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シナリオ詳細

大樹に巣くう寄生虫バルグ・エオス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大樹の恵みを簒奪する
 深緑――アルティオ=エルム。
 大樹ファルカウの恵みを受けて、大樹と共に育ち繁栄してきた幻想種達の国である。
 必然、大樹の恵みを享受するのは幻想種のみに留まらず、生きとし生ける全ての生命が大いなる大樹より糧を受け、生命の輪廻を巡らせていた。
 全ての生命を受け入れる母なる大樹。
 しかし、それは同時に大樹にとって有害な生命体をも引きつけ住まわせてしまう。
「――報告します。
 ファルカウ北部、第七、第八区画の根元にバルグ・エオスが増殖しているのを確認しました。
 比較的増殖速度の速い個体群のようですね。放っておくと別の区画へと転移することも考えられると思います」
 凜々しさを感じさせる女性ハーモニアがそう報告すると、話を聞いていたファルカウの保護活動を行う有志グループの長は唸るように思案する。
「これで六件目か。
 連中が組織だった動きが出来るとは思えないが、一斉に動いてきたな。
 人手がもう少し欲しいところだが……」
 バルグ・エオスと呼ばれる寄生虫は人と同程度の大きさを持つゲル状の生物だ。
 ファルカウの幹や根に集団で取り付くと、全身を張り付かせてその養分、栄養を奪いファルカウの組織を枯らし壊してしまう厄介な害虫である。
 すでに各方面からバルグ・エオスの出現報告を受け、各地方の保護活動グループと連携して対処に向かっているが、その発生速度に手が追いついて居ない状況だ。
 対処を送らせれば、バルグ・エオスが増殖各区画の養分を奪い去り、やがてファルカウそのものを枯らせてしまうのは想像に容易い。
 早急に手を打たなくてはならないが――その方法を考えていると、報告員の女性ハーモニアが提案をした。
「近頃招き入れた幻想に拠点を置くローレット――特異運命座標に依頼してみるというのはどうでしょうか?
 活動資金には余裕がありますし、新たな人員を募るより時間的な効率は良いと思われますが」
「特異運命座標か――なるほど、噂に聞く彼等ならば戦力的には十分か。
 うむ、良いかもしれん。
 早速、コンタクトを取ってみてはくれないか?」
 報告員が頷いて、退出する。
 そうして、ファルカウに寄生するバルグ・エオスの駆除依頼が、ローレットへと持ち込まれることとなったのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 ファルカウの恵みを簒奪するゲル状生物が発生しています。
 これらを駆除してファルカウを保護しましょう。

●依頼達成条件
 寄生するバルグ・エオスの核を全て撃破

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●バルグ・エオスについて
 黒いゲル状の生物であり、スライムに程近い性質の魔物。数は十五体。
 軟体な身体には核が存在し、常に身体の中を動き回っている。
 攻撃を受けると分裂したりするが、核の数は変わらない。核のない身体は一ターン後に行動を止める。
 また、バルグ・エオス同士が合体することもある。核のない身体を吸収すればその分体積が増え、核がある身体同士が合体すれば、核が二つのバルグ・エオスが誕生する。その場合、自動的に行動回数が+1される。
 攻撃を受けると防衛反応で敵対生物に襲いかかる。
 身体をバネのように弾ませて、ゲル状の身体全体で取り込むより張り付いてくる。
 攻撃は(物至単)と単体攻撃のみとなるが、全ての攻撃に(疫病・HA吸収・攻勢BS回復・崩れ・不吉)を持つ。
 耐久力が高く吸収攻撃を持つ事から継戦能力が高い。反面、反応、防御技術、特殊抵抗、回避は低く、集中攻撃によってその核を露出させるのは容易いでしょう。

●戦闘地域
 深緑北部に伸びるファルカウの根元になります。
 時刻は昼間。よく晴れていて過ごしやすい天候でしょう。
 戦闘は、障害物はなく視界も良好。自由に立ち回れますが、ファルカウの根元で戦うことから、その幹、根を傷つけないように配慮するのが良いでしょう。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 大樹に巣くう寄生虫バルグ・エオス完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月25日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
ユー・アレクシオ(p3p006118)
不倒の盾
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
リナリナ(p3p006258)
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女

リプレイ

●蠢く寄生虫
 深緑北部。
 ファルカウの太い根が這う風景を眺めながら依頼書に記された場所へと赴くと、一人の女性ハーモニアが迎えてくれた。
「ようこそ、特異運命座標の皆様。
 ファルカウの保護活動を行っているグループで連絡員をしているファーレスと申します」
 凜々しさを湛えながら和やかに挨拶をするファーレスにイレギュラーズも簡単な自己紹介を返した。
「担当してもらう区画はここよりもう少し北になります。
 すでに”奴等”がかなりファルカウに取り付いているようです。すぐに案内致しますね」
 ファーレスの先導の元、今回依頼で引き受けた担当区画へと向かう。
 周囲を走るファルカウの根を眺めながら、『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)が言葉を零した。
「これほどの大樹となれば、巣食う害虫等もどうしても発生してしまうのでしょうね。今回のように」
 クラリーチェの言葉にファーレスが頷く。
「巨大なファルカウの恵みを受け共存している深緑ですが、その益だけを吸い取る害虫は後を絶ちません。バルグ・エオスもその一つなのです」
「その害虫は自然発生したものなのか?」
 害虫たちがどこから現れるのか。素朴な疑問を尋ねる『天翔る彗星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)にファーレスは頭を振って答えた。
「色々研究はしているのですが、その発生源が未だ特定出来ていないのです。
 迷宮森林北部辺りから移動してきたのは目撃されているのですが……地面から現れたなんて話もありますね。
 どこかに生み出す原因があるのか、それとも地下で生まれ地表へと出てくるのか、今はなんとも言えないところです」
 何とも奇妙な生物であることは間違いなさそうだ。ウィリアムの質問ついでに、『小さき盾』ユー・アレクシオ(p3p006118)も気になったことを重ねて聞いた。
「増える……繁殖、増殖する時期はあるのか? 後は弱点や、倒したあとの核の様子が知りたいな」
 ユーの質問にファーレスが一つ一つ答えていく。
「一年通して平均的で余り多い時期というのはありません。ただ最近はちょっと数が増えているようにも思えますね」
 嫌な傾向だとファーレスがうんざりしたように顔を顰める。
「弱点と言うものもそう多くは見受けられませんね。かなり過酷耐性に長けた生物のようです。敢えて言えば……やはりゲル状の生物ということもあって凍結によって身体の組織に異常がでることがあるようですね」
 凍結と言う言葉を聞いて、『穢翼の回復術師』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が連れ添って歩いていた『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)へと話しかける。
「凍結、ならユウの出番だね」
「ええ、元よりそのつもりだったし、ある程度効果が見込めるのがわかったのは大きいわね」
「行動指針が決まったのは喜ばしい事です」
 ファーレスはそう言うと、ポケットより丸く崩れた残骸を取り出した。
「これがバルグ・エオスの核になります。砕いてしまっているので欠片のようなものですが」
 核を覗き見た『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)が気味が悪いと右目を細める。
「まるで目玉のようだね。岩のようなものを想像していたけど……生々しい感じだね」
「おー、黒いゲルゲルの目玉か? ギョロギョロか?」
 同じく覗き込んだ『原始力』リナリナ(p3p006258)が言うと、ファーレスが首を傾け答える。
「さあ、どうでしょうね。確かに此方を見ているような動きはしますが、視覚的な能力は低いように思われます。
 とはいえ、偶に此方が見えているかのように飛びかかってくるので、やはり目玉的な機能を有しているのかもしれませんね」
 ファーレスの話を聞いていた水瀬 冬佳(p3p006383)が一つ思いついたように口を開いた。
「視覚情報を必要としなかった……そう、太古の時代の生物。原始生物の可能性も捨てきれませんね。
 でも、だとすると古くから霊樹に寄生することを繰り返していたのか……」
 その場合、長く人はこの寄生生物との戦いを行っていたことになるが……ファルカウ保護というものの歴史はそう古そうには感じられなかった。
 不意にファーレスが立ち止まり指さした。
「着きました。ここが担当してもらう根になります。
 ……見て下さい、バルグ・エオスが根に張り付いています」
 ファーレスの指さした先、深緑の根に黒い不定形の生物が張り付いて、まるで養分を吸うように蠢いていた。
「デッカイ樹の命、チューチュー吸ってるナ!」
「寄生虫……とはいうが、蟲っぽくはないな。カツオノエボシ的な群体か?」
 その姿を確認したイレギュラーズは、総じて気持ちの悪い不快な感情を抱く。
「なんにしてもコイツ等を倒せばいいのでしょう? さっさと済ませてしまいましょう。ティア、やるわよ」
「うん。厄介そうな相手だけれど、頑張ってサポートするね」
『期待を掛けられているのだから、相応に答えないとな?』
 神様の声に頷いて、ティアとユウが武器を構える。他のイレギュラーズ達も早速害虫駆除へと乗り出す。
「私は別地区の駆除の応援に向かいますので、終わる頃、また顔を出しますね。
 ご武運を。お気を付け下さい――!」
 ファーレスはそう言い残して他地区への応援へと向かった。
「さあ、害虫駆除と行こうか」
 大樹ファルカウを守る為、イレギュラーズの害虫退治が始まった。

●殲滅戦
 大樹ファルカウの根に張り付くバルグ・エオスの群れにイレギュラーズが接近する。
 なるほど、視覚的な能力が低いと言うのは頷ける話だ。まるでこちらに気づいた様子はない。
「保護結界を張る! まずは一番近い奴から片付けるぞ!」
 ユーが保護結界を展開し、大樹の根に不要なダメージを与えないように配慮する。同時、エコーロケーションで敵の位置を確認すると、一番近いバルグ・エオスへとフォーカスし声を上げて対象を明確にした。
 事前情報により、バルグ・エオスが攻撃によって分裂・合体を繰り返すと言う事がわかっている。闇雲に攻撃してはその数を減らす事が困難となるだろう。
 故に、イレギュラーズの方針は”一体ずつ確実に”。各個撃破による数減らしが最善と判断した。
 ユーの義手に青く輝く光が形成される。それを弾丸の様に打ち出せば、生命を簒奪する光の刃となってバルグ・エオスを襲う。そのゲル状の身体を削ぎ落とすように光刃が切り裂いた。
 大樹の生命へと吸い付いていたバルグ・エオス達がその敵対的行動に一斉に反応した。核が体内を高速に動き、一斉にピタリと止まる。ギョロリ。敵対者たるイレギュラーズを観察するように核が”此方を見た”。
「やっぱり目玉なのかしらね……ティア凍らせるから、一気に畳みかけるわよ」
「ユウ、合わせるね。
 ――黄昏に魅入られるといいよ」
 ユウとティアがフォーカスしたバルグ・エオスへと同時に攻撃を試みる。
 ユウが腕を振るえば、途端周囲の温度が下がる。氷の精霊としての権能を開放し、氷と冷気を操っているからだ。
 狙った敵へと放つは、”コキュートス”。不完全ながらも氷精霊としての権限を開放し再現するは、神話に綴られる地獄の最下層。対象を凍てつかせ凍結する絶対零度が放たれた。
 このユウの攻撃に合わせ、ティアもまた得意の魔法を操り放つ。
 ”穢翼・黄昏”――四種の属性を併せ持つこの魔法がバルグ・エオスの身体を包み込み、多くの状態異常を与えていった。
 両者の技には氷の属性が含まれているという共通点がある。必然、それはバルグ・エオスの身体を凍結させるに至る。
 ゲル状の身体に霜が降り、氷の結晶となって自由な伸縮を阻害する。高速に動いていた核も凍結かでは自由が効かないようだ。目に見えてその動きが悪くなっているのがわかった。
「効いてるわね、今のうちに――」
「ああ、仕留める――!」
 ウィリアムが神秘的な力を扱う『本能』を覚醒させ、流星の奏杖を回し構える。
 力ある言葉と共に創鍛された刹那を生きる疑似生命が、凍結したバルグ・エオスへと向け走る。混乱を齎す一撃は、確かな力となってバルグ・エオスの身体を文字通り粉砕した。ゲル状の体積が減少し、”核”が露出する。
「核が出た!」
「お任せを――……闇よ。黒きものよ。その囀りを彼らに」
 クラリーチェが魔導書を開き、魔力を編む。
 聖職者でありながら、身につけた技が闇に属する系統ということに自己矛盾を覚えながら、しかし、今その力こそが必要なのだと魔力を解き放つ。
『お友達、みぃつけた』
 クラリーチェが放った闇が嗤う。鈴を転がすように、黒いレェスの向こう側でころころ嗤う。一つの呪いの形であるその黒き闇が露出した核へと襲いかかり、取り込んだ。やがて闇が晴れると、力を失ったように核が根を転がってピシリと割れた。
「まずは一体……分裂した個体は――」
 バルグ・エオスの動きをよく観察している冬佳は、攻撃により分裂し核をなくした個体がどう動くのかしっかりと確認していた。
 分裂した個体は動きを止める十秒の間、確かに仲間へと飛びかかる攻撃と思われる行動をしていた。つまり、手数を増やし多くの個体を分裂させるという行動は、無駄が過ぎるということだ。
「ならば……一体ずつ確実に叩くのが最善ですか」
 取り出した式符を次なる目標へと投げる。霊力帯びた式符は、輝きと共に光明の白鴉へと変化しバルグ・エオスの身体を裂いていく。
 攻撃を受けたバルグ・エオスが分裂する。分かたれた二つに、近くにいた二体のバルグ・エオスがそれぞれ近づくと取り込み合体する。核が二つのバルグ・エオスと、体積の増えたバルグ・エオスが生まれた格好だ。
「お? お? どっち?」
 合体した事でフォーカスが外れて思わずリナリナが視線を遊ばせる。身体に纏わり付こうとするバルグ・エオスを引きはがしながら、ユーが助け船をだした。
「核が二つの方からだ、一気に二つ潰せるチャンスだぞ」
「おー! チャンス! チャンス!
 デッカイ樹も迷惑してる! ゲルゲル禁止!」
 フォーカスさえ出来ればリナリナの動きは速い。飛びかかって敵を間合いへと収めれば、自由にその獲物を振るう。誰にも理解できないリナリナ得意の謎撃が二つの核をもつバルグ・エオスを引き裂いて二つの核を露出させる。
「おー! 駆除! 駆除!」
 掘り出し物な武器で二つの核をブスリと挿せば、微細な震動を残してひび割れた。
「――なるほどね。
 二つの核はできるだけ一緒に倒した方が良さそうだよ。一つ倒してもまた違うのにくっつきそうだよ」
 エネミースキャンでバルグ・エオスの特性を感じ取る鈴音が統率を持って仲間達にそう知らせる。
 バルグ・エオスの詳しい特性や習性について、リアルタイムながらに把握、周知する鈴音の役割は大きい。彼を知り己を知れば百戦殆うからず。情報こそが軍師たる鈴音の武器だ。
 そうして情報を共有しながら、鈴音は仲間の支援に回る。
「さあ、熱狂のままに攻勢といくよ。のこりはあと十二体、サクサクいくよ~」
 高鳴る鼓動が、赤き光彩となって味方を鼓舞する。
 続けてオーラの縄を放てば、麻痺によってバルグ・エオスの動きを阻害する。唯でさえ動きの鈍いバルグ・エオスの動きが阻害されれば、それはイレギュラーズに確実な優位性をもたらしていった。
 イレギュラーズの立てた作戦は堅実なものであり、多少長丁場な戦いとなるが確実にバルグ・エオスを始末していった。
 多くのバルグ・エオスはユウとティアの凍結コンボによって動きを封じられ、続くユーとウィリアムの攻撃でその身体を引き裂かれ、露出した核をクラリーチェ、冬佳、リナリナが攻撃するという形で倒されていったのだが、中には凍結しているにも関わらず攻勢にでる個体も見られた。
 疫病をもたらし、相手の生命を簒奪するバルグ・エオスはそうした攻勢によって自身の機能を回復させて、生存しようとするようだ。
 奪い、生きながらえ、増殖することに特化したまさに寄生虫と言うべき存在だろう。
 その生き汚さ、生存への執着は凄まじく、襲い来るイレギュラーズの猛攻を凌ぎ、時に反撃し、零れ落ちた身体を生き残った者へと託していく。
 然しものイレギュラーズも、長丁場の戦い、そして核が増え攻撃の回数が増す個体や、体積が増え耐久力の増える相手にやがて疲弊し体力を奪われていった。
 タンク役にシフトしたユーが多くの敵を引きつけていたが、攻勢にでたバルグ・エオスはその標的を変える事がしばしあった。特に防御技術、耐久力がやや心許ないクラリーチェが狙われることが多く、一時危険な状態になることもあった。
「ティア、手伝って上げるから回復合わせて頂戴な!」
「ありがと。万全の状態に立て直そ」
 とは言えしっかりと役割分担していたイレギュラーズは、回復も手厚く、不意のピンチも瞬間的に立て直すことのできる地力があった。
 立て直しが上手くいけば、後は基本通りに各個撃破で潰して行くだけだ。多くのバルグ・エオスを撃破し、残るは核を二つ持つ個体一体だけとなった。
「逃がしはしないぞ」
 ユーの操る球型マシンがバルグ・エオスに取り付いてその熱を奪い凍結にも似た効果をもたらしていく。
 そうして動きを阻害し注意を引けば、その隙をウィリアムが狙い攻勢にでる。
「残るはお前達だけだ、覚悟してもらおう」
 ファミリアーと瞬間記憶による視界確保は多くのバルグ・エオスのダメージ管理に役だった。最後の一体(二体)へと視線を合わせれば、空の彼方――『星界』より大剣を召喚し、射出する。青に煌めく流星の軌跡がバルグ・エオスの身体を引き裂いていく。
 バルグエオスが再度分裂し、核を二つに分けて逃げようと動き出す。
「逃がしはしません」
「諦めが悪いようですね」
 クラリーチェと冬佳が同時に魔力を走らせる。
 クラリーチェの黒き闇が手前を動くバルグ・エオスを飲み込み、奥を逃げるものには冬佳が生み出した土塊の拳が上段より叩き潰すようにバルグ・エオスを殴打した。
 二つの核が露出し、ヒビが入る。
「おー、駆除、おしまい!」
 最後の止めをリナリナが、しっかりと核を二つに破砕すれば、大樹の根に張り付いていた寄生虫が全て駆除されたのだった。
「お迎えも来たようだね」
 鈴音がそういって振り返れば、ファーレスが手を振りながらこちらへと向かってきているのが見えた。

●不穏な気配
「ご苦労様でした。
 ファルカウの根にも大きな傷がなく、大変有り難い事です。お見事でした」
 ファーレスはそうイレギュラーズを労うと、他の区画でも十分な駆除が出来たことを報告する。これによって一先ずはバルグ・エオスの脅威がなくなったということだ。
「ふぅ……何とか終わったかしら……? ティア無事?
 貴方どんくさいだから無理を……」
「ユウ、お疲れ様、怪我してない?」
「……って私は無事だから! ほら抱き着いてないで離れないさいな!」
 ユウに抱きつき、傷がないかを確認するティア。ユウは急に抱きつかれたのを恥じらって声を上げた。
 そんな二人のやりとりに微笑みながら、クラリーチェは付近の植物へと自然会話を試みる。
(何故このような生物が発生したのか……自然発生にしては数が多すぎますね)
 植物たちも発生した直接の原因を知るわけではなかった。しかし、多くの植物は答える。迷宮森林北部、ある一点より大地を通って奴等が来たと。
 そのことをファーレスに伝えると、ファーレスは思案顔で口を開いた。
「やはりそうですか……多くの目撃情報などが北部の森林に集中しています。迷宮森林内には多くの遺跡もあり、可能性があるとすれば、それらから発生していると考えるべきでしょうか……?」
 自問自答するように言うファーレスにウィリアムも言葉を掛ける。
「特に最近増えだしたというなら、警戒をするに越した事はないだろうな。
 奴等の親玉……でかいのが出たりすればそれはそれで事だ」
「確かに、今でさえ手を焼いている連中です。これ以上数が増えたり、新種や大型種などが出てこられても困りますね……目撃情報を集めて、発生原因を特定したいところです」
「なんだったら、依頼してくれても良いんだぞ。俺達は仕事であればなんでもやるわけだしな」
 ユーがそう付け加えるとファーレスは、
「ふふ、そうですね。今回で皆さんの実力が素晴らしいものであることは確認できましたし、その時は遠慮無く依頼させてもらいます」
 と、笑った。
「それじゃちょっと休憩してから帰ろうかな。
 身体も汚れたし、終わったらお風呂とかが定番だよね」
 鈴音の提案に女性陣は概ね賛成のようだった。
「では、近場の宿へご案内しましょうか」
 クスリと笑ったファーレス案内の元、一行は疲れた身体を癒やすべく宿へと向かうのだった。

 迷宮森林北部。
 その埋もれた遺跡の奥底で、巨大な塊が蠢いた。
 そして塊の側へと近づいてくる存在が多数。それは養分を集め肥大化したバルグ・エオスだ。塊に取り付くと、まるでその養分を分け与えるように塊に注入していく。
 どす黒いオーラを纏うゲル状の塊が歓喜に打ち震えるように震えた。飛び散った硬質な目玉からゲルが溢れる。バルグ・エオスが生まれたのだ。
 埋もれた遺跡の奥底で、巨大な塊が、まるで成長を喜ぶように蠢いた――

成否

成功

MVP

ユー・アレクシオ(p3p006118)
不倒の盾

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 皆さんのおかげでひとまずの対処はできました。
 また、皆さんが気に掛けたことで、発生源の特定に有志グループも動き出すようです。もしかしたら進展があるかもしれませんね。その時をお待ち頂ければと思います。

 MVPは総合判断でユーさんに贈ります。弱点とかはオープニング時点で考慮していませんでしたが、しっかりと調査を入れていたのでプラス判定しました。スキル構成もよかったですね。

 依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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