シナリオ詳細
怪盗夜行 ミューズの純血
オープニング
●ミューズの純血
「今度のターゲットはこれよ」
黒いボディスーツのファスナーを首から胸元までさげた金髪の美女が、スーツの内側から数枚の写真をとり出した。
石のテーブルへ投げるように開かれた写真はそれぞれ『赤い宝石のはまったネックレス』『豪華なドレスを着た夫人』『大きく腹の出たカイゼル髭の貴族男性』『無数の衛兵がうろついている屋敷』であった。
そのうち貴族男性の写真指で押し出す金髪美女。
「彼の名前はダミトリー・イサイン・ジュニア。
重すぎる税金や領法を使って民を絞り上げては宝石をコレクションしているという悪徳貴族よ。
女好きでお金が好き。だから愛人も数え切れない程いるし、資産も莫大。
ちょっとバランスが悪すぎると思わない?」
金髪美女はテーブルに腰掛け足を組むと、ファスナーをへその位置まで下ろして内側からもう数着のボディースーツを取り出して見せた。
そして宝石のついたネックレスの写真の前に置いてみせる。
「『ミューズの純血』――コレクションの中でも特に高価なこのネックレスを奪って、その利益を町中の人にばらまいてあげるっていうのはどうかしら。楽しそうでしょ?」
彼女は幻想でもちょっと名の知れた女怪盗チャック&ファスナの片割れである。
練達からやってきた永遠の思春期ことネバーティーン博士のもとで助手として働きながら、博士の技術力を義賊活動に利用しているのだ。
博士は博士で『ぴっちりしたボディスーツの内側には夢と希望と宇宙がつまってるんだよ!』という謎の思春期的発想からものを圧縮してしまい込めるボディスーツを作っては美女に着せてキャッキャしているのでウィンウィンらしい。
今回はそんな怪盗たちから、ローレットへ『義賊活動』の依頼が舞い込んだのだ。
「私たちは過去に三度は盗みに入ってるから、顔も手口も知られちゃってるのよね。
だから今回は新しいメンバーでチャレンジしてみようと思うの」
流石に三度侵入しているだけあって屋敷の見取り図はばっちり持っている。
金髪美女ファスナは地図を広げて見せた。
「まず屋敷なんだけど……衛兵がとにかく多いわね。お金に物を言わせて警備をかなり厳しくしているみたい。
例え物売りや何かでも中には入れて貰えないわ。二回目くらいにこの手を使ったから警戒してるのね。
だから侵入するための隙を無理矢理作ったり、予め誰かを『ある手段』で侵入させたりする必要があるわね」
まず無理矢理隙を作る方法を考えてみよう。
例えば屋敷の目の前で大きな問題を起こし、衛兵にしょっぴかれて当然のような行ないをし、かつ衛兵が沢山駆けつけなければ解決できないような問題に発展させるというものだ。
一番簡単な所だと突如衛兵に殴りかかり、ダミトリー氏への不満をわめきながら沢山集まってくる衛兵相手にひたすら戦闘をし続けるというものだ。
この場合かなりのダメージを覚悟しなければならないし、最終的につかまって連れて行かれてはいけない。潜伏した誰かが隙を突いて撤退させる手段をセットにするべきだろう。
次に侵入する手段だが、ダミトリー氏が女好きなのを利用してわざと外でダミトリー氏を引っかけわざとお持ち帰りされ、家に連れ込まれる……というものがある。
とはいえ色々と狭い手段なので、それとは別に味方が衛兵相手に時間と注目を稼いでいる間に裏から解錠術等を用いて屋敷に侵入。屋内の衛兵をやり過ごしたりたまには沈黙させたりしながら目的の場所へと移動。
『ミューズの純血』を獲得したら即座に撤退、というものだ。
この場合一人きりだと屋内の衛兵を沈黙させるのに手間取って仲間を呼ばれてしまうので、それなりの人数で手早く仕上げたほうが良いだろう。
最悪、途中で見つかって強引に持ち出すという手段も必要になるかもしれない。
「盗むことに成功しても、恐らく警報が作動するだろうし、逃げる手段は必要よ。
軍馬や馬車をつかって撤退するのが普通だけど……きっと衛兵たちもある程度までは追ってくるでしょうね」
そのためにチェイス戦闘の準備をしておくと良いだろう。
追ってくる全員を必ずしも倒しきる必要はないが、それなりに殲滅力がないと逃げ切れないはずだ。
まとめると『時間稼ぎと侵入』に分かれる前半部分と、『チェイスバトル』に集中する後半部分に分かれることになる。
「うまくやってくれれば分け前もちゃんとあげるわ。よろしくね、義賊さん」
- 怪盗夜行 ミューズの純血完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常(悪)
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年06月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●バー『チェッカーフラッグ』にて
パテ埋めした弾痕だらけの壁に、薄く鉄臭い床。防弾仕様のカウンターテーブルには頭にまざまざと傷跡の残る無口なスキンヘッドがビアグラスを洗っている。
ここは喧噪と汚濁の坩堝。幻想(レガド・イルシオン)のスラム街にたつ酒場『チェッカーフラッグ』である。
「知ってるか? 店名の由来はカーレースで振る旗じゃあねえ。どの勢力にもつかない『透明な主張』って意味さ。金さえつめば王族派閥にも貴族派閥にも、勿論反貴族勢力にだってつく。で、今の俺たちは半貴族派の依頼を受けましたってわけだ」
葉巻きを加え、トランプカードをテーブルに投げる『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)。コインを置き、レイズのサインを出す。
「いいねぇ、この無節操」
「えひ、ひひひ……能力が活かせるアットホームな職場ですよねえキドーさん、ひひひ……」
『こそどろ』エマ(p3p000257)もそれに次いでカードを投げ、手元にコインを積み上げコールのサインを出した。
普段の格好とは趣が異なる、黒いぴっちりしたボディスーツ姿である。
「お金次第っていうのイイよネ」
『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)もストローでコーラを飲みながらトランプを投げた。
「コール」
「「ショウダウン」」
三人の手札が、全てエースのフォーカードだった。
テーブルにカードを叩き付けるキドー。
「イカサマじゃねえか!」
「えひひひひ!」
「そりゃあネエ……」
ジェックはガスマスクの下でからからと笑った。
「証明できなきゃイカサマじゃないジャン」
トランプカードをなめらかにワンハンドカットし続けながら、『夜明けのパーティー』ノワ・リェーヴル(p3p001798)は隣のテーブルで顎肘をついていた。
「いいなああのテーブルは。僕も混ざればよかったよ」
「いや、アンタとは絶対トランプ勝負とかしたくない。イカサマし放題だろ」
『閃翼』シラス(p3p004421)がトランプカードをバネのように弾いて頭上に飛ばしては元の位置に落とすという片手のお手玉めいた遊びをしていた。一枚しか飛ばしていない筈なのに飛ばすごとに数字がひとつ増えていく。
「おやおや、君に言われたくないな? 僕の時計返して」
「気づいてた?」
シラスがポケットから銀色の腕時計を取り出すと、文字盤が開いて小さな紙の蝶が羽ばたいていった。
「取って欲しかったんだろ」
「気づいてた?」
「どういう仕掛けかわからねえが……アンタらとは絶対賭け事をしたらダメだってことは分かった」
『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)がビールジョッキを片手に二人のやりとりを観察していた。
「泥棒仕事を請け負う奴ってのはみんなこうなのか?」
「失敬な。義賊だよ義賊。怪盗」
「遠い世界すぎて違いがわからねえな……」
「殺人鬼と必殺仕事人くらいの違い?」
『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が椅子からはみ出て引きずった二連式のブレードホルダーを拳で叩いた。
さわり心地の良いエンボス加工が施された柄と、ぴったりと刀身を包んで納めた鞘が『コツ』という音をたてた。刀と鞘がきわめて精巧な作りをしている証明である。
「殺し仕事は得意だけど、まさか怪盗をする事になるとはねー。けど怪盗稼業の一つや二つ、出来たほうが面白そうね!」
「まあ、何事も経験。きっちりやらせてもらうさ」
黒羽が目を瞑ると、隣に座っていた『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)がコインを置いて席を立った。
「もう行くのか?」
「仕込みは早いほうがいいでしょ?」
『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)がカウンター越しの店主にウィンクをすると、店主はメモリーチップを貼り付けたカードをリノめがけて放り投げた。
二本指でキャッチし、小指を振って店を出て行った。
店のウェスタンドアを抜け、夜に溶けるように歩いて行くリノ。
カードを唇にくわえるように当てると、どこかうっとりと笑った。
「彼のお眼鏡にかなうかしら。ふふ……どきどきしりゃうわねェ」
●なによりも甘い蜜
金色に輝くカジノ。回るルーレット台によく肉の付いた手が置かれていた。
全ての指に金と宝石でできた指輪がはまり、そのものの財力と欲望をきわめて明確に示していた。
そんな手の上。薬指で指輪を撫でるように、レースの衣をかぶせるかのように、そっと重ねる手があった。
振り返る男。覗き込む褐色肌の女。肉の重なった顎を歪めた男に、扇情的なドレスの女は――リノはとろけるように笑った。
欲望の世界で生きる人間にとって、愛や恋は信用の担保にならない。
欲望こそが信じられる軸であり、リノのあからさまな振る舞いを、欲望の男ダミトリーは深く気に入った。
「金が目当てなんだろう?」
「お金だけじゃいや。私、優しい人にしか懐かないのよ」
ダミトリーの胸を柔らかくつついて、リノは胸や唇が触れるか触れないかのもどかしい距離で囁いて見せた。
「貴方は優しくしてくださるの?」
「ああ、するとも」
欲しいものは何でも奪ってきたダミトリーにとって、『金を払えば手に入るもの』に躊躇する理由はなかった。
純情を装った振る舞いで楽しませる女と、その機微に金を払う男。ある意味これが、ダミトリーにとって安心できる『取引』なのだ。
こうしてダミトリーを誘惑したリノは彼の邸宅に招かれ、肩を抱かれて入っていった。
「また新しい女だ。いいよな貴族サマはよ」
「ぼやいてないで仕事しろ、仕事」
そんな様子を羨ましそうに眺めていた衛兵は、ランタンを手におおきなあくびをした。
泥棒に何度も入られ金品を盗まれてきたダミトリー屋敷は執拗なまでの警備とロックに守られている。
衛兵たちもそれなりの金を積まれ、正規に雇われたプロの警備員たちだ。
彼らが交代し、夜の見回りに出ようとした時である。
がたんという大きな音がして、邸宅の前で馬車が大きく傾いた。
馬から飛び降りた女。秋奈が車軸を覗き込む。
「ああ、このままでは隣町までとても行けないわ」
「だから前の町で車輪を交換しておけと言ったんだ」
「仕方ないじゃないか、急いでたんだから」
「どうする? 荷物を担いで行くなんて無理だぜ」
馬車からぞろぞろと降りてくる男女。ノワ、シラス、そして黒羽。
彼らはお互いをオータム、ノワール、フラッシュ、ルークと呼び合ってモメはじめた。
衛兵はかおを見合わせ、面倒くさそうに彼女たちにランタンを翳した。
「おい、馬車をどけろ。ここはダミトリー様の屋敷前だ」
「そうはいっても……ねえ私たちを助けてくれませんか?」
秋奈(オータム)は刀を抜くと、くるくると器用に回して藁の柱を切って見せた。
「料金がわりに芸をお見せしますから」
「どうする?」
興味が引かれたのか、衛兵のひとりが仲間へと振り返る。
「どうするじゃない。仕事をサボれば首だぞ。とっとと馬車をどけさせるんだよ」
「まあそう言わずにさ。俺たちの芸がタダで見られるんだぜ?」
シラス(フラッシュ)は木の椅子を投げるようにして三つ積み上げると、椅子の足一本と背の角だけをつなげてそのうえでバランスをとってみせた。
「ほら、こんな大道芸簡単には見られねえだろ?」
その様子に、交代にきた衛兵も思わず手を叩いた。
すかさずノワ(ノワール)はシルクハットを脱ぐと、中から何羽も鳩を飛ばして見せた。
わっと驚いて手を叩く衛兵たち。
「無理矢理見せるんじゃない。大道芸なんて見てる余裕はないんだよ。さっさと馬車をどけろと言ってるんだ」
そんな中、衛兵の一人がノワからシルクハットをたたき落として怒鳴りつけた。
「薄汚い芸を今すぐやめろ。斬り殺されたいのか」
「なんだと?」
黒羽(ルーク)は衛兵の腕を掴むと力ずくでひねり上げた。
「俺たちに怒鳴りつけるのはいい。けど仲間の芸を侮辱するのは許せねぇ。大道芸人をナメたらどうなるか教えてやろうか?」
「ああ教えてみろ。それまで首がつながっていればいいな!」
衛兵は激高して剣を抜き、仲間の衛兵たちが慌てて取り押さえようとした――ところで、シラスがタイミング良く足をひっかけて転倒させた。
「喧嘩か? 相手になってやってもいいぜ」
「フーンッ! ヘイ、カモンカモン!」
黒羽はシャツを脱いで上半身の肉体を見せつけると、堂々と衛兵たちを挑発し始める。
「上等だ。どこの田舎から出てきたか知らんが、この貴族社会でまともな裁判が受けられると思うなよ。お前ら全員暗殺の罪をつけて死罪にしてやる!」
「おっとっと」
秋奈は刀を抜き、シラスめがけて繰り出された剣を受け止めた。
「死罪がなんだって? 有象無象が赦しても――じゃなかった、とにかく死ねっ!」
秋奈の蹴りによって突き飛ばされた衛兵。仲間がそれを受け止め、彼らはそれぞれ剣を抜いて襲いかかった。
「休憩中の奴らも呼べ。叩き殺す!」
「おやおや、乱暴な人たちだ」
ノワは肩をすくめてステッキをくるりと回すと、フック状の先端部を衛兵の腕に引っかけて攻撃を強制的に失敗させた。
「もう少しショーを見ていけばいいのに。そう思うだろう?」
ノワは夜空に向けてウィンクをした。
誰も居ない夜空……ではない。
屋根を走っていた小さな鼠が、その様子をじっと観察していた。
「おーおー派手にやってんなあ。けどいいのかねえ衛兵さん。おかげで裏手の警備がお留守だぜぇ?」
ネズミと共有した五感越しにその様子を見ていたキドーは、瞬きを二回してから仲間に合図を送った。
「ひひひ……」
エマは窓の内鍵をまるで魔法のように素早く、そしてほぼ無音で解錠すると、転がるようにして室内へ滑り込んだ。
そして、素早く跳躍。
天井に手足をつっぱって身体を固定すると、まるで天井にできた蜘蛛の巣のごとく気配を消した。
真下をあくびしながら素通りしていく衛兵。
完全に通り過ぎたことを確認すると、耳を澄ましてその他の接近を警戒しつつ窓を小さくノックした。
するりと侵入をはたすジェックとキドー。
彼らは取り決めたサインによる会話で手短かに相談をした。
その内容にあえてキャプションをつけるとしたら、こうだ。
『目的のネックレスはこの先の部屋にありますよ』
『ほんとにそれだけでいいのかァ? この家、金の臭いがプンプンするぜ。ついでにいくらか頂いちまおうか』
『無欲は成功の秘訣だヨ。表の皆が時間を稼いでる間に済ませちゃお』
連携は正確だった。
気配を消したエマとジェックが見えない先の様子を探り、キドーが足音を殺して先行する。
どうしても回避できない衛兵を見つけたら――。
「よう」
足音を殺して背後に迫ったキドーがあえて肩を叩き、驚いて振り返った所で口を塞ぐ。天井にへばりついていたエマが飛び降りて首を締め上げ、ジェックが担いで見えない場所に隠しておく。
そして――。
『みつけたヨ。あれが噂のネックレスだね』
暗視をきかせ、暗い部屋の中を進むジェック。罠の存在を念入りに確認してから、赤い宝石のはまったネックレス――『ミューズの純血』をケースの中からもぎ取った。
途端に鳴り響く警報。魔力感知によってケースから無断で取り出されたことを知らせる仕組みなのだろうが……。
「予定通りだ、ずらかるぜ!」
ポケットをなんだかぱんぱんにしたキドーがほくほくした顔で手招きした。
●逃げるまでが怪盗のお仕事
半裸のままベッドで眠るダミトリー。
ドレスの裾を直し、毒針の仕込まれたイヤリングを耳につけ直すと、リノは手をぱくぱくやって静かにダミトリーの寝室を出た。
慌ただしく廊下を走っていく衛兵たち。
「あらァ。何があったの? ねえ、ダミトリーさんが眠ってしまったんだけれど、どうしたらいいかしら」
「それどころじゃない。かってにどっかに消えろ!」
引き留めようとした衛兵に手を振り払われ、リノは不機嫌……を装って、小さく舌を出した。
「誰だ! ドアノブに接着剤を塗ったのは!」
「手綱が切られてる。換えをもってこい!」
下からがやがやと声がする。キドーの仕込みがうまくいったのだろう。リノは『ご愁傷様』と口の動きだけで呟くと、窓をあけてぴょんと外へと飛び出した。
パカダクラを走らせるエマを先頭に、キドーとジェックは三角形のフォーメーションで馬を走らせていた。
「おまえらいつの間に入ったんだ!」
「つかまえろ! でもって殺せ! さもなくば俺たちはクビだぞ!」
後ろからは血相を変えた衛兵たちが馬を操って追いついてくる。速度の問題か土地勘があるからかはたまた根性か、距離はぐんぐんと近づいていた。
「こっちのほうがアタシ向きって感じ」
片手で器用にライフルをコッキングすると、ジェックは迫り来る衛兵たちに牽制の射撃を仕掛けた。
ナイフをくるくるとやって不敵に笑うキドー。
馬っていうかブルテリアめいた乗犬に跨がり、手綱を握りしめた。
「よーしよし屑ちゃんいい子だもっと加速し――くっせえ! 生ゴミくせえ! 待ってる間に何喰った!?」
そうこうしている間に距離を詰めてきた衛兵が剣を繰り出してくるが、キドーは逆手に握ったナイフでそれを受け、流すように回避する。
「ジェック、こっち頼む!」
「アイヨー」
ジェックはライフルを突き出すと、キドー越しに衛兵の頭へと銃口をつきつける。
「――!?」
目を見開き身をのけようとするよりも早く、ジェックの指が引き金をひいていた。
血を吹いて落馬する衛兵。
「派手ですねー。じゃあ私も」
エマは引きつったように笑うと、懐からナイフを取り出し真後ろに投擲。
衛兵の馬に刺さった瞬間小規模なセシウム爆発をおこし馬が転倒。当然ながら衛兵もまた馬から転げ落ちた。
ボディスーツの胸元を開き、大きなネックレスを取り出すエマ。
「えひひっ。これは貰っていきますねー」
一方その頃。
「今宵のショーは終わりだよ。さあ、帰って」
リェーヴルが走る馬の上から不思議なナプキンシート(フラッシュペーパーという)をばらまいた。
カードはたちまち燃え上がり、塗布されていた毒を周囲にまき散らしていく。
突然の毒に袖で口元を覆う衛兵たち。
「橘さん(快速ver)、頼むぜ!」
黒羽はノワが時間を稼いでいる間にメカロバの推進装置を起動。勢いよく走り抜け、衛兵たちとの距離を稼ぐ。
「華麗に逃げおおせてこその怪盗、だったよな?」
「そういうこった」
シラスは黒羽の後ろに立ち乗りすると、追いかけてこようとする衛兵とその軍馬に向けてパチンと指を鳴らして見せた。
意識のリズムを崩された衛兵と馬はよろめき、その隙を突くようにシラスは跳躍。衛兵を馬から豪快に蹴り落とすと、そばを走る秋奈の馬へと飛び移った。
「でーあーふたーでー。しーんぐあーろーりのー」
鼻歌交じりに刀を抜き、横一文字に空を切る。
斬った衝撃がそのままエネルギーとなり、横付けしてこようとした衛兵は馬ごと吹き飛ばされ農場の小屋へと突っ込んでいった。
「帰るまでが遠足。逃げるまでが怪盗。お世話様ー」
ぱたぱたと手を振り、秋奈は笑って見せた。
その日の夜。すぐに換金された『ミューズの純血』は大量のコインとなり、サンタクロースもかくやという豪快さで貧しい家々の窓から放り込まれていった。
笑いながら馬を走らせコインをばらまいていく者たちの姿を、夜遅くに起きた子供だけは見たという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――good crime!
GMコメント
OPの説明にあったとおりパートは前半後半に別れます。
それぞれ別々に解説していきましょう
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
●前半パート『時間稼ぎと侵入』
屋敷のまわりは衛兵が沢山おり、仮にお宝の奪取に成功しても衛兵たちに取り囲まれて逃げ切れなくなってしまいます。
そのため、屋敷の前で騒ぎを起こして衛兵ができるだけ沢山寄ってきてかつ長い時間足止め(非BS)できる工夫をしましょう。
一番簡単なのは一人殴ってあと全員にちょいちょい抵抗しながら我慢しつづけることです。
複数の問題を一度に起こして混乱させるのも、手段としてはアリですしリスク分散としてもアリです。
時間稼ぎが行なわれている間、屋敷の裏から侵入するのが妥当です。
侵入方法は各自得意なものを使ってください。
一人が壁抜けして窓鍵を外すとか、誰かが解錠して後に続くとかでもOKです。
ですが衛兵もさすがに全員が時間稼ぎに応じてくれるほど愚かでもないはずなので、手早く済ませましょう。
屋内にも勿論衛兵はごろごろいるので、これらをやりすごしたり時には素早く沈黙させる必要があります。
沈黙させる手に関しては「相手のHPをワンターンで0にするには?」くらいの基準で考えましょう。ワンターンキルには工夫がいるものです。
衛兵の強さはピンキリなので、うっかり硬いやつに当たっちゃってワンターンキルできず仲間を呼ばれたら……諦めるしかねえので、ダメージ覚悟で突っ込んで即逃げるプランに強制変更されます。
●後半パート『チェイスバトル』
軍馬や馬車を使って撤退します。
ほとんどの場合時間稼ぎチームと侵入チームが別々に逃げることになるので、別々に連携作戦を立てておくとグッドです。
特に手持ちに軍馬ないしは軍馬に相当するアイテムが無い場合は貸し馬と馬車を使います。
自前の馬があると何がいいって、名前を付けられたりちょっと判定補正がついたりします。いいですよね、馬の名前。
●オマケ
今回に限りネバーティーン博士特製の『沢山入るボディースーツ』を貸して貰えます。
これは鎧とか盾とかの上からでもにゅっと着込むことでなぜかボディラインがぴっちり出るというものです。
ほぼそれだけです。
だがそれがいいと思わないか。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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