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シナリオ詳細

<クレール・ドゥ・リュヌ>汚泥の蝶

冒険中

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

オープニング

●──対峙
 聖教国ネメシス首都、フォン・ルーベルグ郊外。
 夜明け前の最も暗い夜。小規模の森林地帯に面する以外殺風景な土地に似合わぬ、複数の馬車が並び物々しい雰囲気を醸し出していた。
 安物のそれとは違う魔術的加護に護られた箱馬車の主達は、微かな光源のみを頼りに顔を突き合わせている。
 いずれも、人目を忍ぶ様に。
「一体何があったヘンリー。お前が消えてから次々に周囲の騎士達が審問を受けている、情報屋の俺まで危うく異端審問会に追及を受ける所だった」
「私も聞きたい事は多かった。
 だが既に秘密は死者が──否、死者を模した傀儡と共に葬られた後なのだ」
「……なるほど、どうやら俺には荷が重い話らしい。それで? 頼まれた物は用意できたがどうするんだ、ロクに管理もされていなかった程度の記録だぞ」
 天義を象徴する純白の外套にフードで素顔を隠す男が、懐から取り出した筒を手渡す。受け取ったのは簡素ながらも整った革鎧を纏う壮年の男。ヘンリー・ブイディン男爵である。
 かつての鎧を脱いだ親しき友人のその姿に、情報屋を名乗る男は訝し気に眉を潜めていた。
「……やはり。まさかとは思ったが……」
「何を見つけた?」
 筒から取り出した文書へ目を通して間もなく、ヘンリーはある一節に指を立てて示した。
「カテジナ・クルシャール。少し前に聖都で起きた火災で瀕死の重傷を負っている」
「……この名は聞いた事がある、お前の門閥の中に居たはずだ。この女がどうしたんだ? 騎士と言っても人間だ、煙に巻かれて死にかける事もあるだろう」
「珍しく無いだろう。しかし貴公が知る通り、私が先日巻き込まれた事件を境に『禁書』に関わる貴族の殆どが異端審問会が灰から復元した情報を基に罰せられる事となったのだぞ」
 御者台に吊るしているランタンを取ったヘンリーは文書へ火を着けて棄てた。

「友よ、貴公も知っての通り審問会は本気だ。禁忌たる『黄泉帰り』が今や公然の事実として広まる中、
 形ある敵を探し出す事にかけては恐ろしい執念を見せるだろう、実に頼もしい事にな。だが……クルシャールだけ見落とす筈はない」
「何が言いたい」
「私の記憶が正しければこの記録にある日付の翌日、彼女は騎士団の定例議会に出席していた。
 瀕死の重傷を負ったばかりには見えない程に平然とな。そんな事が有り得ると思うか?」
「キナ臭い話だ、それに近頃は例の騒動の事もある……聖都に漂いつつある不穏さはこれまでの比じゃない。手を貸そうか?」
「いや……貴公はここまでだ。お前にも家族は居るんだろう、そちらを優先するがいい」
 そう言って、燃え散る残滓を払い除けてヘンリーは馬車へと向かう。
 密会の終わりを察した古い友はその姿を淡々と見送った。これ以上関わるには危険であると、警告されるまでもなく気付いていたのだ。
 それは、正しい。
(『黄泉帰り』はこれまで突発的無差別に起きていた現象だとばかり思っていた、それを意図的に……予見していた様に利用する者がいる。
 クルシャール卿に関する禁書のみ念入りに焼かれていた。追及を免れたのは偶然ではないだろう。
 あの日、ローレットを呼んで早々に事態を片付けようとしたのもクルシャールの従騎士ブロイラーという男だった)
 揺れ動く馬車の中、同乗する者達を見回すヘンリーの目に黒い炎が灯る。
 貧民街で不当にも異端の烙印を押され、一部の貴族達に虐げられていた者達。いつかの洋館で対峙した青年達の家族。彼等をヘンリーは救わねばならなかった。
(天義を立て続けに襲う騒動は異端審問会の動きを過激にするには充分。いまここで彼等が証拠文書を持って罪無き事を訴え出ても、神官達が見逃す事は無いだろう)

 ただでさえ『常夜の呪い』事件が解決したという話は記憶に新しい。ゆえに、否応にも思い出されるのだ。
(……疑うまでもない、この『黄泉帰り』は魔種が元凶なのだ。真の悪を討たねば何も解決はしない。
 最悪……クルシャールですら何者かの傀儡となっている可能性がある。私にはもう手に負えない)
 揺れる車内で疲れ切った様に座り込んだ彼は自嘲気味に笑った。何が潔白の騎士か。
 長年、恐らくは先代当主でさえ周囲に持ち上げられただけの道化に過ぎないと言うのに。
 向かうべき敵は明確だと言うのに、何もできない。これで彼の『最高の聖騎士』に近付いたなど、どうして言えよう。
「──今こそ彼等の力が必要だ」
 だからこそ今の彼は驚く程冷静に、即座に最善を選び抜く。
 例え潔白には程遠くとも白亜へ近付ける様に。

●──潔癖ノ使徒
 秩序と正義によって白亜に塗り固められし都、フォン・ルーベルグ。
 理性か狂気か、或いはそれらも含む一種の偶像崇拝か。神への信仰を絶対とさえする聖教国ネメシスの象徴とも言える聖都である。
 文字通りの白亜に染められし町並み、それを見下ろしていた一人の女は恐ろしいほどの嫌悪を露わにしていた。
「相変わらずこの聖都は……なんて汚らわしいのでしょう」
「目立ちますか?」
「『目立つ』のではありません。『足りない』のです、それよりも今日は何故こちらに招集を?」
 振り返る純白の修道女らしき女は「ブロイラー神父」と呼んだ。
「先日、私や他の者達に何者かが密偵を放った様でしてね。
 規模や手並みからして、恐らくローレットの者でしょう。流石あちらの情報屋というのは優秀ですね。
 とはいえ時期が悪い……我々が目を付けられたばかりに『御方々』へ影響が及ぶ事は避けたいのですよ」
 ブロイラーと呼ばれた長身の男は妙に袖の長い神父服を揺らし、首を鳴らした。
 白い修道女は暫し目を閉じ、乱れそうになる呼気を整えていた。
「ハァ、ァ、ローレット。つまりイレギュラーズが来るのですか?」
「来るでしょうね、だからこそ貴女も集めたんですよシスター・ランバー。
 既に密偵の気配が失せた今、近々送り込まれるでしょう。そうなる前に我々で手を打つのです」
「……まさか例の物を使うのですか、ッ!?」
 驚いたように目を見開くランバーを前にしたブロイラーはクスリと笑う。
 いつの間に取り出したのか、不意に放り投げられた掌程度の小瓶を慌ててランバーは抱き止めた。
 静かな抗議の視線に笑みで応えた神父はそれを指差した。

「既に『天昇の繭』は完成しています。
 このクルシャール城で特異運命座標を迎え撃ち、偉大なる先駆者となって自らの信仰を示しなさい。シスター・ランバー」


「依頼者はヘンリー・ブイディン男爵。皆様へのオーダーは『黄泉帰り』に関わる重要人物と見られる『カテジナ・クルシャール』、
 その身柄を拘束ないし討伐を行っていただきます」
 ボードを背負ったロバの傍ら、『完璧なオペレーター』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)はペンを一閃する。
「先日の『常夜の呪い』事件におきましてはお疲れ様でした。
 しかし、既に耳に届いている方もいるでしょう。未だかの天義には不穏な影が残されたままだという事を、
 『黄泉帰り』は今や公然の事実として知られ、更には天義首都フォン・ルーベルグを中心に狂気に侵された人による事件が多発し始めています」
 彼女が思うに、それは規律正しい聖都ならば起きる筈が無い異変だと言う。
 今回の依頼を受理するにあたり、フォン・ルーベルグで調査していた情報屋に言わせればこれらの事態はかつて『シルク・ド・マントゥール』が居た頃の幻想での事件を思わせるものだったとも。
「原罪の呼び声に近い干渉を『黄泉帰り』事件の中で確認したという声も少なくありません。
 フォン・ルーベルグの異変の背景に魔種がいるのは明らか。
 恐らく、事件当初よりローレットが対応していなければ水面下に潜んでいた罠は今よりずっと多くの被害と悲劇を生んでいたでしょう、
 皆様がいたからこそ、まだ『後手』があるのです」

 ミリタリアはそこで一度区切ると、ロバの背負うボードにペンを走らせる。
「今回、ローレットが目を付けているのは現状この『黄泉帰り』の法則が何を意図しているか。
 親しき者の蘇生を叶えある時には抗えない程の衝動を与えるこれらは、サーカスの時とは違う方向から狂気を振り撒く機能を持っていると推測されます。
 つまり──これまでに起きた『黄泉帰り』の近くにキャリアーに近い役目を持った、或いはそのままの存在がいるのでしょう」
「それが今回の依頼の?」
「はい。件のクルシャールは依頼者の言う通りつい最近、死亡していた可能性がある人物でした。
 それに加えて彼女の妹君もここ数カ月姿を暗ましており、その周辺には要注意人物の姿も在った事から確実に黒だとローレットは見ています」
 ミリタリアはボード上へ二つの名を書き記した。
「アシッド・ブロイラー、ランバー・ジャーク、彼等は数カ月前から姿を暗ましていた筈の聖職者です。
 アシッドに至っては依頼人が事件に巻き込まれた際にローレットを利用する事を促したりと、先に述べたクルシャールに関係している可能性があり、
 『黄泉帰り』の目的がサーカス同様に天義を狙った物だとすれば、これらの関係性は聖都へ多大な混沌をもたらす事を目的としている事に集約されます」

 ミリタリアは言った。
 ローレットが、イレギュラーズが対応していたから、次の手が生まれたのだと。
「放って置くわけには行きません。死者と生者を冒涜するこの邪悪な狂気は、何としても止めるべきです」

GMコメント

 ちくわブレードです、よろしくお願いします。

 以下情報。

●情報精度C
 不測の事態が起きる可能性があります。

●目標
 カテジナ・クルシャールの身柄を抑える
 『黄泉帰り』の死者の討伐

●神足のカテジナ卿
 彼女は信仰を重んじるクルシャール家の女当主であり、騎士団においても一目置かれていた武闘派騎士でもあります。
 約二ヵ月前、彼女は聖都の一画にて発生した宿における火災に際し民間人の救助に飛び込み瀕死の重傷を負いました。
 しかし後日騎士団の会合に出席した事から『見間違いでは』とされ、医療所での記録は破棄。
 当時は誰も意に介していない状況でしたが、現在のヘンリー氏の情報提供により『黄泉帰り』に関係している可能性が出てきました。
 一連の事件発生以降の彼女は聖都の一画に構える城から出て来ていないとの事です。
 真偽を確かめる為。彼女の身柄を捉えると同時に、場合によっては討伐を決行する必要があります。

◯ターニャ・クルシャール
 カテジナの妹。19歳。
 騎士然とした姉とは反対に重度の潔癖に加えて非社交的な気が強く、元々城に籠る事は多い。
 現在の行方は分かっておりません。

●クルシャール城
 白亜の大理石で造り上げられた小さな古城。
 城の様相を呈してはいますが教会に塔が生えた物だと思えば貴族の中でも小さい印象。
 内外共に現在は人の気配が無く、不気味に静まり返っています。
 内部はエントランス・回廊・礼拝堂と、横幅の狭い回廊を除けば最低40m以上は戦闘領域が確保できる空間になっているようです。
 かつての使用人、食客達が何処へ消えたのかは不明です。

●レッドカラー
 クルシャール城の周辺には『ブロイラー神父』『シスターランバー』といった過去に行方を暗ましていた怪しい人物達が確認されています。
 『黄泉帰り』に深く関わっている以上、魔種ないしはそれに匹敵する要注意人物に該当します。
 クルシャール城を中心に天義の民達に狂気の伝播のような影響が伺えることから、注意が必要です。

 (ヘンリー・ブイディン)
 本件の依頼者。今回の事件に巻き込まれて以降、現在は教会から身を隠しながらクルシャール達によって再度異端審問会に追われる事となってしまった無実の人間達を連れている。
 しかし彼や彼の連れている者達が捕らえられるのは時間の問題です。
 彼等への疑いを晴らすためには『黄泉帰り』を引き起こしている何者かを一人でも挙げる事です。

※本件においてヘンリー氏と接触する事はできなさそうです。

 以上。
 少し不穏な空気になってまいりました。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • <クレール・ドゥ・リュヌ>汚泥の蝶 冒険中
  • GM名ちくわブレード
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 出発日時2019年05月18日 23時59分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

参加者一覧(10人)

レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
死を呼ぶドクター
サンディ・カルタ(p3p000438)
悪夢レベル1
シグ・ローデッド(p3p000483)
『知識』の魔剣
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
七鳥・天十里(p3p001668)
ガンスリンガー
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
終焉語り
カレン・クルーツォ(p3p002272)
夜明けの蝶
ニル=エルサリス(p3p002400)
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
イルミナティ
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
折れ羽の鴉

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