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シナリオ詳細

<常夜の呪い>ゼルス・ニコライノフの夢と現実

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●審判の丘で犬が吠えている
 ぼくたちは幸せな家族でした。
 母は敬虔な信徒であり、父は厳格な神父でした。
 何不自由なく暮らし、なんの不幸も無く生き、そして皆死んでいくものと考えていました。
 ある時です。
 母が買い物に出かけるといって町の外へ出ました。
 そんなに遠くへ買い物へ出かけるのは珍しいので、ぼくはきっと特別な買い物をするのだと思っていました。
 偶然にも、奇しくも、そして不幸にも。
 その日は父の誕生日だったのです。
 ぼくたちは幸せな家族でした。
 だから母が帰ってこなくなるなんて、想いもしませんでした。

 母は遠くの土地で発見されました。
 睡眠薬をたくさんたくさん呑んで、ふだん誰も通らないような岩場の影で眠っていたそうです。
 目のいい郵便屋が真上の空を飛んでいなければ、決して見つからなかったと聞いています。
 病院に保護されてから、母はおかしくなりました。
 目覚めたくないと、しきりに訴えるようになりました。
 ぼくのことも、わからないようでした。
 自分の名前も、家族のことも、なにも分からないようでした。
 ここは自分のいるべき世界じゃないから、夢だから、さめなくちゃいけない。
 母はずっと、そんなことばかり言うようになりました。

 何回目のお見舞いに行った頃でしょうか。
 母が病室の天井からぶら下がっていました。
 首をシーツにひっかけて、幸せそうな顔で。
 もう、母はうごきません。
 ぼくたちは幸せな家族でした。
 だから、きっと取り返せると思ったのです。


「やあ、みんな。急に集まってもらって悪いね。
 スナーフ神父って知ってるかな。よくローレットに依頼を回してくれる人なんだけれど、その人からまた新しい依頼が舞い込んだんだ。
 ちょっと見てくれるかい?」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)が開いた依頼書の内容にはまず最初に、こう書かれていた。
 ――<常夜の呪い>からの解放。
「天義のあちこちがこの呪いに見舞われているのは知ってるかな。
 土地一帯が夜色の霧に覆われて、中身がまるっきり夢のような異空間に塗り変わっているっていうものだよ。
 スリーパーというモンスターが空間を守護していて、これを倒すことで呪いを解除できる。
 天義教会の人々はその対応にあちこち追われているみたいで、最近は本当に忙しいみたいだね。
 今回もその一巻。要するに助っ人としての依頼なんだけど……」

 ヤン・ニコライノフ神父の息子、ゼルス・ニコライノフの住む屋敷が<常夜の呪い>におかされた。
 規模も小さく、他ならぬ神父の親族であるということもあり、市民および大規模な被害を優先する考えから後回しになっていた案件である。
「中の様子は確認されているんだけど、ゼルス氏の状態がかなり思わしくないらしい」

 空間内は広い草原地帯になっていて、ゼルス氏と、その母。そしてヤン・ニコライノフ神父の三人の様子が確認されている。
 三人とも夢空間に作られた仮装存在。『スリーパー』と呼ばれるものである。
 ゼルス氏のみに関しては本人の意識がそのまま憑依しており、肉体は別の空間に格納されているとみられている。
 教会の調査によると、ゼルス氏はこれが夢であることを自覚しており、『現実に戻れば全て喪ってしまう』と考え、解除を拒んでいるということだ。
「現実を拒むという気持ちからかな。ゼルス氏のスリーパーは非常に強力な戦闘力を有している。
 けれどもし、現実を受け入れる気持ちになれたなら、この戦闘力を引き下げ、呪いを有利に解除できるかもしれない。考えてみる価値はあると思うよ」
 ショウはそこまでの説明を終えると、内容をまとめた資料をまとめて突きだしてきた。
「やり方は任せる。……ってさ」

GMコメント

 こちらは全体シナリオ<常夜の呪い>のひとつです。

【成功条件】
 『ゼルス』『ゼルスの母(エリン)』『ヤン』3体のスリーパーを倒すこと

【シチュエーションデータ】
 呪いによって作成された異空間。
 ゼルス氏の夢が元になっているが、現実と同じような物理法則が適用される。
 どこまでも広い草原のようなフィールドになっており、その中央でカフェテーブルを囲む三人が過ごしている。

【エネミーデータ】
●ゼルス(スリーパー)
 本人の意識が憑依したスリーパー。
 これが夢であることを自覚しているが、現実に帰ることを拒んでいる。
 現実を受け入れる気持ちになれば、そのぶん戦闘力が低下する。
 魔法による戦闘が主。
・拒絶の魔法(超神単【万能】【必殺】)

●ヤン(スリーパー)
 ゼルスの記憶にあるヤン・ニコライノフ神父をかたどったもの。
 鎧を纏、剣や魔法銃で戦う。ゼルスと同程度の戦闘力があるが、ゼルスが弱体化すると連動して弱体化がおこる。
※なお、現実ではヤンは母エリンの消息を追って魔種の調査を進めるなかで廃人(狂人)化しており、教会の地下に隔離されている。この事実をゼルスは知らされていない。

●母(エリン)
 ゼルスとヤンの強化と高威力の回復を行なう。
 といってもガーデンチェアに座っておっとりと微笑んでいるだけであり、アクティブに動き回る様子はない。(場合にはよるが)
 戦術的には即座に潰したいが、ゼルスが現実を拒んだ直接的原因であるため、扱いは慎重に行なわねばならない。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • <常夜の呪い>ゼルス・ニコライノフの夢と現実完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月06日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き

リプレイ

●ヤン・ニコライノフは語らない
 教会の鐘が鳴る。
 市民たちの祈りとキャンドルによる涼やかな香りの中を抜けて、『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)は教会を出た。
 黒いネコが教会の庭を横切り、覆面をした神父がそれを抱き上げた。
「すまない。ヤン神父は魔種による精神汚染を受けた疑いがある。君に感染する可能性も……」
「ううん」
 ニーニアは首を振って、神父の横を通り過ぎる。
「ゼルスさんは僕達が助けて出すって、頑張ってって、伝えたかっただけだから」
 教会の門で待つ『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)と『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
 小さく頭を下げるヴァレーリヤに、覆面の神父――異端審問官スナーフは小さく頷いて返した。
「痛ましい過去が変わることはない。ただし、今と未来までもが痛ましいままであるとは限らない。帰ることが、きっと出来るはずだ」

 ゼルス・ニコライノフがとらわれたという夜色の霧を、『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はゆっくりと旋回飛行しながら眺めていた。
 随分と昔に観察した『常夜の谷』を小さくしたような光景だ。
「悲しみがとても深いと、夢の中にいたいのはわかるよ。わかるけど……それが呪いの結果なのは、いけないことだよ」
「いつまでも寝てはいられないヨー。たとえげんじつがつらくても。と、いうことでローレットが起こしにキマシタワー!」
 両手を掲げるようにして霧の前に立つ『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)。
 準備は出来ているのだろう。
 振り返れば仲間たちが戦闘可能な状態で並んでいた。
 腕時計型斥力発生装置を指でタップする『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)。
「家族を失うつらさは想像も絶するけれど、ここは心を鬼にしてゼルスさんを夢から立ち直らせよう」

 霧に手を沈めるように突き出す『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
 何の抵抗もなく入っていく手には、奇妙な涼しさがあった。
(ゼルス・ニコライノフ――私はこの呪いを解明したいと考えているが、彼はどうなだろう。自らに降りかかる悪意に関して、泣き寝入りは好きでは無いな。他ならぬ、私が学者を志したきっかけは、自らの病を解き明かすためだからな)
 霧を抜けるように歩けば、その涼しさが風によるものだと気づくだろう。
 空は青く澄み渡り、そよ風が草原を波打つ海のように撫でていく光景が見えるはずだ。
 それこそまるでどこまでも続く海のように、草原は果てなく広い。
 同じように霧を抜けた『紫電』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は、草原の中心にあるものに目を細めた。
「人は絶望に一度は屈するもの、誰であれど癒すには時間が必要なのでござろう。されど、いつかは夢から覚めねばならぬ……」
 白いテーブルを囲む三つのガーデンチェア。
 清らかな衣服を纏った顔の見えない女性と、口ひげをたくわえたにこやかな男性。その二人と談笑する青年。
 まるで幸せそうな光景に、あえて水をさすように。
「己の絶望に立ち向える様、拙者等が力添えをさせて頂くでござる」
 咲耶は小太刀を抜いた。
 慌てたように立ち上がる青年ゼルス・ニコライノフ。
 母エリンは口に手を当てて驚いた様子を見せ、父ヤンはそれを庇うように剣を抜いた。
「邪魔者が来たようだ。ゼルス、一緒に戦ってくれるね?」
「私たちを、守ってくれますね?」
 父母の言葉に、ゼルスは手を翳した。
「はい。お父様、お母様」
 拒絶の魔法が闇色の魔方陣を描き、牙を剥く。

●ゼルス・ニコライノフは語れない
 鈴音が展開する赤の熱狂に後押しされるように、咲耶が真っ先に飛びかかっていく。
「紅牙忍術継承者・紅牙 斬九郎、いざ参る!」
 小太刀による牽制の斬撃を飛び退くようにかわし、ゼルスは拒絶の魔法を発射した。
 爆発のような衝撃が走るが、咲耶は跳躍と回転によってそれを回避。
 続けて発射されたもう一発を受けたが、籠手を翳すことによって最小限にカットした。
「お主は悔しくは無いのでござるか。今、お主は母君を狂わせた怨敵の術中に嵌っているのでござるよ?」
「術中……?」
「ゼルス、その娘の言葉に耳を貸すな!」
 魔法銃を連射して引きはがそうとするヤン。
 その間に割り込むように、史之が腕時計から理力障壁を発生。
 指で十字のサインをきると、受け止めたエネルギーを反射するようにして打ち返した。
 帰ってきた弾丸を切り払うヤン。
 聖なる鎧に祈りの輝きを宿すと、剣を頭にして突進してきた。
「聞くんだゼルスさん。
 現実がつらいんだね。掛ける言葉もない……。だけど、待ってほしい。ただ夢に耽溺していていいのかな。
 あなたはいま、家族の仲を引き裂いた魔物の餌食になりかけているんだ。お母さんの仇に、いいようにされてしまっているんだよ。
 もしあなたの両親が健在なら、自ら魔物の餌食になりにいく息子を助けようとするはずだよ。あなたの言う通り幸福な家族だったのなら、必ずそうする。憎むべきは現実ではなく、元凶だ。そうだろう?」
「話を聞いてはいけません。彼らは私たちをあなたから奪おうとしているのですよ」
 母エリンの声に首を振るゼルス。
 魔法にさらなる力を込め、史之の背に向けて拒絶の魔法を叩き込んだ。
 派手に吹き飛ばされるが、空中で身体をひねって足と右手で着地する史之。
「アクセルさん! ゼフィラさん!」
「まかせて!」
 アクセルは低空飛行による勢いを翼に乗せ、ゼルスめがけて防御姿勢で突っ込んだ。
 反対側から大型拳銃による射撃を浴びせ続けるゼフィラ。
「正直な所、ワザワザ貴方を辛い現実に引き戻すというのは気が引けるがね。
 これは私のスタンスの問題だ。私にとって最も許しがたい結末とは、真実を追うことも出来ずに果てること。
 なぜ自分がこんな目に合うのか……それを知る機会をみすみす逃す手はないと思うし、それを捨てる者が居たら意地でも真実に向き合わせたいという性分なんだ」
 銃弾を拒絶の魔法で破壊するゼルスに、ゼフィラは畳みかけるように声をかけた。
「私から言えるのは一つ。キミにはまだ、降りかかる悪意に立ち向かう手段が残っている。
 それは自らの手でこの呪いを解き明かすこと。
 この夢に籠もるのは、手を尽くした後でも遅くはないだろう?」
「ゼルスのお母さんも今のゼルスと同じ呪いを受けてた可能性が高いんだよ!
 この事件には真なる夜魔っていう魔種が関わってて、今は天義じゅうでゼルスのお母さんと同じ、夢に関連する被害者がいっぱい出てきてるんだよ!
 だから起きて、オイラたちと一緒にそいつのたくらみを失敗させてやろうよ。
 現実でゼルスと同じ思いをするヒトたちを、これ以上増やさないようにしようよ!」
「騙されてはいけません。その者たちは嘘を言っています」
 美しい笑顔のまま説得を遮ろうとするエリン。
 その間に割り込むように、デイジーが手を広げて大声を発した。
 息を大きく吸い込み、一息に説得の内容をぶつけにかかる。
「お主がここにいたいというのであれば妾は止めはせぬ。
 しかし、現実を拒むも何も、お主はこれが夢であることを自覚していて、ここから出ることを頑なに拒むと言うならば、既に十分すぎるくらい現実に気付いておるのじゃろ。
 亡くなった母親のことも、帰ってこない父親のことも。
 ここで両親の影法師と閉じこもっていても、何も取り返せはせぬじゃろ。
 ああ、しかしこれ以上お主が何かを失うことは無いか。
 しかしの、お主の母親の命を奪い、父を奪い、そして今お主をこの空間に閉じ込めている『常夜の呪い』……これが天義中に広まっておる。
 お主がここに留まれば、お主はこれ以上何も失わないかも知れぬ。じゃが、この空間から呪いが更に広まれば何処かの誰かが何かを喪うことになる。お主と同じようにの。
 それを妾達は見過ごすことは出来ぬ。そして、それはお主も同じじゃろ」
「それが……なんだというのです。私には母も父もいる。ここにいれば、もう喪うことは……」
 説得を拒絶している風ではあるが、ゼルスに迷いが生まれたのは確かなようだ。
 そのよすに、ニーニアとヴァレーリヤは頷きあった。
「いつまでも夢の中に逃げててもいいの?
 現実の二人は、本当にこんな微笑んでるだけの、感情が欠けた人達だったの!?
 もし、今のゼルスさんを二人がみたら、きっと怒るんよ。
 これじゃ、ゼルスさんのことを想ってた、本当の二人の思い出までなくしちゃうよ!
 なかなか、目を覚ましてくれないようなら、戦闘中、近づいて思いっきり頬をビンタする。
 ヤン神父はお母さんの為に戦ってたんだよ!
 まだ終わってない、二人の息子として、やれることはまだまだあるはずだよ。
 いや、むしろゼルスさんがじゃなきゃ出来ないことだってあるはずだよ。
 それをしないで、こんな所に閉じ籠ってちゃダメだよ」
「分かっていると思うけれどゼルス、貴方、常夜の呪いに掛かっていてよ。
 本当に良いのかしら? この呪いこそが、貴方のお母様を奪ったかも知れないのに?
 悪いけれど、貴方の過去について調べさせてもらったわ。貴方のお母様のこともね。
 亡くなる直前のお母様に出ていた、目覚めたくないと願い、夢の中に逃避する症状……身に覚えがあるのではなくって?
 確証はございませんわ。でも同時に否定する証拠もないし、偶然と呼ぶにはあまりに症状が似通っている。
 貴方がこのままで良いなら、それで構わないわ。でも一つだけ聞いて頂戴。
 今、天義では同時多発的に常夜の呪いが発生していますの。聡い貴方なら分かるでしょう?
 このままでは多くの人々が、貴方と同じように、この呪いによって大切な家族を奪われる。お願い、私達だけではとても手が回らない。失われていく命に手が届かないの。
 悲劇を繰り返さないためにも、目を覚まして一緒に戦ってくれないかしら?」
「や、やめてください。私はここから出るつもりはありません!」
 拒絶の魔法を放つも、その威力が大幅に落ちていることは否めなかった。
 手を翳す鈴音。
「眠っていてもリアルが救われることはないヨ。なくなったお母さんが蘇るわけじゃない。
 お父さんは教会の地下にいて、たぶん誰かの助けや介護が必要な状態だと思うよ。正気に戻せるのは教会の人間じゃなくて身内じゃないかなあ。
 ここで眠り続けちゃいけないよ! 目覚めた君の助けを必要としてる人が生きてるんだよ」
 反論が無くなったことで、鈴音と咲耶は説得が成功したことを察した。
 とはいえゼルスが完全に戦意を喪失してくれたわけではない。スリーパーも依然として強い敵対心を維持している。
 この段階でエリンを取り囲んで抹殺してはそのショックによって説得によって得た有利が覆ることもありえる。鈴音はそれを察して、咲耶たちに方針の転換を指示した。
「ゼルス殿、絶望に負けてはならぬ! その鎖、いま断ち切る!」

●エリン・ニコライノフは語っていた
 ヒールオーダーで自己回復をする鈴音の統率にあわせて殴りかかるデイジー。
「歯を食いしばるのじゃっ!」
 拳に集めた意志の力を泡に変え、明らかに動きに鋭さを喪ったゼルスを殴りつけた。
 魔法による防御もままならず吹き飛ばされ、テーブルをなぎ倒して転がるゼルス。
「私が、戦う? 一体、何が出来るというんですか。もう、充分傷ついた!」
「できることなんていくらだってある。なにより、キミはまだ生きてる!」
 魔力をともなったアクセルのきりもみキック。
 魔法防御をなんとか展開できたゼルスは引きずられるように蹴りつけられ、涼やかな草地をえぐりながらこすっていった。
「ゼルス!」
 援護に動こうとしたヤンの鼻先をかすめる銃弾。
 素早くリボルバータイプの魔法銃を向け発砲するヤン。
 ゼフィラはその射撃をまったくかわすことなく肩や腹でうけると、しっかりと両手で銃を構えて狙いをつけた。
「今はこの夢を終わらせることだけを考えようか。いずれ現実で会おう、ヤン神父」
 打ち合い――に無理矢理割り込むヴァレーリヤと咲耶。
 ゼフィラを狙う弾をメイスで打ち落とし、銃弾の熱が炎になって燃え上がった。
「この光景は喪われた。それは揺るぎない現実(いま)ですわ。だからこそ、夢(あした)を見失ってはいけません!」
「されどゼルス殿から生まれた親の面影。無残には散らさぬ――一太刀のもとに葬るでござる!」
 青い炎を纏う咲耶の小太刀。
 ヴァレーリヤと咲耶が交差し、ヤンの肉体を二色の炎が焼いた。
「皆、下がって!」
 史之の突撃。
 防御姿勢のゼルスにショルダータックルをしかけると、全方位にわたって力場を展開。
 足下の土や空気やゼルスの腕や肉体がねじれるように破壊されていく。
 真っ黒なハガキをナイフのように構えて飛びかかるニーニア。
「――目を覚まして」
 ゼルスの横を抜けるように滑り、草地に靴底でブレーキをかける。
 えぐる1メートル。
 振り抜いたハガキの先端が黒く光り、後ろでゼルスは膝を突いて崩れた。
 空が崩れ、ゼルスが崩れ、そしてにこやかに微笑むエリンの姿も連鎖的に壊れていく。
「息子を、よろしくお願いします」
 最後に聞こえた女性の声がなんだったのか、ニーニアは深く深く考えて、そして目を瞑った。

 気づけば彼らは町の中にいた。
 道ばたに倒れて眠る人々。
 住宅数棟を巻き込んだ呪いの霧は晴れ、日常の空気が流れている。
 それ以上なにをするべきだろうか。
 彼らは考え、そしてあえてなにもせずに立ち去ることにした。
 きっとゼルスは目覚めるだろう。
 夢で見たことを、きっと覚えているだろう。
 であれば。
 彼は、自分の力でベッドから起きなければならない。
 それが、イレギュラーズたちが呼びかけたすべてなのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 ――good end

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