PandoraPartyProject

シナリオ詳細

飽き性令嬢に美味しいお料理を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ある日の夜、ローレットに訪れた君は、珍しい人物を見た。
 蒼い髪を揺らす背中は、貴族風の衣装でありながら、纏う空気はどちらかというと田舎の町娘といった風情がある。
 君が近づいていく気配に気付いたのか、少女が振り返る。
「こんばんは。イレギュラーズの方、ですよね? もしよければ、お話を聞かせていただけませんか?」
 ローレットの受付にて何やら話し込んでいた様子の『蒼の貴族令嬢』テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)は穏やかな笑みを見せた。

 彼女に呼ばれるまま、一つのテーブルを囲んだ君は、視線を投げかける。
「私、今日まで都でいろいろと相談をしていたのですが、それが本日のお昼、良い感じにまとまったのです。それで、相談させてもらったお歴々との仲介をしてくださった方々へお礼を差し上げないといけないのですが」
 そこまで言って、こびりついたような疲労を吐き出すかのようにため息を吐いた。
「面倒く……こほん。建前上、大々的に仲介してくださりありがとう、というわけにもいかず、もっというと高価な物を送ったりするのも面倒ごとにつながりかねないので……ここは一つ、ちょっとしたパーティでも開いて彼らも招待すれば、と思ったのです」
 何やら考える様子を見せる彼女はそこで視線を逆に君へ投げかける。
「ブラウベルク領近辺の料理をただ振舞うのでは、芸もないので、何かこう、珍しいお料理あればと思っていたのです」
「それで、その何かを考えてほしい、と」
「はい! 旅人の方であれば、故郷の珍しい料理とかあるでしょうし、純種でも故郷の脅威度料理のようなものがあると思います。そういった料理を教えていただいたりして、色々と入り混じったパーティであれば、面白そうだなって」
 目を輝かせる彼女の瞳は好奇心が強く、実のところ、ただそれだけでわざわざ来たのではないことは目に見えて分かった。
「本当のところは?」
「毎日毎日、似た料理が振る舞われて、自分で開いた宴でまで食べたくな……んんっ。何でもないですよ。ふふふ」
 一瞬みせたげんなりした表情をすぐに収め、にっこりとテレーゼが微笑んだ。
 貴族然とした仕草と、素の仕草の入り混じった表情のまま、少女はぽんと手を叩く。
「もちろん、報酬は弾みます。本番のパーティまでに少しばかり日がございますので、皆様の方で先に味見も兼ねて小さなパーティを開くのもいいと思うんです」
 そこまで言い終えて、テレーゼはさらさらと何やら書き記す。どうやら、調理で利用する施設の地図のようだ。
「楽しいパーティにしたいのです。どうでしょう?」
 少女の微笑みを受けて、君は故郷の料理を思案する。

GMコメント

こんばんは、春野紅葉です。
さて、お料理教室を開きましょう。

●やること
・テレーゼが主催するパーティで振舞う料理のメニューを考案し、試作品を製作する。
・料理で先にちょっとしたパーティを開く。

●そのほか
基本的にどのような料理でも作れます。
ウォーカーさんでその世界にしかない素材などは比較的近縁の素材を代用することにはなると思われますが、基本的にだいたいの物は揃います。
パーティとは言いますが、事実上、お料理教室のような雰囲気になると思われます。楽しく作って楽しく食べましょう。

●テレーゼについて
 構っていただければ登場しますが、基本的には登場せずになると思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 飽き性令嬢に美味しいお料理を完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年02月04日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
サブリナ・クィンシー(p3p002354)
仮面女皇
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士

リプレイ


(ふむふむ、事情はよくわかった、しかしテレーゼさんは大変そうだな、貴族故に色々とめんどくさい事してるんだろうな……)
 『蒼の貴族令嬢』テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)の方を一瞬だけ見ていた『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)は鍛冶道具【ドバーグ】を活用して良質な調理器具を作製し、それで調理をしようとしていた。
「まあ、俺らが試作料理を作って食べてるときくらいは気楽にいこうぜー?」
「そうですね。嫌でも堅苦しくなりますし、今だけでものんびりといたします」
 サイズが近づいて言えばテレーゼはそう言って笑う。
「テレーズ様、今回のパーティはビュッフェスタイルとするのはいかがでしょう。多彩な料理をお好きなように召し上がっていただくのが最上かと思いまして」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)はろくろを回しながらにテレーゼに提案していた。
「なるほど。ビュッフェ。たしかにそれなら色々と面倒ごとが少なくなりそうです」
 うんうんと頷いた依頼人に寛治は更に、と提案を続けていく。
(相談のお礼に悩んで、パーティの料理に悩んで、貴族は大変だな……テレーゼの役に立つかは分からないけど、料理はそこそこ得意だし頑張るか)
 寛治とテレーゼが話し合いを続けていくのを横目に見ていた『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)は籠に盛りだくさんの野菜たちを見ながら調理順を考えていく。
「楽しいパーティーに美味しい料理は欠かせないからね。いいとも! 饗宴をもたらす悪魔たるこの私が一肌ぬごうじゃないか!」
 『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は自らの面目躍如と準備に取り掛かっていた。
「ぶははっ、コツコツと磨き続けてた腕が鳴るねぇ!」
 こちらも料理人として『和食料理長』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は笑って準備を始めている。
(パーティーに使えそうな珍しい料理ですか……宮廷料理で考えればテレーゼさんの食べている物とさして違いはなさそうですし……)
 少しばかり思案する様子を見せているのは『仮面女皇』サブリナ・クィンシー(p3p002354)である。
 かつては女皇としていた彼女が知るパーティで使えそうな料理は、テレーゼの食べているものとさしたる違いがなさそうに思えた。
(んー……あぁ、アレがありましたね。パーティー向きかと言えば不適切かもしれませんが珍しくはありますし)
 少しばかり思案を続けたサブリナはふと思いついて素材の吟味に動き出した。
「よーし、それじゃあ楽しいパーティーになるようにとっておきのデザートを作るね!」
 『見習いパティシエ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)は素材の吟味をしながらどんな料理にしようかと考えを巡らせる。
「ビュッフェ形式のパーティーにするなら、小さいデザートを数多く作っていろんなものを楽しめるようにしたほうが楽しいよね♪」
 やがてふと思いついたようにそう言って、選び取っていく。
(私みたいな平民が、しかも大したスキルもない私が、貴族様のパーティに出すお料理を作るなんて……! い、い、良いんでしょうか……!!)
 困惑と驚きで慌てていた『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384)はむむっと少し考える。
 お料理を作ってもらえないかという依頼ではあるとはいえ、普段、家で作る所謂家庭料理などは流石に出せるはずもない。
 そんなこんなで色々と考えていたパーシャはふと立ち止まる。
「あっ、そうだ」
 ポンと一つ手を打って、少女は素材を選び始めた。


 各々が食材を選び取り、調理を始めてから少し。
 ポテトは手慣れた手つきで野菜をカットし、一つ、二つと併用できる作業工程をさらりとこなしている。
 ぐつぐつと鍋で煮込んでいる間に、温野菜でサラダを作り、その更にあまりを向こうが透けるほどに薄く加工して乾燥させた物に巻いていく。
 その一方でジャガイモと鶏肉を油で揚げつつも、使わない野菜でまだ他に利用できそうなものを小分けしていく。
「あ、持って来た野菜や果物で、各自使えるものあったら好きに使ってくれ」
 さらさらと手慣れた手つきで調理を進めながら、ポテトは他の者へ食材を差し出した。
 スープ類のいい香りが、漂い始めている。

 サイズはみじん切りにした玉ねぎとパン粉をこね合わせ、更にそこへ豚肉や小さく切り刻んだ筍などの複数の具材を合わせてボウルに入れ、最後にハーブを取り出した。
 そこらへんで自生している物ではなく、かの深緑にて自生する代物だ。
 あまり高級というわけではないにしろ、何となく、緑豊かな自然と魔術の国が齎した物は、そこ等へんの有象無象より良さそうな気がしたのだという。
 ざっと9つほど具材を完成させると、それを事前に作っていた皮に包み込んでいく。
「よし、あとはこれを……」
 そう言いつつ振り返る。視線の先にあるのはこの世に一つしかない――自作した蒸し器である。
 蒸し器の下にハーブを幾つか敷き詰め、その上に9つの肉まんを並べて蓋をした。

 一方、マルベートの選び取ったものは多種の肉であった。
 鶏、牛、馬、羊に、えとせとら。取り寄せられていた肉のうち、生食に適する物のほぼ全てを集めている。
 ほんのりと軽く火を通したり、一口大にまで小さく切り分けていく。
 マルベート自身であればここにさらに――と行きたいところだが、好みの押しつけは宜しくないと自重したらしい。
 ある程度、肉の切り分けを終わらせたマルベートは次に大皿を持ってくると、そこへ小分けしたお肉を次々と乗っけていく。
 形よく、しかし同じ肉同士は隣り合わないように、複雑に入り混じったそれはステンドグラスのようで。
 それらを完成させた後はバージンオリーブオイルと岩塩、ケッパーを散らしてシンプルに味付けを施した。
「ふむ、後は、見た目にもう少し華が欲しいね……」
 とりあえずの完成品を眺めて呟けば、エディブルフラワーの花弁で飾りをつけていく。

 サブリナは水でもち米を炊いている間にタレ作りにかかっていた。
 味噌、たまり醤油、砂糖、みりんを混ぜてペースト状にした上でそこへ更に胡桃と胡麻を混ぜ合わせていく。
 こういう時に役に立つ練達から行商を通じて運ばれてきたらしい機械のおかげで、混ぜ合わせる時間はかなり短縮された。全自動とはいかず、自らの魔力を注入して動かしていたので実質手動だったのは置いておこう。
 炊き終えたもち米を一口大のお団子にしてタレを塗ると、フライパンで軽く焦げ目がつくまで焼いていく。
 それらの一方で、もう一つ。こちらは水ではなくコンソメスープで炊き込んでいく。
 その間にトマトにひき肉を少量混ぜたソースとホワイトソースに鶏肉を混ぜた物を用意すると、炊き終わったもち米に塗りこみ、チーズを振りかけて焼いていく。
「本当は普通のほうは炭火、ドリア風はオーブンで焼くと美味しいのだろうけど……」
 ぽつりとつぶやいて、自分の技術ではそこまでやるのは難しいと少しばかり目を伏せる。

 ミルキィはデザートを作るにあたって、ビュッフェ形式であることを踏まえ、一つ一つの品の大きさはそれほど大きくない物を多く作ることを考えていた。
「ドーナツはプレーンと、チョコでコーティングしたものと、それから……」
 パティシエの本領発揮というべきか、そりゃあもうせっせと効率よく手慣れた様子で一つ一つを作り上げていく。
「プチケーキはイチゴのショートにチョコとモンブラン……」
 幾つもの作り上げられていく商品は、素早さの一方でどれも一つ一つが丁寧に作り上げられている。
 一通りのデザートを完成させたころ合いで、後の食材を見渡して。
「そうだ、プリンとクレープも作ってみよう♪」
 ある素材を通じて作れそうなデザートをまた二つ思い立てば、直ぐに仕事に取り掛かっていく。もちろん、その一方で特製ミルクレープの用意も忘れない。
 しかもその合間合間に材料の細かな分量や注意点までメモしてまとめているのだから、とんでもない仕事量だ。

 思い至ったパーシャはこねこねときじをこねている。
「店のパンの再現はとてもとても出来ませんが、私なりにおいしいパンを焼けるように……!」
 家庭料理で少しばかりかってが違うとはいえ、普段から料理をしているパーシャは丁寧にバランスよく、パン生地作りに余念がない。
 縦長に伸ばした後、型で切り抜いたのは、イワシに天使の羽根のような物が生えた不思議な生き物。
 焼きあがった時に可愛らしくするためか、若干のデフォルメはされているが、造形自体は実に愛らしい。
 それをオーブンで焼いている間、パーシャはちょうど同じようにオーブンを使おうとしているミルキィと一緒にデザート作りの手伝いを始めた。
 少しばかりの時間をおいて、パンの焼き上がりを確認すると、最後にチョコレートで目と鱗を描き加えて。

「本番までお手伝いしていただいちゃって……よろしいのですか?」
「会場のセッティングやフロアの仕切りは私にお任せを」
 話し合いを続けていた寛治はテレーゼから問われてそう答えた。
「ぶははっ、目の前で揚げたり握ったりするのが目で見て楽しいだろ? それに、やっぱり天ぷらと寿司は出来立てが一番だからな!」
 同じように板前法被と和帽子に身を包んだゴリョウが頷き答える。
「では……本番でもお手伝いをお願いします」
 そう言うと依頼人はぺこりと頭を下げた。


 やがて、各々の商品が完成させたイレギュラーズは、会場のリハーサルと言わんばかりに、小さな広場のような場所に移動していた。
 並んだテーブルと、綺麗に整えられた会場は、寛治のプロデュースによるものだ。
「テレーズさん、美味しいから両手でかぶりついちゃいな、パーティだと両手で持って食えそうになさそうだからな」
「あー……そうですね。では……失礼します」
 サイズが出来立て蒸し立てのホカホカと湯気が上がる肉まんをテレーゼに差し出す。
 本番を想ったのかげんなりした様子を見せかけたテレーゼは目を輝かせて肉まんを受け取って、熱そうにしながらぱくりと一口。
 その直後に漏れた熱いという小声と、美味しいという声。
 サイズ自身もその様子を見て止めながら口に運ぶ。
 ホカホカの生地の下、じゅわっと肉汁が口の中に染みわたる。火傷しそうな熱い肉汁と具材の後を追うようにして、ふわりとハーブの香りが鼻に抜ける。
「美味い!」
 一応、味見をしているとはいえ、確信して頷く。飲み込んだ具材がごろりと喉を抜けていった。
 隣を見れば、口の中を火傷したのか、ぐいっと依頼人が水を飲んでいた。

「これは、どう食べればいいのでしょう……」
 綺麗に形作られたカルパッチョを見つめて依頼人が目をぱちくりさせる。
「なに、気にせず取って食べればいいのさ」
 そう言ってマルベートは肉を一枚とり、依頼人と自分、それから寛治の皿にのせる。
「さて、私が手塩にかけて作ったワインの味がどんな素敵なマリアージュを見せてくれるのか、楽しみだよ」
 ちらりと寛治の方を見れば、彼が一口食べて吟味して。
「ライトボディの赤ワインが果実味と肉の旨味を互いに高めあう組み合わせになりましょう」
 ワイングラスへ、静かに注いでいく。
 マルベートもそれを見て自らのワイングラスへ注ぐと、香りを楽しんで口を付けた。
 剥ぎ取った肉を口に入れれば、その食感から感じるに、どうやら牛肉だったようだ。噛み締めた後、マルベートは再び赤ワインに口をつけ、少しだけ頬を綻ばせた。

「これは、お餅ですか?」
 大皿に乗っけて持ってきたサブリナにテレーゼが問いかける。
「ええ……宮廷料理だと普段食べているのとあまり変わらないと思いますし……」
「異国の宮廷料理であれば、それはそれで食べてみたいですけど、これはこれで美味しそうです」
 サブリナの返答にテレーゼも頷いてその後、不思議そうに首を傾げた。
「あれ、こちらは……」
 それは、ドリア風に仕上げた方の五平餅だった。
「これもなんですね!」
「少しだけドリア風にしてみたのです……」
 興味深げに目を輝かせるテレーゼに頷いて、サブリナもそれを取る。
 二人は他愛もない話をしつつ、サブリナ自身が薦める焙じ茶と共にその味を楽しんだ。

「お口に合うでしょうか……?」
 パーシャは緊張しているのか若干、声を震わせながらテレーゼに問いかける。
「もちろん! ふわふわもふもふで、とっても美味しいですよ! こんなに美味しいのなら、本番の人達も喜んでくれると思います。それに、とてもかわいいです」
 テレーゼの答えにほっと胸をなでおろす。
「良かった……エンジェルいわしはかわいいですよね」
 ほっとした後、そのまま頷いて自分もぱくりと一口。
「うん、すごくおいしいよ♪」
 自分も一口、パンを食べたミルキィが頷く。そんな彼女は美味しい紅茶を入れている。
「ポテトさんのスープも一緒に飲むとまた雰囲気が変わるね」
 言いながらポテトの方を向けば、彼女の方も頷いている。
「ああ、可愛くて優しい味だ」
「少し照れますね……ミルキィさんのドーナツもいただきますね」
 照れた表情を浮かべてパーシャはそれを隠すようにもぐりとチョコのコーティングされたドーナツを一口。
 そのまま紅茶を含めば、ただでさえ美味しいドーナツが更に美味しくなった。
 そのまま三人は女子会のような雰囲気で試食会を過ごしていく。
「あ、もし良かったら、持って帰れるもの少しずつ貰っても良いか? せっかくだからお土産にしたいんだ」
「ええ。大丈夫ですよ。さすがに今日作った料理を全てそのまま本番に出すには衛生的に駄目でしょうから。安心してお持ち帰りください」
 微笑んで答えられれば、ありがとうと礼をしてポテトはテーブルから更に分けて持ってきた料理に舌鼓を打つのだった。

「美味しそうです。たしかに、目の前で作ってもらうのはまた別の感じがしますね」
 ゴリョウの前に訪れたテレーゼは目の前で握られる寿司に目を輝かせる。
「ぶははっ、良いマグロが手に入ってるぜ!」
「そういえば、ブラウベルクでもお寿司はめったに食べてないですね……どちらかというと内陸部ですし」
 ちょんと醤油をつけてもぐもぐと食べて、美味しそうに眼を見開いた。
「テレーゼの嬢ちゃんはいけるみたいだが、生魚は駄目だっていう人もいるかもしれねぇし、魚をあぶって出すのも良いだろうな」
「炙り、ですか? それもまた美味しそうな」
 それを聞いたゴリョウがバーナーで火をかけられたハマチを握る。
 炙られたハマチの香りに誘われるように、他のイレギュラーズ達もゴリョウの屋台の元へ集合し、新しい寿司の注文が入り始めた。
「あと個人的には玉子の握りもオススメだな!」
 そう言って片手間に作っていただし巻き卵を使って玉子寿司を九人分作ったゴリョウはそれを全員に渡していく。
 柔らかいだし巻きの出汁が、ご飯と調和して何とも言えぬ心地よい甘みを口の中に満たしていく。
 ゴリョウはその合間に寛治と注ぎあった日本酒に口をつけていく。

 その日一日の命一杯を使ったイレギュラーズ達の試食会は、賑やかなままに終わりを告げていく。
「今年二十歳になられるとか。その時は、ワインで乾杯しましょう」
 終わり際、ふと寛治はテレーゼの方を向いて告げる。
「えぇ、そうですね……そういえば、今年は二十歳になるのでした」
 すっかり忘れていたと言わんばかりに驚いた様子を見せた依頼人はそう言って静かに笑った。

 後日、本番で開かれたパーティは音に聞くイレギュラーズがメニューを提供し、自ら会場で調理する姿を見せたことでちょっとした評判になったとか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

この度は大変遅くなり申し訳ございませんでした。

美味しそうなメニューだらけで感無量でした。

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