シナリオ詳細
ラサ・ナイトフィーバー
オープニング
●祭りの夜
ラサ北部にあるオアシス地帯、アブドゥ。
広大な砂漠にできたオアシスには人が集まり物が集まり、ホテルた建ちカジノが建ち、巨大なマーケット通りができあがるものである。
アブドゥもその例に漏れず賑わい、特に娯楽と活気に優れたこの土地では毎夜のようにお祭り騒ぎが行なわれていた。
「来いよテリー、花火が上がるぜ」
露店街の屋根の上を飛ぶスカイウェザーの少年と、そのあとをついて屋根伝いにおたおたと進むブルーブラッドの少年。
彼らは街のなかでもすこしだけ高い家の屋根に乗ると、夜空に上がる花火をうっとりと眺めていた。
そんな時である。
「金を出せ! 抵抗するな。箱の中身だけでいい!」
花火の音に混じって大声で怒鳴る誰かの気配。
少年たちはおそるおそる屋根の上から声のするほうを覗いてみた。
商店の中、ガラス越し。ナップザックを担いだ褐色の男。
手には拳銃。
銃口はカウンター越しの店主に突きつけられていた。
きわめて分かりやすい商店強盗だった。
店主は店の端に置いた剣に視線を流すが、それに気づいた強盗の男は銃をより近づけて動くなと怒鳴る。
どうにもできないような、そんな場面に。
ザ、と動く影を、少年たちだけは見た。
それは『あなた』の姿であった。
●自警団からの依頼
「やあ、アンタたち。確かローレットの傭兵さんだったよな。
見たことあるぜ。俺のことは知らないか、蠍の残党狩りの時にいたんだが……ハハッ、後方支援組だったからな。顔も会わせてないかな」
ショーテルとマジックトーチを装備した褐色の男が、やや興奮気味に話しかけてくる。
ラサの町アブドゥへ観光にやってきたあなたを見つけ、思わず立ち寄ったようだ。
一方的に話しかけてしまった無礼に気づいて、男は苦笑いと謝罪をすると、コインを一つ、あなたのテーブルに置き、人差し指でトンと叩いた。
『ここは奢らせてくれ』というサインである。
「楽しんでるかい。この町はひときわ賑やかだからな。
今夜は特別なんだぜ。月に一度の花火が上がるんだ。
その日に会わせて露天はビヤホールを開くし、スナックを売るのさ」
言われてみれば、町はまるで祭りのように賑やかだ。
大道芸人が何人も道ばたに出て、ジプシーダンサーたちが音楽や踊りを披露している。
「俺たちは町に雇われてる傭兵でね。いわゆる警察みたいなモンさ。
こういう夜は特に仕事が多いんだ。人がみんな浮かれてるし、観光客も多い。花火も上がれば紛れやすいし……な」
この一瞬だけ、男は鋭い目をした。彼の正義感が、凄惨な何かを思い起こさせたのだろう。
「そこでだ。いい話があるんだ。今夜だけ、俺たちと一緒に町の傭兵をしてみないか?
俺たちの同僚が一昨日怪我しちまってな。結構な重傷を負っちまってる。動けなくは無いが、そういう杜撰さで同僚を亡くすのは忍びないだろ?
だから、今夜だけの追加人員ってことで、ひとつ頼むよ」
これを依頼として受けたあなたは、アブドゥの町を自由に見回り始めた。
そんな中で遭遇する事件。
あなたは、どんな風に解決するのだろうか……?
- ラサ・ナイトフィーバー完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年03月30日 23時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●祭りの夜に隠れて
マフラーからの排気と振動。
徒歩とさして変わらない速度でゆっくりとすすむバイク、『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)の横を、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)が煙草片手に歩いていた。
「歩き煙草」
「いいんだよ。ここじゃ違法じゃねえんだ」
キドーは紙煙草をくわえたまま指を立て、天空に円を描くように回した。
それに伴ってカラスがひとなきし、同じように空を旋回する。
二階建ての屋根が並ぶこの住宅街は、トタンの屋根や壁があちこちに目立っていた。
決して裕福そうではないが、かといって生きていけないほどにも見えない。ここはそんな場所だった。
その原因は明らかで、遠くに聳え立つきらびやかなビル街では毎月のように花火を上げてパーティが開かれるという。このオアシスを町に変えたラサドリームの体現者アブドゥとそのおこぼれに預かる者たちの宴。とうぜん『おこぼれのおこぼれ』を狙う者も多く、この町はそんな人々によってできていた。
「なるほどねえ。確かにこういう場所なら強盗も起きるわ。けど俺だったらもう少しうまく……おっと」
煙草の煙を吸い込んで誤魔化す。
この町に24時間営業のコンビニエンスストアはない。商店も花火が上がる前後の時間には閉まってしまうが、その隙をつくように強盗や窃盗といった事件は多発するという。が、それは素人考えだ。いかにも貧困層が急場の金を得るために企みそうなことで、キドーなら白昼堂々裏口から――。
「こういう小さな犯罪を解決していくことで、大いなる平和は保たれるんです。ね、キドーさん!」
「ソウダネ! ガンバロウネ!」
カートゥーンフェイスで振り返るキドー。
「おや、向こうの方……なにかありませんか?」
アルプスローダーのアイカメラが回り、遠くの様子を気にしだした。
「おう、ちょっと待ってろ」
指をくいくいと動かしカラスに命令を出すと、旋回していたカラスが気になる方角へと飛んでいく。
こめかみに爪をあて、キドーは低く唸った。
「リスクとコストの割にリターンの少ねえ犯罪が起きてるぜ」
「といいますと」
「押し込み強盗だなあ、ありゃあ」
言うが早いか、キドーはアルプスローダーのシートへと跨がった。
「飛ばしますよ」
と言ったときには、アルプスローダーは時速90キロを出していた。
「手を上げろ、余計なことはするなよ! ……あ、いや、レジの鍵をあけろ! 手は下ろしていい! ……ああもう!」
小柄な商店のレジ係に、旧式のマジックライフルを突きつけてわめく男。普段から戦闘慣れしていないのか、ライフルを持つ手が微妙に傾いていて腕は細い。
店の外では馬をとめた男が声を荒げていた。
「おい、さっさと済ませろ。傭兵が来ちまう!」
「金を入れろ! ポケットじゃない。鞄だ。ちがう俺のだ!」
ひとに命令をするのに慣れていない。下働きを長くやり続けてた者の特徴だ。男はライフルを一旦レジカウンターに置くと、店主の持っていたコイン袋をひったくった。
「もういい俺がや――」
外で、変な音がした。
キキーというブレーキパッドがタイヤを削る音。どふんという重いものに硬いものがぶつかる音。馬の短い悲鳴と、ぎゃひという声。これは仲間の声だ。
店の外へ振り返ると、一台のバイクがエンジンをかけたまま停車し、アイカメラだけをこちらに向けた。
「馬が飛び出してきたので」
反対側の建物には馬がめりこみ、その下には手綱が腕にひかかかったまま激しく振り回されたらしい仲間が転がっていた。
「こーんばーんわー……」
目をギラリと光らせ、緑肌の男が店に入ってくる。
入り口で木靴を脱ぐと、布を巻いた足で弾むように踊るように、不思議な歩幅で近づいてくる。
獲物を見る目と並びの悪い歯が、彼の『犯罪慣れ』を直感させた。
店の奥へと逃げようとする男――の後頭部に叩き付けられるククリナイフの柄。
白目を剥いて倒れた男を見下ろして、男は……キドーは店主に振り返った。
「殺してねーぞ?」
店主は震えながらコイン袋を出した。
「強盗でもねーぞ?」
●夜風が冷たいから
「傭兵が犯罪に手を染めないのは、犯すことによって得られる利益よりも報酬を受け続けることで得られる利益のほうがずっと大きいからだよね。けどそのバランスが崩れれば治安機構は腐敗し嘘と癒着が横行する。この町は、そういう意味ではしっかりしてるよ」
白黒のまだらネコに乾燥フードを食べさせて、『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は指先で頭を撫でてやる。
さあ行っておいでと声をかければ、ネコはみじかく鳴いて町の裏路地へと入っていった。
ホテルやカジノのある通りはキラキラとしていて賑やかで、一方住宅街の人々の多くは稼ぎ時だからとホテル側へと働きに出ている。
『剣鬼』白薊 小夜(p3p006668)が白杖をつきつき、足を止めて顔を上げた。
「ものの本で読んだことがあるわ。住宅の数に対して人が極端に少ない時間は、犯罪が起きやすい……と」
「転じて、人にお金を払っていれば犯罪が抑止される。その順序は治安が第一。て?」
「その本によれば生産が第一、だったけれど」
経済というものはお金を使うことで回る。
金を増やしたければ金を使わなければならない。とは誰の言葉だったろうか。
「祭りを楽しむのは、良いことよね。野暮が表にでないように、しっかりお仕事をしましょうか」
吹いた風を吸い込んで、小夜は深く息を吐く。
ラサの昼は照り焼くように熱いが、夜は一変して寒い。冷たいはものの臭いや感覚を鈍らせるもので、それもまた犯罪の助長につながるのだが……。
「火薬の臭いがするわね」
「どのへんかな?」
小首を傾げるウィリアムに、小夜は一秒ほど黙ってから指で方角と大体の距離を示した。
ウィリアムは頷き、裏路地をするすると通り抜け屋根に登っていたネコの目を借りた。
確かに強盗事件が起きているようだ。
安全装置もついていない粗末な拳銃を床に撃って威嚇する男の様子と、手を上げて首を振る店主の様子。
周囲がそれに気づかないのは、今まさに夜空に花火があがっているからだ。
「急ごうか。店主の方はまだ余裕があるみたいだけど、それは――」
「傭兵が来ることを信じているから、よね」
小夜は杖を短く持ち直すと、助走をつけて飛び、塀や雨樋をつたって民家の屋根へとよじ登った。
犯罪抑止に効果的なのは兵に金を払うこと。転じて、兵が迅速に犯罪を解決すること、である。
もたもたと鞄にコインを詰める店主と、それにいらつく強盗。
ようやく鞄がコインで満たされたところで、強引にそれをひったくった。
「通報はするなよ!」
男は店主に拳銃を向けたまま店を飛び出し――たその瞬間、屋根から飛び降りた小夜の気配に気づいた。
咄嗟に振り返り銃を向ける。
が、それを予め計算していた小夜によって銃が手元から跳ね飛ばされた。訓練された兵士ならありえないことだが、昨日今日強盗をやらかすためだけに粗末な銃を握った彼は、まともにグリップを握り込むことすらできていなかったのだ。
それによって暴発した弾は店のガラスに命中したが、ヒビひとつはいることはない。小夜が予め店に対して保護結界をはっていたせいである。
「観念しなさい……と言えばいいのかしら?」
杖を握り、『柄』に手をかける小夜。
ただならぬプレッシャーに男は鞄を放り出して反対側へ走る……が。走った側の道をネコが横切り、ウィリアムが立ち塞がった。
「そ、そこをどけ!」
「ごめんね」
手のひらを突き出すウィリアム。
空中に生まれた水風船がばしゃんとはじけ、その衝撃で男は1メートルほど吹き飛ばされた。
後ろ向きに転がり、頭を打って気絶する。
ウィリアムはコインの入った鞄を拾い上げると、商店の店主に向けて翳して見せた。
「アブドゥさんの傭兵だよ。もう大丈夫。他に被害は?」
●ゴールデンナイト
胸元に光るルビーの宝石。涙型にカットされたそれが、大きく突き出た乳房の谷間へ半分沈むように乗っている。
ショートの髪をかきあげれば、一回り小さい同種の宝石が両耳のイヤリングとしてさがっているのがわかるだろう。
強く注目を引く彼女の有様に、人々はすれ違い際に振り返った。
「さすがに……」
『永遠のキス』雨宮 利香(p3p001254)は周囲の視線に流し目を送り返し、自らの印象を強めていく。
(これが私服警備員だとは思わないでしょうね? いひひ♪)
(一夜限りの警備員だから使える手、よね?)
反対側の人混みが、まるでモーセが杖をかかげたかのごとく左右に割れていく。
屈強なパトロンを左右に、金を持っていそうな中年の商人を背後に侍らせた『毎夜の蝶』十六女 綾女(p3p003203)がボディラインを大胆に見せつつ、しかし露出は殆ど無いという上品なスパンコールドレスを纏って現われた。
二人が向き合い、頷き合い、そして並んで歩くというだけで周囲に小さなどよめきが起こる。
それほど、今夜の彼女たちの魅力は凄まじいものであった。
まるで集まるミツバチと歩く花。
利香と綾女が空気を甘く満たしているここは、ラサのオアシス街アブドゥ。その中でもひときわ豪華ないでたちをしたセンターホテル。一階カジノフロアである。
アブドゥには三箇所のカジノがあり、それぞれ『ラッキー88』『ザ・プリマ』『フリーサイド』という。
利香たちが警備についているのは『ザ・プリマ』。
スタッフの多くは白い仮面をつけディーラーや給仕にあたっており、客の一部も赤い仮面をつけた者もいた(仮面をつけていないものは少数である)。
貴族の仮面舞踏会を半分模した、上品なカジノなのである。
そんな中であえて仮面をつけずにこうして魅力を振りまけば、誰も彼女たちを怪しまない。どころか、どうにかしてモノにしようとラサの富豪たちが言い寄ろうとしてくる。それを、綾女のパトロンたちがやんわりと遠ざけるのだ。
分かりやすく例えると、海岸で男子をそばに置くことでナンパ避けをするようなものである。
そんな中。
「おい、どういうことだ! イカサマじゃないのか!?」
二人組の男たちがポーカー台で声を荒げた。
兄弟のようで、身なりはよく金も持っていそうだが、どうもひどく酔っているらしい。
スタッフの一人がそっと利香に耳打ちする。
「ビッキー&ヴァンス兄弟です。投資家で結構な財産をもっていますが短期なことで有名なんです」
追い出しましょうか? と目で訴えてくるスタッフに、利香たちは指を立てて小さく振ることでいさめた。
「あら、あなた」
スタッフに文句をつけようとする兄弟、ビッキーの横に立ち。呼吸の間を狙うように顔を覗き込んだ。ふわりとした花の香りを吸い込んだビッキーが、荒げた声を納める。
「私もご一緒していいかしら?」
一方のヴァンスには、綾女が無言で横につき、視線だけでコンタクトをとる。
女慣れした二人である。こうした上等な誘いを断わる理由もなく、そして受け入れない手はない。
仮に騙されたとて、色香の深い美女と時間を共にする代金を払うなら充分だと、彼らは理解していた。
酔いは感情を素直にし、そして美女と過ごせる感情がギャンブルの勝ち負けよりも上回ったのだ。ある意味、『いるだけで解決になる』二人であった。
その夜、上階のホテルにとったそれぞれの部屋に二人は呼ばれていった。
後にどうなったのかは、スタッフたちは関知していないという。
●ルーレットは今日も回る
アブドゥに存在するカジノのひとつ『ラッキー88』。
比較的大衆向けのこのカジノはシックで落ち着いた内装と、それに似合ったジャズ演奏で彩られている。
「さーさー皆様お立ち会い! 期待のニューフェイス、ディーラーYOUでーす!」
トランプカードのくっついたシルクハットを掲げ、ルーレットボードの前へやってくる『圧倒的順応力』藤堂 夕(p3p006645)。
いつもの服装とはちがい、シャツに蝶ネクタイ。白と黒でシックに整えた服装で仕上げている。胸のネームプレートがトランプカードの8になっているのは、このカジノの特徴である。女性はダイヤの8。男性はスペードの8。
『小さき盾』ユー・アレクシオ(p3p006118)はボーイの格好をして、スペード8のネームプレートをつけていた。
夕の姿が見えるように、しかし近すぎないように、まるでそういう置物であるかのようにじっと立っているだけ……に見える。
実際は、この賑やかで声と音楽とスロットマシンの騒音が響く中に、鋭く深く耳を澄ませているのだ。
戦闘行動その他、指一本の動作すらカットしてただただ聴覚に集中するユー。
今の彼には『ラッキー88』に入った客の数と位置、話し声の違いや喋った内容、果てはサックス奏者の指の形までもがくっきりと把握できていた。
それら全てを並行処理するのは不可能に近いが、声を荒げた人間や不自然にうろうろし続ける人間だけを絞り込むのはそう難しいことじゃない。
(……このカジノ、随分と調節がうまいんだな)
賭に勝って声を上げる者。負けて悔しがる者。その比率がおおよそ同じ。しかも台の移動や距離感まで計算し、総合的にしっかり利益が残るように、しかし客はそれなりに勝っているように見せかけるという巧妙な調整がなされていた。
といっても要は運。調整できるのは確率だけである。
同じ質量の塗料をきわめて均等に配分して作られた『一切の偏りがないサイコロ』や精巧なスロットマシンも、完全な平等を作り得るものではない。
中には椅子を蹴って立ち上がり、自分が負けてばかりいることに怒り出す者もいる。
(……見つけた)
ユーは意識を通常モードに切り替え、覚醒したように強く息を吸った。
(メール、夕に伝達を。客を案内する)
ユーは声を荒げてスロットマシンを叩こうとする客の後ろに立つと、振り上げた手首を掴んで止めた。
「おめでとうございますお客様」
驚きの一瞬に差し込む、さらなる驚き。
「あなたはただいま、スペシャルゲームの対象に選ばれました」
ユーが指を鳴らすと、ジャズ奏者たちが盛大な雰囲気の音楽へと切り替えていく。
スポットライトが夕へとあたり、夕はブラックジャック台の前でハットを高く翳した。
「皆様ご注目ください! ただいまからスペシャルゲームを開催します! 対象はこの会場にいらっしゃる中から選ばれたたった一人! 相手はこの私でーす!」
ライトの下。台の前へと連れてこられた客が、状況が飲み込みきれないという顔のまま椅子に着く。
その困惑を感知した夕は、片眉を小さく上げ囁くように身を乗り出す。
「これはカジノを盛り上げるためのイベントです。お客様が払うべきはチップ1枚だけ。しかしレートは100。ゲームルールはブラックジャック。
その一枚を失うか、100倍になって返るかのスペシャルゲームなのです」
客の手には一枚のチップ。
それが100倍になるか0になるか。今まさに負けていた男が、これに乗らないはずがなかった。
「オーケー、ゲームスタート!」
ユーがアイコンタクトを送る。
(イカサマするか?)
(ノー! 真剣勝負です!)
ユーは肩をすくめ、数歩下がった。
配られるカード。
客の数字は18。
21に近ければ近いほどよく、超えれば負け。そういうゲームだ。
客はその時点でカードを増やすのをやめ、台に晒した。
夕もまた、カードを晒す。
16。この時点で客の勝ちだが……夕はカードを一枚手に取った。
「さあ、運命のカードは!」
スペードの10。
夕が笑顔のまま固まった。
目からふぁーっとハイライトが消えていく。
その様子を見て、ユーはただ働きを決意した。
余談。この後夕とユーは只管皿洗いを繰り返して負け金を補填したが、警備はちゃんとこなしたと言うことで別に賃金が支払われたという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
good night!
GMコメント
このシナリオはちょっとばかり特殊な前提条件があります。
プレイングガイドをお読みになってからプレイングを作成しましょう。
【プレイングガイド】
プレイング冒頭にて『パトロールする場所』と『相方の名前』をそれぞれ書いてください。
PCたちには今夜だけ町の警備隊資格が与えられます。
形式としてはオアシスの土地所有者アブドゥが雇った傭兵という扱いなので、この町のあらゆる場所に対するパトロールの権限を持っています。(法的に付与されているというよりは、アブドゥさんの傭兵ならしょうがないというルールが商店やホテルの支配人たちにあります)
そんなPCには、『二人一組』になって町のどこかを自由にパトロールしてもらいます。
相談掲示板では行きたい場所と相性のいい相手を宣言しあってマッチングするとよいでしょう。
お誘い合わせの上で参加された方々であれば、観光がてら一緒に町をパトロールするというのもよいかと思います。
パトロール中、なにかしらの事件に遭遇しますので、二人の戦闘能力や非戦スキルないしはギフト能力を駆使して事件を解決させましょう。
【パトロールパート】
チームがパトロールする場所を以下の内から選択してください。
他にもパトロールしている傭兵チームがいくつかあるので、一箇所に偏ってもなんら問題はありません。行きたい場所に行きましょう。
●商店通り
町の生活を支える小さな商店が並ぶ通りです。
OP冒頭のシーンで描かれたような場所になります。
比較的貧しい家庭が多く、このあたりの店で生活必需品を手に入れて普段は観光客向けの店やホテルなどで働いていることが多いようです。
そのため祭りの夜は出払っていることが多く、紛れて小さな犯罪に走る者も頻発するようです。
・起きる事件:商店強盗
花火の音に紛れて店主を脅し、金を奪うという犯罪です。
犯罪規模も小さく、1~2人組で武装もしています。
が、貧困層のものなでの武器も基礎戦闘力も弱いようです。
成功条件はお金を奪われないことと、店主が無事なことです。
●ホテルカジノ
大きなホテルが建設され、豪華なカジノがその一階に作られています。
きらびやかな場所ですがその分悪い人も寄りつきます。
一応高級感を売りにしている場所なので、それなりにめかし込んだ格好をしておくとよいでしょう。(ラフすぎる格好でも絶対ダメとは言われませんが、支配人がかなり曇った顔をします)
・起きる事件:乱暴な客
お金をスッた酔っ払いが乱暴に振る舞います。
ですがここはカジノ。娯楽の社交場です。
派手な流血沙汰や爆発を起こすわけにはいきません。
スマートに、かつコンパクトに乱暴者を鎮圧しましょう。
乱暴者も別にテロを起こそうってわけじゃないので、ナイフや銃を取り出すことはありません。
スマートにかつ穏便に解決できればできるほどグッドです。
●銀行
ピンポイントでやばめの犯罪が起きる場所です。
この町では銀行制度が取り入れられており、巨大でまず壊せないような金庫にしまわれています。解錠スキルも受け付けないような特殊なロックがかけられていますが、ゆーても認証キーを持っている人なら開けられるので、強盗をして奪うことが不可能では無いのです。
そしてこの町の銀行は金回りがいいので、強盗をするメリットも大きいのです。
(OPで語られた重傷を負った同僚も、頻発するこれらの事件が原因だったようです)
・起きる犯罪:銀行強盗
ガチガチに武装した2人組が突入。係員を脅して金を奪おうとします。
銀行自体はやや小さめの場所です。
数名の客と数名のスタッフが脅され、下手に刺激するとその分死傷者が出てしまいます。
人質が出る可能性や、PCが大きな怪我を負う可能性を計算に入れてください。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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