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シナリオ詳細

聖職者の試練

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●試練の洞窟
 天義は北西部シュナイクの街では、ある名物司祭がいた。
 名はマルドック司祭。
 この司祭、新たに聖職者を目指す者を教導し、育てるのが趣味であり、自身の天職と考えており、それは熱心に教え育てた。彼の元から巣立った者達は皆、天義の聖職者として恥じぬ働きをしていた。
 その彼の教導の中で名物となっているのが、試練の洞窟への挑戦だ。
「聖職者たるもの不浄なる者に負けてはならぬ」と悪霊、生き霊、アンデットを閉じ込めた洞窟を修練場とし、そこを試練の場として設けたのだ。
 この洞窟を踏破すれば、それはマルドック司祭の教導を受け終えた証となる。最後の卒業試練に数々の者が挑み、成し遂げてきていた。
 この卒業試練、マルドック司祭の教導を終えたものならばクリアは容易いもので、いまだ落第者はいなかった。
 しかし、今年はそうもいかなそうであり、マルドック司祭は頭を抱えていた。
 グレイン修練生は熱心にマルドック司祭の教導を受ける優秀な生徒である。
 だが、彼には恐ろしい程に魔力、魔法の素質なく、聖職者として優秀なれど、この試練を越えることは難しいと思われたのだ。
「神の使徒として優秀なれど、私の教導で落第となれば彼の人生の汚点となってしまうだろう」
 そればかりか、教導中に彼が命を落とす事になれば――そうなればそれは天義という国にとっても大きな損失となってしまう。
 マルドック司祭は考えた。考え、考え抜いて彼の身の安全を保障しながら、試練を越える方策を練った。
 そして辿り着いたのは――


「という話で、天義のマルドック司祭から護衛の依頼が来たわけね」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)はそう経緯を説明して、依頼書を見せる。
 天義の名物司祭による聖職者の試練。
 やや変則的ながら、護衛を付けて魔力、魔法に劣る優秀な生徒(劣等生)を卒業させようという話だ。
「洞窟内にはチェックポイントが四箇所あって、そこを巡って聖なる加護を受け取るって流れね。
 洞窟内は話にあるとおり不浄なる者――悪霊生き霊アンデットのオンパレードのようよ。
 ただ面白い事に、この洞窟内の不浄なる者には回復魔法が効くそうよ。グレイン修練生も簡単な治癒魔法が使えるから、それ一本で挑む気だったようね」
 話を聞くとグレイン修練生、異常に熱意のある聖職者候補だそうだ。どんな苦難にも持てる力で立ち向かう様は見習いたいところだが、無理無茶無謀はほどほどにしなくてはならない。
「グレイン修練生の性格を考えると、自分の力で乗り越えたい気もするでしょうね。だから護衛といってもほどほどにグレイン修練生を前にだしてあげたほうが良いかもしれないわ。
 あくまで命を奪われないように。そこだけ注意ね」
 多少めんどうな部分はあるが、確かにイレギュラーズが全て解決しては試練の意味が無い。
 ほどほどに活躍させつつ、試練に付き合うという体がいいだろう。
「そうそう、ヒーラーな貴方は一緒に試練を受けても良いそうよ。天義の神のご加護を得られる良い機会だと思うから、一緒に行ってみるのも良いのじゃないかしら」
 そう微笑んで、リリィは依頼書を手渡した。
 受け取ったイレギュラーズは、アンデット対策を考えながら、試練の洞窟へ向けて出発するのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 天義で行われる聖職者の試練。
 不浄なる者の住処を踏破しましょう。

●依頼達成条件
 試練の洞窟の踏破(チェックポイントを四つ回る)
 グレイン修練生が無事

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●試練の洞窟内について
 枝のように分かれた細い洞窟道になっています。派手な戦闘はしづらいく距離を取りながらの戦いも難しいでしょう。
 洞窟内はアンデットやゴーストのようなものが多く存在し、侵入した生者に襲いかかります。
 本シナリオではこの洞窟内の敵に対し回復魔法が攻撃手段として機能します。回復力がそのまま神秘攻撃力へと変換されます。
 また敵のバフ(強化効果)をBS回復で剥がすことも可能です。様々な回復手段を用いて洞窟を踏破しましょう。

●グレイン修練生について
 熱心な神の使徒にして、悪に染まらない清廉かつ廉直な人物。
 やや熱血的思考もあるが、誰にも優しく、公平で信頼にたる人間像だ。
 ただしあまりに魔力の才能に欠け、擦り傷を治す程度の治癒魔法しか使えないという、聖職者としては重大な欠点を抱える。
「奇跡に頼らずとも神の教えは伝えられる」が彼の持論である。

●戦闘地域
 天義北西部にある試練の洞窟内になります。
 中は暗く、明かりが必要でしょう。
  
 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 聖職者の試練完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月06日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
ユー・アレクシオ(p3p006118)
不倒の盾
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
クリストファー・J・バートランド(p3p006801)
荒野の珍味体験者

リプレイ

●挑む者
 天義北西部のシュナイクの街から北へ少し昇った所、虚ろな暗闇を持つ洞穴がその姿を現す。
 その大きな入口を見るに、内部も相応の広さを持っていることが想像でき、この試練がそう生優しいものではないことを窺わせた。
「……む。参られましたかっ!」
 洞穴の入口前で聖書へと視線を配らせていた長身の男が、それはそれは良く通る声で辿り着いたイレギュラーズを迎えた。
 なるほど、彼が今回試練を受けるというグレイン修練生に違いない。熱意ある修練生と聞いていたが、その佇まい、声の気迫はまさに熱血という様相だ。
「わざわざご足労戴き恐悦至極! 此度は不才な私に力添え頂けると聞き、ただただ己の未熟さに嘆きを漏らすばかり。どうか最後までお付き合い頂きたく!」
 実にハキハキと畏まった言葉で喋るグレインにイレギュラーズは呆気にとられつつも笑顔で応える。
「未来の司祭様の護衛の任を頂戴できるとは光栄の極み。
 天義の騎士として必ずやグレイン様をお護り致します!」
 『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)の言葉にグレインは同郷の者がいることに驚きと共に安堵する。
 爽やかに握手を交わし、リゲルが共に試験へと向かう仲間を紹介する。
「スティアだよ。グレインさん今日はよろしくね。
 せっかくだし一緒に試験受けてみるつもりだよ。天義の神様の加護も得られるって話だしお得だよね!」
 『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)がそう言うと、グレインは一つ頷いて声を張る。
「試練の洞窟の最奥に辿り着けば、一つ洗礼を受けられるという話です。
 共に試験を受けるのであれば、洗礼もまた受けられることでしょう」
 共に試験を受けようと思う者は、他にもいる。
「私も試験を受けさせてもらうつもりだ。
 神聖術には覚えがあるからな、試験内容にそって癒やしの力のみで行かせてもらう」
 ヒーラーとしてはグレインの遥か上をいくであろう『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)はそう話してニヒルに口の端を釣り上げた。
「癒やし手としての力を持たれるとは、私にとっては羨望の的でありますな。
 どうか存分に其の力を振るって頂きたい!」
 晴れやかに言うグレインに、陰鬱な感情は見られない。どこか吹っ切れた所があった。
「聖職者らしからぬ熱さがあるな。でもきっとそれがマルドック司祭を動かしたんだろうな。
 ああ、今日は無事に終わらせて見せるさ。
 ところで、試験を受けてみたいと思っていたんだが、やはりヒーラーじゃないとダメか?」
 『鉄の守護者』ユー・アレクシオ(p3p006118)がそう尋ねると、グレインは一つ考え込んで答える。
「試験に必要とされるのは、これまでに培ってきた己が力、知識、そして神への信仰心に他なりません。
 本来であれば癒やし手としての力を駆使して切り抜けていくものでしょうが、武器による戦闘は禁止されていないことから、共に試験を受ける事自体は問題ないでしょう」
「そうか。なら俺は俺のやり方で試験を受けさせてもらおう」
「洞窟の中は悪霊怨霊不死者が多く居ると聞き及んでおります。
 武器による攻撃は通常より効果が低くなるかもしれませんね。
 教練の締めくくりの実践です。皆様お気を付け下さい」
 水瀬 冬佳(p3p006383)の注意を促す言葉に、グレインも仲間達も同意する。試験の場として用意されている以上、確実に力を試されるのだ。どんな危険が待っていようとそれを乗り越える必要がある。
「魔力の才なき聖職者か……これからその力を試されるというのに自信に満ちた表情だ。
 積み重ねてきた努力の跡を感じさせるぜ」
 自分の道を真っ直ぐに進むグレインを好意的に思う『俺の冒険はこれからだ』クリストファー・J・バートランド(p3p006801)は、グレインの為に一つ力を貸そうと意気込んだ。
「本当に聞いてたとおり熱意に溢れる人だね。
 放って置いたらきっと一人で進んでしまいそうだけど、今日は私達もいることを忘れないで欲しいかな」
 『神無牡丹』サクラ(p3p005004)がそう言うと、グレインは思案する顔を見せ言葉を発した。
「ふむ、確かに。護衛がつくという話を聞いたときは、きっとこの試験で死者を出すわけにはいかないと思った次第。
 で、あれば死なない程度には我が道を通し、倒れればそれまでと考えておりましたが、今日は共に試験を受ける心構えの方もいるようですな。
 で、あれば、本来一人で受けるものだと強請するのは道を外れるというもの。
 今日は試験を受ける者の一人として振る舞おうと考え直した次第です」
 グレインの言葉に、うんうんと頷くサクラ。あとはこの言葉通り行動してもらえれば不安材料が一つ消えるというものだ。
「さて、こうして話していても試験は終わりませんからな、そろそろ参りましょうか!
 皆さん準備は済んでおりますかな?」
 『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)が会話に区切りを付ける。準備を促せば、一同は用意した明かりに火を入れる。
「準備はよろしいようですな!
 では、参りましょう。なに、洞窟は細道の多い迷路のようですが、心配には及びません。すべてコースは暗記しておりますからな!」
 魔力と関係ないところであれば、極めて優秀なグレインだ。進行の道行きは安心できるというものだろう。
 そうしてグレインを先頭に、イレギュラーズは試練の洞窟へと侵入していった。

●劣等で優秀な男
 試験の内容は、洞窟に点在するチェックポイントで聖なる加護を受けると共に、置かれている魔力球を回収するというものだ。
 チェックポイントは最奥へと至る道とは別の細道に置かれているので、想像しているよりも多くの時間が経過することになる。
 そしてチェックポイントに近づけば近づく程に、敵対する悪性が多く出現し、その行く手を阻んできた。
「数が多いか……実体化をしてない者もいそうだな」
 手にした剣を光らせて、先の様子を窺うリゲルが言葉を零す。暗視に長けた装備に温度視覚を伴わせているが、やはり実体となる前のゴーストなどを知覚するのは難しく、数の把握には苦労していた。
「臆する必要はありませんぞ! 数が多くとも屈する理由にはなりませぬ!
 いざ、我らが力を見せましょうぞ!! はあぁぁ――――!!!」
 もう一つ苦労したといえば、やはりグレインだろう。
 優秀な聖職者であることは疑いようない人物であるが、こと争い事においてはその熱血的思考が優秀な人物像を曇らせる。
 慎重に期するイレギュラーズと足並みが揃わず、飛び出す事たびたび。
 気合いと共に伸ばす右手はぼんやりと治癒の光を火照らせる。
 ティックリングタッチとも呼べそうなこのソフトアタックは、見事に悪霊達の神経を逆なでし、グレインはその集中砲火を浴びる事になる。
「試練だから力を試したいのだろうけど、状況は読んで欲しいよ……!」
 愚痴りながらサクラがグレインの前面に展開する。瞬く間に放たれる居合い抜きが実体化したゴーストを真一文字に切り裂いた。
「序盤からあまり飛ばし過ぎるなよ?」
 ユーが一歩引いた立ち位置からワイヤーによる援護を飛ばし不死者を拘束する。
「すまないサクラ殿、ユー殿。神に仇なす不浄なる者を前に抑えが効かなかった!!
 ――この通路の悪性は、呪われし壺より出でるものである! どこかに壺が置かれているはずです!!」
「へへ、なら、悪霊達の相手は私達に任せてください。グレイン様はその壺の対処をお願い致しますぞ!」
 悪霊達の敵視を引き継いだ灰が声をあげる。グレインは「お任せあれ!」と通路の周囲に目を配らせる。
「掌に集中したヒーリングタッチ。なるほど、確かに大きな怪我を治す事などできるわけもない、小さな力ですね」
 擬似神聖を持って悪霊を薙ぎ払う冬佳が、グレインの戦いぶりを観察し言葉を零す。
 あの小さな力では、聞いていた通り擦り傷程度しか直せないかもしれない。
「――けれど、少なくても魔力は確かにあるのです。
 道具を使いこなす、あるいは武器を手にすれば新たな道も見つかるかもしれませんが……」 
 しかし、道中グレインが零した言葉が冬佳の脳裏に過ぎる。
「必要以上の力は競走や争いを生み出す。
 成長の糧となるそれを否定はしないが、私はそれを好ましくは思わぬ。
 神への信仰心。
 それを純然たる力へと変える事こそが、私の理想とする聖職者なのです」
 その言葉から、道具はともかく武器を手にする事はないのだろうな、と感じた。当然、それは自ら力を手にする機会を手放す事であり、己が自論と力を欲する欲求の狭間で思い悩んだ事は察するに余り有るというものだろう。
「――通路の脇、その奥に何か置かれてるぜ」
 クリストファーが透視によって違和感を探り当てる。すぐに反応したグレインが近づいてみると、そこには捨て置かれた壺があった。
「呪われし遺物よ、神の光の導きままに、その悪性を消滅させよ――!」
 グレインが指先に集めた小さな魔力で聖刻を壺に刻みつける。その対応は非常に迅速かつ的確で、なるほど其の力が及ぶ範囲であればこの男は異常なまでに優秀であることがわかる。マルドック司祭ならずとも、グレインを聖職者として大成させたいと考えるはずであろう。
 グレインの対処によって、存在していた悪霊達が霧散する。同時通路が浄化されたかのように穏やかに光を放った。聖なる加護というものだろうか。一つ関門を乗り越えたようだ。
「奥に光ってるのがあるねっ。あれが魔力球って奴なのかな?」
 スティアの言葉にグレインが頷く。
 通路の奥、行き止まりとなった場所に小さな祭壇があり、そこに魔力球が置かれていた。それを手にしたグレインは、「あと三つ。先は長いですな」とどこか焦燥したように言葉を発した。
 イレギュラーズは最奥目指して進んでいく。

●出来る事、出来ない事
 最奥へと進むイレギュラーズ達は、その後二つのチェックポイントにて魔力球を手にする事に成功した。
 多くの悪性に襲われながら、自らの最大限の力を振るったグレインだが、やはりまるで通用しないその力――現実を突きつけられ悔しさに奥歯を噛みしめると、初期の覇気は徐々に萎んでいき、言葉数も少なくなっていた。
「そう気に病む事は無い。
 グレイン、お前さんだってその力で何体か怨霊を浄化しただろう?」
 ゲオルグがそういって気落ちしたグレインの肩を叩く。しかしグレインが覇気なく言葉を零した。
「確かに。ですが、それは全てをお膳立てして頂いたからこその成果。やはり私一人では悪しき魂を神の御許へと送る事もままならず。……悔しさと共に己が無力さを痛感するばかりであります」
「過程は確かに大切だ。それを気に病むこともあるだろう。
 だが、浄化という結果をもたらしたのは間違いなくグレイン、お前さんの力だ。お前さんの魔法が、祈りが、死して尚彷徨える魂を苦しみから救ったのだよ。
 才能は確かに重要かもしれない。お前さん一人では全てが上手くいかないかもしれない。
 だが、奇跡というものを行使するのに何よりも大切なのは、もたらそうとする癒やしに込められた”祈り”なのだと私は思う」
 癒やし手としての力持つゲオルグの真摯な言葉を、グレインは一つ一つ確かめるように自分の中で消化していく。
 才覚を羨むのはすでに通り過ぎた道だ。今一度現実を見せられたとはいえ、それを分かっていて突き進んできた道である。
「……出来る事、そして出来ない事を直視せよ、か」
「誰かのお言葉ですか?」
 リゲルの問いにグレインが頷く。それはマルドック司祭に教えられた言葉と言う。
「今と同じように同輩達との才能の差に思い悩んでいた頃に言われた言葉なのです。それをきっかけに私は自らに出来る事を邁進してきました。
 しかし、そうですね、出来ない事を直視出来ていなかったのでしょう。無理無茶無謀を通そうとしておりました」
 気合いがあればなんでも出来るという者ではない。マルドック司祭の言葉を今一度噛み締め、グレインは前を向く。
「私に出来る事は数少ない。だが、それでも神の教えを伝える事は出来るはずです。
 ええ、そうです。今自分に出来る事をやってみせますとも!!」
「調子が出てきたな。
 とはいえ空回りしないようにな、そら不浄なる者達のお出ましだ」
 ユーがその隻眼を侍らせれば、視界の先に現れる不浄なる者達。
 数はここ一番に多いが、無茶な道理を振り翳さなければ対処可能な数だ。
「ここの対処法はあるの?」
 スティアの問いに、グレインは僅かに微笑みながら答えた。
「最終チェックポイントの前は、疲労した者を襲う物量である。
 故に対処法は唯我武者羅に浄化させるのみよ!!」
「望む所よ。得意分野だもんね」
 サクラがその性根を少しばかり覗かせて武器を構えた。
「負けてられませんな。私の良い所も見てってもらいましょうか! 頑張りますよ私!」
 戦場に華を咲かせる灰が動き出すと同時、悪霊達が襲いかかった。

 狭い通路の洞窟内で、ローテ-ションを組みながら前後衛をスイッチする戦い方は磐石であり、悪霊達に取り囲まれてなお持久戦を可能にしていた。
 当然ながら、敵を引きつける灰は多くの傷を負い一時パンドラを輝かせる瞬間もあったが、ヒーラーの多い今回の構成のおかげもあって、立て直す事に成功する。
 高い防御技術を持つ灰だからこそ、他の被害を出さずにおけたと言えるだろう。
「リゲルくん後ろ!」
「見えているさ! はぁぁ――ッ!」
 サクラとリゲルが流麗のごとく立ち回り、背後からの襲撃にも対応する。
「サクラちゃんやるなぁ! 負けてられないね。
 刮目せよ、私の圧倒的カリスマ力を!」
 カリスマ力がどう状況を変えるのに役立つかはともかくスティアのブレイクフィアーが怨嗟をの声あげる悪霊達を浄化していった。
 そうして冬佳やゲオルグの神聖なる魔法が悪性の強い怨霊を霧散させると、他のチェックポイントと同じように聖なる加護が宿り、浄化されたことを感じた。
「いよいよ最奥ですね。行きましょうか」
 奥へと歩き出す一同。
 そして最奥に辿り着いた面々は、そこに佇む不浄なる魂を見つけた。
「まだ残っていたのか……!」
 武器を構えたイレギュラーズ。その時、グレインが「待った」をかけた。

●神の教えを説く者
「ただの悪性とは感じられぬ。私に任せて欲しい」
 グレインがゆっくりと不浄なる魂へと近づいていく。怯えるように悪性を剥き出しにする魂を前に、グレインは自らの肉体が蝕まれていくのを感じた。
「だめだ、やはり援護を――」「いや、待て」
 飛び出そうとするクリストファーをゲオルグが止める。
「迷える魂よ。行き場を見失い悪性へと穢れようというか。
 案ずるな、神はあらゆる罪をお許しになる。
 懺悔せよ。そして神の威光に導かれるままに、天上へと至れ。全ての穢れは祓われ今一度魂の平穏と、輪廻への道程を歩むが良い」
 ぼんやりと、グレインの右手が光る。優しき接触はゆっくりと不浄なる魂の悪性を浄化していく。
 そうして、澱んだ魂が、穢れを祓われ天上へと還った。そして奥に置かれた祭壇に最後の魔力球が生み出された。
 もし力のみでこの魂を打ち払っていたのならば――きっとこの魔力球は生み出されないのだと、誰もが感じた。
 魔力球を取ろうとすると、天井から水が滴っていることに気づく。洗礼の水だ。
 グレインを始め試験を受けていた面々は、洗礼を受けると試験の終わりを感じた。
 イレギュラーズ達はグレインに労いと賛辞を贈る。
「戦いぶりからもう理解できていると思いますが――
 神が私達に言葉をお与えになったのは、互いを助ける為だと思います。
 何もかもを一人でなそうとはせず、自分の出来る事で人を助け、時に自分の出来ない事を助けて貰う事は神の御心に沿うものだと確信しています」
 サクラの言葉にグレインは大きく頷いて、
「ええ。出来る事と出来ない事を直視し、多くの者と手を取り合い協力する。それはきっと大きな力を生み出すのでしょうね。皆様を見ていてよく分かりました。ありがとう」
「あ、サクラちゃん立派な事言ってるカッコイイ!」
「ちゃかさないの!」
 笑い合う面々の一歩前に出てリゲルが晴れ晴れしい顔つきのグレインと言葉を交わす。
「気高いお志を持つグレイン様ならば、奇跡の力以上に、人々の心を癒し救うことでしょう。
 貴方ならば母国を正しく導いて下さると信じております」
「リゲル殿も。貴方のその実直な剣は天義のみならず、この無辜なる混沌を救うものとなるでしょう。
 その道行きに神のご加護があらんことを。頑張ってください」
 そこにクリストファーが言葉を挟む。
「グレイン修練生もな。
 自分の力だけじゃ難しい時は依頼してくれればまた手伝いにくるよ。道行きに幸多からん事を祈ってるぜ」
「……もし立派になられた際は屑鉄卿っていうすごく格好良い騎士が居たって語り継いでくださいよ、へへ」
 灰が締まりの無い顔でそう言うと、一同は今一度笑い合うのだった。

 こうして才能無き優秀な劣等生の試験は無事に終わりを告げた。
 後の世に『リトルホーリー』と称され数々の偉業を残した聖職者グレインは、このときの記憶を晩年まで語って聞かせていたという――

成否

成功

MVP

サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 狭い通路ないにおける陣形の設定はとても良かったと思います。ローテーションによって被害は可能な限り少なくなりました。
 今回はグレインのキャラクター性もあって戦闘描写は少なめで、グレインとの会話や心情などが多くなりました。
 本当はもっといろいろ描写したかったのです……!

 MVPは『人と協力すること』というマルドック司祭の意図を見事読み当てたサクラさんに贈ります。
 裏設定的には才能がないことで孤立気味だったグレインは自ら孤立することを良しとしていた節もあり……と、マルドック司祭の心配事もありました。
 この依頼を経て手を取り合った人の力を感じたグレインがどうなるかは、リプレイの通り。

依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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