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シナリオ詳細

声が誘うスペクトラム・ブルー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●かなしいかなしいにんぎょさま
 海の中はとても静かだった。

 ──い。

 見上げる海面はとても綺麗で。

 ──しい。

 けれど、それ以上に。

 ──さみしい。


 寂しい場所だった。

●誘い、抗い、救いを求め
「最近、海洋で船の沈没事件が相次いでいるのです」
 海洋の地図を広げながら『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が難しい顔で告げる。
 なんでも、件の海域を通ろうとすると──船が文字通り"沈んでいく"のだそうだ。
 初めは漁に出ていた船が帰ってこなかった。次にいくつかの島を周回する商船の連絡が途絶えた。初めは海賊の仕業とも思われていたが、その海賊船ですら沈んでいく光景を他の漁船が目撃したのである。
「元々波も穏やかで、漁には適した場所なのです。漁に出る船も多いですし、島から島へ渡っていく商船も通ります。
 その海路が使えなくなってしまうと、皆さんがとってもとーっても困ってしまうのです」
 へなりと眉尻を下げたユリーカ。その手に握られていた羊皮紙が机へ広げられる。そこに書かれているのは、過去起きた事故の概要のようだった。
「あの海域では以前、嵐で船が沈没したそうなのです」
 海洋貴族の所有する船で、決して小さくも粗末な造りでもなかった。しかしそれ以上に自然の脅威は大きいものだったのである。
 違うんだ、という小さな声にイレギュラーズたちはそちらを──ユリーカの隣で椅子に腰掛ける男を見た。意気消沈し、やつれた様子の彼が此度の依頼人らしい。
「船を所有していた方なのです。嵐の中助け出された、」
「置いていきたかったわけでは、なかったんだ」
 ユリーカの紹介に男の声が被った。ゆっくりとイレギュラーズを見渡す瞳に宿るのは、深い後悔の色。
「……あの日。私は船の上で結婚式を挙げていた。相手は貴族ではなかったが、私の家はそういった身分に関して寛容でね。──幸せだった。幸せだったんだ」
 幸せだったと言いながら、男の表情は悲しみに歪む。
 天候の良い日を選んだはずのその日。現れた嵐は船を飲み込み海へ沈めた。助かったのは男と、結婚式に招待されていた数人のみ。傍らにいたはずの女は──妻は、いなかった。
 それからどれだけの時間が過ぎただろうか。
「……最初は、気のせいかと。そう思うくらいに小さな声が私を呼んだ」
 必ず海の、その海域の方角から。声はだんだんと大きくなり、同時に沈没事件が頻発し始めた。
「彼女が呼んでいるんだ。けれど、私はその声に誘われるわけにはいかない」
 ──だからイレギュラーズ。どうか彼女の魂を、沈めてくれ。

●さみしいさみしいぼうれいは
 寂しいの。
 何故だっけ?

 悲しいの。
 何故かしら?

 何かが足りないの。
 どれ? 何? わからないの、わからないから──もう1度。

GMコメント

●成功条件
 亡霊『ルシリア』の沈静化

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●亡霊『ルシリア』
 海の底より目覚めし亡霊。真白いドレスを着た骸骨。件の事故で亡くなった花嫁です。
 夫となる男は生き、自らが死んだことにより欠けたピースを探し続けるような執念の塊となっています。会話はできているようで噛み合いません。倒せば沈静化させられることでしょう。
 他の亡霊たちを操り、船ごと人間を沈めています。泳げるという表現が正確かは定かでありませんが、水中に対して適性を持つとします。反応は遅めですが防御技術に優れます。

呼び声:神遠扇。ほら、おいで。底深くまで──寂しくないように。【無】【呪縛】【恍惚】

●骸骨たち×??体
 無数の骸骨たち。意思はなく、ルシリアに操られています。彼女が倒されない限り海の底から湧き続けます。
 時に船を沈め、時にルシリアを守り、時にイレギュラーズを倒す、海へ引きずりこむなどするでしょう。こちらも水中適性アリです。
 特筆するステータスはありませんが、只々数が多いです。

●ロケーション
 穏やかな海域です。戦闘中も変わらず、天気も良いでしょう。
 船は2隻まで貸し出せますが、船のアイテムがある場合はそちらの方が性能は良いです。
 どちらの場合においても操舵者は相談で決めてください。(どなたでも最低限操ることはできる、として構いません)

●ご挨拶
 愁と申します。久しぶりの海洋依頼です。
 どうか海に──そして声に引きずりこまれてしまわぬよう、お気をつけて。この海域の底は静寂に満ちた寂しい場所です。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 声が誘うスペクトラム・ブルー 完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月24日 22時10分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
ほのあかり
「船上結婚式での沈没事件ですか…」
目を伏せ、それぞれを想う。水底に沈みながら意識を手放す自分。水底に沈む人を助けられなかった自分。
どちらも…悲しい。

だからこそ、これ以上悲しい人を増やすわけにはいかない。
水底の人をこのままにはできない。

・戦闘
パンドラ使用。戦闘では後衛に。
*操船は他の人に頼みますが、誰もいない場合受け持ちます。
水中に落ちた人がいたらロープで救出を試みます。

「ルシリアさんまでの道を開かねばなりませんね…」
骸骨を視認したらミスティックロア使用(切れたら再付与)
手番時、味方を巻き込まず複数を攻撃できるならばヴェノムクラウド。
難しい場合は黒の囀りにて攻撃していきます。

ルシリアさんへの射線が通るようになれば攻撃対象を最優先にします。
「ひとり、海の底に沈む日々はおしまいです。還るべきところに還りましょう」
あの呼び声は、響かせてはならない…ならば。
ピューピルシールで封印を試みます。
*手番時、封印が施されていなければ黒の囀りに切り替えます。

「貴女の体は崩れても、貴方の魂は崩れない。…貴方の愛する人がいる限り。覚えている限り。
ですから、また二人巡りあえる時まで…夢を見ましょう?目を閉じて、幸せな夢を」
生あるもの、いつかは皆土に還る。魂は空に還る。
縁があって結ばれた二人ならばきっと、いつかどこかでまた会えるとー…。

全て終われば、船の上で祈りを捧げましょう。
聖職者として…一人の人間として。
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
1人が寂しくて、愛した人に一緒にいてほしいって気持ち
それ自体は悪いものじゃないはずなのに、こういうことになっちゃうのね……
そうだね、誰かが止めてあげないと

役割は前衛盾
ダメコンと共に花嫁さんへのカバーを怒りで妨害したりするのを狙う
戦術としては短期決戦を想定してるので、積極的に名乗り口上使ってよさそうね
配置としては、まず船から海へ出て、船からの射程や骸骨の位置を見つつ船と花嫁さんの間に
骸骨が組みついて沈めようとしてきそうだし手足は使えた方がいいよね
名乗り口上で多めに狙える位置を確保ね
呼び声の範囲が広いから船を巻き込まない位置に入るのは難しそうかな
優先順位は骸骨への行動阻害の方が高い感じで

状況的にマークブロックは効果が薄そう
副行動は移動が不要かつ、名乗り口上かペネトレイト使う場合は攻撃集中
でなければ防御集中で

スキルは主に名乗り口上を使用、最優先で花嫁さんを庇いに入るのを射程に入れる
「今日の私は生きとし生けるものの味方!!沈まず鎮める者です!!」
十分引き付けられているならペネトレイトを味方に当てないように注意しつつ花嫁さんと骸骨達を貫通させるように
恍惚が入ってる場合は待機して味方の火力を無駄にしないように
何れも無理か、花嫁さんが至近距離ならブロッキングバッシュ

呪縛に関してはペルセウスで対策
パンドラ使用

彼女に関してはこれでいいとして辛いのは依頼人さんの方よね
時間が解決してくれるといいのだけど
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
パンドラ使用
アドリブ歓迎

■心情
亡霊になってまで探し求めるなんて、きっと、よほど依頼人さんを愛していたのね
主よ、どうかこの者を救い給え。その魂が、悲しみのままに朽ちることの無いように


■戦闘
小型船に乗船
前衛
攻撃の優先順位は、ルシリア>骸骨

行動の優先順位は、高い順に以下の通りですの
・船に敵が取り付いて沈没しそうな場合や、船上の後衛の方が骸骨によって海に引きずり込まれそうになっている場合は、その敵を攻撃
・残りHP6割以下の味方がいれば、ライフアクセラレーションで回復
・BSが付与されている味方が射程内に複数居たら、ブレイクフィアーで回復
・水中に飛び込むことなく攻撃可能ならば、死者の果実が実をつける前にで攻撃
・上記以外は、太陽が燃える夜で攻撃。ただし、味方を巻込まないようにする

また、他に操舵する方が居なくなってしまった場合は、代わりに操舵手となり、可能な範囲で上記の行動をするつもりでございますわっ!


■戦闘後
ルシリアが消滅するまでに時間があったら、一声掛けてあげたいわね
過去は変えられないとしても、せめてその魂だけでも救われるのであれば
家族を失うのは、悲しいことだもの

私達、あの人の依頼を受けてここに来ましたの
貴女を置いて行く形になってしまったこと、悔やんでいるようでしたわ
でもあの嵐の中では、どうしようもなかったと
それから貴女と挙げた結婚式、共に過ごした日々、とても幸せだった。ありがとう、と
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
水底へ誘う声か
自分が幽霊になったらどんなモノになるのか興味はあるが、生きている内にやるべき事が山積みでね
今は依頼の達成を第一に考えるとしよう

●行動
船の操舵を私が担当
他の船上メンバーと共に、目的地へ
戦闘中は可能な限り攻撃に参加するが、船が戦場から流されないように気を付ける

●戦闘
船の上から、遠距離攻撃を行う

基本的に狙いはルシリア。
常に【足止め】を狙うように『多段牽制』で攻撃
途中に通常攻撃や射撃を織り混ぜる

また、船上の仲間の体力が半分以下になったら『SPD』で回復

●戦闘後
ま、赤の他人ではあるが、供養くらいしても罰は当たるまい
私の趣味で申し訳ないが、ゼフィランサスの花束を海に投げ、冥福を祈ろう

※アドリブ歓迎
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
まったくもって穏やかな海域ですね…こんな所で船が沈むなんて想像できねーですが…
ルリシアさん…その時は私が操舵手だったら助けられたんでしょーか…
不憫ではありますが…いつまでも海を荒らされるのは困ります…
ちょっと強引にでも海底から引っ張り出してさしあげましょー

現場につくまで船に乗り、戦闘前に海にどぼーんしておきます
敵さんの扇状攻撃になるべく巻き込まれないような立ち位置をキープ

最初の副行動はマギインスティクト
その後はレンジを合わせるために移動、移動不要なら攻撃集中
主行動はグレイシャーバレットで攻撃、APが切れた時は通常神秘攻撃
狙いは骸骨が簡単に殲滅できて、湧き具合がゆるやかなら骸骨から片付けてその後亡霊を攻撃
骸骨の湧きが無限だったり、こちらの殲滅力を上回っていそうな時は早期決着を狙って亡霊から攻撃

戦闘中味方の船が沈みそうな場合は自分が乗り込んでギフトで沈没阻止します

話は通じないと思いますが声はかけてみましょう
もうやめましょう、ルシリアさん…こんな事続けても望むものは手に入りませんよ
貴女を待つ人がいます、私と一緒に帰りましょう。
私が一緒なら絶対に沈みませんよ。必ずや貴女の求める場所へお連れします

戦闘終了後は遺骨を回収して依頼主さんのお渡ししましょー
多少は報われるとよいのですが…
依頼主さんも…忘れろとは言いませんが、前を向いて生きてくだせー
そうしないとまた呼ばれるかも…ですよ

パンドラ使用
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
うたう ゆらめく なみのうた
うたえ ゆりかご ゆらすうた
われは わだつみ うみのかみ
はてなき あおを いだくもの
うたう こおりの そこのうた
うたえ あすなき しのうたを♪

むぐ る うな ふ


パンドラ使用
水中組、後衛
エコーロケーションで常に広域の把握に努める
引き込まれるなどして、救出が必要な者が出た場合仲間に即座に伝達
同じく音響で骸骨の分布やルシリアの位置を常に味方に伝える。

メインは夢見る呼び声。味方の巻き込みには留意する。
使用範囲の優先度は水中の仲間をこれから襲おうとしている者>船を攻撃できる範囲に入った者>ルシリアを守る者>敵の多い場所>魅了を受けた者の居るエリア。
少しでも多くの敵に魅了をばらまく。その際可能な限り攻撃集中。

貴女は、歌が上手なんだね。僕も、ちょっとは上手だよ。
ふふ、何だか嬉しいな。遠大な鎮魂曲のようで。

ある程度魅了が入り、味方がルシリアを攻撃できるようになった段階でブライニクルをルシリアに。
氷結が入ればバーラエナ。HP50%↓の味方にポリプス。
またルシリア攻撃中に彼女を庇う骸骨が出た場合それにも呼び声。
呼び声では味方を巻き込んでしまう場合はブライニクル
船上の仲間が海に落ちた場合即座に助ける

底へ――其所へ――此処へ。
海は綺麗だよね。
全てを包み込んでくれる。貴女は海が好き?
僕は好きだよ。

だからおいで。もっと底まで。其所ではないもっと深くへ。
さあ、ほら。
怖くなんてないよ
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー
綺麗な声じゃねーか、惚れる男がいるのも分かるぜ
でも、オイタはここまで、あんたの大事な人からのお願いでね
とりあえず、まずは……
―――一曲聴いてきな!

行動

戦闘時は水中へ
距離は敵から遠距離を維持、前衛担当より前に出ないことと、孤立しないように気を付ける

攻撃は主にルシリアを狙い、デッドシャウトをBS付与が確認できるまで優先的に使用、BSが複数付与されている場合は、ネクロ・パージを使用

骸骨の行動により、ルシリアを狙うのが困難な場合は、APに気を付けつつ純心のロベリアで、ルシリアを守る行動をとっている骸骨を優先的に減らし、ルシリアを狙えるようにする

「思い出せねーなら、思い切り歌ってやるぜ! 大事なのはフィーリング! 魂ってのは本当はもっと自由なんだぜ? 行きたい場所はどこか、見たい景色は何か、会いたい人は誰か! それさえ思い出せたら、あんたは大好きな人と永遠に一緒に居られるよ、絶対にね」

 戦闘後
ギフトを使ってルシリアちゃんの死体を探すぜ、魂が残ってるなら霊魂疎通で話でもしながら
海は広いけど、結構孤独。
それでも寂しくならないのは、きっと帰る場所があるから。
それじゃあ、一緒に帰ろっか?
沈む前にさ、最後に綺麗な思い出、作ってあげたくないかい?
思い出したとき、涙が出るくらいの奴をさ
やるならワタシも、手伝ったげるからさ
プラック・クラケーン(p3p006804)
幸運と勇気
残酷な現実の悲しい話…だな、やるせねぇ気持ちになんぜ
けどよ、人の命を奪う悪霊になってんなら
元の花嫁さんと依頼人さんの為にも退治させてもらう
だってよ、誰だって怪物になっちまうのは不本意…だろ?


・戦闘前
俺達、海種組は船に随伴する形で水中を泳いで現場に向かうぜ
骸骨による不意打ちを防ぐ為とそっちの方が船から水中へ落ちた、落とされた仲間をすぐに助けられっからよ。

・戦闘・パンドラ使用
俺の役割はルシリアを狙っての前衛アタッカー
基本的にゃ、ルシリアを海纏で殴って、恍惚状態にしてから
もしくは仲間のおかげで恍惚状態になってんのを確認してから
至近で剣魔双撃
遠距離ならオーラキャノン
骸骨に庇われてんならぽこちゃかパーティで骸骨もろとも攻撃だ!
後者2つは恍惚状態を無理に待たずに使う感じだな!
APが無くなっちまってんなら、ひたすらに近づいて海纏をするしかねぇな、うん。

そんで、立ち回りはルシリアを挟んで仲間が少ない方に居る様にするぜ
仲間↔︎ルシリア↔︎俺。みたいな感じの立ち回りだ。

コイツは呼び声対策。
俺1人だけ扇を食らうのがベスト、被弾する仲間が少なければ良し、俺1人だけ扇で狙われないならそれはそれで良し
最悪は俺も含めて大人数が扇を食らう事だ。

・その他
仲間との連携にゃ気をつける!
不測の事態にゃ臨機応変に!
ルシリアさんに長くなるかも知れねぇけど旦那さんが真っ当にそっちに行くまで待ってやってくれと伝える
アドリブ歓迎!

リプレイ

●声が、歌が、きこえるの
 それはとても、とても穏やかな海域だった。
「水底へ誘う声、か……」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は海の先を見つめながら、小さく目を細めた。深く、深く、海の底へと誘う亡霊はまだ姿を見せない。
 もしも、自分が幽霊になったら? どんな姿になるのか、どんなモノへとなるのか。興味はあれど、ゼフィラはまだ──少なくとも今は、幽霊になりたいとまでは思わない。生きている間にやるべきことはまだまだ沢山ある。簡単に死んでなどいられない。
(今は依頼の達成を第一に考えよう)
 舵をその両手でしっかりと握り、ゼフィラは船を進めていく。
「1人が寂しくて、愛した人に一緒にいてほしいって気持ち。それ自体は悪いものじゃないはずなのに、こういうことになっちゃうのね……」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)の沈痛な面持ちを浮かべて海を見遣る。それは『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)や『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)も同じことで。
(きっと、よほど依頼人さんを愛していたのね)
 なればこそ、亡霊となってしまったのだろう──ヴァレーリヤは海を見下ろし、その下に在るであろうルシリアの魂を想う。
「けれど、だからこそ……これ以上悲しい人を増やすわけにはいきません」
 クラリーチェは伏せていた瞳を上げ、船の進行方向を見つめた。
 船上結婚式での沈没事件。もしも、自分が水底に沈みながら意識を手放していたら。或いは、沈む誰かを助けられなかったら。それはどちらも──とても悲しくて。だからこそ止めなければいけないのだ。
 そろそろ件の事件が起こる辺りだ。ゼフィラが辺りを見回すが、未だ海面にも異常はなく。
(まったくもって穏やかな海域ですね……こんな所で船が沈むなんて想像できねーですが……)
 海は様々な表情を見せる。普段人々へ見せているこの穏やかさも、この海のすべてではないということだ。
 『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)が海へ飛び込めば、コポコポと水が耳元を流れていく音と共に細かな泡沫が彼女を包み込む。
(私が、操舵手だったら──)
 世界がマリナに贈ったささやかなそれは、ルシリアたちも助けてくれただろうか。たらればであっても、そう考えずにはいられない。
 細かな泡沫が上がっていって、澄んだ青がマリナの視界を埋めた。船に随伴するように泳いでいた『幸運と勇気』プラック・クラケーン(p3p006804)は、マリナの表情に何かを感じ取ったのだろう。視線を海底へと向けた。
「残酷な現実の悲しい話……だな。やるせねぇ気持ちになるぜ」
「ええ。……けれど、不憫ではありますが……いつまでも海を荒らされるのは困ります……」
 関係のない者まで巻き込み、その悲しみを広げないように。そして、ルシリア自身を救うために。

 ──不意に歌が耳元を掠めた。いいや、それは歌うかのような言葉。

 来たぞ、とプラックが海底から視線を外さず告げる。その暗闇から浮き上がってくるのは幾つもの、何人もの白骨化死体。その中にはボロボロになったウェディングドレスを纏う女の姿。それは半透明で──おそらく、あの女がルシリアだろう。
 カラカラ、カラカラと骨が鳴る。楽しげに。愉しげに。『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)がエコーロケーションで骸骨たちの位置を把握していく中、そこへルシリアの唇から零れ落ちる歌が重なって。
「綺麗な声じゃねーか、惚れる男がいるのも分かるぜ」
 エレキギターを手に『ラスト・スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)がニッと笑う。けれど、おイタはここまで。これ以上船を沈めさせるわけにも、依頼人を呼ばせるわけにもいかないのだ。
 そして何より依頼人──ルシリアの大切な人からの願いだから。
「とりあえず、まずは……
 ──1曲聴いてきな!」
 地獄めいた音は戦いの火蓋を切って落とす。ルシリアとイレギュラーズたちの間で壁の如く立ちはだかる骸骨たちの1体へ、マギ・インスティンクトで本能を覚醒させたマリナのグレイシャーバレットが被弾した。
「今日の私は生きとし生けるものの味方!! 沈まず鎮める者です!!」
 かかってきなさいと言うようにイリスの声が海へ響き渡る。骸骨の何体かがこちらへ向いたのがわかった。そこへ響き渡るはカタラァナの不思議な──理解してはいけないと、そうどこか思わせる歌。

 うたう ゆらめく なみのうた
 うたえ ゆりかご ゆらすうた
 われは わだつみ うみのかみ──

 カタラァナ自身の持つ溢れんばかりの魔力を乗せ、歌が敵を魅了し呪う。統率の微かな乱れが見えるそれを迂回するようにルシリアの背後へ回ったプラックは、彼女を追いかけるようにして海面に顔を出した。船を見遣れば、そこではヴァレーリヤたちが登ってきた骸骨たちと交戦している様子が見える。視線をルシリアへ戻したプラックはひと息に肉薄して行った。
「元の花嫁さんと、依頼人さんのためにも退治させてもらうぜ」
 これは最早、人の命を奪う悪霊だ。けれど──誰だって怪物になどなりたくないはずだから。
 プラックの剣脚が翻り、庇いに入った骸骨もろともルシリアへ叩きつけられる。その反対側にあった船、その上で海を見ていたクラリーチェは、しかし次々に上がってくる骸骨たちを見て表情に小さく険を浮かべた。
「ルシリアさんまでの道を開かねばなりませんね……」
 放たれし有毒ガスの霧が骸骨たちを包み込む。その隙にゼフィラは拳銃を構えると、ルシリアへ向かって牽制射撃を放った。庇いに入った骸骨の1体が、続けざまに放たれた2発目で頭蓋骨を割られ海へと沈む。この調子で、とゼフィラは再びルシリアへ銃口を向けて。
 ──唐突に、船体が揺れた。
 必死に縁へしがみつくイレギュラーズたち。見れば、1辺に骸骨たちが集まりしがみついて、傾かせているではないか。船とルシリアの間に陣取るイリスは更にこちらへ引きつけんと振り返るが、そこへ骸骨たちが引きずり込まんと邪魔をする。
「っ、私が戻ればギフトで──」
「大丈夫ですわ! こちらは私たちにお任せを!」
 海面ではっと船の方を向いたマリナ、その声を遮ったのはヴァレーリヤだ。片手で縁を掴んだまま、彼女は骸骨を見据えて口を開く。
「──主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に……!」
 天使の翼を思わせるメイスが突き出され、起こした衝撃波が骸骨をボロボロにしながら海へ沈める。クラリーチェのヴェノムクラウドが船体側面に張り付いた骸骨たちを一網打尽にし、船は少しずつ傾きを戻していった。
 しかし──響く短い悲鳴に2人ははっと振り返る。舵の前でルシリアを狙っていたゼフィラが、どこからか上がってきた骸骨たちに押しつぶされているではないか。
「一体どこから……!」
「それは後ですわよ! まずは助けないと!」
 衝撃波で海へと弾き飛ばし、黒の囀りが縛り呪う。それを遠目に見て、マリナは視線を巡らせた。骸骨の数は一向に減っている様子を見せない。実際には『減っているが、増えている』のだ。ルシリアの声か、存在か。それに釣られるように骸骨たちもやってくる。正直なところ、埒が明かない。
「これは、早期決着を狙った方がよいでごぜーましょーか……」
 そうして視線をルシリアへ向けた、その時だった。ぞっと悪寒がマリナの背を駆ける。自分が狙われたのではないけれど──死へ誘う声に、本能的な恐怖を感じたとでも言うのだろうか。
 ──おいで。おいで。こちらへおいで。
「プラックさん!」
 誰かから声が上がる。ルシリアの呼び声を正面で受けたプラックは──仲間へ向かってにっと笑みを浮かべて見せ、流水を纏った手足で亡霊へ格闘技を仕掛けた。
 ──どうして? どうして? 思い出せないの。だから、もう1度、水底へ。
「思い出せねーなら、思い切り歌ってやるぜ! 大事なのはフィーリング! 魂ってのは本当はもっと自由なんだぜ?」
 行きたい場所はどこだ。見たい景色は何だ。会いたい人は誰だ。魂が思うように望みを描け。思い出せ。
「それさえ思い出せたら、あんたは──」
 ──大好きな人と永遠に一緒に居られるよ、絶対にね。
 自信に溢れた物言いで、ヴィマラはエレキギターをかき鳴らす。その喉が出す絶叫にルシリアはいやいやをするように首を振った。そこへイリスのペネトレイト・バッシュが自らの引きつけた骸骨も、その先にいるルシリアも巻き込む。
(彼女は誰かが止めてあげないと。だから──)
「私たちが止めてあげます」
 イリスは傷だらけの体で、けれどまだ余裕はあると増える骸骨たちを引きつけにかかる。彼女を支援せんとヴァレーリヤのライフアクセラレーションがイリスの体力を回復させた。
「もうやめましょう、ルシリアさん……こんな事続けても、望むものは手に入りませんよ。貴女を待つ人がいます、私と一緒に帰りましょう」
 ダメ元でルシリアへ語り掛けるマリナ。彼女らの視線がかちあって、亡霊の唇から誘う言葉が零れ落ちる。目の前に靄がかかるような感覚に、一瞬だけ周りがわからなくなって──手元の発砲音にマリナはひゅっと息を吸い込んだ。
「……っ、すみません!」
「大丈夫だいじょーぶっ! 掠めただけさ!」
 問題ない、と笑ってみせるヴィマラは引き続きルシリアへとギターを構える。骸骨の邪魔が少ないのはイリスの引きつけと、何よりその歌で以って骸骨たちを魅了するカタラァナの尽力あってこそだろう。
 そんな彼女──カタラァナはルシリアの歌のような語り掛けに嬉しそうな笑みを浮かべて。
「ふふ、何だか嬉しいな。遠大な鎮魂曲のようで」
 だからこそ、自分も歌わないわけにはいかない。彼女が水底へ誘うように、カタラァナも夢見る呼び声を歌い続ける。
 しかし不意にルシリアの声が止んだ。忌々し気に睨みつける先は、船の上に佇むクラリーチェ。
「貴女の体は崩れても、貴方の魂は崩れない。……貴方の愛する人がいる限り。覚えている限り。ですから、また二人巡りあえる時まで……夢を見ましょう? 目を閉じて、幸せな夢を。
 ──ひとり、海の底に沈む日々はおしまいです」
 生ある者、いつかは還るべきところへ還るのだ。体は土へ。魂は空へ。それでも縁あって結ばれたのならば、2人はきっとどこかで、いつかまた会えるはずだから。
 狙いをクラリーチェへ定め、真っすぐ向かって行こうとするルシリア。けれどその背後から、剣脚によって放たれたオーラキャノンが迫って──その姿を、呑み込んだ。


●底へ。其処へ。此処へ。
 ──ほら、おいで。海は綺麗で、全てを包み込んでくれる。怖いものじゃないよ。
 明滅しながら底へ消え行こうとしていた魂をカタラァナが掬い上げる。それは不思議と視認できるもので、ふわりふわりと浮かぶ球体のようだった。
「沈む前にさ、最後に綺麗な思い出、作ってあげたくないかい?」
 ヴィマラが魂へ、ルシリアへそう告げる。消えてしまう前に、逝ってしまう前に。思い出したとき、涙が出るくらいのそれを。
「やるならワタシも、手伝ったげるからさ」
 笑顔を浮かべるヴィマラの声が、言葉がルシリアの心を震わせた。
「一緒に遺骨も回収して、あなたの大切な人にお渡ししましょー」
 探しますよ、とマリナが水底を見る。真っ暗で、骸骨たちが動かなくなった今となっては無音にも近い空間を。
 沈没事件の相次いだこの海域には死体と呼べるものが沢山で。ヴィマラが感知するそれを頼りに一同はルシリアの死体を探す。不意に見上げれば、遠くで水面が静かに揺らいでいた。
「──綺麗だよね。海は全てを包み込んでくれる。貴女は海が好き?」
 ルシリアに問いかけるカタラァナは「僕は好きだよ」と告げてみせて。同じように水面を見上げたヴィマラは「でも」口を開く。
「海は広いけど、結構孤独だよ。それでも寂しくならないのは、きっと帰る場所があるからさ」
 少なくともヴィマラはそう思う。其処に誰かがいること、居ても良い場所があること。それは独りでないということなのだろう、と。
 前を進んでいたプラックが不意にある方向をじっと見つめる。イリスはそれに気づくとどうしたの、と問いかけた。
「いや、あれがな……もしかして、と思ったんだが」
 指で示したのは船の残骸と、そこに積み重なる骸骨たち。──その中に、白い布が見えた。
「……ウェディングドレス……でごぜーますか?」
 かくりと首を傾げるマリナにヴィマラが「行ってみよーぜ!」と促して。
 こうして、ルシリアの遺骨は寂しい水底から掬い上げられたのだった。

 ディープシーの面々が次々に船へ上がってくる。ウェディングドレスであったそれが包んでいるのは、ルシリアの遺骨だ。
 ヴィマラの周りを漂うそれに、ヴァレーリヤはルシリアの魂だろうと当たりをつける。
「私たち、あの人の依頼を受けてここに来ましたの。貴女を置いて行く形になってしまったこと、悔やんでいるようでしたわ」
 嵐の中ではどうしようもなかったこと。これまでの日々が幸せだったこと。せめて魂だけでも救われるようにと依頼人の言葉を伝えれば、魂の声を聞いたヴィマラは「そっか」と笑ってみせて。
「同じ気持ちだってさ。……それじゃ、一緒に帰ろっか?」
「私が一緒なら絶対に沈みませんよ。必ずや貴女の求める場所へお連れします」
 任せてください、とマリナが帰りの舵を取る。船はゆっくりと、依頼人が待つ島へと向かい始めた。
 聖職者として、そして1人の人間として祈りを捧げるクラリーチェの傍ら、ヴァレーリヤもまた両手を胸の前で握る。
(主よ、どうかこの者を救い給え。その魂が、悲しみのままに朽ちることの無いように)
 願わくば──穏やかな眠りとならんことを。
「……長くなるかも知れねぇけど。旦那さんが真っ当にそっちに行くまで、待ってやってくれよ」
 プラックがそう告げると、魂はゆっくり明滅した。この様子なら、ルシリアはもう心配いらないだろうか。
 けれど、とイリスは小さく目を細める。
「彼女に関してはこれでいいとして……辛いのは依頼人さんの方よね」
 喪う悲しみは変わらない。せめて、時間が解決してくれるなら良いのだが。
 イリスの言葉にマリナは頷き、その瞳を見えてきた島へと向ける。その島で待っているであろう依頼人は、声が聞こえなくなったと気づいただろうか。
「……忘れろとは言いませんが、前を向いて生きてほしいもんでごぜーます」
 でないと、また呼ばれてしまうかもしれないから。

 彼らの去った後──波間にはゼフィランサスの花束が1つ、ゆらりゆらりと漂っていた。

成否

成功

MVP

カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 ルシリアは皆様のおかげで、安らかに眠ることができたことでしょう。

 美しい声を持つ貴女へ。不思議な、そしてどこか危険を思わせてしまうような声。魅了された死人は数知れず。今回のMVPをお贈り致します。
 スカベンジャーの貴女へ。ルシリアの魂を誘ったことにより、称号をお贈り致します。ご確認下さい。

 またのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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