PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<冥刻のエクリプス>ローレット拠点緊急防衛任務
<冥刻のエクリプス>ローレット拠点緊急防衛任務

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ネメシス崩壊の危機
「ボクは皆さんを信じているのです。だから……ボクの命と『門』を、皆さんに預けるのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は強く拳を握り、イレギュラーズたちへと突きだした。

 『煉獄篇第五冠強欲』ベアトリーチェ・ラ・レーテ。イレギュラーズの天敵とも言える七罪の魔種がひとり。彼女によって仕掛けられた天義転覆計画は最終段階へと到達した。
 人々を惑わし狂気をふりまいた月光人形。法王の座を狙うアストリア枢機卿および執政官エルベルトによるクーデター。それらが一つの巨大な力となり、今まさにネメシス聖教国首都フォン・ルーベルグへと侵攻していた。
「けど皆さん(イレギュラーズ)の調査や戦いがなければ、今頃はなすすべも無く国が乗っ取られていたかもしれないのです。
 そうなれば魔種の支配を許すことになって、世界崩壊の力ともいえる『滅びのアーク』が激増していた筈なのです。
 『この段階』で最終決戦に持ち込めたのは皆さんの成果といって過言では無いのです。だけど……」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は不安げに屋根の上から遠くを見た。
 魔種によって編成されたミイラの軍勢が、防衛にあたった騎士たちを破壊しながら着々と接近しつつある。
「天義の首都が攻撃されるということは、ボクたちローレットの出張拠点も攻撃されるということなのです。特に、ボクは……」

●ゲートキーパー
 ネメシスローレット拠点。いわゆるローレットの出張所であり、ネメシスにおける活動の実質的拠点施設である。
 イレギュラーズは幻想の空中庭園を介してこの拠点へテレポートすることができ、これにより迅速な人員の投入を可能としていた。
 今回の大戦は言わずもがな、先の常夜事件の際も劣勢に立たされた天義騎士団に300あまりの兵力を兵站を気にせず一気に投入できたことからもその重要性が分かるだろう。
 この拠点が開かれたということは天義からそれだけ深い信頼を得ているという証でもあるのだ。
「けど、もしこの拠点が落とされたらイレギュラーズはネメシスにテレポートできないだけじゃなく、緊急時の撤退もできなくなってしまうのです。
 既に情報屋の人たちや大けがをおった人たちは門を使って空中庭園へ撤退しているのですが……」
 皆は知っているだろうか。
 偉大なる情報屋エウレカ・ユリカの後継者、ユリーカ・ユリカ。
 彼女は他の皆と異なり、イレギュラーズではないのだ。
 よってテレポートは使えず、通常の交通手段を使ってしか移動することはできない。
「首都が魔種の勢力に包囲されてる今、もはや逃げ場はないのです。
 けど、この拠点が落とされるならもはやそれまで!
 ボクは――!」
 拳を握り、ユリーカは『あなた』へと突きだした。
「ボクは皆さんを信じているのです。だから……ボクの命と『門』を、皆さんに預けるのです!」

●アポカリプスラプソディー
 ローレット拠点の制圧を任されているのはベアトリーチェ派の魔種による軍勢である。
 その名も『超越者ヴァイオレット』。
 魂を喰う魔種であり、より美味なる魂を喰らい高潔なミイラをコレクションすることを目的とする恐ろしい女である。
 ヴァイオレットは魂を抜き取った死体をミイラに変え、命令に忠実な兵隊として使役する能力を持ち合わせる。これまで犠牲にしてきた天義の民たちを兵隊に変え、今まさにローレット拠点へと侵攻しているのだ。

「イレギュラーズ……イレギュラーズ! いいわ、素敵。きっとすごくすごく美味しいんでしょうねえ……」
 力尽きた騎士の首にかじりつき、肉を食いちぎる女――もとい、超越者ヴァイオレット。
 騎士の魂を数分かけて吸い上げきると、騎士の身体を放り出した。
 地面に倒れた騎士は恐ろしい速度でミイラ化し、まるで糸でつった操り人形のように起き上がった。
 自らの剣をとり、ヴァイオレットに付き従って歩き出す。
 ヴァイオレットは上唇についた血を舌で舐めとると、左右非対称に笑った。
「けど、この程度で死ぬようなデクはいらないわ。
 いじめていじめて、それでも生き残るような高尚な魂を喰らえば」
 クク、と喉を鳴らし、ヴァイオレットは手を振りかざした。
「行きなさい。狩りの始まりよ」
 民間人のような衣服をきた無数のミイラたちが、木の棒や煉瓦を持って走り出す。

GMコメント

■■■シチュエーション■■■
 ローレット拠点が魔種のヴァイオレットよって襲撃されています。
 情報屋ユリーカは拠点内部にバリケードを築いて閉じこもっており、皆さんは野外にてヴァイオレットとその手下たちを迎撃しなければなりません。

※このシナリオが失敗する場合、最悪ユリーカ・ユリカの死亡または誘拐といった事態を招きます。

■■■フィールドデータ■■■
 ローレット拠点への最終防衛ラインは拠点から大きく離れた位置に作られています。
 ヴァイオレットはイレギュラーズたちを無視してまで拠点を先に破壊しなければならないとは考えていないようなので、拠点にはりついたりバリケードその他を強化したりする必要はありません。
 単純に『皆さんが敗北したら拠点を喪う』と考えてください。

 これ以前に天義の騎士たちによる防衛ラインは設定されており、ヴァイオレットの軍勢はこれらを突破しながらこちらに兵力を送り込んでいます。
 そのため襲撃は大きく分けて『三つのウェーブ』で構成されることになるでしょう。

●第一ウェーブ
 低級ミイラ兵の群れによる襲撃。
 木の棒や包丁、大きな石などをもったほぼ非武装のミイラたちが襲いかかります。
 戦闘レベルが低く撃破も容易ですが、とにかく数が多いためダメージを受けすぎないように注意してください。
 彼らの攻撃目標はイレギュラーズたちであり、知能も低いらしくバラバラな対象を乱雑に攻撃します。
 PCたちは特に仲間に庇われたりしていない限りは全員が攻撃に晒されることになるため、それをしのぎならミイラたちを排除してください。
 数が厄介な相手なので、出来るだけ早く頭数を減らすようにしましょう。
 回復よりも攻撃を優先したほうが、このウェーブでは有利に進むはずです。

※ウェーブ間の余裕がどれだけとれるかは、第一ウェーブをどれだけ素早く終わらせられるかによります。長くても3分程度になるでしょう。
 余裕がとれた場合身体を休めることができ、HPとAPの自動回復が行なわれます。

●第二ウェーブ
 騎士ミイラ8体による襲撃。
 なかなかの戦闘力をもつ天義の騎士がミイラ化したものです。ミイラ化したことで戦闘力が落ちてはいますが、武装もしっかりしていて力もあるので厄介です。
 武術は勿論魔法の使用も行なうため、それなりに手強い相手になるでしょう。
 この時点で魔種のヴァイオレットは到着していますが、『最後まで生き残るような奴をミイラにしたい』という考えから戦闘終了まで手出しはせずに状況を見守るつもりのようです。(こちらから手出しができないわけじゃありませんが、恐らく大変なことになるのでやめておいたほうがいいでしょう)

※このウェーブで戦闘不能になった場合、第三ウェーブに参加できません。
 騎士ミイラを倒しきった後、すぐに第三ウェーブが開始されます。

●第三ウェーブ
 超越者ヴァイオレットが単身で襲撃を仕掛けてきます。
 ヴァイオレットはEXF、特殊抵抗、防御技術がそれぞれ高く、以下のスキルを使用します。
・魂の再生『パッシブ 再生XX、充填XX』
・魂の衝撃『近神列【飛】【体勢不利】反動100』
・魂の爆発『遠神域【停滞】高威力、反動100』
・魂の暴走『神自範 【飛】【停滞】【体勢不利】高威力』

  • <冥刻のエクリプス>ローレット拠点緊急防衛任務完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年07月08日 22時45分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
静謐なる射手
銀城 黒羽(p3p000505)
ド根性ヒューマン
ニーニア・リーカー(p3p002058)
堕天使ハ舞イ降リタ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
守護天鬼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
チアフルファイター
津久見・弥恵(p3p005208)
嫣然の舞姫
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
寝湯マイスター
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
正なる騎士を目指して

リプレイ

●『扉』を守る戦い
 空高く舞い上がる一羽の鳩。
 五感共有によって俯瞰した道のずっと先では、人方シルエットの集団がいびつな動き方をしながらこちらへ向かってくるのが見えた。
 魔種『超越者ヴァイオレット』によって作り出された民衆のミイラたちは棒きれや煉瓦を手に集まり、まるで知性をなくした暴徒のごとくローレット拠点施設を目指しているのがわかるだろう。
 古い教会を改築する形で作られたローレット拠点はいま即席のバリケードだらけになり、窓には板を扉には棚を押しつけ、防御を完了したイレギュラーズ情報屋たちは一時幻想の拠点へと撤収。『イレギュラーズではない』情報屋のユリーカは、ひとりこの拠点内に立てこもっていた。
「なるほど。都に攻め込まれるという事はこういう危険もあるか……」
 この段階であえて冷静になった『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は、拠点施設からミイラ軍団側に大きく前進した場所に陣取り、戦闘の準備を終えていた。
 ばしんと拳をうつ『凡愚』銀城 黒羽(p3p000505)。
「ああ、やってくれるぜ。まさか俺達の本丸を直接狙ってくるとはな。それに……」
 拠点をそれぞれ振り返る。
「ユリーカも無茶しやがる。お前まで命張ってどうするよ?」
「彼女にとってもローレットは大事な場所なんだ。失うわけにはいかない……僕も、ね」
「こんな窮地ももう慣れた。ユリーカは安心して拠点でふんぞり返っていればいい。ここには、俺たちがいる」
「そういうこと!」
 ラプタルに乗って駆けつけた『チアフルファイター』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が、軽やかに通りの真ん中へと降り立った。
「今はアタシたちがいる……けど、今いるのはアタシたちだけ! 絶対に負けられない、よね!」
「拙が生者に命を預けられるなど。大笑ものでしょうが……」
 拠点側から歩いてきた『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が、刀の柄頭を撫でるように腕を下ろす。
「えぇ。笑い話に致しましょう。拙は、ユリーカ様の笑顔が好きなのです。
 今日を、未来の偉大なる情報屋、その波瀾万丈な冒険の一頁として語り草へ……」
 変えましょう。そう述べて、刀をわずかに鞘から浮かせた。
 その横では、『正なる騎士を目指して』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)が呼吸を深く整え、綺麗に磨かれた盾とその裏に液状化して格納されていた剣を抜いた。
「魔種……噂に聞いたことは何度もあったけど、これが初の実戦、か」
 ぱちんと頬を手で叩き、自分に気合いを入れるシャルティエ。
「ユリーカちゃんは僕達を信じてくれたんだ。だから僕も、騎士として応えなきゃ!」
「ああ、その意気だ」
 『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)はライフルを背に担ぐと、フックつきの縄ばしごをよじ登って民家の屋根へと陣取った。
 かがんだ姿勢でライフルをコッキング。通りへ突っ込んでくるであろう敵に備えてサイトスコープを覗き込む。
(血縁でもない人の命を預ったのは初めてだ。
 実家の者なら、例え周囲が地獄でも逃げる算段を探すだろうが……彼女達は動けない、その力があるとも思えない。
 ……背中が重い)
「だが、暖かくもある」
「さあ、行きますよ皆さん!」
 道の真ん中に立って、『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)が薄手のコートを投げるように脱ぎ捨てた。
「ユリーカ様はちょっとドジで真面目で頑張り屋で……小さな勇気ある彼女はローレットには無くてはならない存在です。指一本たりとも触れさせはしませんよ」
「命も拠点も預けられたからには――ユリーカちゃんの命とこの『門』を守ってみせるよ!」
 『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)が『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)を抱きかかえるようにして通りへと参上した。
 二人そろってすたんと着地し、既に肉眼でも見えているミイラの群れ夕は約束によって力を借りている精霊たちを改めて呼び寄せ、七色の光のラインを自らの周囲に回し始めた。
「つまり私たち、責任重大ってことですよね!」
「そういうこと!」
 ニーニアもまた郵便鞄から何枚も宛名の無い便せんを取り出し、扇状に開いてく。
 通りに狙いをつけるラダ。
 格闘の構えをとる黒羽。それぞれの流派にある剣の構えをとる雪之丞とシャルティエ。
 足踏みによってリズムをとり、肉体のテンポを速めていくミルヴィと弥恵。
 手を広げて精霊の水を泡立つように生み出すウィリアム。
 そんな中へ、酒瓶をぶら下げた『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がとろける蜂蜜のような笑みを浮かべて現われた。
 甘いチョコレートクッキーの香りを纏って、ゆっくりと呼吸を整える。
 閉じていた目を、しっかりと見開いた。
「大丈夫、おねーさん達に任せなさぁい。絶対に、守るから!」
 空になった酒瓶を振りかざし、迫るミイラの群れめがけて思い切り放り投げた。

●アッセンブル!
 理解不能な叫びをあげて、一目で数え切れないほどのミイラの軍勢が押し寄せる。
 彼らの服装や持ち物、予想される体格などを目測して、ラダはスコープを覗く目を細めた。
「『素材』は民間人か。悪趣味だな」
 ラダは屋根の上から狙いを定めると着弾地点を計算。ホルダーから取り出したマジックカードをライフルに翳すと、一時的にライフルの時間を歪めて連続させた。
 複雑に分岐した時間の枝が収束し、時空分裂したライフルの銃口から大量の弾が発射される。
 着弾地点にさしかかったミイラたちへ弾が一斉に降り注ぎ、集合した物理エネルギーによって爆発のごとき衝撃が生じた。
 腕や足をもがれて吹き飛ぶミイラたち。
「犠牲になった人たちは可哀想だけど――」
「このままにしておくのはもっと可哀想、ですよね!」
 爆発の中に飛び込むミルヴィと弥恵。
 二人は体内のテンポをファントムミュージックによって同期させると爆発の中を交差。
「我が舞を畏れるならばここから先を越すこと許さぬ……さぁ、開幕です!」
 弥恵は操り人形と化したミイラたちの意識を強制的に引きつけると、両手を軸にしたスピンキックを繰り出した。
 煉瓦や棒きれを振りかざして四方八方から迫るミイラたちの腕や棒きれを蹴り飛ばし破壊していく。
 一方のミルヴィはミイラたちの頭を踏むように跳ね回り、見上げる彼らに『六方昌の眼差し』を差し向ける。
 操り人形といえどミルヴィの魔力からは逃げられない。『それがそれらしく機能する』という神の定めたルールゆえだろうか。
 四方から突き出されるモップの柄を、ミルヴィは階段を駆け上がるようにしてかわしていく。
 そうして一人のミイラの頭を踏み台にして大きく跳躍。後方宙返りをかけて後退。
 着地と共に指を鳴らすと、すぐ横を雪之丞とシャルティエが同時に駆け抜けた。
「私の後に――」
「わ、わかった!」
 雪之丞はミイラの群れにわずかに空いた隙間へ鋭く滑り込むと、群衆の中を泳ぐようにぐねぐねとすり抜け走り回った。
 パチン、と刀を納める音。
 一瞬遅れて走った閃きに、ミイラの群れが一度に崩れ落ちる。
 それでも耐えて生き残ったミイラめがけ、シャルティエが実直に突撃をしかける。
「いくぞ――『リッターブリッツ』!」
 今こそ、身体に叩き込んだ技を正確に行使するとき。
 シャルティエの性格が出るようなまっすぐな突きはミイラの肉体を貫き、余った衝撃が雪之丞のすぐ横を抜けて別のミイラの頭を粉砕した。
「当たった……」
「伏せろ、次が来るぞ!」
 黒羽の声に思わず伏せたシャルティエ。彼を大胆に飛び越え、黒羽の跳び蹴りが新たなミイラの群れへと直撃した。
 ただの跳び蹴りではない。燃え上がる炎のような黄金の闘気が広がり、横に並ぶミイラたちもろとも吹き飛ばし、後続へとぶつかってドミノ倒しにしていく。
「リーカー、ウォルターズ。守りは任せろ。打ちまくれ」
 燃え上がった闘気が壁のごとく広がり、すぐ後ろについたニーニアとウィリアムを守った。
 ガードを突破しようと黒羽に群がるミイラたち。
「投げるよ、離れて!」
 ニーニアは黒い便せんを黒羽に群がるミイラたちへと投擲。
 空中で勝手に開いた便せんが中に込められたカード型の毒を周囲にまき散らしていく。
 毒にやられ、もしくは毒に残った継続効果にやられ、ミイラたちが次々と倒れていく。
「あれっ、黒羽は!?」
「心配ない」
 常人であればそのまま死んでいてもおかしくないダメージを受けてなお、黒羽は平気な顔をしてしっかりと立っていた。
「このくらいの毒、気合いと根性で耐えられる」
「流石、頼もしいね」
 ウィリアムは頭上高くに浮かべた『泡立つ水』内部に激しい電力を蓄積。タクトを振ることで黒羽へと叩き付けた。
 とはいっても、彼の魔法『チェインライトニング』は敵味方を正確に識別して攻撃する繊細な魔法だ。
 黒羽のガードを突破しようと新たに群がったミイラだけを正確に識別し、電撃で胸を打ち抜くように破壊していく。その間に黒羽はウィリアムが新たに投げた治癒の魔術が込められたドリンクボトルをキャッチ。一息に飲み干してボトルを投げ捨てる。
「流石黒羽くん、ほーんと倒れないわねぇ」
 アーリアは二本指に甘く口づけをすると、恋の魔術を込めて黒羽へと発射した。
 着弾と共に赤い花吹雪が舞い散り、またも群がっていたミイラたちが頭を抱えて崩れ落ちていく。
 そんな中でも黒羽は当然のように直立不動。
「臭いが甘ったるいな……」
 そんな風に呟いて頬についたキスマークをぬぐった。
「『恋の魔法』をそのままにしておいたらダメよぉ。ほんとはクラクラになってる筈なんだから」
「ってことは、私の出番ですね!」
 夕は約束した精霊の力を身体に一度集め、巨大な七色の翼に変えて放出した。
 翼は大きく羽ばたきを見せ、黒羽はもとより夕の周囲10メートルに至るまでを舐め尽くし、強引に薙ぎ払っていく。
 しかし黒羽たちの肉体には影響を及ぼさず、アーリアのつけたキスマークやニーニアのつけた毒の成分だけをぬぐい去っていった。
「……ふう」
 精霊の加護によってエネルギーの自己回復ができるとはいえ、なかなかに消耗の激しい技だ。
 エネルギー(AP)のストックが相対的にそれほど多くない夕にとって連発は難しい。
 なんとか少ない手数でケリがついてよかった……と思っていると。
「あらあら、あぁらあら……」
 鈴を転がすように笑う、少女の声がした。

●超越者の食卓
 崩れたミイラだらけの大通りを、赤いドレスの少女が歩いている。
 まるで花園をゆくような軽やかさで、日曜日のピクニックのような足運びで、乾ききった男性の頭部を赤いエナメルブーツで踏み抜いた。
 異様なのは彼女の左右に付き従う八体のミイラ騎士たちだが、彼らの鎧には天義の金章が施されている。これまでの一般市民を素材にしたミイラとは一線を画する、強力な個体を従えているということだろう。
 そのただならぬ気配に、ミルヴィと雪之丞が剣をそれぞれアシンメトリーに構えた。ギラリと陽光に光る刃の流れに赤い少女はうっとりと笑う。
「だぁめ。お行儀が悪いわよ。まだ品質確認が済んでないでしょう?」
 血のように赤い唇に小指を引いて、その場に並ぶシャルティエたち十人の顔ぶれを数えるように眺めている。
 視線を向けられただけで魂を喰われそうなプレッシャーに、シャルティエは思わず半歩引き下がった。
 逆に強く半歩踏み出す弥恵と黒羽。
「確認? なにを確かめる必要があるっていうんです」
「ここを通りたいなら――」
 今にも襲いかかりそうな黒羽たちに人差し指を立てて、左右に小さく振ってみせる。
「そういう台詞もだぁめ。不味い奴はすぐ結果を急ぐんだから」
 少女は何も無い場所におもむろに腰掛けると、そばに控えていた一般市民ミイラが滑り込むように四つん這いの椅子になった。
 足を組み、腕を組むように顎肘をつく少女。
「自己紹介しておくわね。私の名前は『ヴァイオレット』。体感年齢102歳。実質的には……何百歳かしら? ずーっと昔の、古代人ってところよ」
 ウィリアムと夕がいつ襲いかかられてもいいように精霊の力を再び集め始める。
 ラダはライフルの狙いをぴったりとヴァイオレットにつけたが、アーリアが視線で攻撃を制止した。
 今この瞬間に襲いかかってこないということは、その意味があるということだ。少なくとも敵側の時間稼ぎではないだろう。(むしろ自己充填や自己再生を用いた回復ができるので、時間が欲しいのはこちらのほうだ)
「この国、ネメシスっていうのかしら? ベアトリーチェ様が国盗りをするっていうから私お願いしたの。
 『ねえおねがいベアトさま? わたしイレギュラーズっていう子たちのミイラが欲しいわ』。
 そうしたらベアト様はこう。『あらヴァイオレット、千人食べたのにまだ足りないの?』。
 それで私は『数世紀も経ったのよ? お腹もすくし、オモチャだって飽きちゃうわ』それで――」
 身振り手振りで楽しそうに、そして早口にしゃべり出したヴァイオレットはニーニアが眼鏡の奥から見せる敵意に『oh』といって両手を止めた。
 そして、ゆっくりとはるか後方にある拠点の建物を指さした。
「まあつまり。あなたたちイレギュラーズっていうのは扉『扉』を使うと国から国へたちまち移動できるっていうじゃない? それを潰せばこの先も暫く安心。手柄を上げれば私がちょっとイタズラしても知らんぷりして貰えるじゃない?
 私は魂たくさん食べてお腹いっぱい。みんなはミイラになって不老不死。
 みんな幸せ。ウィンウィン。ねえ? 私にその『扉』、壊させてくれない? ちょっと粉々にして灰にして土に埋めるだけよ。ついでに十人か二十人くらいイレギュラーズを食べてミイラにするけど、かわりに金色に塗って中に飾ってあげるから。ね? いいでしょ? 何百人もいるんだから、ちょっとくらいいいじゃない」
 首を傾げて身を乗り出すヴァイオレットに、ウィリアムが首を振って返した。
「悪いけど、乾燥アンチエイジングに興味はないんだ」
「魂を食べさせる気も、建物に触れさせる気も無い」
 ラダがトリガーに指をかけた所で、ヴァイオレットは大きくため息をついた。
「しょうがないわねえ」
 指を立て、『やれ』のサインを出すヴァイオレット。
 騎士のミイラたちが聖なる剣をとり、うろのような目を怪しく光らせた。
「もうちょっと遊びましょ? そうしたら考えが変わるかも」

 武器を構え、同じ動きで突撃してくる八体の騎士ミイラ。
「任せて――!」
 皆との間に割り込んだミルヴィが片手を顔の半分を覆うように翳し『六方昌の眼差し』を発動させた。
 ミイラですら虜にする魔力が光となって走る――が、騎士たちはそれを無視してミルヴィを通過。一体だけが剣による突きを繰り出してきた。
 『黎明剣イシュラーク』の背をぶつけ、曲線を利用して攻撃をいなすミルヴィ。
「これまでのミイラとは格が違います。油断なきよう……」
 ミルヴィの横から割り込むように刀を繰り出した雪之丞――だが、彼女の剣は別のミイラに手首を掴まれるという形で停止した。
 いつのまに。夜を渡り人の手にすら触れなかった夜叉である雪之丞にとって、攻撃をここまで決定的に止められるというのはこの混沌のルールに当てはまってさえそうそうないことであった。
 掴まれた蹴りを繰り出し、ミイラを突き飛ばしにかかる雪之丞。
「集中攻撃をさせないつもりです。後衛への接近に気をつけてください」
 弥恵は自分の首を狙って短剣を連続で繰り出してくるミイラをスウェーバックによって回避していった。
 短剣を蹴りによって跳ね上げにかかる――が、全く当時に繰り出された蹴りがぶつかり攻撃が相殺された。
「くっ……!」
 シャルティエは剣をしっかりと握り、すり足で迫るミイラをにらみ付けた。
 ちらりとヴァイオレットを見やる。
 そして仲間たちの顔色を見る。
 どうやら仲間たちはヴァイオレットとの戦いに備えてスタミナ(AP)を極力温存しようと考えているらしい。
 だがそれだけに武装が整った騎士ミイラを倒すのに手こずっているといった様子だ。
「僕にそんな余裕はない。全力でいくよ……!」
 シャルティエによる豪快な斬撃――とみせかけて重装盾を全面に押しだし相手の視界をふさぎにかかる。ヘヴィファイト(甲冑戦闘術)におけるバッシュムーブである。この隙に攻撃を仕掛ける……のだが。
 騎士ミイラは跳躍によってレッグへの斬撃を交わし、自重でシャルティエをよろめかせ詰め寄ると、シャルティエの頭の後ろに剣を回した。
「ラップショット……!?」
 大きな盾をもつ者に対する順当な接近戦技である。シャルティエは盾を手放し側面方向に転がるように回避。
「訓練された剣術が使えるのは厄介だ」
 剣や盾を無造作に振り回すのが騎士ではない。体系化され研究を重ねられた武術を納め、身体に叩き込んでいる戦闘のプロである。
「それでも戦って勝てない敵じゃあないはずだ」
 ハルバートを高く掲げ、断頭台のごとき斬撃を叩き込んでくる騎士ミイラ。
 黒羽はオーラを纏った両腕をクロスして斬撃を受け止める。あまりのダメージに肉体がばらばらになりそうだったが、根性で耐えた。
「すこし……やりづらくなってきたかな」
 ウィリアムはチェインライトニングを乱射。
 黒羽とぶつかっている騎士に電撃をめちゃくちゃに叩き込むと、彼を壁にするように身を隠した。
「エネルギーを温存したまま圧勝できると思う? こっちの戦力を一人も欠けさせないままで」
「どうかな。敵もなかなか強いから……」
 そう言いながら、ニーニアは黒羽の後ろからハガキサイズのフォトン手裏剣を連射。
 ハルバートを再び掲げた騎士ミイラに命中するが、騎士ミイラはまるで引き下がる様子はなかった。
 どころか、斧になにか強烈なエネルギーをため込んでいるようにも見える。
「……まずいな」
 黒羽は防御を優先し、振り下ろされる斧から咄嗟に飛び交わした。
 それまで立っていた地面が破壊され石が吹き飛んでいく。
「【必殺】持ちだ。俺の特性をもうかぎつけやがった」
 ヴァイオレットの方をにらむと、ヴァイオレットは肩をすくめて黒羽に『ざんねん』のジェスチャーを出していた。
「あなたタフね。タフすぎる。きっとすごく邪魔になるから……今消えて貰うわ」
 ミイラたちの動きがその瞬間から変わった。
 全員が黒羽めがけて一斉に襲いかかり、近接チームのマークを自主的に解いたのだ。
 こちらの作戦は集中攻撃による着実な頭数減らし。そういう意味では好都合だが、敵が総力を使って黒羽一人を撃滅しにかかったことはなんとしても回避すべき事態だった。
「黒羽を下がらせろ」
「それはできない。俺が下がればヒーラーが無防備だ」
 三方向から同時に斬りかかる騎士ミイラ。
 それを排除すべく、ラダは騎士ミイラたちの頭部に狙いを定めた。
「仕方ない。『よけて』撃つ」
 ラダがライフルを正確に三度発砲。弾は黒羽の肩や足をすり抜けてミイラにだけ正確に着弾した。
 体勢を僅かに崩しつつも、黒羽の腹に短剣を突き立てるミイラ。
「くっ……!」
 気合い(EXA)と根性(EXF)に特化した黒羽である。基礎的な耐久能力は高いとは言いがたかった。
 八人がかりで直撃を受け続ければ一分も持たずに力尽きてしまう。
 だがそれを数十秒にしないことは、できるだけ長引かせることはできる。
「天使さん、お願いします!」
 夕は両手を天空に翳し、リング状のゲートから白衣の天使が次々と飛び出しては黒羽めがけて治癒の注射器を放った。
 膨大な治癒力。だがそれを上回る破壊力が徹底して黒羽へと集中する。
「『見せすぎた』わねぇ」
 アーリアは左右非対称に眉を歪めると、酒瓶を掴んで騎士ミイラの後頭部を殴りつけた。
 くらりとよろめいた騎士ミイラの首を掴むと、踊りにでも誘うように引っ張ってくるくると回し、仲間たちのほうへとパスした。
 当時に飛びかかり、すれ違うように斬撃を繰り出すミルヴィ、雪之丞、シャルティエ。
 『見せすぎた』というのは、はじめの戦いからずっと黒羽の圧倒的な根性の強さを見せすぎたという意味である。
 戦術としてそれに頼りすぎたせいで敵側の緊急性を上げてしまい、結果として黒羽の殲滅を最優先にした作戦をとられてしまったようだ。
 それだけ黒羽が優秀な戦力だったとも言える。
 再び振り上げられるハルバート。
 黒羽は舌打ちしたが、繰り出されるハルバートをオーラを纏って右手で直接受け止めた。
「せめてアンタら全員と道連れだ。後悔するぜ、俺に執着したことを」
 ラダとウィリアム、そしてニーニアの射撃が集中し、取り囲む騎士ミイラたちを削るように破壊していく。
 騎士ミイラのハルバートが黒羽の腕をへし折り、強制的にたたき伏せた時には、弥恵の鋭い回し蹴りによって騎士ミイラの首が派手に蹴り飛ばされていた。
「――!」
 咄嗟に危険を察し、アーリアが弥恵を掴んでその場から飛び退く。
 直後、黒羽のすぐそばに着地したヴァイオレットがぺろりと唇を舐めた。
「よぉく頑張ったわねえ。いいこいいこ。あなたを食べた後は百年くらいかわいがってあげる」
 倒れた黒羽の頭を優しく撫で、次に夕たちを見やる。
「この子ひとり倒すためにお気に入りの騎士ちゃんたちを全部使っちゃうなんて。驚きね? ええと、残りは……」
 指さし数え『九人』と呟いた。
「思ったより沢山残ったのね。嬉しいわぁ。
 わたしだけの、とっておきの――ディナータイムよ!」
 超越者ヴァイオレットが、イレギュラーズたちへと飛びかかる。

●プランB
「うわ……!?」
 咄嗟に盾を翳したシャルティエに、ヴァイオレットの跳び蹴りが突き刺さる。
 刺さると表現したのは、盾の防御が間に合わないほどの鋭い衝撃がシャルティエを突き飛ばしたがゆえである。
「黒羽君はもう動けない。どうすれば……」
「残念だけど」
 吹き飛ばされた彼を引っ張り上げ、アーリアは手袋をはめ直した。
「黒羽くんが倒される想定なんてしてないわぁ」
 先程も述べたが、黒羽のタフさを見せすぎたし頼りすぎた。チーム全体も、そして彼自身も頼りすぎた結果、敵にとって絶対に排除しなければならない対象として着目されてしまった。
「相手だって馬鹿じゃないわぁ。私が敵だったら、黒羽くんみたいな相手は真っ先に封印するか遠ざけるか、事前に排除するかするわねぇ」
「つまりは、プランB」
 ミルヴィが足踏みによってリズムを取り、シャルティエたちの肉体のレベルテンポをも引き上げ始めた。
 共振によってどくどくと脈打つ心臓が、肉体のタガを少しだけ外す。
「プランB? それって――」
「ありませんよ。そんなもの」
 雪之丞は目を細め、凄まじいスピードでヴァイオレットへと斬りかかった。
 首を狙った斬撃がヴァイオレットへ迫り、ヴァイオレットは回避――しなかった。
 切り取られた首が回転し、民家の軒先へと落ちる。
 僅かに顔をしかめる雪之丞の首を、ヴァイオレットの手が赤い爪を立てて掴む。
 払いのけるように雪之丞を振ると、真後ろから斬りかかったミルヴィの曲刀を素手で掴んだ。
 万力で固定されたかのように動かない刀。
 軒先に転がった首がぺろりと舌なめずりをした。直後にどろりと濁った血のように溶け、肉体の傷口からふたたび頭部が高速再生した。
「あぁ……いいわ。このくらいやってくれないと」
 二人を突き飛ばし、夕へと迫るヴァイオレット。
 見られていたのは黒羽だけではない。ここまでの戦いで敵味方を識別して回復できるうえ、豊富な充填能力をもつ夕もまた優先して倒さなければならない対象である。
「下がって夕ちゃん!」
 間に割り込んだニーニア。
 突きだした拳からフォトンメールを連射するが、ヴァイオレットまるで意に介さずにニーニアの肩と側頭部をがしりと掴んだ。
 首筋にかじりつき、そのまま食いちぎる。
「――ッ」
 声にならぬ声。
 夕は飛び退きながらも『ファーストエイドII』を召喚。
 両サイドからアーリアとウィリアムが同時に飛びかかった。
 ほぼシンメトリーの動きで掌底を繰り出す二人。
「お返しするよ」
 ウィリアムは片眉を上げると、『ショウ・ザ・インパクト』を至近距離から叩き込んだ。
 衝撃の影響自体は身体から取り去ったようだが、物理エネルギーには逆らえずヴァイオレットは吹き飛んだ。
 吹き飛んだ先。民家の壁に『着地』し、バネでも仕込んだかのようにまっすぐ跳ね返ってきた。
 魔女の『おまじない』が込められた手袋から魔術障壁を展開するアーリア。
 彼女の顔面をわしづかみにしようとしたヴァイオレットの手が半透明な障壁で止まるが、とめきれずにめりめりと指がこちら側に突き出た。
「奴を引きはがす。手伝え」
 ラダは屋根の上から特殊弾頭を発射。
 ヴァイオレットの肉体にめり込んだ弾が魔術を行使し、傷口を複雑に破裂させた。
「今」
「月の舞姫、華拍子、天爛乙女の津久見弥の参上です!」
 跳躍した弥恵の足がヴァイオレットの首に絡みつき。薙ぐように振り落とす。
 その際に生み出された炎龍がヴァイオレットに食らいつき、激しく炎を燃え上がらせた。
 地面を転がり、炎を振り払うヴァイオレット。
 大地を拳で殴りつけると、真っ赤なオーラが彼女を中心に巻き上がった。
 周辺家屋が崩壊。道路が砕け、ガス灯が倒れていく。
 それでも――。
「崩し方も、崩されぬ方法も、学んでおります。
 魂の喰らい方も、喰らわせぬ方法も。
 その進軍。終わらせてみせます」
 崩壊する景色の中へ飛び込み、雪之丞は刀を振り込んだ。
 斬り飛ばされる腕。直後に掴まれた雪之丞が、豪快なスイングによってニーニアと夕の方へと飛ばされてきた。
 思わずキャッチしようとした夕に、ニーニアが呼びかける。
「追撃だよ! カウンターを!」
「わ、ちょっ……じゃあこれで!」
 ニーニアと夕が同時に大地を踏みつけると、無数の円柱型郵便ポストが大地から飛び出しヴァイオレットの放つ真っ赤なオーラをカウンターヒールによって防いだ。
 オーラが炎のように爆ぜ、そこへ連続でオーラの爆弾が投げ込まれた。
 対抗し、『破城天鎚(偽)』を打ち込むウィリアム。
 衝撃だけが走り、ヴァイオレットへと直撃する。
「見てるだけで退屈だったでしょお?」
 遊んであげる。そう言って飛び込んだアーリアが手袋の指先で空間をジッパーのように開き、ヴァイオレットを異空間へと放り込む。
 すぐに突き破ってきたヴァイオレットだが、さすがに足下がよろめいていた。
 追撃にと振り上げたアーリアめがけ、ヴァイオレットの掌底が走る。
「あぶない!」
 アーリアを横から突き飛ばすシャルティエ。
 直後、そこまで立っていた場所が赤いオーラの炎によって飲み込まれた。
 炎が抜けた、すぐあとに。
 ミルヴィと弥恵が全く同じテンポで蹴りを叩き込んだ。
「ユリーカ覚えてる? 一年前一緒に小さな冒険いったヨ。絶対ここでアンタをやらせたりしない! また一緒に冒険にいくんだ!」
「ユリーカ様と生きて明日を迎える為に負けたりはしませんから!」
 決して高い精度の狙いではなかったが、よろめいたヴァイオレットの腕をもぎ取るには充分すぎる衝撃だった。
 両腕を失い、大きくのけぞるヴァイオレット。
 その瞬間も、ヴァイオレットは目を見開いて笑っていた。
 口を開き、舌を出し。
「素敵。あなた――」
 言葉の途中で、頭が爆発して吹き飛んだ。
「聞くつもりは無い」
 屋根の上から立ち上がり、息をつくラダ。
 両腕と首を失ったヴァイオレットは、どろどろと溶けて崩れてしまった。

「勝った。魔種相手でも、ちゃんと戦えたんだ……僕」
 満身創痍。しかし命は無事。守るべきひとも守れた。
 シャルティエは傷ついた身体を休めるべく、ローレット拠点の壁に背を預けた。
 戦いには勝利した。大けがも負ったが、誰も死んじゃあいない。上々だ。
 安全を知らせると、ユリーカがバリケードをばりばりやって内側から顔を出した。
「た、助かったのですか!?」
「ああ。なんとか、な」
 ラダが歩み寄り、窓から顔を出すユリーカの頭をわしわしとやった。
 同じように駆け寄ってくるミルヴィや弥恵たち。
「魔種は……」
「あの通り。やっつけたよ」
 ニーニアが通りを指さす。
 めちゃくちゃに壊れた大通りの真ん中に、赤いドレスとブーツだけた落ちている。
 そのそばには黒羽が仰向けに倒れていた。
 そろそろ手当しなくては、とアーリアとシャルティエが近寄っていくと……。
 黒羽が目を開き、ひとりでむっくりと起き上がった。
 その様子を二度見するウィリアムと夕。
「うそでしょ」
「生きて……というか起きれるんです?」
「根性だ」
 黒羽は首を振り。周囲の様子から状況を理解すると、ヴァイオレットが残した服とブーツのそばへとかがみ込み、手をそえた。
「お前が魔種になった経緯は知らねぇし、今までの行いは許されねぇが……。
 痛みと苦しみは、俺が連れてく。眠れ、ヴァイオレット」

成否

成功

MVP

藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505) [重傷]
ド根性ヒューマン
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562) [重傷]
寝湯マイスター
藤堂 夕(p3p006645) [重傷]
小さな太陽

あとがき

 ――ローレット拠点の防衛に成功しました
 ――ユリーカも無事でぴんぴんしています!

PAGETOP