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シナリオ詳細

逆光騎士団と魔女集会の夜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魔女集会の夜を裂け
 ある日、ギルド・ローレットに寄せられた依頼の内容は特定アイテムの獲得。
 方法は敵コミュニティの集会に乱入し、彼らが共有しようとしているアイテムを奪取するというものである。
 引率及び追加戦力として騎士一名を同伴させるものとし、特定アイテムを当騎士が持ち帰ることで依頼達成とする。
 依頼主は『逆光騎士団』。
 獲得するべきアイテムは『傲慢稚拙の書』。
 乱入するコミュニティとは、『汚れ沼の魔女集会』。

●逆光
 質素な教会の礼拝堂に、シスター服の女が立っている。
 彼女の前に膝をつく、白銀の鎧を纏った女騎士。
「『茨の騎士』プリクル。沼地の魔女と岩窟令嬢を倒した功績をたたえ、勲章を贈ります」
 金髪のベリーショート。胸に茨の巻き付いた剣をペイントされた鎧を纏い、騎士プリクルは感動に震えていた。
 いや、震えると言うよりは。
「あ、ありがどうござびばふ……っ!」
 軽くむせび泣いていた。
 その様子を眺めるイレギュラーズの八人。『あなた』を含めた八人だ。
 シスターがあなたの方を見る。
 正確には神父の位にある彼女に名は無い。ただ『逆光』という称号だけを先代から受け継ぎ、民のため生涯をかけて働き尽くすことを使命としている女だ。ゆえに皆から共通して逆光様と呼ばれ、彼女の教会である逆光教会に洗礼を受けた騎士を『逆光騎士団』と呼ぶ。
 プリクルも、新米とはいえその一人なのだ。
「本来なら、あなたがたにも勲章を授与したいところですが……」
「いやいや! ジブンが使命を達成できたのは皆さんのおかげッスから! ジブンなんて全然……あっ、そうだセンパイ! この勲章を八等分して皆さんに――」
「いけませんよ」
 勲章を外してイレギュラーズたちにわたそうとするプリクルに、逆光は小さく首を振った。
「その勲章は騎士が民を守った証。あなたが堂々とそれをつけることで、民は安堵して暮らすことができるのです。騎士であるあなたがつけることに、意味があるのですよ」
 うーんと頭を垂れるプリクル。
 逆光はイレギュラーズたちへと歩み寄り、台から地図を一枚とりあげた。
「それでは、次の仕事の話をしましょう」

●傲慢稚拙の書
「依頼内容は書類にあった通り、『傲慢稚拙の書』の獲得です。
 これはある年齢帯の子供にかける呪いと、その解呪方法について記された書物です。
 呪いの内容は、子供から知性や言語を奪い、服従の感情を植え付け、岩のような肌と毛髪のない身体へと作り替える……いわゆる岩ゴブリン化の呪いでした」
 その内容を聞いて、ある者は顔をしかめ、ある者は震えた。プリクルはといえば深刻そうに顔を伏せ、怒りと悲しみに震えている。
「我々はその呪いにかけられた子供たちを保護し、祝福や投薬治療によって呪いの進行を抑えていますが、これもいつまで可能かはわかりません。完全治療のため、『傲慢稚拙の書』が必要なのです」

 『傲慢稚拙の書』は『汚れ沼の魔女集会』という場で取引される。
 ほぼ魔物化した者たちが集まり、書のレシピを共有するという情報が入っている。
 魔物化した者たちは端的に『魔女』と呼ばれ、ウィッチクラフトや魔法攻撃といった技術に優れ、それなりに高い戦闘能力を持ち、代償として言語能力や外見の著しい醜悪化がおこっている。
 ギャーギャーと鳴き対話が不可能であることや、ひび割れた岩のような醜い顔面をしていることが特徴だ。
 これが複数。最低でも10人以上は集まっていると推測される。
 そこへ乱入し特定のアイテムを手に入れるのは容易ではないだろう。
「周回の日時は掴んでいます。おそらく会場は手下の魔物たちによっる警備がしかれているでしょうけれど……」
「問題ないッス! 皆さんと、センパイたちと一緒なら、きっと勝てるはずッス!」
 プリクルは勲章に手を当て、強く頷いた。

GMコメント

【フィールドデータ】
 『汚れ沼地』
 完全な陸地が少なく、浅さ深さの大きく異なる沼があちこちに広がっている。
 場所によっては足がつかないほど深い沼もあり、それらを外見で判別するのは難しい。
 普通に戦うなら数少ない陸地を用いたり、ペナルティ覚悟で飛行するしかない。
(※飛行戦闘をする際は必ず『飛行』スキルを用いてください。媒体飛行とジェットパック等の簡易飛行では繊細な戦闘を継続できません)
 魔女たちは深い沼の位置を熟知しており、そうでなくても非戦闘時は媒体飛行が使えるため苦労しないようだ。

【エネミーデータ】
・『魔女』
 特定の半魔物化した人間につけられる俗称。そのため一般的な魔女の定義から大きく外れる。
 クラスは『ウィッチ』で共通している。
 数は不明だが10人以上いるとみられる。

・沼の狼
 水面を歩く能力を持った狼。数は不明だが大体10前後はいるはず。
 魔女集会に邪魔者を近づけないために配備しているモンスター。突入にあたってはまずこの狼の集団を倒す必要がある。
 警備能力が高く不意打ちを受けないが、戦闘能力は足止め程度にしかならない。
 対魔女戦に混ざってきたり、ここで時間を食ったりするとよくないので、早く効率よく消耗少なく倒すことが肝要。

【作戦概要】
 沼地へ襲撃をかけ、まず『沼の狼』たちを素早く撃破。
 そのまま急いで集会場へ突撃し、迎撃態勢を整えた魔女たちと戦闘。
 現場にある『傲慢稚拙の書』を獲得する(※獲得は戦闘後でも構わない)。
 こちらにとって戦闘が有利に進めば魔女の一部は逃走を図る可能性がある。これを追撃するかどうかは必要条件に含まれていないので、メンバーの話し合いによって決めてよい。
 作戦メンバーはイレギュラーズ8名と同伴する騎士プリクルの計9名の予定。

【味方データ】
・プリクル
 逆光騎士団の新米騎士。
 立派な騎士だった父のあとを継ぐ形で騎士にとりたてられ手柄もあげたが未だ後輩気質が抜けない。
 装備は立派だし訓練も積んでいるのでPCと同じくらい戦える。弱点はメンタルの弱さ。
 戦闘性能は『【反】持ち・高HP・高再生』のタンク役。主に味方を庇うのが仕事。プレイングで指示を出さなくても自動で動くAIつき。

※逆光教会とは
 ネメシス国教に連なる教会。管理者である『逆光』がその名の由来。
 日本のキリスト教会や寺のようにおだやかで真面目な団体。
 町の中心的存在で、教会所属の騎士団が警察をはじめ様々な治安維持要員となっている。
 騎士団さえしっかりしていれば町は安泰という精神で、不正のない堅い誓いによって町の平和と安心は保たれている。

【情報精度】
 逆光、およびプリクルの出した情報に嘘はありません。
 敵の人数、スキル構成、こちらの作戦に対するリアクションを予想してください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 逆光騎士団と魔女集会の夜完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月28日 20時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し

リプレイ

●生まれたときから泥水をすすっていた
「勲章おめでとう、プリクルちゃん!」
「そ、そんな。恐縮ッス……えへへ」
 頭をがしがしとするプリクルの背を、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は力強く叩いた。
 一緒になって背を叩く『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)。
「プリクル。君も騎士ならば、堂々と背筋を伸ばせ!」
「は、はい!」
「うんうん、一緒にがんばろー。よろしくねプリクル!」
 腕組みをして満足げに頷く『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
「けど、大丈夫ッスかね。魔女一人でも手を焼いていたのに、それが集まる場所に突入するなんて」
「けど、逆に言えば同じような事件がそれだけの件数で起きてたってことだよ」
 焔の言い方に、リゲルは噛みしめるように目を閉じた。
「汚された過去を取り返すだけじゃない。脅かされた未来を守るためにも戦うんだ」
「がんばろう!」
「は、はい! ッス!」

 ぴしゃり、と沼地のぬかるんだ土を踏む。
 『猩々縄張り見極め人』天之空・ミーナ(p3p005003)は底の見えぬ沼の広さにため息をついて、しかしそれ以上に深い霧の先にあるというサバトと魔女にため息を深めた。
「魔女、ねえ。その岩ゴブリンと魔女の特徴が似てるのは、どういう話なんだ。まさか感染ゲームみたいに増えていく仕組みじゃあないだろうな」
「ゾンビィ現象ってことです?」
 モンスター図鑑を開いてページをめくる『圧倒的順応力』藤堂 夕(p3p006645)。
 脱いだ鎧を畳んで飛行魔法をかけることで沼地の上を安全に移動しているが、戦闘が始まれば勿論やめねばならないだろう。
 さておき。
「感染者が『その状態が幸福なので別の人間も同じようにしようとしている』ってパターンは聞いたことありますけど、魔女ってそんな感じなんですかね」
「さあ、ね」
 長い棒をつくようにして慎重に沼の浅いところだけを歩いて行く『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)。
「書物を使ったりネットワークがあったりする辺り、ただのモンスターってわけじゃなさそうだし。『崩れないバベル』を通しても言語的対話ができないんなら、そういう線もなくはないんでしょうけど……」
「どっちみち行動しなけりゃ謎のまま、か」
「ですね」
 ミーナは沼から飛び立ち、鮮やかな翼を広げた。
「でもって目下の目標は、あの呪い……と」

「ゴブリン化とは、恐ろしい呪いも、あったもの、だ」
 岩ゴブリン化の呪い。『沈黙の御櫛』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)はその呪いにかかったという子供たちのことを考えた。
「魔女の群れに、挑むのも、厄介なことだ、が。務めは果たさねば、な」
「はい。書の回収は、子どもたちの治療のみならず、今後被害がさらに拡大してしまうことも防ぐためにも必要なことです。それに……」
 沼の水面につま先を滑らせるように飛んでいく『白綾の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)。
 ずっと先から聞こえてくる獣のうなりに、ピタリと動きを止めて手を翳した。
「そんな呪い、許せるものではありません。集会によってレシピが広がることは、なんとしても阻止しましょう」

●沼地に魔女が住まうわけ
 霧を抜けて走る狼の魔物。沼の水面をまるでガラス板のように走るたび、水面を波紋が低く広がっていく。
「射程にとらえた。皆一度下がれ!」
 リゲルは聖なる祈りによって手の上に炎の卵を生み出すと、大きく振りかぶり肩の力を使って遠投。
 放物線を描いて飛んだ炎の卵が羽化し、巨大な炎の鳥を産んで荒れ狂った。
 たった一瞬の炎であったが、炎に焼き付けられたリゲルへの本能的刷り込みとコテをおしたような炎の跡が、魔物たちをリゲルへと集中させた。
「成功だ。あとは頼む!」
 リゲルは一度魔物たちの集中攻撃をわざと受けると、魔物たちから大きく飛び退いた。
 足の速い魔物は追いかけようと足に力を込めるが――。
「今だ!」
 リゲルが抜けた瞬間を狙い、それまで待機していたLumiliaとミーナが団子状に固まった魔物たちを両サイドから挟むように位置取った。
 沼の深さは関係ない。魔物たちと同じように水面を滑るように飛び、絶妙な位置を計ったかのように停止した。Lumiliaの白い翼と、ミーナの赤い翼がそれぞれ広がる。どちらに対応すべきか魔物たちが迷う一瞬の間に、ミーナは毒霧の魔術を噴射。
 一方のLumiliaは神聖なる光を手のひらから放射した。
「とどめっ」
 飛びかかる焔。沼地の浅い部分を、水表に浮かぶ蓮の葉を見ることでなんとなく把握し、槍を沼地の浅い部分に突き立てるようにして着地。
 激しく吹き上がる水と炎のしぶき。
 魔物たちがそれぞれの攻撃に挟まれ、溶解するように力尽きていく。
 残ったのは狼めいた牙の数個だけだ。それらも沼へと沈んでいく。
 が、全て撃滅したわけではない。団子状になったことで微妙に範囲に重ねづらかった位置の魔物が飛び出し、先刻飛び退いたリゲルを追っていく。
 翳した盾に体当たりをかける魔物。
 リゲルは沼の深い位置に足を取られざぶんと転倒。
 追撃をはかろうとする魔物に、アクセルのマギシュートが命中した。
 思わず飛び退く魔物。
 アクセルは牽制のマギシュートを連射しながら、仲間に合図を送った。
「今だよ、たたみかけて!」
「了解ッス!」
 プリクルの突撃。
 夕はそれに重ねるように水面へ召喚魔方陣を描くと、銀色の炎を纏った狼を召喚。魔物へと走り食らいつかせる。
 茨の剣と狼の牙がそれぞれ魔物に集中し、もがく魔物にさらなる拘束がかかった。
 エクスマリアの伸ばした頭髪が恐ろしい精度で巻き付き、肉体をあらぬ方向へねじ切っていく。
「これで殲滅完了、と。大丈夫?」
 ルチアは沼に沈んだリゲルを掴んで引っ張り上げると、掴んだ手ごしに回復術式を流し込んでやった。
「げほっ、なんとか……よく見れば深いと分かったのに。すまない」
「咄嗟の時なら仕方ないわよ。誰だって繭糸を紡ぎながら葡萄を踏めないものよ」
「……ん?」
 『犬も歩けば棒に当たる』のようなニュアンスで発言したルチアに、リゲルは小さく首を傾げた。
「いくつも同時にこなそうとすれば誰だって集中しづらいってこと。猛攻をしのぐ係なんだから、忙しくなって当然でしょ。そのくらいフォローするわよ」
「ありがとう。それじゃあ」
 霧の先。
 ルチアは沼地をぐねぐねと蛇行するように、時に飛び跳ねるように移動しながら手招きをした。
「このルートで走って。ぬかるんでるから転ばないようにね」

●魔女の定義
「ギッ――!」
 沼地の中。紫の薄霧に覆われた中で。
 魔女の一人が大きく振り向いた。
 連なるように、他の魔女たちも一斉に振り返る。
「こっちの様子はお見通しってわけだね」
 アクセルは枯れ木に止まったカラスの群れを見上げると、飛来する魔術弾を飛ぶように回避した。
 続けて発射された新たな魔術弾が直撃。
 大きくよろめくが、アクセルも負けじとマジックミサイルを発射した。
「反撃だっ」
 魔女の一体に命中。
 被っていた帽子が吹き飛び、岩のような顔が露わになった。
 威嚇するように口を開き、ギャアと叫んでギザギザの歯をむき出しにする。
「下がってて、ここは――」
 焔は沼地の様子をおおまかに把握すると浅い部分だけを狙ってジグザグに跳ねていく。
 マジックミサイルが集中するが、焔は燃える槍を回転させることで魔術弾を防御。そのまま魔女の一人に飛びかかり、槍の打撃によって打ち倒した。
 灰色の魔方陣が複数展開される。まるで無数のショットガンを突きつけられたかのような有様だ。が、しかし。
「ボクをたどって」
「心得、た」
 頭髪をそのまま足がわりにしてざくざくと突き進むエクスマリア。
 焔の横まで並ぶと、アースハンマーの魔術を沼底の泥を通じて流し込んだ。
 魔術を発動させる直前の魔女を、泥の拳が打ち上げる。
 焔はその隙を突くように、そして他の魔女たちが砲撃を放つのとほぼ同時に緋燕を発射した。
 槍による広い斬撃が炎の渦を作り、魔女たちを吹き飛ばす。
「ギギッ……!」
「ギッ!」
 魔女の一人が大きく叫んだ。
 箒に飛び乗り、その場から撤退を始める魔女。
 骨で組んだ祭壇めいたものの上に、金色の装飾がなされた本。
 魔女は媒体飛行によって飛翔。本を掴んで沼地の奥へと逃げ去――らせはしない!
「『魔に魅入られた者よ、祈りの炎に目を焼かれるがいい』!」
 リゲルは祈りの言葉を唱えて炎の卵を投擲。
 逃げ去ろうとした魔女は直撃を受け、箒から転げ落ちた。
 沼に落ちる本。
 魔女は沼に手を突っ込んで探ろうとするが、それをルチアの剣が阻んだ。具体的には、聖なる光の刃が魔女の腕を肘部分で破壊。吹き飛ばしたのだ。
「乗り込んだ立場で言うのもなんだけど……酷い光景ね!」
 腕は千切れども血すら出ない。魔女は威嚇の表情でルチアをにらみ、足りない腕で無理矢理魔方陣を呼び出した。
 沼の水面を、見えない巨大魚が進むかのような衝撃が走る。
 攻撃を察知したリゲルは間に割り込んで防御。
 衝撃を銀の剣が切り裂いていく。
「回復を頼む!」
「わかったわ。気をつけてね」
 ルチアは彼を盾にするようにして背をつけると、回復術式を多重発動させていく。
 場はもはや戦場のそれである。
 飛び交うのが矢や弾丸ではなく魔術弾であるというだけの。
 泥が舞い血が飛び悲鳴があがる、どこの世界にもあるような戦場だ。
「本の確保を! 援護します!」
 夕は祭壇を蹴り崩して無理矢理足場を作ると、その上に立って召喚魔術を次々に発動させた。
 魔法のペンで空中に描いた魔方陣が三つ四つに分裂し、それぞれから絵本で見たような魔女や魔女狩りの審問官たちが飛び出していく。
 念動力で沼地から本を引っ張り出した魔女たちが媒体飛行を使って飛び上がる。
「逃がすかっ」
 ミーナは翼を広げて跳躍。飛行。
 沼地のどこが深いか分からないが、その不利(ペナルティ)は覚悟の上だ。
 本を握った魔女の首を魔刀で切断。
 回転しながら飛んでいく首。しかし腕だけが生きているかのように動いて本を放り投げた。
 それをキャッチし空へと飛び上がっていく別の魔女。
 ミーナは更に加速して剣を魔女の背に突き刺し、夕の放った架空の魔女が爆発を起こす。魔女の手から本が離れ、回転しながら落ちていく。
 沼に落ちるすれすれの位置で滑り込むようにLumiliaがキャッチ。
 三方向から一斉に浴びせられる砲撃を、Lumiliaは白い輝きのような軌跡をひいて軽やかに回避していく。
「これは渡しません」
「「ギャギャアア!!」」
 魔方陣が三つ重なり、高射砲のような連射になってLumiliaを襲う。
 空を舞い弧を描き魔術弾を回避していくLumiliaだが、その一発がLumiliaの翼を破壊した。
 墜落――しかけたところを、エクスマリアが網のように広げた頭髪でキャッチ。しかし本だけは飛行する魔女がかすめ取っていった。
 箒にしがみつき速度をあげようとする魔女。
 が、行く先に待ち構えていたのはリゲルだった。
 剣を翳すリゲル。
 箒から飛び降り、慣性に任せ全力の破壊魔術を連続で叩き込む魔女。
 直撃。が、しかし、リゲルの背に両手をつけていたルチアのカウンターヒールによってギリギリもちこたえたリゲルは、光に満ちた剣を叩き込むことで飛び込む魔女の身体を真っ二つにした。
 まるでコンクリート像でも破壊したかのような手応えに顔をしかめるリゲル。
「プリクル。今だ! 本を!」
「は、はいっス!」
 リゲルの叫びを聞いて、プリクルは魔女の腕に抱えられた本を腕ごとキャッチして滑り込んだ。
 顔から沼に突っ込み、深い所に転げ落ちる。
 が、ギリギリでキャッチしたリゲルに引っ張り上げられた。
「センパイ。本をお願いッス! 魔女はジブンが――!」
「ああ……頼むプリクル。力を合わせて乗り越えよう!」
 無数の魔女が、攻撃魔方陣を組み終えていた。
 プリクル立ちを殺し、本を奪って逃げるつもりだろう。
 集中攻撃をうければ勿論ひとたまりも無い。
 が、プリクルは鏡のように磨いた聖なる盾を翳した。
 全ての魔術弾が直撃。したが、その一部が歪んだ鏡に映ったかのように小さくなって魔女たちに跳ね返っていた。
「こっちからもおかえしだっ」
 アクセルがマジックミサイルを乱射。
 地面に大きな魔方陣を描いて巨大な黄金の騎士を召喚した夕が、自らと動きを連動させた騎士の剣でもって魔女を叩き切った。
 ギャンという断末魔を残し、まるで砕けた石像のように散っていく魔女。
 他の魔女は箒に跨がり、沼から逃げ去っていったようだ。
 追撃がないことを確認し、Lumiliaは深く息を吐いた。
「本は……」
「この通りだ」
 金色に装飾された『傲慢稚拙の書』を、リゲルは高く掲げて見せた。
「ありがとうプリクル。守ってくれて」
「せ、センパイが励ましてくれたおかげッス。ジブンはゼンゼン……えへへ」
 プリクルは泥だらけの顔で、頭をがりがりとかいた。

 このあとでの話。
 イレギュラーズたちは魔女への追撃や現地調査はせず、なによりも優先して『傲慢稚拙の書』を持ち帰ることにした。
 もちろんこのことにプリクルは大賛成し、一刻も早く呪いに苦しむ子供たちを助けようと盛り上がった。
 沼地を去るきわ、ミーナはゆるやかに飛行しながら振り返った。
「奴らが望んで魔女になったとは思えない。てことは元凶があるはずだ。そいつはきっと……」

 きっと、『悪魔』に違いない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ。逆光騎士団からお礼と成功報酬金が届いております。
 それにしても、魔女集会を破壊できるほどに、皆様の力は高まっているのですね。
 この分ですと、いずれは魔女たちの元を絶つことすらできるかもしれません。そうなったら、きっと……。

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