シナリオ詳細
人よ、我を討ちたもう
オープニング
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ザァ、ザァ、と音が鳴る。
窓に打ち付ける音はバケツの水を叩きつけるかのようだ。
異常な湿気に『蒼の貴族令嬢』テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)は寝苦しそうに寝返りを打つ。
「うぅん……うぅん……」
二度、三度と寝返りを打っていたテレーゼは、ふとぐぐっと目を強く結んで、やがて寝ぼけ眼でぼんやりと目を開けた。
「……んん……どなた? でしょう……か?」
『人の子よ』
声が、した。
「んあい?」
声の方を向けば、ぼんやりと浮かぶ碧っぽい影。
テレーゼはゆっくりと上半身を起こして影の方を見る。
『お主は強き子らを知っているか?』
「強い……人……?」
不思議そうに首を傾げたテレーゼはやがてこくりと頷いた。
「ローレットの方々なら……きっと強いんじゃあ、ないでしょうか」
もう一度、こくりと。
あぁけれどこれは、肯定のソレじゃない。
こくり、こくりと、舟をこいで――ぱたりと再びベッドに倒れこむ。
やがて聞こえるのは、静かな寝息。
『ローレット……ローレットなるモノであれば――』
緑の影が、ぽつりと呟いて――ボゥと旋風を巻き起こしてその場から消え去った。
――さて翌日の事だ。
「お嬢様!? これはどうしたのですか!?」
テレーゼはそんな女性の大声を受けて跳び起きた。
「な、ななな、なんでしょうか?」
そう言っておっかなびっくりという様子を見せたテレーゼは、直ぐに部屋の中を見渡して目を見開いた。
散乱するインテリア、引きちぎれた観葉植物、めくれ上がったベッド。
「侵入者ですか? お怪我は!」
「特に問題はないみたいですが、この惨状は一体……
私、こんなにするぐらい寝相悪かったですっけ?」
言いつつも、それが人為的なものというよりも、どちらかというと自然的な――ちょうど強烈な風に煽られたような状況であることは直ぐに分かる。
「これが風に煽られたにせよ、尋常ではないでしょう」
「――そういえば、昨日の夜中、何かと出会ったような……?」
「なんですかそれは! ともかく、犯人を捜してもらいましょう」
「それなんですけど、良かったらローレットの方にお願いしてもよろしいですか?
何となく――あれはそれを願っている気がして」
●
イレギュラーズが依頼があると言われてブラウベルクに訪れると、そのまま案内されてブラウベルク家の敷地内にある屯所に連れられていた。
「初めましての方、以前にお見かけした方もこんばんは、テレーゼと申します。
さて、今回なのですが――コレの討伐をお願いしたいのです」
そう言ったテレーゼは、暴風に煽られてビシビシと顔に当たる三つ編みをけだるげに払う。
その隣には、碧の塊がいた。
かろうじて人に近い――ただ、その場にいるだけでめちゃくちゃな風圧で吹き飛ばされそうになる。
人というよりも自然の類――けれど、精霊種のソレでもない。
「……そうですね、コレは、いわば精霊種に限りなく近い亡霊の類、なのでしょう。
もしもこのままで放っておけば、いつかは本物の自然災害になって闇雲に
周囲に暴威をふりまくことになる……と、そう結論立てました」
静かに目を伏せて、少女は悲し気に言うと、ちらりと君達の方を見た。
「今はまだ、理性の類があります。
そして――討伐する誰かを望んで私の元に姿を現わしました。
どうか、コレを安らかに眠らせてください」
ぺこりと頭を下げる少女の表情は酷く暗い。
その隣、指摘された当の亡霊もまた、静かにたたずみ。
『人の子らよ――強き子らよ――
我はもう――』
それは、風の音のような、涼し気な、言葉というより、テレパシー染みた何かだった。
- 人よ、我を討ちたもう完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年07月05日 21時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
(混沌の風には、理知に溢れる方もおられるのですね。
桜咲も、そのお心に応えられるよう、立ち続けましょう)
こちらをあおりつける風にそっと髪を抑えながら『要救護者』桜咲 珠緒(p3p004426) は穏やかに想う。
(心優しい亡霊さん、なのね
その理性で暴威を抑えてくれているうちに倒す――安らかに眠らせてあげるのが、
ボク達にできるせめてもの手向け、なのかしら……)
テレーゼよりとりあえず見つかった“こういうモノ”に対する情報を纏め直した『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)は、静かに佇む暴風霊に視線を向けて、そっと一礼した。
「貴女のやさしさに感謝を。そして――全力で行くわ!」
宣言しつつ、珠緒の力で血の呪印を描かれる。
相応の条件を有するが、情報接続が可能になる利点は大きい。
特に、回復役である二人であるならば、その連携はきっと必要になってくる。
(自分が狂う前に…ね。潔いというか、良い人?なんだろうけど。
……今も苦しんでいるのだろうし。ここは終わらせるべきなのよね)
やたらめったら吹き付けてくる風に帽子を押さえながら『ピオニー・パープルの魔女』リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)は覚悟を決めた。
時間がないのならなおさらだ。
「よし、そうと決めたら容赦はしないわ! イレギュラーズの力を思い知らせるのよ!」
宝石のちりばめられた羽ペンを握りなおして、小さな魔女は暴風霊を見上げて間合いを開けていく。
「俺は依頼人の意向には沿う主義だ。
……暴風霊、お前はどんな戦いの末に打ち取られる事を望む?」
地面から僅かに浮くようにして漂う碧の人型を見据え、 『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は静かに問う。
その隣に立つ『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)はふわふわと浮かぶ敵を見る。
「精霊か。…他者の害になる前に来るとは、殊勝ではあるが……そも、なぜそのような状態に至ったのだろうか、な?」
軽く眼鏡を上げて真っすぐに見据える。
轟轟と満ちる暴風の中から、やがて声が下。
『人の子よ――我は――強き者らに我を奪われるを望む者なり
我は――我が身を討ち果たせる者を望む者なり』
揺らめく暴風霊にシグはそのままレイチェルの方を向く。
「魔を討つは聖剣を持つ勇者、といわれている。……最も、お前さんは勇者ではなく、
私も聖剣に非ずだが……な」
言葉を紡ぐシグの肉体が、金属質な剣へと姿を変える。
僅かに浮遊する『知識の魔剣』はその姿のままに、己のが契約者――最愛なる彼女へと次の言葉を告げた。
「……それでも、共に往こう。…我が最愛の契約者よ」
「……頼んだぜ、シグ。例え魔剣だろうが、俺が一番信頼するのはお前だ」
レイチェルは魔剣となったを携えるようにして、静かに構えを取る。
目の前に立つ――或いは、ある、暴風はそんな二人を静かに見下ろしている。
(まさか、まぁ。俺自身と重なるような奴じゃあねえけどさ。俺ただのカオスシードだし。
でもなんか、他人事じゃねえというか。俺の中の何かが反応するんだよな)
暴風に煽られながら、『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は暴風霊の目――のように見える少しだけ色合いの違う部分を見据えた。
「吹き荒れられない風ってのも、哀れなもんだぜ」
サンディはぽつりと漏らす。言葉に表しきれぬ感はそれとして、けれど倒すという事には変わりない。
轟轟と――けれど恐らくは今はまだ柔らかな風に緑を基調とした軽装が靡いている。
(長い間依頼を受けてりゃ何度も受けることになるが…やっぱ慣れそうにねぇな。
罪のねぇ奴を殺す後には後悔しか残らねぇよ)
「……だが、良いさ。その願い叶えてやる。それがコイツからの依頼なんだろ?」
そうある種の仲介者となったテレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n00028)へと 『Quell the Storm』銀城 黒羽(p3p000505)は告げていた。
あおる風に身を任せる準備は既にできている。
――もしかしたら他に方法もあるかもしれない。もっといい方法が。
だが、もうそんな時間がないコイツにしてやれること。
結局は、いつも通り。
「だったら、その想い、受け止めてやらねぇと救われねぇよ。
お前の中の嵐、全部ぶつけてきな。全部受け止めてやるからよ」
「うむ、己を失う前に己を倒せとは、中々見上げた魂の持ち主である。
倒さねばならぬのが惜しい位であるな。」
銀色のロングヘアーが流れ、切れ長の赤い瞳がそれを見る。 『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)はいつものごとく自信たっぷりに笑みを浮かべていた。
「無論手心等は加えぬ、アレも望んではおらぬだろう。
完膚なきまでに叩きのめして憂いなく見送ってやろうではないか」
普段通りの態度を崩さず、矜持を胸にそう宣言する。
『我は――我を討つ者を望む。
容赦なく。徹底的に。暴れぬように』
そんな答えとほぼ同時――暴風が、爆ぜた。
固く締めていた紐を、僅かに緩めて中身があふれ出るような、突然のしかして緩やかな膨張。
それこそが、開戦の合図。
●
「こいつで最期なんだ。だったら、全部出しきっちまいな」
静かな覚悟と共に前に黒羽は出る。
反撃することなく、厳枠のステップと共に暴風霊の前へと立ち塞がった。
暴風でも打ち消せぬ黄金の闘気が立ち上り、暴風霊はそれを見下ろすようにして、ゆらりと立つ。
サンディもまた、黒羽と同じように暴風霊の前に立ち塞がっていた。
二人を視界に収めた暴風霊の身体が、不意に解け、音を立てて膨張する。尋常じゃない風圧が、2人とその後ろにいた珠緒を包み込む。
呼吸困難に陥りながらも、サンディはその場で崩れることなく立ち、やがて再び暴風霊の身体が一定になると、真っ直ぐに向かい合う。
「絶対通さねえ。オマエは、誰にも危害を加えねぇ……!
サンディの言葉に頼もしげに風が鳴いた。
集中力を研ぎ澄ますと、真上から叩きつけるような風が、降ってくる。
それは暴風霊のモノではない。微かな痛みは瞬く間に癒えるから気にすることはない。
その代わり、他の仲間達へ、追い風が吹き始めていた。
一方、立ち位置上、巻き込まれざるを得なかった珠緒も、傷は少ない。
みちる暴風をはねのけた閉じた聖域の加護をそのままに、神聖なる唄を紡ぐ。
傷を受けた黒羽とサンディが、救いの音色の心地に傷を癒していく。
歌い、奏でながらも珠緒は静かに立ち位置を調整し、暴風霊と直接目を合わせることが無いように心がけて行く。
レイチェルに携えられて間合いを取ったシグの身体から稲妻が迸り、やがて、球状と化して戦場へと放たれた。
それは戦場を漂うように暴風霊の頭上へと進みーー直後、強烈な青白さを帯びて爆ぜた。
真下、暴風霊を中心に広範囲へと放たれた電流は、風で出来た身体に纏わり付くようにして地面へと降りていく。
リーゼロッテは暴風霊と近すぎず遠すぎずの位置にまで近づいていた。
「直接の攻撃じゃない、貴方の中から蝕む呪詛……返しようがないわよね!」
煌めきの羽ペンで描くは荒れ狂う暴風を、すっぽりと収める黒色の箱庭。
ペンが空間に描いた魔力を帯びた軌跡が形を持って暴風霊を取り囲み、一時的に暴風霊をその内側に押し込めた。
数瞬の間ーーガタガタと音を立て、やがてヒビ割れて箱が弾け、破片が空気に溶けて消えていく。
固形ならざる暴風ゆえか、完全に思い通りに当たっているとは言い難い。けれど、確実にダメージは入っているようにも見えた。
『ォォオオオ』
それが声なのか、或いは吹き付ける風の音なのか、ハッキリとは判別がつかなかった。
「くくく…! 天が呼ぶ! 地が呼ぶ!人が呼ぶ! 貴様を倒せと我を呼ぶ!
我が名は悪の秘密結社『XXX』が総統! ダークネスクイーンである!」
ダークネスクイーンは改めて口上を発した。お約束というべき口上と共に、その身を包む暗黒のオーラを高めていく。
「吹き荒ぶ風よ!貴様の願い、しかと受け止めた!
我らが全力で以って貴様を討つ!」
極限にまで高めたオーラと共に、世界征服砲が放たれる。
地を削らんばかりの極太レーザーが走り抜け、暴風霊の肉体を大きく穿つ。
ぽっかりと空間が開いた直後、碧が渦を巻き、円錐状になってダークネスクイーンへと文字通りの風となって放たれた。
ソレが腕を浅く切り裂いて消えた。
仲間達の連携により、気を取られたようになっている暴風霊を真っすぐに見据えながら、レイチェルは魔術式を励起させていく。
「憤怒、そして復讐の焔こそ我が刃。復讐の果てに燃え尽きるのが我が生なり」
魔力の奔流が緋色に輝き、陣を構築し、微かな脱力感――己が生命力を引きずり出された直後、陣から紅蓮の焔が立ち上る。
憎悪に染まった鮮血を喰らって煌々と燃え盛る紅蓮の焔。
それは、そのまま生き物のようにうねり、暴風霊へと伸び――気を取られていた暴風霊は真っ向うからそれを浴びた。
風を受けた焔は天へと柱を築き――その音はまるで暴風霊の悲鳴のようでさえある。
零れ出た僅かな火花が、意思を持つかのようにレイチェルへと降り注ぎ、微かな傷を与えた。
暴風霊の意図か――あるいは、本能のようなものか。受けた反撃に傷を負う者が増える中、戦場に歌が響き渡る。
穏やかで、心が静まり、同時に力が湧き上がるそんな調和の詩。
歌い手ーー蛍は自らの力を賦活の力に変換してダークネスクイーンへと注ぎ込み、わずかに呼吸を整える。
目配らせすれば、戦いが始まってすぐであることもあり、仲間たちはまだ健在だった。
サンディは目を閉じていた。
真っ向から幾度か黒羽、或いはサンディが吹き飛ばされることがあった。
それでも、張り付き続け、黒羽の動きよって今は暴風霊が抑え込まれている。
ずきりと身体に痛みが走る。魔力を高めると、不意に荒々しい暴風が戦場に現れた。
それは意思を伴って仲間達の精神力を奮い立たせていく。代償は、軽くはない。
珠緒が暴風霊の動きの変化に気づけたのは、最前衛に近い場所にいたからと言って過言ではない。
不意に、暴風霊の風の音が激しくなっていた。
次を警戒する最中、イレギュラーズへ向けて放たれたのは、風の矢だった。
無数の碧の塊が細く長く集合し――あたかも壁のようになって扇状に放たれた。
暴風が突き抜けた瞬間、珠緒は直ぐに自らのうちに秘めた調和の力を変換し、サンディに齎していく。
呪いを暴風霊へ畳みかけたレイチェルは、その近くへと足を踏み込んでいた。
自らの能力であれば、炎や毒でじわじわ痛めつけることなど容易い。
けれど、そんな戦い方は、自分達を頼ってきた暴風霊へ失礼だと、うちに燻ぶる感情を乗せて、月下美人咲き誇る純白の大弓を構えた。魔術式の輝きで緋色に照らされた弓から炎で出来た矢を放つ。
尾を引いて暴風霊へと打ち込まれた矢は、炸裂の痛みと共に、そのうちに込められた呪術で内側から蝕んでいく。
それに続けるように、知識の魔剣と化したシグが剣閃を放つ。
液体金属が飛翔し、文字通りの刃となって暴風霊を切り刻み、内側から更なる痛みをぶつけていく。
リーゼロッテはさらさらと空に文字を描く。
魔術・『旧き蛇』の林檎が一頁。簡易の呪術式が暴風霊を囲うように浮かび上がり、そこから出てきたナニカが蛇のように食いついていく。
蛍の仕事はイレギュラーズが攻勢に転じた頃から増え始めていた。
敵の攻撃の威力はもちろん、攻勢に出ることで否応なしに放たれる反射的な防衛行動が、イレギュラーズの傷を増やしている。
それでも、戦いが不利に転じていない理由の一つは、蛍の目だった。
最初から今に至るまで。ギフトの恩恵は高い。
的確な継戦支援は珠緒と蛍という二人の回復役の連携が上手くいっているからと言える。
●
風が、穏やかになっていた。
これまでを暴風というのならば、もうこの風は清風にも等しい。
いつ消えるとも限らぬようになってきた辺りで、シグは風の亡霊へ問いかけた。
「……この状態に至った原因を聞きたい。それがお前さん自身だというのならば、それは自業自得。お前さんも望みは果たせただろう」
それならばもう、あとは最後の人達を容れるのみ。――だが。
「だが、若しも、この事態が誰かに起こされたのだとしたら……私はその者を知りたい。
お前さんの為の敵討ちではない。
……私自身や私の愛する者への脅威を先んじて防ぐため、である」
自らを握るレイチェルの手に力が入るのを感じながら、シグはそう続けた。
『――――偶然、ということにしておこう。
ただ、そこのあった風に交わった――愚か者よ』
そよ風のような穏やかさで、静かに亡霊が答えた。
そんな亡霊へ、黒羽は近づいていく。
微量な風の集合体に触れる。
それが自己満足であることは分かっていた。
だとしても、最期まで救いもなく、消えるだけだなどと、そんなことは許せなかった。
「お前の苦しみ、哀しみ。オレが全部連れていく」
発動した恩恵が、亡霊の持つ重荷を黒羽へと移っていく。
本の僅かに、亡霊の顔らしき部分が穏やかになったように見えた。
「……次会うときにゃ、もっと自由に世界を駆け巡る風に生まれてこいよ。
俺はその時を待ってるぜ」
『お主の風、良き風である』
頷くように身体を下げた風霊に、サンディは笑って見せる。
「そうそう、これは言っておかないとね。」
リーゼロッテは忘れないように、と声を出した。
「急いでたのはわかるんだけど! 勝手にレディの寝室に入るのは良くないわ!
後ね、女の子の髪は丁寧に扱わないといけないし、それと……ああもうキリがないわ!
とにかく生まれ変わった時に備えて、魂に刻み付けてでも覚えておきなさい!」
それまでの問いかけと打って変わった言葉に、風霊が目を見開いた――様な気がした。
「どうだ?満足であるか? ならば笑え。空を駆ける風の様に晴れやかに逝くがいい」
『――我も風ゆえに』
ダークネスクイーンに頷くように轟と鳴る。
それは、笑い声のようで――。
「すまない……俺にはこれしか出来ねぇ」
純白の大弓を構えたレイチェルは、そう言葉を残す。
『――良い――それが、我の望み故な』
血のように赤い焔を宿した呪術式。
静かに、穏やかに――レイチェルは引きしぼった弦を放した。
真っすぐに飛んだ焔が、風霊の肉体を貫いて――火を巻く竜巻のようになって消えていった。
(心優しい亡霊さん、さようなら。
そして――ありがとう)
蛍が思いを馳せ。
『心は消え、魂は消え去り、全ては此処にあり』
『全てを越えゆき、空の果てにて悟りは叶うなり』
その横で珠緒の祝詞が穏やかな風に乗って空を追っていく
最後にもう一度、心地よい風が、イレギュラーズの背中をゆるりと過ぎ去っていった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
心地いい風の時期が恋しいところでございます。
GMコメント
●オーダー
暴風霊の討伐
●戦場
よく均された、屯所の中にある広場です。
普段は訓練などに利用されているため、戦う際に障害物等になるものはありません。
●暴風霊
風の塊です。
形状としては人型の碧色をした何か、向こう側が見える謎の物質です。
性別などは基本的にはありませんが、言動はどちらかというと男性よりです。
逃亡などすることはないでしょう。
相応に強いです。
神攻、命中、回避、CT、HPが高め、防技、抵抗、EXAは並。
・嵐箭(A):神遠扇 威力中 【万能】【崩れ】【窒息】
・嵐撃(A):神至単 威力大 【崩れ】【飛】
・暴風戦域(A):神自域 威力中 【体勢不利】【懊悩】
・大嵐(P):攻撃が【弱点】【Mアタック】を持つ
・風身体(P):【棘】、至近~近距離で攻撃を受けた際、攻撃を加えた対象を10m後ろに飛ばします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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