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シナリオ詳細

<常夜の呪い>天使は夜闇に微睡む

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 おねむりなさい。
 と天使が謳う。
 おやすみなさい。
 と誰かが追従する。

 やすらかにおねむりなさい。
 と天使が謳う。
 おだやかにおやすみなさい。
 と誰かが追従する。

 それはまるで輪唱のように。
 輪を描いて広がっていく。渦を巻いて、夜の闇色を纏って――



「事件だ」
 グレモリー・グレモリー(p3n000074)は至極簡潔にそう告げた。冴えるような金色の瞳は、いつも通り眠たげな瞼に見え隠れしている。
「常夜の呪い、というのは知っているかな。知らなくてもこれから説明するんだけどね。その名の通り呪いの一種で、その土地に住む人々を眠らせてしまうという恐ろしいものだ。呪いだから解けないと目醒めない。お腹が減っても、眠り飽きてもね。困ったね」
 グレモリーは少しばかり首を傾げる。まるでそれは死んだようだから『常夜』なんていうんだろうね、と。
「被害にあっている地域は、闇色の幕に覆われる。だからぱっと見てすぐに判るんだけど……踏み入るとちょっと厄介な事が起きる」
 言うと、指を二本立てた。
「一つ。中は別世界のような光景が広がっている。つまり土地勘が通じない。そしてもう一つ。スリーパーと呼ばれる夢の具現。こいつが君たちを襲ってくる。被害者が夢から覚めないようにね」
 倒したら無事に人々は目醒めるはずだよ、良い事だね。
 うんうんと頷いて、グレモリーは言う。相変わらず対岸の火事のように語る奴だ。
「今回は……ああそうだ、場所をいっていなかったね。天義の片田舎にある村が『呪い』にかかったのを確認したので、中に踏み入ってスリーパーを撃破してほしい。踏み入るのはためらわれたので、スリーパーの姿形は確認していない。すまない。でも、まあ、君たちなら大丈夫だと思う」
 彼らが餓死したり、種まきの時期が過ぎる前に倒しておかないとね。
 しれっととんでもない事をいうグレモリーであった。

GMコメント

春眠暁を、とは言いますが……
どうも、奇古譚です。今回は初! 天義の依頼となります。
<常夜の呪い>参加シナリオです。他にも素敵なシナリオがありますので、見てみて下さいね。

●目的
 スリーパーを撃破せよ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●立地
 天義の隅っこにある村がまるっと闇色の幕に覆われています。
 村人は眠っており、周囲はとても静かです。
 中に入ると、まるで天上の宮殿を再現したかのような、白を基調とした空間が現れます。
 そこには村人の姿はありません。スリーパーと心置きなく戦闘してください。

●敵
※ここから下の情報はメタ情報(グレモリーが手に入れなかったもの)になります。
 「うわー! なんだこいつはー!」的なアクションをしてもいいですし、しなくても構いません。※

 スリーパーボスx1
 スリーパー雑魚xいっぱい

 眩い後光(ボスのみ)
 光の矢(ボス・雑魚)
 眠りの輪唱(ボス・雑魚)

 女天使のような荘厳な姿のスリーパーが1体、
 キューピッドめいたスリーパーが無数にいます。
 光の矢を放って神秘攻撃をしてきたり、
 眩い後光を放って悩ませてきたり、
 眠りに誘う歌を歌ったりします。
 これらは全て「どのレンジにも補正をうけない」ものとします。
(プラスの補正もマイナスの補正もありません)

 ボスを倒せば村は解放され、呪いは消え去ります。
 雑魚を倒しても余り意味はありません。


 ちょっと厄介な敵ですが、イレギュラーズのみんななら大丈夫だよネ!

 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • <常夜の呪い>天使は夜闇に微睡む完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月04日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

主人=公(p3p000578)
ハム子
リカ・サキュバス(p3p001254)
雨宿りの雨宮利香
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
竜剣
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
リナリナ(p3p006258)
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
<不正義>を知る者

リプレイ

●夜闇の如き丸い殻
「あれが<常夜の呪い>だね」
 その夜色の半球は、遠くからでもよく見えた。
 天義国内、中心街から街はずれへと続く、舗装されていない道中で『ハム子』主人=公(p3p000578)が確認する。
「天義のあちこちに同じようなものが見えますね……なんだか、……いえ」
 口をつぐんだのは『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)。あの黒いヴェールそれぞれにイレギュラーズが対処しに行っているのだろう。それはまるで、かの『サーカス』を想起させるような乱痴気騒ぎ。
「そうだね、この騒動の広がり方は何となく覚えがある。何でもありの世界ではあるけど、さすがにこれは自然に出来たものじゃなさそうだ」
 『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)が頷く。自然的なものでないなら、裏で誰かが糸を引いているのだろうか。何のために、などと理由を問うても、きっとまともな答えは返ってこないだろう。この世界で起こる事件は概ねそういうものだ。
「なんて事……思った以上に広がっているようですね……!」
 変わり果てた天義の景観に『天義の守護騎士』アマリリス(p3p004731)は嘆くように言った。けれど、彼女一人でこの空間を全て壊していくのは無理がある。今はまず一つ、依頼の村を救う事から始めねばと気合を入れ直した。

 中心街から外れ、舗装されていない道を暫く歩いていくと、村が――いや、『村だったはずの場所』が見えてくる。すっぽりと夜色に覆われて、中の様子は外からは伺えない。
「……入ってみないと、見えない……みたいだね」
 『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)が呪いの境界線を確かめて、頷く。彼女は元々天義の民だったが、断罪を受けそうになって家を出た身。複雑な心中をいまは冷静になだめて――今はただイレギュラーズとして、故郷が元の姿を取り戻せるように尽力するのみだ。
 誰ともなく頷き合う。中にどんな空間が広がっているのか、どんな敵がいるのかは判らないが……虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。
 そうして一行は、夜色の空間へと足を踏み入れる。


●柔肌の如き白い戦地
 ――そこは、白亜の宮殿だった。
 磨かれた象牙色の床。シンプルに、されど細やかな装飾を施された柱が並び。天井はなく、果てのない一枚板のような白い天蓋が広がっている。ややクリームがかった色の布が何処からともなく降ろされて。天義を知らないものでもピンとくる。これは“天上”だ。
「……随分とお綺麗な場所に巣くってるじゃねえか」
 『鳶指』シラス(p3p004421)は吐き捨てる。誰かの夢が投影されているのか、と一瞬疑問が脳裏をかすめたが、そんなものはどうでもいいと結論付ける。これから戦う敵の事は、その攻撃手段と倒し方さえ判れば良い。
「おおお!?」
 一方、『原始力』リナリナ(p3p006258)は突如変わった景色に超驚いていた。一歩下がって、呪いの範囲から出る。青空に、天義のよくわからない信仰施設。うん、普通の街並みだ。一歩歩いて、呪いの中に入る。様々な白で彩られた、全く違う景色が目に飛び込んでくる。
「おおー!? すごいゾ、見た目が変わる! これが目的地だな!?」
「うん、そうだね……すごい」
 アイリスがほう、と息を吐く。神のおわすところ、というのを想像した事がないといえば嘘になる。魂が導かれ、輪廻するのは……きっとこんな、美しいところなのだろう。
 けれど。
 この光景は確かに美しいけれど、まるで絵本をそのまま模したようで――何故だか不気味だった。
「リナリナ、ちょっと混乱したから肉食うゾ! お前らも食うか?」
「いえ、やめておきます。……戦いが終わったら、少し御裾分けしてください」
 緊張感漂う空気を、リナリナが少々荒っぽく解す。知らず、肩に力が入っていた事を知り、アマリリスは少し笑った。

 ――きゃは、きゃははは……

「!」
 笑い声が上空から聞こえてきて、一同は集まるように固まり、警戒態勢を取る。声のした方を見ると――嗚呼。あれはまさに、絵画に書かれる小天使。小さな弓を持って、小さな羽で羽撃いて、ゆっくりと降りてくる。
 同時に、前方にあったヴェールがゆっくりと左右に開き……黄金の椅子に座り微睡む、大きな羽を持った白衣の女が現れた。
「……天使気取りかよ」
 ふざけてやがる、とシラスが言い捨てる。怪物の分際で天使を気取るなど、冒涜にも程がある。
「天使と女神……これは、誰かが見ている夢の中なのかな。天義らしい夢だね」
 公が間合いを測りながら言う。
 やがて、女神――スリーパーがゆっくりと金色の睫毛に彩られた瞳を開く。長い金髪に、碧い瞳。絵にかいたような美しさは、逆に違和感さえ感じる。
 小天使が目覚めを祝福するように降りてくる。何人も、何匹も。
「……キューピッドの方は、きりがなさそうですね……」
 利香が周囲を見回す。ただの天使ならば良いのだが、相手は敵だ。きりがないのは非常に困る。
 やがて、女天使がゆっくりと立ち上がる。大きな翼をはばたかせ、まるでようこそと迎えるように、両手を軽く広げた。

 ……夢を見て“このまま覚めなければ良いのに”と思う事は誰にしもある。誰にしもあるけれど――この天義という国においては、そういう人が多いのかもしれない、と『宵越しのパンドラは持たない』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は思う。
 心穏やかに信仰の夢を見て、そのままずっと。――けれど、彼女はそれをよしとしない。だって、“覚めなければいい”と思うから夢なのだ。眠り続けるか現実に立ち戻るか、それを決めるのは自分自身で、誰かに決められる事ではない。……少なくとも、呪いで眠り続ける事を幸せとは呼ばない。
「だから、私は……私たちは解くわぁ。 この呪いを」
 女天使は、ただ微笑むばかり。


●断罪の如き金色の矢
「悪いけど、カミサマのお迎えはいらないかな! ボクは既に、パンドラの導きによって此処にいる訳だからねっ!」
 初手、公のハイドロプレッシャーが火を噴いた。高圧水流が小天使を押し流し、あちらそちらへ追いやって、女天使への道を作る。
 上空にいる小天使たちが、戦の火蓋が落とされたと金色の矢を引き絞る。それは傍から見れば流れ星のように、美しいものに見えただろう。しかしイレギュラーズにとっては敵の攻撃でしかない。
「天使さん、ほら、そっちじゃないですよ。こっちを見てください」
 攻撃ならば、それを見逃す者はいない。利香が周りの小天使に向けて投げキスとウィンクをする。瞬間、身に薄くまとっていた夢魔の瘴気がふわりと甘ったるく広がって、天使たちは夢魔の虜になる。けれど小天使は愛情と敵意の区別がつかないのか、利香に向かって一気に弓を引き絞り、黄金の流星を放つ。
「くぅ……っ!」
「利香ちゃん!」
「大丈夫です! このくらい! 私に気にせずやっちゃってくださいッ!」
 小天使には愛情と敵意の区別がつかないらしい。矢を放ったかと思えば、花に惹かれる虫のように群がる天使たち。タイミングを見計らい、一気に距離を取る利香。目くばせした先にはアーリアがいる。
「……皮肉よねぇ。天使を倒して、天義の人を助ける……でも、やるわよぉ」
 彼女らしく間延びした声には、けれど決意が滲んで。唇に当てた指を、しゃなりと小天使たちに向ける。投げキスと共に舞う、赤い花吹雪。小天使の団子を包むように吹きすさべば、小天使の笑いは小さな悲鳴となって、小さな体躯に状態異常の重みがかかる。
「……! 駄目、まだ上から……!」
「やっぱり、あの女の人を倒すしかなさそうねぇ」
 はい、おかわり。とでもいうように、次々と小天使が降りてくる。何処から来るのか、なんて、きっと聞いても意味がない。だってここは、夢なのだ。
「……“神よ、罪深き彼女に贖罪の機会を与え給え”……」
 願うように請うように、アイリスが解放の言葉を口にする。ぎちり、ぎちり、かたかた。パズルを組み上げるような音がして、自立人形“聖業人形・マグダラの罪十字”が起動する。
「これは、……読んでる暇は、なさそうだね」
 腰に下げた智慧の本に軽く触れ、せめて守ってね、とアイリスは呟いた。いつもなら周囲を漂う死霊の霊魂も、特殊な空間だからか見えない。ならば、と、アーリアが花で囲い込んだ小天使たちに手を向けて、死の花を次々と咲かせ、小天使を光の粒へと返していく。
「生憎、お迎えにはまだちょっと早いかなぁ」
 アイリスが撃ち漏らした小天使を、威降が妖刀“不知火”で両断する。軽口を叩きながらも、その太刀筋に迷いや遊びはない。後ろからアイリスを狙っていた小天使へ一気に接近すると、不知火でもってなます切りにした。

 公と利香、アーリアが開けた道。僅かな間隙を縫って、女天使に接近する者がいた。シラスである。攻撃的な光を瞳に宿し、片手を向ける。
「天の使いだかスリーパーだか知らねぇが……」
 ぐっ、と手を握る。同時に、女天使の周囲の空気が一気に圧縮され、彼女が座っていた黄金の椅子が音を立ててへしゃげた。
「地べたを舐めさせてやる」
『………』
 女天使にも椅子と同様の圧力がかかったはずだが、そこはスリーパーゆえか、僅かに身じろぎしたのみだ。内部にダメージが蓄積している事を祈るしかない。憎々し気にシラスが表情を歪めた。
「自分も天義の民ですから、天使の存在は尊ぶものでしょうが……貴方のような天使は初めてです!」
 シラスに続いて切り込んできたのはアマリリス。その表情にも同じく、苦い怒りが浮かんでいる。
「その姿、存在そのものが神への冒涜! 天へ矢を引くその行為、我が手にて断罪する!」
 貼りつくように女天使の動きを封じ、更に素早く印を描くと相手に簡易封印を施そうとした、その時である。
 女天使はそれまでぼんやりと――寝起きのように――シラスとアマリリスを見ていたが……戦闘である。己もやらねばやられる。と認識したのだろう。ゆっくりと翼を広げ、黄金の光を放った。

 ――煌!

「っぐあ……!」
「きゃあ……!?」
「なっ、この距離まで!?」
 衝撃波を伴う光の波動に、イレギュラーズは一気に体力を削られる。相手が近くにいようと遠くにいようと関係なく、その後光は彼らの肌を焼いた。
 怯んだ彼らに、再び小天使の矢が降りかかる。……主な標的となったのは、女天使を直接狙ったシラスとアマリリスだ。光の矢が次々と突き刺さり、赤い血が白い理想郷を汚す。
「くっそ……!」
「一つ一つは大したことないのに……!」

 ――La……

 女天使は攻め手を緩めない。
 その喉を震わせると、鈴が鳴るような美しい歌声で歌い始めた。その歌声はじんわりと偽りの理想郷に鳴り渡り、そして、小天使が輪唱のように幼い声で歌い始める。
「っ……!」
 自らの精神力を削られるのを感じる。わんわんと脳内で鳴り響く歌、その間にも降り注ぐ矢。利香がシラスたちの前に立ち、三人が黄金と紅色に染まる。
 それを見ていたアイリスは、知らず知らず瞼を擦った。段々と瞼が重く、思考が鈍重になる。これは、そうだ、とても疲れて眠たいときに似ている。
 眠い。駄目だ、寝てはいけない、駄目だ、とても眠い――

 ところで、リナリナはというと。
「あうあう! 全員同じ顔してるゾ!?」
 小天使たちを相手取り、困惑しながらもその矢をかわしていた。流石と言うべきか、矢がかすった傷はあるものの、まるで獣のように黄金の流星をかわしていく。
「母親のしつけがなってないゾ! カントクフユキトドキ!」
 どうやら女天使を母親だと思っているようだ。まあ、保護者というか、引率者と言う意味では間違っていないかもしれない。
「死刑! 死刑! るら~!」
 どうやら彼女の中では女天使は重罪のようだ。歌が鳴り響き、眠気が襲ってくる中、知るものかとリナリナは怒りのままに、持っていた肉を上空高く放り投げた。

『っ!?』
「……っぐ…あ!」
「歌が……やんだ……?」
 女天使の体躯が揺らぎ、歌がやむ。小天使の輪唱は続いているが、女天使が歌うのをやめたからか、徐々に偽りの聖歌は静まっていく。
 何が降ってきたのか。なんと、それはリナリナの肉である。――投擲「流星」。上空へブン投げたかと思ったら数秒後には目標に落下するという面白投擲技である。実際どういうテクニックなのか気になるところだが。
「ん……わ、たし……」
 アイリスは頭を振るい、ねっとりと残る眠気を振り払う。周りの皆も同じように頭を振る者、相手を揺り起こすもの、様々だったが。
「……今のうちよぉ。 短期決戦で決めるわぁ!」
 一足早く――酔うのが楽しい者は、酩酊から醒める術を知っているのか――覚醒したアーリアが淡い緑の衝撃波を放ち、精神力の回復を兼ねた攻撃を女天使へ放った。それを皮切りに、全員の視線が女天使へと集まる。
「みんな、ボクに続いて!」
 一気に近接を得意とするイレギュラーズが女天使へと殺到する。肉薄した公が体勢を崩した女天使に放つ“ラッキーストライク”。女天使の瞳が体力の低下ではない要因でぐらり、と揺れたのを見て、公は確信する。この天使は一撃一撃の威力こそあるが、精神的防御に強みはない。それはまさに勝利を呼ぶ一撃だった。
「……ひでえ歌だ。二度と聞かせるんじゃねえぞ!」
 小さな奇跡を用いて体制を立て直したシラスが二度目の爆縮を女天使に浴びせる。流石に今度は堪えたのか、女天使の身体がくの字に曲がる。
「ええ、二度と歌わせやしません! 神の御名のもとに!」
 同じく小さな奇跡を用いたアマリリスがピューピルシールで、今度こそ眠りをもたらす歌を封じる。女天使に続いて小天使が歌うならば、女天使さえ封じてしまえば歌は始まりもしないはず! 天使の皮を被った怪物に、今こそ断罪を! 不正義の贖罪は死を以て!
「いきますッ!」
 防御に徹していた利香の、レジストクラッシュが唸る。防御手さえ攻撃に回り、一気に攻勢をかける。小天使の矢が降り注いで、皆に突き刺さるけれど、そんなもの、痛くも痒くもない!
「カントクフユキトドキは死刑だゾ!」
 リナリナも肉を投げる。落ちるのは数秒後だが、その威力は先程を持って推して知るべし。
「最初はね、少し怖かったわぁ。でも、もう怖くない。あなたなんて、怖くない……!」
 アーリアが凍てつく鎖を放ち、女天使を縛り上げた。もう怖くない。怖くなくなったのではない。恐れるべきは“あなたではない”と気付いたから。
「…っ、これで……!」
 恐れるべきはあなたではない。そう気づいたのはアーリアだけではない。アイリスもまた、それに気付く。これはただのスリーパー。これはただの、天義に巣食う魔物。なら、何を恐れる事があるだろう。死霊弓をためらいなく引いて、放つ。その矢は女天使に突き立って、呪いの――いや。イレギュラーズの意志の分だけ、傷をもたらす。
「……悪いね。やっぱりお迎えはまだ必要ないみたいだ」
 その刃は、至近において死に近く。風巻流小太刀、奥伝の一。例えこのスリーパーが無瑕疵の盾を持っていたとしても、この一撃の前では意味を持たないだろう。威降の必殺の一撃“颶風穿”がスリーパーの胸を違いなく貫くと……

 ぱん、と音がして。
 一同の視界が一瞬で闇に包まれ、そして、晴れた。


●幻の如き夢の跡
 破裂するように消えた<常夜の呪い>の後には、長閑な村が一つ、ぽつんと残されていた。戦闘の跡は、各々についた矢傷以外に何一つない。

「私たちが眠っている間にそんな事が……ありがとうございます」
「そういえば、眠る前に別の村が妙な事になっていたとか、そういう噂話を聞いたところだったなぁ……」
 村人たちはあれから次々に起き出して、傷付いている見知らぬ人々に驚いた。けれど、シラスが信仰蒐集を用いた堂々とした態度で『自分たちは教会の遣いで、助けに来た』と説明すると、納得したように頷いた。
「皆さん、何かお変わりはありませんか?」
「ええ、大丈夫です。少しお腹が減ったくらいかな」
 はは、と村人が笑い合う。肉ならあるゾ! とリナリナが何処からともなく骨付き肉を取り出して村人に渡し、和やかな雰囲気が場を包む。
「ところで……妙な事、というと、今回のような事ですか?」
 和やかな雰囲気の中、アマリリスが問う。そうだよ、と壮年の村人が頷いて。
「ああ、……いや、人がいなくなったって話だったかなぁ……」
「人が?」
「詳しくはちょっと覚えてないんだ。何せその後、色んな場所がヘンな事になっているって噂で持ちきりになったからさ」
 まさかこの村もそうなるなんてなぁ。
 ははは、と笑う村人たち。笑えるのもイレギュラーズ――教会の遣いのおかげだと、彼らには感謝ついで、寝過ぎて空腹になったついでの食事が振舞われた。

 謎を多く残す夜色の領域。
 果てのない眠りに誘ったのは、一体誰だったのか。
 何にせよ、この村の眠りは晴れ、村人は再び日常に戻る事となる。


●終幕
 おねむりなさい。
 と天使が謳う。
 おやすみなさい。
 と誰かが追従する。

 いいえ、もう起きる時間です。
 そう言ったのは、運命を異とする者たち。
 彼らの刃によって、偽りの天使は死の奈落へと落ちた。
 無辜の村人たちを優しく残酷な眠りに誘う者は、もう、いない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
天義で天使……ギリギリを攻めたな、と汗を拭っております。
皆さんの天義に対する思いをプレイングを通じて感じられて、とても嬉しいです。
これからもプレイングでどんどん皆さんの想いを教えて下さいね。
ご参加ありがとうございました!

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