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シナリオ詳細

R&C 北方プラント制圧作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●小隊規模作戦
『初富から各戦術単位へ。間もなく目標地点へ到着。
 六実隊は攻撃を仕掛けながら誘導。十倉隊と合流後目標E3を叩け。
 その間に敵個体数を計測する』
『『了解』』
 タクティカルゴーグルを装着した黒い軍服のスカイウェザー。ネームプレートには初富と刻まれている。
 初富は眼下の荒野を軍馬に乗って走る味方の分隊を確認した。
 それぞれのリーダーから名付けた六実隊および十倉隊は、はるか前方に位置するねじれた円錐状の建造物へと向かっていた。
 通称『プラント』。
 タケノコのように地面から突き出たこの建造物は、見たとおり『突き出てて来た』ものである。
 すこしばかり前、突如として地中から現われたこの建造物は、『デミウェポン』呼ばれる古代の自律戦闘兵器を大量に排出。近隣の村々で虐殺を行なった。
 間もなく鉄帝の軍隊が派遣され戦闘によって退けたが、プラントではデミウェポンの修理や製造を行なっているらしく攻撃が途切れることはなかった。
 現状ここはコーサイド戦線と名付けられ、鉄帝軍から一個小隊が派遣され抵抗を行なっていた。
 予算や情勢その他政治的な様々な理由から人員をこれ以上回すことが出来ず、彼らに出来ていたのはデミウェポンがこれ以上増えないように定期的に防衛し続けることだけであった。
 ――が、それはもはや過去の話。

 プラントから出撃してきた1体のデミウェポン。
 六実隊および十倉隊はそれぞれ準備を整え先頭の個体へ攻撃を開始。
 アサルトライフルを装備した5人組の歩兵六実隊が射撃を加えながらスライドするように横移動。追いつこうとしたデミウェポンの背後へ回り込むように取り囲み、高周波軍刀を抜いた十倉と重火器を備えたその部下たちが一斉に攻撃。
 更に急降下によって爆撃に加わった初富隊によって瞬く間にデミウェポンを撃破していく。
 が、それは敵部隊の足止めに過ぎない。
 すぐさまプラントからは8体ものデミウェポンが出撃した。
「数で押し切るつもりらしいぜ」
「奇遇だな。それはこっちもだ」
 初富はくるりと振り返り、こめかみに指を当てた。
 ハイテレパスによって通信を入れてくる。
『学兵および同志イレギュラーズ、出番だ。力を発揮して貰うぞ』

●戦術単位
「この部隊では5~10人程度のチームを分隊、これを2~4個合わせて小隊と呼ぶわ。
 このコーサイド部隊は各分隊を訓練された少人数で回しているから5人分隊を組み、それが3つ合わさり一個小隊として配置されているの。
 それが民間居住エリアに被害を出さないよう防衛ラインを敷けるギリギリの規模だったのね。
 けれどここに昨今学兵が投入されることになったの。
 八分隊でおよそ二個小隊ってところね。小規模ではあるけど、中隊規模の戦力に拡充されたのよ。
 けれど学兵たちは前線の兵士たちと違って実戦経験がそれほど高くない。
 だからより多く現場を見てきたイレギュラーズを各分隊長に任命して、『R&C(ローレット&コーサイド)中隊』を結成することになったのよ。で、これがその依頼書」
 後衛テントの長机に依頼書を置く『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)。
 専門用語が連続したことで難解さを感じたのか、苦笑して小さく首を振った。
「要するに、みんなには学兵を4人ずつつけるから、リーダーとして戦って貰いたいってことよ」

 広がる作戦図。
 おおまかな地図には円錐型のマークがあり、これを『プラント』と呼んだ。
「今回の作戦目標はこのプラントの制圧と破壊。
 そのうえでやるべきことは、プラントから出撃してくる敵兵力の撃滅よ。
 敵兵力のデータはバッチリとれてるから心配しないで」
 地図に置かれた八つの駒。
 それぞれ同一。首の無い大男のフォルムをしていた。
「デミウェポン、タイプ・トランタ。
 人間を抹殺することだけに特化した古代の自律戦闘兵器よ。うっかり出土してうっかり起動して、そして辺りを巻き込んで大騒ぎを起こそう……としてるってわけね」
 プルーの言い方にはジョークのニュアンスがあった。
 というのも、コーサイド部隊のはたらきにより鉄帝はこの脅威を脅威とも感じていないからだ。大騒ぎにはなっていない。平和は守られているのだ。
 そして勿論、敗北すれば大騒ぎになり、鉄帝の平和は傷付けられる。
「敵部隊はプラントを守るために展開するはずよ。
 こちらはコーサイドのチームと協力しながらこの戦力を撃滅。
 確実にプラントを破壊しなくてはならないわ。
 皆、頑張ってね」

GMコメント

 鉄帝に存在するがちめの軍隊、コーサイド。
 学兵ルートとコーサイドルートが合流した『R&Cルート』であります。
 このシナリオでは学兵を率いて戦う分隊長としての役割を担うことになります。

【編成パート】
 PCそれぞれが分隊長となり、学兵の中から自分の分隊メンバーを編成します。
 『編成方針』と『指揮コマンド』を決定し、戦いに備えてください。

●編成方針
 プレイングには学兵にどんな装備にさせるかを書いてみてください。
 細かく指示を書きすぎると戦術その他がおろそかになるので、100~200字くらいを目安にしてみましょう。
 『全員ヒーラー縛り』『防御に特化したタンクチーム』『火力特化砲撃部隊』といった具合です。困ったら『バランス型』と書いておけばハズレはありません。
 極端過ぎるオーダーでなければ大体応えられる筈です。

 ※過去に学兵を指揮した経験がある場合、当時のメンバーをそのまま呼び出すことができます。その際装備方針を変更することも可能です。

●指揮コマンド
 兵は自律的に戦闘行動をとるためスキルその他の細かい使用指示は必要ありませんし、プレイング容量から見ても無理があります。
 その代わりとして以下のコマンドをプレイングで指定して下さい。
 『統率集中』:指示を送ることに集中します。PCの各種判定が大きく低下しますが、その分兵各自に大きなボーナスがかかります。兵への指示を沢山書きたい人向け。
 『率先戦闘』:PCが率先して戦い、兵たちはそのフォローに徹します。PCの判定にボーナスがかかります。自力で戦うの好きな人向け。
 『臨機応変』:兵に指示を出しつつ要所要所で率先する、統率と率先の中間にあたるコマンド。ダイス目はそのまま。指示を沢山出したいが自分でも沢山動きたい人向け。

【戦闘パート】
●目標
 エネミー全個体の破壊

●シチュエーションデータ
 荒野。敵プラント周辺。
 鉄条網による高さ2メートルほどのバリケードが扇状に敷かれている。
 敵個体はこれを軽々と飛び越えることが可能。

●エネミーデータ
・アトランタ×8
 デミウェポン・アトランタ型。通称首無し。パワフルな格闘能力と腕を砲台化させて放つ搭載兵器スターキャノンが特徴。
 1体につき2~3部隊(約10人前後)を投入するのが基本とされている。しかし連携をはかれば少数でも撃破が可能という実績がある。
 統率能力は低く、知能の低いモンスターと同程度とみていい。
・パワフルな格闘(近列):相手を掴んで投げたり殴り飛ばしたり振り回したりといった力の使い方が可能。
・スターキャノン青(遠単):砲台化した腕で放つ射撃。光の弾を撃つ。
・スターキャノン赤(遠範):同じく砲台化した腕での射撃。空中で炸裂する弾を撃つ。

●特殊施設
・プラント
 デミウェポンを修理するための前衛拠点施設。
 敵がピットインすることで1ターンにつき20~50%のHP回復と50%確率のBS除去を行なう。一度に8体まで可能。PCたちは使用不可。
 戦闘中に破壊する場合一個分隊で100ターン(十個分隊で10ターン)、を要する。
 この周辺で戦闘をされると非常に面倒なので、引きはがすか回り込んで邪魔するかといった対応が不可欠。

●味方戦力
 元々防衛にあたっていたコーサイド部隊の面々。
 各分隊で5人前後。若干の入れ替わりはあるがリーダーは一緒。

・初富隊
 ハイテレパスによる指示や感覚拡張スキルによる索敵、全部隊の統率などの中心的能力をメインにすえた部隊。戦闘能力は勿論あるが、どちらかというと非戦向き。

・六実隊
 平均オブ平均。よく言えばバランスが良く、悪く言えば器用貧乏。他の部隊と連携する際にはきわめて重要な役割を果たす。
 どのレンジにも対応でき大体のことはこなせる。

・十倉隊
 部下たちが超レンジからのスナイプ集中砲火を浴びせ、リーダーの十倉が至近距離での強襲をかけるという火力に寄ったチーム。
 部隊のメイン火力でもある。

【オマケ解説】
 このシナリオは過去2回のシナリオにおいてイレギュラーズたちが残した大いなる実績に基づいています。

全軍銃帯、コーサイドマーチ
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1170
QR学兵戦記 ローレット・インストラクターズ
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1331

【アドリブ度(高)】
 兵隊のデザインや戦術行動などアドリブを要する箇所が多数存在するため、このシナリオのアドリブ度は高く設定されています。
 それでもアドリブされると困るなという方はプレイングに『アドリブなし』や『アドリブNG』とお書きくだされば直接的な描写をカットできます。
 逆に『アドリブ歓迎』と書いていただけたなら色々腕をふるいます。

  • R&C 北方プラント制圧作戦完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月27日 01時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
メル・ラーテ(p3p004228)
火砲少女
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)
鋼鉄の村娘

リプレイ

●R&C大隊
 移動拠点グラング。魔術エンジンとキャラピラによって移動する大型装甲車の中ではおよそ60人近い兵士たちがそれぞれ整列していた。
「壮観だな。学兵たちがこれだけの規模で作戦を行なえるようになったとは。お前たちには頭が上がらないな、ラーテ」
「お互い様だろ初富の旦那」
 『火砲少女』メル・ラーテ(p3p004228)は自分の招集した部隊を集めると、相手の肩に腕を回して頭を拳でぐりぐりとやった。
「おいグロースター、あれからしっかり成長したんだろうな」
「姐さん痛い痛い」
「実戦で見てやるからな。スローン、ケンジトン、あとヴィクトリア!」
「数ヶ月ぼうっとしてたワケじゃないんすよ。撃墜数だってこの通り」
 胸のタクティカルアーマーに描かれた五つの星マークを指さすスローン。
 彼らの装備は歩兵とは思えないような大砲でできていた。
 迫撃砲や機関銃、対物ライフルといった戦車でも相手にするような極端な武装である。
 一方でスマートにPDW(個人防衛火器)と防弾ボディスーツでまとめた部隊が『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)の前に整列している。
 名簿をパタンと閉じる利香。
「右から……五花、堀江、飛田、松島ですね。皆さんには私の援護射撃をしてもらいます。他には進軍の邪魔になるバリケードの破壊諸々ですね。
 頑張った人には後でご褒美ですよ? いひひ!」
「マジですかお姉様!」
「ウヒョウテンション上がってきたぁ」
「待って私シャワー浴びてない。堀江ちゃんシャンプー貸して」
「勝負下着にかえてきていいですか?」
「何ですかこの子ら圧がすごい」
 目の色を変えて前のめりになる学兵たちに半歩さがる利香。
 『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)はあいつも苦労すんなあという顔で自分の部隊へと振り返った。
「伯方、生口、岩城、弓削。お前らも元気にやってたか?」
「うっス、リーダー!」
 以前に面倒を見た四人の学兵が武器を掲げてみせる。
 前に増して装備が真っ赤だが、クローやハンマーといったマグナにモロ影響を受けた装備に統一されている事実には、何か責任みたいなものを感じざるをえない。
「オレらの役目はデミウェポンもプラントもぶっ潰して、そして生きて帰ることだ、忘れんなよ?」
「「うっす!!」」
 なるほどこの感じか、とマグナの分隊長っぷりを観察していた『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
 自分の隊へ振り返ると、四人の学兵は顔をつきあわせてインディアンポーカーをしていた。
「……何やってるんデス?」
「あっセンパイ。これ勝ったら焼き肉なんすよ」
「暴れ牛おごりなんすよ」
「それ嬉しいんデスかね……」
 名簿に目をおとすと、それぞれ顔写真と共に『川崎、日立、大同、共英』という名前がふってあった。
「しゃあああおらあああ! 勝っしゃあおらあ!」
 カードを床にたたき付けて立ち上がる川崎。
「センパイ! 準備できました!」
「それ準備だったんデスか……」
 コホンと咳払いすると、リュカシスは靴の踵を揃えて見せた。
 リュカシスと川崎たちは同じ鉄帝の学生だが、リュカシスは将校課程に進む軍学校。川崎たちはお金かからない代わりに即兵隊入りという軍学校。コースがそもそも違う。だがリュカシスにとっていい経験になるのは間違いないだろう。
 川崎たちはそれぞれ普段から役割が決まっているようで。共英を衛生兵にしたガチガチの前衛型。両腕を覆うような黒鉄のバスターアームと石鎧を装着していた。
「センパイ。出撃前に何か一言」
 と、いわれ。リュカシスはふと学校の朝礼を思い出した。
「学兵の皆さんと共に戦えて光栄です。生きて敵を倒しましょう。あなた方の筋肉は、鍛錬は、裏切らない! デス!」

 作戦概要を読み直す『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)。
「デミウェポンのプラントですか……是非この手で焼いてみたいのです。皆さんはどうです?」
 クーアから話を振られて、四人の学兵たちはギラリとした目を向けた。
 ファイヤパターンの模様が入った僧服姿の妙心。
 同じ模様の武者鎧を纏った大徳。
 一方で軽い皮鎧に刀をさした清水と寂光。名簿を見る限りそういう名前だったが……。
「火をつければいいので?」
「航空燃料でも持って行きますか」
「C4何個あれば足りますかね」
「まて、隊長は焼き討ちをご所望だ。壊さず焼け」
 すごくストイックに返してきた。
「やる気があるようでなによりなのです」
「主よ、天の王よ」
「「この炎をもて彼らの罪を許し」」
「「その魂に安息を」」
「「どうか我らを」」
「「憐れみ給え!!」」
 その横ではクラースナヤ・ズヴェズダー革命派の決起集会……もとい『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)とその部隊員が何かに祈りを捧げていた。
 彼らの名前はオルテ、オルヴィエート、コルトーネ、アレッツォ。すっかりヴァレーリヤの思想で真っ赤に染まったようで同じようなメイスを握っている。
 さすがはマヤコフスカヤさんだという顔(?)で眺める『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)と、その部隊員であるハワード、ジャーヴィス、モース、ロヨラの四名。
 オリーブをはじめ全員が全身甲冑に身を包んでいるので黙っているとなんだか謎の威圧感があった。
「同じ学兵といえど随分経路が変わるものですね……」
 『鋼鉄の村娘』アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)は軍刀に研ぎ石をかけながら、自分の部隊員へと振り返った。
「しかし……コーサイド戦線が困窮しているとは聞いていましたが、学兵の投入を要する程とは」
 鉄帝は軍事国家である反面、軍事的側面が多く出過ぎるという欠点を抱える。戦争は外交渉の一手段という言葉があるが、鉄帝はその一手段に寄りすぎているとも言えた。対幻想、対天義。恐らくラサの各部族ともそれなりに競り合っている筈で……こうした非対人戦線には手が足りなくなるのも道理であった。
 コンバットスーツを装着し、AKタイプのマジックライフルを担いだ学兵が苦笑気味に頷く。
「軍隊は戦ってこそ軍隊です。戦って死ねと言われてないだけ幸せですよ」
 そう応えたのはサブリーダーのターナムだった。彼を筆頭にスタンフォード、ラベンズコート、ハマースミスの四人がアニーヤの隊員となる。
「責任重大ですが……できることをできるだけ」
「はい。行きましょう、隊長!」
 館内に伝達管を通じて響くアナウンス。
『これより戦闘エリアに入ります。各隊戦闘準備――!!』

●出撃
 ごうんごうんという何かの重い振動音。
 巨大なお菓子箱のように開くハッチ。
 ライトグリーンに伸びるビームラインにそって、出撃フックに腰掛けた各分隊が移動拠点グラングより発射されていく。
 いち早く上空に舞い上がった初富隊は戦域の情報を素早く収集、分析し、ハイテレパスによる相互通信伝達を開始した。
「砲撃隊、ファイア!」
 ヴァレーリヤは初撃に『太陽が燃える夜』の祈りを唱えると、炎のラインを敵バリケードへと浴びせかける。
 着地とブレーキ。勢いを殺さぬまま隊員を連れて走り出すヴァレーリヤ。
 こちらの接近に気づいた首無しシルエットの怪物が一体、特出して突っ込んでくる。と同時に初富からの通信が入った。
『デミウェポン・タイプ・アトランタ。一体特出。これを集中攻撃対象アルファとする。各員は左右に展開、敵増援を阻み遅滞戦闘に努めよ。各個撃破作戦を開始する』
「了解――オルテは私と回復支援。オルヴィエート、コルトーネ、アレッツォは目標ガンマを三方向から囲んで足止めしますわよ!」
 素早く展開を始め、アトランタを取り囲むヴァレーリヤ隊。
 一方で目標アルファへまっすぐに突っ込んでいく利香。
「利香隊、援護射撃開始。退路を断ちますよ!」
「「はいお姉様!」」
 扇状に広がり目標めがけて弾幕をはる隊員の援護を受けて、利香はアトランタへ突撃。
 ソードモードにした腕の攻撃を剣で受け、脇の下を滑り抜けるように後方へ回る。
 扇の囲いを広くする利香隊の間を抜けるにして、クーア隊が目標アルファへの急接近をかけた。
「放火開始なのです!」
 回転する車輪のごとく突撃したクーアは、目標アルファの胸部に燃えさかる剣を叩き込み、その反動と反転によって急速に後方離脱。
 代わりに武者鎧の大徳がタックルを仕掛け、利香とサンドブロック状態にして動きをとめにかかった。
 清水と寂光が刀に炎の術をかけ、両サイドから切りつけるように突撃。
『十倉隊、続け!』
「よしきた!」
 同じく剣に炎を纏わせた十倉とスナイパーチームが飛び込み、集中攻撃を始めた。
「よっしゃ、残る連中の足止めだ。マグナ隊、気合入れて行くぜぇ!」
「「オーケーリーダー!」」
 雄叫びを上げながら目標ベータへ突撃するマグナ隊。
 初撃のクラブハンマーを始まりにして、赤いウォーハンマーを装備した岩城と弓削が打撃を追加。後方に回り込んだ伯方と生口が赤いクローを叩き込んで動きを止めにかかる。
 アトランタはそれを振り払うこともせず、まずは腕を翳すようにして防御を始めた。
「こちらも行きますよ。リュカシス隊!」
 拳を翳すリュカシスに、それぞれのバスターアームをがつんとぶつけながら走るリュカシス隊。
 四人がばっと広く展開し素早く別のアトランタを三方向から囲むと、助走をつけたリュカシスが衛生兵の共英をジャンプ台にして跳躍。
 アトランタめがけフリーフォールアタックを叩き込んだ。
「こちら六実隊。右のはウチらに任せてもらいます」
 同じく六実隊が別のアトランタ型を取り囲んでブロックし始める。
「オリーブ隊は左を」
「了解」
 オリーブを先頭に、隊でひとつの生物のごとく連携して広がった甲冑の兵士たちが盾をかざして四方からブロックをかけた。
 まるで壁に囲まれたかのように動きを損なうアトランタ。
 腕を振り回すようにして牽制するアトランタに、隊員たちは素早く飛び退いたり盾を翳して受け流したりして対応しはじめた。
 各個撃破作戦のキモは『こちらだけが集中攻撃をできること』にある。
 ただ花一匁状態のつぶし合いをしたのではお互いの頭数が減るだけで、総力の高い敵の方が圧倒的に有利になるが、それぞれを分断させた上で確実な集中攻撃をし続ければ有利に立てる。ナポレオンが得意としたと言われる戦術だ。
 しかし。
『利香隊、クーア隊。警戒しろ。砲撃が向いている』
 アトランタは移動ができないと踏んで腕をキャノンモードに変えスターキャノンを発射し始めたのだった。
 アトランタは(彼らからすれば)未知の敵に対してまず一体特出させ、残る個体で集中攻撃をしてしまおう……という考えでいたらしい。
 それに対してオリーブたちはブロックをしかけ接近を阻害。仕方なしにアトランタたちは近接攻撃で薙ぎ払うのを諦め砲撃による集中攻撃を選択したようだ。
 ついでに。ブロックを仕掛けなかった隊に対しても突破を諦め砲撃を選んだことを付け加えておく。
 赤色スターライトキャノンが炸裂する中を、アニーヤは盾を翳して突破した。
 現在フリーになっている目標の退路を阻むためだ。
「アニーヤ隊、援護射撃用意――撃て!」
 マジックライフルによる集中攻撃がアトランタへ殺到。ソードモードにした腕を振り回すようにして防御をはじめるアトランタ。
 その後ろにアニーヤが滑り込んだのを確認すると、ラーテは地面に固定した大砲の発射レバーを握り込んだ。
「ヤローども! パーティーだ!」
「「ヒーハー!!」」
 ラーテ隊による一斉砲撃がアトランタへと集中。
 防御に集中しようとするも、あまりの砲撃に腕を喪失した。
「プラントには行かせるなよ。必ずここでスクラップにする。いいな! お前ら気合い入れてけよ!」

 各個撃破作戦は半分まで成功した。
 というのも、アトランタ型は知能が低いために『敵が群がってるからとりあえず撃っとけ』というきわめて雑な砲撃を乱発し、結果として集中攻撃担当の前衛陣である利香、アニーヤ、そしてクーア隊の半数が大きな被害を受けることになった。そのついでにアトランタも砲撃に巻き込まれフレンドリーファイアでやられていったのはラッキーなことではあったが……。
「私は一度戦線を離脱します。初富小隊長から指示を伝達しますが……危なくなったら撤退してくださいね」
 クーア隊の清水たちに守られるように撤退していくアニーヤ。
 器用に一撃離脱をはかっていたクーアと砲撃のために広く展開していた利香隊、そしてそもそも耐久力がどうかしてる利香は依然健在。しかしクーアは深刻なAP切れを起こしたため攻撃チャンスを2ターンに1回に絞る形で『火喰いねこ』攻撃に集中していた。
 その間にもアトランタを1体倒し、次なる集中攻撃目標にシフト。
 対するアトランタたちはそろそろ雑な範囲砲撃が割に合わないことに気づき始めたようでそれぞれを足止めしている隊員たちを排除するため腕をソードモードにして対抗しはじめた。
 個体戦闘力がそもそも高く、1分隊で対抗するのはハードな敵だ。
 ヒーラーやタンクを備えているとはいえリュカシス隊、マグナ隊、ヴァレーリヤ隊、オリーブ隊の隊員たちはそれぞれ激しいダメージを受け、半数が撤退。
 残る少数メンバーだけでしのぐのは危険と判断した彼らは残存兵力を合わせて部隊を再編成した。
 その速度はアトランタを一体ずつ撃破する速度より若干遅い、程度であった。(アトランタが雑な砲撃をしていた戦闘序盤で差が付いたようだ)
「きつくなったら退け、あと数十秒しのぐだけだ!」
「勝ちますよ、絶対にデス!」
 マグナとリュカシスのパンチが同時に叩き込まれ、アトランタがおおきくぐらつく。
 一方ではヴァレーリヤとオリーブの突撃でアトランタが派手に転倒した。
「制御できない爆弾より使える棍棒。まずは破壊させて頂きますわ、デミウェポン!」
 そこへ、ラーテ隊の砲撃が集中。
 体中を穴だらけにしたデミウェポンは派手に爆発四散した。
「仕上げなのです」
「力比べなら、こっちも自信があるんですよ!」
 デミウェポンと鍔迫り合いに持ち込む利香。
 その背後に燃える剣を突き立てるクーア。
 アニーヤ隊の集中砲火が浴びせられ、アトランタは歪むように破壊され、爆発していく。
 その様子を上空から観察していた初富は、耳にあてて隊員から収集した情報を分析した。
『敵アトランタの沈黙を確認。戦闘終了。ただちにグラングへ帰還せよ。自力で移動できない者は――』
 通信の声が埋もれるほどの歓声が、あがった。

●戦線を上げよ
『コーサイド戦線に投入したR&C大隊がプラントを制圧したようだ』
『予想よりもはるかに働く……予算の追加投入も考えねばな』
『幻想は大規模な北上を計画してはいない模様。力を入れるなら今では』
『いいや、隙を見せればどこかから突かれる。各国の目も厳しい状態だ。まだ学兵たちには頑張って貰わねばならん』
『であれば、孤立している前線基地の解放に動く、というのはどうかな』
『ほう……?』
 円卓を囲む老兵たち。
 彼らの一人が、黄金の義手をがちゃりと鳴らした。
『彼らにはナラシノ基地奪還任務を与えよう。成功すれば、戦力はさらなる増強を期待できる……』

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、分隊長の皆さん。
 隊員に重軽傷を負ったものは出たものの死者は零人。プラント制圧の任務は達成され、上々の成果をあげることができました。
 今回編成したメンバーの名簿は隊ごとに保存してありますので、再びR&C部隊で招集をかけた際には駆けつけることでしょう。

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