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シナリオ詳細

魁メタリカ女学園 サボタージュサークルよりの刺客

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『社会を壊すには3割の怠け者がいればいい』
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
 麗しき乙女たちが校門を潜る。
 早咲きの桜が色をつける三月のはじめ。
 私立メタリカ女学園にとっては、別れと出会いの季節。
 前生徒会長である物見倉ヤブミの卒業と同時に、学園生徒会長は月見草マツヨへと移る。――別れ。
 来月ソメイヨシノの花弁と共に正門への道を踏むことになる新入生たちの、学園見学会が開かれる。――出会い。
 しかしその出会いは、ある事件によって乱された。
 風雲転た急を告ぐるに連れて。

「『サボタージュサークル』、ですって?」
 風に靡く黒長髪を片手で押さえ、会長月見草は背後の者へと告げた。
 背後。片膝と拳を地に着けた黒衣の生徒『生徒会隠密書記係』影縫は黒鉄の忍面頬の奥で、赤い目を光らせた。
「は。『新入生剣愕会』の参加者のうち三割が無断欠席。調べました所その全てが仮病や破隠(バックレ)によるものと判明し申した」
「それが、『サボタージュサークル』の仕業だ、と」
 常に己を磨き乙女心の燃ゆるまま乙女道を突き進む。それがメタリカ女学園の校訓にして校風。生徒会室の額縁には『乙女最強』の文字が掲げられていた。
 そんな学園への入学死験を突破した猛者たちが易々と見学会を休んだりなどしない。たとえ腕折れ足を千切られ生首だけになったとしても乙女心で登校してくることだろう。
 ゆえに。信憑性となる。
 天が落ちるという言葉が非常時をさす比喩であるように、乙女が休むとはそれだけの緊急事態をさすのだ。
「引き続き調査して」
「は」
 影縫は音もなく生徒会室から消えた。
 残った月見草は開いた窓の外。遠い国を見つめるように目を細めた。
「これは間違いなく悪の気配。ならば、再び必要になるでしょうね……乙女八拳将が」

●『鉄の災魔を叩いて砕く、乙女がやらねば誰がやる』
「――と、そんなことが起こっているのよ」
 ここまでの話を語って聞かせた『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)。
 メタリカ女学園用務員室の壁には依頼状と彫刻された鉄の板。メタ女に伝わる由緒正しき依頼状だ。
 素手で鉄板に刻み込んだというこの依頼文書と最後に打ち込まれた『かしこ』という文字と拳の跡。これこそが会長月見草の証明である。
「あなたたちには、この先行なわれる『新入生剣愕会』――の新入生を狙う闇組織『サボタージュサークル』の撃退が依頼されているわ。
 けれどそのためには」
 用務員のヨシコ・デスゴリラがおもむろにロッカーを開いた。
 現われたのは、そう!
 メタリカ女学園の制服! ウィッグ! 化粧品一揃え!
「これらを使って学園の乙女になりすまし、新入生もしくは在校生として潜入してもらうわ」
「ええいにがさん!」
 扉をドンとやって、ヨシコは制服のかかったハンガーを突きだした。

 かくしてメタ女の乙女となったイレギュラーズたち。
 使命はひとつ。『サボタージュサークル』のエージェントを撃退すること。
 すっかり乙女の様相となったイレギュラーズたちが生徒会室の扉を開くと、月見草が振り返った。手には八つの腕章。
「ようこそ。貴女たちには生徒会実行会計――『乙女八拳将』の役職を一時的に与えます。
 これによって学園での大きな自由が許されるでしょう。
 ですがこれだけは忘れないようにして下さい。
 『乙女心なきもの学園に在る資格なし』。
 もし乙女としての振るまいを忘れれば、いかに乙女八拳将といえど追放は免れません。貴女方の乙女心を……信じます」

●『恋文』
 そして、見学会当日。
「お姉様。こんな場所に呼び出して……いけませんわ」
 頬を赤く染めたツインテールの乙女が、美しい木の下へとやってきた。
 背を向けて待つ黒髪の乙女は、ゆっくりと振り返る。
 ツインテールの手には鋼鉄の矢。先にくくりつけられたは、文。
「こんな情熱的な文を書くだなんて。よほど、よほど――私を撃滅したかったのですわねお姉様!」
 矢が手の中でへし折れ、ツインテールは宙を舞う。
「奔放可憐流、奥義――!」
「黒髪清楚流、奥義」
 ツインテールから放たれる鳳凰のごとき炎の蹴りが、しかし黒髪の乙女の手のひらによって止められた。
 ほとばしる乙女心がフィールドとなって波状に広がり、攻撃を無力化したのだ。
「『後ろ髪』」
 次の瞬間、黒髪の乙女はツインテールの背後へと抜け、二本指を振り切った姿勢で止まった。
「ぐぎゃああ!?」
 血を吹き断末魔をあげるツインテール。
 彼女の首の後ろには『SS』という禍々しきタトゥーが彫り込まれていた。
 手を当ててみれば闇の乙女反応。
「間違いない。彼女もサボタージュサークルのエージェント。こんなにも、潜り込んでいたなんて……」

GMコメント

【オーダー】
 『サボタージュサークル』のエージェントを4人以上撃退すること

 新入生見学会の間、学園に潜入したエージェントがこっそりと新入生をアンブッシュしようとしています。
 これを許せば学園は力と信用を大きく失うことでしょう。鉄帝の未来をはぐくむ麗しく強かな乙女たちの教育機関が喪われることになるのです。

 エージェントは生徒会隠密書記たちが探り出し、そのリストが一部イレギュラーズたちに共有されています。
 お察しのことかと思いますが生徒会とその協力者たちもエージェント狩りを行ない、恋文で呼び出したり、隠れた場所へと忍び寄ったりといった手段で接近し、乙女決闘によって相手を撃滅するのです。

【エージェント】
 イレギュラーズに教えられているエージェントは八人。
 このうち四人までを撃滅せしめれば依頼成功。残ったエージェントは生徒会とその協力者たちが撃滅するでしょう。
 エージェントは他にもいますが、どうやら無理に働き過ぎないようにと生徒会長がリミッターをかけたようです。

 イレギュラーズ乙女は1~2人のチームを作り、エージェントのうち誰か一人に当たってください。
 基本は一対一。しかしレベルや戦闘スタイルに不安がある場合は誰かと協力して二対一の状況へ持ち込みましょう。
 一チームでターゲットを二つ以上狙う、ないしは連戦するプレイングは自動的にカットされます(大きなリスクを追うため)。
 以下、エージェントの名前と二つ名、そしてクラスの情報です。
 ただしメタ打ちをするんでなければ『誰々を狙います』とプレイングで宣言する必要はありません。生徒会が手回しをして丁度いい相手とマッチングさせてくれるでしょう。
 究極的には、あなたはあなたの乙女心を貫くだけでいいのです。

・月光の滝川:クラスは魔法少女
・火憐の赤平:クラスは式神遣い
・殉水の茂尻:クラスはセイレーン
・呪木の平岸:クラスはネクロオディール
・金壊の芦別:クラスはロイヤルナイト
・土腐の野花南:クラスはウォードッグ
・日倫の布部:クラスはカンナギ
・冥帝の富良野:クラスは暗黒時空超魔王

【乙女潜入】
 皆さんはメタリカ女子学園へ潜入します。
 JK制服とウィッグ、そしてスーパー化粧により何でか知らんけど皆さんはびっくりするくらい美少女です。
 元から美少女の方もJKバージョンとなり、元からJKだった人は実家のような安心感に包まれます。たとえ見た目がゴリラやモンスターでも立派な乙女となるのです。
 なのでここではできるだけ乙女らしさを演技しておきましょう。
 具体的にはできるだけ上品なことばを使い、折角なら名前の語尾に『子』をつけましょう。

【アドリブ度(ハイ乙女)】
 この学園では乙女たることを求められ、たとえプレイングに乙女らしさが書かれていなくても例外なく乙女となります。
 けれど宗教上の理由でプレイングにないことをされちゃ困るよというかたはプレイングに『アドリブNG』と書いて送ってください。該当描写をカットします。
 逆に、我が乙女道に後悔無し。乙女の覚悟は完了せり。というかたはプレイングに『乙女歓迎』ないしは『美少女歓迎』と書き込む暴挙に出てください。

  • 魁メタリカ女学園 サボタージュサークルよりの刺客完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月15日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
葛城 リゲル(p3p005729)
竜爪黒狼
エル・ウッドランド(p3p006713)
見たからハムにされた
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
奏でる記憶

リプレイ

●乙女の園
 スカートの裾が揺れる花園。
 美しく屈強な鉄扉の先に広がる乙女の世界。
 そう、ここは魁メタリカ女学園。
「お前たちには今から完全なる乙女になって貰う。乙女八拳将となり学園に潜入するためにな!」
 控えめに言ってゴリラみたいな人が、机に並べられた乙女グッズとメタ女制服を指さした。
「お、おい待てオレらもか!? こっそり潜入するんじゃダメなのか!?」
「考え直せ。俺が女装して喜ぶやつなんて……!」
 『紅鋏=マグナ子』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)と『竜爪黒狼』葛城 リゲル(p3p005729)はダッシュで逃げよう――としたが、ゴリラ用務員ヨシエは瞬間移動のごとき素早さで回り込み、二人の襟首を掴み上げた。
「ええいにがさん! 乙女の園へ立ち入る者、乙女たるべし! 乙女ならざるもの、立ち入ることなかれ! 観念せい!」
「「やめろ服を脱が――ウワアアアアアアアアア!!!!」」

 はい更衣室のカーテンをシャッ。
 ギザ歯に赤髪の乙女、マグナ子が現われた。
「紅鋏=マグナ子……乙女八拳将のひとりとして、尽力いたしますわ」
 レースリボンの巻かれたロブスターハンドを翳し、まつげの長い目を光らせる。
「同じくリゲル子。推して参りますわ!」
 可愛らしい髪飾りをしたリゲル子が、ミニスカートのセーラー服でカラテの構えをとった。
 二人は同時に振り返り。
「「お姉様方、ごきげんよう!!」」
「そんな、声まで変わって……!」
 口元に両手を当てて乙女ポーズをとる『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)。
 なんかもう既にセーラー服だった。
「ヨハナ・ゲールマン・ハラタ子じゅうななさいですっ!」
「ヨハナ子じゃありませんのね」
「ハラタ子ですわっ」
 乙女自称未来人じゅうななさい。属性積載量がそろそろ常人を超える。
「わたくし、学園に通うのがちょっと憧れでしたのよっ。いやんいやん、わくわくですわっ」
 両手を頬に当ててキャラを作っていくハラタ子さまでありました。
「こ、これ……オレもしなきゃだめなのか? そういう決まりなのか?」
 ぷるぷるする『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)。
 しかし乙女の園に野球少年が立ち入るわけにはいかぬ。
 意を決して更衣室に飛び込むと、乙女制服を纏って現われた。
「清廉なる泉の如し、清き乙女、清水洸汰子、ここに推参だぜ……ですわ!!!! サボタージュサークルのお姉様方を、ケチョ……え、あの、えっと……おけちょんけちょんにしてや――差し上げますわ!」
 おー、と小さい拍手。
「さて、と。残りは女子だけですよね? ちゃちゃっと着替えてしまいましょうか」
 『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)が上着を脱ぎ捨て、清楚なセーラー服を着込んでいく。
「できることなら普通の学校に行きたかった……けど、これもお仕事」
「私今気づいたんだけど、これセーラー服着るだけじゃ終わらないやつよね」
 『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が手元の『乙女八十八箇条』とか書いてある生徒手帳を開いてげっそりした。
「ここまで美少女な私でもまだ足りないのね。ええと……コホン」
 秋奈は丈の長いスカートの端をつまむと、おしとやかに礼をした。
「茶屋ヶ坂戦神 秋奈子ですわ。よしなによろしく……」
「皆様、とても素晴らしい乙女ぶりですわ」
 『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)は麗しの制服に身を包み、花散るオーラと共に振り返った。
「そう思うでしょう、葵子さま」
「ええ、まったく。きっとよき乙女八拳将となれますわ」
 麗しの乙女力を振りまいてくるりと振り返る『葵子さま』アオイ=アークライト(p3p005658)。
 きわめてばっちりにあった制服。長い髪とハグルマの髪飾り。これを、葵子さまは自宅から着てきた。
 葵子さまは乙女。なんら不自然なことはない。
「サボタージュサークルの刺客たちを必ずや撃滅できますわ」
 サボタージュ。
 現代語のサボりの語源とされ、怠けることの意味をもつが、もう一つの意味として労働組合の争議戦術という意味をもつ。
 仕事につきつつわざと能率を下げ経営者に損益を与えるという攻撃方法だ。そのうち積極的サボタージュ方法として、機械設備の意図的破壊がある。
 今回メタリカ女学園に敵対するとされる『サボタージュサークル』のやっていることは、これに近いことなのだ。最終目的がメタリカ女学園を堕落させ衰退させることという根本的違いこそあれ、だが。
「今ここに居並ぶは八人の剛勇なる乙女」
「怠惰の刺客を打ち払い、乙女の花を咲かせてみせますわ!」
 なんとなく勢いで乗り切ってみたが、葵子さま(元)がさらっと女子にカウントされていたのを視聴者の皆様は気づきかしら? あらあらうふふ。

●レジェンド乙女の地
 伝説の木。
 それはメタリカ女学園(通称メタ女)に代々伝わるレジェンドスポット。
 この木の下で百人の乙女が一人の乙女に逢い引きを申し入れ、レジェンド乙女は己の拳と乙女力によって百人全員を返り討ちにしたという伝説である。
 その伝説にひと目触れようとやってきた乙女がひとり。
 手を後ろに組み、風の吹く枝葉を見上げる乙女の、その後ろ。
 よく磨かれた革靴とハイソックス。
 じゃり、と砂地を踏んだその瞬間に、大地から飛び出した大量の薔薇のツタが乙女を縛り上げた。
 乙女アンブッシュである!
「フフフフフ……心弱き者ほど伝説にすがるもの。そんな己を恥じる者。人目を忍んでやってきた所をこのように捕らえるのは容易ですわ。ウフフフフ」
 縛り上げられた乙女の前へ、余裕をもって回り込むと……乙女らしからぬ引きつったような悪しき笑いを浮かべた。
「わたくしはサボタージュサークルの八曜客がひとり、呪木の平岸。あなたはもう逃げられ――」
 哀れな被害者の顔を覗き込もうとして、平岸は驚愕に目を見開いた。
 そう。縛り上げたのは乙女などではない。乙女ゼシュテルパンを積み上げて作った人形。
「これは、乙女空蝉……!」
 驚愕。脳裏によぎる警戒の念。しかし肉体に電気信号が至るより早く、銀の弾丸が平岸の肩を貫いた。
 乙女逆アンブッシュである!
 心臓部を抜かなかったのは、それでもギリギリで回避行動をねじ込ませた平岸の執念か。
 着弾の感覚から発射地点を予測し、平岸はナッシングネスの魔術を発射。
 正確に把握したのだろう。茂みに隠れていた乙女エル子さまは回避が間に合わない。否。回避の必要が無い。
「破ッ!」
 マジックアームによる防御で魔術弾を弾くハラタ子さま。
「行きますわよ、エル子さま」
「はい! 私の乙女心を弾丸に込めて……撃ち貫きます、そのハートを!」
 追撃を逃れるべく茂みから飛び出すエル子さま。
 そこへ飛び込む新たなる刺客。
「火憐の赤平、推参。平岸さま、アンブッシュを仕損じるとは無様千万。万死に値しましてよ」
「お叱りなら後でうけますわ!」
 赤平は式神召喚で白鴉を発射。
 同時にロベリアの花を発射し欲張った攻撃を試みる平岸。
 しかしハラタ子さまとエル子さまがそのような怠惰な攻撃を素直にお受けになるはずがございませんわ。
 至近距離まで詰め寄ってナイフによる連続斬撃を繰り出すハラタ子さま。
 時計回りに位置をずらしマグナム弾を撃ち込むエル子さま。
「撃ち貫きます、私の思いを貴方に!」
「しまっ……!」
 乙女は常在戦場。失態は死体に通ずる。メタリカ女学園の鉄則である。
「「ぎゃあ!?」」
 乙女らしからぬ悲鳴をあげた赤平と平岸は、乙女たる資格を失った。
 二度と学園の門を潜ること罷り成らず、乙女的死を迎えたのであった。
「勝ちましたよ……お父さん」
 学生服の裾をつまみ、エル子さまは祈るように目を閉じた。
「それにしても、なぜこのようなことを。こんなにキラキラとした学園を潰そうだなんて……」
 せめて恥をさらさぬようにと撤退する平岸たちの背を見て、ハラタ子は小さく首を振るのでありました。

●朱に交わればマグナ子さま
「乙女八拳将が一、紅鋏=マグナ子と申します。お相手していただけるかしら、サボタージュサークルのエージェントさん?」
 見学会に訪れた新入乙女の前に、庇うように立ちはだかる深紅のセーラー服。
 左手のロブスターハンドを美しく撫で、マグナ子さまはお相手を見つめた。
 所属と名前を述べたなら、お返しするのが乙女道。
「八曜客がひとり冥帝の富良野でございますわ。本日はお日柄も良くごめんあそばせ」
 まるで感情がないかのような平坦な語りで、富良野は真っ黒なセーラー服を靡かせた。
 と同時に、破滅の魔力が直接発射される。
 先程新入乙女をアンブッシュしようとした攻撃方法だ。
 が、乙女に同じ手は通用しない。マグナ子さまはそれを乙女力を纏った右手で払いのけると払いのけながら、閉じたロブスターハンドに深紅の乙女力をチャージ。
 連続して放たれる破滅魔術を小刻みなジャンプとスライディングで回避していくと……。
「紅鋏流遠式・レッドマグナム!」
 ロブスターハンドを開いて激しいチャージショットを発射した。
 足下から吹き上がる闇の乙女力で紅蓮の光を防ぐ富良野。
 マグナ子さまはその隙に至近距離まで近づくと、乙女力をロブスターハンドへと集中させた。
「紅鋏流近式・スティンガー!」
 防御は永遠でも万能でもない。
 絶妙すぎるタイミングのパンチに、富良野は防御不能を察し破滅魔術を至近距離で爆発させた。
 が、下がらない。富良野の顔面に、マグナ子さまのロブスターハンドが直撃した。
「美しい花にはトゲがあるものですわよ、お姉様」

●校舎裏乙女空手
 戦の風が吹き抜ける。
 校舎裏のフェンス越し。
 スカートを靡かせる二人の乙女。
 セーラー服に髪飾り。赤いハチマキをしめた乙女は、手を合わせてみせた。
「『乙女八拳将』が一人、葛城リゲル子……尋常に勝負」
 その礼と構えは乙女空手の正しき姿勢。
 相手もまた乙女の道を歩む者なれば。
「『八曜客』が一人。月光の滝川ですわ」
 滝川は同じく乙女空手の構えをとると、強く腰の入った拳を突き出した。
「私の乙女空手は夢と希望と乙女心の直進拳。一撃必殺の拳でしてよ。お受けになって?」
「……構いませんわ」
 リゲル子さまは流水のごとく柔軟な構えをとると、誘うように指でお相手を招いた。
「わたくしを一撃のもとに粉砕できたのなら、あなたの勝ち」
「もしできなければ?」
「わたくしの拳が、滝川さまの顔面を粉砕しましてよ」
 再び、戦の風が吹き抜けた。
「魔法乙女流――マジカル岩砕拳!」
 嵐の如く近づいた滝川の、魔法乙女力の乗った拳がリゲル子さまの両腕のガード越しにぶつけられた。
 星形の乙女力が吹きすさび、リゲル子さまの肉体を削り取っていく。
 しかし……!
「まだ一歩、弱いですわ!」
 血を流しながらもガードを解いたリゲル子さまの拳に、堅い乙女心が集中した。
「これは――!?」
 目を見開く滝川。
 その胸に、リゲル子の実直なる乙女の拳が叩き込まれた。
 膝をつき、崩れ落ちる滝川さま。
 目を瞑り、構えを解くリゲル子さま。
「勝負、ありましたわね」

●鉄帝では時として美少女の定義が違う
「戦乙女が一騎、茶屋ヶ坂アキナ子! 有象無象が赦しても、私の緋剣が許しは――しませんわ!」
 ゴリラみたいな用務員から熱心に口調の矯正を受けたらしいアキナ子さまは、刀を二本抜いて交差するように構えた。
 対して真っ黒な剣を抜き、水平に構える乙女。
「土腐の野花南と申します。以後お見知りおき……いいえ、あなたはここで朽ち果てるが定め。わたくしの名を骨に刻んで埋もれなさいな!」
 超反応によって距離を詰める野花南。
 対してアキナ子さまは二刀それぞれを攻撃に向けた捨て身のスタイルで斬りかかる。
「でーあーふたーでー。ゆーすてーあろーんど……」
 一刀の威力はアキナ子さまが上。
 防御とバランスでは野花南が上。
「愚かな特攻ですわ。無駄に命を散らして」
 アキナ子さまの腹を、刀が突いた。
 否、貫いた。
 刀の半分までが腹に沈み込んで、なお。
 アキナ子さまは血を吐きながら踏み込んだ。
「ふぁーあうぇー……」
 刀が鍔の部分まで沈み込み、アキナ子さまの刀が野花南の首へと据えられた。
「無駄かどうかは、ついた足跡が決めること。乙女の生き様ってやつ……ですわ」
 アキナ子さまは言ってから、血の欠損によって仰向けに倒れた。

●お業の深きこと!
 新入生たちが学園を見学して回るその様子を、物陰から忍び見る乙女がある。
 背に黄金の野球バットをかついだ、乙女野球部二塁手。芦別である。
 新入生が一人になったところを狙って闇討ちを謀るつもり……だったのだが。
「そこまででぜですわ!」
 若干物慣れない口調の声が、背後から。
 と同時に芦別はバットを握って振り返り、フルスイングを繰り出していた。
 バットとバットがぶつかる豪快な音が、乙女グラウンドに響き渡る。
「あなた……乙女八拳将のお方ですわね!?」
「そーだぜですわ!」
 飛び退き、ベースボールハットを被り直す洸汰子さま。
「アタイはシミズコータコ! さあ御姉様、アタイと一緒に遊んでくれるよな? ……ですわ!!!!」
「遊びすぎて壊してしまったら――御免遊ばせ!」
 豪快なダッシュからのスパイクシューズキック。
 洸汰子さまは低く身構え――つつ咄嗟に靡くスカートの裾をおさえた。
「わわっ!?」
 キックが直撃した洸汰子さま。
 吹き飛ばされるが、しかしダメージ割合は軽微。
「頑丈ですわね。けどこれならどうかしら! 金壊の芦別と呼ばれた乙女魔球の力をごらん遊ばせ!」
 黄金に輝くボールを、ソフトボール投げで発射した。
 ぎらりと光る洸汰子さまの瞳。
「そこ――ですわ!」
 えぐり込むように繰り出されたバット。
 それはまさに、乙女野球道における奥義――地獄ピッチャー返しである!
「ぐぎゃああ!?」
 直撃は、そして乙女資格の剥奪は、免れぬ!

●レジェンド乙女はここにいる
「殉水の茂尻」
「日倫の布部」
「「八曜客きっての実力派。人呼んで無限輪廻姉妹!」」
 左右対称に構える和礼装の乙女と洋礼装の乙女。
「葵子さま、そして悠子さま。あなたがた二人が四谷三越姉妹を破ったことは知っておりましてよ!」
「自らを治癒しながらじわじわと追い詰める手口も対策済み。私たち二人にその手が果たして通用しますかしら!?」
 殉水は自分たちにステータス強化能力を、日倫は再生&充填能力を付与し始める。
「わたくしたちの『弾切れ』を狙うことは不可能」
「四谷三越姉妹や応援炎絶のようにはいかなくってよ!」
 同時に飛びかかる茂尻と布部。
 鋼鉄の靴底を仕込んだダブルキックが、しかし悠子の杖と葵子の剣によって阻まれた。
「あらあら。三ヶ月も前のわたくしたちを相手に一生懸命対策していただなんて……ねえ、葵子さま」
「ええ、悠子さま。とてもとても……」
 葵子さまの剣から鎌が展開し、超高速で走る刃が茂尻と布部を同時に切り裂いた。
「「お可愛いこと」」
 悠子さまの手が茂尻の首を掴み取り、瞳の奥に組み上げられた世界線定義の法則式が強制的に組み変わっていく。
「ア゛ッ、が……!?」
 乙女らしからぬ声をあげる茂尻を前に、布部は驚きと困惑を露わにした。
「そ、そんな。そんな力は無かったはずですわ。そんな話は聞いていませんわ!」
「あら。あら。どこの誰から聞いたのでしょうね」
 悠子さまの目が動く。
「ゆっくりと伺いたいですわ」
「はい。時間はたっぷりありますから」
 抵抗しようとした布部の腕をねじり上げ、葵子さまは彼女の後頭部へと特別な拳銃を押し当てた。垂れた長い髪がかかる。
 軋む音がするほど歯を食いしばる布部。
「おのれ……これが、これが……乙女八拳将! レジェンド乙女の力だというの!? 認めない、認めませんわ私は――!」
 肩関節を自ら破壊し、無理矢理振り返った布部の頭を、葵子さまの神秘分解魔弾が貫いていく。
「お話は、どうやらできそうにありませんわね……悠子さま」
「時間は沢山ありましたのに。残念です。……とても」
 白目を剥いて脱力した茂尻から手を離し、悠子さまは長い髪を払った。

 ――こうして、メタリカ女学園を襲う『サボタージュサークル』の魔の手は弾かれた。
 だがこれは、新学期に至る学園と反抗勢力との戦いの幕開けに過ぎない。
「乙女八拳将……ンああ、なんて素敵なお姉様たち」
 小柄な乙女が、闇の笑顔を浮かべて屋上フェンス上に腰掛けている。
「わたくし、恋してしまいそう」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――魁メタリカ女学園『恋する乙女編』、始動

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