PandoraPartyProject

シナリオ詳細

毒蜂ライラのいつもの殺人
毒蜂ライラのいつもの殺人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その日。辺境の地の貴族、ボルグ男爵の屋敷には、悲鳴と怒号、そして血飛沫が飛び交っていた。
「クソ、この化け物が!! 殺せ! 殺……あ」
 槍を手に目の前の『化け物』と応戦していた男爵の私兵の目にレイピアが突き刺さり、そして死んだ。
「やぁねえ、化け物だなんて。そんな本当の事言われたら困っちゃうわ」
 私兵の死体を見下ろしくすくすと笑い声を上げたのは、黒いゴスロリ風のドレスを纏い、レイピアを手にした少女。
 見た目はただの可愛らしい少女だが、実際の所この少女は人間などではなく、混沌の中に溢れる正真正銘の化物。その内の1体である。
「ヒ……ヒィッ! お願いです、私は抵抗しません。だから命だけは……」
 自ら少女の前に躍り出た1人のメイドが、床に頭を擦り付け少女に懇願する。
「あら、本当に? どうしようかしら……まあ確かに自分から姿を現した素直さは評価しましょう。分かったわ、貴女には慈悲を与えます」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます、ありが……」
 パッと顔を上げたメイドの首を、少女のレイピアが一瞬にして撥ね飛ばす。恐らくメイド自身も何が起きたか分からず、痛みもなく。一瞬で死ねた事だろう。
「ああ、私って可憐なだけじゃなく、本当に慈悲深いわ。まあ今日は沢山殺せて気分が良いっていうのもあるけど……ふふ」
 この化物の名はライラ。本名かどうかは分からないが、とにかく本人はそう名乗っている。彼女は元々幻想のとある森の主として恐れられた、人を喰らう巨大な毒蜂だった。
 しかしある日突然、『そもそもなんで私がこんな土臭くて人も満足に殺せない場所にいなきゃいけないのよ』とか言い出し、人間に擬態する力を得た。それも美しい少女の姿を。
 それからというものライラは森を抜け出し、殺しとファッションを楽しむ日々を送っている。そしてこの日偶々目を付けられたのが、ボイド男爵の屋敷だったという訳である。
「さて、この部屋が最後ね! 誰か残っているといいのだけれど……」
 屋敷内の人間をあらかた殺し終えたライラは、男爵の私室の扉を開け放つ。そこには男爵の椅子に座り、机の上に足を乗せてふんぞりかえっている少年の姿が。
「あなたが、この屋敷の主かしら?」
「違う、どう見てもガキだろ。この家の主は親父だ。だけど今は生憎どこぞのパーティーに出てて居ない。母さんも」
「そう」
「ああ」
 僅かな沈黙が流れ。ライラはどす黒い左腕を少年に向けた。少年の表情は変わらず、ただただライラを見据えている。
「随分冷静なのね? なんだか獲物らしくない振る舞いでつまらないわ。今からでも泣き叫んだりしない?」
「俺に出来る抵抗なんてこれ位だからな。悪いがあんたの要望に応える気はない……やれよ」
「はあ……強情ね」
 そしてライラの左腕から無数の毒針が放たれ、少年の全身に突き刺さる。痛みと猛毒が全身を駆け巡り、
「覚えておけ、ブス女。いつか俺の呪いがお前を殺す。絶対に」
 そう言い残して、少年は息絶えた。
「まあ、最後の最後になんて口の悪い……でもいいわ。今日は沢山殺せたし、これから沢山新鮮な肉を食べられるんだもの!!」
 そう言って少年の亡骸に歩み寄るライラの美しい顔には、とても醜悪な笑顔が浮かんでいた。
 

 ボルグ男爵からローレットへ、仕事の依頼が舞い込んできた。『毒蜂ライラ』と呼ばれる怪物の殺害依頼だ。
 その怪物は先日ボルグ男爵の屋敷を襲撃。男爵の息子を含む数多くの人々を殺し、その死体を残らず食い漁ったのだという。
 残った死体は屋敷の外へゴミの様に捨てられ、怪物は未だ屋敷の中に居る。一時的な根倉としているのだろう。
 だが、いつ屋敷から離れるかも分からない。次の被害が出る前に、一刻も早く殺害して欲しい。
 怪物は美しい少女の姿をしているが、見た目に騙されてはならない。
 その正体は巨大な毒蜂であり、なによりその内面はどす黒い殺戮欲と食欲に塗り切っている。
 怪物はレイピアを駆使した剣術や、怪物としての異形の力――無数の毒針を飛ばす、毒液をまき散らす、等の攻撃手段を持ち合わせている事が判明している。
 また、単騎で屋敷を制圧している点からかなりの実力者と考えられるが、特に敏捷性に関しては並外れている。元が蜂ゆえの敏捷性の高さだろうか。
 とにかく油断ならない相手だが、犠牲となった人々の為、息子を失ったボルグ男爵夫妻の為、そしてこれから怪物に殺されるかもしれない人々の為。確実に依頼を遂行して欲しい。

GMコメント

 のらむです。毒蜂少女と一戦交えてきて下さい。

●成功条件
 毒蜂ライラの殺害

●戦闘場所
 ボルグ男爵の屋敷。二階建て。邸宅内は血や肉片が飛び散り、死臭が染みついてしまっているが、ライラは特に気にすることなく生活している。
 恐らく普段ライラは、屋敷二階のボルグ男爵の私室に居ると思われる。

●毒蜂ライラ
 見た目はドレスを着こなす可憐な少女。その正体は巨大な毒蜂。
 毒蜂としての能力と、レイピアを用いた剣術を武器に戦闘を行う。
 イレギュラーズ8人を同時に相手取れる程度の力の持ち主。全体的な戦闘能力に優れているが、特に命中・回避。次点で攻撃力に優れている。
 
 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。

  • 毒蜂ライラのいつもの殺人完了
  • GM名のらむ(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月22日 22時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日妖精
シエラ・バレスティ(p3p000604)
白い稲妻
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
モルタ・ウルカヌス(p3p000718)
破戒戦闘メイド
ライネル・ゼメキス(p3p002044)
風来の博徒
Pandora Puppet Paradox(p3p002323)
兎人形
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜

リプレイ


 屋敷に訪れたイレギュラーズ達を出迎えたのは、切り刻まれ貪られた肉の塊と、鼻を壊すような強烈な異臭であった。
「……絶対に許さない」
 ボルグ男爵の息子の遺体から小さなペンダントを手に取り、『兎人形』Pandora Puppet Paradox(p3p002323)は力強く呟いた。
「この屋敷にもメイド達が、多く居たようであります……散っていったメイド達の為にも、敵を冥途に送るのが(破戒)メイドの務めであります!」
 赤く染まったメイド服と、それに包まれた首の無い死体。『破戒戦闘メイド』モルタ・ウルカヌス(p3p000718)もまた、敵を打ち倒す決心を固めた。
「ライラも人じゃなかったのに変身して人の姿になったのかぁ……少し親近感を感じるけど……変身した理由が私とは全く逆だな……!」
 散らばる死体と乾いた血の池を眺め、『翼の無い暴食の竜』ヨルムンガンド(p3p002370)は呟く。人と交流を深める為人の姿を取った者と、人を殺し喰らう為に人の姿を取った者。この二者の本質は、決定的に異なっている。
 そしてイレギュラーズ達は屋敷の中に入った。閉ざされた空間に籠った臭いは外の比では無い。
「にしても血なまぐさいわねぇ……嗅ぎ慣れたくないものだわ」
 『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の感想はもっともな物だ。屋敷に染みついた死臭を完全に取り去る事は、不可能かもしれない。
「単独行動の蜂はとても温厚な子が多いんですが……怪物になってしまった所以、或いは集団行動から外れてしまったあぶれ者、でしょうか」
 どうであれ相手は、普通の蜂とはかけ離れた存在。しかしその本能が、自らの住処を守るために凶暴性を発露させるかもしれないと、『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)は警戒を強めていた。
 イレギュラーズ達は赤い廊下を進み、階段を昇った。二階に到着すると何処からか、この場ににつかわしくない華やかな香りが漂ってきた。
「これは……紅茶の香りかな? 多分。 どうやら奴さんは優雅なティータイムを楽しんでいるらしい」
 呑気なもんだね、と言って 『風来の博徒』ライネル・ゼメキス(p3p002044)は小さく笑った。
「いよいよだね。相手は強敵……でも私たちも狩られてばかりじゃ居られない。作戦もあるし、いける。後はそれを信じて行動するだけだね」
 『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)はそう言い、紅茶の香りを辿った先――ボルグ男爵の私室の扉の前に位置を取る。
 僅かに開いた扉の隙間から中の様子を確認できたが、ライネルの言った通り、ライラは男爵の椅子に座り優雅に紅茶を楽しんでいた。
「ま、そうですね。あとはやるだけ……自身を人より上の化物と定義しながら、中途半端に人の真似をする見苦しい輩に、引導でも渡してやるとしましょうか」
 そう言い、軽い足取りで扉に近づいた『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は、思い切り扉を蹴り開けた。
「…………あら、誰かしら? 折角のティータイムを邪魔する輩は」


 イレギュラーズ達の行動は早かった。ライラが立ち上がるよりも早く、出入口となりうる窓を塞ぎ、あるいはライラに張り付くように移動する。
「人じゃないモノ同士……まずは私が相手になってやる」
 そしてライラの真正面に現れたのは、ヨルムンガンド。巨大な盾をドンと床に叩きつけ、味方を守りライラの動きを封じるように立ちはだかった。
「あらそう、貴方も化物なの? だけどどうやら、お友達にはなれないようね」
 ライラは手にしていたティーカップを放り投げ、次の瞬間にはレイピアによる刺突が放たれていた。細い刃がヨルムンガンドの肩に突き刺さるが、
「……ッ!! ……私は君とは違って、身近な人が居なくなると寂しいんだ……君が狡猾に、残忍に人を食べて生きるのなら……私は君を必ず逃がさない」
 攻撃を受けると同時に、ヨルムンガンドは竜の爪を突き出した。超至近距離から放たれたその一撃を避ける事は出来ず、ライラの肩が深く切り裂かれた。
「……! やるじゃない……」
「タダではやられないよぉ……!!」
 予想外の反撃を喰らい、レイピアを構えなおすライラ。しかしその視界の隅から、圧倒的な怒りを胸に秘めたPandoraが飛び掛かってきた。
「ボルグ男爵夫妻の息子の呪いが、お前を殺しに来たにぃ!」
「男爵の息子……? ああ、あの口も味も悪い子の事ね。しょうがないじゃない、殺しちゃったんだから。そんなに怒ると毛玉が増えるわよ?」
 そう言ってクスクスと笑うライラ。対するPandoraはそんなふざけた言葉には応えず、唯々怒りを強くした。
「これ以上アリス達に被害が拡大するのは何としても止めるにぃ!!」
 命ある限り、Pandoraはアリス、少年少女達を守る。そしてその為には、アリス達を傷つける目の前の怪物を倒さなければならない。Pandoraはポンと地を蹴り跳びあがると、ライラの脳天に巨大な盾を叩きつけた。
「何するのよ……レディーの顔に傷を付ける気?」
「知ったこっちゃないにぇ」
 そのPandoraの攻撃に続くように、幾重にも攻撃が放たれた。その内のいくつかは命中したが、やはりライラの動きは素早い。レイピアも駆使し、多くの攻撃を避け弾いた。
「フフ、どうしたのかしら? 私を殺すんじゃなかったの?」
「心配しなくたってもちろん殺しますよ。そんなに焦らないでください」
 背後からヘイゼルの声が聞こえ、ライラの首筋に嫌な汗が流れ落ちる。振り向くのは間に合ったが、攻撃に対応する事は出来なかった。
「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり……人の真似をするならば人としての報いを受ける」
 クルクルと軽快に杖を回しながら、ヘイゼルは自らの魔力を杖に込めていく。込められた魔力は淡い光を発し、杖にバチバチと雷が纏った。
「貴方の受けるもの、それが因果応報なのです」
 ヘイゼルの杖がライラの腹に直撃。刹那、屋敷中に響き渡るような雷鳴が轟き、ライラの全身を雷が奔った。
「グウ……!! 今のは……結構痛かったわよ……!!」
 苦々しく奥歯を噛み締め、ライラは黒い左腕を大きく振るう。そして放たれた毒液が、一斉にイレギュラーズ達に降りかかった。が。
「おっと危ない。運が悪ければ当たっている所だった」
 ライラが腕を振るう直前、なんとなく嫌な感じがして身を屈めていたライネル。その頭上を毒液が通り過ぎていた。
「さて、どうしたもんかね。初撃は外したが……流れはこちらに来ている。気がする。後は如何にしてその流れに乗るか……ま、これも運次第か」
 ライネルは掌の上で数個のサイコロを弄び、いい具合に魔力を込めながら、目の前の敵の動きを観察する。
 研ぎ澄まされた剣術だの何だのはライネルには良くわからなかったが、いつ攻撃を放り込めばそれが当たるか。それを肌で感じ取ることは出来た。だから、そのまま深く考えずサイコロを放った。
「な……!?」
 投げられたサイコロは奇妙で予測の難しい軌道で飛び、ライラの身体に全て直撃。刹那、サイコロに込められた魔力が爆発を起こし、ライラの身体を傷つけた。
「おやおや俺程度の攻撃でもあたるもんだなぁ、誰かに呪われでもしたか?」
「人間の癖に私を傷つけるなんて……殺した後はその細い身体をバラバラにしてあげるわ」
 ライラの目には既に余裕ではなく、怒りと殺意が宿っていた。自分は傷つける側なのに、何故傷つけられているのか。こんな状況は理不尽だとすら、本気で思っていたからだ。
「人間の癖に、ですか……自ら人の姿に擬態しておきながら、人間を見下し、殺す……。歪んでいますね」
 樹里はいつライラが逃走の気を見せてもいい様、しっかりと窓の前を塞ぎつつ、その両の掌に魔力を集束させていく。
「逃がしはしません……他者の痛みを知ろうとしない、貴女の様な怪物を逃がすわけにはいきません」
「やってみるがいいわよ……そして自らの身の程を知るが良いわ……」
 ライラは樹里に向けて無数の毒針を射出した。ブスリ、ブスリと毒針が身体に突き刺さるが、樹里は怯むことなくライラを見据え続けた。
「この程度の痛み、どうって事はありません」
 樹里は力強く言い切り、魔力を宿した掌を突き出した。そして放たれた眩い魔力の光条が、ライラの全身を包み込む。
「グ……!! なんなのかしら、こいつらは……!」
 ライラは再びレイピアを振るった。それは眼前のヨルムンガンドに直撃したが、やはり同時に反撃を喰らう。
「流石にこれ以上はキツイかな……。シエラ、頼んだよ……!」
「了解だよ、ヨルさん!!」
 ここまで最も多くの攻撃を受け続けてきたヨルムンガンドが下がり、代わりにシエラがライラの前に立ち塞がる。
「あなたの様に明確な敵だと分かる相手は正直ほっとするよ、だから……私の全力をぶつける!!」
「どうしてそこまでして私の邪魔をするのかしら……いい加減にしてくれない?」
 ライラは明確な殺意を持ってして、目障りな存在となったシエラに無数の毒針を放つ。
「グ……痛い、けど……耐えられる!!」
 だがシエラはライラの前に立ち塞がるのをやめない。背後の仲間たちの為、そう易々と倒れるわけにはいかなかった。
「邪魔よ……!!」
 再びライラの攻撃が放たれた。至近距離から突き上げられたレイピアの刃がシエラの胸を抉り、血が流れだした。
「まだだよ……まだ、私は役目を果たせる!」
 優れた防御技術を持つシエラは、咄嗟に構えた短剣でレイピアの剣先を逸らし、致命的な一撃を回避。そのまま短剣で斬り上げると、ライラの頬に深い傷が刻まれた。
「やっ……て、くれたわね……!! 私の顔に、傷を……!!」
 最初は目の前の相手、イレギュラーズ達を唯の人間、自らが捕食する唯の肉の塊だと思っていた。
 しかしそうでは無いと、ライラは理解し始めていた。
「あなた達の様な厄介で、無礼な輩は初めてだわ……これ以上、私の邪魔をするな……!!」
「そうはいかないわ、仕事だもの。大人しく森の奥に引っ込んでれば良かったのに……人の味を覚えた獣はろくなことしないって、よく言ったものだわ」
 オデットはそんな事を言いつつ、冷静に戦況を見定める。
 高い回避性能を持つライラだが、攻撃を重ね、攻撃力が高い者の命中力を高めるという作戦が上手く嵌まり、既に予想以上のダメージを与えられていた。
 一方のイレギュラーズ側は着実に味方を護る盾役の活躍もあり、未だ誰も倒れる事無く戦いを続けられている。
「やっぱり長期戦に持ち込まなかったのは正解ね。この調子でさっさと終わらせましょう」
「貴方達みたいな訳の分からない連中に、殺される訳が……!!」
「そう。まあ、そう思うのは自由だけれど。こっちはあなたのわがままに付き合うほど暇じゃないのよ」
 オデットは自らの魔力を鮮やかな緑色の光へと変換。多くの傷を負ったヨルムンガンドとシエラを中心に、その傷を癒し力を分け与えていく。
「鬱陶しい真似をするわね……!」
「言ってるでしょう。それが仕事なのよ」
 ライラはオデットを含む複数のイレギュラーズ達に向け、大量の毒液をまき散らす。オデットは咄嗟に翼を羽ばたかせ、舞う様にふわりと回避した。
 苛立たし気に顔を歪めるライラ。ここまで多くの攻撃を受け続け、その身体には既に相当なダメージが入っていた。
「このまま押し切るであります…手メイドとして、確実に殴り倒すであります!!」
 モルタは威勢良く両手に嵌めた鉄甲を叩き合わせ、一気にライラの懐まで接近する。
「無駄玉も数を撃てばあたると聞いたことがあります。拳も数を打てばそのうち当たるはずであります」
 至近距離から放たれた拳の連打。モルタの言葉通りその拳の精度は高くなく、ライラはその多くをレイピアで弾いていたが、
「しまっ……!!」
「ここであります!!」
 ラッシュの勢いにのまれ、僅かに手元が狂ったライラ。モルタはその一瞬の隙を逃さず、ライラの鳩尾に思い拳が叩き込まれた。
「ガハッ……!! なんでこんな攻撃に、当た――」
 よろりと数歩後ろ退がり、大きく息を吐いたライラ。しかし次の瞬間には、拳を大きく振り上げたモルタが眼前に迫っていた。
「戦闘術はメイドの嗜みであります! まだまだ無駄玉を打ちきってないであります!!」
 そして放たれた右ストレート。ライラは咄嗟にレイピアを構え防御する。しかしモルタの拳はそんなレイピアをへし折って、ライラの顔面を思い切り殴り飛ばした。
 鈍い音が室内に響き渡り、ライラの床に倒れ伏した。大層大事にしていた顔面から、大量の血が流れだす。
「わた、わ、私の顔が……アア、ゆ、ゆる、許さない、ゼッタイ、ゼッタイ……アァァアアアアアアア!!」
 ライラの身体からメキメキと奇妙な音が鳴り響く。その腹が裂け、中から巨大な翅が飛び出した。
 ブンブンと喧しい羽音と共に少女の身体は消え去ると、イレギュラーズ達の眼前に巨大な毒蜂が姿を現した。
「ユルサナイ……!! コロス! ゼッタイコロス!!」
 低くくぐもった声。殺意と怨嗟に満ち満ちた声だ。しかし対するイレギュラーズ達には、本当の姿を晒したことに大した驚きは無かった。この程度は想定外。
 しかしどうやらライラに逃げる意思は存在しない。それならこのまま、決着を付けるだけだ。


「シネ!! シネ!!」
 身体から無数の毒針を放ち、叫びを上げるライラ。しかし既にライラに刻まれた傷は多く、大技を放つ様な力は残ってはいない。
「ここまで追い詰められていながら、逃げる素振りすらみせないとは……どうやら本気で、自分は負ける筈が無いと思い込んでいる様ですね」
 だが、油断はしない。樹里はライラの羽根目掛け魔力を放出する。
「うーん、見たところ攻撃が若干激しくなった気がしないでもないけど、自慢の回避能力がおざなりになってるね。こいつなりの最後の賭けって奴かな。結果はまぁ……大体見えてるけどね」
 そう言いながら、再びライネルはいい具合に魔力を込めたサイコロを投げた。今度は全て命中せず、浮遊していたライラの真下に転がったが、次の瞬間サイコロから火柱が噴き上がり、幸運にもライラの身体を直撃した。
「アア……!! アツイ、アツイ!!」
「刺されたら痛い、毒に侵されれば苦しい、焼かれたら痛い! 全部当然の事であります!!」
 激しく飛び回るライラに向けて跳躍。モルタは鋭い跳び蹴りを叩き込む。
「私からも弾のプレゼントっ! 吹っ飛びなさい」
 畳みかけるように放たれたオデットの魔弾が、ボロボロになった羽根の1枚を吹き飛ばした。
「ドウシテ……ドウシテワタシガコンナメニ……」
「言ったじゃないですか、因果応報ですよ。崇高なご身分にあらせられる化物様には、そんな事も分からなかった様ですけど。多分死ぬまで」
 嘆くライラの背後に回り込んだヘイゼル。軽く跳びあがると、魔力で硬化した杖を駆使し、凄まじい勢いで打撃の連打を叩き込んみ、その外殻をひしゃげさせた。
「これが……あなたが不幸にした人への弔いの一撃!!」
 そこに真正面から飛び掛かったシエラが、渾身の力を込め盾を振るい、更にライラの羽根の一枚を叩き折る。
 二枚の羽根をもがれ、歪んだ動きで部屋の中を浮遊するライラ。最早最初の余裕など何処にもない。Pandoraはそんなライラの様子を静かに眺め、短剣を片手に飛び掛かった。
「お前が殺した男爵夫妻の息子……彼の呪い、彼の最期の想いと共にここまで戦ってきたにぇ……!! ここで、お前は終わりにぇ!!」
 ガシッと大蜂の身体に掴みかかったPandoraは、抵抗させる間も与えず、その巨大な目に短剣を突き立てた。痛みにライラが暴れようと、何度も何度も。
「ガ……アァアアアアアアアアアアアアアア!! ワタシハマダ、コロシタリナイ!! タベタリナイ!!」
 目から奇妙な液体を撒き散らしながら、ライラは叫ぶ。そして最期の力を振り絞り、身体の大針を突き出し突撃した。
「ア…グ、ア……!!」
 その一撃は、再び足止め役を担っていたヨルムンガンドに突き刺さった。瀕死の怪物が放った強烈な一撃。それをマトモにくらい、ヨルムンガンドの視界が暗くなっていく。
「……いやいや、まだ倒れてる場合じゃないって……!!」
 その時、ヨルムンガンドのパンドラが強い光を発した。閉じかけたヨルムンガンドの目がカッと開かれ、自らの身体を貫いた巨大な毒針を引き抜いた。
「食べられるのは私じゃない、君の方だ……!」
「イヤ、ワタシハマダ……!!」
 ヨルムンガンドの大盾が振り下ろされた。その一撃は大蜂の頭部を捉え、そのまま床に叩きつけ、押しつぶした。
 メキメキと何かがへし折れるような音が部屋に響いたかと思うと、喧しく動いていた羽根がその動きをパタリと止めた。
 毒蜂ライラ。人を殺し喰らう怪物は、イレギュラーズ達の手によって討伐された。


 屋敷を取り戻したボルグ男爵が真っ先に行ったのは、犠牲になった人々の弔いだった。イレギュラーズ達の中にも、その手伝いを行った者が居たという。
 悲しみに暮れる人々の中で、樹里がひたすらに祈りを捧げていた。死んでいった者達の為か、残された者達の為か。あるいはその両方か。
 気休めだと分かってはいても、そうせずにはいられなかった。
 この世界には、驚く程多くの悲劇が溢れている。
 だが少なくともイレギュラーズ達は、これから起こるでろういくつかの悲劇を防ぐことは出来たのだろう。

成否

成功

MVP

ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜

状態異常

ヨルムンガンド(p3p002370) [重傷]
暴食の守護竜

あとがき

これにて依頼完了です、お疲れ様でした。強敵相手に見事な大立ち回りでした。
MVPは、仲間を守り、かつ敵に多くのダメージを与えたあなたに差し上げます。
またのご参加、お待ちしております。

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