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シナリオ詳細

カルネと鉄帝蕎麦飛脚
カルネと鉄帝蕎麦飛脚

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●蕎麦は早い。早いということは、強いということ!
 ゴリラ三郎田は受話器を上げ、黒いダイヤルを数回回した。
「盛りそばひとつ」
『へい』
 次の瞬間、自宅の壁が粉砕され、拳を突き出した蕎麦屋の親父が盛りそばを肩に担いだままキラリと歯を光らせて笑った。
「おまち!」

 ここは鉄帝、鋼の都。中でも鋼っぽさがダンチなことで有名な鋼商店街には蕎麦屋がある。
 名を『黒金蕎麦』。
 ミサイルの直撃をくらっても倒れないくそ立派な佇まいをしたこのお店には、一人の蕎麦屋とそのアルバイターたちがいた。
「バイトよ、黒金蕎麦の掟はなんだ」
「そんなこと言われても僕今日だけのバイトだし」
「掟はなんだ言ってみろォ!」
「そんなこと言われてもォ!?」
 襟首を掴んでがくんがくん揺すられるカルネ(p3n000010)。
「『蕎麦の心は鋼の心! 注文一つで俊足配達! 壁があったらぶちやぶる! うどんより蕎麦のが美味い!』だ」
「最後のやつ言わなくてもよくないかな」
「蕎麦は美味いだろうが!」
 ア゛ァ!? と目を左右非対称に見開いて襟首を掴み上げる蕎麦屋の店主黒金おじさん。
「見ろ!」
 黒金おじさんは鋼鉄の看板にズドンと彫り込まれた金細工の紋章を指さした。
「この家紋は誇りの証! 俺の蕎麦が美味く! そして速い証だ! おまえはその足になるんだよ!」
「わかったからふりまわすのやめて」
「わかればいいんだ」
 カルネをすっと下ろすと、黒金おじさんはゆっくりと店内を歩いた。
 カルネと、そしてその場に居並ぶイレギュラーズたちを振り返る。
「お前たちに来て貰ったのは他でもない。この黒金蕎麦の出前担当になってもらうためだ!」
「元々の出前担当さんたちは?」
「同僚同士の結婚式に出ている! 俺以外全員だ!」
「営業日なのに!?」
「晴れ舞台なら応援するのが筋だろうが!」
 筋骨隆々の腕をパァンと叩いて見せる黒金おじさん。
「だがそれで営業に穴を開けちゃあ客にもバイトたちにも義理が立たねえ! ここはバシッと普段通りに営業して、奴らを安心して祝福したりされたりさせてやろうってんだ!
 普段通り……つまりは掟だ! 言ってみろ!」
「『蕎麦の心は鋼の心。注文一つで俊足配達。壁があったらぶちやぶる』?」
「『蕎麦はうどんより美味い』だ!」
「それいわなくてもいいよね!?」
「とにかく!」
 黒金おじさんは筋肉を誇示しながら振り返った。
「鋼の配達! 頼むぜ!」

GMコメント

 今日の仕事は蕎麦配達です。
 難易度がノーマルです。つまりパンドラが割と減るということだ。……蕎麦配達でだ!

 あと今回の依頼にはカルネ君が同僚としています。
 出前に出るとき『一緒に来て』って言えばさらっと来てくれます。彼の美少年ぶりと鉄帝へのなじみっぷりに興味がわいたら呼んでみてください。
 特に有利になることととかないですが絵的に美味しくなります。
 複数人から同時に来てって言われた場合は全部に行きます。加減というものは知らない。

■■■オーダー■■■
 一日の間蕎麦配達のバイトをすること。
 ただしこの配達にはいくつかのパターンがあります。
 PCの好みや特技、絵面的なおいしさや仮に挿絵ピンにしたときの愉快さで選んでください。楽しいことがなによりいいんだ、今は。
 一応各パターンごとに2~3人いればいいですが、極端な話『Aパターンに8人』とか言い出してもOKです。楽しいことがなによりいいんだ、今は!
 あとオカモチのバランスとか衝撃とか今更気にしなくていい。鉄帝のオカモチは強いんだよ! 逆さに振っても大丈夫なんだよ、つよいから!

・Aパターン:馬出前、バイク出前、コリリバ出前
 馬や練達バイク(専用スクーター)やパカダクラやハイパーメカニカルコロリババア量産型に跨がって鉄帝の町を駆け抜けとにかく最速で蕎麦を届けましょう。
 その際人をひこうが壁を壊そうが知ったことじゃあねえ。鉄帝は強いんだ! 明日には直る! ただし全部ぼかぼか蹴散らそうとするとガチ強えやつとぶつかったりしてタイムロスが起きかねません。
 破壊は次の手段にして、できるだけ飛び越えたり乗り越えたりしましょう。速さを出す上で人を傷付ける必要なんて、ないのさ。
 あとすごく少ないケースだと思いますが『俺が馬だ』
『俺がバイクになることだ』みたいな人は自力で走ってもいいよ。この際色々大目に見るよ今回は。

・Bパターン:戦場蕎麦出前
 鉄帝は軍事国家。幻想との長い戦争やあちこちの紛争、その他色んな場所でドンパチかましてますが、そんな時でも蕎麦は食いてえよな! な!
 なので戦場のなかを突っ切って蕎麦を配達します。
 なあに気にするな。当たらなければどうということはない。仮に当たっても自力で治癒できればどうということはない。仮に治癒できなくても我慢できればどうということはねえなあ! なあ!
 具体的に言うと防御、回避、機動力、ないしは回復力やHPなんかを使って数字で殴るようなプレイングが欲しくなるでしょう。
 けどあれだ。全力移動とか副行動はプレイングに書かなくていいです。なんかややこしいし絵的に地味になるから。
 移動方法は主に徒歩や飛行になると思います。一応言って置くけど戦場での高高度飛行はコロシテって言ってるようなものだからやめようね。

・パターンC:近場の出前
 すぐ近くのお宅やなんかから出前が来たとき、馬に乗ってる場合じゃねえつってフリーランニング式に町を直線距離で突っ切っていきます。
 乗り越えられる障害物は道。壊せる壁は道。つまり目標地点までは直通できるということ。
 飛行してもいいっちゃいいけど、鉄帝にはピザ屋や郵便屋やラーメン屋が高速で飛び交ってるから衝突事故に注意しよう。あとその辺の流れ弾。 

【おまけ解説】
 黒金蕎麦の店長黒金おじさんは蕎麦を作るのが死ぬほど早く、注文が来たら即できあがるという神業を見せます。なので調理スタッフその他を必要としていません。
 必要なのは君の足! 足だよ!
 ちなみに黒金おじさんの下の名前は親方です。パパから『親方になれ!』て気持ちで名付けられました。

【アドリブ度(鉄帝)】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございますし鉄帝民の空気に若干染まると思います。
 鉄帝アレルギーの方やなんかの理由でアドリブにアレルギーのある方は『アドリブなし』とプレイングに記載して下さい。蕎麦アレルギーの人に対する蕎麦屋みたく配慮します。

  • カルネと鉄帝蕎麦飛脚完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月30日 22時40分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
二輪
ラノール・メルカノワ(p3p000045)
濃紺に煌めく星
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
清水 洸汰(p3p000845)
雲水不住
ガーグムド(p3p001606)
爆走爆炎爆砕流
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
トルハ(p3p005489)
極限インブリード
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの

リプレイ

●鉄帝バイトはいつも命がけ
「フハハハハハハ! ハハハハハハハ!」
 『極限インブリード』トルハ(p3p005489)が布に撒いたそば粉をすげえ勢いで踏みまくっていた。
「この状況……既視感! よもやスタッフもその結婚相手もゴリラじゃないだろうな!?」
「馬鹿野郎、鉄帝民はみんなゴリラだ」
「そうだったか!」
「誤解を招くこといわないでください!」
 純粋な鉄帝民(非ゴリラ)の『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が両腕を振り上げて威嚇した。
 コホンと咳払いする黒金親方。
「すまんすまん。半分はゴリラで、もう半分は暴れ牛だ」
「それならいいのデス」
「よくないな?」
 鉄帝民じゃないけどそのくらいは分かるぞ? と首を傾げる『濃紺に煌めく星』ラノール・メルカノワ(p3p000045)。
「なるほど、それで『高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する』とか行き当たりばったりなこと言ってたんですね――既視感!」
 キュピーンと『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)の頭(?)に電流が走った。
 いや電流ならいつも走ってるけど。
 そんなアルプスローダーの荷台(勝手に増設された)にはオカモチとオカモチバランサー(マルシン出前機っていうらいいよ)ががしょんと接続され、シートにはカルネがちょこんと跨がっていた。
「あれ? なんで僕がここに乗っているのかな?」
「出前に行くからですね」
「そうか……そうだね……。君と一緒に出前が出来て嬉しいよ」
 穏やかに笑うカルネ。このあと音速で振り回されるんだろうなって思ってトルハやラノールたちは同情のまなざしを送った。

「聞いて驚け!」
 『爆走爆炎爆砕流』ガーグムド(p3p001606)がそば屋の瓦屋根の上に立ち、ローマの彫像みたいなポーズをとった。
「我は、蕎麦を知って居るぞ!」
「あれうまいよなー」
 軒下でバットをゆるく振りながら話を合わせる『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)。
「以前ラーメンを食べた時に通りすがりの者から聞いたのだ!」
「おなじ麺類だもんなー。けど暑い季節は冷たい蕎麦のほうがうま――」
「ラーメンは麺に中立(neutral)の力が込められている」
「なんつったー?」
 ぴたりと動きを止める洸汰。
「そして蕎麦は調和(force)の力が込められているのであろう?」
「ん? うん……そうだなー」
 訂正するのも面倒なのか話を合わせていく洸汰である。
 ゆるーくピッチングフォームの練習を始める洸汰。
「店主が直に込めた調和(force)……確かに客に届けようではないか!」
「そうだなー。ガーグムドは薬味使う派?」

「今日はいつにもまして嫌な予感しかしないデスね……」
 大砲に棺桶みたく詰め込まれて、『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)は正直な感想を述べた。この状態でその感想を抱かなかったらよほどの剛胆マンである。
 コンコンと砲身をノックする黒金親方。
「出前が来たら蕎麦と一緒に戦場に発射する」
「ヒエッ……」
「わたくし見たことありますわこの兵器!」
 本物ですのねーといってぺたぺた触る『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)……が、親方によいしょと持ち上げられた。
「そう、今回もこのわたくし!」
 よいしょと掲げたまま運ばれるタントのフィンガースナップ。

   \きらめけ!/
 ――二台目の大砲にセットされるタント。
   \ぼくらの!/
 ――ぱたんと蓋を閉じ安全装置を解除されるタント。
 ――きゅらきゅらレバーを回す親方。
 \\\タント様!///
 ――天空斜め四十五度に大砲がむいたまま、その口からタントは叫んだ。
「に、ついてこれますかし――ぴゃー!?」
 赤いどくろマークの発射ボタンが、グーパンチで押された。

●我は馬なり、トルハ
「馬に乗って出前をするのではない」
 ぶるると鼻息粗く首を振るわせて、トルハは凶暴な目を光らせた。
 馬上にはロープで固定されたカルネ。同じくロープ固定されたオカモチ。
「馬『が』乗せるのだ! フーッハハハハハハ!! GO!」
 蕎麦屋の壁を破壊しながら野外へ飛び出すトルハ。
 馬上のカルネが健在に激突したことなどお構いなしに、ぎらりと右折方向へと首を向ける。
「暴れ牛だー!」
「既視感!」
 よく考えたら例のピザ屋数軒先じゃん近所じゃん。とか思ったトルハだが思うより早く飛び、思うより早く暴れ牛の脳天を蹴りつけていた。
「ぬるいわァ! フハハハハー!」
 トルハはそのまま速度をあげるとブロック塀を確認。
 『トゥ』と叫ぶと勢いよくジャンプして飛び越え、その先にさらなるブロック塀を確認……したが今度は真っ向から突き抜けていった。
「真の鉄帝馬はこの壁を垂直に駆け抜けると聞いた。私はまだまだ入門馬だな! フハハハハハ!」
 逆光を浴びながら瓦屋根から飛び降り、障子戸を突き抜けて民家に乱入するトルハ。
 馬上で軽く死んでるカルネを突き出し、ギラリと笑った。
「ヘイお待ちィ!」
 そんなトルハに。
「「グッジョブ!」」
 ゴリラ兄弟が同時にサムズアップで応えた。

●音を置き去りにするアルプスローダー。
 ベルコールが三回。
 受話器を上げた黒金親方は、二度頷いたあと静かに受話器を置いた。
 黒電話のそばに置かれたレバーを下げると、室内に大きなブザー音が鳴り響く。
 始まりのブザーだ。
 レッドシグナルとブザー音。
 開くシャッター。さしこむ逆光。
 イエローシグナルと、ブザー音。
 と同時にアルプスローダーの車体にオカモチがセットされ、目を回したカルネがそのまま据え付けられた。
「DEMAE――GO!!」
 ブルーシグナルとほぼ同時に、アルプスローダーは音を超えた。

 民家の屋根を飛び移るようにアクロバット走行をしかけるアルプスローダー。
 激しく反り立ったシャチホコめいた像を駆け上がり、天空へと飛び上がる。
 数件の民家を飛び越え、路面へと着地したアルプスローダーはそのままの速度で鉄帝の通りを爆走した。
 砂と土で舗装された道路をえぐるオフロードタイヤの跡。
 轍はゆるいカーブをえがき、黒色の塀を駆け上がるようにして伸びていく。
 その先でほぼ直角の姿勢で壁を走るアルプスローダーの姿があった。
「ドーモ。ソバヤ=サン。ラーメンランナーで」
「エッヂッッッッ!!」
「ハヤイ!」
 ライバルのラーメン屋台が細道の優先権を奪おうと勝負をしかけてきたその瞬間には撥ね飛ばし、大きなガレージめがけて車体もろとも突っ込んだ。
「黒金蕎麦です。ざる五人前おまちどおさまでした」
 エンジンを鳴らして言うアルプスローダーに、髭のゴリラメカニックはニヒルな笑いで振り向いた。
「グッジョブ!」

●無敵鉄板暴牛リュカシス
「あんたのことはデスゴリラの旦那から聞いてるぜ。奔(はし)れるんだろう……?」
 ザン、と蕎麦をざるで湯斬ると、芸術的なまでの素早さで天ぷら蕎麦を作り上げた。
「勿論デス!」
 ビッと親指を立てたリュカシスは、既に黒金の紋章が刻まれたウルトラカブに跨がっていた。
 親方の投げたオカモチが後部に備え付けた出前機にがしょんと装着され、リュカシスは前だけを見てアクセルをひねった。
 猛烈なエンジン音。そして排気。
 爆発のような勢いで、リュカシスは黒金蕎麦のテンポから発車した。
 黒金蕎麦のたつ地域はいわゆる激戦区。どのくらい激戦かといえば、ピザ屋やうどん屋やラーメン屋台が猛烈な速度で行き交い時には進路を競い合って正面から拳を交えることもしばしばである。
 っていうか今さっきラーメン屋台が爆発四散してどんぶりが空を飛んでいた。
 この地に譲り合いやかもしれない運転などない。
 常に勝負。常に命がけ。常にクライマックスだ。
「ゴッツアンデス!」
 リュカシスはその流儀にならい、ウルトラカブを爆走させた。
 正面から迫るピザ屋のバイク。
 右側通行などという概念も、そして勿論譲り合いという概念もない。この商店街は強い者がえらく、早い者が美味い。
 退いたが最後のフードビジネスである。
「我らピザスチールホース! 罷り通る!」
「黒金蕎麦デス! ご贔屓に!」
 両者アクセルをひねり加速すると、バイクを真正面から激突させた。
 ほぼ捨て身のタックルはしかし、リュカシスにわずかながら軍配があがった。
 砕け爆発するピザバイク。
 爆風を背に、リュカシスはブレーキもかけずにオフィスに突っ込んだ。
「天ぷら蕎麦、お待ちデス!」

●タント様がすごい走るから見てて
「ぴゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーむぎゅ!」
 大地に頭から突き刺さるタント様を見て。
 両足ばたばたさせるのも見て。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――むぎゅ!」
 追って投入されたカルネくんも見て。
 二人はひとしきりばたばたしたあと頭を引っこ抜くと、なんでかしらんけど無事なオカモチを抱えた。
「なんで僕が一緒に行くことになったのかな」
「弾よけですわ!」
「そっかあ……」
 何かを悟った顔でにっこり笑うカルネ。
「それでも一緒に出前ができて嬉――」
 飛来するマイクロミサイル。
 振りかざすカルネシールド。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」

 タントの作戦は単純である。
 『カルネでいこうぜ』『タントをだいじに』。
 ひたすら被弾するカルネをタントが両手で抱え上げてダッシュしているさまをどうかご想像いただきたい。機動力の違いから本当はできないことだけどこの際いいや。
「ねえ、治療できないかな。そろそろまずいと思うんだ」
「ガムテはっておけば直りますわよ!」
 カルネの球体関節のあたりにガムテをばってん印に貼るタント(ミリアドハーモニクスの使用シーンです)。
「皆様ーー! お蕎麦ですわよーー!」
「「蕎麦だーーーーーーー!!」」
 カルネを小脇に抱えオカモチを振り上げるタントに、それまでアサルトライフルばかすか撃ってた兵士たちが続いた。ドラクロワのやつっていってわかる?

●ラノールのたのしい出前チャレンジ
 リアカーに体育座りで乗せられたカルネを、シリアス100%顔のラノールが猛烈な速度で引いていた。
 あちこちでおこる迫撃砲の爆発と絶え間ない銃声。魔術の風圧と剣のぶつかり合う音。
 そのさなかで、カルネがゆっくりと振り向いた。
「僕は、なぜこんな場所に?」
「さあな、バイトの面接を途中で切り上げなかったからか?」
「逃げられるような面接じゃあなかったよね」
「なら答えは簡単だ」
 ラノールはリアカーのバーを握りしめ、前傾姿勢で走り出した。
 空に、二人の顔が浮かんだ。

 ――この仕事を受けたせいだろう?
 ――そうだね。

 サブマシンガンを両手に握った兵士の乱射を、ラノールはジグザグに走ることで回避した。
「いいかカルネ殿。銃弾は避ければ当たらない。当然の理だな」
「避けられない場合は?」
 めっちゃ弾に晒されてるカルネがオカモチを盾にしながらラノールに引っ張られていた。
 もっかい空に浮かぶ二人の顔。

 ――当たるしかないな?
 ――そうだね。

 猛烈に走るパカダクラ騎馬隊がモーニングスターを振り回しながら追いかけてくる。
 目の前には断崖絶壁。ラノールはマトックを岩壁に突き立てると、ロッククライミングの要領ですぱすぱと壁をよじ登り始めた。
「いいかカルネ殿。壁があったら登ればいい。マトックはそれを可能にする」
「上れない場合は?」
 足に縄つけてモーニングスター代わりに振り回されてるカルネ。
 崖の上のラノールと振り回されて顔真っ青にしたカルネの顔が空に浮かんだ。

 ――祈れ。
 ――そうだね。

 オカモチを置き、ざるそばを配るラノール。
 大量の矢が刺さって首に縄がかかったカルネが青い顔してぷるぷるしていた。
「これで、終わりかな。ラノール、君と一緒に出前ができてう、嬉しいよ……」
「カルネ殿……」
 身を屈め、肩に手を置くラノール。
 二人の顔が、もっかい空に浮かんだ。

 ――帰りもあるぞ!
 ――そうだね。

●美弥妃からあふれるそこはかとないエロスはなんなん!?
 ソファに腰掛ける十七歳の少女、美弥妃。
 吹けば飛ぶような、日の光に溶けてしまいそうなはかなさはしかし、奇妙な色気を纏っていた。
 閉じたまぶたの長い睫。スカートからのぞいた膝頭の赤みと、綿毛でできたようなくるぶし。
 日の光がわずかに入る窓が、それらをちらちらと照らしている。
 やがて黒電話のベルが鳴り、美弥妃はうっすらと目を開けた。
「出前だ、行けるな」
「はい、いつでもいけマスぅ」
 突き出されたとろろそばをオカモチに入れ――た直後、黒金親方によいしょと担がれよいしょと大砲に詰められた。
「え、え?」
「行ってこい」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 美弥妃は、蕎麦屋の屋根から大砲で射出された。

 いきなり世間話をするが、鉄帝と幻想は長く土地を争って戦争を続けており、あまりにも長期化したために一部の戦場では軽くマンネリ化を起こしていた。
「今日はグレネード縛りでやってみねえ?」
「いいね」
 とか言い合う戦場があるくらいのマンネリぶりである。
「じゃあ距離をとって三つ数えて、同時に投げ合う」
「いいね」
 いーち、にーい、さー……。
 ん、の所で両者同時にマジックグレネードとフラググレネードを同時に投擲しあい、そのド真ん中に美弥妃が降ってきた。
「「あっ」」
「あっ」
 爆発が、スカートを押さえる美弥妃を中心に巻き起こった。

「信じてください、私おそば屋さんデスぅ!」
「うそつけ! こんなエロい蕎麦屋がいるか!」
「絶対デリのヘルのやつだろ! 聞いたことあるぞ大砲でデリバリーするヘルのやつ!」
「ちがいマスぅ!」
 腕をぶんぶん振り回す美弥妃。ぶっちゃけちょっと死にかけたが、戦場にいるわりにはいやに無防備だったせいで話を聞いて貰えたらしい。
「とろろそばのお客様!」
 オカモチを開き、どんぶりを突き出す美弥妃。
 すると幻想側の兵士と鉄帝側の兵士が同時に手を上げた。
 二度見する美弥妃。
「支払いは割り勘で」
 三度見する美弥妃。

●こうみえて今年で二十歳、少年コータ
「うおおおおおおおおおおお! 思ったよりこの戦場やばいなー!」
 オカモチ片手に走る洸汰。現在戦場最前線。
 今まさに幻想側の兵士が魔術砲撃をかましながら剣片手に突入を仕掛けている軍事拠点のド真ん中から、おそばの注文が入った次第である。
 報道特権も蕎麦屋特権もねーこの世界。近づいただけで即敵扱いされるのはいつものことだ。
「死ねェ!」
 絶対蕎麦屋がかけられないであろう言葉と共に魔術砲撃が降り注ぎ、洸汰は歯を食いしばった。
「オレは鉄帝の兵士じゃねー! 蕎麦屋だぞー!」
「関係あるか!」
「あるー!」
 戦争は交渉の一手段って言葉があって、ゆえに戦闘状態になった時点で話し合いの余地は消えているようなもんである。
 決着が付くまで戦闘は続くし、それまで待っていたら蕎麦はのびるのだ。
「今日のオレは蕎麦屋だかんなー、出前はきっちり完遂するぞー!」
 オカモチを抱え、敵の砲撃を突破すべく走る洸汰。
 放物線を描いて飛来する魔術爆弾にエネルギー障壁を展開して打ち払うと、遠距離から打ち込まれたライフル弾の衝撃をジャンプと回転によって逃がした。
 拳を地面に突き立てるように着地し、自らに気合いを入れる。
 ライフル弾が貫通した腕がみるみる修復し、洸汰は拠点めがけて走り、そしてジャンプした。
 ガラス窓をクロスアームで突き破り屋内へ突入。
 驚いて銃を突きつける鉄帝の兵士たちに、オカモチを突きつけた。
「ざるそばおまちー!」

●茹だる闘神ガーグムド
 戦場に乱入する際、流れ弾に当たらない確実な方法がある。
「全員叩きのめしてくれよう!」
 ふんぬ、とテンションを自ら引き上げると髪が炎のように燃え上がり全身の血管が浮き上がったかのように赤い脈道が輝いた。
「我にはこの天ぷら蕎麦が熱いうちに届ける義務がある! 邪魔立てするというのならば、黒金流蕎麦術の餌食となれ!」
 腰に下げた袋に手を突っ込み、腰が強くぱりっとした粘りけをもつそば粉を拳に握り込んだ。
「ソバコ・ナックル!」
「たわば!?」
 アサルトライフルを乱射していた兵士が吹き飛んだ。
 助走をつけ、オカモチを弾頭のようにして飛ぶ。
「オカモチ・スライダー!」
「ひでぶ!?」
 剣を振り回していた兵士が同じく吹き飛んだ。
 蕎麦の食品サンプルをどんぶりごと両手に乗せ、高速回転しながら突っ込んでいく。
「ローリングソバラリアット!!」
「「へぶし!?」」
 刀やチェーンソーで斬り合っていた兵士たちがまとめて吹き飛んだ。
 身体には無数の銃弾と刀の傷が走ったが、急須でそば湯を口に含みぶしゅうと傷口に吹き付けることで無理矢理耐えた。
「ヒール・ソバユ!」
 かくしてたどり着いた戦場に、ガーグムドは助走をつけて飛びかかった。
「お熱いのでお気を付け下さいッッッ!!」
 どんぶりをオカモチから取り出し、頭から叩き付ける。
 それをまともに食らった兵士は――。
「――デリシャス!」
 蕎麦を残らす吸い上げて親指を立てた。





 かくして、黒金蕎麦の業務は無事(?)終了した。
 イレギュラーズたちが去った後も、彼らは蕎麦を配達し続けるだろう。
 壁の向こうでも、戦場でも、どこへでもだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――カルネに『人間シールド』の呼び名がつきました

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