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シナリオ詳細

アンダー・ザ・ローズ~憤怒の節

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある画家の憧憬
 怒りとは、何だろうか。
 人を怒らせるものとは、何だろう。
 義に反する事だろうか。利を害する事だろうか。私は数々の憤怒を描いてきたが、矢張り、判る事はない。
 この心はいつだって穏やかで、晴れた海のように凪いでいる。
 それを悲しいと思った事すら私にはない。だから、憤怒する人々を見ては、筆に載せて描いてきた。――理解できないからこそ。
 でも……もう少し、理解してみたい。
 怒りというものを。人々が示す、激しい感情と言うものを。


●ローレットにて
「先日は僕の友人を助けてくれてありがとう。なのでまた友人を助けて貰いたい」
 開口一番これである。グレモリー・グレモリー(p3n000074)は絵の下書きらしきものを一枚差し出した。罪人が人々に石を投げられている、穏やかではない絵だ。
「僕の友人に、アグリーという男がいる。彼はニナ……以前紹介した「恐怖の画家」と同門の「憤怒の画家」だ。同門といっても、魔法使いのだけど」
 どうして画家が魔法使いだったのか。それは人生紆余曲折があるって事だよ、と一言で済ませ、それでね、と強引に続けるグレモリー。
「それはつまり、そういうことだ。彼も魔法が使える。目を合わせたものに、その人の憤怒を想起させる魔法だ。……彼はスランプというより、元々感情の起伏が少なくてね。だから、敢えて判らない怒りというものを描いている。今回依頼が来たのは、いよいよそれが判らなくなったんだろうと思う。彼は僕が知る限り――怒った事や泣いた事はないからね」
 そういうグレモリーも、表情豊かな方ではない。何を考えているか判らない顔で少し沈黙すると、再び皆に向き直る。
「という訳で、彼の魔法にかかって、怒りというものを見せてあげて欲しい。彼の魔法はきわめて精巧な催眠術のようなもので――暴れたり叫んだりしても、君たちが周囲を害する事はない。ただ君たちはそれを見て怒り、何が君たちを怒らせているのかを見せてくれればそれでいい。……けれども」
 グレモリーが言葉を選ぶように視線をあっちこっちさせた。
「手っ取り早く彼を怒らせたいからといって、筆をいたずらに折ったりしてはいけない。彼は多分、少し泣くだけだから、つまらないと思う」
 友人をつまらないと評する彼も、人間的にどうかと思うが。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 グレモリーの友人がネタ切れを起こしました。ここまでテンプレ。
 そうです、実はこれ、シリーズものだったのです。でも一話完結なので、前回参加した方にボーナスとか、そういうのはありません。
 前回を知らない方でもお気軽にご参加下さいね!

●目的
 奇怪画家「アグリー」を助けよう

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●立地
 あまり広くはない一戸建ての借家です。
 いたるところに絵や画具が置かれています。
 よくある売れない画家のお家、と考えて貰えれば。

●エネミー
 アグリーの作り出す幻影

 真っ暗闇の中に、貴方が思い描いた「憤怒の元凶」が現れます。
 貴方は叫んでも、戦っても、何をしても構いません。
 一定時間が経つとそれらの幻影は消え去り、元の景色が戻ってきます。


 基本的に憤怒シーンは個別描写です。
 また、アドリブ描写が多めの傾向がありますので、プレイング通りに記載して欲しい!という方も明記をお願い致します。
 では、いってらっしゃい。

  • アンダー・ザ・ローズ~憤怒の節完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年03月11日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ピオニー・スプリント(p3p006992)
憤怒の「芍薬」

リプレイ

●憤怒画家
「やあ、こんにちは。君たちがローレットの人だね」
 アグリー・ラティンクの家は目抜き通りから少し入った路地にある。余り暗い雰囲気ではない事に、『恐怖を記した者』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はほっと息を吐いた。
「貴方様が怒りの画家、アグリー様でいらっしゃいますか」
「そうだよ。さあ、入って。外は寒いだろう?」
 『孫の手アンドロイド』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)が問う。茶髪の優男――アグリーは、ゆっくり頷くと笑みを浮かべ、面々を迎え入れた。

 ぱちぱち、と暖炉で薪が燃えている。
「うおー! 画家だ! すげー! どんなの描いてんだ? 見ていいか!?」
「見ても良いけど、余り気持ちのいいものではないと思うよ。こんなのとか」
 己の画風が変わっている事を多少は認知しているようで、『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)が元気いっぱいに問うのにアグリーは苦笑して、一枚のキャンバスを持ってくる。其処には男女のカップルに襲い掛かろうとしている男の姿が描かれていた。
「これは……確かに面妖でござるな」
「浮気して嫉妬の果てに、って感じがするな」
 『憤怒の「芍薬」』ピオニー・スプリント(p3p006992)と『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103) がふむ、と唸る。これは確かに、世に出しても評価されにくそうだ。一方『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はイーゼルや絵具で手狭な室内をきょろきょろと見回して。
「それにしても、ものがいっぱいあるんだねー。オイラ、画家の家って初めてだ」
「絵の資料を集めていたら、こんなに散らかってしまってね。それでも――怒りというものは、資料越しでは判らない」
 キャンバスをそっと撫でて、アグリーが物憂げにいう。だから君たちを呼んだんだ、と顔を上げた。
「さて、清らかな心を持つ俺には縁遠いものだが――“もう一人”になら何か判るものがあるかも知れんな」
 ペン先のような爪を揺らしながら、『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)――稔が言う。彼の中にはもう一人、虚という人格がいるが……彼が表に出ないのは、爆笑しているからか、思うところがあるからか。
「清らかな心、か。うん、それもいいね。でも、今日は君たちの怒りを見せて欲しい。僕にはどうも、ピンと来なくて――君たちの感情を見せて貰えたら、きっと何か判る気がするんだ」
「ふむ……俺から軽くアドバイスするとすれば、大切な人が他者に泣かされたときを想像してみるとか、かな」
「僕は天涯孤独だし、こういう職だからね。大切な人、というのがまずピンとこない。……君たちにはありそうだな。少し、羨ましいよ」
「ふむ、そうか……言葉では確かに言い表しづらいな」
 『養父は帰宅を決意する』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は生真面目に考え込む。これから見せてもらうからいいよ、とアグリーは笑った。
「じゃあ、早速だけどお願いしようかな。何処でも座れるところに座って、目を閉じて……」


●洸汰の憤怒
 あれは忘れもしない、オレが借りてるアパートの一室での出来事だ。
 俺がなにより大切にしていたものを、信頼していた筈の相棒たちに奪われた、あの日……
「そう、許さない。俺は、例え相棒でも許せない! 忘れたくても忘れられるもんか! よくも、よくもよくもよくも……!!

 ご近所さんが分けてくれたケーキを勝手に食いやがったなぁ!?」

 パカおか!? オレがメカパカおの世話ばっかりしてるのにヤキモチやいたのか!?
 それともメカパカおなのか!? まさかお前の動力は甘いものだったりするのか!?
 ぴょんぴょんたろー! お前は怒り以前に、一緒に暮らして結構経つけど俺に近づいてくれていない! 気がする! もうそろそろちょっと仲良くしようぜ!
 ナラ! エマと共謀したのか!? そうなのか!?
 そしてぴざねこ! 体の小さいお前なら、一番こっそりと戸棚に入れるよな……!?

 洸汰の眼前に容疑者が並ぶ。全員が「何を言ってるか判りませ~~ん」みたいなむかつく顔をしている。洸汰は更に怒りを感じる。オレは絶対許さない。楽しみにしていたケーキをちょっとも残さず食べた犯人を……!
「だけど、犯人は一体誰なんだー!?」


●ウェールの憤怒
「さて、俺の憤怒はちとこじれてるから……」
 参考になるかどうか。
 そう呟いた彼の目の前には、彼自身が立っていた。
 息子を養子として迎え、ずっと一緒にいようなと約束した癖に、数年しか暮らせなかった。息子が逃げる時間を稼ぐために戦い、無様に倒され、更に洗脳されてウィルスに支配され、何もかもを忘れて悪役として暴れまわった自分。
「なッさけねえんだよ!!」
 だからウェールは、自分自身を思い切りぶん殴った。巨躯が闇の中で吹き飛ぶのが、何故かはっきりと見える。足りない。まだ足りない。洗脳されて、息子の声を聴いてもなにも思い出せないまま、他者に倒された……
「それだけなら、梨尾も二度泣くだけで済んでたのになァ」
 胸倉をつかみ上げ、更に殴る。腹を、頬を、情けないと殴る。倒されてなお回収され、中途半端に記憶を取り戻して。完全に思い出すために、悪役のままでいて。大切な大切な息子と、召喚される直前に戦った己がッ、誰よりも許せない!
「畜生ッ、畜生……畜生……!」
 馬乗りになって殴る。殴る。殺しそうなほど殴るけれど、殺すことは出来ない。
 だって、“梨尾の父親なんだから”。死んでしまったら、泣いている息子の涙をぬぐえない。
「お前はなあ、思い出さなきゃいけねぇんだよ! 全部思い出して、息子のところに帰らなきゃいけねぇんだ! いいか、絶対死ぬんじゃねぇぞ! 絶対に、絶対に生き延びて、家に帰るんだ! 今度こそ、帰るんだよ……!」


●アクセルの憤怒
 アクセルの眼前にもまた、己自身がいた。でも、殴る事はしない。
 彼は思う。怒る事は、認められないことを変えていくための最初の一歩。しなくてもいい嫉妬をしてしまう、そんな自分を変えたかった。
「なぁオイラ。オイラには、大切な命の恩人がいるよな」
 アクセルはそっと語り掛ける。
「でも、嫉妬もしてるよな。仲のいい、鉄騎種の人に。ううん、超嫉ましいとか、そんなんじゃないけどさ。モヤってするときがあるよな。そんなのは駄目だ。自分の世界の全部だった人が、他の人と一緒にいる。それを妬むなんて、ダメだ。ワガママいっちゃ駄目だぜ、オイラ。」
 そうだ。
 たとえ己の世界の全部だったとしても、その人にはその人の人生があるんだ。その人がいま幸せになろうとしてんのに、それをモヤモヤしちゃうなんて、かっこわるいぜ。
「祝福してやろうよ。誰よりも先に、おめでとうって言おう」
 穏やかに己に怒るアクセル。其れは怒るというより、親が子を叱るかのようだ。
 大切な人だからこそ、幸せになるのをお祝いしよう。その寛容がたとえ罪であっても――甘んじて罰を受けよう。だって、オイラの人生を救ってくれた人なんだぜ?


●ウツロ(とミノル)の憤怒
 ああ、やはりこいつか。と、稔と虚は半ばあきらめにも似た心地を覚える。
 一人の女が立っている。一見すると可愛らしい、女子高生だ。けどその中身を俺は知っている。虚を――殺そうとしたんだ。この女は。
 女は謳う。あの時と何も変わらない笑顔で。
「停滞した世界を動かしたいの。ちっぽけな力だけど、皆を幸せにしたい」
 そう、それがお前の口癖。この世界に革命を起こすんだと、本物の愛と正義の力があれば変えられるはずだと、人々を次々に掌のうちに落としていった。
 けど、実際は真逆。平和を嫌い、愛を嗤い、希望を踏みにじる畜生だった。
「――黙れよ」
 虚が幻影の首を掴む。ぎりり、と音がしそうなほど。
 幻影は嗤った。人気者だった虚を嫌って、役者になりたいという虚の夢を嗤って、虚の――これからも続いていくはずだった人生を踏み躙った。その時と同じ笑み。
 稔(俺)は、ただそれを見ているだけ。だって、止める理由がない。“生きたまま焼かれる”苦しみを理解できるものだけが、多分、止める権利を持つのだと思う。

 なあ、虚。
 お前はこの存在への怒りを抱いて、また明日も生きていくのだろうな。怒りを隠して、全部化かして、此処で夢を叶えていくんだろう。
 それでいいのか、と問う事はしない。怒りもまた、生きるための原動力だ。俺はそれを間違っているとは思わない。
 だから俺はただ、幻影の首をいよいよ両手で締める彼を見ていた――


●ジェイクの怒り
 闇の中、それは突然だった。
 愛しい恋人が、目の前で心臓を刺し貫かれた。灰色狼と夢幻の奇術師。二人揃って『幻狼』だといったのに。死という無慈悲な幕が、二人の間に見えない大きな溝と血溜まりを広げていく。
「……幻」
 呟いて初めて、闇の中に怒りが点った。ふつり、と何かがはじけ飛び、理性がどす黒い感情に塗り潰されていく。
「お、おおおおおおおお!!」
 咆哮。銃を抜く。弾丸をブチ込む。それまでに瞬きほどの間もない。己が怒っているという自覚すらなく、激情がジェイクの喉を打ち鳴らす。
 恋人を幻想の死に至らしめた幻影は、瞬く間に肉塊と化す。それでも収まらない。銃弾が尽きたら爪と牙を用いて、相手を引き裂く、噛み千切る。殴り付ける。
 俺の女に手をかける奴は許さねえ。たとえそれが神だとか、そういう輩であってもだ。死んだ程度で許されると思うな。地獄に堕ちろ、その底へ落ちろ、底の底へ落ちても落としてもまだ足りねえんだよ!!
「おいアグリー! 俺の姿を見ろ!!」
 ジェイクが吠える。
 これが怒りだ! これが憤怒という奴だ! お前はこれを見て何を思う? こんなものをお前はみたいのか!
「畜生! 俺に、俺にこんなものを見せやがって! 覚悟は出来てんだろうな、クソ画家野郎!!」
 ジェイクは吼える。その憤怒は、打ち付けるところを失って、彼の中に渦巻く。


●アーリアの憤怒
 目の前に見えたのは、真っ白な騎士だった。
 私はこの姿を知っている。アーリアは何度か瞬きをして――ああ、そうだ。故郷から逃げて、海洋に住んでいた私たちを襲った騎士。
 あの時の私は、のんきにお母さんの作るおやつを待っていた。そうしたら、訪れたのは白い死神。海洋に似合う白い家を、真っ紅に染めていったあの人。
 あの時の私は幼く無力で、ただ恐怖と悲しみに泣き濡れるしかなかった。でも。
「……今は、こんなに強くなったのよぉ」
 今は憤怒に――様々な濁った気持ちに染まった蛇が、白い騎士を締め上げる。苦しむ姿にそっと投げキス、赤い花吹雪が舞う。蛇を切り、果敢にも向かってくる白い騎士。すごいのねぇ、強いのねぇ。でも、力を揮う方向を、間違えてはいけないわぁ!
 何度でも、蛇は瓶底からずるりと這い出す。甘く囁く。此処から出て行って。酩酊の心地に、口端が上がりそうになって……上がれずに、口元は結局への字。
 死ねばいい。苦しめばいい。あの時の私に、これくらいの力があれば――何か変わっていたのかしら。こうやってローレットに来る経緯も違って、平和だったのかしら?
 私は結局、この道を歩いてきたのだから……歩いていくしかないのだけど……でも、少しの間、憂さ晴らしさせてねぇ?


●ピオニーの憤怒
 拙者が何の罪を犯したというのだろう?
 姉たちと慎ましく、けれど幸せに過ごしていた拙者たちの人生をぶち壊した砂蠍の畜生どもが拙者の前に並んでいる。縄で腕を括られて、首に縄が回るのを待っている。
 いい気味だと拙者は笑い、そっと刀を抜く。

 双子の姉のボタンは、体中を包帯で覆った挙句に両足を失った。
 双子の妹のノバラは、散々に弄ばれてその精神を壊された。
 末妹のユリは麻薬に踊らされ漬け込まれて、虚ろな人形同然になってしまった。

 そして最後には盾にされ、魔種となって行方もしれぬ。
 拙者は決して許しはせぬ。時がどれほど経とうとも、貴様らだけは許しはしない。我ら四姉妹を汚し弄んだこの恨み、まさに骨髄に達するというものだ!
 一人ひとり、首を落とす。首では足りぬ、まずは指だ。指から少しずつ、チョン、チョン、と切り刻んでやる。
 顔も知らぬ男の悲鳴が上がる。うるさい。拙者たちは叫ぶ口すらも奪われた。痛みという言葉を心に刻まれた。何が悪かったのだ? 拙者たちが貴様らに何かしたというのか? ふざけるな!
 ――所詮これは幻影。いずれ拙者は、この光景を現実にする。そして成し遂げた暁には、我ら四姉妹に理不尽な運命を課したこの世界さえも。
 想像するだに笑いがとまらぬ。怒りとおかしさで頭がくらくらする。ああ、ああ――



「みんな、お疲れ様」
 ぐったりとした一同に、白湯を配るアグリー。
「畜生……オレのケーキ……」
「ケーキなら良いじゃねえか……」
「よくねーよ!!」
 グロッキーな顔をしたジェイクが白湯を一気に飲み干す。幻影から覚めて一発アグリーに叩き込んでやったものの、胸の底に燻る濁った色の火はまだ消えない。
「あら、洸汰くんはケーキに怒ったのぉ? 可愛いわねぇ。でも、食べ物の恨みは怖いっていうわよねぇ」
「そうだぜ! 百年経ったって忘れねー! オネーサンはどんなのを見たんだ?」
「ん~? ん~……うふふ。秘密にしておこうかしらぁ」
 少し疲れたように眉を寄せ、洸汰にウィンクしてみせるアーリア。
「えー! なんだよそれ! みんな秘密っていうし、オレだけバレてんの絶対納得いかねー!」
「まあまあ。落ち着きなって。オイラも皆よりは軽い調子だったしさ」
「えっ! どんなのを見たんだ!?」
「おしえなーい」
「ちくしょー!」

「……アグリー殿」
「何だろう。おかわりかな」
 頬の片方を紫に染めて、画家がピオニーに振り返る。痛々しいが、それよりも述べたい事が彼女にはあった。
「貴殿の大切なモノを奪われた情景を想像するといい。……それが、怒りだ」
「……うん」
「それでも貴殿が怒りを覚えぬというのなら……人ではないのかも知れないな。そうでない事を祈るでござるよ」
「……うん。少し想像してみたけど、とても悲しいね。僕は天に誓って人間ではあるが……そういう点でいえば、人間の感性とは少しかけ離れているのかもしれないね」
「そうか。悲しい、か」
 ピオニーは静かに目を閉じた。……そして、四人で野山を駆け巡ったあの日を思い出す。……悲しみと怒りは、隣りあわせなのかも知れない。
 誰にも知れず彼女は過去を想い、一筋涙を流した。それもすべて、薔薇の花弁の下に。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 怒りと悲しみは紙一重。悲しむからこそ人は怒り、怒りの後には怒涛の悲しみがやって来るもの。
 そういう意味では、後味の悪い依頼だったかも知れません。ごめんなさい。
 ウェールさん、ジェイクさん、清水さんには称号をお送りしております。ご確認ください。
 ご参加ありがとうございました!

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