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シナリオ詳細

はらっぱ広場のまんまるオオカミ
はらっぱ広場のまんまるオオカミ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●桜さらさら
 一人の少女が年も性別もバラバラな一団を先導していた。こういうことは慣れていないらしく緊張のあまり一歩踏み出すごとに、ぎしりと音が聞こえてきそうだ。
「……こ、ここがローレット、よ」
「ここが!」
「ここがローレット!!」
 7人の少年少女が入り口から中を覗き込んで驚愕に目を見張る。
「やあ、かわいい子達だね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は目を細め、おいでおいでとカウンターへと案内した。
「今日はどうしたのかな。依頼かな? 見学かな?」
「……い、依頼に、きた、の」
「依頼です依頼!」
「えっとね、魔物がでるの、まんまるオオカミ!」
「あの……僕たち、遠足に行こうと考えていて……」
「あたしたちの護衛をさせてあげるわ感謝しなさい!」
 てんでに声があがる。
 子どもたちの闊達さにつられてショウもゆるく笑った。
「はらっぱ広場をご存知かしら」
 入り口から長い影がさす。その主を見れば、シスター服をまとった妙齢の女だ。
「私は孤児院の院長、イザベラと申します。院生の子どもたちがさわがしくして申し訳ありません」
「いえいえマダム。ローレットはいつでもどなたにも開かれていますよ。ご用件は?」
「はい。私共は、はらっぱ広場へ遠足に行くつもりなのですが、最近まんまるオオカミなる魔物が現れるようになったそうなのです」
 その噂はショウも知っていた。
 まんまるオオカミは神出鬼没な魔物で、その生態は神秘のベールに包まれている。見た目は毛の生えすぎたポメラニアンそっくりで。ぶっちゃけ冒険者見習いが追い払えるほどの強さだ。食欲だけはたんまりあるが、基本的には臆病でかよわい。棍棒でぽこんと叩けばショックで死ぬ、小川にうっかり飛び込んで温度差で死ぬ、森へ逃げ込もうとして木に頭をぶつけて死ぬ。おわかりのようにおつむはかしこくない。ただあんまり増えすぎると邪魔なのは確かなので、たまに駆除依頼が出されたりする。
「まんまるオオカミですか。まー噂を聞く限りじゃ、あと3ヶ月くらい放っておいても駆除依頼はでなさそうな感じですけど。たしかに気をつけないと、子どもが噛まれて怪我をしたりお弁当を奪われたりするかもしれないですね」
「そうなんですミスター。私はそれが心配で……。それと、荷物持ちもお願いしたくて」
「荷物持ち、とは? レジャーシートかなにかですか?」
「いえ……それが……」
 イザベラは顔を赤らめ、もじもじしながら言った。ショウはイザベラの反応に眉をしかめる。
「同道するイレギュラーズのみなさんも楽しめるように一応配慮を……した結果……」
「結果?」
「まずサンドイッチ80人分」
「80人分」
「フライドチキン50人前、サラダが同じくらい」
「あわせて100人」
「ジュースが10本と、ワインが20本」
「計30本。食べ盛りのお子さんが多いのはわかりますが多すぎませんか?」
「いえほとんど私のでして」
「自分のかよ」
 どこに入るんだそのボディの、胸か? 胸なのか?
 ショウは軽いめまいを感じながら依頼書を作成した。

GMコメント

桜吹雪に包まれながらお弁当をつつきませんか。
まんまるオオカミは観光地の鹿とか猿みたいな感じです。
やつらに襲われたことがある人はきっとこの恐怖をわかってくれるはず!

さて、はらっぱ広場につくとさっそくまんまるオオカミがやってきます。
やつらの目当てはいい匂いのするお弁当です。
退治してもいいですし、餌付けに挑戦してみてもいいです。
その後はみんなでのんびりパーリーを、今年最後の桜とともに楽しんでください。

今回の依頼には下記NPCが同行します。
戦闘能力はまんまるオオカミからなら自衛できる程度です。

12才男ベネラー おどおど
10才男ユリック いばりんぼう
8才男ザス おちょうしもの
8才女ミョール みえっぱり
10才女リリコ 無口
5才女セレーデ さびしがりや
5才男ロロフォイ あまえんぼう
3才女チナナ ふてぶてしい
??院長イザベラ くいしんぼう

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • はらっぱ広場のまんまるオオカミ完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月30日 21時00分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
憤怒をほどいた者
清水 洸汰(p3p000845)
雲水不住
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
武器商人(p3p001107)
闇之雲
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる白狼
六車・焔珠(p3p002320)
祈祷鬼姫
辻岡 真(p3p004665)
旅人
ロク(p3p005176)
くそい縺ャ

リプレイ


 森のなかにある春の小道を子どもたちが手をつないで歩いている。
「前向いて元気だして歩いていこう♪ 上向いて勇気出して歩いていこう♪」
 子ども特有の澄んだ歌声が春霞の青空へ吸い込まれていく。彼らを守るようにイレギュラーズは円陣を組んでいた。先頭は『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)、バットを振り回し、子どもたちと一緒に歌を歌っている。
「なんか気分が明るくなる歌だな。今日はいっぱい歩いて、いっぱい遊んで、いっぱい食うぞー!」
「「おー!」」
 洸汰の叫びに子どもたちも応える。
(このコータ様とした事が、今年のお花見とお団子を逃しちまった……と思ったら、願ってもないチャンス! まんまるオオカミとやらにも会ってみたいしなー)
 洸汰が視線を上げると森の出口が見えた。
「そろそろ到着かな」
『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)が微笑む。
「そういえばミョールとリリコはお茶の練習をしているのかい?」
「もちろんよ、毎日おやつの時間にはみんなにお茶を振る舞ってるわ」
「……うん」
「それはうれしいね。メイドに興味を持ってくれるとさらに嬉しいのだけど。ふふ、今日は楽しい遠足になるように精一杯務めさせてもらうよ」
「メートヒェンのお茶が飲めるのかしら! 遠足に来たかいがあるというものだわ」
「……うれしい」
「そう言われると悪い気はしないね」
 鞄の中のティーセットを思いながらメートヒェンは鼻歌を歌う。
 その向かいで『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)はベネラーの話し相手になっていた。
「……ベネラーさんも…こうやって…ローレットまで来れるようになったんだね…嬉しいな…」
「あ、はい。リリコがどうしてもって言うし、あのおとなしいリリコが行きたいっていうんだから、年長の僕が行かないというのもあれかなって……」
 それに、グレイルさんに会えるかもって思ったから。そう、くすぐったそうにベネラーは付け加えた。
「……依頼が無い時でも…たまには…覗きに来てもいいんじゃないかな…? ……依頼の報告書を読むだけでも…結構面白いと思うよ…? ……酒場スペースもあるし…もしばったり会うことがあれば…ジュースくらいは奢るから…」
 考え考え、言葉を選ぶように離すのはこの白狼の癖だ。ベネラーはうんうんとうなずきながらうれしげにグレイルの話を聞いている。
「ほんとはまだちょっと一人で外へ出るのは怖いんです。でも、ローレットへの道も覚えたし、グレイルさんがいるかもしれないって思えたら、勇気が出てきました……」
 ベネラーは照れくさそうに笑ってグレイルを見上げた。
(へえ、イレギュラーズと友だちになってる子もいるのね。私にもできるかしら?)
 子どもたちの列の中央あたりを歩いていた『祈祷鬼姫』六車・焔珠(p3p002320)は、あらためて子どもたちをぐるりと見回した。セレーデと手をつないで歩くロロフォイと目があう。
「こんにちは?」
 ロロフォイが首を傾げながら挨拶した。
「そうね、最初は挨拶からよね。ふふふ、こんにちは」
 焔珠が微笑み返す。
「はらっぱ広場までけっこうあるけれど、よく歩くわね。えらいわ」
「えへへ、褒められちゃった。うれしいー」
 ロロフォイの顔が赤くなる。
(あら、かわいい)
 赤面する子どもというのはどうしてこんなにかわいいのだろう。焔珠の心にぐんとやる気が湧いてきた。
「春になってからはお出かけ日和が続いているし、いい遠足になりそうだわ。まんまるオオカミの事はよく分からないけれど、危ない事にならないよう護衛を頑張るわね」
「頼りにしてるね、おねえさんー」
「ええ、どんどん頼ってちょうだい。今日は一日よろしくね。楽しく過ごしましょう!」
 後方を歩いていたチナナが『旅人』辻岡 真(p3p004665)のリュックを軽く叩く。リュックは歩く度に兎耳がぴょこぴょこ揺れる黒兎のリュックだ。どちらかというと小ぶりで、特に何かを詰めている印象もない。チナナは不思議そうな顔をして真を見上げた。
「このリュックにあのお弁当が全部入ってるでちか」
「そうだよ。荷物持ちなら俺に任せて! 俺のギフトなんだ」
「どんなギフトでちか?」
「えーと、簡単に言うと異空間にアイテムを収納する能力だね。代わりに出し入れは俺にしかできなくなるんだけど、便利なギフトだろ」
「おにーさんのおかげで重い荷物を持って歩かなくてすむでち。ありがとうでち」
「どういたしまして。チナナちゃんかわいいね。俺はかわいいものが大好きなんだ。あ、変な意味じゃないよ? 純粋にかわいいものが好きなんだ。ほら、この黒兎のリュックとかすてきだと思わない?」
「とってもかわいいでち。帰ったらセレーデに頼んで作ってもらいたいくらいでち」
「そしたら俺たちおそろいだね」
 にへっと笑う二人。ラブラドールレトリバーのわんころと、野ロリババアのノギクが応えるように鳴く。声は老婆。
 そのセレーデは、隣を歩く『クソ犬』ロク(p3p005176)の背をさすっていた。ロクは下を向いてブツブツつぶやいている。
「鹿……鹿に襲われる夢を見たんだ……かわいいナリをしたあいつらの本性は悪魔なんだよ……わたしを押し倒し……せんべいを奪い去る……うっ、頭が! 夢、これは夢!」
「ロクさん、しっかりして。それはゆめよ。ただのゆめ」
「そうだね、セレーデちゃん。……ぜえぜえ、まだ悪夢の余韻が……」
「ロクさん、だいじょうぶよ。セレーデがついてるからね。ほら、せなかなでなでするよ。おちつくでしょ?」
「うう、ありがとうセレーデちゃん……はあ、まんまるオオカミか、なんだか嫌な予感がするなあ……」
 セレーデが風に揺れる水色のエプロンをぎゅっと締め直した。
「だいじょうぶよ。いざとなったらわたしがロクさんをまもるわ」
「えっ、そこまでしなくていいよ! わたしは元気だよ! ほらほら!」
 後ろ足で立って丈夫さをアピールするロク。セレーデは心配そうにロクの顔を覗き込んだ。ロクはそんなセレーデの後ろへ回り、背中を押して前へ行かせようとする。
 最後尾では馬車がごとごと揺れていた。
 荷台に座るのはシスターイザベラと、『憤怒をほどいた者』ウェール=ナイトボート(p3p000561)。
「このポポちゃんもオオカミなんですの?」
「ポポー」
「ああ、そうだ。大事な家族だ。ちなみに馬のほうは玄斗という」
「額の星がきりりとしたいい馬ですわ」
「ありがとう。俺も気に入っているんだ」
 と、そこへ小さな影が2つ。
 いばりんぼうのユリックとおちょうしもののザスだ。
「ウェールのおいちゃん、馬車にのーせーてー」
「のーせーてー」
「行きぐらい歩きなさいな、ふたりとも」
「シスターだって乗ってるじゃん」
「ははは、子どもは大人のマネをしたがるものだな。いいだろう、特別に乗せてあげよう」
「「やったー!」」
 さっそく荷馬車によじ登ったふたりは奥で石垣を見つけた。
「これ何?」
「ねえねえ、何これ?」
「ピザを焼くための石窯だ。崩れると危ないから触らないように」
「すげー! あ、クッションだ!」
「毛布まである!」
「「って……うわっ!」」
 ふたりの悲鳴に驚いてウェールとシスターが振り返ると、石窯の陰にソレが居た。
『闇之雲』武器商人(p3p001107)。ユリックとザスに見つかったソレは深海魚のようにゆるりと首をめぐらせ、にんまりと微笑んだ。
「遠足だねえ……ヒヒヒ……。いいとも、"キミたちがそれを望むなら"、我(アタシ)はキミたちの供をしよう」
「びっくりした。武器商人のにーちゃんも来てたんだな」
「え、ねーちゃんじゃないの? オレねーちゃんだと思ってた」
「そんなわけないだろザス。にーちゃんだって」
「……ヒヒヒ……それは誰にもわからない……。まあそんなことは、この青空の前に些細なこと……今日を楽しむなら深追いは禁物だよ……」
 武器商人には穏やかながらも有無を言わさぬ迫力があった。好奇心の塊であるユリックとザスを黙らせるほどには。
「森を抜けるぞー!」
 洸汰の声が響く。さあ、はらっぱ広場だ。


 風に舞う桜吹雪。
 森を抜けた先にぽっかりと開けたクローバーの絨毯。それがはらっぱ広場だ。
「いつか息子と行く時の為に全力で予習と満喫せねば」
 馬車を止めたウェールが緑の香りを胸いっぱいに吸い込む。と、茂みが揺れ、わらわらと茶色い毛玉が現れた。
「「まんまるオオカミだ!」」
 ユリックとザスとミョールが前に出て、魔物を触ろうとする。ウェールは馬車から飛び降り、彼らの首根っこを掴んで持ち上げた。
「待て待て。あんなナリだが危険かもしれない。ひとまず俺たちにまかせてほしい」
「「えー」」
「いい子にしてたら俺の自慢のシュトゥルーデルと箱パンをやるぞ」
「「はーい」」
 食べ物を質にするとおとなしくなるところは、ポポや玄斗と同じかもしれない。などとウェールは苦笑した。
「ううー」
「がうがうっ」
 まんまるオオカミたち、その数なんと16匹。丸い。とにかく丸い。茶色のまんまる毛玉から四本の足がちんまり出ていて、それをちたぱたと一生懸命動かして走り寄ってくる。たいしてすばやくはない。その気になったら素手で捕まえられそうだ。
 まんまるオオカミたちは、まっすぐに突進してきて、まず洸汰へ襲いかかった。正確には、洸汰の連れているメカパカおのPAC-Automaticだ。その背中には洸汰が自分用にと用意した弁当の山がある。
「気をつけろ洸汰! やつらの狙いは唐揚げ弁当…だ…」
 注意をひくつもりだったメートヒェンの声がしりすぼみに終わる。まんまるオオカミがいくら飛び跳ねてもメカパカダクラの背中まで届かなかったのだ。
「わかったわかった。いま弁当出してやるから! なんか見ててかわいそうになってくるなー。やっぱオオカミだし、肉が好きなんかなー? いちおー、しょっぺぇのと甘いのは避けておいたけどー」
「キューン……」
「よしよし。ほら、唐揚げだぞー」
「わうっ!」
 十数匹のもふもふが唐揚げを巡って暴れだした。仲間に蹴り出されて目を回しているのすらいる。
「なんか見ればみるほど哀れな魔物だなー。なんで生き延びてるんだこれ……」
 その生態は神秘のベールに包まれているのだった。とにかく唐揚げ一個で彼らの胃が収まるはずもなく、洸汰の弁当はどんどん量を減らしていく。
「わわっ。支援求む支援求む! オレの弁当が食い尽くされちまうよー!」
「わかったわ!」
「……一人分だけど…足りるかな…」
「子どもたちの所まで来ないでよね!」
 焔珠とベネラー、ロクが自分の弁当を差し出す。あっという間にカラになった。
「可愛い……くないっ!! 外見は凄く可愛いのに食欲が可愛くないよ!?!」
 3mの棒をかまえ、子どもたちの護衛に回っていた真が冷や汗を垂らす。ギフトがこんなに役に立つなんて思わなかった。普通に弁当を抱えていたら、まんまるオオカミの軍勢の前に砂の城のように溶けて消えてしまったことだろう。
「ヒヒ、生きるのに必死な姿は見てて愉快だねえ。とはいえ、弁当を食べ尽くしたら次は子どもたちが襲われるかもしれないね? ……我(アタシ)にも優先順位はある」
 次の弁当はどこだと狂乱の嵐と化したまんまるオオカミたちが、武器商人へ向かっていく。動物疎通で彼らへ語りかけたのだ。おいで、と。全身をもふもふにされながら、武器商人は立ち尽くした。
「ほお、これはなかなか。悪くない感触だねえ……。さておき、それじゃ威嚇術を放っておくれ」
「武器商人、あなたいますごく、まんまるオオカミまみれよ。もしかしたら誤爆しちゃうかも」
「なぁに、我(アタシ)のことなら心配ご無用さ」
「……怪我しないように…気をつけて打つよ…」
 焔珠とベネラーが利き手を宙へ掲げる。
「三日月の 張り詰めし弦 引き絞り 悪しきモノ撃つ 破邪の月光」
「……らいらいらい…ゆすぺーた…あらむ…さてぃも…おるぐるぅ……」
 それぞれに詠唱を完成させ、二人の手から威嚇の衝撃が走り出た。


「……ふーん…不殺のスキルを使うと…まんまるオオカミは…おとなしくなるんだね…」
「さしずめ上下関係を叩きこんだってところかしら。武器商人、あなたこれを狙っていたの?」
「……ヒヒ、さてねえ」
 ひっくりかえってお腹を見せるまんまるオオカミの腹をなでながら、三人は視線を交わしあった。
「おーい、お昼の準備ができたぞ。みんなで食べよう!」
 メートヒェンが機嫌よく叫ぶ。レジャーシートの上には、春爛漫とばかりにお弁当が広げられていた。
「今日のお茶はピーチティーにしてみたよ」
「やあ、そいつはありがたい」
 ウェールがしっぽを振ってティーカップを受け取る。
 ミョールが茶を一口すすり、感嘆の吐息を漏らす。
「どうしてこんなに美味しくお茶をいれられるのかしら。待って、今は言わなくていいわ、いつかあなたのところまでたどり着いてみせるから」
「受けて立つとも」
 メートヒェンがミョールに笑いかける。
「ウェールのおいちゃん、約束のお弁当ちょーだい」
「ちょーだいな」
 ユリックとザスがサンドイッチとフライドチキンを持ってやってきた。
「よし、そいつと交換だ」
 ウェールは梨が入った黒いシュトゥルーデルと春の味覚を詰め込んだ箱パンを惜しげもなく振る舞った。ウェールのお弁当を食べたやんちゃ二人は目を丸くする。それこそまんまるオオカミみたいな勢いで平らげた。
「もっと!」
「気に入ったかい。他の子にも分けてあげるんだよ」
「「はーい」」
 そのとなりで、コヨーテのロクはセレーデに全身を撫でられて気持ちよさそうにうつぶせていた。眼の前にはサンドイッチとフライドチキンの山。サラダが彩りを添えている。お弁当を並べたのは真だ。いいセンスをしていると、ロクは思った。
「おいしそうだけど、すごい量だよね。これ全部シスターが食べるの?」
「そうよ」
「そうよってさらっと言ったね。孤児院の食費が心配だなァ。そのシスターはどこにいるの?」
 ロクは顔をあげて、見てしまった。ワインをあらかたカラにしていい感じに赤くなったシスターを。
「へべれけ、へべれけ、歌います。まんぷく、まんぷく、踊ります。あそーれイッキイッキイッキイッキ!」
「ダメな大人の見本がいる!」
「あのね、ふだんは、まじめなのよ。ほんとうよ」
「いや、ダメな大人でしょ。というか、飲みすぎじゃない? 体が心配だわ」
 セレーデのフォローをばっさり切り捨てる焔珠。シスターを見ていた真もまた呆然としていた。
「シスター? その細い体でどれだけ食べられるの? というか、真の敵はまんまるオオカミじゃなくてシスターな気がしてきたよ、俺」
「右手にワイン、左手にサンドイッチ、わたくし今無敵ですわ!」
 周りのことをパーペキにシカトかまして食の楽しみに心行くまでふけるシスター。
「ちょっと呆れちゃうけど、あそこまで美味しそうに食べてるのを見ると、私もサンドイッチを食べたくなってきちゃった。ロロフォイくん、この卵焼きと交換してくれない?」
「あ、俺も俺も。サンドイッチ食べてみたい」
「いいよー。サンドイッチはね、みんなで作るんだー。だからどれも具が違ってて、味が違うんだー。焔珠おねえちゃんと真おにいちゃんが当たりを引きますようにー」
「……はずれもあるのかい?」
「はずれはすごく辛かったり水っぽかったりするのー」
「それはやぁね」
 真剣な目をしてサンドイッチの山と格闘しだした焔珠と真。向かいで仲良く座っているのは、ベネラーとグレイルだ。幻想スイーツマップを広げてあれこれと話し合っている。
「グレイルさんって甘いものがお好きなんですね……」
「……ん…依頼のない時は…遠出したりする……。……今日も…武器商人のスイーツが…楽しみだったり……」
「武器商人さんが……?」
「……いま…配って…歩いてる……」
 ふらりと影が差し、武器商人がやってきた。
「ジュエリー・イースター・プリンはいらんかね。よぉく焼いた固めのプリンと舌の上で潰れるような果物とのマリアージュだよ」
 受け取ったそれはまさに宝石と呼ぶにふさわしい出来だった。桃にオレンジ、メロン、バナナ、キウイ、そしてさくらんぼ。その中心に据えられた王者のようなプリン。匙を入れるのがもったいなくなるような逸品だ。
 武器商人は一通りそれを配るとにぎわいから少し離れた場所へ座った。隣へリリコがやってきて、ぺたんと座る。リリコは武器商人の影をじっと見つめていた。風もないのにその影がゆらゆら揺れる。リリコはそろりと影に手を伸ばした。
「よしたほうがいいよぉ」
 武器商人に言われて、リリコはおとなしく手を引いた。
「こんなに青空でぎゅうぎゅうづめなのに、まだ出てこようとして泣いて鳴いて啼いているんだ。取り込まれてしまうから触るのはおよし」
「……うん」
 ざあとひときわ強い風が吹いた。リボンでくくられたリリコの髪が揺れる。
 ロクがぴょんと身を起こした。
「さあ、腹ごなしにわたしと遊ぼう! ガオー! わたしはまんまるオオカミ! みんなのお弁当を食べちゃうよ! ほら、はやく倒さないと!」
 ロクはサンドイッチの山からひとつ咥えて走り出す。そのうしろを子供たちの歓声が追いかけていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

春の遠足、いかがでしたでしょうか。孤児院の子どもたちもまんまるオオカミも大満足なようです。また機会がありましたらお越しください。

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