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シナリオ詳細

俗物シスターだいしっぱい☆
俗物シスターだいしっぱい☆

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 その日、天義――聖教国ネメシスの片田舎に佇むサン・リ・ブラン女子修道院は、創立以来最大の危機を迎えていた。ひとりのシスターの行ないが、神殿騎士団に異端と認定されたのだ。
「シスター・テレジア。ですからあのような男の行為を赦すなど、良くないと言ったのです」
「ぐっ……ですが修道母様! あの方が本当に悪意を持ってあのくっっっそ安そうな宝石を高く売りつけてらっしゃったのでしたら、どこぞの偉い司祭様とやらがそれを見抜けなかったはずがありませんわ! それと、あの男からお布施として戴いた真珠のイヤリングをなさりながら仰っても説得力がありませんわ!」
「言葉遣い。それと、イヤリングには罪はないのです」

 シスターと修道母の言い争いから察するに、どうやらどこぞの宝石商の男が、どこぞの司祭様に安い宝石をぼったくり値で売りつけ、神殿騎士に目をつけられたらしい。そして騎士団が調べたところ、男がこの修道院を訪れてその行為の是非を問うた際、このテレジアなるシスターが屁理屈を捏ねてOKを出してしまったことが明らかになったというわけだ……しかも、宝石商からの“お布施”と引き換えに。

 厳粛で知られる天義においても、富を渇望し、自らを飾りたいという人の欲望は、決して拭いきれないものではあった。現在進行形で佳境を迎えつつある月光事件の魔種どもをそういった不正義の好例に違いあるまいが、敢えてそこまで堕ちた例を取るまでもなく、神という存在は人々の欲望のために、都合よく使われていた例も散見されていたとも言えよう――直接自らを飾らんとするならば邪なる強欲なれど、神の崇高さを称えるための豪華な建物と聖職者衣装を聖職者が“有効に活用する”ことは、むしろ神の御心に叶うものなのである。
 サン・リ・ブラン女子修道院は、女子修道院(nunnery)という単語の俗用が意味する言葉ほど落ちぶれてはいなかったものの、それなりに聖俗併せ持った修道院であった。つまりまあ……対外的には我々のイメージする禁欲的で神聖な場所ではあるが、裏には普通の女の子の普通の女の子による普通の女の子のための園が広がってるってことさ。
 そんな修道院にとって、彼女らの俗っぽい部分をいい感じに信仰にこじつけることのできるシスター・テレジアのギフトは、実に重宝するものだった。彼女なら、その辺の神殿騎士に異端を問われたところで平気で言いくるめられる。だから、今回も彼女は、サン・リ・ブラン女子修道院が多額の賄賂の見返りに悪徳商人を見逃したと疑う神殿騎士を容易く追い返すことができる……と思われたのだが。
「審問にいらっしゃるのは……ブルーノ卿!? 異端審問相手のギフトを無効化させるギフトをお持ちになる、わたくしの天敵ではございませんこと!?」
 さようならシスター・テレジア。君を忘れない……と言いたいとこだけど、彼女はこういう時に限って妙にしぶといので、弁護人としてローレットの特異運命座標たちを雇って切り抜ける道を選んだのだ! ……宝石商からせしめた“お布施”を元手に。

GMコメント

 ……という感じで、なんだかこう堕落した感じのある女子修道院が、当然のように神殿騎士に目をつけられてしまいました。
 でも不正義っぽさはあれども悪事とも言えないし、宝石商も審美眼のない相手を選んで商売してるだけで優良誤認詐欺を働いているわけではないようですので、皆様どうか助けてあげてください。

●注意!
 本シナリオは、皆様の解決方法次第で『善属性』になったり『悪属性』になったりする、特殊な依頼です。名声を得るか悪名を得るかは皆様次第ですので、ご相談の上ルートをご選択ください。

●成功条件
 ブルーノ卿がサン・リ・ブラン女子修道院とシスター・テレジアから手を引けばシナリオ成功となります。
 成功までの道筋としては以下のようなものを想定しておりますが、皆様がそれ以外の方法を思いつくようでしたらそちらでもかまいません(その場合、善悪属性は方法次第で決まります)。

(1) 言いくるめルート
 宝石商が安い宝石を高く司祭に売ることがいかに神の御心に適うのかを説くことで、ブルーノ卿の追及を躱します。
 直接理論立てて説く以外にも、それっぽい寓話を語ったり、演劇やら何やらで演出する係がいると、ブルーノ卿は納得してくれやすくなります。
 このルートは『善属性』です。成功した場合は『天義』における名声がプラスされ、失敗した場合はマイナスされます。

(2) 処刑ルート
 月光事件により神殿騎士の手が各方面に取られている今、ブルーノ卿が“不幸な事故”により神の御許に召されれば、誰も修道院を咎める者はいなくなります。
 高い防御技術と特殊抵抗を誇り【防無】技と【必殺】技を持つブルーノ卿と、剣と弓で武装した4名の従者たち(それぞれ新米兵士くらいの腕前はあります)を相手取るのは楽ではないでしょうが、実力に自信があるなら最も手っ取り早い方法ではあります。
 このルートは語るまでもなく『悪属性』です。成功した場合は『天義』における名声がマイナスされ、失敗した場合は変化ありません。

(3) 敵の敵は味方ルート
 審問中に“誰がどう見ても邪悪っぽい存在”が乱入してくれば、修道院とブルーノ卿は天義人同士で結束して戦うはずです。彼らは共闘を通じて和解してくれるでしょう……皆様のうち何人かが彼らの側について上手く誘導してやれば、より和解成功率は高まります。
 このルートは、邪悪側となったキャラクターは『悪属性』、天義側についたキャラクターは『善属性』となります。

  • 俗物シスターだいしっぱい☆完了
  • GM名るう
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年06月30日 21時25分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー(p3p000244)
緑色の隙間風
銀城 黒羽(p3p000505)
ド根性ヒューマン
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
リア・クォーツ(p3p004937)
旋律を知る者
津久見・弥恵(p3p005208)
嫣然の舞姫
物部・ねねこ(p3p007217)
ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)
天義の希望

リプレイ

●後始末
「成る程……この女子修道院がならず者に狙われていたというのは、どうやら本当だったようだ」
 捕縛され足元に転がる“悪党”ども――すなわち『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)、『凡愚』銀城 黒羽(p3p000505)の3人を見下ろして、ブルーノ卿は険しい顔をしてみせたのだった。
「だが――」
 そこで何やら、怪訝そうに頭を捻る卿。確かに彼の前に現れた事柄は全て、彼の前に並んだ特異運命座標たち――と女子修道院の関係者たちの言うとおりであって、何もおかしなことはないように見える。
 一方で彼の神殿騎士としての直感は、どことなく承服しがたいものを告げていた。
(だが、何故……?)
 いかに彼が神殿騎士だとはいえ、謂れなき罪で彼女らを疑うわけにもゆくまい。ブルーノ卿は、じっと様子を見守る特異運命座標たちの目の前で険しい顔を続けながら、今までこの地で起こったことを思い返して、はたして彼は断罪を行なうべきか否か、改めて判断材料を探ってみるのだった……。

●言いくるめ
 ブルーノ卿のサン・リ・ブラン女子修道院における最初の記憶は、なんと言っても申し訳なさそうな上目遣いを向ける、『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)の艶やかな表情だったろう。女子修道院に似つかわしくない彼女の奔放な衣装と仕種を目の当たりにした途端、聖なる使命に身を捧げたはずの卿ですら惹き込まれそうになってしまったことを、卿は思春期男子のような恥じらいとともに今もはっきりと憶えている。
 この魔性、まさしく女子修道院の堕落の証拠に違いあるまい。
 ……そう断罪してこの事件を終わらせることができていたならば、今の彼の苦悩はなかっただろうに。だが、彼女は卿の腕を取り、まるで人目から隠すように建物内に連れてゆくではないか。
 何か事情があるらしかった。事実、院内の長机には神妙な顔をしたシスターたちと、それとは全く釣り合わない格好の世俗の者たち――つまりローレットの特異運命座標たちが、並んで顔を突き合わせているところ。
「これは一体、どういうことだ」
 卿は戸惑いを注意深く抑えつけたつもりだったが、今思えば幾ばくか表に出してしまったかもしれない。というのも机の世俗側には、鉄帝式の白い祭服を金で彩った、赤毛の女司祭の姿まで見えたからだ。
「『クラースナヤ・ズヴェズダー』……」
 彼女の手許の赤い十字の聖印に気付いて、遠く噂に聞くその名がブルーノ卿の口から零れる。卿から見れば異端派閥の、『灼鉄の聖女』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は……けれども今日は特異運命座標として来ただけだと語る。
「こんな話をご存知かしら? この辺りで強盗事件が相次いでいると」
 けれども魔種らによる事件が国全体を揺るがせる今、強盗などという瑣末事で騎士様の手を煩わせるわけにはゆかなかった。そう存じておりますが……と灼鉄の聖女が確認すれば、シスターたちは沈黙を保ったままで、そっと目配せのみで答えを返す。
 こう見ればあのシスター・テレジアさえも、随分と淑女らしいように『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)には見えた……でも、普段は聖女然としてるけどちょっとリアたち修道女や院の孤児たちがちょっとやんちゃをすると鬼か悪魔に変わるババア(なんて思ったことがバレたらまたこっ酷く叱られてしまう!)に苦しめられてきたリアにはよく解る。あれは、不正義認定と偽証の罪の狭間にそっと身を隠すための、ある種の処世術なのだ。誤解は招くが、だとすればそれは卿の至らなさであって、彼女らは幾らでも言い逃れできる……事前の口裏合わせどおりだ。
「なるほど、我々の耳に入って来ぬ理由は解った」
 ブルーノ卿はどうやら“至らない”側だったらしく、そのことについては疑問を差し挟みはしなかった。後から思えばこの女子修道院からばかりではなく周辺地域からも全く報告が上がってきていなかったというのは奇妙な限りではあるのだが、それも実際に強盗がやって来たという事実を前には翳む。
 だがそこで……卿は、自身がこの女子修道院にやって来た理由を思い出さねばならぬのだった。
「ではそれと、この女子修道院で行なわれた罪――すなわち、この女子修道院の墨付きを得た宝石商がアレッサンドロ司祭に詐欺を働いたことについては、いかにお考えか!!」
 卿の篭手が机を叩く。卿の手許の紅茶が一瞬皿から浮き上がり、耳障りな音を立てシスターたちを威圧した。
 ……けれども。
 そんな中、ひとりの少女がおずおずと、けれどもはっきりとした意思を持って、そんな卿へと申し出るのだった。
「確かに、安い宝石を高く売ることは、あまり良いこととは言えません。ですがこれは、強盗たちをおびき寄せるための作戦だったんです」
「作戦……だと?」
 思ってもみない弁明の言葉に、しばしの間言葉を失って、どのように彼女らを批判すればよいのかと考えあぐねるばかりの卿。一方でその間にも、物部・ねねこ(p3p007217)の話は次のように続く。
「悪に対して罠を張ることは、はたして同じ悪なのでしょうか? いいえ、私はそうは思いません。
 確かに、宝石商は司祭様に迷惑をかけたかもしれません。ですが司祭様もお認めになるような宝石をこの小さな修道院が受け取ったと盗賊たちが知れば……餌に釣られた悪は、必ずやここを襲撃に来るはずです。栄光ある神殿騎士様まで調査にいらしたほどなのですから、確実に高い効果を挙げている証拠です」
 そしてブルーノ卿がその言葉の意味を咀嚼して理解するよりも早く、『天義の希望』ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)の懐から、1枚の書状が取り出されたのだった。
「ホラ、その証拠に。ボクたちはこうして許可を取って作戦を行なってるわけっスしね……」
 ……許可だと?
 ミリヤムの書状を検めてみるブルーノ卿。なるほど、これは免罪符のようだ。しかも発行者の名を確認したならば……。
「こ……この御名は……!」
 ブルーノ卿ですら軽々しく名を口に出すのを憚られる枢機卿の名が、その文書には記されていたではないか! ならば一介の司祭がどう抗議したところで、その決定は覆るまい……。
 卿にはもはや、全てが神の御心であるかのようにも感じられていた……だがそれは、この免罪符自体が、ありもせぬ盗賊騒ぎをでっち上げることで発行させたものでなかったのならば、の話だ。
 眉間に皺を寄せて唸る神殿騎士の顔を、ミリヤムはダメ押しの涙目を作って覗き込んでみせた。
「信じて貰えないっスか……?」
 かつて不正義と認定されて天義を出た『断罪の聖女』にとって、神殿騎士に顔をまじまじと見つめられることがどれほど危険なことだろう?
 だが幸い、ブルーノ卿は「そ、そうでははない!」と目を逸らすのだった。アイドル化粧とあざとい表情に覆われた過去よりも、彼の悩みは今に向いている。正直、サン・リ・ブラン女子修道院と宝石商の行為に対する一連の弁護は、確かに怪しさを感じずにはいられない。しかし、ならば枢機卿の御名を掲げた論理に対し、いかなる論理なら対抗しうるのかと問われれば、彼自身も何一言として答えられぬのだ!
「だが……そ、そうだ!」
 取り囲む女性たちの圧にたじたじとなりながら卿が言えたのは、苦し紛れのこんな言葉だけだ。
「それらは全て、本当に盗賊どもの断罪に繋がるのなら……だ! どれほど正しき言葉であっても、実現できねば絵空事に終わる……私はこの剣にて自ら神の理想を地にもたらして来たが、貴女がたも無論、必ずそれに繋げると言うのだな!?」
 ところがそうブルーノ卿が息巻いたとき……ちょうど表で、シスターの誰かの悲鳴が上がったのだった。

●狂言強盗
「何事だ……!?」
 卿が4人の従者とともに入口扉を振り向いたのは、ちょうどその扉を何者かが蹴破ったのと同時のことだった。
「ヒャッハー! お高い宝石があるってのはここかぁ!」
 数発の甲高い銃声が鳴り、天井に幾つかの穴が開く。狼の毛皮を被り、ネオフォボスバッジ(!)をつけた悪漢は、まるで神殿騎士らなどハナから興味ないとでも言うかのように、舌なめずりして女たちを品定めしはじめる。
「いい女もいただき放題じゃねぇか。そうだな……おい、そこの女、こっちに来やがれ。大人しく従えばダリア(※註:なんかパンクな格好をさせた子ロリババア)の餌にはしないどいてやる」
「キャー! わたくしの美貌が悪漢の目に留まってしまいましたわ!」
「……」
 何故だか嬉しそうなシスター・テレジアの足元に、黙ってジェイクは『狼牙』を発砲してみせた。かつての相棒は、今となってはジェイクの成長を見守るばかりになってしまった。けれども今も、ほっとくとこっちの演技を台無しにしそうな俗物娘を黙らせるくらいの手伝いはしてくれる。
 さすがに黙るテレジア。すると、その代わりに声を上げたのは、まさにブルーノ卿その人だった。
「宝石を狙う盗賊とは貴様のことか」
 聖別された剣を抜き、神の名の下にそれを掲げてみせる。
「ここを聖なるサン・リ・ブラン女子修道院と知り、神殿騎士の前で狼藉を働こうとした罪、今すぐこのブルーノが裁いてくれる!」
 けれども彼が聖なる一撃を繰り出すより早く、今度は全く別の方向から、耳障りな下卑た笑い声が聞こえてくるのだ。
 怪物じみた緑色の肌。まるで老魔女のように大きな鉤鼻。頭頂には威圧的なたてがみを思わせるモヒカン髪が揺れ、血のように赤い眼と、黄ばんだ歯を覗かせるケタケタ笑う口は、我こそは悪の尖兵種族であると物語る。
 ゴブリンであった。
 しかしキドーは明らかに、“混沌”で知られたゴブリンとは一線を画す知能の持ち主であるらしかった。
「おうおうおう、神殿騎士様まで雁首揃えてご苦労なこった」
 醜悪な小人の体と比べれば大きく見えるククリを弥恵の首筋に当て、これ見よがしに刃をひらつかせてみせる。
「ほれ、大人しく宝石を渡しな。さもなきゃ……こうだ」
 よく見れば引く刃は随分と弥恵の肌から離れていた――流石に演技で仲間を怪我させてしまうのは忍びなかった――が、ブルーノ卿もその従者らも、そのことに気付いたりはしていない。悪の断罪に重きを置くべきか、それとも人質の安全を優先するか……一瞬、この部屋にいる戦える者は自分たちだけではないと忘れて逡巡する。“悪党”たちの新手が登場してみせるには、十分すぎる隙だ。
 突如として部屋の明り取りの窓が蹴破られ、辺りに硝子の破片が降り注ぎはじめた。何者の仕業だ――卿がそちらを振り向けば、けれども床の上には誰の姿もない。
 けれども少し上を見上げれば、そこには邪気らしきオーラを纏って宙に浮いた、ひとりの男の姿が目に入るのだった。
「まったく……2人ともはしゃぎすぎですよ」
 尊大に腕組みした姿勢を崩すことなく優雅に降り立った“首魁”黒羽は、その蔑んだような眼差しと派手に立ち昇る闘気の黄金の輝きで、金のためには手段を選ばぬ人物であるように見える。もっとも、ただの金の亡者ではないに違いない……神殿騎士とその従者、合わせて5人を前にして、余裕の表情を崩さぬのだから。
 その証拠に……彼が手のひらを神殿騎士たちへと向けた瞬間、従者たちがもがきはじめたのだった。黄金色の闘気に全身を覆われて、一歩踏み出すにも全神経を集中させねばならなくなった彼ら。彼らを闘気から解放せんとするならば、ブルーノ卿は、その剣にて闘気を主ごと断たねばなるまい!
 そんな卿を支えんと、リアの中で信仰の炎が燃えた。
「あたしも助太刀させて貰うわ……死ねぇ! 悪党!!」
 言葉遣い。だが実際、激しく奏でられる魔力のヴァイオリンの音は、荒々しい祈りに違わぬ怒りの炎にて黒羽を焼かんとす。だって悪役どもがやけにノリノリだから、こっちもノリノリでやりたくなるんだもの……どうせ黒羽はこの程度じゃ死なないし。
 その時、にやり、と黒羽が笑ったのが卿には見えた。強がりを……その時はそう思った卿ではあったが、次の瞬間にはミリヤムが、自分を背から突き飛ばしたのが判る。何事……? 答えは、ジェイクの『狼牙』が知っている。卿を狙った銃弾を、彼女はその身で庇ってみせたのだ! こんなこと、不正義聖女がするわけないよね!
 鮮血が散る。それがくすぐる内心の欲望をおくびにも出さずに、ねねこは彼女を治療してみせる……そしてテレジアに自ら不正義ではないことを示させるため、必死に声を張り上げてみせる!
「シスター・テレジアはブルーノ卿の支援を!」
「存じてますわ!」
 まさに、その言質が必要だった。テレジアの祈りが卿に力を与え、ジェイクが銃を取り落とす。これでアリバイ工作は十分……これ以上は血生臭い舞台を続ける必要なんてない。
 キドーの腕の中に囚われていたはずの踊り子は、ひらりと華麗な舞いを披露してみせた。あっという間に人質がすり抜けて出ていってしまったゴブリンは……慌てて魔力で編んだ鎖を振り回すものの、その危険な武器さえも、弥恵にかかればバックダンサーのようなもの。
「月を彩る華の舞、照覧ください」
 舞姫ここに在りと名乗ってみせて、繊細に、けれども大胆に演舞する彼女の艶やかさたるや、女子修道院との事前打ち合わせの段階でテレジアの奔放さを叱った張本人とは思えぬほどだった。思わず目を惹かれる悪党ども……その隙を、審問者たちが逃すはずもなし!
「ふっふっふ……天義人ばかりが神の僕と思われては困りますわっ! 『主よ……』」
 ヴァレーリヤ唱えた聖句はまさに、鉄帝司祭の本領発揮であった。勝利こそ正義。一撃昏倒の威力こそ慈悲。天使のメイスを力いっぱい突き出せば、ブルーノ卿も目を見張る衝撃波が悪党を襲う!
「くそったれ! タダで済むと思うなよ……!」
 そんな捨て台詞とともに逃げ出そうとしたキドーの体が舞って、カエルのように壁に貼りついたのは、我ながら神殿騎士様にご満足いただけそうな無様な負け方をできたとキドー自身思う。もっとも、よほど気持ちよく勝てすぎたのか卿がトドメに首を刎ねようとしたのには身の危険を感じたが……幸いにもそこはヴァレーリヤが、殺しては尋問できぬと首を振り、他の悪党に向かうよう促してくれた。

 その後のことは……言うまでもない。
 多勢に無勢。サン・リ・ブラン女子修道院周辺を脅かしていた“悪党”は、全てお縄になったというわけだ。

●審問結果
「――ああ、そうだ。私は一言、『アレッサンドロ司祭の損害の補填』を命じねばならなかったのだ」
 熟考の末、やはりどこにもおかしな点を見出せなかったブルーノ卿は、それこそが納得のゆかぬ理由だ、と自分に言い聞かせるように結論付けたのだった。ところで女子修道院にはおあつらえ向きにこの前手に入れたばかりの宝石があるわけで、それを差し出すことで不正義認定を回避できるって言うなら安いってものだ。
「もし今ので足りないようでしたら……是非ともこちらもお使いくださいませ」
 どさくさに紛れてそっと自分のサイン入りハンカチをブルーノ卿に握らせる弥恵。卿には今はその価値は判らぬが……いつしかそれを理解する時が来るだろう。

「この度はご協力有難うござました、サン・リ・ブラン女子修道院の皆様。そして、ブルーノ卿」
「不幸な誤解からは始まりましたが、こうして無事に正義を為すことができました」
「そのようだ。貴女がたの行く先を、神の栄光が照らさんことを」
 ブルーノ卿は、見送るリアやねねこらと力強い握手を交わして去っていった。
 そして、彼らの後姿が見えなくなってしばらく経った頃……。

「……まったく、感動させられたぜ。こんな俗物すぎるシスターなんてものにはよぉ」
「ホントだぜ。これに懲りたら、二度と変な欲は出さないほうがいいぜ……とくに天義じゃな」
 全てが終わり、縄を解かれる中で、皮肉げに黒羽もジェイクもテレジアに忠告してみせたのだった。
 ……のに何故か、妙に鼻高々なテレジアの姿。次に同じことがあっても二度と助けてやらんから覚悟しろマジで。
 まあ小うるさいババアに辟易してるリア的には、似たような境遇っぽい彼女はむしろ好感が持てるくらいではあるんだけど。ただ、問題は……シスター・テレジア。あなた、宝石ブルーノ卿にぶん取られちゃったけど報酬大丈夫?
「ふ……偶然にも納屋に“命の水”が沸くところがありますわ!」
「えっ、お酒? どこどこ?」
 なんかヴァレーリヤがめっちゃ釣れた。騙されるなそいつは報酬って言わない。
「チッ仕方ありませんわ……わたくしがローレットに亡命して働くしかありませんわね!」
 まるで献身的なフリをしてるけど、どー考えてもこいつ自由を満喫する未来しか見えない。
 ハァ、と小さな溜め息が聞こえた。
「俗物的なのも程々にっスよ……でもとにかく、成功を祝ってコンサートを開くっす」
 ミリヤムはそんなつもりだったらしかったけれど……。
「……ボロが出る前に退散しましょう?」
 ……どうやら特異運命座標たち全体で見れば、リアのように疲れ果てたタイプのほうが多数派だったかもしれない。

成否

成功

MVP

ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505) [重傷]
ド根性ヒューマン

あとがき

 えー……そんなわけでこの俗物シスターは、自分の尻を自分で拭いつつ伸び伸び暮らすため、ローレットにやって来ました。来てしまいました。
 きっと彼女は天義に詳しい情報屋として、いろいろと妙な仕事を拾ってくることでしょう……どうせロクなことにはならないので皆様、その時は好きなだけ彼女のことをこき使ってやって下さい。

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