シナリオ詳細
森に踏み入る人さらい達
オープニング
●幻想種を狙って……
深緑、アルティオ=エルム。
大陸西部にある迷宮森林。そこにある大樹ファルカウを中心とした幻想種達の国だ。
自然と一体化して世界と結びつくという独特の文化、魔術的繁栄を築いてきた者達。
冒険者、ローレット所属のイレギュラーズと、幻想種でも外に出る者もいるが、基本的には異種をあまり歓迎しない気風が深緑にはある。
とはいえ、排他的というわけではなく、自分達の価値観、ルールを重んじる者であれば、むしろ友好的な種族だ。
そんな深緑の地へと、敢えてやってくるならず者達も存在する。
そいつらは穏和な幻想種達を利用すべく、敢えて森を荒らしに来ているのだ。
「またですか……」
自警団を編成する幻想種の女性が溜息をつく。
彼女は男女5名で行動し、幻想の平和を守るべく国内で活動を行っている。
今回は迷宮森林の外れ、木々を破壊しようとしている盗賊達の撃退が目的だ。
軽くあしらえば、大抵追い払うことができる連中が多いのだが、今回の相手は違った。
「来たか?」
「へへ、おかしら。相手は5人。楽勝でさぁ」
下卑た笑いを浮かべる15名ほどの盗賊団。
だが、他の連中に比べると、ガタイが良いものが多い印象だ。
「おぅ、一人残らず捕えろ。奴ら幻想種は金になるからな」
大柄でかつ腹が出た男が肩にハンマーを担ぎ、耳障りな笑い声を上げて。
「森を荒らす不届き者ども、覚悟……!」
弓や魔法を使ってくる幻想種達に対し、盗賊団の男どもは平然としながら応戦の構えを取るのである。
●新緑の幻想種を助けよう
深緑は平和と自然を愛する幻想種達の勢力圏だ。
現地点においても、土地柄、異種をあまり歓迎しないこともあり、ローレットもこれまでほとんど接触してこなかった。
しかし、先日の砂蠍事件の解決を契機とし、ローレットはラサの傭兵達の推薦を受ける形で、彼らからの依頼を受けるようになった。
「その流れで、私も依頼をお預かりしてきました」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が深緑の幻想種達から預かってきた依頼を、イレギュラーズ達へと斡旋する。
何でも、迷宮森林の外れにおいて、破壊活動を行う盗賊達がいるのだという。
その盗賊団は小規模であり、数人の若い幻想種の自警団メンバー達がその撃退へと当たっていたのだが……。
ラサの傭兵からの情報によれば、どうやらそれが盗賊達の本当の狙いらしい。
「ただ、盗賊団が行う破壊活動は陽動で、本当の目的は鎮圧にやってきた幻想種達の捕獲のようですね」
彼らは主に人さらいを行い、奴隷業者などに幻想種の人々を売り払うのだとか。
美形の多い幻想種はニーズが多く、貴族、商人、別の盗賊団など、一定の需要があるらしい。
卑劣な盗賊団を許すことができないのは、自ら奴隷商人に売られた経験があるアクアベルも同じだ。
「自警団がその撃退に当たるようですが、今回は相手が悪いようです……」
その盗賊団はエラディオを筆頭に、人さらいをメインに活動していると言う。
それだけに屈強な者ばかりが所属しており、多少腕に覚えがある程度の幻想種など、あっさりと捕えてしまう恐れがあると、ラサの傭兵達も危険視していた。
「今回は手が回らず、私達に依頼してきたようですね」
人さらいなど、許すわけにはいかない。この盗賊団は是非とも壊滅させたい。
幻想種の人々を救い出した後は、友好を築くのも悪くない。事後は彼らと……自警団メンバーと語らってみるのも良いだろう。
「状況は以上ですね」
盗賊団も、砂蠍を壊滅させたローレットの存在は十分知っているだろう。
そいつらがローレットをどう見ているかが判断しかねるところだが、恐れをなすなら圧倒すればいいし、軽く見ているなら捻り潰せばいい。
「とはいえ、くれぐれもご注意を」
人をあっさりとさらうほどの相手。
セレインは最後に、油断をしないようにと依頼に当たるメンバーに告げたのだった。
- 森に踏み入る人さらい達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年03月17日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●度しがたい悪党に報いを
深緑(アルティオ=エルム)。
この地を訪れたイレギュラーズ達は取り急ぎ、現場となる森の外れを目指す。
「人さらいなんて許せないね。人をなんだと思ってるんだーって感じで」
その途中、天義出身の幻想種である『本当に守りたいものを説く少女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は、この一件にぷんぷんと腹を立てていた。
「人攫い。人身売買か……」
幻想種の血を引く『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)もまた、思うことを語る。
「人さらいの目的が幻想種の皆様こそが狙いであるなら、好きにさせる訳には参りません」
身長ほどの長い髪をポニーテールにしたスレンダー美女、『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)もいささか不快感を示していた。
「エラディオ盗賊団とやら、国を相手に仕掛けてくるなんて、余程腕に自信があるようね」
「森林破壊に人身売買――実に度し難い方々ですね」
犬耳の妖精種の血を引く旅人、『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)もまた怒りを隠さない。
「感心するくらいわかりやすい悪人だな。ま、わかりやすくていいね、悪者退治するには」
良家の子女と思しき容姿の男の子、七鳥・天十里(p3p001668)は普段から悪者退治を行っている。
「これ以上、悪事を働けないようにしてやらないとね」
今回の相手も、これ以上悪事を働けないようにしてやらなければと天十里は気合を入れていた。
「こういう人達は懲らしめてあげないとね!」
「いいでしょう。ここは一つ、因果応報というものを徹底的に叩きこんであげます」
スティアに続き、鶫が自らの狙撃の腕で人さらい達に引導を渡そうと意気込みを語る。
「確かに、下衆共を斬る、わかり易い依頼ね」
そこで、黒髪を姫カットにした『優心のアンティーク・グレイ』白薊 小夜(p3p006668)が仲間の意思を尊重しながらも、自らの主観を加えて。
「とは言え、余裕があれば、一人くらいは生かして捕えましょう」
人さらいをするということは、売る宛てがあるということ。
そんな小夜の意見に、皆納得していたようだ。
「でも、幻想種って人気あったんだなぁ。……って事は、私も狙われちゃう!?」
圧倒的なカリスマ力を持つスティアは、盗賊達も引く手あまたかもしれないと茶目っ気を出す。
「……とはいえ、確かにアルティオ=エルムの自警団はあまり戦い慣れていないのかもしれない」
彼女の言葉で場が少しだけ和んだものの、リースリットはクールな態度をとったまま状況分析する。
相手の出現を受けて出動していたのだから、この地の自警団も状況把握していたはず。
「それなのに、3倍の数を相手に向かっていったのだから、いい戦い方ではないのは事実」
リースリットが言うように、ローレットに話が回ってこなかったなら、この自警団もまんまとやられていたに違いない。
「先ずは兎に角、自警団と合流、加勢して態勢を整えましょう」
皆、リースリットに同意し、足早に移動していく。
森の中を行くイレギュラーズ達は索敵を行い、敵の姿を探す。
「木々が多くて、ちょっと見えにくいね」
草木が生い茂るがゆえに、兎の獣種である『孤兎』コゼット(p3p002755)は視界の悪さを感じ、自身のギフト『ノイズ』で盗賊団の悪意を感じ取って位置を把握する。
「こっち」
「木々も同じ方向を指してるね」
コゼットと同じ方向を示すのは、植物と会話していたスティアだ。
彼女は更に植物から現場への近道も教えてもらい、仲間と情報共有して急いでそちらへと向かっていく。
「……近いよ」
現場が近づいてくれば、天十里が自身のセンスで何かを感じ取る。
視界が悪い中、天十里の聴力は森で起こる戦いを感知してみせた。
「……あれね」
こまめに移動していた鶫は温度視覚とエネミーサーチを合わせて、視界の悪さをカバーし、何かを発見する。
情報を元に天十里はエアリアル・リフトで僅かに浮遊し、中空から目視でそれを……少数と集団の交戦を確認した。
幻想種の自警団が破壊活動を行う盗賊団を阻止する為、戦いを仕掛けている。
大格差は歴然。大柄な相手に戦いを挑む自警団は明らかに劣勢だった。
弱視なれど、視覚以外の感覚をギフトで補う小夜はその交戦に飛び込み、盗賊の一団と戦う幻想種の自警団へと呼びかけた。
「ローレットです。加勢します」
「ローレット……だと!?」
小夜の名乗りを耳にしたガタイのよい盗賊どもは、突然のローレットの出現に戸惑いを隠せない。
なにせ、ローレットと言えば、新生・砂蠍すら壊滅させた組織なのだ。小規模な盗賊団であれば、気後れしようというもの。
「貴方達の相手は私達です。好きにはさせません!」
リースリットもこの場へと介入してすぐ敵陣へと飛び込み、名乗り口上を上げる。
弥恵も自身のギフトの効果を利用しつつ、身に着けている宝石やペンダントを鳴らして自らをアピールしていった。
誘うような仕草をするのは本人も恥ずかしそうだが、この場で傷つく幻想種のことを考えれば、できる限り敵を引き付けたいところ。
「月の舞姫、華拍子♪ 天爛乙女の津久見弥恵、参上です」
「へへ、こいつはなかなか……」
さらに弥恵が名乗り口上を行うと、多くの盗賊が彼女を値踏みし、気を引いていたようだ。
その間に、コゼットが自警団の女団長と接触して。
「ローレットのイレギュラーズの、コゼットだよ。助太刀に、きたよ」
コゼットはそこで、敵の狙いが自警団各メンバー自身であることを伝える。
「売られたり、奴隷にされると、きっとすごくつらいから、はやくやっつけちゃおう」
その言葉には、コゼット自身の経験が伴っている。
幻想種達も、彼女の言葉が真実だと肌で感じていたようだ。
「……僕の御主人様も、幻想種です」
その間、中性的な容姿をした『藍玉雫の守り刀』シキ(p3p001037)が盗賊団へと接近し、語り掛ける。
その主人は、シキが混沌へと訪れるよりもずっと昔にさらわれ、奴隷にされた経験があるそうだ。
「……キミ達の中に、その時御主人様を攫った人は、いますか?」
「はっ、そんなん……」
さらった相手のことなどほとんど覚えていない盗賊達が反論しようとしたのを、シキは遮って。
「……いえ、いてもいなくても……全員斬るので、意味のない質問でした……ね」
――あの人を、傷つける可能性があるものは……全部、僕が殺します。
本来、刀の付喪神であるシキは剣呑とした殺気を放ち、盗賊どもを威圧する。
「ちっ、やれ!」
恰幅の良い体型をした団長エラディオは舌打ちし、斧持ちの団員に木を切るよう指示を出す。
明らかに自警団を挑発したその行為にシキが刃を振りかざし、幻想種達も表情を険しくして武器を構える。
「あんなのどう見たって、苦し紛れだよ。乗るだけ損々」
「砂蠍にくらべたら、こんな盗賊かんたんだよ」
自警団を天十里が押し留め、コゼットが盗賊達にも聞こえる声で語り掛け、逆に相手を挑発し返す。
「ローレットなんざ知るか、覚悟しやがれ!」
頭に血が上る屈強な団員どもは、一斉にイレギュラーズ達へと襲い掛かってきたのだった。
●人さらい盗賊団に報いを
深緑の森の中で始まる交戦において、最初に仕掛けたのはシキだった。
「やれ、森を破壊しろ!」
団長エラディオの指示で、木々を切り倒そうと斧を振りかぶっていた団員。
森を破壊しようとするそいつらへと飛び込んだシキは、全力攻撃で団員の1人の腕を切り落とす。
「……奇遇、ですね。キミと同じで、僕も、斬って、裂いて、壊すのが……好きなんです」
腕を失い、叫ぶ盗賊。
それをBGM代わりに、シキは無機質な声で盗賊達へと呼び掛ける。
相手がただ破壊するのであれば、破壊をもって返すだけ。
彼女は切り裂き、殺すことに喜楽すら覚える生粋の武器なのだ。
続いて、接近していくメンバーがエラディオ盗賊団団員達の気を引こうと動く。
「小娘どもが……!」
ハンマーを担ぐ盗賊団団長エラディオからすれば、女性メインのイレギュラーズ達は娘程度の年齢だ。
「自警団の皆さんは遠距離からの援護攻撃を頼みます」
小夜は後方の幻想種達へと一声かけてから、団長エラディオを引き付けるべく無防備で隙だらけな姿を晒す。
「ぬうぅぅぅん!!」
ところが、エラディオは大きな反応を見せることなく、手にするハンマーをぶん回し、叩きつけてくる。
(なるほど、伊達に盗賊の長をしていないという事ね)
それもあって、小夜はなかなか相手を引き付けることができずにいたようだ。
「改めて、ローレットのコゼットだよ!」
名乗り口上するコゼットは、程々の数の相手が巻き込めるようにと気がけていた。
それもあって、彼女はナイフ、斧持ち合わせて4人を引き付け、しばらくそいつらの攻撃を避け、防ぎつつ耐えることとなる。
同じく、リースリットは敵陣深くまで攻め入り、遠くから仲間や自警団を狙う弓使いを誘い込む。
相手が理性を失って前に出てきたならば、リースリットの思惑通り。
直接、弓で殴りかかってくる相手へ、と弥恵が幻惑のステップを踏みながら接近する。
白磁の如き美脚を大胆にさらして盗賊どもに見せつけ、彼女は鼻の下を伸ばす盗賊どもを蹴りつけていく。
そして、弥恵は再度ステップを刻み、敵との距離をはかっていた。
天十里はというと、軽やかに宙へと跳び上がる。
「さて、僕の銃弾で頭に風穴開けたいのはどいつ?」
団員を狙うことも考えた天十里だったが、前線に出て殴りかかってきていたエラディオ目掛け、暗く輝く心の光を銃弾に宿して狙い撃っていた。
「数的には劣勢。そして、敵の生死は問われていない。ならば、やる事は一つ」
一方で、鶫は相手の数を減らす為に距離を取り、相手を捕捉しつつ自警団へと呼びかける。
「即死させるつもりでいきます。援護と追撃、お願いしますね」
「は、はい」
イレギュラーズ達の加勢に驚き、見とれすらしていた自警団メンバー達も再度の依頼で我に返り、弓矢や魔法弾で狙撃を始める。
鶫自身も慣性制御式高初速狙撃銃『白鷺』を手に、狙撃を行う。
自ら宣言した通り、鶫が狙うは相手の頭、心臓部や重要な臓器、太い血管の走る場所。
鶫の狙撃は、たったの一発で致命傷となる。
敵によっては頭を射抜かれ、それだけで二度と起き上がれなくなっていたようだ。
戦場を俯瞰して見ていたスティア。
盗賊団は比較的単純に、囮となるメンバーに引き寄せられている。
団長エラディオのみ己の意思で動き続けているが、彼は武器の性質上前に出てきており、団員と纏めて狙いやすい位置にいた。
(木々を巻き込みながら、攻撃するなんて……)
見通しの悪さを利用するどころか、むしろ見通しを良くしながら仕掛けてくる敵。
「これ以上、森を破壊される前に、倒しちゃおう」
まだ、仲間達の傷がさほど深くないと判断したスティアは本の形をした古代の魔導器『セラフィム』を起動し、天使の羽根に似た魔力の残滓を周囲へと舞い散らせる。
スキル『千変万化』。
スティア本人ですらも何が起こるか分からぬ魔法だが、切り倒された鋭い枝が盗賊の体を貫き、その命を奪い去ってしまう。
さながらそれは、森からの仕返しにも思えたスティアなのだった。
人さらいの盗賊どもと、交戦を続けるイレギュラーズ達。
「おおおおおっ!!」
団長エラディオは身の丈ほどあるハンマーで地面を殴りつけた。
すると、周辺の木々ごと地面が捲れ上がり、近場で盾役となるコゼットやリースリットが堪えようとする。
さらに、斧やナイフを手にする団員が切りかかってきており、その傷は決して浅くはない。
ただ、彼女達はこの場はじっと耐え、仲間が迅速に敵を倒してくれるのを待つ。
「次は、あの団員だね!」
斧兵を指さすコゼットの呼びかけを受け、自警団の矢や魔弾が集中する敵へ、天十里は光によって強化された弾丸を装填する。
黒いリボルバー銃『夕暮れ』を発砲し、天十里は撃ち抜いた団員を倒していった。
前線で耐えるメンバーには、スティアが恐怖を振り払って戦いに臨めるようにと癒しに当たる。
序盤は自警団メンバーにもスティアは回復を依頼していたようだったが、それも徐々に必要なくなっていたようだ。
前衛陣がしっかり押さえてくれることもあり、鶫は狙撃のみで対処する。
複数の盗賊を、鶫は魔弾で撃ち抜いて。
「銃床で殴る必要はなさそうですね」
パタリぱたりと倒れる相手に、最悪接近戦も想定していた彼女は小さく微笑む。
戦場は森の中。天十里は木々を足場にして飛び回り続け、盗賊どもを翻弄する。
「今度はあいつだね」
彼はその最中に団員の胸部を銃弾で撃ち抜き、完全に沈黙させていく。
イレギュラーズが盗賊達を倒していく度、団員を率いるエラディオの怒りが募る。
「狩る側から……狩られる側になる気分は、どうですか?」
「ふん、この程度」
シキがエラディオへと飛ぶ斬撃を仕掛けていくが、敵も多少の攻撃ではビクともしない。
「大の男が寄って集って、目の弱い小娘一人倒せないのかしら?」
そんな中、小夜が相手を煽ると、ついに、団長もブチ切れて。
「調子に乗るなよ……!」
ただ、そうなれば、盗賊団は全員、イレギュラーズの手玉でしかない。
小夜は前に出る弓使いごと、仕込み刀『白杖』で牽制を行う。
少しでも相手が動きを止めれば、その隙に他メンバー達がそいつらを叩いていく。
自警団の援護攻撃が飛び交う中、コゼットは狂熱的なダンスを舞い、弓使いを蹴り倒す。
ナイフを振るってきていた敵には、弥恵が仕掛ける。
「これは貴方に贈る終幕です」
すでに周囲の敵は倒れており、孤立したそいつへと弥恵は華麗な足捌きで相手を魅了し、素早く蹴りかかっていく。
衝撃波を伴う蹴りは相手の体を大きく裂いた。ナイフ使いは血を流しながら意識を失い、崩れ落ちてしまう。
気づけば、残るはエラディオただ一人となっていた。
『魔晶剣・緋炎』の刃に暗闇を纏わせたリースリットが迫り、魔術と剣戟を織り交ぜた奇襲の一撃を見舞った。
「ぬうっ……」
体を反らすエラディオは、渾身の一撃を食らわせようと大きくハンマーを振り上げる。
だが、独特の足運びで近づくシキが全力防御でその一撃を受け止めれば、相手の振り下ろすハンマーを足場にシキが跳び上がる。
「……何!?」
「……あまり、暴れないで……ね。……キミ達の、汚い血で……森を汚したら、怒られるから」
シキは握る霊刀「禍津式・藍雫」でエラディオの喉笛目掛け、別れの文字を刻む。
「……かあっ…………」
団長はもはや言葉すら上げることすらできず、代わりに血飛沫を上げて森へと沈んでいったのだった。
●事後処理と交流を
エラディオ盗賊を討伐したイレギュラーズ一行。
スティアは自警団を含め、仲間達へと治療を施していく。
そして、他メンバー達は事後処理に当たるが、まずはこの場に転がる盗賊達。
団長エラディオの息はもうなかったが、幾人かはまだ意識が残っていた。
「このやっつけた人達、どうしようか」
コゼットがこの場のメンバー達へと尋ねる。
「森を荒らした罰で、この人たち埋めて、森の栄養にしちゃう?」
果ててしまえば土と還るだけだと幻想種の面々も許容してくれたが、問題は生き残り達だ。
「一人たりとも、生かして逃がすわけにはいきませんね」
リースリットは彼らにアジトの所在や残存勢力、他犠牲者のこと、さらわれて捕らわれたままになった者の有無など、色々と吐かせたいと口にする。
「人身売買のルートは聞き出さないとね」
小夜もそれに同意し、新たに聴取すべき事を提案する。
「過去に幻想種達の同胞が攫われているなら、取り返す手がかりになるかもしれないし」
団長がすでに死んでいる為、どこまで情報が引き出せるかはわからないが、自警団達も同意し、生きていた数人を連行することにしたようだ。
ある程度落ち着いたところで、鶫が彼らへと綺麗な森林を血で穢してしまったことを謝罪する。
「このような事が繰り返されないよう、もっと協力し合えれば良いのですが……」
今回はラサの仲介があってこそ、未然に防ぐことができた。
これを契機として、ローレットと密に連携することができれば。
「それでは、ここで祝福の舞をば」
両者の交流を祝して、弥恵は幻想種の皆様の為にと、舞踏を披露する。
良い出会いにしたいと考え、舞い踊る彼女だったが……。
自身の長い髪が周囲の木々に絡まることを、全く考えていなかったらしい。
「きゃーー!? これ、ちょっと待ってくださいぃィ!!?」
思いっきり態勢を崩した弥恵は枝に絡まる髪に悪戦苦闘してしまい、皆の笑いを誘っていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
幻想種の自警団を守っていただき、ありがとうございました!
彼らも皆さまに感謝し、組織の編成などを見直すとのことです。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
●敵……盗賊団一味。全員が人間種(カオスシード)です。
◎エラディオ盗賊団
人さらいや、強盗、強奪など悪行の限りを尽くす盗賊団です。
今回は、幻想種の男女に狙いを定めているようです。
○団長……エラディオ
40代男性。
身長2m近くありながら、恰幅の良い体系をしています。
身の丈程ある巨大なハンマーを使い、
破壊を楽しみとしている下衆な男です。
以下のスキルを使用します。
・渾身撃(物至単)
・ぶん回し(物近列・飛)
・大地滅砕破(神中域・泥沼)
○団員……15人。
10代後半から30代男性、
自ら進んで盗賊業に身をやつす者達です。
人さらいを家業として行う為か、屈強な者が多いようです。
6人が斧、4人が弓、
5人はナイフ(斬撃、投擲両方)を使用。
●NPC……幻想種5名
男性3人、女性2人。
迎撃にやって来ましたが、
エラディオ盗賊団の目的は彼ら自身です。
弓、魔法弾といった
遠距離属性をメインに使いますが、
数が劣勢なこともあり、盗賊vs幻想種だと、
数ターン後には、盗賊が幻想種を全員捕えてしまいます。
●状況
現場は深緑の外れ、森の中。見通しは木々に阻まれてかなり悪い場所です。
そこを盗賊団の斧持ちが木々を切り倒そうとして、幻想種の人々をおびき寄せようとしています。
幻想種の人々は森を荒らされるのを嫌う為、できる限り、木々に被害が無いよう戦っていただきますよう願います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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