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シナリオ詳細

《機竜探訪記》南下するは鎧竜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 冬の鉄帝国の北東部、切り立った山岳が乱立するかの地に、二人の探検家が足を踏み入れていた。
 山岳の一つにぽかりと開いた洞穴の中、がしゃりと音を立ててソレは身体を動かした。
 目覚めたナニカは、そのままゆるりと起き上がる。
『ォォォ』
 欠伸のような何かを残しそれが身体を震わせ、短い首を周囲に巡らせる。
「せ、先生!」
「うむ……拙いな」
 それを遠巻きに眺めていたもこもことした衣装の男、先生と呼ばれた人物はたらりと額に汗をかいた
「逃げるとしよう」
 じりじりと後ずさりしながら、博士はもう一人にそう伝えた。
「わ、分かりました!」
 ――が、しかし。ソレの視線が、博士たちのいる方を見て止める。
「げっ!」
『フォォ』
 ソレの背中にある突起物から噴煙が上がり――やがて小さなミサイルとなって発射された。
 ミサイルは二人を無視して飛んでいき、その後ろにあった岩盤へ激突。爆ぜたミサイルは、そのまま岩盤を木っ端みじんに砕き――二人の退路を塞いでしまう。
「せ、せせせ、先生!」
「あー……うむ」
 慌てた様子のもう一人に対して、博士は落ち着き払っている。
「残念だが、我々はここで死ぬ運命のようだ」
 さらりと告げた言葉に、もう一人が小さな悲鳴を上げた。
 その直後、再び飛んできたミサイルが、二人を粉みじんに吹っ飛ばし――びしゃりと鮮血が暗い洞穴の壁に彩を添えた。


「やぁ、初めまして、イレギュラーズ。私の名前はキュカ。覚えてくれとは言わないが、まぁ、宜しく頼むよ」
 鉄帝に訪れた君達の前に現れた少女がそう言って笑う。
 探検家風の衣装を身にまとった少女は、さっそくと言わんばかりにテーブルの上に資料を広げていく。
「鉄帝の北東部、切り立った山岳地帯があるんだけどね、その辺一帯には云千年前とかの遺産があるんだ。僕の父はその一帯で遺産についての研究をしていた考古学者でね」
 そう言って広げたテーブルの一番下、鉄帝の地図の北東部辺りに円を描く。
「私の父はその辺りの超古代文明が、一つの国を形成していたのだろうという学説を纏めたんだ。学説の裏付けはこれからだったんだけど……最近、証拠集めに出かけた父の所在が分からなくなった」
 淡々と告げた少女は数枚の羊皮紙を君達に差し出した。
「とある世界からの旅人が恐竜と言った存在に比較的近い、けれど致命的に違う存在が、その辺りで多数発見されたんだ」
 羊皮紙に描かれる機械で出来た生物――のような絵を流し見ながら聞く君達に、少女は更に続けていう。
「恐竜なる存在は爬虫類の近縁種、鳥類の先祖と言われてるらしいんだけど、この付近で見つかった生物は、鉄騎種に近い……鋼鉄の肉体を持ってるんだ。なんで、父は機竜種なんて名付けたんだけど、同時に鉄騎種と思われる人々が機竜種と一緒に暮らしている壁画も見つかっててね」
 だからこそ、そういう文明があったのではと、彼は考えたのだという。
「あぁ、ごめん。ついつい話がそれてるね。それで、父がいたであろう場所に調査団が派遣されて――遺跡から這い出てきたであろう機竜種を見つけた。君達にはこれを……討伐してほしい」
 少しだけ苦しそうに、少女が言う。
「この子は、父さんの研究にとってはいい資料になる。けれど、攻撃性をそのままに南進を続けててね。このままじゃあ主要都市へ攻撃しちゃう。そうなる前に、この機竜を討伐したいんだ」
「軍に任せちゃ駄目なのか?」
「……それはそうなんだけど、軍が動いちゃうと、恐らくはこの機竜を木端微塵にしちゃうと思う。機竜をちゃんと殺して、そのうえで遺体から研究を進められるようにするには、軍が動く前に君達が動いてくれた方がいいんだ」
 少数精鋭でいざという時のフットワークが軽く、力任せに潰して終わらせてしまうのではなく、依頼人の意向にはある程度は沿うことができる。
 適当に軍に潰されるよりイレギュラーズを頼った方がいい。そう判断したのだという。
「父の消息が知れない以上、僕は父の研究を引き継ぎたい。だから――頼む」
「その機竜ってのはどれか分かってるのか?」
 君達が問えば、少女は頷いて、羊皮紙の中から一枚を抜き出し、全員に見えるように示す。
「アーマークラッド級と名付けられた、背中部分が鎧のようになった四足歩行の機竜だよ。属類の共通点として足がだいぶ遅いんだけど、その代わり、耐久性能が高くてね。調査団によると、砲門みたいなものも見えたらしい」
 それ以外は分からない。キュカはそういうと申し訳なさそうに視線を下げた。

GMコメント

こんばんは、春野紅葉です。

そこそこサイズがある動物系ロボットっていいよね……というのはさておき、さっそく補足事項です。

●オーダー
南下しているアーマークラッド級機竜を出来る限り破片やパーツなどを残したまま破壊する。

●アーマークラッド級機竜
・形状
 頭部の先から尻尾の先まで背面をずらりと鎧のような重装甲で覆われた四足歩行の生物。
 比較的平べったい形状をしていて、背中には複数の砲門を所持しています。
 比較的鈍重ですが、イレギュラーズとのサイズ差があるので機動力的には並です。
 総じて高い耐久性能と射程距離、そこそこの物攻を持ち、半面、回避や反応などは低くなっています。

・スキルなど
【行動演算】
自付与 命中、CT
【連装ミサイル】
物遠単 威力中
【五連装扇状弾】
物遠扇 威力中
【全砲門一斉射】
物自域 威力特大 シナリオ中一度限り
【ハンマーヘッド】
物至単体 威力中

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 《機竜探訪記》南下するは鎧竜完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月03日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ


 雪原をソレは歩んでいた。微かな地響きが足元から伝わってくる。
 霜柱のようになった草が、かすかな音を立てて折れていく。
「ああいうきかい? っていうの? 武器とかであったり鉄騎種の人の身体にくっついてたりするけど、私の世界になかったからよくわかんない」
 まだ少し距離のある敵影を眺めながらぽつりとつぶやいたのは『クリムゾンティアラー』
ロザリエル・インヘルト(p3p000015)である。
「中身は生き物らしいけど。まあ、人間が使うちゃちな鎧とかと似たようなもんでしょ。叩けば壊れるのだわ!」
「機竜の破壊、という事ですが……。鋼鉄の肉体を持つ『生物』なのですよね。できれば命を奪うことなく破壊行為を止めて貰いたいのですが……」
 そこまで言って、少しだけ黙するのは『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)だ。
(武器を破壊しつつ、生命維持だけはと願うのはエゴでしょうか)
 そう考えつつも、納得できなくともそうはいかないことは分かる。
(全然知らなかったけれど、ゼシュテルに機竜なんて居たのですわねー)
 聖句が刻まれた魔術戦用メイスを握り『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は彼方に見える影を見ながら考える。
(研究者のロマン……はよく分からないけれど、町を襲う可能性があると聞いては放っておけませんわ。私たちの手で決着を付けましょう!)
 雪原を征く機竜に、若き司祭は静かに視線を向ける。
 そんな機竜に興味津々なのは『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)である。
「あの武器類。上手く解析できれば、とても良い重火器を開発できそうです――」
 目をキラリと輝かせる。数々の砲門を携えた敵の姿を眺めて、鶫の尻尾は期待する気持ちを反映してゆらりと動く。
「凄いな……本当に動いてる。子供の頃、似たような模型を組み立てた事があるよ」
 敵に向けて『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)は懐かしむような視線を投げる。
「あの頃、本物が目の前にいたらなんて想像をしてたけど……実際に目にするとすごい迫力だね」
 関心さえ含みながらそう呟く。
(かなり厳ついのが来やがったな……ま、仕事だし、やるだけはやってみるが)
 小柄な体格には不釣り合いな巨大な両刃の斧を携えて『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003)は敵のいかにもな鋭角の頭部を見る。
「大きいですわねー。ちょっとした小島ぐらいはございますわよー」
 ゆるりと進む機竜に対して、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はいつもの柔和な様子を崩さない。
 しかし、その内心では目の前に存在する機竜を明確に脅威だと認識している。
「貴方も悪いことをしているつもりはないのでしょうが……ごめんなさいね」
 静かに盾を構え、ユゥリアリアは機竜に視線を向けた。
「魔法騎士セララ参上! 皆の平和はボクが守る!」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)は両手に聖剣を静かに構え、悠然と機竜に向けて高らかに宣言した。
『フォオォォ!!』
 応えるように機竜が雄叫びらしきものを上げる。それが、開戦の合図となった。


 セララは大地を蹴り飛ばすようにして走り出すと、そのまま『フェンリル』のカードを聖剣にインストールする。
 粉雪が舞い、セララの衣装が白く変質すれば、雪原に交じるようにして機竜の側面へ回り込む。そのまま脚部へと双剣による絶対零度の剣閃を叩きこむ。
 体勢こそ崩せなかったものの、一瞬、その瞳がぶれたような気がした。
「近くで見ると本当に大きいね……!」
 練達上位式で作り上げた自分にそっくりの式神に機竜への注意を引かせている間、疾風のごとく駆け抜け、機竜に向けて一太刀を振り抜いた。
「そういえばあまり壊しちゃだめなんだったわ。けど要は人間の身体をきれいに残したまま仕留めるのと同じ要領ってことね!」
 ロザリエルはハッと思い出すと、静かに機竜へ近づけば、その脚部に手を触れる。
 掌から機械の身体が内部へと潜り込んだソレは、機竜の体内にて音を立てて破裂する。
 その直後、肉体の内側から削り取るようにして、荊槍が極彩色のエネルギーを爆ぜて花を咲かせた。
 衝撃に微かな傷を負いつつも、妖花は爆風に桃色の髪を揺らした。
『ォォォオオ!?』
 花が咲いた機竜が痛みを感じたように声を上げ、静かな眼差しのようなナニカをぎろりとロザリエルに向ける。
 青い輝きを宿す機竜の目が、一度輝き、赤く変わった。
 その直後、バチバチと音を立てながら、いかにも頑丈そうな頭部をロザリエルの方へ向けてつきこんでくる。
「危ないですよー」
 そう言ってのんびりとした様子のままで頭部の振り下ろしに割り込んだのはユゥリアリアだ。
 防御態勢を整えたユゥリアリアの超重量の大盾が、巨大な被りとぶつかり合う。
 ガンという音と共に受けた衝撃は、鉄壁の護りに努める歌姫に凄まじい超重量をもたらした。
「皆、お願いします――」
 機竜の赤の瞳と視線を合わせながら、ユゥリアリアはそれでもいつも通りの調子を崩さない。
 ミーナはユゥリアリアの様子を見ながら他の前衛メンバーがいる場所へ走り抜ける。
 そのまま脚部へと接近すれば、その手に凍えるような殺意を宿し、そのまま敵へ触れる。
 敵の動きに乱れは見えず、しかし、セララの斬撃に加えて一部が凍結し始めていた。
 クラリーチェは動き出した前衛の後ろで、静かに自らの神秘性を高め、対象へ向けて簡易な封印式を施していく。
 対して、機竜はシュッと音を立てて上記と共に纏わりつかんとしていた術式を払う。どうやら、抵抗力を含めた耐久性能は高いらしい。
 ヴァレーリヤはやや後ろから機竜を眺めながら徐々に立ち位置を変えていく。
 目を閉じ、メイスを構えると、真っすぐに機竜に向けるようにして掲げる。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
 目を閉じて集中し、紡ぐは聖歌の節。轟と紅蓮の炎がメイスの先端へと渦を巻いて、炎が吹き上がる。
 憐れみの焔は、緩やかにメイスを振るい、そのまま思いっきり振り下ろす。
 雪原の雪が瞬く間に溶け、抉れていく。炎は鞭がしなるような動きを見せながら一直線に機竜へとぶちまけられた。
 業火が機竜の身体を焼き払う。強烈な炎は装甲にいくつか溶けたような痕を残して消えていった。
 鶫は機竜を射程に捉えると天梔弓を構える。名前こそ弓ではあるが、鶫の身長を遥かに超える全長2.5mの長大な単発装填式電磁噴射砲である。
 鶫は静かに集中を重ねながら、砲弾を装填する。それは一撃にかなりの量のマナを消費する代物だ。
「あれだけの様相です。使うエネルギーはかなり大きい筈――ならば、熱の管理も相応にシビアでは?」
 そう思考した鶫は、徐々に移動しつつ装填した弾丸を撃ち出す準備を整えていく。

 セララは機竜に凍結の兆候を見て取ると、聖剣に力を籠める。そのまま脚部、特に凍り付いている部分に向けて剣を躍らせる。
「見えた――!」
 ラグナロクを大上段より振り下ろすと共に、ライトブリンガーを薙ぐようにして払えば、聖剣の輝きが十字の軌跡を描く。
 機竜が衝撃に悲鳴を上げ、視線をセララの方へ。ユゥリアリアはそれに気づくと、機竜とセララの間に割り込むようにして場所を改める。
 ミーナは死を呼ぶ大斧を引くようにして持つと、身体ごと体重を乗せ、重心もろともに機竜の脚部へ撃ち込んだ。その仕草は、斧を振るうというよりももっと別の武器を振るうようで。
 脚部に炸裂した瞬間、不可視の刃が機竜の装甲の内側、肉体すら超えて、その魂へと突き立つ。
『フォォ!!』
 悲鳴のような何かを上げた機竜の声と共に、機械が動きはじめる音がした。上を見れば、機竜の背中にあるミサイルポッドが音を立てながら動き、がちゃんと動きを止め、噴煙と共に発射された。
 狙いを付けられたのはヴァレーリヤだ。
「行きますわー!」
 真っすぐに飛んできたソレに対して、ヴァレーリヤは魔術戦用メイスを握ると、タイミングを合わせてフルスイング。
 破砕の音の直後、砕け散った破片がヴァレーリヤの司祭服に土埃と金属片を刻み込んだ。
 その直後に飛来したもう一つのミサイルに対してもフルスイングを叩きこもうと試みるが、今度は少しばかり内側が過ぎた。
 破砕し損ねた部分が爆風と共にヴァレーリヤの身体を大きく傷つける。ヴァレーリヤは傷ついた自らにメガ・ヒールをかけていく。
「セララさん!」
 ユゥリアリアは前衛で剣を閃かせるセララへ告げると、そのまま機竜を見上げた。
「大人しく……私を狙っていてください」
 名乗り口上を上げたユゥリアリアは機竜の顎に向けて尋常ならざるサイズの鎗を叩きつけ、注意を自らへ向ける。
 機竜の目が、ユゥリアリアへ向いた。
「ぶち抜いてやるのだわ――!」
 ロザリエルは自らの周囲へ荊を築き上げると、そのままそれを敵に向けてぶちまける。その衝撃が機竜の演算処理能力を阻害した。
「申し訳ないけど、このまま進ませるわけにはいかないんだ」
 威降は左手を握ると、そのまま思いっきり機竜の脚部へと叩き込む。叩き込まれた左手から洩れた力が、機竜の重装甲を貫いて真っすぐに芯に響いていく。
「発射準備完了。照準固定――迦具土、発射します! 気を付けて!」
 密かに敵の後方へと移動し終えていた鶫の声が凛と戦場を貫いた。
 彼女の目は、温度視覚と超視力の併用による敵の弱点が手に取るようにわかるようになっていた。
 その直後、バチバチと音を立て、天梔弓の砲口にエネルギーが収束していく。
 ――轟と音が爆ぜた。
 強烈な反動を受けながら鶫が放った一撃は、機竜の後ろ脚へと着弾すると、一瞬の間。
 刹那――機竜の後ろ脚が一瞬で消滅する。
『ォォォ』
 雄叫びと共に、機竜の身体ががくりと横に沈んでいく。
『ルゥォォオオオ!!!!』
 怒り、憎しみ、悲痛、あらゆる感情の入り混じったような声が、機竜から響く。
 その直後――機竜の身体中に存在する砲門という砲門が口を開く。
「来る!」
 声と身体の動き、どちらが速かっただろうか。
 機竜の身体を掻き消すような異常な量の噴煙と共に、彼の機竜が持つすべての兵器が、一気にぶちまけられた。
 爆風が、ミサイルが、機竜を起点とした領域を抉り取っていく。
 クラリーチェはその爆風を見て、静かに敵を見る。祈りの言の葉と共に放たれた、再びの簡易封印術式が、今度は機竜の肉体に絡みつき、その動きを停止させていく。
「――これ以上は、させません」
 静かに、修道女が漏らした言葉は、どこか重く。


 戦場のど真ん中の形状は様変わりしていた。全砲門一斉射はただその一撃で戦場のど真ん中にクレーターを作り上げた。
 一斉射に巻き込まれた後、何とか大勢の立て直しを完成させたイレギュラーズは、数人が既にパンドラの箱をこじ開けている。
 ユゥリアリアは再び前衛に出ると、影解きの氷面鏡を用いて自分が受けている傷を動きのとれない機竜へと反射させていた。
「……もうすぐ倒せそう?」
 セララは聖剣に魔力で光刃を形成する。
 激闘を繰り広げていた機竜だが、既に半身の足は砕け散り、大地へと落ちている。
 心なしか、見える敵の目の輝きも薄いように思えた。
「そう見えるね」
 威降は頷けば、少しだけ後ろに下がる。
「長かったな」
 ミーナはセララが光刃を閃かせて剣を叩き込んだのに続くようにしてセララが斬った場所を思いっきり蹴り飛ばす。
「あの子もう動けないでしょう」
 クラリーチェは黒の囀りによる呪縛を受けて以降、動きを緩めた機竜を見て一つ息を吐いた。
「えぇ……」
 ヴァレーリヤも頷いて少しだけ構えを解く。彼女の修道服は幾度となく受けた攻撃でかなりの部分が破れている。
「狙うのは動力の伝達経路……動力炉を無傷で確保できるかもしれませんし」
 そう言った鶫の炸裂衝撃弾が静かに機竜の頭部辺りへ突き進み、爆ぜた。
『コォォ』
 微かに聞こえた機竜の声が後ろに切れるように消えた後、静かにその身体が大地へ崩れていった。

 完全に動きを停止した機竜を中心に、少しばかりイレギュラーズは様子を確かめて、やがて完全な機能停止を確認する。
(もしかしたら掘り起こされずに静かに眠っていたかったのかもしれません……)
 沈黙した機竜を眺めて、クラリーチェは静かに考えていた。
 その横でユゥリアリアは静かに目を閉じて機竜に弔いの言の葉を歌う。


「いや、すごい! まさかここまで機能が残ってるなんて!」
 報告すれば、自ら機竜の元へ現れた。目を輝かせ、機竜の様子を眺め、何やら装甲や装備を調べた後、小さな声でぶつぶつと思案していた彼女は、その後、イレギュラーズに振り替える。
「流石は音に聞くイレギュラーズだ。これならばきっと、父の研究を進められるだろう。父が見つからないのは仕方がないが……生きていればきっと、再会した時このことを喜んでくれるはずだ」
 キュカと名乗った少女は君達に頭を下げる。
「感謝する! いや、本当にすごい。もっとこう壊れていても不思議ではなかった」
 うんうんと頷いて、キュカはそう言い切った。
「またいつか、君達に仕事を頼むよ。そうだね――例えば、遺跡に入る時とか」
 そこまで言うと、キュカは研究員らしき人物が迂闊に触ろうとするのを制止しに走っていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

大変遅くなり、誠に申し訳ございません。
楽しんでいただければ幸いです。

実を言うと、まさかここまで防無持ちの方が集結されると思ってませんでした。

お見事です。

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