シナリオ詳細
幻想アイドルすぴかちゃん~歌って倒せ! シンガーソングバトラー
オープニング
●今日はなにか体感ゲームをするよぉ
幻想アイドルとして売り出したすぴかちゃんは、今日も今日とて営業に精を出す。
どんな場所だろうと呼ばれれば直行し、元気に笑顔振りまきながら歌うのだ。
「歌を唄うのは楽しいです!
たとえお客さんが一人だって……聴いてくれる人がいるならすぴかは全力で歌います!」
そんな健気なすぴかちゃんの人気は、爆発的とは行かなくても、順調に上がっているようだった。
それに目を付けた練達の科学者がいた。Dr.ゼットである。
すぴかちゃんのアップテンポな新曲『Possibility of Spica』をヘビロテしながらゼットは整備していたその手を止めた。
「ふふふ、完成じゃ。
これぞ、私の新作。歌唱特訓シミュレーター『シンガーソングバトラー』じゃ!!」
大型の機械を前に誇らしげに笑うゼットは、その機器の実験手順を思考する。
そう、この機械のテストをするに打って付けなのは、歌で人々を救おうとした勇気持ち、またローレットとの繋がりがある歌い手。
「くふふ、すぴかちゃん、待っておるぞぉ~!」
……ただのすぴかちゃんファンかもしれないこの爺さん。
●
後日、Dr.ゼットの研究室に集まったイレギュラーズは、すでに待機していたすぴかちゃんと合流する。
「よく集まってくれたのう。
今日は儂の開発したマシン『シンガーソングバトラー』の試験運用を行って貰うぞい」
シンガーソングバトラー。
聞けばこの体感ゲームは、生み出される実体を持つモンスターを倒すという単純明快なものだが、その攻撃手段は歌に限られるという。
熱量を持ち、狂い無き音程で歌い上げれば、その音波が最大打撃となる仕様だ。当然音痴であればダメージは下がってしまう。
テストはステージ5まで。段階的に敵が強くなっていく仕様だ。
「はぅ……すぴかに上手くやれるでしょうか」
いつもと違うステージにドキドキするすぴかちゃんは胸を押さえた。
「当然敵も攻撃してくる。大けがにはならないが、それなりに痛いからのう。お前さん方はしっかりすぴかちゃんを守るのじゃぞ」
「あのあの、皆さんよろしくお願い致します」
ぺこりと、頭を下げたすぴかちゃん。
完全に爺さんの趣味に付き合わされる形だが、すぴかちゃんは嫌な顔せず、それどころか楽しもうとする気配すらある。
まあ研究室(ここまで)来たのだ、最後まで付き合って見るのも良いだろう。
「攻撃、防御、回復、回避。
すべての行動は歌で判定される。若人よ、歌え! そして戦え!
歌こそこの混沌たる世界を救うのじゃ!!」
がははと笑う爺さんがスイッチをオンした。
シンガーソングバトラーがスタートする!!
- 幻想アイドルすぴかちゃん~歌って倒せ! シンガーソングバトラー完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年02月16日 23時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●皆さん喉の調子はいかがですか?
ズンチャズンチャズンチャカズンズンズンチャッチャ。
Dr.ゼットがスイッチを入れると、軽快な音楽と共にゲームの待機画面が壁に投影される。
簡単なルール説明なんかも流れてまさにゲーム画面という感じだ。
「わぁ~何だか楽しそうですね」
物珍しげに幻想アイドルすぴかちゃんが投影された画面へと視線を這わせる。音楽に合わせて軽く身体を揺らす様は可愛い。
そんなすぴかちゃんに『しがない透明人間』透垣 政宗(p3p000156)が近づき話しかける。
「やあ、こんにちは。
キラキラしてるアイドルがいるって噂は聞いてたから、こうして近くで会えて嬉しいよ」
近くで見れば、なるほど自分とは別ベクトルで可愛いと納得する政宗。下手すればファンになってしまいそうだと笑う。
「いえいえ、そんな私なんて~(はわぁ綺麗な人ですぅ)」
と、ぱたぱた手を振るすぴかちゃん。まあ間違いなく政宗の性別を誤解している。
「なるほど、よくできているものですね。
聞いていた以上にゲームな感じで、楽しめそうです!」
待機画面のルール説明を見ながら『言うほどくっころしそうにない』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)はうんうんと頷く。
「お前さんの要望通りいろいろ楽器は用意しといたからのう」
Dr.ゼットがスピーカーを通してそう言うと、シフォリィはお礼を言って用意された楽器類へと目をやった。
要請したものは一通り揃っている。これならば歌い手のサポートも十分にこなせるだろう。
「らむねさんのワンポイントアドバイス!!
歌唱は一日にして成らず! 今更上手くやろうとしても逆効果です!」
声高らかにそう言うのは『永遠の17歳』四矢・らむね(p3p000399)だ。地下アイドルとして活動を続けているらむねの言葉は実に熱が籠もっている。
「本番に大事な事は! 根拠があろうと無かろうと自信を持って歌うことが大事です!
前を向いて、お腹に力を入れて、にっこり笑顔で!
アイドルなら楽しませようなんて考えず。自分が思い切り楽しんで歌うんです!」
らむねの言葉にうんうんこくこくと頷くすぴかちゃん。先輩(?)の言葉はアイドルにとって大事なことだと、何度も頭の中で繰り返しているようだ。
「自信を持って歌う、か。なるほどな」
らむねの言葉に納得しつつ待機画面を見ていた『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は、実に面白い試みだとDr.ゼットの研究に興味を示す。
歌には力が宿るものだと考える汰磨羈は、歌声を物理的な力へと変えるこのゲームは中々に良い着眼点だと感心した。
「――さて、本気で謡うのは久しぶりだが。全力で楽しもうか」
口の端を釣り上げる汰磨羈は、何を歌うか考えがあるようだった。
そんな汰磨羈の側では一人の男が白目を剥いてぶつぶつと何やら呟いていた。
「俺はアイドル……俺はアイドル……俺はアイドル……!」
この男、実は依頼を間違って受けており、しかし受けた以上絶対に成功させるという気概を持たねばならない。
自らに暗示をかけるように、小一時間ぶつぶつと自己暗示を掛け続けていたわけだが、実に不気味である。
男――そう男の名は……。
「やぁ、僕はハロルド! 駆け出しのアイドル、うたう☆プリンスさまだ!」
『戦鬼絶唱☆うたえプリンスさま』ハロルド(p3p004465)はその顔に似合わない爽やかスマイルを見せ、自己暗示の結果言葉遣いまで変わってしまった。
強面でありながら素敵な笑顔を振りまくハロルドと、自然体の笑顔を見せるすぴかちゃんが微笑み合う。プリプリ(プリンスとプリンセスの意)な空間は果たしていつまで続くだろうか、ハロルドの精神が心配である。
「練達の面白アイテムのテストってさ、私はけっこう好きなんだよ。
いろいろなもの考えてくるし、何が起きるかけっこうわくわくだよね」
そう言うのは『ヒーロー見習い』ティスル ティル(p3p006151)である。
こと混沌に置いて練達の科学力というのは言葉通り別次元であり、『不在証明』の影響を受けない程度のものであれば、実に様々なものが生み出されこの無辜なる混沌に影響を与えている。
今回テストするシンガーソングバトラーもその進化の果てを想像すれば、実に面白い展開が考えられるというものだ。
故に、このテストに参加できるのは楽しみというものなのだが……。
「けど、歌か。……歌かあ。
……まあ、頑張る! 歌はともかく、声出しながら動くのは慣れてるつもりだし!」
ティスルは若干感じている苦手意識に蓋をして、勢いで乗り越えようという心算だ。さて、それがどのように転がるか、楽しみにしたいところだ。
「ん………歌によって戦う……面白そうなゲーム……だね。
……やはり人の子は面白い……この様な物まで作り出せるとは……」
感心しながらヘッドホンのように装着したシンガーソングバトラーのデバイス、声紋展開処理装置『歌い手くん三号』の感触を確かめながら『氷結月下の死神』ニーナ・ヘルヘイム(p3p006782)が言葉を零す。
そんなニーナを見つけて、すぴかちゃんが手を振った。
「こんにちわぁ! 今日は一緒に頑張りましょう!」
「ん……すぴかちゃんが歌うなら……私もすぴかちゃんを守ろう」
それがサテライト(ファン)としての務めだと、ニーナは無表情ながらに気合いを入れた。
「ふんふんふーんってね。
歌は普段から鼻歌歌ってるくらいだもの……余裕よ!」
なんて言いつつ、しかし特段に上手いわけではないことで自慢もできないのだと地味さに落ち込む『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。しかし落ち込んだのかと思えば、瞳を輝かせてすぴかちゃんにセクハラする。
「時にすぴかちゃん。ぱんつ何色ー?」
「ふぇぇ!? あの、そのぉ……」
「……む!」
秋奈とすぴかちゃんの間に割り込むニーナ。純真なファンは邪な質問を許さないのだ。
「冗談、冗談よ。
すぴかちゃん、今日はよろしくね。見てみて、作って貰ったステージ。
今日はあそこですぴかちゃんには後ろから支えて貰うわ。
やっぱりアイドルにおうえんされるのっていいよね! いいよね!!!!」
研究室の何も無かったフロア内には、急遽ステージが設けられ、まさにアイドルのライブステージという様相だ。
そこを最後列としてすぴかちゃんを配し、イレギュラーズは陣形をくむ算段だ。
「そいじゃぁいくぞい! まずはどんな音痴でも勝てるステージ1からじゃ!」
「はわわ、ドキドキしますね」
マイクを両手で握ったすぴかちゃんが緊張の面持ちでいると、視線の先投影された画面がステージ1の始まりを告げる。
同時フロアに突如出現するスライム型のモンスター。プルプル身体を震わせたかと思えば大きく”口”を開けて実に音痴な間延び声を上げた。
「ミュージックスタート! 僕らの歌声、聞かせてあげるよ☆」
やはり一人おかしくなってると言わざるを得ない。
ハロルドの精神の心配をしつつ、イレギュラーズは喉の調子を確かめるのだった。
●敵さん……すごい美声ですぅ!?
「ぼえ~~~~~」
実に音階の乱れた嘆きの声がフロアに響く。音痴なその声は音波の剣となってゲーム参加者を襲う。
「とはいえ、最初のステージということもあって大したことないわね!
戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! さっそくだけど歌わせてもらうわ!」
ロングマフラー靡かせて、響く歌声凜の華。秋奈の先陣に相応しき鼓舞賦活の歌声が敵の注意を引きつける。
突き刺した桜花の刀は、正しくモンスターの特殊バリアを破り、ダメージを与える。歌声によるダメージ補正も問題なく機能しているようだった。
「良い調子ですね。演奏の方も試してみましょうか」
シフォリィが仲間達の歌声に合わせて楽器を演奏する。Dr.ゼットのお墨付きはもらっている。楽器演奏による歌のサポートは、仲間達の歌力を高めるようだ。
「直接的なダメージはないですけど、皆さんのダメージを底上げできてるみたいですね。このまま、演奏でサポートしていきますよ!」
シフォリィのサポートもあって、イレギュラーズ達はステージ1、2を楽々とクリアする。そうして迎えたステージ3のオペラ歌手を思わせるミノタウロス。それまでのステージと違い、相手の音撃が強力なものとなり、ことここに来てこの戦いが中々に大変なものだと気づき始める。
歌いながら動くって、本当に大変なんです。
「――永遠の安息を与えよう、彼等が魂に平等の眠りを――」
鎮魂歌を歌い上げるのはニーナだ。権能を有する『ヘルヘイム』の彼女はその長けた歌唱力とスピーカーボムによって響き渡らせる音圧、そして演技による感情の発露が音撃を強力なものへと変化させる。またセイレーンたるニーナのクラス補正は確かに上乗せされていた。美しき破滅の呼び声はシナジーとなって音撃を強くする。
ニーナの鎮魂歌によって強力になった各種スキルがミノタウロスを氷結させ、足止めの効果を齎す。
「はわぁ、ニーナさんすごいですぅ」
後ろで見ているすぴかちゃんも見事な歌い上げに拍手を送った。
ミノタウロスがオペラ的音圧を発する。
「くっすごい威力だ。けれど、負けないよ!」
爽やかにミノタウロスへと向かうハロルドが、キレッキレのダンスを魅せる。歌唱のリズムに合わせてリズムを刻めば、それは全てがプラスに働く。
壁役としてミノタウロスを抑え込むうたう☆プリンスさまハロルド。見事に敵を含めたゲーム参加者の視線を集め、このゲームに挑むのに必要な姿を見せ付けた。
手痛いダメージを喰らいながらミノタウロスを撃破したイレギュラーズは、ステージ4の平面アイドル『ポリゴーン』との激闘を経て、尽きかけるスタミナのままについに最終ステージへと辿り着いた。
現れる魔物は予想の範疇だろうか。海に響く歌声は死へ誘う魔性の音階。伝説に謳われる『セイレーン』を模した魔物だ。
魅惑の歌声はそれだけで残して置いた体力を奪われるようだ。これに挑むには相応の歌声が必要だろう。
音程ヘナヘナ。掠れた声でポップソングを歌っていたティスルは、せっかくの試験運用だから色々試してみようと、遊び歌を披露する。これならば無理な音域は使わないし、音程も取りやすい。
「ドレイク船長大もうけ 海霊だまして大もうけ♪
けれど海霊おこらせて あーあ船長うみのなか♪
泳げ泳げドレイク船長 腹ぺこワニが迫ってる♪」
ビートを刻むかのように加速しながら、楽しげに響く歌声は、難しい歌に比べると確かに効果は低いが、しかし音痴に歌うよりは確かな音撃を与える。
加速のままに放たれる迅雷の一撃が魅惑の歌声を綴るセイレーンの構えを砕いた。
「ファイト ファイト! 立ち上がれるはずさー♪
負けないでー! 痛いのだってへっちゃらだよぉ!」
応援歌を歌い上げる政宗は、その音撃を冷たい呪いとともに放ちセイレーンを苦しめる。
そしてスタミナの減った仲間を癒やし励ますように、支援能力のある召喚物を召喚した。
音痴であることを自覚している政宗は歌唱のスキルで僅かばかりの補強を試みたようだ。これはこの戦いにおいては実にポイントが高く、音痴とバレないていどにはポップソングを歌い上げ、リズムを乱す事はなかった。
この勢いに、アイドルらむねはノリに乗る!
「いきますよ、スピカさん! 合唱です☆」
「は、はい、宜しくお願いします!」
キラッとポーズをとったらむねに続いてすぴかちゃんもお約束のすぴすぴスマイルを魅せる。
流れ出したすぴかちゃんの十八番『瞬きのShooting Star』。アップテンポなナンバーがセイレーンの歌声で傷付き倒れた者達を、再び立ち上がらせ力を与える。
「夢のコラボですよ! ぶっつけ本番でも余裕ですよ!
約十年。培ってきた私の技術、魅せてあげます!!」
「は、はわぁ!?(じゅ、十年!? ……すごいですぅ!)」
らむねの力によって呼び出されたスピーカー型の召喚物が、仲間達の傷を癒やす。響き渡る二人の歌声は、やがて口ずさむイレギュラーズ達の合唱となる。
まさにアイドルのキラキラステージとなったフロアだが、しかしさすがはラストステージ。魔物たるセイレーンも一歩も引かず歌を響かせる。
「負けられません。私も童謡で対抗してみます!」
シフォリィが歌い出した森でくまさんと遭遇する例のアレはなんとも可愛らしいものだ。歌のお姉さんかな?
しかし童謡というのは良いチョイスで誰もが知っていてリズムも取りやすい。合唱なんかもできて、シナジー合わせは完璧だ。
それでも、セイレーンとの音撃勝負は互角というところか。
「くっ、一進一退というところだね。あと一歩、なにか踏み込めるものさえあれば!」
互いに引かぬ音撃の狭間でハロルドが苦渋に顔を顰める。セイレーンの歌声を抑え続けた壁役のハロルドとシフォリィはすでに後がない状況だ。耐え凌いでいられるのも時間の問題だった。
その時、応援を行うMKBの隣を歩くようにステージへと進んだ影があった。
「――汰磨羈さん?」
シフォリィがはっと気づく。ついにあれを披露しようというのか。
すぐに楽器を和鼓へと変えてスタンバるシフォリィ。いや、実に大変ですね。
「準備の時間は私が稼ぐわ――!
歪んだ世界のラプンツェル
魔女は塔のふんふふ、ふふふふふん
バロックの乙女よ
月に赤く滅び咲きほこれ
ふふふふーん」
「結構うろ覚えなんだね」
秋奈の胡乱な歌に政宗が苦笑する。そうして、ニーナが今一度歌声を響かせ、らむねとすぴかちゃんのデュエットがセイレーンの音撃を打ち払う。
一瞬の静寂。そのタイミングを待っていたように、和鼓が一つ響いた。
「妖怪五千年、幻想のうちを比ぶれば、混沌の如くなり。
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか」
能。
遥か異世界のある国に伝わる伝統芸能、能楽の一分野である。
緊張を齎す発声は、まさに腹の底からだされたプレッシャーへと変貌し、フロアを震撼させる音圧は、歌声響かせるセイレーンすらも震えさせた。
汰磨羈は武で鍛えた肺活量を生かし、武術のリズムを取り入れた力強い型を魅せる。
ポップソングのような連続した音撃ではない。だが、静と動が展開し、謡いとして声を発する能もまたシンガーソングバトラーは判定を良しとする。
謡曲と武術のリズムに乗って出される神速の突きがセイレーンを穿った。だがまだ止めとはいかない。
「――ふむ。まだ足りぬか。
何なら、ロック調でいっても構わぬが?」
そういった汰磨羈は実に楽しそうに笑みを浮かべるのだった。
●楽しいお仕事でしたっ
ポップンソングや遊び歌、そしてアイドルソングに能ときて、最後は武士ロック。
実に雑多なセットリストは混沌らしいと言えるだろう。
「うむうむ、良い研究データが取れたぞい。お前ら良くやったのう」
Dr.ゼットはその成果に大満足のようだった。
イレギュラーズ達は見事の全ステージをクリアし、疲れ果てたその身体を休めるように休憩室で談話していた。
「なんかちょっと自身がついたかも? 歌唱の練習してきたかいがあったね」
「お疲れ様ですぅ! 応援歌とっても元気がでました!」
上手くいったことに気を良くした政宗をすぴかちゃんがこれでもかと褒める。おだて上手に見えるが、すぴかちゃんは天然でこういうことする。
「戦いながら演奏というのも大変ですね。肩と指を凝ってしまった気がします」
「私も最近ちょっと長い時間踊って歌うのがちょっとキツく……げっふげふ」
シフォリィが肩こりを気にする横で、らむねがなんとも自称年齢に似合わないことを言い出した。闇が深い。
「ふぅー! スッキリしたな!
たまには本気で謡うと言うのもよいものだ」
積極的に戦闘し、最後は能と武士ロックで熱い魂を歌い上げた汰磨羈はご満悦だ。
そんな中、一人白目を剥いた男がぶつぶつと言っていた。この流れ、開始前にも見たな?
「……キラキラプリンス……爽やか系王子……だ、だよ、かな?……。
ちくしょうめ……! もう二度とやらんからな!!」
自己暗示の切れたハロルドは、頭を抱えて羞恥の心を吐き捨てた。
「まあまあ、結構イケてたって……王子っ」
「うがー! やめろ!」
ティスルがハロルドを茶化し、逃げ出すと、追いかけるようにハロルドが走り出した。
「……すぴかちゃん……今日はどうだった?」
「皆さんの歌声とても良くて、あと戦いはやっぱりカッコイイですね!
ニーナさんも、歌とっても上手くてすぴかびっくりしました!」
「……ん、それほどでもない。
よかったら……また遊ぼう……」
「はい! もちろん!」
そんな二人のやりとりを見つつ、秋奈はふと思う。
「んー……、これ小型版とか欲しくなってくるわね。
物理的に干渉できる音波。場合によっては仲間を支援したりできるのかも?
そんなことできたら、力を持たない人でも戦いの役に立てたり……?」
呟いた秋奈は一つの可能性に辿り着き、「けひひ」と笑うDr.ゼットと、その視線の先にいるすぴかちゃんを交互に見やった。
「……まさかね」
その想像が現実のものとなるか。それは近い将来分かる事なのかも知れない。
何も知らないすぴかちゃんは、変わらぬ笑顔を振りまいて居た。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
皆さんのおかげで無事に新機能の検証が出来たようです。
歌い終わった皆さんはのど飴で喉を労ってあげてください。
MVPは能というジャンルを恐れを持たずに披露した汰磨羈さんに贈ります。
難しいジャンルでしたが、そのキャラの印象と共に良いプレイングで見事でした!
でも武士ロックに関しては、どんなものだろうって検索したらなんか歌う王子様みたいなのばかりでてきたのは内緒です。いや縦振りな楽曲もありましたけどね。
面白かったハロルドさんには称号が贈られます。よっ、王子様!
この依頼を経てすぴかちゃんの戦術的バックアップ体制が整うようになるかもしれません。決戦で皆を後ろから支える日も……あるかもしれませんね。
依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
練達の科学者がまたよくわからないものを作ったみたいです。
このもしかしたら凄い兵器になるかもしれない機械のテストに立ち会いましょう。
●依頼達成条件
シンガーソングバトラーをステージ5までクリアする。
●情報確度
情報確度はAです。
想定外の事態は起きません。
●シンガーソングバトラーについて
装着したマイクに入力された歌声を、物理的な衝撃音波に変換し発射します。
体感ゲームですので、出現するモンスターに対しこの音波を当てて撃破しステージを進めていってください。
ゲーム参加者及び、モンスターは特殊なバリアに包まれており、ゲーム中は物理・神秘的な通常のスキルによる攻撃は無効化されます。
ただしスキルに歌声を込めるとこのバリアを突破できます。歌による攻撃が苦手な方はスキルと歌声(音痴)の両方をもってバリアを突破しましょう。
当然ながらモンスターも音波によってこのバリアを突破してきます。ダメージは覚悟しましょう。
ステージは5。段階的に敵は美声(強く)になっていきます。
三人が戦闘不能になるか、すぴかちゃんが倒された時点でテストは終了するので注意しましょう。
●同行NPC
幻想アイドルすぴかちゃんが同行します。
ゲームとはいえステージに変わる事無く、初体験にドキドキながら頑張ろうと気合いを入れています。
歌声はそこそこ上手い程度ですが、熱量と煌めきには可能性を感じさせます。
体力は少ないので守ってあげてください。
●戦闘地域
練達のDr.ゼットの研究室になります。
広い何も無いフロアにゲーム画面が投影されるようです。
いろいろなスキルを駆使しても問題なさそうです。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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