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シナリオ詳細

<クレール・ドゥ・リュヌ>滅ビノ羽音、聖都ニ響ク
<クレール・ドゥ・リュヌ>滅ビノ羽音、聖都ニ響ク

完了

参加者 : 10 人

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オープニング

●狂気ニ染マル
 聖都フォン・ルーベルグは今渦中の直中にあった。
 伝播する『黄泉返り』の噂。禁忌とされる死者蘇生は現実のものとなり、聖都市民の信心を捻り反転させていく。
 やがて聖都に不穏な空気が漂い満ちてくる。
 一人、また一人と、狂気に落ちた人間が事件を起こし始めたのだ。
 聖都市民なら誰もが思うだろう。この聖都に住まう人間がその様な振る舞いを起こすはずがないと。
 だが現実に事件は起こっていた。同時多発的に、いくつも。

 聖都に住まうクレイル・オールドマンはいつかの昔、娘と妻を失った。
 それは自らの神聖術の行使を誤った暴走に近い事故によるものだ。クレイルは全てを失ったその日、自ら誇り誇示していた神聖術を封印し、ここ聖都で隠遁していたのだ。
 大きな後悔はいつまでも消えはしない。クレイルはただ屍のように生き、日々を懺悔と自戒で生きてきた。
 そんな彼の元にも、不穏な影はやってくる。
「リエラ……それにネイナ……なのか?」
 突然扉を開けてやってきた三つの影。その内の二人がフードを脱ぐと、その姿にクレイルは失った妻と娘を見た。
「貴方……ごめんなさい……」
 リエラと呼ばれた長身の女性が謝るのと同時、娘ネイナが駆け出してクレイルへと抱きつく。
「な、なんだ……なぜ謝る……?」
 謝るのは自分の方だと、そう言う前に三人目の黒フードが不快な音を立てて言葉を口にした。
「感動、ノ、対面、ナド、無用。……ヤレ」
 黒フード――それはギールグと呼ばれた魔種であり、以前にも黄泉返りに関与していた存在だ。
 節足で指さし指示すると、リエラとネイナは悲しげな表情を浮かべ歯噛みした。
 逆らうことの出来ない上位命令は、二人に狂気を発散させて、クレイルの精神を深淵へと引き釣りこむように伝播する。
「う……うあ……声が……やめろ、二人ともやめてくれぇ……!」
「無駄、ダ。抗ウ、ナ。受ケ、入レロ」
 クレイルは敬虔な神の信徒であり、高度な神聖術の使い手である。この状況に置いて彼の精神が極限の抵抗を見せ、この胸の内から湧き上がる衝動を抑え込もうと拮抗した。
「貴方……ごめんなさい……ごめんなさい」
「お父さん……苦しまないで……」
 二人の悲しげな表情はクレイルの心を板挟みにする。
 黄泉返り。噂に聞いたそれは悪魔の贈り物に相違ない。だがしかし、二人は確かに寸分違わぬそれであり――そんな二人をまた悲しませようというのか……。
 受け入れれば二人は笑ってくれるだろうか――そんな考えが頭を過ぎる。
「キチキチキチ……」
 この男が落ちるのも時間の問題だろう。ギールグは不快な歯ぎしりを響かせながらクレイルの家の外へと歩み出た。
 聖都に苦悶の声が響き渡る。


 聖都に不穏な空気が満ちるその時、ローレットではイレギュラーズ達が召集されていた。
「この感じ……かつての<嘘吐きサーカス>が居た頃のメフ・メフィートを思い出させるわね」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)の言葉に、『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)が頷いて、口を開いた。
「ざんげにも確認したが<滅びのアーク>が急激な高まりを見せているらしい。そんな状況も”あの時”とまさに同じと言うわけだ」
「つまり、『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』が発生しているという状況なわけね。それも強く。
 それでフォン・ルーベルグがおかしくなっていると……」
 だとしても分からない点がある。
 サーカスの時は、その旗印たるサーカス団の存在があったが、今回はそういった存在が表にでている気配はない。
「黄泉返り……それと同時に起き始めた狂気絡みの事件……ということは」
「ああ、立て続けに起きた二つの事件が無関係とは考えにくい。
 フォン・ルーベルグの異常性の連続性から考えて戻ってきた誰かが『アンテナ』なのさ」
 魔種の能力など知らないし、これも推測にすぎないが、とレオンは前置きし、
「自分にとって全く関わりの無い赤の他人と、自分にとって大切な誰か――より感情を揺さぶるのがどちらかなんて、魔種がどうこう以前に分かり切ってる」
 そうして少し悲しげに目を細めて、
「嗚呼、ただ……きっと誰にとっても不幸なのはな。
 オマエ達の調査によれば、『黄泉返り』が別段敵対的、悪意的じゃなく、生前の記憶や記録、或いは時に人間性や知性を残していると推測されている事か――もし、連中が操り人形なら、それは尚更『冷たい』話さ。
 奴等はそれをそうと知りながら、大切な誰かを狂気に落とさなけりゃならないんだから」
「ひどく、そして悲しいやり口ね……そんな責め苦どちらの心にも影が落ちるわ」
 リリィはやるせない思いに目を伏せる。
 レオンは「ただな――」と続けた。
「――ローレットが対応していてマジで良かった。してなかったら水面下に潜んでた爆弾は今の比じゃなかったぜ」
 それは自慢でも何でも無く、事実一つの光明でもあった。
「つまり今回も特異運命座標ちゃんたちの出番と言うわけね。
 聖都で幾つも事件が起きてるもの、それの対処に当たって貰うわ」
 聖都の状況と、リリィが見た不穏な夢から行くべき場所をピックアップした。この場所で何か大きな影が蠢いているという。
「状況的に魔種の可能性が高いでしょうね。
 生死を問いかねない状況かもしれないけれど……どうか無事に帰ってきて頂戴」
 依頼書を受け取ったイレギュラーズは、聖都へ向けて出発する。
 その場所に、待ち受けるものは――


「キチキチキチ……イレギュラーズ、ト、言ッタ、カ。
 多ク、ノ、逸材、ガ、イル、ト、聞ク。キチキチキチ、ベアトリーチェ様、ノ、為ダ。少シ、遊ンデ、ヤルト、スルカ」
 聖都にざざめく羽音が響く。黒フードが靡いてその身に這い回る虫たちが飛び立った。
 虫を操り、蟲となったハーモニア、魔種ギールグ。
 『強欲』に連なる魔種である。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 聖都を覆う不穏な空気。
 人形劇に虫の羽音が響き渡ります。

●依頼達成条件
 クレイル・オールドマンの救出
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●注意事項
 この依頼に参加する純種は『原罪の呼び声』の影響を受け、反転する危険性があります。
 また、この依頼では”パンドラの残量に拠らない死亡判定”があり得ます。予めご了承の上、ご参加ください。

●状況について
 イレギュラーズはオープニング直後のクレイル家前に到着します。
 家の外には魔種ギールグが待ち構えており、家の中でクレイルとその妻娘が狂気拡散を行っています。

 クレイルは今だ狂気に抗っている様子ですが、そう長くは持たないでしょう。
 彼を救出するには強い言葉による説得か、妻娘の排除が必要となるはずです。
 但し、妻娘は『自衛』を命じられていることから、敵対者にはそれなりに抵抗してきます。狂気感染者として、それなりの基本行動を取ってくるでしょう。

 今回はギールグに撤退の兆しが見えませんので、クレイルを救出後、戦闘地域からの撤退、またはギールグの撃破が必要となります。

●ギールグについて
 蟲使いのハーモニア。目的不明。
 片言の言葉遣いはムシを思わせるそれで、相対する者は皆この相手が人間でないと感じる程に、強烈な気配を漂わせています。
 虫を思わせる無数の節足を伸ばし、戦場を蹂躙する。
 回避、機動力が超越しており、ブロックするには三人以上の手が必要でしょう。
 また羽根を広げ飛行する能力が確認されており、飛行ペナルティを受け付けていないようです。
 垂れ流される狂気は近距離レンジを支配し、レンジ内のものに狂気を齎します。
 また身体中より無数の蟲を発生させ遠距離レンジ内にランダムで魔凶、呪縛、停滞をバラ撒きます。

 蟲使いとして本性を現すと、上記に加え、
 白蟲の鎌(物近範・高威力、防無、必殺)
 EX蟲軍行進(全体範囲・不明)
 を使用します。

●想定戦闘地域
 聖都フォン・ルーベルグでの戦闘になります。
 建物は多いですが、視界は良好。戦闘は問題なく行えます。

 そのほか、有用そうなスキルには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <クレール・ドゥ・リュヌ>滅ビノ羽音、聖都ニ響クLv:10以上完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年05月28日 21時30分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
自称・旅人
セララ(p3p000273)
魔法騎士
郷田 貴道(p3p000401)
拳闘者
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
イルミナティ
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
白薊 小夜(p3p006668)
死角無し

リプレイ

●陽動抑圧
 聖都の空は分厚い暗雲に覆われて、息を潜めるイレギュラーズの心根に潜む僅かな不安を広げていくかのようだった。
 視線の先。救出対象であるクレイル・オールドマンの自宅の前に、其れは居た。
 真黒なフードで全身を隠し、直立不動に立ち尽くす様は、まるで誰かの訪れを待ち続けているよう。
 魔種ギールグ。
 聖都で起こる黄泉返り事件。その渦中で暗躍する蟲使いだ。
「――間違いない、奴だ」
 視線鋭くギールグを睨めつける『拳闘者』郷田 貴道(p3p000401)。一度拳を交え――敗北にも似た屈辱を与えられた相手だ。握りしめた拳に隠しきれない殺意が宿る。
 魔種との遭遇に際して、イレギュラーズは依頼を完遂するための作戦を立てていた。クレイル邸への強行突入を含むこの作戦は、魔種の注意を引くことが最重要だ。
 しかしながら魔種(ギールグ)がクレイル邸の玄関前でこうも無防備に姿を晒しているのを見ると、どう初手(ファーストコンタクト)を打つべきか、やや悩む所ではあった。
 奇襲奇策が通用するのか? 仕掛けたとしてその先は?
 クレイルは、亡き妻子を模した黄泉返りの何かによって放たれる狂気拡散に抗い続けている。そう長くは持たないはずであり、思考を続ける時間はないだろう。
 真正面から踏み込むことも考え始めた矢先、まるでそんな思考を読み取ったかのようにギールグが奇怪な声色で機先を制した。
「感ジル……聞コエテ、居ルゾ。隠レテ、居ナイデ、出テ、キタラ、ドウダ? イレギュラーズ、ト、ヤラ」
「うひょあっ小蠅がブンブンっ! 誰か虫除けスプレー持ってますっ?」
「スプレーはないけど、蠅叩きならあるよ、聖剣っていう蠅叩きがね」
 気配が辿られているのならば隠れている意味もない。潔く身体を晒した『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)と『魔法騎士』セララ(p3p000273)が、冗談めかしてそう言った。
 二人を先頭に、イレギュラーズは姿を現す。――但し、クレイル邸へと突入を強行する『観光客』アト・サイン(p3p001394)と『暴食の守護竜』ヨルムンガンド(p3p002370)は気配を殺し物陰から様子を見ていた。
「見覚エ、ノ、アル顔、ガ、何人カ、イルナ。オマエ、ト、オマエ。ヨク、覚エテ、イル。
 キチキチキチ。イイゾ、期待ガ、デキル」
「HAHAHA。覚えて居てくれて嬉しいぜ、ギールグ。
 ……実はな、てめぇだったら良いなって思ってたんだよ」
 更なる激情を込めて、貴道が拳を握る。その殺意は、空気を振るわせるかのように広がった。
 フードを被るギールグの表情は読めない。しかし肩を揺らし「キチキチ」と歯ぎしりする様は笑っているかのようで、貴道の隣に立つ『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)が不快に目を細めた。
「気に喰わんな。以前もそうだったが、貴様は人に期待を押しつけることが得意のようだ。
 まるで上から目線の物言いだ。魔種というのはそう言うものなのか?」
「ソウ、思ウ、ノハ、オマエ達、ガ、人、ノ、殻ヲ、破レナイ、カラダ。
 成ッテ、ミレバ、ワカル。コノ、湧キ上ガル、全能ノ、力ガナ」
 魔種であることを誇りのように言うギールグ。身体を屈めるとその背から無数の節足を生み出して、地面に突き立てた。
「力ヲ、見ルダケ、ト、思ッテ、イタ、ガ、――気ガ、変ワッタ。
 前ハ、見逃シタガ、今日ハ、別ダ。”俺”ノ、欲ヲ、叶エテ、モラウ、ゾ――!」
「みんな、来るよ!」
 セララが声を上げ、二本の聖剣を構え、間合いを取るために一歩下がる。同時、誰よりも早く飛び出したのは貴道だ。
「今度こそわからせてやるよ! 俺は『超人』郷田貴道様だ!」
「嫌な気配。まるで虫が身体を這い回るような不快な気配――援護するわ……!」
 『盲の剣鬼』白薊 小夜(p3p006668)もまた後を追ってギールグへと肉薄する。
「虫っぽいなら、この炎で全部焼き払ってあげる! いくよ、てやあっ!」
 救出班が行動しやすいように、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は自身のギフトで武器に火を付けて、ギールグの注意を引く。神炎たる焔の炎にギールグが「ギチギチギチ」と不快そうに歯を鳴らした。
 ギールグの纏うフードの下から蟲が現れ迎え撃つイレギュラーズへと飛びかかる。その蟲を一切合切無視して貴道がギールグの懐へと潜り込む。
「――!」
「付いてこれないとでも思ったか? HAHAHA、一度この目に焼き付けたんだ。俺の目から逃れられると思うなよ!!」
 貴道の殺式ボクシングが二重三重に放たれ、ギールグを捕らえる。インパクトの瞬間、確かに顎と思われる場所を捕らえた。ギールグの身体が一瞬ぐらりと傾く。
「焔さん――!」「任せて!」
 小夜の手がブレる。握った仕込み杖を瞬間的に走らせて、金打を鳴り響かせれば、ギールグの精神を乱し狂わせる。注意が小夜へと向けられた瞬間、焔が飛び込み天下御免の一閃を見舞った。確かな手応え。だが、どこか違和感の覚える手応え。そうまるで厚い何かに阻まれているかのよう。
 ギールグが間合いを図ろうと距離を取ろうと俊敏な動きで跳ねる。
「そう自由には動けないと思いたまえ」
「――罠、カ……!」
 ラルフの設置した万能金属によるワイヤーがギールグの動きを阻害する。ワイヤーに染みこんだ除虫の薬品の臭いがギールグの鼻を突く。
「ギギギギ……!」
 不快そうに唸り声を上げるギールグ。そこに肉薄するは『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)だ。
「自由に動き回れるとは思わないで頂きませうか」
 ヘイゼルの身体から魔力で編まれた赤い糸が伸びる。危険を感じ取ったギールグが高速で移動しようとするが遅い。触れたヘイゼルの手を媒介に、赤い糸がギールグを絡め取り精神をかき乱し生命力簒奪する。
「注意ヲ、引コウ、ト、言ウコト、カ」
 フードの下、赤く輝く瞳を細め、ギールグが反撃にでる。一段ギアの上がったギールグが小夜とヘイゼルをその節足で薙ぎ払おうと振るわれる。
 高い回避、防御技術を持つ二人だ。その一撃を弾き身を捻って躱すと、更に懐へと潜り込んで、ギールグを逃がすまいとプレッシャーをかけていく。
「虫を生み出し扱うようにも見えるが……無尽蔵というわけには行くまい……!」
 圧をかけられ動きに翳りが生まれたギールグへ、 『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)がアークパニッシュメントを放つ。
 暗雲より降り注ぐ聖なる光がギールグの力の一部を奪い取り、ゲオルグへと還元する。ゲオルグは更に光りを放って、立ちこめる狂気の波動を霧散させる。
「如何に素早いキミであっても、こうも囲まれれば動きは落ちる!
 仲間が居ないことを呪うんだね。正義の剣を受けて見ろ!」
 仲間が攻撃を重ね、ギールグの回避力が下がるタイミングを待っていたセララが聖剣を逆手に構えて横薙ぎに振るう。全てを切り裂く光輝の一閃がギールグが纏うそのフードごと、確かに切り裂いた。
「どんなもんですかっ! 如何に貴方が魔種で狂気な存在であっても、所詮は一人っ!
 ヨハナ達の熱い絆の前には敗れるほかないのですよっ! ねぇ皆さんっ!」
「熱い絆かどうかはともかく、人数では圧倒しているからな」
「HAHAHA。俺一人でも余裕だが、前にやられた奴等の分もある。倍にして返すって奴だ」
 ヨハナの言葉に苦笑しながらゲオルグが返し、貴道が油断なく拳を構えながら余裕の笑みを見せる。
 ギールグはそんなイレギュラーズを睨めつけるように一望し、言葉を走らせようとしたその瞬間――一瞬の気の緩み、間隙を縫ってアトとヨルムンガンドが戦場へと飛び込んだ。
 二人は用意していたバイクと馬で脇目も振らずギールグの脇を走り抜けると、一直線にクレイル邸へと窓を割って飛び込んだ。
 ギールグはその様子を黙って見ていて――
「さすがの魔種でも反応出来なかったみたいだね!」
「そちらの狙いは狂気の拡散のようですが……目論見は打ち破らせて戴きませう」
 焔とヘイゼルの言葉を受けて、ギールグがフードの奥で輝く赤い瞳を細め……そして、笑った。
「キチキチキチ。
 止メ、ラレル、ト、思ウ、ナラ、止メテ、見セル、ガ、イイ。”俺”ノ、目論見、ト、ヤラ、ヲ、ナ……!」
 新たな節足、そして多種多様な蟲を呼び出しながら、ギールグが構えた。
 そのフードの闇の奥に、歓喜と期待の表情を張り付けて――

●心への呼びかけ
 クレイル邸へと侵入したアトとヨルムンガンドの二人は、そこで頭を抱えてうずくまるクレイル・オールドマンと、それを囲む二人の妻子――狂気拡散者を見つけた。
「ヨル――」「わかっている……!」
 二人はすぐにクレイルと妻子の間に割って入る。
「だれ、あなた達」
「邪魔をしないで……! もうすぐ終わるのに……!」
 妻子の言葉を無視して、アトがクレイルに呼びかける。
「うぅ……あなた方は……?」
「クレイル・オールドマンだね。
 僕たちは幻想に拠点を置くギルドローレットから派遣されてきた者だ。
 貴方に保護命令が出ている。今すぐここから離れるんだ」
 視線の定まらないクレイル。その額には大粒の汗が浮かび、かなりの時間狂気に耐えてきたのだと言うことがわかる。強い男だと、アトがクレイルの肩を叩いた。
 アトはクレイルに肩を貸し、さりげない動きで妻子と距離を取ろうとした。
「嗚呼……貴方、逃げないで……お願いよ」
「お父さん、行かないで……!」
 追いすがろうとする二人をヨルムンガンドが阻む。妻子に掴まれると、鋭く痛みが走る。人並みはずれた力によって握りしめられているからだ。
「二人を、リエラとネイナを救わねば……嗚呼、だが神の御心に背くなど……」
 苦悩がその表情から見て取れる。アトはクレイルの両肩を掴むと、しっかりとその瞳を見て、冷静に言葉をかけた。
 ローレットは以前より黄泉返りについて調査をしていたこと。そして、その調査結果は悪しき者の陰謀が見えること。黄泉返ったものが人ではない何かであるというその事実。
「蘇りが本当ならあの二人も保護したさ。
 だが、そうじゃないんだ。
 あの二人は君の後悔に応えた心の影に過ぎない」
 アトの言葉に続くように、ヨルムンガンドも言葉を走らせる。
「クレイル……よく聞け。
 『死者は絶対に蘇る事はない』。
 私も分かるぞ……大事なモノが帰ってくるなら罪が清算されるなら……そんなに嬉しい事はない」
 だが、そんなことは起こらないのだ。人は罪を犯したならばそれを背負い、辛い罰を受けることとなってもそれを受け入れ生きていかねばならないのだ。
 クレイルもそれは痛いほど理解していた。だからこそ苦悩を抱え必死に狂気に耐えていたのだ。
 『これは悪魔の贈り物だ』――
 ヨルムンガンドの言葉に、クレイルが瞳を見開く。
「彼女達に魂が本当に存在するとしよう……だが、愛する君を手に掛けろという悪魔に逆らえない。
 泥で出来た身体に縛られ苦しむ彼女達を『本物』だと……そう思い込んでもう一度、君は罪を犯そうというのか」
「私は……私は――」
「あなたお願いよ……受け入れて――いえ、逃げて、どうか私達の手が及ばない場所へ――」
 クレイルの妻は狂気の拡散を止めることは出来ない。そう命じられているからだ。しかし、クレイルの脳裏に残る記憶のように、妻は夫を案じ「逃げろ」とそう言うのだ。
「――だから振り払いなよ。
 これに苦しみ絶望することも、この場で命を失うことも――不要なことだ」
 アトにそう背を押され、クレイルが目蓋をギュッと閉じる。
「君と二人が信じてきた信仰と正義を捨てるのか。
 正解は今出せなくてもいい、だが……――
 もう一度、彼女達の墓前に花と祈りを捧げたいなら、私達と一緒に来い!」
 ヨルの叫びに、クレイルは今一度瞳を見開いて、
「すまない、リエラ、ネイナ……私は、お前達を救うことが、出来ない……あの時と同じように」
 抱えてきた苦悩を吐露し、しかし毅然と妻子を見据えたクレイルは言葉を続ける。
「だが、それでも、それでも私は……お前達が愛してくれた聖職者で、そうでありたい……!」
 クレイルの答えに、リエラとネイナは僅かに微笑んで――そして苦悶を浮かべながら叫んだ。
「逃げて! もう抑えられなくなる……!」「お父さん、死なないで!!」
 ヨルムンガンドを掴む二人の手が更なる力を持って邪魔者を排除しようとする。
「この……!!」
 ヨルムンガンドは容赦をする余裕もなく、妻子を弾き飛ばした。壁に強かに打ち付けられた妻子が呻く。
「嗚呼……!」
 二人を気遣おうとするクレイルを、アトが引き留める。そして有無を言わさず、クレイルを引き連れて外へと飛び出した。
 ギールグと交戦している仲間達。アイサインを送って、二人はクレイルを連れ戦場を脱出しようとバイクと馬に跨がった。
「――……」
 ギールグが無言のままに虫の大群を放つ。逃がす気はないと思わせる行動だ。
「させるものかよ」
 アトが手にした発煙手榴弾を投げ捨てた。勢いよく噴き出す大量の煙。一瞬にして視界が灰色に染まると、その隙を突いてヨルムンガンドとアトは走り出した。
 遠ざかるエンジン音と馬の蹄が叩く音。
 霧散していく煙の中、二人を見送ったギールグは呆と立ち尽くす。
「目論見、破らせてもらいましたよっ!
 ギールグ! ココまでですっ! あとは貴方を倒せば、ヨハナ達のハッピーエンドですからっ!」
 拳を突き出しヨハナが明るく言う。それを聞いて、ギールグが今一度、笑った。
「……なにがおかしい」
 睨めつけるラルフは最大限の警戒を持つ。相手が魔種である以上、状況を覆す何かを持っていてもおかしくはなかった。
 クレイル邸から妻子が出てくる。失敗したことに怯え、震えていた。だが――
「キチキチキチ。
 オマエ達、ノ、役目、ハ、終ワリ、ダ。イヤ、最初カラ、役目ナド、アッテ、ナイヨウナ、モノカ」
「何を言ってるんだい……!」
 セララが武器を構え飛びかかろうとすると、ギールグはネイナを掴みセララへと投げ捨てた。
 それが人ではない何かだと知っていても、咄嗟に投げ捨てられた”子供”に手を出すことはできない。セララはネイナにぶつかり、体勢を崩した。ネイナから発せられる狂気の波動に顔を歪める。
「”二人”、ハ、逃シタ、ガ……マア、”ハズレ”、デ、アルコト、ヲ、願オウ」
 二人と、ギールグは言った。クレイルのことではない――その数は。
「サア、上等、ナ、逸材達、ヨ。ソノ、力ヲ、”俺”、ニ、示シテ、ミロ……!!」
「この気配……そんな……!」
 目の見えない小夜だからこそ感じることが出来ただろう。ギールグのフードの中に犇めき生まれる小さな生命――蟲の大群の存在を。
 フードの背を破り、ギールグに羽根が生える。生み出された蟲の大群が、イレギュラーズを逃すまいと周囲を取り囲んだ。
 人ではない、魔種との戦いはここから始まるのだ。

●滅ビノ羽音、聖都ニ響ク
 魔種ギールグとの戦いは、ギールグ本人との戦いもさることながら、夥しい量の蟲との戦いでもある。
 戦闘機動を邪魔するようなものではないが、身体に張り付き、耳元で不快な羽音を響かせ、時に肌を噛みちぎり、視界の邪魔をする。不快さと苛立ちを沸き立たせる、そんな環境での戦いとなるのだ。
 その点で言えば、イレギュラーズ――特にラルフと焔の活躍によって十分以上の対応が出来ていたと言えるだろう。
 ラルフの仕込んだ罠、そして武具に染みこませた臭いは多くの蟲を寄せ付けず、蟲に対する面制圧を可能とした。
 焔が呼び出す炎もまた、燃焼性はないものの本能的に蟲が嫌うものであり、振るった武器の軌跡が蟲達を振り払っていく。
「蟲が武器であること……それが貴様の特徴であり弱点だ」
「蟲が嫌うものはいくつもあるからね! 対策さえ用意しておけば対処は容易いよ!」
 二人の言葉に、ギールグは悔しそうに「ギチギチ」と歯を鳴らす。
 高い能力を実現させバランスよく纏まったイレギュラーズは、死角と呼べる死角がほとんどない。
 ギールグに肉薄し、精神を乱す金打を響かせ、時に攻勢によって自らの精神異常を回復する小夜。ギールグの尋常成らざる速さの攻撃すらも、全てが見えているかのように躱し、反撃する。
「キチキチキチ。素晴ラシイ、力ダ。
 オマエ、ダケ、ニ、限ラナイ。コノ、場ニ、立ツ、オマエ達、全テ、実ニ、強イ」
 ギールグのその賛辞は、決して小馬鹿にするようなものではなく、心根より発したような言葉に思えた。
 小夜の一撃を躱し、追撃したセララの十時斬り(スペシャル)を節足を犠牲に防いだギールグの赤い瞳が見開かれる。同時、反応を許さぬ速度で踏み込んだ貴道のワンツーが、確かな手応えと共にギールグを捕らえ、地面に崩れ落とさせた。
「さっきからベラベラと上から目線でご高説ありがたいことだな。
 人間を超えたと言いたげだが、勘違いだぜファッキンシット?
 てめぇは人って枠から逃げただけの虫ケラさ」
「……キチキチキチ。逃ゲタ、ノ、デハ、ナイ。力ヲ、求メ、ソシテ、手ニ、入レタ、ノダ」
 生やした羽根を羽ばたかせて、空へと逃げようと跳躍する。
「上ならば安全などと……飛べるのは自分だけだと思いましたか?」
 ヘイゼルが逃がすものかと、真下から中空に生み出された魔方陣を蹴り上げて駆け上がる。不意を突かれたギールグがヘイゼルに捕まり引き摺り下ろされた。
「貴様からは魔種たる強い渇望も怒りも欲望も見えん。
 感じるのは上位者として自尊心だけ。
 復讐を遂げた男の生き様を愚弄し、挙句期待を押し付ける。
 実に美しくない――」
 地面へと落ちるギールグをラルフが肉薄し掴む。勢いままに地面へと叩きつけると、さらに呪い魔力を内包した銃弾を撃ち込んだ。
 藻掻きながらギールグが節足を無数に生やし、間合いを取る。多くのダメージを受けてはいるが、今だそのスピードは衰えず。
「虫けらめ。
 強くなるために何かを捨てる……三流だな、超一流ってのは全部もぎ取るもんだぜ?」
 貴道の挑発に、ギールグは肩を揺らし、そして何度も頷き笑った。
「キチキチキチ……ククク、アア、ソウカモ、シレナイ、ナ。強キ、モノ、ナラバ、ナ」
「ま、まだ蟲を出すんですかっ! あぁもう、これじゃ聖都中蟲の死骸だらけですよっ! インセクトホラームービーですよっ!
 掃除をする方の身にもなってくださいねっ!!」
 体力の衰えを感じさせない魔種を前に、少しだけ湧き上がった不安を掻き消すようにヨハナが声を上げる。
 この戦い始まって――始まる前からだが――からヨハナは常に明るく、ふざけるような調子で声をあげ、イレギュラーズ達の精神を安定させてきた。それは魔法でも技術でもなく、明るいお調子者であるヨハナだからこそできたムードメイクだ。
 彼女の調子に乗せられていたからこそ、魔種という強大な根源的悪と相対しても、飲まれることなく普段の調子で戦うことが出来たと言って良いだろう。
 そのことはイレギュラーズ全員が感じていたことであり――そしてギールグもよく観察していた。
「”俺”ハ、弱イ……弱ク、チッポケ、ナ、虫ケラ、ダ」
「HAHAHA、わかってるじゃないか。てめぇの人生は名も無き虫、そのものだぜ」
 泣き言を漏らし始めたギールグに、しかしイレギュラーズは息を飲む。消失する意気と対象的に膨れあがる殺意と狂気。貴道はこの感じを知っている。以前為す術無く地に膝をつくことになった、あの時と同じ。
 仲間に合図を送る。切り札が来るのだと。
「ダカラ、コソ。”俺”ハ、力ヲ、求メル……!
 弱キ、ヲ、知ッテイル、カラ、コソ! 誰ヨリモ、貪欲ニ、強欲ニ――誰ヨリ、モ、強ク、成ル、タメニ!!」
 フードが溶けていく。否、夥しい量の蟲がフードを喰らっているのだ。
 覆い隠されていた顔が明らかになる。長い耳、銀糸のような長い髪。膨れあがった禍々しき赤き瞳は複眼構造のインセクトアイズ。顔の半分が昆虫を思わせるその姿は、すでに人のそれではない。
「なんて、邪悪な気配――」
 狂気に巻かれながら、小夜が言葉を零す。
「蟲が、数え切れないくらい……! 炎でも捌ききれないよ!」
「マズハ、思イ、知ラセテ、ヤロウ!
 コノ、力コソ、全テヲ、掴ム、コト、ノ、出来ル、力、ナノダト!!」
 大量に生み出される蟲、蟲、蟲。
 地面を埋め尽くす多足、無足の蟲が、足下から身体へと這いずり回り、除けようとする手には飛来した昆虫たちが飛びかかり異常な力で自由を奪う。
 仕掛けた罠は食い破られ、視界全てが蟲で埋め尽くされた。
「全員備えろ! 来るぞ!」
「殺虫剤っ! 噴霧型でも、噴射型でもいいですからっ! 殺虫剤をください-っ!!」
「”俺”ト、コノ、蟲達コソ、最強タリ、得ル、力、ノ、証明、ダ!!」
「くっ……セララさん!」
 小夜が、セララを庇う。抱き留めた小夜の身体が蟲で埋め尽くされ――そして世界を埋め尽くす蟲の嵐の中、ギールグがイレギュラーズに向けて突撃するのを、セララは為す術無く目にするのだった。
 滅びの羽音が、聖都に響き渡る。

●原罪の呼び声
 ある時代、ある場所に、弱き蟲使いがいた。
 蟲と共に生きるその男は、しかし己の弱さ故に仲間たる蟲を無碍に殺されてしまうことを嘆き悲しんだ。
 力があれば、と。泥水を啜りながら生きるその中で、只力だけを追い求めていた。
 そして男は、出会ったのだ。魔種と呼ばれる存在に。
 原罪に訴えかける呼び声は、強欲とも呼べる男の渇望に呼びかけた。抗うことなどない、男は力を手に入れたのだ。人の身では到底及びつかない程の力を。
 だが――
 魔種となっても、男は弱かった。人よりも強くはなった。だが魔種の中では? 強欲に名を連ねる多くの魔種の中で、男は変わらず虫けらだったのだ。
 だからこそ、男は更なる力を求めた。どのような力でも良い。誰もが太刀打ちできないと諦めるほどの力を――

「――個ノ、力、ニハ、限界ガ、アル。”俺”ハ、ソノ事、ニ、気ヅイタ、ノダ」
 考えて見ればすぐに分かることだった。蟲使いの力は小さな蟲達の個の力を集め、集の力としたものだったのだから。
「オマエ達、ハ、強イ。個ノ、力ダケ、デハナイ。集ノ、力ト、シテモダ。
 ”強欲”、ニ、名ヲ、連ネテ、居ナケレバ、”嫉妬”、シテ、シマウ、コトダッタ、ダロウ」
 天を仰ぐギールグ。世界を埋め尽くす蟲達の中心は台風の目のようにポッカリと穴を開けていた。
「皆さんっ! 大丈夫ですかっ! 今は体勢を立て直すときですよっ! 大丈夫です、ヨハナが時間を稼ぎますっ!!」
 ギールグの奥の手を喰らって、イレギュラーズは皆大なり小なりダメージを受けた。特にセララを庇った小夜のダメージは致命的で、膝を付く小夜が小さく呻いた。
「ダカラ、コソ。
 ソンナ、オマエ達、ダカラ、コソ。”俺”ハ、ソノ力、ヲ、是非トモ、手ニ、入レタイ……!」
 其れこそがギールグの欲する欲望。魔種たる最強の個の力を上回るための集の力。
 つまり、ギールグは、仲間を欲していたのだ。
 蟲だけではない。共に並び立つ、人の枠を超えた仲間。魔種の中でも弱い男が至った一つの結論だった。
「魔種なんかの仲間になるものか! 人の愛を忘れたキミになんか負けはしない!」
 セララがギールグへと飛び込む。
 しかし、世界を覆う蟲の暴風はセララの身体へと張り付いて、思うように身体が動かせない。
 振るう聖剣が重く感じる。動態に繋がる――フィジカル、テクニック的な能力がまるで半減したかのように、身体のキレが消失している。
 セララの振るった一撃を易々と避けたギールグが反撃の技を振るう。声を上げてセララが吹き飛び倒れた。
「ヤロウ……!」
「やらせないよ! 絶対に……!」
「軍門に降るなど、お断りだ――!」
 行動可能な貴道、焔、そしてラルフが渾身の力を籠めてギールグへと一斉攻撃を仕掛ける。しかし、やはり払いきれない蟲達がその動きを抑制し、ギールグの為すがまま反撃を貰い、食い縛った貴道を除けば、皆、地に膝を付けることとなった。貴道を指さしギールグが言う。
「ヤハリ、オマエ、ハ、良イ。ダガ、ドウヤラ、コノ世界、ノ、者、デハ、ナイヨウ、ダナ。オシイ、コト、ダ。
 ――スグ、終ワル。ソコデ、見テ、イルガ、イイ」
「みなさんっ! この――っ!!」
 傷の浅いヨハナが、時間を稼ぐ為に一人立ち向かう。
 異常耐性に特化しているヨハナだ。ギールグの技に対する抵抗値は飛び抜けている。だが、魔種相手に一人で挑むのはやはり荷が重すぎる。
「くっ……せめて彼女だけでも――!」
 ゲオルグが魔力を手繰りヨハナを回復する。邪魔をするな、とギールグの放った蟲の暴風がゲオルグを蝕み傷つけていく。
 ヨハナ渾身のレジストクラッシュが空を切る。横合いからギールグの節足が伸び、脇腹を抉った。
 倒れるヨハナは、しかし目は死んでいない。
「負け、ませんよ……! 絶対に、未来は……ハッピーエンドは諦めません……!」
 ヨハナ・ゲールマン・ハラタという人物は、あきらめが悪く――そして強く幸せな未来を望み、実現する力を持っている。そう見えるのだ。
 だからこそ、ギールグはヨハナの力を――共に戦う仲間として――欲しいと思った。
「力ガ、欲シイ、ダ、ロウ?
 オマエ、ガ、守リ、タイ、皆ヲ、守ル、力ガ」
 今この場に置いて、切にそれを望み、覚悟を持っているのはヨハナだ。
 この戦いが始まる前から――その性格として――明るくポジティブに、幸福のある未来を目指して突き進む、そんな彼女が、彼女だからこそ奇跡を起こす代償も厭わないほどの覚悟を持っていた。
 そんなヨハナの姿を見たからこそ――至上の力を求め、個のみならず集の力をも求めるギールグには何としても得がたいものに見えたのだ。
 狂気の伝播はこの場に置いて唯一の純種であったことも作用しているかもしれない。もし貴道が純種であったのならば、おそらく貴道にもこの狂気は伝播し、仲間へと誘っただろう。
 膨大な狂気が拡散し、精神を犯していく中、ヨハナの頭の中にチリチリピリピリと雑音が響き渡り、誘惑を繰り返す。
「オマエ、ガ、目指ス、未来、ヲ、求、メル、ソノ、欲望。悪、イ、物デハ、ナイ。ソノ意思、欲望、コソガ、力ヲ、与エテ、クレル、ノダ!
 奇跡ナド、ニ、頼ルナ! オマエ、自身ノ、力デ、掴ミ取レ!
 サァ、耳ヲ、傾ケロ! 手、ヲ、トリ、飽ク、ナキ、力ヲ、求メロ!」
 ギールグは、その瞬間、この選択こそが正しい道なのだと、声高らかに両の手を広げた。
 倒れ伏すヨハナは震える身体を引き起こす。
 視線の先、ギールグの赤い双眸が新たな仲間の誕生を期待を込めて見つめていた。

 圧倒的な力の前に、傷付き倒れた仲間達。
 ギールグは言う。オマエが仲間になれば、この場に用はないと。
 戦闘を継続することは――このままでは取り返しの付かない結末が訪れる可能性もある。
 危惧した悪い事――そう、みんなの未来が損なわれるかもしれない。
 呼び声に応じれば……少なくともみんなは助かり――未来を変えうるのだ。
 頭の中をかき乱す狂気の旋律。自己意識を容赦なく押し流そうとする暴力的な奔流は、絶対に逃れることのできない選択をヨハナに突きつけるのだ。

 ――求メロ! 力ヲ! オマエガ、求メル、未来ヲ、掴ムタメニ!! ――

 黒き呼び声が徐々に精神を支配していく。
 今この場に必要なのは、奇跡か、それとも呼び声か。

 選択のリミットは、もうすぐそこまで迫っていた――

●選択
 ギールグを前にしたイレギュラーズが選択を迫られている頃、クレイルを助けたアトとヨルムンガンドも選択を迫られていた。
「……嫌な音がする。そう、深い迷宮の先で宝と命を天秤に掛けた時のような、そんな時に脳裏に響く、そんな音だ」
 クレイルを座らせたヨルムンガンドが、そう言ったアトへと顔を向ける。
「みんなが心配だ。早く合図を送るべきじゃないか?」
「そうしたい所だが……やはり少し気に掛かる。
 あまりにも事が上手く行きすぎている。突入、脱出、逃走。妨害という妨害はほとんどなかった。相手は魔種だと言うのに」
「――罠か?」
「どのような罠かはともかく、こちらの戦力を分散させることも想定されていたのならば――ただ合図を送るだけではダメだろうね」
 アトは用意した発煙手榴弾とフレアガンの状態をチェックする。
 もしこの状況がギールグにとって想定通りならば、少なからず仲間は危機的状況に瀕していてもおかしくはない。
 逃走と決めた以上、戻るつもりはなかったが……しかし、嫌な予感が拭いきれない。
 依頼の達成条件はクレイルの保護にある。この時点で此方の目的は達成しており、このままローレットまで帰るという手段も取れなくはないが……もしギールグの罠なのだとしたら、仲間の全滅は必至。正義感などないにも等しいが、たとえ、顔見知り程度、依頼で話した程度の仲間だとしても、見殺しにしたとなれば、寝覚めは悪いと言う物だ。
 賭けに出るべきか……。いつものアトならば、リスクの高い手段を取らないだろう。思案を浮かべたアトにヨルムンガンドは強く言う。
「リスクはあるが、行くべきだろう……! 皆が強いのは分かっているけれど、”もしも”ってことがあるだろう……?」
 そう”もしも”だ。ギールグが何かを狙ってこの状況を作り出したのならば、覆す必要がある。リスクを秤に掛けるのは遠慮したいところであるが――仕方ない。
「……かなり特殊な道を経由して此処まで来たが、追っ手が来ないという保証もない。
 彼を守る者は必要だろう。ここは――」
 アトは考える。自身とヨルムンガンドの能力を比して仲間の救助に適切なのはどちらなのかを。
 機動力はそう変わらないが体力面ではヨルムンガンドに軍配があがるだろう。
 だが、スキル的な面で見ればアトの持つ閃光のスクロール(?)は救助撤退時には有効だろう。直線的な攻撃を行うヨルムンガンドでは、面制圧を行う蟲の大群を操るギールグに分が悪い。だが、そうであったとしても――
 ――アトは決断した。
「ヨル、君が向かってくれ。僕はクレイルさんを保護しながら遠方から合図する」
 決断の決め手はスキル構成と、抵抗力の差だ。
 共に不凶不吉を寄せ付けない身である。僅かなミスは”人為的な何か”がなければ起こりえない。だが、ギールグにその力があれば? アトの抵抗力では残念ながら抗うことはできないだろう。
 どのような状況にあっても、磐石に仲間を救い出すと言うのであれば、僅かなリスクをも消していく必要がある。それは先の見えない迷宮を進み踏破するアトだからこそ養えた力と判断である。
 アトの決断に、ヨルムンガンドは一つ頷き愛車へと跨がった。
「これを持っていくと良い。発煙手榴弾だ。危機的状況であれば迷わず撤退に使ってくれ」
 合流地点は三発のフレアガンの交差した先。そう告げてアトはクレイルに手を貸して立たせた。
「妻と……娘は……」
 クレイルの疑問に、アトは首を振るう。
「君に浄化してもらいたい、と願う仲間もいたがね。状況は変わってしまった――」
「状況次第ではその場で殺害する必要もある。まあ殺せば黒い水のようななにかに変わってしまう存在だ。気に病むな、と言っても難しいと思うが――」
 ヨルムンガンドの言葉に僅かに悲しそうに――もう一度出会うことの出来た妻子の姿を思い出して――しかし振り切るようにクレイルは頷いた。
「……後をお願いします」
「ああ、出来るだけ苦しまずにしたいが……余裕があれば、だな」
 それだけ言って、ヨルムンガンドは愛車のアクセルを開け走り出した。
「仲間を迎える必要がある。少し走るが、付き合ってもらうぞ」
 クレイルを連れ、アトも路地裏へと駆け出した。
 二人のこの判断が、窮地にあったイレギュラーズの光明となる。

●抗いの対価
 『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』は純種に取って抗いようのない選択を突きつける。
 降伏か、抵抗か。
 降伏すれば、その生命組織は変化し、ギールグを初めとした魔種へと変貌するのだろう。
 だが、抵抗を選べば……その先には、救いなどありはしない。
 絶望的な状況下は変化することなく、ただ絶命までの時砂を少しばかり増やすだけだ。
 
 ――悔しい。

 選択を突きつけられたこの場に置いて只一人の純種、ヨハナはそう感じていた。
 脳裏にちらつくのはいつか出会った自分と瓜二つの魔種の姿。
 定義すら曖昧な『自称未来人』である自分に対し、異常な的中率を持って『預言者』として振る舞う魔種。
 同じ力があれば――同じように証明する手立てがあれば……。そう思わなかったことはない。

 ――悔しい。

 選択を迫られ、仲間の未来を救う手立てとなるのならば……震える手が狂気へと伸びていく。
 だけど……その力を手にしたとして、その先は?
 ヨハナには召喚以前の記憶はほとんどない。しかし漠然と『未来の破滅の予感』を感じていた。
 今ここで、人ならざる力を手に入れたとして、その後自分が生まれた――少なくともそう信じる――未来に立ち返ったとき、何を誇ればよいのだろうか。
 何か重大な使命を忘れて、共に時代を生きる人を裏切って――何を誇ればよいのか。
 『現在』を捨て、『未来』を見失い、『生涯』を裏切ってまで手に入れたいもの――

「……いや、だ!」
 頭を抱えたヨハナが、ゆっくりと立ち上がる。
 たかだか『未来人』の為に、全てが無益だったと悟る様な生き方を選ぶのだけはいやだ。
 たかだか『未来人』の為に、今を生きる人達、その未来に不安の影を落とすことだけはいやだ――!
「そんな肩書のために……生きてきたわけじゃない……ッ!」
 伸ばされたギールグの節足をその手で振り払う。
 そんな『未来人』になるくらいなら、『自称未来人』でいい。ヨハナは歯噛みし絶対的な拒絶を示した。
 ヨハナは信じているのだ。
 曙光の空を背負い立ち上る煙。そんな煙と空を見てどうしようもなく『嬉しい』と感じる自分の心を。
 一緒に居られるだけではない、共に未来を背負うことを許してくれる、ここにいる仲間達を。
「それに――」
「――?」
 ギールグが訝しげにヨハナを見やる。それは何故失敗したのか、何故この選択をしたのか、心の底から分からないと言いたげで。
 そんなギールグに、変わることない突き抜けた明るさで答えた。
「――それにっ! ヨハナがそんなボケをかましたとして、一体どこのどなたが笑い飛ばしてくださるんですかっ!
 与太話はヨハナのそっくりさんなインチキ占い師だけにしてくださいなっ!」
 くくく、とイレギュラーズから笑みが零れた。拡散する狂気の波動に抗いながら、一人、また一人と立ち上がり、武器を構えた。
 そんな仲間を背負って、ヨハナが指を突きつける。
「なにを勝った気でいるんですかっギールグっ!
 まだまだ平気へっちゃらなので、どんどんかかって来なさいっ!
 ヨハナがっ! ヨハナ・ゲールマン・ハラタが預言しますっ!」

 ――『ここからがハッピーエンドの開幕ですっ!』

 そう宣言したヨハナの背からギールグの太い節足が飛び出した。

●最良の行動
 次の瞬間、高い反応を示した貴道、セララ、小夜が走った。
「巫山戯るなよ、この虫ヤロウォ!!」
 人外極まるフットワークを見せる貴道の振り下ろしが、ギールグのこめかみを捕らえる。だがギールグもまた身体を回転させ勢いを殺すと、悉に反撃へと出る。纏わり付く大量の蟲。貴道は重くなる身体に有りながら更なる加速を見せる。驚愕の色に染まるギールグの顔に張り付いた笑みを真正面から撃ち貫いた。
「許さないぞギールグ! ボクは正義の魔法騎士としてキミを絶対に許さない!」
 逆手に構えた一撃が蟲の防御壁を切り裂いて、ギールグまでの道を作り出す。二対の聖剣を構えてセララが今一度疾駆する。蟲の追撃を物ともせずにギールグまで肉薄すれば、得意のセララスペシャルを放って、ギールグの身体を十時に切り裂く。体表面を覆う無数の蟲はギールグの防御盾と言って良い。だがセララの一撃はそうした防御も突き抜けてギールグの体組織に大きくダメージを与えた。
 苦悶のままに吹き飛ぶギールグが羽根を広げて空へと逃げようとする。
「逃がす物ですか――!」
 だが、その動きを小夜は見切っていた。広げた羽根を瞬く間に花嵐で切り裂いた。バランスの崩れたギールグが空中で無防備を晒した。
「切り札も効果時間切れのようでせうね――」
 そこに、空中を駆けるヘイゼルが詰めに行く。言葉通り、身体を蝕む蟲の大群は多くが霧散し、残るものもギールグの身体へと戻ろうとしていた所だ。
「ギチギチギチ――!!」
 ヘイゼルの赤い糸に絡められ地面へと引き摺り下ろされたギールグは、しかし今だ速度を衰えさせることなく悉に間合いを取る。
「大丈夫、まだ息はあるよ!」
「すぐに治療する。時間を稼いでくれ」
 ヨハナの周囲に残っていた蟲を緋燕で焼き払い、安全を確保した焔が声を上げる。すぐにゲオルグが駆けつけて、祝福の花を咲かせた。
 ヨハナの意識はない。だが一命は取り留めたはずだ。ゲオルグの必死の治療が、胸部に空いた穴を塞いでいく。
「思い通りに行かないと見れば、即座に力に訴える。
 飽くなき力を求めるその姿、魔種たり得る物と納得しかけたが――やはり貴様は人でいることから逃げた矮小幼稚な虫けらに違いないようだな」
 ギールグの背を取り、その羽根の根元と足へと魔弾を撃ち込むラルフ。仇花咲かせる蠍の毒が、ギールグの人ならざる身体を犯し苦しめる。
「ギチギチギチ――! ”俺”ト、共ニ、アレバ、見果テヌ、力ヲ、得ラレタ、物ヲ……!
 ソウモ、否定、スル、ノ、ナラバ! マズ、ハ、オマエ達カラ、”俺”ノ、血肉、ト、シテ、クレル!!」
 激情のままに蟲を呼び出すギールグ。だがイレギュラーズの攻撃は間違いなくこの魔種の力を削いでいたのだ。目に見えて減った蟲の量に、イレギュラーズも手応えを感じていた。
 しかし、状況は変わらず不利だ。ギールグの相手をした者は多くが重傷とも呼べる傷を受け、意識を繋ぎ続けることに集中していた。身体に鞭を打ち動いていると言っても過言ではない。
 ――今のこの状況は、依頼の達成を確実に行う為に取られた方策の結果と言える。魔種という存在と戦う以上、全員でぶつかる必要があったことは否めない。とはいえハイルールがある以上この作戦は正しく必要十分であり、見誤ったのはギールグの狙いと、切り札の埒外さか。
 この状況下で、機動力に変化のないギールグから撤退するのは至難の業だ。またヨハナが倒れたことで、その身体の運搬が足かせになるだろう。
 当然だがヨハナを攻めることは出来ない。ヨハナが呼び声を拒否しなければ――魔種となったヨハナがどのような判断を下すか想像不能であり、最悪魔種二体との戦いともなっただろう。
 また呼び声を拒否したヨハナの言葉に力づけられたのは間違いないことなのだ。で、あれば必ず救ってやろうと、イレギュラーズは倒れたヨハナの前に立ち並び、ギールグに相対した。
「ギチギチギチ」
 互いに手が出せない睨み合いが発生した。攻めるか引くか。プライドと命を秤に掛けていた。
 そして僅かな睨み合いの果て――両者が決死の覚悟を固め、一歩踏み出そうとしたその時、一際明るい光の球が空を走った。
「――!」
 両者が目を奪われたその瞬間――
「オオオォ――!!!」
 建物の屋根からヨルムンガンドが飛び出し、咆哮ままに空中からギールグに黒炎を吐いた。
 夜色の黒炎に包まれたギールグが怒りにギラつかせた瞳をヨルムンガンドへ向ける。だがそんな視線を無視して、ヨルムンガンドが暴食の爪牙を振るい更なる追撃を行う。
「走れ――!」
 ギールグの反撃に抵抗しながらヨルムンガンドが叫ぶ。瞬間、イレギュラーズは一斉に撤退を開始した。
「これは逃げじゃない、戦略的撤退だ!」
 悔しげに言葉を残し、貴道がヨハナを拾い上げ走る。
「逃ガス、モノカ――!?」
 追おうと加速し始めたギールグの前に、何かが落ちた。それは音を立てて大量の煙を生み出す。アトがヨルムンガンドに託した発煙手榴弾だ。
 煙に巻かれながら、ギールグが蟲を放つ。
「やらせないよ!! 絶対に!!」
 それを見逃さなかった焔が、緋燕を放ち焼き落とす。
「こいつは土産だ、とっておきたまえ」
 そしてラルフが、蠍の毒を魔弾に込めてギールグへと立て続けに放つ。狙い澄ました一撃がその足を穿って機動力を削いだ。
「痛いだろうが今は全力だ。傷は出来る限り治してやる。走れ!」
 仲間の治癒を続けながらゲオルグが叫んだ。
 相手を煙に巻く。言葉通り、視界の確保出来ない極厚の煙の中をイレギュラーズが走る。
 空には続けて、二つ、三つと光弾が飛び――ついにギールグはイレギュラーズを見失うのだった。
 苛立ちを抱えたギールグが、倒れ伏したリエラとネイナにそのどす黒い感情をぶつけ、黒い水に還すのはその直後のことだった。

「満身創痍――だが、全員命を拾えたのは儲けもの、という奴か」
 合流したアトが、傷付いたイレギュラーズを迎える。
 傷付き倒れたヨハナは呼吸も安定した所だ。保護対象であるクレイルも無事で――ひとまず依頼は完遂と言えるだろう。
 だが、この場に残るイレギュラーズは皆悔しそうに歯噛みする。魔種との戦いは勝利とは呼べない物だった。
 貴道が拳を握り叩く。その悔しさを察するようにゲオルグが肩を叩いた。
「まずは傷を癒やしましょう――全てはそれから」
 瞳を伏せた小夜の呟きが、風に乗って消えて行く。
 再戦の機会は、必ず訪れるはずなのだ――

成否

成功

MVP

郷田 貴道(p3p000401)
拳闘者

状態異常

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149) [重傷]
自称・旅人
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638) [重傷]
自称未来人
白薊 小夜(p3p006668) [重傷]
死角無し

あとがき

 澤見夜行です。
 書き過ぎちゃいました。そしてアドリヴ量も多量となりました。

 結果はともかく依頼は成功です。
 全員で短期決戦を挑んだ場合、ギールグの撃破は叶いますが、依頼的には失敗となっていたでしょう。作戦の選択としては最上だったと思います。

 まあそれ以上に参加者の皆さんがとても強くて、ギールグ雑魚キャラになりそうだったので、ちょっと盛らせて頂きました。魔種なので許してあげてね。

 因縁が出来たかどうかはともかく、また姿を見せるときがあるはずです。その時は間違いなく決着の時でしょう。ご縁があれば、ご参加頂けると嬉しいです。

 MVPは一番殺意の高かった貴道さんへ贈ります。ギールグにも気に入られてますね。

 依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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