PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Resektion

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●疑心と痣は癒えぬまま
 事故であった、と母は繰り返し村の人々に伝えていたことを覚えている。
 そう、あれは不幸な事故であった。少なくともミエルはそれを知っている。果たしてそれをなんびとが信じるだろうか? という疑問は別として……。
 『父の死は事故だった』のである。
 確かに父は荒くれ者であったし、平時は家族にとってよき父ではなかったし、母の全身に刻まれたあざは決して浅くはなかった。
 それでも、彼は医者としては十分に優秀だった。人々からの信頼は――少なくとも人間性を別として――十二分に得ていたといえよう。
 殺したと疑われる理由はあった。彼の死を厭う人達も確かにいた。
 だが、ミエルはただただ、「あれは不幸な事故だった」と人々に伝えることしか出来ず。

 果たして、腕利きの医者を失って、さりとて代わりをつれてくることも出来ず、人々がほとほと困り果てた頃に、彼は。
 ミエルの父は、何食わぬ顔で診療所のドアを開けた。

●博愛の皮は分厚く
「人というものは法と宗教に救われる事は間違いない。けれど、法は腹痛を診ちゃくれないし神様は救いにはなっても助けてはくれない」
 そして死人は蘇らない。イレギュラーズは、ローレットの情報屋が続けた言葉にうんざりした表情を返した。
「黄泉帰りの噂か。その口ぶりだと相手は医者か?」
 イレギュラーズの一人が問うと、情報屋は頷いた。
 恐らく、でもなく。面倒な話になることは一同揃って理解した。聖教国ネメシスは法と宗教の二本柱は揺らがないものの、柱に塗り固められた現実というやつは余りに分厚いのだ。
「疑われているのは、首都の一角で辣腕を振るう医者、ラウムという男だ。周囲からの評判もよく、腕も悪くないという噂で。彼がいなくなったとして、その一角に代わりの医師がすぐに行けるかっていうと、まあ治安がな?」
 神はあまねく世界を見ておられるが、あまねく世界に手を伸ばせるほど万能ではないようだ。そして、ラウム以外が近づきたがらない程度にはその地域の治安はお察し、と。
「診療所はごみごみした家々に並んでて、絶えず人目に晒される。昼間でも、夜だって忍び込んでどうにかしようってワケにはいかないだろう。でも、好材料がひとつある」
 努めて正体を知られぬようにラウムを調査、ないし排除。その依頼を遂行するとなると、なかなかの悪条件だ。そこに朗報。一同の嫌な予感は、当たったのかどうか。
「あくまでこれは噂だが。どうやらラウム医師は家族に対してはひどく当たりが強かったそうだな。彼がそもそも死んだ理由も、事故で頭を強く打ったから、だとか。詳しくは知らないけどな」
 奥方と息子は事故だと繰り返し説明していた。彼女らの身にはあざが絶えなかった。息子・ミエルの顔写真を渡された一同は、言葉にしづらい感情をないまぜにしつつも、ローレットをあとにした。

GMコメント

 初めまして、封三紅葉(ふみの・もみじ)と申します。
 天義でなにやら厄介そうな話が起きているということで解決をお願いします。

●成功条件
・医師ラウムの討伐
・ラウムが黄泉帰りを果たしていた事実の隠蔽(診療所周囲の患者をなんやかんや治療するなり『患者がいない状態にすれば』ラウムの件を徒に口外する者はいないだろう、とは情報屋の言)

●医師ラウム
 診療所がある区画(はっきりいうとスラム街同然)で医師をしていた男。事故で頭部を強く打って死んだらしい。
 そのへんでは医師がラウムしかいないし、代わりも来ないだろうということで公にはなっていない。噂なりで情報が漏れたなら『情報源』がいるのだろう。
 家族に対しては当たりが強かったというが、少なくとも患者に対しては真摯であるとか。
 性格や医師であることを加味すると、それなりに人を傷つける心得もあることは十分考えられる。

●ミエル
 ラウムの息子で、10代前半の少年。
 整った外見と服装で、周囲からは浮いているが顔などの痣が痛々しい。父の存在と貢献もあって、身なりが良くても疎まれたり危害を受けたりはしていないらしい。
(その環境が揺らげば話は違うかもしれないが)

●診療所
 スラム街にほど近い天義首都のとある街区にある小さい診療所。両隣にさほど間を空けず住宅があるので人目に付きやすい。
 周囲の人々はラウムへの信頼は篤く、整った格好の者がうろつけば警戒もするだろう。
 逆に、みすぼらしい程度が雰囲気に溶け込むことも出来るだろう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 面倒そうに見えたらすみません、全体的にはシンプル、だと思います。
 よろしくおねがいします。

  • Resektion完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月15日 23時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)
性的倒錯快楽主義者
黒星 一晃(p3p004679)
黒一閃
アクセル・オーストレーム(p3p004765)
闇医者
岩倉・鈴音(p3p006119)
タコ助の母
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
<不正義>を知る者
嘴(p3p006812)
じいじって呼んでネ☆

リプレイ

●『善医』の顔
「これで大丈夫だ。転ぶなとは言わんから顔はかばえ。酷い顔がさらに見れんものになるだろうが」
 子供の顔のあちこちにガーゼを貼り付けながら、医師ラウムはむっつりとした表情でそう伝える。対する子供は、不機嫌そうな顔をしつつも存外素直に頷き、無言のままに診療所を出て行った。それを見届けたラウムは子供の足跡が消えたころ、改めてカルテへと向き直った。
「噂に違わぬ人格者、ということでございましょうか。生前通りかどうかは、拙にはわかりませぬが……」
 『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312) は、診療所の様子を優れた感覚で探りつつ、そぞろ歩きの体を保っていた。得物を佩いていることは隠しようもないが、それすら自然体として認識させる雰囲気が彼女にはある。
「打撲で死亡、事故、名医、家族に傷……練達の出来事を加味すれば見えてくることはひとつ!」
 『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)は周囲の雰囲気や雪之丞の情報、事前に聞いた話などを組み合わせ、独創的な結論を導き出す。つまるところが、イレギュラーズの得ている恩恵を一般層にも、という大胆不敵な計画を目論んでいる、と。そんな思想はさておき、彼女の恰好はよく場に溶け込んでいる。髪型をも変えている辺りに、本気度が見え隠れする。
「私にとっては、他人事じゃない、ね」
 『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)にとって、死からの蘇生という事実は決して対岸の火事とは呼べなかった。運命は彼女に生きることを強いたし、彼女はそれを受け入れたのだから当然か。
 再び故郷の土を踏むきっかけがこのような事件になるとは、因果というほかはない。飛び来たった一羽の鴉は、彼女に目配せをして何処へか飛び去っていく。
 三者三様、情報を集めるべく動き出した面々を横目に、『性的倒錯者で快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)は診療所へと一歩ずつ保を進める。彼女の身を包む黒いフードは、その感情が如何様な色をしていても包み隠すことだろう。尤も、今この時点で優先されるべきは己の喜悦ではなく依頼遂行の為の情報収集であることは彼女も心得ている。扉に手をかけたニエルは、躊躇なく診療所のドアを開いた。

「君がミエルか。ラウムの息子の」
「誰ですか、あなたは。医者……?」
  『闇医者』アクセル・オーストレーム(p3p004765)は、動揺と疑念を隠さないミエル少年の問いかけに鷹揚に頷いた。
「ラウムが事故死したと聞いた。仲間を連れて往診に来たんだが……君も大概、ひどいな」
 アクセルはおもむろにミエルの手を取ると、腕に浮いたうっ血に指を這わす。苦しげな呻きを聞き逃すはずもなく、翻ってそれがどれほど深刻な痣であるかが理解できようというもの。
 傍らに立っていた『墨染鴉』黒星 一晃(p3p004679)は、メカ子ロリババアの手綱を引く手に力が籠もったのも構わず、不機嫌な表情を隠さなかった。医師の本質がどうあろうと関係ない。そう言い切ってしまえるなら楽でいい。だが、現実はそうでもない。目の前の少年は現に今、傷ついている。
「確かに父は事故死……はい、事故死したはずですが、今はその」
「ああ、診療所にいるのだったな。聞いているよ。できればその件について、詳しく聞きたい」
 どこか慌てたふうなミエルに、アクセルは理解しているとばかりに言葉を添える。聞いているという彼の言葉を聞いたミエルが見せた表情は……さて、どう解釈したものか。安堵と逡巡と不快感、か? 複雑な感情を綯い交ぜにしたミエルが口を開くまで、アクセルは辛抱強く待った。
(事故、か。果たしてどこまでを以て『事故』と呼んでいるのか気になるところだ)
 一晃もまた、アクセルに合わせて沈黙を守った。真実とは、知る者に無傷であることを許さない。やがて語られ始めた真実は、『知っていた』と斜に構えるにはあまりに歪であったのだが。

「馬車がもう一台あったらなァー、とは言ったんだけどネェ。本当に用意されてるとかちょっと予想外ダヨ」
「説得するなら外堀から埋めるのが定石だからね。嘴君も、ラウム君も」
 『じいじって呼んでネ☆』嘴(p3p006812)が二台めの馬車を前にして呆れたように告げると、『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は口元を愉快そうに歪めた。探偵を称するシャルロッテは、相手の心理に付け入り、望む答えを引き出すすべを心得ているようだった。ひとかどのイレギュラーズとして実績を積んだ嘴にとって、仲間が優秀であるというのは喜ぶべき……だろう。多分。
「それじゃァ、こっちは上手くやるカラそっちも頼むよ。大丈夫だろうケド」
 スラム同然の周囲をおいても、嘴の外見はよく目立つ。人々が訝るのを冗談交じりに否定しながら人混みに消えていくその姿……シャルロッテはそれを見届けてから、車椅子を反転させた。

●誰も彼を責めぬので
「ごきげんよう、ラウム医師。お手伝いに来たわ」
 ニエルのさりげない来訪は、まるで旧知の友人かのような態度だった。対して、彼女を見たラウムの態度はといえば、狼狽もせずに淡々と「誰だね」と返すのみ。
「同業者よぉ。『貴方の代わりに』治療してあげたいのだけれど、下手を打ちたくないから。患者さんのこと、教えて貰えない?」
「……なるほど。外堀を埋める前に挨拶回りというわけかい。余りお呼びではないんだけど、帰ってくれないんだろう?」
 呆れたように肩を竦めたラウムは、目立った抵抗を見せずにカルテの束を差し出した。
 軽く礼を告げて目を通すニエルをよそに、ラウムの傍らから女性がそそくさと離れていく。その時、誰も目を向けなかったが……ラウムの女性を見る視線は、明らかに濃い敵意が籠もっていたことは間違いない。

「この辺に腕のいい医者がいるって聞いたんだけど。なんせ急患だから早く診て貰いたいんダ、どこにいるのカナ?」
「なんだい、アンタ。ラウムさんとこに来たんか。そうだよなぁ、そうだよなぁ! 俺達みたいな半端者を診てくれるのはあのお人ぐらいだからなぁ! 安心すりゃあいい、大体の怪我だの病気だのはコロっと治してくれるさァ!」
 鈴音のよそ者感丸出しの問いかけに、しかしボロを着た老人は気さくに応じる。相当に信頼されているのだろう。嫌われる要素が少しでもあれば、こうはなるまい。
「彼を恨んでる人とか、人間関係とかそういうのは無い? 変に巻き込まれたくもないしサア」
 信頼を目の当たりにした鈴音は、さらに突っ込んで問いかける。老人は僅かに険の含んだ視線を彼女に向けたが、すぐさまその色を笑みの裏へと押し込んだ。
「ンやぁ、この辺りでわざわざあの人に喧嘩売るバカはいねえよう。共倒れになりたくねえ! ついこの間頭を打って死んだなんて聞いた時は心臓止まりそうになっちまったね! 小僧と女房がドタマブン殴ったんじゃねえかって話はもちきりよぉ!」
 老人は余程口が軽いのか、周囲の殺気立った視線も気にせず話をう付ける。流石に鈴音のほうが先に危機感を感じたが、それにしても笑って流せる話ではなさそうだ。
「え? お医者さんが帰って来てた? んなワケナイっしょ~」
 と、そこに割り込むように会話に割り入ったのは嘴だ。名の通りに『嘴を挟んだ』とでもいうのか、彼は軽妙な口ぶりで会話を続ける。
「まさか幻覚症状出てるんですか? それともシックスセンス的な? わーそれヤバくない?」
 何ならアッチで診ましょうカ? と馬車の幌、その奥に張り出されたテントを指差して嘴は続ける。異様な外見、軽妙な口ぶり、そこから出てくるラウムの生存への否定に老人はにわかに色めきだったが、熟練のイレギュラーズが醸し出す空気は荒事慣れしたこの場にあってなお抗いがたい危険性を醸し出す。老人は嘴から目をそらすと、こそこそと逃げていく。
「デ? お医者さんを嫌ってそうなヤツの話をボクは聞かなかったんだけど、ソッチはどうかナ?」
「こっちでも悪い話を聞かなかったネー。家族ぐらい。よっぽどハンマーを振り回して周囲に恩を売ってたんだろうね」
 ハンマーはともかく、余程有り難い存在であったことは明らかだ。彼が家族以外に手を上げたという話は、まず聞こえてこない。

「拙が聞いて回った話でも、悪い噂は全く湧いて来ず。ご家族の扱いが悪いというのも、自分達に累が及ばぬなら気にならぬという声が多い様で」
「不思議、なのは……霊魂達から話を聞いても、恨み言が全然出てこなかったこと、かな……死んでも、治療してくれたことに感謝しているとか、ちょっと普通、じゃない」
 雪之丞とアイリスは、互いに集めた情報を突き合わせつつ謎がさらに深まったことを感じた。
 これはイレギュラーズ共通の認識であるが。今回の件、周囲から慕われる医師にとって不利益となる情報を流した第三者がいるとしたら、必ず恨みを買っているはずだ、というのが調査のスタートラインに存在した。だが、スラム街の人々からは一向にそういった向きの情報が入ってこないのだ。口裏合わせをしているにしては規模が大きすぎる。
 善意ある医師という仮面が剥がれる機会があるとすれば家族相手に、だが。ラウムが命を落とした際の話は、何故か表に出てこない……事故死、としか。
 情報収集に行き詰まった状態の2人が考え込んだところに、アクセルと一晃がミエルを連れて歩いてくる。顔を伏した少年と、暗く沈んだ表情を見せるイレギュラーズ2人……真実は一同が考えている以上に闇が深そうである、とひと目で分かる空気を纏っていた。

●真実
「お邪魔するよ。腕のいい医者と聞いて来たのだけれど」
 ニエルがカルテを戻すのとほぼ同時に、シャルロッテは診療所のドアを叩いていた。仲間達も、彼女の後ろに控えている。ミエルは? その場からは離れているようで、姿は見えない。新しい患者が現れなかったのは、偏に嘴やアクセルが駆け回り、他の仲間達が根回しを進めた結果である。鈴音の急患アピールや、雪之丞が魔眼を駆使した結果も無いとは言い切れない。
「ずいぶんと大所帯で来たものだ。見ての通り、ここはベッドがひとつあるだけの手狭な場所なんだがね」
 一同の只ならぬ雰囲気を察していない訳もなかろうが、ラウムの態度に変わったところは見られない。平常心を崩さない、といえば聞こえはいいが、どこか機械的な反応ですら、ある。
「大丈夫、そう時間は取らせないさ。……単刀直入に聞くけど、ラウム医師。貴方にもう一度死んでほしい」
「――もう一度?」
 シャルロッテの問いかけに、油が切れたブリキ人形のような鈍さでラウムが返す。探偵たる彼女であれば、その反応が異常であることは察せただろう。彼は『死んだという事実を知らない』。受け入れていないのではなく、死ぬ直前と黄泉帰りを果たしてからの記憶とが地続きなのだ、とわかる。
「ああ、そうだ。貴方は事故で死んでいる」
 アクセルはきょとんとした様子のラウムにすかさず言葉を継ぐ。ミエルから聞いた話は、確かに不幸な事故としか呼べなかった。妻のささやかな抵抗、拳を握れないがゆえに手にとった灰皿を、胸元へと振り下ろそうとして、なんの不幸かラウムの頭部を直撃し――彼は死んだ。その事実を聞いたラウムは、しかし一同の予想だにしない反応を見せる。
「馬鹿な話を。あの女が私に抵抗するはずがない。ミエルが産まれてから、その前から、丁寧に僕の邪魔をしないようにしっかり言い聞かせてきたのに」
(なんだろう……死者を動かしているというより、これは……)
 他人事のような反応を示すラウムを観察し、周囲の霊魂の有無を探り、アイリスは顔をしかめた。ラウムの反応は、あまりに機械的すぎる。どこか魂が籠もってないように感じるのだ。死者の肉を操っている、というのとも違う。死と霊に近い位置に居る彼女ですら戸惑うような深い闇が、診療所の床下からせり上がる不快感。
「未練があるなら聞いてやる。お前が治療していた患者なら、すぐにどうにかなるような手合いはもういないはずだ」
「それはボクも保証するよォ。ちょーっとだけ切らなきゃいけない患者もいたけど、気休め程度の無菌室でなんとかしたからネ。安心しておねんねしてよ、ドクター」
 一晃の言葉に、嘴も心得たように続ける。シャルロッテから借り受けた分と合わせて2台の馬車、治療スペースや待機所として使うには十分すぎる場所でもあった。軽微な手術すらこなした彼が凄いのか、それだけの時間を費やしてニエルがやっと読み終える程のカルテを残したラウムが凄まじいのか、天秤にかけるのは難しいが……確かに、イレギュラーズ達はスラム街における医師の憂いを断っていたのだ。
「貴方が医者として黄泉帰ったなら、医師としての本文を果たすべきでしょう。貴方の死を以て、命の尊厳、そのあり方を示すべきでは? もう一度死ぬ、そのその罪は私達が背負いましょう」
 ニエルは、直前まで見せていたどこか『緩い』雰囲気をかなぐり捨て、1人の医師としてラウムに語りかけた。期せずして、3名の医師がラウム亡きあとを憂慮して集まり、そしてその後顧の憂いを断った格好だ。緊張した面持ちで経過を見守る雪之丞の指先は、あと僅かでも動けば『凍狼』の鯉口を切り、滑らかに相手の首を落とすだろう。
「そうか、僕がここで医者を続ける理由はなくなってしまったのか……参ったな」
 困ったように頭を掻いたラウムは、一同に視線を向けると、立ち上がって頭を下げる。
「なら、僕がここに居る理由もないようだ。それで、ああ、そうだね。君達の手を煩わせることも、多分ない」
 ラウムは薄く、酷薄な笑みを作る。そうだろう、と問いかけた闇の中から、狂気を孕んだ息遣いが尾を引いて医師の心臓を一突きにする。
 それは、先程まで診療所にいたラウムの妻。清々しい表情で突き立てたメスをぐり、とひねると、血の代わりに黒い泥がほとばしり、全身に派生し、ラウムだったものは泥に消える。
「私はこの人が、あの子がお腹の中にいるときからずっと嫌いだったけど! 戻ってきてくれたことは、一緒にいてくれたことだけは感謝していいと思っているのよ!」
「――何を言っているのですか。貴女はミエル殿のために耐えていたのでは?」
 ラウムが消えた直後、鞘を以て女を取り押さえた雪之丞は硬い声で問いかける。狂笑を上げる女の口からは涎すら溢れ、喜悦を隠しもしない。
「だって、誰かが言うのよ、『欲望を解き放て』って! それが正しいって! だから何度も何度も、もう一度――殺そうって」
 女がそれ以上、言葉を続けることはできなかった。
 すかさず女を殺害すべく動いたニエルの気配を感じ取り、数名が彼女を押し留め。雪之丞が当身で女を気絶させたからだ。

 ……今後、ミエル少年がどのような道を辿るのかは定かではない。イレギュラーズは道を示したが、強制はできない。
 ただ。
 少なくともこの『黄泉帰り』が誰にとっても幸福ではない、というのは何よりも明らかな。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。初めてのリプレイなので非常に試行錯誤しながら……。
 いや、戦闘も辞さなかったのに医師3人て。外堀埋まるし。あとそこの馬車とロリババア(鉄)。
 ラウム医師が『家族以外には』聞き分けがいい性格なのも幸いだったのかもしれません。

 あと、ハイ。泥グロッ。

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