PandoraPartyProject

シナリオ詳細

雪解けの底に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●貴族は屍と徳を積み
 整った隊列、一糸乱れぬ足音、呼吸の音。
 幻想領内の高山帯へ向けて出発した若人達は、前後で目を光らせる教官に逆らうこともできずに道を往く。一歩でも足音のリズムを乱せば、一言でも弱音を吐けば、たちまちのうちに手にした角材で思い切りたたかれる。
 クオリティの均質化。貴族の下働きに来た者達は有無を言わさぬ苦行に身を置かせて自分好みの人材として鍛え上げ、或いは教官達はその「おこぼれ」に与る。生き延びれば幸いだ。いずれ彼らも教官の側に立つことがあろう。そうでなくても、上下関係は絶対。
「遅いぞ、とっとと歩け! お前達が無駄にしている一分一秒が領主殿の金貨に値すると心得よ!」
 疲弊した若者達はもはや反論の余地はないが。領主は彼らが一ヶ月かけて「研修」を生き延びても、まして命を落としても、金貨一枚の支払いすらも惜しむことだろう。
 領主は悪徳であることは疑いようもないが、しかし幻想においてありふれすぎ、また、所領の運営は一定の成果をもたらしている以上は彼の行いを糾弾できる者もいない。
 なにしろ、専制国家には労働者としての権利を声高に口にする環境はないのである。

●尊厳は惜しまれつつも
「貴族の考える事はよくわかりませんね。ですが、貴族の行いの善悪を裁けるほどの権利は、領民にも、ローレットにもありません」
 彼らは善ですから。女性の情報屋はきっぱりそう言うと、その口で山籠もりに向かった領主の小間使い一同の襲撃を依頼してきた。つまりこれは、善なる行いではないぞという釘刺しか。
「山岳地帯のふもとに所領を構える貴族は、毎年春に多くの若者を雇い入れては過酷な環境に身を置かせ、自分好みの性格に仕立て上げているそうです。当然、雇い入れられる側の拒否権はなし。働き盛りの青年や若い女性たちが連れていかれ、場合によっては死体となって帰ってくるのですから領民にはたまったものではありません。ですが、所領全体に大きく響かない程度に徴収し、中央に少なからず財を流している身の上である以上は罰されることもないでしょうから、せめて春に連れていかれた子らだけでも奪い返したい。それが、依頼人達の願いです」
 仮に若者を連れて山へと向かった教官達がみな死んでしまおうと、『不幸な事故』だったということにしてしまえばなんてことはない。
 それを領主に客観的に認めさせる手段もある、と情報屋は嘯く。行軍につけた教官達は屈強だが、それでもなお逃れえない手段。
「彼らの向かった山岳地帯には、いまだ溶けきらぬ雪が積もっています。それも織り込み済みで行軍させているわけですが……春ですからね。雪崩のひとつふたつ起きないわけもないでしょう」
 なるほど、情報の隠滅には都合がいいわけか。生死不明がたくさん出て、捜査に手を回す金など領主は惜しむまい。なんて素敵な筋書きだろうか。クソッタレな話だが。
「そんなわけで、皆さんのご活躍を期待しますね?」
 どこか他人事の雰囲気をにじませつつ、情報屋はそう告げた。

GMコメント

 新人研修かなにかで畑違いの事務所に株取引のソフト売込みに来た営業さんには同情します。お引き取り願いましたが。
 幻想でもありそうですねってお話です。
●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●成功条件
 研修徒弟(達)の救出
 研修教官の殲滅
 撤退までの間に雪崩を発生させる(回数は問わない)

●研修教官×5
 雇い入れられた若人達を「研修」の名目の下に虐待に近い形で訓練させている連中。「俺は寝てないんだぞ!」とか「お前達が逃げた先があると思うのか!」とかそういうことを遠慮なく言える性格。窮地に立てば徒弟達の命を惜しまない(一定数まで間引くことすら許可されている)。
 編成は近接攻撃系3(剣・槍・拳)、術2。
 剣・槍はレンジ2まで対応可能、攻撃に出血を伴う。拳はショックや致命を伴い、EXAと反応が高めだがレンジ1までしか対応できない。
 術は超遠対応可、様々なBSを付与してくる(が、深刻なレベルのものは皆無)。治療役も兼ねる。
 
●研修徒弟×17
 依頼では20人だった為、何名かはすでに命を落としている模様。所領内の若年層で、男女比3:2くらい。
 厳しい研修で体力は限界にきており、能動的かつ活発に動ける者はほぼいない。(ゆっくり移動するのは可)
 雪崩に巻き込まれたらひとたまりもないだろう。

●戦闘地域:雪山
 残雪が多い山岳地帯。
 足場が不安定なため、パカダクラなどの不整地走破性が高そう(「高い」じゃなくて「高そう」。ぶっちゃけ自己主張とアドリブの口八丁)な動物とか低空飛行とかの活用がベター。何も対応がない場合は反応とEXAが-20。ちなみに教官はかんじきを履いている。

●雪崩
 大声を出す、衝撃波を放つ、地面を強く殴る、熱を放射するなど、雪のバランスを著しく崩す行為全般を起こすと、発生地点を中心に半径30mほどが地滑りのように雪崩ていきます。領主の屋敷からも見て取れるくらいド派手に滑っていきます。
 3回くらい起きれば「無理だわ」ってあちらさんも理解できるでしょう。

  • 雪解けの底に完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月30日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)
性的倒錯快楽主義者
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者
ヴェルフェゴア・リュネット・フルール(p3p004861)
《月(ムーン)》
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女

リプレイ

●「Yes」こそが正義と、彼が言った
「なんでこう、貴族というのはこういうのが多いのか……」
 『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)はティンダロスに跨がり、順調に上へ上へと進んでいく。乗り回す狼もそうだが、鎖に覆われた彼自身の肉体もなかなかのもの。雪に覆われた環境下では準備がものをいうが、彼に関しては概ね問題はなさそうだった。
 というか、イレギュラーズが揃いも揃って周到なだけ、とも言う。
「虐げられる領民を山から救い出してやるっす」
 『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)が跨るのはハイパー……え? 子ロリババア? HMKLB-PMとかいう最先端にアレな生物。
「……善悪くらい、私で決めるわ」
 滅茶苦茶格好良さげなことを口にした『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)が連れているのは邪ロリババアの「ウワラバ」。ロリババアが邪でウワラバである。頭痛くなってきた。
「幻想は封建社会だとはいえ、実質ブラック企業みたいな光景だね」
「お貴族様のやるこた分かんねえけど、歯向かうのは気が重ェ……!」
 『うさぎの穴の』梯・芒(p3p004532)と『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)はかんじきを履き、雪の上を歩いていく。どこで調達したかは敢えて言うまい。普通に手に入るブツなので『普通の場所』には置いてあるだろう。手段が普通であるとは口が裂けても言えない訳だが。
「今回の依頼でも幾人かの魂達をイーゼラー様の元へとお還し出来そうですわね……ふふふ……胸が高まりますの……」
 『狂える崇拝者』ヴェルフェゴア・リュネット・フルール(p3p004861)は、崇拝する神への供物を得るために喜びいさんで雪山を登る。雪山での備えがない分、彼女の足回りの負担は大きく、仲間より遅れているのは否めない。のだが、表情は目を隠していてもなお狂信の喜びを隠しきれず、遅れすらも享受しているようであった。
「力こそ正義! ちょっとやそっとの雪くらいなんてこ、とッ!?」
 『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は強引にずんずんと前進し、しかし雪で隠れた段差に足を取られて盛大に雪にダイブしていた。気合十分、実力折り紙付きの彼女であるが、どうやら彼女自身のおつむとかその他は決して折り紙付きとはいかないらしい。やる気はあるようだが。多分、奪って履くくらいは考えている。
 ……居並ぶ七名のイレギュラーズが山を上っていくのをよそに、『性的倒錯者で快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)はひとり、山の麓に流れる川を見出し、小型船を浮かべて山を遡上するという選択に出た。雪解けにより増水した川を上るというのは、いかにも危険な行為であり、一見すると有用性が低いように思える……のだが、彼女は彼女なりの考えを以て行動している。すべての行動になにかの意味が伴う以上、彼女のそれは無駄とは言うまい。
 「邪魔な相手は皆が倒してくれると思うのよねぇ、雪崩から逃がせないんじゃ本末転倒よぉ」とは、彼女の言である。
 なにしろ救出対象の数が数だ。運搬手段なしではかなり無茶をせねば半分も厳しかろう。
 一行は、やや隊列が乱れながらも、持ち前の体力で雪山を上っていく。山の中腹に差し掛かったあたりで、少しばかり上を歩く研修者一行が目につくだろう。何事か声を荒げて指示しているようだが、芒の耳には届かない。尤も、聴覚に優れぬ者が聞こえる程度の叫び声となれば、雪崩を引き起こすのだから当然か。
「声で誘導して引き剥がすのは無理かな。多分、揃ってアホ面だから小細工はいらなさそうだけど」
「あーいうタイプは挑発に弱い筈っす。気分よくしばいてるところを邪魔されれば尚更っすね」
 芒の言葉にレッドが応じ、すかさず雪玉を作り、HMKLB-PMで忍び寄って投げつける。普通の、であれば何ら問題はなかったが……投げつけられたそれは、帯剣した教官の頭部に命中すると、彼の額を軽く割った。意志が混じっていたのだ。
「あぐっ!? ……な、何だこれは! どの馬鹿の悪戯だ!?」
 血を拭い、怒りに顔を赤く染めた教官は周りを見渡し、徒弟達を睨みつける。我ではなしと首を振る彼らとは別方向、足元から響いた声に、教官達は身を固くする。
「やーいやーい、こんな田舎で下手な教え事しか出来ない能無しー!」
 レッドの言葉は間違いなく相手に届いた。挑発としても、十分すぎるほどに。彼女、そして居並ぶイレギュラーズを見てとった教官達は武装を構え、襲撃者に備える。術士は徒弟の1人の腕を捻り上げると、自らの前に掲げる。呆れるほどに下衆で、周到なやり口だ。
「貴族の下働きらしい頭の悪いやり方だ。消えろ」
 マカライトはティンダロスを駆って一気に間合いを詰めると、術士へと鎖の眷属を差し向ける。しかし、鎖は盾にされた徒弟を縛り上げ、雪上へと転がしてしまったではないか。
 幸いにして息はあるが、無事かというと正直、微妙だ。
 だが、失敗を顧みる暇などイレギュラーズには無い。相手が自分達を認識したが最後、やり直しは利かないのだから。

●誰も「No」を認めてくれなくて
「貴族の相手も気が重ェけど、依頼をしくじった時を考えると尚更気が滅入ンなぁ……!」
 ことほぎは心から嫌そうにぼやきつつ、淀みない足取りで前進する。あまりに自然な、そして余りに雑な動きに警戒し、突き出された槍の穂先を皮一枚の差でかわすと、悪意とともに周囲へと呪いを無差別に振りまく。だが、まあ。彼女の技量は高かったが、状況判断は最善とは遠かった。
 術士もだが、教官達は襲撃者が現れた時点で迎撃、それと保身を第一に動いていたのだ。
 当然、彼らは徒弟を巻き込んでの乱戦を志向する。徒弟達は雪中行軍で判断力が落ちており、敵味方の区別、咄嗟の行動がまずもって無理だ。……必然、ことほぎの挑発は教官のみならず、徒弟達をも動かすことになる。……唯一幸いなのは、一歩ずつよたよたと動くに留まる点ぐらい。
「ウワラバ、遠くの子から運んで頂戴」
 アルメリアは、術士の脇で転がった徒弟に向けて治癒術式を放つ。明らかに動きの鈍い彼女とヴェルフェゴアは、本来なら術士のいい的になったろうが、そこはことほぎがなんとか引きつけ、十分な猶予を与えた。全力の治癒は、徒弟に倒れる前以上の活力を与え、自力で戦闘区域から逃げる程度まで回復させたらしい。
 ウワラバはその徒弟、そして傍らで荒い息を吐くもうひとりを背に乗せ、しっかりとした足取りで雪を踏みしめる。
 アルメリアとウワラバの連携、加えてことほぎの挑発に気を荒くした教官達は、各々の武器を以てことほぎに打ち掛かる。特に厄介なのは、適度に距離をとって突きを放つ槍持ちか。雪中行軍にはいかにも不利だが、雪上戦慣れしているのか、フットワークは軽妙だ。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
 挑発してくるのが、ことほぎ1人であれば十分、対等以上に戦えたかもしれない。だが、そこに秋奈の邪魔が入ればどうか? 堂々たる名乗りは、一番突出していた拳闘の教官の耳朶を打ち、彼女への敵意を顕にさせた。引き付けるには、十分。
「弱者を盾にしてでも生き残る……実に『賢い』魂とお見受けしますわ……ふふふ、イーゼラー様もお喜びになることでしょう」
 ヴェルフェゴアは、雪の中をゆっくりと歩き、着実に術士を射程圏内に捉えていた。真っ先に徒弟を盾にする腐った性根、それでいて盾として有効利用する狡猾さ、そして低くない術の精度。どれをとっても、その身を包む衣装を捧げた神にふさわしい。
 重い魔力を叩き込まれた術士はわずかにたじろぐが、すぐさま思考を切り替え、自らへ治癒術を施す。が、それは無駄な努力だったようだ。間合いの中に突如として現れた芒は、慮外の長柄武器を振り下ろすところだった。気付く間すら与えられずに叩き込まれたそれが、武器ですらないと理解することは出来まい。
「ああ、まだ死なないんだね。しぶといなあ」
 芒は、術士にいまだ息があることに驚き……というか呆れに近いものを感じた。結局は死ぬまで殴りつけるつもりだったのだから、殴る機会が多いことはいいことだ。トドメとばかりに標識を振り下ろすと、彼女は素早く飛び退る。一気に引いた彼女に追いすがれる者はいない、はずだったが。
 教官側の最後方で控えていた術士から離れても、槍持ちや拳闘の手合いを引きはがせる距離ではない。都合3名が挑発して足止めしたとしても、『万が一』は起こりうる。
 レッドが挑発するより早く、拳を握った教官が芒に追いすがる。間合いを詰め、腹部に一発。さらに身を振って顎を打ち上げる。避けようとはした。だが、肝心のタイミングで足がもつれたのだ。不幸という名の必然。打ち上げられた身は意識を切り飛ばされ、足が浮く。
 だが、彼女の手は別の生物かのように標識を振り上げ、教官の横っ面を殴り飛ばしていた。運命は、窮地でこそ強く輝く。
「能無しの相手はボクっすよ、余所見するような余裕があったなんて驚きっす」
 標識を叩き込まれた教官は、背後からの声に振り返る暇なく切り刻まれる。刹那、レッドの声とは異なる、イケてるボイスが流れた気がするが……教官がそれに気付くより、鎖の眷属が彼の足を絡め取って雪上に転がすのが早い。
 拳闘の教官を仕留めたマカライトが顔をあげると、その先では秋奈が今まさに剣を取った教官の旨へ刃を埋めたところだった。鼻歌まじりに、テンポよく突き、相手の切っ先を躱しもせず切り込んでいく。咄嗟に身を引くなど、体術を駆使して深手は避けているが、どうにも刹那的な戦い方だ。雪上であることの不利を差し引いても、興奮で判断力がブッ飛んでいるとしか思えない。
「神などいないわ。いるのは私を殺してくれる死神だけよ! あなたは私を殺すには全然足りなかっただけだから!」
 微塵も慰めになっていない勝利宣言は、聞く前に絶命できて幸せだったぐらいである。

「いい子ねぇ。その調子でどんどん運んできちゃってねぇ」
「カフッ、カフッ」
 教官とイレギュラーズの戦いが熾烈を極める中、ウワラバとニエルは着々と徒弟の救出を進めていた。正確には、仲間を癒やす合間を縫って徒弟の治療に尽力したアルメリアの功績も大きい。雪に足を取られて動きづらいなら、開き直って手が届く範囲すべてを治療する。救出が必要な場面はウワラバに任せる。完全な役割分担あっての功績である。
「私にとっての善は依頼の達成よ。あんたたちが死のうが、それで後ろ指さされようが私は善なの」
「まー、私ゃお貴族様に逆らいたくねえんだけどなあ! 出来ればよろしくやりてえんだけど依頼じゃあしょうがねーよなァ!」
 決意を露わに断言したアルメリアに、不承不承といった様子でことほぎが追従する。なにごとか教官達が言い募ろうとしたが、レッド、秋奈らとは別の意味で厄介な戦い方をすることほぎを前に無駄口を叩けるほど、彼らには実力が伴ってはいない。
 なにしろ、少しでも隙を見せようものなら間合いの外から芒が飛び込んで蹂躙してくる。頼みの綱の術士は、挑発にやすやすとのった上でヴェルフェゴアの魔術に大穴を空けられてお陀仏ときた。
 人数的には五分程度だったにもかかわらず、個々の戦力という意味で彼らは最初から不利だったのである。
「概ね、依頼は達成できたということで……そろそろ、よろしいですね?」
 ヴェルフェゴアの口の端が嬉々として釣り上がる。何を考えているのか、と残った2人ほどの教官が訝った次の瞬間、山の上方、不安定な雪の山に魔術の弾丸が突き刺さる。
「はい雪崩どーん! 崩れないと嫌だからもっかいどーん!」
 秋奈も、雪壁に向かって繰り返し爆彩花を叩き込む。ともすれば自分も巻き込まれるだろうに、楽しいこととなればリミッターが外れるのだろうかこの少女は。
 レッドは手近に残された徒弟に毛布をかぶせると、ダメ押しとばかりに火薬「轟々雷々」を投げ放つ。都合三度の契機をもって、雪山は盛大に音を立てて揺れ始めた。
「大丈夫っす、逃がすつもりはないっすから」
 常軌を逸したイレギュラーズの行動に慌てた教官らは、徒弟のことも仲間のことも忘れて我先に逃げ出そうとするが、当然そんなことは通じるはずもなし。
 レッドに阻まれ、切りつけられて転がった先に飛び込んでくる――白い壁。
 数秒後、長々と時間をかけて滑っていく雪の塊は春先の風物詩というにはいささか派手で、貴族の屋敷からも十分に見えるレベルであった。
 そんなものを見て、研修に派遣した者達の生死を確認する貴族もおるまい。

 最終的な結果として、徒弟の救出数は15名。2名ほどが乱戦に巻き込まれて還らぬ人となったことと、マカライトがティンダロス共々雪崩に足を取られて麓まで転がり落ちたことで当面療養を余儀なくされたこと以外は、イレギュラーズは『依頼に誠実に』仕事を成し遂げたといえた。

成否

成功

MVP

ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)
性的倒錯快楽主義者

状態異常

マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)[重傷]
黒鎖の傭兵

あとがき

 殺す理由も様々、ですが殺意だけは盛り盛り。そんな内容だったと思います。
 MVPは、曲芸なので再現性は低いと思いますが、効率的な手段だったので貴女に。
 それはそれとして、ロバの鳴き声とかこのリプレイのためだけに初めて聞きました。
 ……鳴き声、ロバでいいんですよね?

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