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シナリオ詳細

<泡渦の舞踏>巨大ウツボとアンデッド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の大討伐より幾分かの時が過ぎた。
 彼の大討伐より逃れ、海洋に落ち延びた魔種『チェネレントラ』が海洋王国の近海に大渦を発生させてからもまた、幾分かの時がたっている。
 御伽噺に語る海種の都、海底に沈んだ古都ウェルテクスを中心とした騒動は、いよいよ激しさを増しつつあった。
 『色欲』と『嫉妬』――二つの呼び声がしきりに響くその状況下、海洋の女王イザベラ・パニ・アニスとソルベ・ジェラート・コンテュール卿からはローレットへチェネレントラ及び周辺の魔種討伐の依頼が多数舞い込んできているのだ。
 何せ海洋王国は海種と飛行種――純種が多くを占める国。垂れ流される魔種の呼び声は、彼らにとってはいつ裏返るか知れぬ物なのだから。

 そんな海洋王国が近海を行く一隻の船がある。
 多くの人員、多くの資金を乗せた船は、大渦からやや離れた海路を大回りに通って進発したばかりだった。
「この海路なら、呼び声もそう多くはない。とはいえ皆のモノ、心してかかれよ! 最近は魔物さえも活発に動いてやがる!」
 船長らしき飛行種の男が声を張り上げた。
 船は急速に、出せる限りの速度を使って波に乗って駆けていく。行く先は小さな小島。彼らはもしもの場合に備えて避難した人々への配給物資を積んでいるのだ。
 絶対に失敗をするわけにはいかない航行だった。
「船長、前方に何か見えます!」
 偵察役の飛行種が、空からそう声をかける。
「何!? 何が見える!」
「分かりません! 分かりませんが、えっと――何か、半円の、動い、て……えっ」
「どうした! もっと正確に――」
 声を張り上げた船長はそう言いながら自分も手持ちの望遠鏡を取り出して偵察役の向いている方を向き、ハッと息をのんだ。
「お、面舵!! いっぱい!!」
 戦慄か、どもりながら声を上げる。
 ぐるりと舵が動き、船体がゆっくりを曲がっていく。
 その最中だった。何かが船の動きを止めた。
「待て待て待て、流石にまだ遠いぞ。アレが終わりらへんだとしても流石に……」
 ひきつった声で、周囲に聞こえないように配慮しつつ声を上げる。
「船長、海面に何かが! 張り付いてます!!」
「あぁ!?」
 他の船員の声に思わず声を張り上げる。
「あ、アンデッドです!」
 海面に顔を出した船員が振り返りながら言った。
「馬鹿な、ここまで来てんのか!?」
 船内に混乱が走る中――不意に、ズシンと強烈な衝撃。
「拙い――」
 ガタガタと音が響き、メシメシと軋む。
 その直後――ソレが姿を現わして、船体にぐるぐる巻き付きながら啼いた。
「り、離脱!! 落ち着いて! 全速力で都に戻れ!!」
 船長が叫ぶ。
 船員たちが飛び、或いは潜り、一目散に逃げていく。
 船長はそれを見ながら、クソッタレ、一つ漏らして、自らも舞い上がった。


「そういうわけで、人々の荷物を奪い去ったあの糞ウツボを殺してほしい」
 片足が千切れた男性の飛行種が、君達の前でそう呟いた。
「このままじゃあ、おちおち向こうの人々に物資も送れないし、どうにもアンデッドもいるようだ。頼む……もうとっくの昔に死んじまってるやつらにちゃんと眠りを……今生きてる人々に明日を……」
 ひきつった声で、船長はそう呟いて、ぎゅっとこぶしを握るのだった。

GMコメント

こんばんは、春野紅葉です。
早速ですが、人々のために物資を送る航路を切り開きましょう。

・オーダー
航路に根差す巨大ウツボとアンデッドどもを根絶やしにする。

・戦場について
今シナリオでは戦場を海中か船上か選ぶことができます。
海中の場合でも海中戦闘用スーツを使って普段通りの戦闘が行えます。

・敵情報
魔種の影響か、魔物とはいえ結構強いのでご注意ください。

【巨大ウツボ】
全長5~10m
只管長く只管でかいです。
攻撃手段として
『巻き付き』
物自範 乱れ 崩れ
『噛みつき』
物至単 猛毒

【アンデッド×10】
数ターンをかければ通常攻撃で殺せる程度の質です。
『抱き着き』
物至単 足止め 停滞
『噛みつき』
物至単 猛毒 呪い

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <泡渦の舞踏>巨大ウツボとアンデッド完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月07日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ニル=エルサリス(p3p002400)
凍李 ナキ(p3p005177)
生まれながらの亡霊
ユー・アレクシオ(p3p006118)
不倒の盾
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile
カナデ・ノイエステラ・キサラギ(p3p006915)
帰ってきたベテラン

リプレイ


 おだやかな日差しが斜めから差されども、潮風は未だ肌寒い。そんなある日、イレギュラーズを乗せた船は依頼主が襲われたという海路を進んでいた。
 今はまだ、静かな波が船体に裂かれて消えていくのみ。
 大海原を行く二隻のうちの一つで舵を取りながら『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)はいつものように煙管をくゆらせる。
(厄介事は目につかねぇ所で起こしてくれんかねぇ……おっさんは、ゆるーい静かな暮らしに満足してるんだからよ)
 近頃の海洋における事件の数々を思いながら、十夜はいつもの調子を隠さない。
「噂の魔種絡みか……」
 十夜の船に乗る『鉄の守護者』ユー・アレクシオ(p3p006118)は甲板にて立ちながら呟いた。
(まぁ、仕事が増えるのはいいことだが……当事者はたまったもんじゃないないよな)
 腕を組み、静かに風と波の音に意識を向ける。
 船体への保護結界は既に張り終えている。あとは、目標との会敵を待つばかりだ。

 十夜とユーを乗せた船からやや後方に進むもう一隻にて『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)は海の天候を見定めていた。
「今日は一日いい天気になりそうだね」
 軍服を纏った灰被り姫は大空を行く雲がないことを見て止めて、決断を固めていた。
 風の流れも悪くはない。今日は航行日和だ。
「魔種だけでも厄介なのに物資も滞ったりしたら大変だお。ちゃっちゃと航路を確保しなくちゃだぬ」
 そういうニル=エルサリス(p3p002400)は万一を考えて練達から得た海中戦闘用スーツを着込んでいる。
「うん、避難してる人達の生活がかかってるんだ」
 保護結界を張りに行っていた『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)がちょうど帰ってくるとそれに同意する。
(これが、魔種の脅威……持ってる本にも書いてあったけどこの世界も割と物騒なのね)
 東洋龍のような角を生やした女性、『特異運命座標』カナデ・ノイエステラ・キサラギ(p3p006915)は鳴の火影をちらりみやり、少しだけ深い呼吸をした。
(ま、とにかく一つでも実戦経験積んで力を取り戻さないと。市井に生きる人々を守るのも兵士の務めよ)
 混沌肯定に加えて瀕死からの復帰と、今の自分では異界の頃より腕が鈍っている。そう自覚していても、兵士としての矜持は薄れていなかった、
(死者に眠りを、生きている人々に明日を……ですか。奪われたモノは大きいのに…尚も他者や仲間達を想う……)
「立派なお方です、失ったモノは取り戻せませんが……望みはきっと……ッ!」
 依頼人の事を思い出して『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)はそう呟く。白く輝いてゆらゆらと飛ぶ人魂が少女の周りをぐるりと回る。
 彼ら四人の乗る微かに血腥い香りを潮風に乗せる、今にも崩れ落ちそうなボロボロな船を駆るのは『小さな亡霊』凍李 ナキ(p3p005177)だ。ナキ同様に幽霊でもあるこの船は友人でもあった。


 航海を開始してからいくらかの時間が経った時のこと。
「あれが奴か……?」
 最初に気付いたのは甲板で立っていたユーだ。海上、唐突に現れたアーチ状の何か。
 ユーは振り返り合図を出し、続くように十夜が後続の味方へ笛を用いて合図を鳴らす。同時に、十夜は敢えてアーチの方へと速力を上げて向かっていく。
「そんじゃ、偶には働くかね。俺達が餌にされちまう前に片づけてくれや」
 言葉に出すほどやる気を出しているように見えない十夜は、ちらりと後続の味方へ視線をやる。
「舵は頼んだ」
 掌サイズの球型マシンを大量に召喚したユーは、それらを一気にアーチの方へとけしかける。
「まぁ、まだ餌にはなりたくねえなぁ」
 のんびりした調子のままそう返した十夜が舵を回して方向を転換、味方から少しずつ離れるように動かした。そして、時間にして数秒。船体の底から、何かがぶつかってくるような衝撃が走る。
「キシャァァ――」
 海面をぶち上げ、ソレは姿を現わした。
 大きく口を開けた強面の顔にはいくつかの傷が見える。口の中には反しのついた歯が並び、噛みつかれれば深い傷を負わされるのは目に見えて分かる。ユーはウツボを見据え、その手に電撃を籠めていく。
「行くぞ」
 一層の輝きを灯した聖なる電撃をそのままに、ユーがそのままウツボの鼻頭めがけて拳を叩きつければ、衝撃を受けて仰け反った。

 ユーと十夜が乗る船がウツボめがけて突撃をかけたのよりもやや時をさかのぼり、鈴音が舵を取る中型船にもいよいよその時が来ていた。
「いよいよ来るよ!」
 船が動かなくなったことに気付いた鈴音がそう告げてからイレギュラーズが自分の武器を取る頃には、そいつらはデッキの上へと這い上がってきていた。
(ウツボもだけど、アンデッドもこんなに……いったいあの魔種はどれだけの命を奪ったんだろう……)
 チャロロは這い上がってきた10体のアンデッドを眺めて思う。
「生きてる人たちの明日をつなぐために……ここで眠らせてあげないとね」
 死んで安らかに眠っていたであろうに、わざわざ起こされて利用される死者だったモノへ、チャロロは静かに拳を握る。少しだけ息を深く吸い、一気に駆けた。
 這い上がってきたばかりのアンデッドたちは、自分達へ向かってくる小躰に意識を向ける。
「乱暴な火葬で悪いけど、せめて安らかに眠ってくれ……」
 チャロロの右手に急速に集まっていくエネルギーが、4体のアンデッドに向かってぶちまけられる。濡れているからか、少しだけ火のつきが悪いものの、強烈な一撃に2体がよろめいた。
 ニルはチャロロへの注意が向かなかった1体へと潜り込むと、蹴りを見舞う。
 しなりを効いた強烈な一撃は、さながら巨竜が放つ尻尾の一振りの様に、一匹のアンデッドの身体に叩きつけられ、綺麗にその腐肉を半分ぐらい破砕させる。
「量が多い……けど」
『ハッ、不味そうだが斬りごたえはありそうだな』
 対話の後、九鬼は霊刀を抜いたかと思えば、そのまま目にもとまらぬ速さで振りぬいた。
 雷の如き美しい輝きを放った剣閃は1体のアンデッドの肉体を切り刻み、更にもう一度、同じアンデッドの同じ場所を抉り取った。
「その心、絶望に染まれ……!!」
 決め台詞と共にポーズを決めたカナデは瞬く間にビキニを着た忍びのような姿へと変身すると、そのまま流れるような仕草で3体ほど固まっている敵に向かって砲撃を放つ。
 無数の魔力弾が体へと浴びせかけられ、瞬く間にその肉体へ風穴を開けていく。
「あとは、そこだね」
 未だでいる最後の1体に向けて鈴音がオーラ縄を打ちこみ、その動きを阻害する。
「ここは、君たちにも住み良い場所みたいですね。一緒に遊びましょう。敵は彼ら、味方はボク等」
 船の舵を取っていたナキはそう呟いた。ナキが纏うのは悪霊、近隣より呼び集めた深く激しい航海の最中に果てた無数の怨根。
 チャロロの攻撃によりやや傷を負っているアンデッドめがけ、借り受けて力を籠めて、ナキは弾丸をぶち込んだ。

「アァァアア――――」
 後衛を守るように立つチャロロは自分でも注意を引いていることもあって、否応なく数多くのアンデッドの攻撃を受けていた。
「こい、恨みつらみがあるなら、オイラにぶつけてみろ!」
 二度目の言葉に、5体のアンデッドがチャロロに向けて張り付いてくる。
「ぐっ――」
 抱き着かれて身動きが取れない状況になっているのに加え、アンデッドに噛みつかれたところから入り込んできた呪いと猛毒がチャロロの肉体を蝕んでいく。
「そうだ、それでいいだよ」
 ゴウッと音を立て、再びぶちまけられた強烈なエネルギーが、アンデッド2体を焼き払う。
「大勢を立て直すよ! 大丈夫、冷静になればなんてことはないよ」
 鈴音が大号令を発すると、チャロロへかけられていた呪いが抜け落ちた。
 味方への指示立てをこなしながら、鈴音の視線は時折ウツボの方へと向かっていた。
 軍師としての指示が通る場所の内側ぎりぎりでウツボ班と仲間たちの引きつけは続いているように見えた。
 九鬼は別のアンデッドへと向かうと、夢想剣【神立】を叩きこむ。強烈な一撃を受けたアンデッドがひるんだような動きを見せたところへ、霊刀を叩きこんだ。
「仕留めます」
 九鬼の攻撃を浴びて今にも倒れそうなアンデッドへ、ナキの砲撃が打ち込まれれば、そのアンデッドはそのまま塵と化して消えていく。
 ニルは三度の蹴りで一匹のアンデッドを蹴り飛ばすと、それの身体が二つに引きちぎれ、そのまま動かなくなっていった。
「そこね!!」
 更にもう1匹に向けてカナデの魔力弾が撃ち込まれ、アンデッドを土に変えていく。

 海面からぬっと身体を伸ばして、ユーへとウツボが絡みついた。
 ぬめりのある身体による引き締めを受けていたユーに、大きく口を開けたウツボが噛みついてくる。
 反しのついた歯がユーの機械化した肉体を損傷させ、内部に毒を仕込んでいく。
「やってくれたな」
 お返しに電流をウツボへ叩きつけ、緩んだ一瞬に飛びのいたユーは、そのまま自らの身体にブレイクフィアーを施す。
 時折それそうになるウツボの注意を自らに向け続けながら戦いを続けていた。
 同じようにウツボの注意を引く十夜と共に、二人の戦いは続いている。


 ウツボが船体そのものに巻き付いてくる。
 意図的に船を破壊しようというのか、その引き締めは結界で覆った船体をメシメシと鳴らす。
 だが、その時だった。船体お引き締めるウツボの身体に向けて、横合いから殴りかかるように、ボロボロな船がぶつかったのだ。
 死屍を船体に残した幽霊船は、それだけにより一層それっぽい。
「お前もあの魔種の仲間なのか、影響で暴れてるだけなのか……わからないけど、全力で戦って倒すしかないよ!」
 チャロロは横付けされた船体からウツボの身体そのものへ飛び乗ると、そのまま強烈な打撃を叩きこむ。
「負けない……!!」
 続くように九鬼が船体を引き締めるウツボの身体へ剣を閃かせた。
 鮮やかな美しき剣閃はウツボの肉体を裂いて浅く血を海へと滴らせた。
 「ヴェノムシュートッ!!」
 続くように放たれたのはカナデによる毒性を帯びた魔力弾。ウツボの顔辺りに向けて撃ち込まれた毒を受けると、ウツボは嫌がるように顔を背ける。
「鉄拳制裁だお!」
 クルねーちゃん直伝の怒りの鉄拳制裁。全体重やらなんやらが乗った強烈な鉄拳が、ウツボの身体を砕く。
 うつぼの魚論とした目が、痛みからか命一杯見開かれたように見え、たまらんといわんばかりに船への引き締めを取りやめていく。
「そっちは終わったのかい? ならか弱いおっさんはそろそろ休んでも――」
 余裕たっぷり残して、十夜は言いつつ、しかし、そうはいかないらしい。
「っと、駄目かい?」
 再び海面より現れたウツボが、十夜めがけて思いっきり突っ込んできたのだ。
「お前さんも一途だねぇ。こんなおっさん食ったら腹壊すぜ?」
 飄々とウツボを躱し、そのまま流れるように一撃を叩きこむ。
 ウツボの呼吸に合わせたような一撃は、ウツボの呼吸を大いにかき乱し、ウツボは身体を船体へ叩きつけて跳ねるようにして海へと帰っていく。
「よし、これで大丈夫だね。――逃がさないよ」
 傷だらけのユーを癒し終えた鈴音はそのままマジックローブをウツボへ伸ばす。
 少しの引っ張り合いの後、ウツボの動きが停止する。
「あぁ、決めさせてもらおう」
 バチバチとおとを立てるユーの拳が、動きを止めたウツボの身体へと叩きこまれていく。
度重なる攻撃に、ウツボが苦しそうにもがき始めた。
「」
「いけ!」
 ナキはその様子を確かめると死者の怨念を籠めた束ねた砲撃をぶち込んでいく。
 怨念はウツボがイレギュラーズへ向けていた怒りや、痺れを吸い、それらを物理的な痛みへと変換し、肉体を傷つけていく。

「そら」
 十夜は再び自分へと突っ込んできたウツボに対して今度は真っ向から相対すると、ウツボの歯を握ると、そのまま流れるように船体へ叩きつける。
 華やかなまでの泰然とした技は、ウツボに強烈な一撃となって叩きこまれた。
「たぶん、もうじき倒せると思うんだよ」
 敵の情報を見極めていた鈴音は、傷の増えてきたウツボを見つめて、そう判断すると、もう一度、オーラ縄の引き締めをやり直す。
「魔法少女は伊達じゃないってところ、見せてあげるわ! 魔法少女って年でもないけど!」
 ダメ押しとばかりにカナデは毒性の帯びた魔力弾を叩きつけていく。
「じゃあ、終わりだよ!」
 チャロロが怪力を乗せた一撃を叩きこみ、更に続けてユーが再び電撃の籠められた一撃をぶち込む。
 その時、不意にウツボが跳ねた。
 ぶるぶると震えたウツボは、そのままのたうち回って、海へと飛び込んでいく。
「逃がさないんだお!」
 海中へと逃亡を図ったウツボに対して動いたのはニルだ。
 ぴょんと跳び、海の中へと潜ったニルは、そのまま体重の乗った尻尾のしなるような蹴りを打ち込んだ。
「絶対逃がさない! ……戦った人……待つ人の……明日を、切り開くッ!! アイツを喰らえ、イン!!」
『いいだろう』
 覚悟の籠められた瞳でウツボを見つめた九鬼の一刀が一目散に海底へ行くウツボへと到達し――その体を真っ二つに立ち割った。どす黒い血液が、海中に溶けていく。


 戦闘を終えたイレギュラーズは依頼人の元へ訪れた後、再び海へと出ていた。
「大丈夫かい?」
「はっ。たかが足の一本や二本が千切れた程度、この傷程度で海に出れなくて何が船長って話だ」
 チャロロの言葉に船長が笑う。そうは言うものの、傷ついた足に潮風が染みているのは目に見えて分かる。
「それに、弔いをしてくれる人が居てくれるのはありがたいのでな……」
 そう言って痛みからか若干ぎこちない笑顔を見せてくれた。
 イレギュラーズと共に船長が花を海へ投げ込むその沖をお帆船が走っていく。
 聞いた話では、依頼人の後釜として避難民がいる島へと物資を届ける輸送船が、今日出る予定だという。あれが、もしかしたらそうなのだろうか。
「あの船は届けられるだろうよ……全く、魔種なんてもんは、くそったれだ」
 ちっと舌打ちを一つして、船長が目を閉じる。九鬼はその様子を隣で見ながら、犠牲になった多くの者を弔うべく、そっと目を閉じた。



成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

こんばんは、春野紅葉です。

ウツボってとんでもない生き物なんですね……うーむ……

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