべきことは何もない……そんな甘い考えは、遺跡に入ってすぐに吹き飛んでしまっていた。何故なら頭を抱える光景が、彼の目の前に現れることになっていたからだった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!?」
 やけに色気のある悲鳴を上げながら逆さ吊りにされた『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)。蛇を思わせるロープに片脚を太腿まで巻きつかれ、スカートが逆さまになる中でもう片方の足を必死に動かして逃れようとするさまは哀れみと同時に艶めかしささえ感じさせる。
「はっ……この前は気付きませんでしたがこんなところにも未知が!」
 やめりゃいいのにわざわざ横道の先のあからさまに超怪しいドラゴンのレリーフに触れて、いきなり口から炎を吐かれて服を半ば燃やされる『未知への執着』アルーシャ・テーゼ(p3p001653)。「これが資格かも」じゃないでしょ。それよりまずは安全確認が先でしょ――。

「――はー、よくまぁこんなトラップだらけの道を踏破したね」
 そんな『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)の呟きは、感心か、それとも呆れなのかさえは定かじゃかった。だが、その後彼や『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)も感覚を研ぎ澄ませて警戒しておいたお蔭か、少なくとも消耗と呼べるほどの消耗をさせる前に彼女らの首根っこを引っ掴めるようになったのは確かな成果だ。
 改めて、頭上でドラゴンの頭の彫刻が威圧する扉を眺めてみる。この扉を開いたならば、竜種に連なるかもしれない何かが眠りから目覚めるに違いない……その期待の大きさを思えば、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)にとってはここまでの苦労なんてなかったようなものだった(というか彼女のように普通に罠を避けて進めば、苦労なんてしないのが当然のことだ)。よろしい。扉の先の守護ゴーレムとやら、願わくばこの司書が無事に捕獲してやりたいものだ。
 一度深呼吸してから息を呑んだなら、レイヴンが扉をゆっくりと押した。中に淀んでいた地下水が、繁茂するバクテリアの臭いとともに足元を流れゆく。ゆらめく松明の光が中に差し込んで、中央に鎮座する台座と宝箱の姿が照らされる。
 その時……レイヴンが何かに勘付いたかのように見えた。黒羽もだ……だが2人がそのことについて告げるより早く、部屋の天井付近の暗がりで、赫い2つの光が点る。そして柱の上から素早く飛び降りて、瞬く間にレイヴンへと迫ったならば石製の鋭い爪を振り上げる!

●龍人ゴーレム
 鉤爪を振り下ろした影の表面で、無数の火花が爆ぜ散った。
 不可視の術だ。それを放った主を探って赤々と輝く2つの瞳が、こちらを向いたのがイーリンには見える。
 瞳の主は、人がドラゴンの特徴を得たかのような、化け物じみてはいるが逞しさと神聖さを感じさせる姿のゴーレムだった……その表面は何か細かな紋様に覆われており、おそらくそれが彼の力の秘密であるのだろう。
 部屋の狭い入口が、自身の刃の術を半ば妨げたことはイーリン自身も把握していた。けれども、残りの刃が彼の“秘密”を傷つけたのが、きっと守護者には気に食わなかったに違いないということも手に取るように解る。
 気を逸らした守護者の一瞬の隙を、天十里が突いてゆく。素早く跳び上がって避けようとした龍人ゴーレムだったが、相手が自身より素早かったなら、ただ重心を浮かせるだけで終わるということだ……大地の支えを失った彼は、跳び込んできた天十里が彼を、銃弾で吹き飛ばしたのか、気当たりで弾いたのか、膝を叩きつけたのかすら解らぬままに台座の向こうまで飛び越えさせる。それでもゴーレムは石製とは思えぬほど軽やかに姿勢を返し、しなやかな獣のように着地さえしたが……彼が次の行動に移らんとするよりも早く、新たな天十里の技が眉間に刺さる! こちらも反動で天地逆さまに舞い、ダメ押しの弾丸に篭めたのは、台座の宝箱の中にあるものを一刻も早く見たいという興奮だ!
 そんな天十里に応えるかのように、さっそくアルーシャが飛び出していった。
「戦闘のほうは戦える方、お願いします!」
 どうせ効かない魔法を放つより、彼女には適任なことがちゃんとある……つまり、今のうちに『資格』を探して、戦わずして勝つ方法を見つけることだろう。
「む……守護者を倒そうという覚悟や意志だったりするわけではないようですね」
 意気込んで宝箱に触ったのに改めて攻撃の構えに移りはじめたゴーレムを見て、彼女は暢気に分析してみせた。ちなみに、とーぜんながら例の石版自身でもなさそうだ。さすがに“四角”いから“資格”なんて駄洒落が通用するわけがない……資格発見失敗。しかも、宝箱も鍵がかかって開かない。
 宝箱の前で熱心に悪戦苦闘している彼女は、守護者にとって最大の標的に違いなかった。身に降りかかる危険もすっかり忘れ、興味のあることばかりに注力するアルーシャの好き放題さ……それはまともな人間ならば頭を抱えるところかもしれない。
 だが、自由奔放さを第一義とする男フレイにとっては、むしろ共感すらも感じさせられる破天荒っぷりだ。
「いいぜ。じゃあ、俺も楽しませて貰おうか」
 獣のように不敵に笑うと、松明と、それから煙草を脇に放り投げてみせた。油でしっかりと濡らした松明は、地下水の上に浮かんでフレイの影を壁に大きく映す。
 さあ行ってやる……力を全身にみなぎらせながらフレイは吼える。正直、素早い敵に拳を当てる自信はないが、だからって尻尾を巻くつもりなんてもっとない!
「食らえ!!」
 殴りつけた拳に反応し、ゴーレムが大きく後ろに跳び退いたならば、その全身を無数の白い礫が現れ打ちつけはじめた。レイヴンの術だ。
「これが太古の民族が再現した竜の力、ということか……」
 自らが爪で受けた傷すら愉しそうに味わいながら、レイヴンは破壊のルーンを宙に描きつづけていた。これしきの傷などどうということはない。あちらは1発。一方でルーンが生んだ魔法の雹の領域は、部屋ごと守護者を傷つけつづけているのだから……ただ、ルーンの魔力が切れるまでに決着がつけばいいのだが。
 もっとも、跳びかかってこようとするゴーレムは、いまだ動きを鈍らせないように見えた。当然だ。まだ戦いは序盤でしかない。彼とて雹の中に押し留められ、破壊されるのを待つつもりなどないだろう……ならば。
「こちらから留まらざるを得ないようにしてやるだけさ」
 雹の領域とこちらを隔てる場所を、黒羽は今回の定位置として定めたようだった。仁王立ちして放出する闘気。敵の動きに先んじるようにその先端を操ったならば、ゴーレムすらもが気圧される。
 苦し紛れに繰り出された爪が黒羽の体を貫いた。……が、その程度構いはしない。
 殺せるものなら殺してみろ。俺からはお前に何もしないが、お前が攻撃して闘気に触れれば、痛い目を見るのはお前のほうなのだ。
 結果守護者は、持ち前の素早さを生かせず仕舞いになっていた。そんな時、動けぬゴーレムとは対照的に舞いはじめるのは、弥恵の演じる炎の舞踏。
 もっと熱く。もっと激しく。きらめきで辺りに降り注ぐ雹を輝かせ、祈りにも似た熱情で自らを魅せて。彼女を取り囲むように燃え上がった炎は酔いしれ見惚れて、指先を返すたび、あるいは爪先を伸ばすたび、自ら獄炎の龍となって龍人ゴーレムを苛んでゆく!
 炎龍は……けれどもゴーレムの表面を少し焦がしただけで、まるで吸い込まれるように消えてしまった。原因は……アトには判っている。あの表面の細かな紋様が、炎がそこに留まることを拒むのだ。
(それじゃ、ちょっと機転を利かせちゃおうか)
 ナイフを迷わず自分の肌に当てたなら、じわりと血が滲み出してきた。そしてナイフの刃の上で一瞬光りを放つ……刃に塗っておいたのはいつもとは違った毒だが、どうやら上手く反応してくれたみたいだ。
「こいつは俺の血と混ざると魔法を絶縁するようになっててね」
 そして……投げる!
「これで少しばかり大人しくなってくれるだろうさ!」
 暴れるゴーレム! 魔力伝達の異常を検知したゴーレムが、エラー原因を取り除こうと四苦八苦している証拠だ!
「ああもう、効いてるなら大人しく動きを止めてくれればいいのに」
 それを見て悪態を吐いたイーリンだったけれども、その時にはもう、次の術式は紡ぎ終えていた……が。
「アト! あれの関節ってどう狙えばいいかしら!」
「そりゃあ懐に潜り込んでブスッ、が一番さ!」
 訊ねれば返ってきたのは無茶な答え。よろしい……つまり別の方法を考える必要があるらしい。
 ならば、黒羽が任せろと請け合った。
「ついでに、こういうやり方もあるって解らせてやるさ」
 ここまで幾度となく殴り続ける中で、ゴーレムも黒羽のしぶとさには気付いたはずだ。つまり……必殺の一撃でも繰り出して、彼を除かねば先はない。
 爪がブーンという音を立てはじめ、こびりついた血が細かい粒と化して霧散した。と同時にゴーレムが足を止めたのを見れば、彼はよほど自身のエネルギーを腕に集中しなければならないらしい……が、悠長に観測してられるのはそれまでだ。
 超振動しながら放たれた鉤爪の一撃。久々の死の感覚が、黒羽に高揚をもたらした。だが……特異運命座標っていうのは便利なものだ。多少自身の可能性<パンドラ>を燃やしてやるだけで、少しばかり運命に抗うことができる。闘気が爪に纏わりついて、振動の勢いを無に返す。
 ほうれ見ろ、お前はもう一度同じエネルギーを注ぎ込まなくちゃならなくなった。けれども次はそう上手くはいかない……その時には天十里の弾丸が、爪の付け根に小さな傷を与えたからだ!
 二度目の爪は改めて、黒羽を袈裟懸けに引き裂こうとした……そして自身の振動で爪の傷が広がって、途中で根元からぼきりと折れる。鉤爪が黒羽の心臓を砕く、その直前で。
 今や厄介な壁は失われ、守護者は再びアルーシャへと向かえるようになった。
 だが彼が全身に力をみなぎらせた時には既に、天十里の二丁拳銃が火を噴いている。
 BLAM。BLAM。四方八方から銃弾が襲う。
「君は結構避けるのが得意みたいだけど、それ以上に僕は弾を当てるのが得意なんだ。なのに君の動きが止まったりしたら……当然、そうなるよね?」
 今回、かなり楽な仕事になったのは、ゴーレムが振動爪を使ったせいだけじゃなかった。その上機動力を生んでいた守護者の石の翼は、片側が、中ほどの蝶番のところから斬り落とされてしまっている……思い出してほしい、黒羽が体を張ったのは、イーリンの術式のためであったということを!
「随分とチョコまかと逃げ回ってくれたが、ここまでみたいだな!」
 フレイが、獰猛な笑みを作ってみせた。その肩は大きく上下していて、慣れぬ相手にどれほど苦戦させられたかを物語る……だがそれも、ここまでだ。最後の渾身の喧嘩殺法が壊れかけた腕を捉えて、大きな亀裂を作り出す。その傷口を弥恵の炎龍が呑み込んで、血のように赤くなるまで加熱する……炎も、呪いも、何もかもを弾いてきた表面コーティングが広範囲で砕ければ、その後は弥恵が肢体露わに踊れば踊るほど、無生物さえも魅了し盲目にさせる色香がゴーレムを襲うということだ!
「さあ、次はどのような攻撃を出してくるのでしょうか? ビーム? それとも破壊の息吹? 何であれ、華麗に舞って避けてみせましょう……そんな私の舞台を、ご照覧ください」
 ゴーレムは逆の腕の爪を振り上げてみせたが、それを振り下ろすよりも弥恵の白い脚が伸び、彼の腕を打つほうが早かった。
 不吉な、ピシリという音が鳴る。それでも守護者は暴れ続けて、食らいつきつづける厄介なフレイを、術式を切り替えたイーリンの治癒速度よりも早く斬り刻んでゆく……が、鉤爪は彼の笑みを絶やすどころか、むしろより愉しそうに口許をつり上げさせるのみ!
「悪ィなぁ! やっぱ器用な真似は出来ねえ! てめえらで何とかしろ!」
 そう声を絞り出した後、フレイは大の字の水飛沫を上げて地下水の中に倒れ込んだ。その表情は、勝利への確信で満ちている……それもそのはず、彼の視界の片隅では一度は止んだはずのレイヴンのルーンが、新たに描かれはじめたからだ。
「当たらないよう、気をつけて」
 そんな忠告とともに完成したルーンは、再び、辺りに雹の領域を生み出していった。守護者は足掻き続けるが、天十里が砕けた腕の奥、魔力伝達路近くを違わず撃ち抜けば、守護者は雹の領域から離れるのも忘れ、ただ闇雲に天十里を狙わずにはいられなくなってしまう……その銃弾には魔力すら乱し惑わす、確固たる敵意が篭められていたが故に。
 惑うゴーレムの鉤爪は、決して天十里に当たらなかった。靴から空気を射出して、二段ジャンプで宙返りする彼女は、ただでさえ容易くは当たらない……その上ゴーレムが表面の魔術加工を半ば失った状態であれば、天十里からすればもはや動かないも同然だ。
 雹がゴーレムに当たるたび、不吉な音が増えていった。赤熱の後に急冷された守護者は、次第に全身をヒビで覆われてゆく。最初は一瞬引っかかるだけの動き。それが頻度を増してゆき、ガクガクとぎこちない挙動へと変わり……。

 それから守護者が完全に動きを止めるまで、長い時間はかからなかった。

●遺跡調査
「宝箱は任せておいてくれ」
 アトがそう言って皆を部屋から追い出して数分。ゴーレムの破片に描かれた肌の紋様を精査していたレイヴンが、ふと、何かに気付いたように顔を上げた。
「……そうだ。さっきもこんな感覚になったんだった」
 レイヴンの奇妙な直感が、“何か”が近くに現れたことを物語る。先ほどは部屋の扉を開けた瞬間。今回は……おそらく宝箱の中身を取り出した瞬間? 生憎、この共鳴が何を意味するのかまでは、彼とてさっぱり判らぬのだが。
 深い緑青色のオーブを手に扉から現れたアトは、ざっとこんなもんか、といった表情だった。
「かかっていたのは鍵だけで、罠の類は、強いて言うなら番人ゴーレムひとつ」
 本当にこんなに楽な遺跡でいいんだろうか? アトもこれがフェイクという可能性を考えてはみたが、どうにも隠し通路は見つからない。ということは、本当にこれこそが“お宝”なのだろう……その証拠にアトの脇をすり抜けて部屋に滑り込んでいった弥恵が、幾度かステップを踏んで踊りながら部屋を一周してみても、その靴音が怪しい反響をすることはなかった……あっ床の雹に足をとられて滑って転んだ!!

 ……なんてハプニングはあったにせよ。
「そうね。何かあるとしたらやっぱり調べきれてない罠の辺りなのかしら?」
 思えばいつしか4冊目になっていた手記をめくるイーリンの記録を元に、さらに探索範囲を広げてゆく特異運命座標たち。幾つかの部屋と新たな罠……そしてイーリンに助けを求めた霊の案内で、不運にも大昔に罠の犠牲となった侵入者たちの死体が見つかりもしたが、やはり遺跡が守っていたのはこのオーブで間違いなかったらしい。
 自身もそう羊皮紙に記録して、アルーシャはそれを大切に仕舞い込んだ。それから思いついたように遺跡の奥に駆け出して……ゴーレムに向かって語りかける。
「この宝物は調査して、末裔たちに返せるように配慮しましょう……」
 そして今も未知な末裔たちに、この遺跡とその守護者のことを伝えたいと笑顔を作り、彼女は再び来た道を駆け戻っていった……何故か、解除されたはずの小罠に再び引っかかりながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505)[重傷]
フレイ・カミイ(p3p001369)[重傷]

あとがき

 おかしいな? いきなりボス戦が始まるリプレイになるとばかり思ってたのに、何故かボス戦する頃にはやけにみんな疲れてたぞ???

 ……というわけでお疲れ様でした。その後よくよく調べると判ることですが、オーブは『覇竜の導き』の所持者の近くにいる間だけ、ほんの僅かに温かみを帯びるようです。
 オーブがはたして何であるのか、資格とは一体何であったのか? それらは遺跡の中には手がかりがありませんでした。現状では、この未知が解明される時が訪れるのかすら何とも言えません……が、皆様の行動次第では何かの大発見に繋がらないとも限らない……のかもしれません。

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