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シナリオ詳細

街が享楽へと沈みきる前に

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魔種となった占い師
 幻想、ローレット。
 そこにとある魔種の討伐依頼が張り出される。
「いつ依頼が出るのかと、首を長くしていたよ」
 大きく表情こそ変えぬが、『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)はその依頼書を確認し、切れ長な目を細めていた。
 しばらくして、依頼を受けるイレギュラーズが集まったところで、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が説明を開始する。
「今回はよろしくお願いいたします」
 そして、初めてライラに関わる依頼に参加するメンバーの為、彼女は最初から状況を話す。

 以前、メンバー達がこの街を訪れたのは、この街に魔種の存在が確認されたこと、そして、暁蕾からライラなる女性が自分の知る人物と同一かどうか。その2点を調査する依頼の為だった。
 結果として、漆黒の素肌を大きくさらす褐色の女性、ライラ・ティリスは魔種へと堕ちていた。
 元々、ライラは最低でも2つの人格を持っていたらしい。
 表は清楚な見た目の占い師。そして、もう一方は妖艶なる魔術師。
 彼女は人格を使い分けて仕事を行い、生計を立てていたと思われるが、普段、どう過ごしていたかは、暁蕾の方が明るいところだろう。
 ただ、現在は妖艶でサディスティックな面が強く前に出てしまっている。
「現在、ライラは手練れでかつ好みの男女を傍に置き、気ままに街で過ごしているようです」
 アクアベルが『ようです』と言葉を濁すのは、相手が魔種だけに迂闊に近寄ることができないからだ。この為、狂気の影響を受けない旅人の力を借りて情報収集していたらしい。

 魔種となったライラが実質的に支配下へと置いているその街の規模は1500人ほど。
 小規模な街ではあるのだが、飲食店、酒場、劇場、公衆浴場に宿屋と、幅広く設備が整えられている。
 占い師として町に現れた彼女はこの地に宿泊して留まり、少しずつ住民を懐柔し、自らの勢力下においていったと思われる。
 とりあえず、前回同様に町の人を巻き込まぬよう戦いを行いたい。
 今回は最初から相手が魔種だと分かっていることもあり、いきなり攻撃を仕掛けてもかまわない。
「仕掛ける時間、場所、タイミングは皆さんのお任せします」
 タイミングはいくつかあるが、大きく2パターン。宿で休んでいる朝から夕方。街を出歩く夕方から夜だろうか。
 メリットデメリットはあるが、いずれにせよライラ本人はローレットの襲撃に警戒を強めており、どんな時間帯、場所であっても、街中であれば周囲から人々が集まってくる状況は変わらない。
「ただ、うまく相手の隙を突くことができるタイミングはあるはずです」
 残念ながら、アクアベル自身も近づくことが難しいこともあり、具体案を示すのが難しいのだが……。
 力押しで行くことも状況的にやむを得ないが、関係者である暁蕾を生かした作戦は効果的となる可能性は高い。
「作戦状況までほぼ丸投げにしてしまう状況で申し訳ないのですが、人数でカバーしていただければと思います」
 街や人々への被害を考えれば、頭の痛い状況だ。
 だが、ここでライラを倒さねば、住民達は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』に堕とされてしまう。
 現に、ライラに害なすローレットに、住民達が敵対行動を起こしている。早くせねば、狂気を抱いた住民が新たな魔種となり、取り返しのつかない事態となりかねない。
 それだけに、作戦を練って確実に彼女を撃破したい。
「どうか、よろしくお願いいたします」
 アクアベルは心苦しく感じながらも、この1件をイレギュラーズ達へと託すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
 とある幻想の街を、実質的に支配している魔種の女性の討伐を願います。

●敵
○ライラ・ティリス
 暁蕾さんの恩師。元は幻想種で魔種となり果てています。
 二重人格であり、妖艶、サディスティックな面の強い性格が前に出ています。
 彼女が失踪した理由、魔種へと堕ちた理由は不明です。

 以前の戦いで、メイスを所持し、以下のスキルを使うことが確認されています。
・魅惑のフェロモン(神遠範・魅了)
・魔力弾(神遠単)
 魔術師として別途スキルを使うと思われますが、現状不明です。

○人間種……人数不明
 対応によって、相手する数は大きく変わります。
 最低でも5~6人、多い場合は2~30人を相手にすることになります。
 現状、ライラは四六時中、手練れの男剣士、女魔法使いを護衛に当たらせている為、隙がありません。

 いずれも、狂気に惑わされた町の住民達です。
 全員、魔種にはなっておりませんが、一度倒し、正気に戻す必要があります。
 ライラが傍に置く男剣士、女魔法使い含め、一筋縄で行かぬ者もいます。

●状況
 朝方、昼間、夜など時間を指定し、自由なタイミングでライラに仕掛けることができます。
 朝方から夕方までは、宿で休んでいるようです。
 夜は街を動き回り、店を歩き回っているのが確認されています。
 街の住民はほとんどが懐柔されているので、行動は慎重になるべきでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 なお、こちらは拙作、『享楽に浸る残忍な魔女』の続編シナリオです。
 必須ではありませんが、お読みしていただくことで世界観や戦略が広がり、より楽しむことができるかと思います。

 以上です。それでは、よろしくお願いいたします。

  • 街が享楽へと沈みきる前に完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年03月08日 22時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
エマ(p3p000257)
こそどろ
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
大いなる者
郷田 貴道(p3p000401)
人類最古の兵器
サンディ・カルタ(p3p000438)
抗う者
暁蕾(p3p000647)
超弩級お節介
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
七鳥・天十里(p3p001668)
ガンスリンガー
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
パンドラの匣を開けし者
天之空・ミーナ(p3p005003)
ディザスター

リプレイ

●街を汚染する魔女
 星が瞬く夜空の闇が少しずつ薄らいでいく。
「もうすぐ、夜が明けるのじゃ」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は明けゆく空を仰ぎ、仲間達へと告げる。
 おそらく、討伐対象は夜通し街を歩き回り、そろそろ寝床となっている宿で休み始める頃だ。
 そこに、『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)が空中から降りてきた。
 彼女は高所から街と地図を照合した上で、人の分布を見ていたのだ。
「前回は劇場、宿屋から酒場に行って、そこから脱出したな」
 『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)も前回依頼で訪れた際の記憶を呼び起こし、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)もまた、事前に仕入れたコネ情報を元にその地図に印をつけていく。
 そうして、メンバー達は対象の宿泊先を割り出し、さらに街の裏道などの把握に努める。
「宿は変えていないようね……」
 『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)はファミリアーの烏を飛ばし、その近くにファミリアーらしきコウモリを発見して仲間達へと状況を伝える。
「暁蕾君に恩を返そうか」
 変装の為、髪を解いていた『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は以前の借りをこの場で返そうと参戦していた。
「暁蕾さんの恩師……なんだろうけど、手心加えてどうにかできるような相手じゃないよね」
 全てが丸く収まればと、七鳥・天十里(p3p001668)は願う。
 それは、当事者の暁蕾とて同じだ。
「ライラを救いたい。優しかった彼女に戻って欲しいけれど……」
「魔種となれば、討ち取らねばなりません……。身内であっても」
 ただ、『女三賊同盟第一の刺客』エマ(p3p000257)が突きつける現実に暁蕾も頷き、仲間と方針を合わせて討伐を前提に行動するつもりだ。
「多重人格では呼び声がどの様になるかなど、多少気になるところですが……」
 ヘイゼルは物陰から、ほとんどの人々が寝静まる町を眺める。
 これだけの街の規模が汚染されている状況は、実にのっぴきならない。
「HAHAHA、女は魔性って言うしな。恐ろしい話だ!」
 この状況にも、『リローテッド・マグナム』郷田 貴道(p3p000401)は陽気に高笑いする。異常な街のことなど、彼は知ったことではないようだ。
 そんな仲間達の存在は、暁蕾にとって非常に心強い。
 ライラとの再会を喜ばしく感じる一方で、魔種となり果てた彼女を救う手がないのなら、いっそ私の手で……。
 例え彼女を殺すことになっても、魔種についての知識が得られるならばと、意を決した暁蕾は拳を強く握りしめるのである。

●相手が休む宿への奇襲
 日の出までの僅かな時間で、イレギュラーズ一行は手早く情報を集める。
 人通りはかなり少ないが、幻想での名声が高い面々。ヘイゼルや『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003)などは、フード付きの衣装で顔を隠しつつ活動を開始する。
 すでに街を歩いている人は、朝からの仕事の仕込みを行う者達だろうか。
 ラルフが好意を持たせるよう住民に声を掛けると、すっかりライラに心酔している様子が窺えた。
 探りを入れていることを気取られぬよう、デイジーは髪型と服装を変えて本心を隠して話す。
 ギフトの効力によって飴玉を受け取ることで、デイジーは住民に敵意がないことを判断していた。
 なにせ、側近の魔法使いが放ったコウモリのファミリアーが監視している。
 ハイセンスを働かせる天十里はそれを警戒し、屋根を使わず仲間と地上から進む。
 合わせて、イーリンは相手がテレパスを働かせている可能性も考え、常に人目を警戒して建物の影を最短距離で移動していく。
 ライラと面識はない貴道だが、念の為にとボクシングガウンのフードを深く被り、宿周囲の警備の存在を確認する。
「間違いなさそうだな」
「えひひ、いますね」
 貴道に同意するエマは小さく笑う。
 エマはサンディと共に斥候に当たっていた。やはり、彼らも相手ファミリアーを警戒し、地上から接近していく。
 朝方だというのに、宿の周囲には数人の警備の戦士らが見張りに当たっている。
 逐一、サンディのメッセージカードや暁蕾のファミリアーを介し、状況は皆に周知していた。
 ともあれ、包囲の妨げになるその警備を、エマ、サンディは手早く不意打ちを繰り出し、声すら出させずに昏倒させる。
 皆で集まり、ライラがいるのが部屋は建物2階の奥部屋と断定。
 一行は正面と裏口に分かれ、突入のタイミングをはかる。
 裏口は4人。天十里が式神を正面に向かわせ、ヘイゼルと共に機を窺う。
 正面側では、ミーナがギフトで仲間の位置を確認。
 双方が合図を出し合う形で突入していく。
 ただ、踏み入るだけではない。
 裏口では、窓から突入したエマが他メンバー突入後に鍵を閉め、サンディが机で完全に裏口を塞ぐ。窓は敢えてそのままにし、有事の際の脱出に使えるようにしていた。
 正面からは天十里の指示で、暁蕾がテーブルで入り口を塞ぐ。
 さらに、イーリンが保護結界を張り、物品の破壊回避と敵の侵入、及び逃走経路の割り出しを同時に行う。
 中にも警備が詰めているのは、メンバーも折りこみ済み。
 貴道が狭い通路で、向かい来る一般人を張り倒す。
 デイジーも殺さぬ程度にと、青い衝撃波で壁まで吹き飛ばして倒し、目的の部屋を目指す。
 その間、ラルフは狭い通路や階段へと重点的に万能金属のワイヤーを張り巡らせ、簡易スネアトラップを仕掛ける。
 なお、ワイヤーは天十里の指示で、入り口を塞ぐ彼の式神へと手渡していたようだ。
 ミーナがその手伝いで隠蔽工作を行うが、それが際立つよう、敢えて視認が容易なロープの罠も作っていく。
 相手が休んでいるのは、この街の中ではおそらく一番の大部屋だろう。
 合流する2班が部屋に突入すると、そこにはすでに目覚め、臨戦態勢に入っているライラの姿があった。
「さすが、ローレットといったところかしら」
 ほとんど一般人に気取られず、襲撃してきた手腕を相手も評価する。
 煽情的な格好の敵を目にし、サンディは暁蕾から聞いていた『恩師』の姿とはまるでイメージが合わぬことを感じて。
「教え子が今や、こんな素敵なレディだってのに」
 その暁蕾はどんな言葉をかけるべきか、そして、魔種となり果てたライラへと複雑な思いを抱いていて。
「多重人格……私はそんなこと知らなかった」
 もし、暁蕾が知らぬ別人格だけが魔種になっていたなら。自身の知っているライラが内で眠っているなら。
「ライラ、元のように一緒に暮らしましょう?」
 自身の知るライラを目覚めさせれば、目の前の人格のライラは……魔種のライラは消えてしまわないだろうか。
 暁蕾はそんな淡い期待を抱きながらも、声を掛ける。
「お生憎だけど、私はもう体を誰にも譲り渡す気などなくてよ」
 相手の言葉に、サンディが顔をしかめる。せめて、最後の一言くらいは間に合うとよいのだが……。
「なぜ、逃げずにこの街に? 暁蕾を苦しめるためかしら?」
「これが私のあるべき姿だからよ。享楽のまま生きることこそ生物のあるべき姿だと思わない?」
 己の欲のままに振る舞う人間は、これまでも数え切れぬほどいた。
 それが自身の破滅を導くことになることを、イレギュラーズ達は嫌というほど知っている。
「貴方の享楽、暴いて見せるわ。……神がそれを臨まれる」
 この魔種は止めねばならない。
 メンバー達は武器を手に、ライラへと攻撃を仕掛けていく。

●魔種に付き従う者達
 双方が戦いを始めるタイミング、トラップの仕掛けで遅れていたミーナが飛び込んでいく。
 ライラを視界に捉えた彼女は、殺意を宿した指先でライラに触れ用と仕掛ける。
「ライラ様!」
 しかし、飛び出した男剣士が代わりとなる。隣の部屋から扉が繋がっており、間に入ってミーナの一撃を受け止めたのだ。
 取り巻きの数は下の護衛を倒したこともあり、10人もいない。
 それもあって、ミーナは取り巻き狙いに切り替えることにしていた。
「君は最初から、我々を察知していたね」
 ラルフは人心掌握術を働かせながら、こう告げる。
「恐らく、『本当は多重人格ではない』のかな」
「どうして、そう思ったのかしら」
 彼女が事情を知らない状況が不自然だと、指摘するラルフ。
「まるで、暁蕾君に止めて欲しい様に見える」
 ライラに動揺は全く見られない。
 思惑とは違ったかとラルフは眉を顰めながらも、ライラのマークへと当たっていく。
 大部屋で戦うにあたり、この場から逃がさぬようエマは取り巻きが入ってきた扉を背にする。
 そのままエマは速度を生かして短刀で切りかかり、取り巻きの数を減らす。
 サンディもまたエマと合わせるように高速回転して、取り巻きを突き飛ばした。
 その取り巻きの1人を狙い、貴道が弱点を狙って拳を打ち込み、卒倒させていく。
 入り口に立つイーリンは、鈍器を手にする取り巻きを引き寄せて。
「私に手を触れるな、俗物!」
 エスプリの効果で取り巻きとなる一般人の命を奪わぬよう配慮しつつ、イーリンはカリスマで威圧する。
 暁蕾もまた包丁を手に襲い来る市民へ、集中してから魔力を発していく。
 駆け付けた一般人は戦闘経験すら浅い者も多く、それだけで倒れる者もいた。
 だが、お付きの男剣士と女魔法使いが厄介な相手だ。
 窓の一つに陣取るデイジーは男剣士の体を氷の鎖で絡めとり、動きを止めていった。
 天十里はライラへと近づき、リボルバー銃から光の弾丸を発していく。
「…………!」
 うまく取り巻きをすり抜け、ライラを撃ち抜く。その一撃は、しばし、相手を運に見放させる効力がある。
 ライラも様子見とばかりに魔力を発して応戦してくる中、女魔法使いが合わせて追撃するように魔力を放出してきていた。
 現状は、敵も手の内を見せてこない。
 エスプリで魅了対策を講じるヘイゼルは、仲間が魅了されないかどうか常時確認しつつ、赤い糸を投げつけて邪魔する取り巻きの抑えにも当たっていくのである。

●手早く取り巻きを片付けて
 さすがに、一般人相手ならば猟兵も後れを取るはずもない。
 それを見たライラが息を大きく吸い込む。
 デイジーが大声を上げようとするライラを止めるべく動くが、男剣士がそれをさせぬと抑えに当たる。
「皆、襲われているの。早く助けて!」
「させぬのじゃ!!」
 デイジーは大声を上げ、声が聞こえぬようにとするが、完全に被せることができずに逆効果。かえって、外にいる住民達に居場所を教える形となってしまう。
 ともあれ、増援が来る前に事態を収拾したいところ。
「エマ、背中は任せて」
 イーリンはこの場の取り巻きをまずは片付けようと、魔眼で見つめてその体力を奪い去っていく。
「ここは馬の骨さんに大体任せちゃいましょう! 背中任せました!」
 エマはやってくる一般人を蹴り飛ばし、卒倒させていく。
 倒れる一般人の数は増えている。
 貴道もライラを狙う素振りでフェイントをかけつつ、相手に拳を接触させてから強烈な一撃を叩き込んで床を這わせていった。
 それから程なく、一行は男剣士を追い込むこととなる。
「殺すつもりは毛頭ないけど、痛いのは勘弁してもらうしかないね」
 魔種の傍にいる彼らはまだ、正気を保てるのだろうか。
 そんなことを考える天十里は銃弾を飛ばし、男剣士を倒してしまった。

 ミーナは序盤、敵の数を見て死骸盾を使って攻撃を防いでいたが、取り巻きの数が減ってきたことで、今度こそはと死神の指先でライラを狙う。
 その指が肌を掠め、ライラの態勢が僅かに乱れて。
「……さすがね」
 だが、彼女はそのまま詠唱を始めて。
「行きなさい、氷の嵐よ」
 この部屋全体を巻き込む凍てつく風。
 広範囲に及ぶその嵐は取り巻きをも巻き込み、この場のメンバー達へと浴びせかかってくる。
「……氷の範囲攻撃ですね」
 ヘイゼルは仲間達へとライラが初めて使ったスキルについて、即座に情報共有を行う。
 その上で、ヘイゼルは状況を分析して仲間達へと呼びかける。
「落ち着いて、行きましょう。焦ると相手の思うつぼです」
 それを耳にし、ライラを抑えるラルフはすかさず、魔導拳銃から呪いの弾丸を発する。
 撃ち抜かれた女魔法使いは軽く吹っ飛び、その場に崩れ落ちていった。

 気づけば、この場の敵はライラただ一人となっていた。
 劣勢ではあるが、彼女はさほど慌てる様子もなく魔法弾を飛ばし、合間に氷魔法を織り交ぜて攻撃してくる。
 サンディは毒苦無を飛ばし、ライラの体を巻き込むように燃え上がらせ、さらに毒を与えていく。
 暁蕾も、ライラの攻撃によって凍り付く仲間に状況分析で声をかけつつ、戦う相手をエネミースキャンを伴って注視していた。
 聞きたいことはたくさんある。
 しかし、それを全て問答している余裕もない。手早くライラを倒さねば、状況は悪くなる一方なのだ。
「ライラ、どうして魔種化してしまったの?」
 まず、一番聞きたかったことを彼女は尋ねる。
「ある人がね、教えてくれたのよ。こんな素敵な世界を」
「…………」
 暁蕾は思う。もしかしたら、彼女は別の魔種によって堕とされてしまったのではないか、と。
 腕を伸ばすライラの左手の甲には、ナイフを貫いたような跡を発見する。
 彼女が失踪した際、残されていたという大量の血痕。
 あれは、ライラ自身のものだったのではないだろうか。
「ふふふ、いいのかしら?」
 その時、ライラは自らの体からフェロモンを振りまき、仲間達を惑わせようとしてきたのだった。

●これ以上、血で汚させぬ為に
 ここにきて、イレギュラーズ達を魅了しようとしてくるライラ。
 煽情的なポーズは、異性だけでなく同性すらも虜にする力がある。
 そこで、ミーナがふらふらと近寄っていく。
 にやりと微笑むライラ。
 だが、ミーナは予めエスプリで魅了への対策を練っていた。
 相手の油断をついて、彼女は両手の短刀で刺突を繰り出した後、切り掛かっていく。
 うまく魅了から逃れていた貴道も好機と攻め入り、ライラの腹目掛けて拳を強かに打ち込む。
 ラルフが惑わされかけていたらしく、貴道がライラのブロックへと当たり始めていた。
「悪いわね、そこのミーナは魅了済みよ!」
 そこで、イーリンがドヤ顔で仕掛ける。
 元々、想い人同士である関係の2人だからこそ、イーリンは安心してミーナを送り出していた。
 そして、自らも魔眼で前方を見つめる。
 視線は紅と蒼の螺旋となり、魔種となったライラを射抜く。
「私を魅了したけりゃ、イーリンを超えた魅力を魅せるこったな。残念だが、お前じゃ足りやしねぇんだよ!」
 勝ち誇ったようにミーナが叫びかけ、さらに構えを取る。
 その間に、ヘイゼルが仲間達の魅了を解くべく大号令を放って我を取り戻させていく。
 ライラは再度氷の魔法をこの場に展開し、凍てつく風を巻き起こしてくるが、それだけではもうイレギュラーズは止まらない。
 相手に氷の鎖が残っていると確認したデイジーは、破滅と狂気をもたらす笑いをライラへと聞かせ、刹那恍惚とさせる。
 直後、心の光を銃弾に宿した天十里がライラの胸部を撃ち抜いていく。
「ううっ……」
 よろけるライラに、暁蕾は呼びかけた。
「ライラ……、また一緒に、暮らしましょう……?」
 また、自身の知っているライラが目を覚ましてほしいと呼びかける。
 原罪の呼び声が怖いところだが、それでも、暁蕾は本心からライラを救い出したいと願っていたのだ。
「そうね……、戻れたらいいわね……」
 だが、彼女は手にする杖を暁蕾へと突きつけ、魔力弾を発射してきた。
 まともにその一撃を受けた彼女が意識を失いかけるも、パンドラの力で意識を強く保ってライラの顔を見つめる。
「……くっ」
 すると、相手が顔を伏せ、窓目掛けて走り始める。
 だが、貴道はそれをさせず、我を取り戻したラルフもまた抑えへと当たり、死毒の銃弾を発射してライラの腰を穿つ。
 その間に近づくサンディが自らの裡から暴風を巻き起こし、近場のライラを巻き込む。
 隙を突いてエマが挟撃するように仕掛け、速力を威力に転化してライラの体を短刀で切り刻んでいく。
 仲間が傷つくこの状況を、見過ごすわけにはいかない。
 暁蕾は彼女を止める為に、集中してから仲間がつけた腹の傷を狙い、魔力を破壊力に変えて打ち込んでいった。
「あ、ううっ……」
 うめき声をあげて、ライラは崩れ落ちていく。
 宿の中でもその時、多数の人々が倒れる重い音がいくつも聞こえてきた。魅了されていた人々が気を失ったのだろう。
 そばへと近づいていく暁蕾は、ライラを抱きかかえて。
「それで、いいの……」
「ライラ……ごめんね」
 魔種となった彼女の肌は、最後まで黒いままだった。
 しかし、事切れるその一瞬の間だけは、自分の知っているライラだったと確信し、暁蕾は両目から光るものを零す。
「間に合ったんだな」
 サンディが一言問うと、暁蕾は小さく頷いた。

 求めた情報はあまり得ることはできなかったが、誤った道へと進んでいた恩師を止めることはできた。
 だが、まだ気持ちの整理をつけることはできない暁蕾は大切な人の骸を抱え、しばらくむせび泣いていたのだった。

成否

成功

MVP

天之空・ミーナ(p3p005003)
ディザスター

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはミーナさんへ。相手の慢心を突いたカウンターは攻勢のきっかけになったかと思います。
 魔種となった関係者討伐、お疲れさまでした。
 これだけ濃く練られたプレイング、実に圧巻でした……。

 ここで区切りの予定ではありましたが、希望があれば、この後のストーリーも1話のみ展開を考えております。
 どうぞ、ごゆっくりお休みくださいませ。

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