PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Short dream

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●自称・夢売り
「皆さんにお話があるのはこの人なのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が示したのは、眠たげな表情を浮かべた少年だった。彼は集まったイレギュラーズへふにゃりと笑みを浮かべてみせる。
「集まってくれてありがとう。早速だけれど、この中に何をどうしても夢が見られない人はいないかな?」
 突拍子もない質問。困惑の色を見せる者や怪しむ者がいるのは道理だ。そんな彼らへ、少年は自らを『夢売り』と称す。
「望む夢を人へ売り、要らない夢を僕が買う。そう、君たちも望むのなら──夢を見せてあげるよ」
 口角を上げた少年は、しかし一瞬ののちにへなりと力のない顔に戻って。「さて本題だ、」と人差し指を自らの目の前に立てた。
「今回、君たちへのオーダーは『僕に夢を見せること』。僕はね、君たちの夢にとても興味があるんだよ」
 夢とは得てして既に起こったことや、逆にこうなったら良いという願望──未来への希望とも言う──を映すもの。夢占い、なんて言葉を聞いた事もあるかもしれない。
 様々な土地から、人によっては世界すら越えてきたイレギュラーズの夢はどんなものなのか。と、少年は気になって仕方がないのだ。
「すぐに寝られないって? 安心して、僕はそういった術を心得てる。勿論、危害を加えるようなものじゃないし、こういう夢をと強制するものでもない」
 ある程度の方向性は指定してあげることもあるけどね、と少年は言った。
 夢は見なければ抜き出せない。術でそれらしき夢の方向性を与え、見た夢を抜き出す──買い取るのだそうだ。
 その夢は覚えているものなのかと誰かが問えば、少年は「さあ?」と肩を竦めた。
「普段見ている夢だって、必ずしも覚えているわけじゃないんだろう? なら、そういうことさ」
 覚えている時は覚えているし、覚えていない時は綺麗さっぱり忘れている。覚えていたとしても徐々に記憶は褪せていくだろう。
「これは君たちにとって仕事だ。受けるかどうかは君たち次第、受ければ報酬はある。見る以外には何もしないよ」
 罷り間違っても、見た夢を抜き出されはしないということ。中にはその夢を失いたい、もう見たくないという者もいるかもしれないが今回の趣旨とは異なってしまう。それはまたいずれ、別の機会に打診すべきだろう。


 ──さあ、皆の夢はどんな夢? 教えてあげよう、この物好きな夢売りに。

GMコメント

●概要
 夢を見る

●詳細
 皆様にはそれぞれ夢を見て頂きます。その内容を知ることができるのはあなた自身と、あなたを夢へ誘った夢売りのみです。
 どんな夢でも構いません。楽しい、悲しい、嬉しい、寂しい。今回夢売りは夢の指定をしません。夢の中はあなたの思うまま。
 それは願望を形にすることもあれば忘れてしまった記憶をトリガーとした過去の回想、未来の可能性を示すこともあるでしょう。
 夢を覚えているのかは皆様次第。夢売りは公言しません。

 夢を見る場所はローレット。現実の時間としてはうたた寝してしまった程度ですから、椅子に腰かけたままでも大丈夫でしょう。

●夢売り
 眠たげな目をした少年。夢売りとも夢買いとも呼ばれており、本人はどちらでも良い様子。
 夢を商売道具にしています。これまで見たことのある夢は全て覚えているらしいです。
 イレギュラーズのことには興味津々。

●ご挨拶
 愁と申します。今回は夢売りの興味にお付き合い頂きます。
 参加者以外のPC名は出せませんのでご注意下さい。基本的に個人描写です。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • Short dream 完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年06月05日 21時55分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エリア・アトラス・サンシール(p3p000413)
真宵の魔導師
サンディ・カルタ(p3p000438)
アニキ!
……おっといけねぇ、ボーッとしてたらしい。
なんてったってこの世紀の大怪盗カルタ様が、
80年目にして居眠りで捕まるなんて
会っちゃいけねぇことだよな。

さて段取りの確認だ。
窓から屋根に上がって広場に予告状を投げる。そこからグライダーで目当ての建物まで飛んで屋根に着地。
からの透過・転移で侵入、厳重なギャラリーに待つ金庫……ではなく、主人の自室の時計の裏にある本物を戴く。

あとは適当にまいて仕事完了だ。
俺の魔術を分析したいがために挑発してくる身の程知らずにゃそんなもんでいいだろ。

……
おい、見えてるのか?「俺」!
まー目覚めた頃にはまたこの記憶も消えちまうんだろうが。
一応何度でもはなしておくぜ。

俺はお前の過去だ。
呪いを受けて成長が巻き戻されちまった。
記憶や技能も飛んじまって、家柄すら無くなっちまった。浦島何とかって奴だな。

まぁ俺がお前に何か出来る訳じゃねーし、
お前にとっちゃ俺はいらねーだろーなって思う。

だが、伝えなきゃいけねぇことは3つある。
お前にゃ、世紀の大怪盗になれる素質がある。
お前は、親から見捨てられたわけじゃない。
そしておまえは……『風に呪われて』いる。

……
※サンディはおぼえていません。


リュグナー(p3p000614)
ぱんつコレクター
寝るだけで報酬を貰えるとは、何とも簡単な依頼もあったものだ
椅子に腰かけて夢を見る
夢の内容:元の世界での失われた幼少の記憶の一部

元居た世界の小さな村、よくある光景で何等不思議な事は無い
だが、妙に懐かしく感じるのは何故だろうか
ああ、我は以前にも夢で見た事があるのだな。この景色を、そして目の前のこの光景を――

帽子を深く被った子供の前に、黒い長髪の人間――女性がしゃがみこんで何かを話している
これは何度か夢でみた光景、しかし起きるといつも記憶から抜け落ちる光景だ
何を話しているのか、何故か懐かしいあの女性が誰なのか。そして、いつも最後に見る光景が血と他者の憎悪に塗れているのは何故なのか
何も分からぬまま、我は目を覚ます
――"いつも"はそうだった

「――だから、何でも正直に話しなさいって事ではないの。話したくない事は話さなくても良いし、それも辛いなら誤魔化したって良いのよ。ただね、お母さん、これだけは守って欲しいの。『絶対に嘘はつかない』って……良い、■■■■?」
いつもと違う、ハッキリと聞えた会話の内容。そして我の心をざわつかせる、■■■■という名前
風が吹き、帽子が飛ばされた子供が振り返り、夢を見ている我と眼が合う
薄黄色い瞳と灰色の髪。そして、小さく生えたその赤黒い角……ああ、成程。貴様は――

目覚めた場合、多少混濁した記憶に戸惑い、口角を上げる事も忘れたまま確認のように夢売りに言う
「……他言無用だ」
ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867)
城守りコウモリ
わーいわーい、ミミ寝るぅ!
※説明しよう!昼夜逆転のコウモリが夜に眠るとは、甘美で堕落の味なのだ!

割りと本気で寝ます、達成義務とは何だったのか…
アドリブはどうにでも!決定的な事実もホント、なんでも! パンドラ消費〇


ジェットコースターの下に磔になったような傾きに身の重さ
手の届く距離さえ見えない暗闇で、風すら感じない空間は慣性だけが宙を滑空する感覚を伝える

纏わりつく息苦しさ
唯一の音は一秒間に2beat、胸を打つ鼓動 気の逸る早鐘
それ自体が思い込みで、もしかすれば見えないレールから追って転がる大玉の振動かもしれない
強く強く、鈍く、全身に波及する


薄らぼんやりと揺り起こされて、半覚醒なまどろみにたゆたって、閉じゆく目に抗いながら【模倣音波】を再生する
『(落水の音、同時に続く水中から泡の昇る音、罵声、怒声、ただ悲鳴だけは近い)ヒアユーアー』
旅人の伝えた言葉、さあどうぞ
『(硬質ででこぼこした平面を擦る音、響きの太い男女の不明瞭な声に幼い叫びが混じる、四人は居る、録音場所から遠い争う音と声)』
記憶は霧散しギフトの及ぼす力が弱まる、もっとも…ギフトであったか、うわ言なのか確かめようはないが
掬える言葉は澱ばかり
『ヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアー』


「オハヨ! まだ今日? そう?
今日 モ! いい天気!!」
忘れっぽいから。また捨てといで
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
 夢を売る商売……なるのほど。『夢売り』様は、夜な夜なパイオツカイデーなチャンネーをはべらせてザギンでシースーに舌鼓を打つ類の御方だったのですね。今日も肩から掛けたピンクのカーディガンがとてもお似合い――え!? プロデューサー様ではないのですか!?

 ……なるのほど(その2)。「夢を売る商売(not比喩)」でしたか。これは失礼致しました。夢の研究はわたくしの世界でもされていましたが、混沌世界の謎技術の高さには驚かされるばかりですわね。
 無機物であるわたくしが夢を見るのかどうか。まずはそこが大きな疑問かと存じます。しかし! わたくしは人間と見まごうばかりの精巧さで作られた高性能アンドロイド。人間と同じように夢を見るし、お腹を出して寝れば風邪もひくのでしょう。――いぇっくし! 最近は寝苦しい夜が続きますわねぇ。全裸は少々やり過ぎだったかもしれません。
 どうせなら縁起の良い夢がいいですわね。「一富士、二鷹、三茄子」と申します。素朴な疑問として、この三つでどのような夢が錬成されるのか想像がつきません。富士山を舞台に、鷹に乗って、巨大な茄子と戦う……?(どうしてそうなった) う~む。なかなかエキサイティングな夢になりそうですわ。

 他人様の夢を拝見できるなんて、素晴らしい能力ですわね。夢は深層意識の発露といいます。データ収集も捗りそう。できるならばわたくしも習得してみたいものですわ。

アドリブ歓迎
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
灼鉄の聖女
アドリブ歓迎

■心情
夢売りだなんて、世の中には不思議な職業もあるものね


■夢
気付けば街の中、人々が行き交う賑やかな通り
ローレットに居たはずなのにと辺りを見回せば、懐かしい姿を見つける
明るい栗色の髪に、大きな緑色の目。額には、私が悪戯しようとして付けてしまった縦に走る傷
弟だ。10年以上前に死んだはずの。まだ元気だった頃の姿をしている

駆け出した弟を追って裏通りを抜ければ、景色が一面の銀世界へと一変する
そこは見覚えのあるスラム街
戦争で両親を失い没落した私と弟が暮らした場所。天候まであの日と同じだ
手が震える。心臓がドクドクと早鐘を打つ
かつて暮らした廃屋を覗き込めば、幼い頃の私と、飢えと寒さで衰弱して病気に掛かり、死を迎えつつある弟の姿

「ごめんなさい……ごめんなさい!私が、私のせいで!私があの時、食べてしまったから。貴方の為にもらったのに、貴方だってお腹が空いていると分かっていたのに!」

「泣かないで姉さん。僕はあの時…本当にお腹が一杯だったんだ。僕のために…町中を駆け回って……パンと毛布を手に入れてくれた。栄養が必要なのは姉さんの方だよ。僕は少し休めば……」

「ミーシャ!お願い、目を覚まして!ミーシャ!ミーシャ!!」

意識を失った弟を助け起こそうと、飛び出したところで目が覚める
あの時断っていても、何も変わらなかったかも知れない。それでも思ってしまうのだ。もしかしたら、あの子が生き残れたのではないかと
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
■夢

昔の出来事(劇場の火災)の再現

ああ、やっと寝れる……いや、こっちの話
稔クン(青髪の方)は興味ないらしいので俺(虚)が依頼を受ける事に。


■気がつくと

身体が動かない。息苦しい、全身痛い、燃えるように暑い。
血の付いたナイフ、ケタケタと誰かの笑う声。
自分の身体からは焦げた臭いがする。
これは『混沌世界へやって来る直前の出来事』を再現したものだ。

とある小さな劇場、その舞台上で俺は死にかけていた。
どうしてこうなった?何故俺は殺されようとしている?
全て憶えている。考えるだけで嫌になるから、今まで頭の奥にしまい込んでいた。


『死ぬなら舞台の上が良い』確かにそう言ったけど、これは違う。こんな最期は望んじゃいなかった。
舞台役者になるために頑張ってたのに。
まだ高校生だったし、役者の他にもやりたい事はたくさんあったんだ。
熱いのに、冷たくなっていく身体。死の恐怖が身体を支配して、指一本動かせない。
全てが炎に包まれ、灰になって消える。そんな恐ろしい夢だ。

あの時はマジ死ぬと思ったんだよ。
でもな?諦めて目を閉じようとしたその時、光がぶわーって差し込んできてさ
信じて貰えないかもしれないけど、俺の前に天使が現れたんだ

「諦めるにはまだ早いぞ。さあ、俺と共に最高の劇を作ろう」

なーんて格好良いこと言ってくれちゃってさ、俺を助けてくれたんだよな
ソイツは今…

「寝る間を惜しんで次の脚本を考えているところだ!邪魔をするな!!」
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
■夢
お家から出られず…多くの時間をベッドの上で過ごす
スポーツなんて以ての外…家事のお手伝いですら、その後に熱を出してしまう
大病を境にこんな風になって以来…もう3年は経ったでしょうか

こんな私でもお母さんは明るく接してくれます、お陰で寂しくはないのです
「おっはよー、■■■■ちゃん!!!今日の!おやつは!!パンケーキだよっ!ミ☆★」

中学校は途中までしか通えず…卒業証書だけをお家で受け取りました
でもどうやら私のお家は経済的にも恵まれているようで、良い家庭教師の方に習い…年齢相応に恥ずかしくない学力……というより普通よりかなり高いレベルのお勉強もさせて貰いました

優しく人格者な両親、恵まれた経済環境、3年も学校に行っていないのに時々訪ねてくれる友人
この体を差し引いても…私はとてもとても恵まれているのだと思います

だけどやはり…
窓から見える公園でサッカーをする子供達
楽しそうにじゃれあいながら帰る友人達
皆を羨ましく思ってしまう時もあります

そんな日は、私は大好きな童話を読んで過ごします
そうしている間は…ほかの全てを忘れて没頭できるのです
有名な童話は全て読んでいると自負して……んっ…けほけほ…けほっ…

少しだけ調子が悪く…熱も上がっている気がします
今日はもう、休まないとですね……

■現実
うぉぁあっ!何今の夢!何処!?誰!?
…ま、いっか!おはようございます!!!今日もイタズラしに行くぞおらあっ!!ミ☆★

リプレイ

●一富士二鷹三茄子
「夢を売る商売……なるのほど。『夢売り』様は、夜な夜なパイオツカイデーなチャンネーをはべらせてザギンでシースーに舌鼓を打つ類の御方だったのですね」
 『真宵の魔導師』エリア・アトラス・サンシール(p3p000413)の夢を見た夢売りがさあ次は──と振り返ると同時。『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)の言葉に思わず固まった。
「今、何か、呪文みたいな言葉が──」
「──え!? プロデューサー様ではないのですか!?」
 再び説明を聞いたエリザベス。今度は神妙に頷いた。
「……なるのほど。夢を売る商売(not比喩)でしたか。これは失礼致しました」
 夢の研究と言えば、エリザベスが元いた世界でもされていた。けれどこうして商売にまでなるとは、混沌世界の謎技術の高さに驚かされるばかりである。
 さて、問題はエリザベスが果たして夢を見るのかということだろう。何しろ、彼女は無機物(アンドロイド)である。
「しかし! わたくしは人間と見まごうばかりの精巧さで作られた高性能アンドロイド。人間と同じように夢を見るし、お腹を出して寝れば風邪もひくのでしょう。──いぇっくし!」
 盛大なくしゃみがローレットに響く。寝苦しい夜が続く近頃だ、お腹を出してしまっていても仕方ないやも──。
(全裸は少々やり過ぎだったかもしれません)
 ──仕方ない、か?
 ちり紙で鼻をかんだエリザベスは夢売りへ『縁起の良い夢』が良いと告げた。
「どうせ夢を見るのなら、ということですわ。縁起が良いと言えば「一富士、二鷹、三茄子」と申します。素朴な疑問として、この3つでどのような夢が錬成されるのか想像がつきません」
 エリザベスはその3つを用いて見られそうな夢を考えてみる。富士山を舞台に、鷹の背へ乗って──巨大な茄子と戦う?
「う~む。なかなかエキサイティングな夢になりそうですわ」
「発想が既にエキサイティングだけどね」
 苦笑した夢売りは「強く望めば夢になるかもしれない」と言った。本当に願ってエリザベスが眠りにつくのなら、きっとそのようになるのだろう。
 ──そう。富士山を舞台に、鷹の背へ乗ったエリザベスが、武器を片手に巨大な茄子と決戦の如き戦いを繰り広げるという夢を。
「それにしても、他人様の夢を拝見できるなんて、素晴らしい能力ですわね。夢は深層意識の発露といいます。データ収集も捗りそう」
 できることなら習得してみたい──そんなエリザベスの言葉に、夢売りは小さく苦笑して肩を竦めてみせた。

●懺悔にも似た
(夢売りだなんて、世の中には不思議な職業もあるものね)
 そう思いながらも『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の意識は深みへと沈んでいく。束の間の、夢の中へと。

 ふと目を開けた先には、賑やかな通りが見えた。
(私、ローレットにいたはずなのに……)
 辺りを見回したヴァレーリヤは、その瞳に懐かしい姿を映した。驚きに目が見開かれる。
 明るい栗色の髪。瞳は大きく、新緑のような色を宿して。そして額には縦に走る傷跡がある。
 その傷はヴァレーリヤが悪戯をしようとして、付けてしまったものだった。
 彼が死んで10年以上も経ったはずなのに、どうしたことだろう。元気な姿で彼は──弟は、ヴァレーリヤの視界に存在している。
 不意に、弟が駆け出した。
「待って!」
 その背中を追うように走り出したヴァレーリヤ。弟は止まらず、2人は裏通りを駆けていく。
 通りを抜けた──そう思ったと同時、ヴァレーリヤの周囲は一変した。景色は一面の銀世界へ。目の前に映るのは見覚えのあるスラム街へ。
 ざわり、と背筋が粟立った。心臓の音がやけに大きく聞こえて、血の気が引いて冷たくなった手が震える。
(天候まで、あの日と同じ……)
 忘れることなんて、できるはずもない。戦争で両親を失った姉弟は、家の没落と共にここへ移らざるを得なかったのだから。
 その足が向かうのは、かつて暮らした廃屋。
(これが、あの日なら……私は……)
 ヴァレーリヤはそっと覗き込んだ先は──やはり、記憶にあるままで。弟の食事を食べてしまったのだと謝るかつてのヴァレーリヤに、死相を浮かべた弟が弱々しく微笑みかける。
「姉さんは……町中を駆け回って……パンと毛布を手に入れてくれた。栄養が必要なのは姉さんの方だよ。僕は少し休めば……」
 言葉がだんだん弱々しく──そして、途切れる。
「ミーシャ! お願い、目を覚まして! ミーシャ! ミーシャ!!」
 悲痛な叫びがヴァレーリヤの耳を刺す。
 ──この時、私は助けられなかった。だけどでも、今の私なら?
 ヴァレーリヤの体は前へ。咄嗟に、かつての彼女の前へ飛び出そうとしていた。

「……っ!」
 ひゅ、と息を吸う。そこは見慣れた景色──ローレットの中。ヴァレーリヤはゆっくり吐息をこぼし、目を伏せた。

 どうしても、思わずにはいられない。
 もし断っていたら、誘惑に勝っていたら。もしかしたら──あの子が生き残れたのではないかと。

●ひあゆーあー

「わーいわーい、ミミ寝るぅ!」
 至極嬉しそうに椅子へ飛び乗った『城守りコウモリ』ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867)。夢売りに促されるまま目を閉じ、うたた寝どころか本気で寝にかかっている。
 昼夜逆転コウモリが夜に眠るという行為は、甘美かつ堕落の味を秘めて。さて、そんな彼女の見る夢は──。

 ──体が、重かった。やけに傾いていて、慣性だけが宙を滑空している感覚を伝える。
 手の届く距離だって見えやしない暗闇に、纏わりつく息苦しさ。この状況にあって、風の少しも感じ取れやしない。
 そんな彼女が感じ取れる数少ない1つ。1秒間に2拍の鼓動。胸を打っているそれは早鐘のよう。けれど──それさえも思い込みで、もしかしたら見えないレールによって転がってくる大玉の振動かもしれない。もしくは。或いは。
 わかるのは只々強く強く、そして鈍く、全身へと波及していくこと。

 ふと揺り起こされ、ミミは微睡みの中を揺蕩った。完全な覚醒はしておらず、このままでは瞼が降りてしまいそう。それに抗いながら、ミミは大きく毛を膨らませて。発するのは模倣の音波。
 落水の音。次いで、水中からコポコポと泡が昇っていく音。混じる罵声、怒声──悲鳴だけはやけに近くて。
『ヒアユーアー』
 それは旅人の伝えた言葉。模倣の音波はまだ続く。
 硬質な、けれど平らでない平面を擦って行く音。男女の不明瞭な声に、幼い誰かの叫びが混じる。遠くから聞こえる音と、声。
 ふと記憶が霧散していったのは、耐え切れぬ睡魔によってか。今のそれらが世界の贈り物によるものか、それともうわ言だったのか確かめようはないが──残った言葉は、ただの澱だ。

『ヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアーヒアユーアー』

 嗚呼、嗚呼。”ヒアユーアー”。それだけが、残って。

 ぱちりと目を覚ましたミミは夢なんて綺麗さっぱり、忘れてしまったという顔で。うーんと1つ伸びをした。
「オハヨ! まだ今日? そう? 今日 モ! いい天気!!」

●大怪盗
(……おっといけねぇ、ボーッとしてたらしい)
 夢の中の『レディの味方』サンディ・カルタ(p3p000438)は頭を振って眠気を飛ばす。
 彼は世紀の大怪盗カルタ。彼ともあろうものが、まさか80年目にして居眠りで捕まるなんてあってはならない。ならないのである。
 もしもそんな事になれば世界中の笑い者になってしまうやもしれない。
 頭をスッキリさせたカルタは、脳内で段取りの確認を始めた。
 まず、窓から屋根に上がって広場に予告状を投げる。視線は予告状か、あるいは投げた大怪盗へと向けられるだろう。
 そこからグライダーで目当ての建物まで飛んで屋根に着地。そこまでは誰かに見つかるかもしれないが、透過と転移で侵入してしまえば問題ない。
 向かうのはもちろん厳重なギャラリー、そこで待つ金庫の元──ではなく。主人の自室に赴き、時計裏に隠された本物を頂いて撤退だ。
(俺の魔術を分析したいがために挑発してくる身の程知らずにゃ、そんなもんでいいだろ)
 さあ、そろそろ始めようか。大怪盗カルタは屋根へひらりと飛び上がって──。


 ──……い。

 ──……お……い……。

「──おい、見えてるのか? 『俺』!」
「……っ!?」
 気づけば大怪盗カルタはサンディの目の前に──そう、目の前にいたのだ。
 目を瞬かせるサンディに、大怪盗は苦笑いを浮かべて。
「まー目覚めた頃にはまたこの記憶も消えちまうんだろうが。一応何度でもはなしておくぜ」
 いつしかきっと、消えない記憶となるかもしれないから。何かのきっかけで思い出してくれるかもしれないから。
「俺はお前の過去だ。呪いを受けて成長が巻き戻されちまった。記憶や技能も飛んじまって、家柄すら無くなっちまった」
 大怪盗カルタは全てを失い、体は時さえも巻き戻されて。そうして大怪盗は少年へと──ただのサンディ・カルタとなった。
「まぁ俺がお前に何か出来る訳じゃねーし、お前にとっちゃ俺はいらねーだろーなって思う。
 だが、伝えなきゃいけねぇことは3つある」
 何度忘れたとしても、その度に伝える言葉だ。
 まず、世紀の大怪盗となれる素質があること。過去のサンディが大怪盗であると、それが真であるならば間違いないのだろう。
「2つ目。お前は、親から見捨てられたわけじゃない。
 3つ目、そしておまえは──」
 急に視界がブレた。大怪盗の輪郭が幾重にもなって、ふっと遠ざかっていく。

 『風に呪われて』いる。

 その言葉はやけに耳へ残ったはずなのに──目覚めたサンディは、やはり綺麗さっぱりと忘れてしまっていた。

●『私』
 私はベッドの上から窓の外を見た。ああ、今日も空は青い。
 大病を患って、それを境に3年は経っただろうか。ほとんどの時間をベッドの上で過ごす私は、家事ですら手伝った後に熱を出してしまう体だった。
 それでも今日は調子が良いような気がして。私が上体を起こすと同時、部屋の扉が開く。
「おっはよー、■■■■ちゃん!!! 今日の! おやつは!! パンケーキだよっ!ミ☆★」
 母の明るい声に私は小さく笑った。私の世界は狭くなってしまったけれど、それでも寂しくないと思うのは母のお陰かもしれない。
 それに家は経済的に恵まれていたらしく、良い家庭教師をつけてもらった。中学の卒業証書は家で受け取ることとなったが、私の学力は同年代に劣らない──いや、周りのそれより高くあるかもしれない。

 優しい人格者な両親がいて。
 家は恵まれた経済環境にあり。
 学校に行かなくなっても時折訪ねてくれる友人がいる。

 それは私が恵まれているのだと思わせるのに十分だった。十分だった──はずなのに。
「それじゃあ■■■■ちゃん!!! また来るねー!!!」
 母が部屋から出て行き、静けさが戻る。私はそっと窓の外を見た。
 上体を起こした今、私の視界には近くの公園が映っていた。子供たちがサッカーをして遊んでいる。視線を移せば、じゃれ合うように帰る友人たちの姿。
(……私も)
 あの中に混ざりたいと、羨む気持ちが湧き上がる。私は小さく頭を振って、童話の本へ手を伸ばした。
 大好きな童話たち。この世界に引き込まれている間はそれだけに没頭できる。もう有名な童話は全て読んだと言っても過言ではないだろう。
「んっ……けほけほ……けほっ……」
 本へ伸ばした手が止まり、ベッドへ落ちる。調子が良いと思ったのは気のせい。むしろ、悪くなってしまったようだ。
(今日はもう、休まないとですね……)
 ベッドに横たえた体は深く、重く、沈むようで──。

「うぉぁあっ!」
 ガバッと椅子から体を起こした『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)は目をまん丸にして辺りを見回した。良かったここはいつものローレット。……じゃなくて。
「何今の夢! 何処!? 誰!?」
 問いかけに答えられる者はいない。夢売りも「さあ?」と肩を竦めてみせる。
 答えがないなら、仕方ないので。
「……ま、いっか! おはようございます!!! 今日もイタズラしに行くぞおらあっ!!ミ☆★」

●舞い降りし天使

「ああ、やっと寝れる……」
 『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)──その片割れ、虚は「こっちの話」とローレットの椅子へ腰かけた。彼の片割れであり体を共有する稔は、どうにもこの依頼に興味が無いらしい。
 そんなわけで、虚は夢売りへ示されるがままに目を閉じて──。

 ──気づけば、身体が動かなかった。それだけではない。息苦しく、全身を痛みが襲い、同時に燃えているように熱かった。
(どうしてこうなった?)
 血の付いたナイフが、視界に見える。
(何故俺は殺されようとしている?)
 誰かが壊れた人形のように嗤っている。
(劇場に火を放ったのは、)
 既に自分の身体から、焦げた匂いがしていた。

 『死ぬなら舞台の上が良い』と言ったことがある。現実、虚はその言葉通り劇場の舞台で死にかけていた。
(……違う)
 こんな最期を望んだんじゃない。こんなところで死にたくない。
 舞台役者になりたいんだ。役者の他にもやりたい事は沢山あるんだ。だって、まだ高校生で。こんなところで終わりを迎えようとするだなんて、同年代の誰も考えないだろう。
 熱い、暑い、あつい──なのに、寒い。
 身体が死へ向かって行く。死の恐怖が心を満たしていく。指1本動かせない身体へ向けて、火が近づいてきていた。
(このまま……炎に全部包まれて、灰になって消えるのか?)
 夢だったら良いのに、全身を支配する痛みと恐怖が『現実だ』と強く叫ぶ。
 ──嗚呼、もう。
 すぐそこまで近づいた終わりを感じ、諦めて視界を閉ざそうとしたその時だった。差し込んだ──溢れんばかり、と言っても良いかもしれない──光にはっと目を開けると、そこには天使がいたのである。
「諦めるにはまだ早いぞ。さあ、俺と共に最高の劇を作ろう」
 そして格好良い台詞と共に、天使は虚を助けたのだ──。

(……ああ、夢か)
 それは夢とも、過去の回想とも呼べるもの。憶えていても考えるだけで嫌になって、今まで意識的に記憶の奥底へとしまい込んでいた──考えないようにしていた、混沌世界へ来る直前の出来事だった。
 ちなみに──その天使は、今。

「寝る間を惜しんで次の脚本を考えているところだ!邪魔をするな!!」

 ──だそうな。

●約束
(寝るだけで報酬を貰えるとは、何とも簡単な依頼もあったものだ)
 椅子に腰かけた『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は包帯の下、目を閉じる。程なくしてその精神は睡魔という闇に包まれた。

 ──ここは……?
 リュグナーは元の世界の、どこにでもあるような小さな村に立っていた。変哲なく、不思議な事などもない。なのに何処か、懐かしさを感じていて。
 ああ、とその光景を眺めながら合点する。前にも夢で見たことがあるのだろう。この景色と、目の前の光景を。
 目の前には子どもと、長い黒髪の女。女はしゃがみこみ、子どもへ何かを話しているようだった。
(やはり、夢で見ている。ひと度ではないというのに、起きるといつも記憶から抜け落ちる光景だ)
 そして、女が話していることも、女の正体も──最後に見る光景が血と他者の憎悪に塗れている理由も、わからぬまま忘れて目を覚ます。

 "いつも"は、そうだった。

「──だから、何でも正直に話しなさいって事ではないの」
 聞こえてきた女の声に、リュグナーは体を強張らせた。
(これまでとは……違う、だと?)
 夢売りが関与しているからなのか。それとも別の要因か。原因がわからぬまま、女の言葉は続く。
「話したくない事は話さなくても良いし、それも辛いなら誤魔化したって良いのよ。ただね、お母さん、これだけは守って欲しいの。『絶対に嘘はつかない』って……良い、■■■■?」
 ざわざわと、心が落ち着かない。けれど耳を塞ぐことも、目を逸らし閉じることもできなかった。

 上手く聞き取れない、その名前は。その約束は。その子どもは。その女は。この、場所は。

 不意に強い風がリュグナーの方へと吹いた。目深に被っていた子どもの帽子が後方へと飛んでいき、振り返った子どもと視線が交錯する。
 薄黄色い瞳ら灰色の髪。そして、小さく生えた赤黒い、角。
(……ああ、成程。貴様は──)

 包帯の下、瞼を開ける。夢の内容は──忘れていない。
 思い出してしまった記憶の一部に戸惑いを隠せぬリュグナーは、普段のような笑みも浮かべることなく夢売りを見上げた。
「……他言無用だ」
 夢を共有せし夢売りは、リュグナーと対照的に笑みを浮かべて──勿論、と。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 夢売りは大変満足したようです。

 再びご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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