シナリオ詳細
Short dream
オープニング
●自称・夢売り
「皆さんにお話があるのはこの人なのです」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が示したのは、眠たげな表情を浮かべた少年だった。彼は集まったイレギュラーズへふにゃりと笑みを浮かべてみせる。
「集まってくれてありがとう。早速だけれど、この中に何をどうしても夢が見られない人はいないかな?」
突拍子もない質問。困惑の色を見せる者や怪しむ者がいるのは道理だ。そんな彼らへ、少年は自らを『夢売り』と称す。
「望む夢を人へ売り、要らない夢を僕が買う。そう、君たちも望むのなら──夢を見せてあげるよ」
口角を上げた少年は、しかし一瞬ののちにへなりと力のない顔に戻って。「さて本題だ、」と人差し指を自らの目の前に立てた。
「今回、君たちへのオーダーは『僕に夢を見せること』。僕はね、君たちの夢にとても興味があるんだよ」
夢とは得てして既に起こったことや、逆にこうなったら良いという願望──未来への希望とも言う──を映すもの。夢占い、なんて言葉を聞いた事もあるかもしれない。
様々な土地から、人によっては世界すら越えてきたイレギュラーズの夢はどんなものなのか。と、少年は気になって仕方がないのだ。
「すぐに寝られないって? 安心して、僕はそういった術を心得てる。勿論、危害を加えるようなものじゃないし、こういう夢をと強制するものでもない」
ある程度の方向性は指定してあげることもあるけどね、と少年は言った。
夢は見なければ抜き出せない。術でそれらしき夢の方向性を与え、見た夢を抜き出す──買い取るのだそうだ。
その夢は覚えているものなのかと誰かが問えば、少年は「さあ?」と肩を竦めた。
「普段見ている夢だって、必ずしも覚えているわけじゃないんだろう? なら、そういうことさ」
覚えている時は覚えているし、覚えていない時は綺麗さっぱり忘れている。覚えていたとしても徐々に記憶は褪せていくだろう。
「これは君たちにとって仕事だ。受けるかどうかは君たち次第、受ければ報酬はある。見る以外には何もしないよ」
罷り間違っても、見た夢を抜き出されはしないということ。中にはその夢を失いたい、もう見たくないという者もいるかもしれないが今回の趣旨とは異なってしまう。それはまたいずれ、別の機会に打診すべきだろう。
──さあ、皆の夢はどんな夢? 教えてあげよう、この物好きな夢売りに。
- Short dream完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年06月05日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●一富士二鷹三茄子
「夢を売る商売……なるのほど。『夢売り』様は、夜な夜なパイオツカイデーなチャンネーをはべらせてザギンでシースーに舌鼓を打つ類の御方だったのですね」
『真宵の魔導師』エリア・アトラス・サンシール(p3p000413)の夢を見た夢売りがさあ次は──と振り返ると同時。『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)の言葉に思わず固まった。
「今、何か、呪文みたいな言葉が──」
「──え!? プロデューサー様ではないのですか!?」
再び説明を聞いたエリザベス。今度は神妙に頷いた。
「……なるのほど。夢を売る商売(not比喩)でしたか。これは失礼致しました」
夢の研究と言えば、エリザベスが元いた世界でもされていた。けれどこうして商売にまでなるとは、混沌世界の謎技術の高さに驚かされるばかりである。
さて、問題はエリザベスが果たして夢を見るのかということだろう。何しろ、彼女は無機物(アンドロイド)である。
「しかし! わたくしは人間と見まごうばかりの精巧さで作られた高性能アンドロイド。人間と同じように夢を見るし、お腹を出して寝れば風邪もひくのでしょう。──いぇっくし!」
盛大なくしゃみがローレットに響く。寝苦しい夜が続く近頃だ、お腹を出してしまっていても仕方ないやも──。
(全裸は少々やり過ぎだったかもしれません)
──仕方ない、か?
ちり紙で鼻をかんだエリザベスは夢売りへ『縁起の良い夢』が良いと告げた。
「どうせ夢を見るのなら、ということですわ。縁起が良いと言えば「一富士、二鷹、三茄子」と申します。素朴な疑問として、この3つでどのような夢が錬成されるのか想像がつきません」
エリザベスはその3つを用いて見られそうな夢を考えてみる。富士山を舞台に、鷹の背へ乗って──巨大な茄子と戦う?
「う~む。なかなかエキサイティングな夢になりそうですわ」
「発想が既にエキサイティングだけどね」
苦笑した夢売りは「強く望めば夢になるかもしれない」と言った。本当に願ってエリザベスが眠りにつくのなら、きっとそのようになるのだろう。
──そう。富士山を舞台に、鷹の背へ乗ったエリザベスが、武器を片手に巨大な茄子と決戦の如き戦いを繰り広げるという夢を。
「それにしても、他人様の夢を拝見できるなんて、素晴らしい能力ですわね。夢は深層意識の発露といいます。データ収集も捗りそう」
できることなら習得してみたい──そんなエリザベスの言葉に、夢売りは小さく苦笑して肩を竦めてみせた。
●懺悔にも似た
(夢売りだなんて、世の中には不思議な職業もあるものね)
そう思いながらも『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の意識は深みへと沈んでいく。束の間の、夢の中へと。
ふと目を開けた先には、賑やかな通りが見えた。
(私、ローレットにいたはずなのに……)
辺りを見回したヴァレーリヤは、その瞳に懐かしい姿を映した。驚きに目が見開かれる。
明るい栗色の髪。瞳は大きく、新緑のような色を宿して。そして額には縦に走る傷跡がある。
その傷はヴァレーリヤが悪戯をしようとして、付けてしまったものだった。
彼が死んで10年以上も経ったはずなのに、どうしたことだろう。元気な姿で彼は──弟は、ヴァレーリヤの視界に存在している。
不意に、弟が駆け出した。
「待って!」
その背中を追うように走り出したヴァレーリヤ。弟は止まらず、2人は裏通りを駆けていく。
通りを抜けた──そう思ったと同時、ヴァレーリヤの周囲は一変した。景色は一面の銀世界へ。目の前に映るのは見覚えのあるスラム街へ。
ざわり、と背筋が粟立った。心臓の音がやけに大きく聞こえて、血の気が引いて冷たくなった手が震える。
(天候まで、あの日と同じ……)
忘れることなんて、できるはずもない。戦争で両親を失った姉弟は、家の没落と共にここへ移らざるを得なかったのだから。
その足が向かうのは、かつて暮らした廃屋。
(これが、あの日なら……私は……)
ヴァレーリヤはそっと覗き込んだ先は──やはり、記憶にあるままで。弟の食事を食べてしまったのだと謝るかつてのヴァレーリヤに、死相を浮かべた弟が弱々しく微笑みかける。
「姉さんは……町中を駆け回って……パンと毛布を手に入れてくれた。栄養が必要なのは姉さんの方だよ。僕は少し休めば……」
言葉がだんだん弱々しく──そして、途切れる。
「ミーシャ! お願い、目を覚まして! ミーシャ! ミーシャ!!」
悲痛な叫びがヴァレーリヤの耳を刺す。
──この時、私は助けられなかった。だけどでも、今の私なら?
ヴァレーリヤの体は前へ。咄嗟に、かつての彼女の前へ飛び出そうとしていた。
「……っ!」
ひゅ、と息を吸う。そこは見慣れた景色──ローレットの中。ヴァレーリヤはゆっくり吐息をこぼし、目を伏せた。
どうしても、思わずにはいられない。
もし断っていたら、誘惑に勝っていたら。もしかしたら──あの子が生き残れたのではないかと。
●ひあゆーあー
「わーいわーい、ミミ寝るぅ!」
至極嬉しそうに椅子へ飛び乗った『城守りコウモリ』ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867)。夢売りに促されるまま目を閉じ、うたた寝どころか本気で寝にかかっている。
昼夜逆転コウモリが夜に眠るという行為は、甘美かつ堕落の味を秘めて。さて、そんな彼女の見る夢は──。
──体が、重かった。やけに傾いていて、慣性だけが宙を滑空している感覚を伝える。
手の届く距離だって見えやしない暗闇に、纏わりつく息苦しさ。この状況にあって、風の少しも感じ取れやしない。
そんな彼女が感じ取れる数少ない1つ。1秒間に2拍の鼓動。胸を打っているそれは早鐘のよう。けれど──それさえも思い込みで、もしかしたら見えないレールによって転がってくる大玉の振動かもしれない。もしくは。或いは。
わかるのは只々強く強く、そして鈍く、全身へと波及していくこと。
ふと揺り起こされ、ミミは微睡みの中を揺蕩った。完全な覚醒はしておらず、このままでは瞼が降りてしまいそう。それに抗いながら、ミミは大きく毛を膨らませて。発するのは模倣の音波。
落水の音。次いで、水中からコポコポと泡が昇っていく音。混じる罵声、怒声──悲鳴だけはやけに近くて。
『ヒアユーアー』
それは旅人の伝えた言葉。模倣の音波はまだ続く。
硬質な、けれど平らでない平面を擦って行く音。男女の不明瞭な声に、幼い誰かの叫びが混じる。遠くから聞こえる音と、声。
ふと記憶が霧散していったのは、耐え切れぬ睡魔によってか。今のそれらが世界の贈り物によるものか、それともうわ言だったのか確かめようはないが──残った言葉は、ただの澱だ。
『ヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアー』
嗚呼、嗚呼。”ヒアユーアー”。それだけが、残って。
ぱちりと目を覚ましたミミは夢なんて綺麗さっぱり、忘れてしまったという顔で。うーんと1つ伸びをした。
「オハヨ! まだ今日? そう? 今日 モ! いい天気!!」
●大怪盗
(……おっといけねぇ、ボーッとしてたらしい)
夢の中の『レディの味方』サンディ・カルタ(p3p000438)は頭を振って眠気を飛ばす。
彼は世紀の大怪盗カルタ。彼ともあろうものが、まさか80年目にして居眠りで捕まるなんてあってはならない。ならないのである。
もしもそんな事になれば世界中の笑い者になってしまうやもしれない。
頭をスッキリさせたカルタは、脳内で段取りの確認を始めた。
まず、窓から屋根に上がって広場に予告状を投げる。視線は予告状か、あるいは投げた大怪盗へと向けられるだろう。
そこからグライダーで目当ての建物まで飛んで屋根に着地。そこまでは誰かに見つかるかもしれないが、透過と転移で侵入してしまえば問題ない。
向かうのはもちろん厳重なギャラリー、そこで待つ金庫の元──ではなく。主人の自室に赴き、時計裏に隠された本物を頂いて撤退だ。
(俺の魔術を分析したいがために挑発してくる身の程知らずにゃ、そんなもんでいいだろ)
さあ、そろそろ始めようか。大怪盗カルタは屋根へひらりと飛び上がって──。
──……い。
──……お……い……。
「──おい、見えてるのか? 『俺』!」
「……っ!?」
気づけば大怪盗カルタはサンディの目の前に──そう、目の前にいたのだ。
目を瞬かせるサンディに、大怪盗は苦笑いを浮かべて。
「まー目覚めた頃にはまたこの記憶も消えちまうんだろうが。一応何度でもはなしておくぜ」
いつしかきっと、消えない記憶となるかもしれないから。何かのきっかけで思い出してくれるかもしれないから。
「俺はお前の過去だ。呪いを受けて成長が巻き戻されちまった。記憶や技能も飛んじまって、家柄すら無くなっちまった」
大怪盗カルタは全てを失い、体は時さえも巻き戻されて。そうして大怪盗は少年へと──ただのサンディ・カルタとなった。
「まぁ俺がお前に何か出来る訳じゃねーし、お前にとっちゃ俺はいらねーだろーなって思う。
だが、伝えなきゃいけねぇことは3つある」
何度忘れたとしても、その度に伝える言葉だ。
まず、世紀の大怪盗となれる素質があること。過去のサンディが大怪盗であると、それが真であるならば間違いないのだろう。
「2つ目。お前は、親から見捨てられたわけじゃない。
3つ目、そしておまえは──」
急に視界がブレた。大怪盗の輪郭が幾重にもなって、ふっと遠ざかっていく。
『風に呪われて』いる。
その言葉はやけに耳へ残ったはずなのに──目覚めたサンディは、やはり綺麗さっぱりと忘れてしまっていた。
●『私』
私はベッドの上から窓の外を見た。ああ、今日も空は青い。
大病を患って、それを境に3年は経っただろうか。ほとんどの時間をベッドの上で過ごす私は、家事ですら手伝った後に熱を出してしまう体だった。
それでも今日は調子が良いような気がして。私が上体を起こすと同時、部屋の扉が開く。
「おっはよー、■■■■ちゃん!!! 今日の! おやつは!! パンケーキだよっ!ミ☆★」
母の明るい声に私は小さく笑った。私の世界は狭くなってしまったけれど、それでも寂しくないと思うのは母のお陰かもしれない。
それに家は経済的に恵まれていたらしく、良い家庭教師をつけてもらった。中学の卒業証書は家で受け取ることとなったが、私の学力は同年代に劣らない──いや、周りのそれより高くあるかもしれない。
優しい人格者な両親がいて。
家は恵まれた経済環境にあり。
学校に行かなくなっても時折訪ねてくれる友人がいる。
それは私が恵まれているのだと思わせるのに十分だった。十分だった──はずなのに。
「それじゃあ■■■■ちゃん!!! また来るねー!!!」
母が部屋から出て行き、静けさが戻る。私はそっと窓の外を見た。
上体を起こした今、私の視界には近くの公園が映っていた。子供たちがサッカーをして遊んでいる。視線を移せば、じゃれ合うように帰る友人たちの姿。
(……私も)
あの中に混ざりたいと、羨む気持ちが湧き上がる。私は小さく頭を振って、童話の本へ手を伸ばした。
大好きな童話たち。この世界に引き込まれている間はそれだけに没頭できる。もう有名な童話は全て読んだと言っても過言ではないだろう。
「んっ……けほけほ……けほっ……」
本へ伸ばした手が止まり、ベッドへ落ちる。調子が良いと思ったのは気のせい。むしろ、悪くなってしまったようだ。
(今日はもう、休まないとですね……)
ベッドに横たえた体は深く、重く、沈むようで──。
「うぉぁあっ!」
ガバッと椅子から体を起こした『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)は目をまん丸にして辺りを見回した。良かったここはいつものローレット。……じゃなくて。
「何今の夢! 何処!? 誰!?」
問いかけに答えられる者はいない。夢売りも「さあ?」と肩を竦めてみせる。
答えがないなら、仕方ないので。
「……ま、いっか! おはようございます!!! 今日もイタズラしに行くぞおらあっ!!ミ☆★」
●舞い降りし天使
「ああ、やっと寝れる……」
『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)──その片割れ、虚は「こっちの話」とローレットの椅子へ腰かけた。彼の片割れであり体を共有する稔は、どうにもこの依頼に興味が無いらしい。
そんなわけで、虚は夢売りへ示されるがままに目を閉じて──。
──気づけば、身体が動かなかった。それだけではない。息苦しく、全身を痛みが襲い、同時に燃えているように熱かった。
(どうしてこうなった?)
血の付いたナイフが、視界に見える。
(何故俺は殺されようとしている?)
誰かが壊れた人形のように嗤っている。
(劇場に火を放ったのは、)
既に自分の身体から、焦げた匂いがしていた。
『死ぬなら舞台の上が良い』と言ったことがある。現実、虚はその言葉通り劇場の舞台で死にかけていた。
(……違う)
こんな最期を望んだんじゃない。こんなところで死にたくない。
舞台役者になりたいんだ。役者の他にもやりたい事は沢山あるんだ。だって、まだ高校生で。こんなところで終わりを迎えようとするだなんて、同年代の誰も考えないだろう。
熱い、暑い、あつい──なのに、寒い。
身体が死へ向かって行く。死の恐怖が心を満たしていく。指1本動かせない身体へ向けて、火が近づいてきていた。
(このまま……炎に全部包まれて、灰になって消えるのか?)
夢だったら良いのに、全身を支配する痛みと恐怖が『現実だ』と強く叫ぶ。
──嗚呼、もう。
すぐそこまで近づいた終わりを感じ、諦めて視界を閉ざそうとしたその時だった。差し込んだ──溢れんばかり、と言っても良いかもしれない──光にはっと目を開けると、そこには天使がいたのである。
「諦めるにはまだ早いぞ。さあ、俺と共に最高の劇を作ろう」
そして格好良い台詞と共に、天使は虚を助けたのだ──。
(……ああ、夢か)
それは夢とも、過去の回想とも呼べるもの。憶えていても考えるだけで嫌になって、今まで意識的に記憶の奥底へとしまい込んでいた──考えないようにしていた、混沌世界へ来る直前の出来事だった。
ちなみに──その天使は、今。
「寝る間を惜しんで次の脚本を考えているところだ!邪魔をするな!!」
──だそうな。
●約束
(寝るだけで報酬を貰えるとは、何とも簡単な依頼もあったものだ)
椅子に腰かけた『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は包帯の下、目を閉じる。程なくしてその精神は睡魔という闇に包まれた。
──ここは……?
リュグナーは元の世界の、どこにでもあるような小さな村に立っていた。変哲なく、不思議な事などもない。なのに何処か、懐かしさを感じていて。
ああ、とその光景を眺めながら合点する。前にも夢で見たことがあるのだろう。この景色と、目の前の光景を。
目の前には子どもと、長い黒髪の女。女はしゃがみこみ、子どもへ何かを話しているようだった。
(やはり、夢で見ている。ひと度ではないというのに、起きるといつも記憶から抜け落ちる光景だ)
そして、女が話していることも、女の正体も──最後に見る光景が血と他者の憎悪に塗れている理由も、わからぬまま忘れて目を覚ます。
"いつも"は、そうだった。
「──だから、何でも正直に話しなさいって事ではないの」
聞こえてきた女の声に、リュグナーは体を強張らせた。
(これまでとは……違う、だと?)
夢売りが関与しているからなのか。それとも別の要因か。原因がわからぬまま、女の言葉は続く。
「話したくない事は話さなくても良いし、それも辛いなら誤魔化したって良いのよ。ただね、お母さん、これだけは守って欲しいの。『絶対に嘘はつかない』って……良い、■■■■?」
ざわざわと、心が落ち着かない。けれど耳を塞ぐことも、目を逸らし閉じることもできなかった。
上手く聞き取れない、その名前は。その約束は。その子どもは。その女は。この、場所は。
不意に強い風がリュグナーの方へと吹いた。目深に被っていた子どもの帽子が後方へと飛んでいき、振り返った子どもと視線が交錯する。
薄黄色い瞳ら灰色の髪。そして、小さく生えた赤黒い、角。
(……ああ、成程。貴様は──)
包帯の下、瞼を開ける。夢の内容は──忘れていない。
思い出してしまった記憶の一部に戸惑いを隠せぬリュグナーは、普段のような笑みも浮かべることなく夢売りを見上げた。
「……他言無用だ」
夢を共有せし夢売りは、リュグナーと対照的に笑みを浮かべて──勿論、と。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。
夢売りは大変満足したようです。
再びご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
GMコメント
●概要
夢を見る
●詳細
皆様にはそれぞれ夢を見て頂きます。その内容を知ることができるのはあなた自身と、あなたを夢へ誘った夢売りのみです。
どんな夢でも構いません。楽しい、悲しい、嬉しい、寂しい。今回夢売りは夢の指定をしません。夢の中はあなたの思うまま。
それは願望を形にすることもあれば忘れてしまった記憶をトリガーとした過去の回想、未来の可能性を示すこともあるでしょう。
夢を覚えているのかは皆様次第。夢売りは公言しません。
夢を見る場所はローレット。現実の時間としてはうたた寝してしまった程度ですから、椅子に腰かけたままでも大丈夫でしょう。
●夢売り
眠たげな目をした少年。夢売りとも夢買いとも呼ばれており、本人はどちらでも良い様子。
夢を商売道具にしています。これまで見たことのある夢は全て覚えているらしいです。
イレギュラーズのことには興味津々。
●ご挨拶
愁と申します。今回は夢売りの興味にお付き合い頂きます。
参加者以外のPC名は出せませんのでご注意下さい。基本的に個人描写です。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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