シナリオ詳細
≪ガリウムマン≫科学合成魔薬slow
オープニング
●善意は毎夜を駆ける
ゼシュテル鉄帝国の片隅に、その町はある。
薬品臭い紫色の煙が空を覆い、遠くに響くサイレント重い鉄の音。
いくつも立ち並ぶ背の高い建物群は、年代の古さと老朽から過去の栄光とそれがもう戻らないことを物語っている。
ここは栄光を無くした町。
古代遺産の発掘によって栄えたのもずっと昔。輝くものは全て掘り尽くし。穴と浮浪者と廃棄物だけが残る町。
鉄帝の貧困町、プアメタル。
町は今日も、悪の煙が舞い上がる。
裏路地に逃げ込んだ少年を、がらの悪い男たちが追い詰めている。
サングラスを外す男の目には、人間とは思えない青白い光が宿っていた。
「金が払えねえならヤクはやれねえ。ジョーシキだよな坊主」
男の低い声に、少年はかたかたと指を振るわせる。
助けを呼ぶ声すらあげられぬ少年の静かなる悲鳴を、しかし『彼』は聞きつけた。
「そこまでだ!」
狭いビルとビルの間をジグザグに跳ねるように飛び降りてきた銀色のシルエット。
少年と男たちの間に着地したそれは、青と赤のレイラインを身体に走らせた。
彼の威圧的な様子に男たちは思わず武器を抜く。
「てめえ――『ガリウムマン』。自警団か」
「暴力も恐喝も、力ある者の特権だ。責めはすまい。ゆえに、要求をしよう」
銀色の古代強化外骨格を装備した戦士。ガリウムマンはぎらりと目を光らせた。「武器をしまって、家へ帰りたまえ!」
「断わると言ったら?」
「実力を行使するまで!」
男たちの抜いた銃が引き金を作動させるよりも早く、ガリウムマンの手刀は彼らの手首と首筋を打っていた。
武器を取り落とし、後じさりする男たち。
が、そんな中で――。
ガリウムマンの高速手刀を片手でキャッチした男がいた。
あの、目の青く光る男だ。
「止まって見えるぜ、なんとかマン」
「――ダイオード・ビーム」
至近距離で放つ赤と青の光線。
しかし男はそれを紙一重でかわす。遠いビルの今や用をなさぬ酒場看板が焼き付くように破壊される。
直後男はガリウムマンの胸に掌打を打ち込んだ。
激しく吹き飛ばされるガリウムマン。
スクラップの中に突っ込んだガリウムマンは、震える身体をなんとか起こして相手をにらんだ。
「これほどの力……青い目……まさか……!」
男はサングラスをかけなおすと、ポケットから取り出したピルケースから青白いカプセル錠剤を取り出し、一粒だけ飲み込んだ。
「フン。首を突っ込むな。お前程度じゃなにもできねえよ」
男は少年の襟首を掴むと、抵抗する彼を殴って眠らせ、肩に担いで去って行った。
●科学合成魔薬『slow』
ボアボードラン司令と名乗る人物は、鉄帝のスラム街プアメタルにおける自警団。そのリーダー的存在であった。
彼にイレギュラーズたちを引き合わせた『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、青い錠剤がうつった写真を一枚、テーブルに置いた。
「『slow』っていうクスリさ。魔術と科学の融合によって作られた薬品で、脳のクロック数を一定時間引き上げると言われてる」
どうやらショウ本来の仕事。情報屋の仕事として、今この場所にいるようだ。
そしてここからは、ローレットメンバーとしての仕事。
イレギュラーズの斡旋である。
ボアボードラン司令は頷き、集まったイレギュラーズたちを見た。
「君たちを呼んだのは他でもない。この『slow』を売りさばいている売人グループを倒し、捕まえる作業を依頼するためだ」
あぶない薬の販売。それは一部ウォーカーから見れば恐ろしい重罪だ。
しかし……。
「この国で、いやこの町では違法にあたらない。魔術も薬品も、使用するのは個人の自由だ」
怪我を負ったガリウムマンが部屋の奥から姿を現わし、イレギュラーズたちへと頷いた。中には面識のある者もいるのだろう。
「薬を売るのが悪いとは言わない。それを必要とする者もいるだろう。だが、知らぬ者に売りつけ、その依存性を利用して金を巻き上げ続けることを我々は許さない。実力をもって、その行動を停止させるまでだ」
包帯をとりはらい、ガリウムマンは握手をすべく手を差し出す。
「調査と戦闘を手伝って貰いたい。他ならぬ君たちなら、信じて任せることができる」
- ≪ガリウムマン≫科学合成魔薬slow完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年01月24日 21時25分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●コンテナミーティング
一棟サイズのコンテナハウスの中は寒く狭く、九人入るのがやっとという有様だ。
火をたくわけにもいかないというので、皆厚着をしてパイプ椅子に座っている。
「確認するが、今回の目的は『slow』製造、および保管をしているアジトを見つけ出し襲撃することだ」
slowは魔薬と呼ばれる薬品で、戦士の強化を目的に開発されたものと言われている。
しかし使用中の多幸感や後の強い依存性から製造が止まり、今は多幸感を得るための薬品として製造されていた。
「薬品を作るのも使うのも自由だ。個人の好きにすればいい。だが――」
「ああ。何も知らねえ奴を薬漬けにして金を巻き上げるってやり方が気に入らねえな。こんな連中はぶっ潰すに限るぜ」
机に肘をつき、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)がいらついた様子で歯噛みした。
「人の善悪正邪の基準など個人の勝手と、私も思うけど。確かに知らない者から搾取するのは気に入らないね。そういう連中には痛い目をみてもらわないと」
『天薙ぐ虹芒』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)はそう言って、ホワイトボードの横に立つガリウムマンを見た。
電光鉄人ガリウムマン。全身を覆う金属スーツの中身がいかなる人物かは分からないが、この鉄帝の世において『信念に基づいて実力を行使する』という生き方を選んだ男なのは間違いない。
ぎしりとパイプ椅子の背もたれによりかかる『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)。
「クスリね。そういう手段もあるとは思うけど、最初から鍛練もせず依存してはね」
混沌世界は多くの人種が入り交じり、多くの世界の住民が入り込んでいる。
その結果文化や倫理観が混在し、善悪を決めるのが難しいことが多い。
力の強い方が正しいというスラムのシステムは、ある意味それを明快にしてくれた。
「依存性のある強化薬ですかー……」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は手元を見ながら考え事をしていた。
土地によっては法規制されそうな響きだが、案外どこかの闇市を巡れば出てきそうな気もする。特に鉄帝スラムには、こういった品があちこちに出回っているのだろう。
「やれやれ、馬鹿な輩はどこにでもおるものだな」
色々な部分をはぶいて呟く『鳳凰』エリシア(p3p006057)。
「わかっている。我の力を見せてやろう」
「ああ、期待している」
ガリウムマンがそれに頷き、強く拳を握った。
噂に寄れば、ガリウムマンは『相手を殺さない』というルールをもって戦っているという。それを誰かに強制したことはないとも、聞いた。
(時には悪業も辞さぬ忍びの拙者とは相容れぬが信条に掛ける思いの強さは同じ……)
『黒耀の鴉』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は心の中で呟いた。
「拙者も負けてはおられぬでござる」
「ガリウムマンよ、この我が来たからには大船に乗った気持ちでいるがいい!」
『爆走爆炎爆砕流』ガーグムド(p3p001606)が肉体を誇張するポーズをとって立ち上がった。
「我は……ヴォルケイノマン!」
「頼むぞ、ヴォルケイノマン!」
「とにかく、情報を集めないことには始まりません。まずは聞き込み調査デス!」
空気に感化されたのか元から積極的なのか、『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)もがしんと拳を打ち鳴らし、椅子を蹴るように立ち上がった。
行動が結果を生む。それもまた、鉄帝スラムのルールなのだという。
鉄帝スラム、プアメタル。
悪い意味で力に支配されたこの町にも、子供たちは暮らしている。
彼らは日の当たる子供たちとは違って常に強かだ。純真さ、素直さ、そして弱さを……彼らは、生まれたときに捨てたかのようだった。
リュカシスはそんな子供たちに接触し、slowの噂を探ることにした。
「キャンディだけか? 情報が知りたきゃ金をよこせよ」
そんなことを言うすれた少年に、リュカシスは弱った顔をした。
「なんだよ、おまえ、こういう場所初めてなのか? ……仕方ねえな」
少年は頭をがりがりとかいてから『ついてこい』と言った。
案内されたのは下水道の一角だった。
膝を抱えて震えている大人がひとり。
「ベンさんって俺らは呼んでる。そのslowって薬の中毒で今はこんなさ」
今はという表現に、昔はこうでなかったという意味が含まれていたが、リュカシスはそれを深く問わなかった。
「薬俺が教えられるのはこのくらいだ。ベンさんなら何か知ってるかもな」
リュカシスがslow中毒者から聞いたごく断片的な情報をもとに、メリルナートとエリシアは裏通りへと入っていった。
闇娼館ともいうべき、表に開かれていない怪しい通りだ。
女たちは肌を露出させ、バックについている暴力的なグループを武器に互いに縄張りを取り合っていた。
ただ立ち入っただけでは、肉食動物のえさ場に潜り込んだ小動物のように弾かれてしまうだろう。
なので、手順を踏むのだ。
「余り我を怒らせるなよ? 貴様ごとき灰にするのは造作もないのだ」
手の中に炎を作って見せ、すごみをきかせるエリシア。
アロハシャツにサングラスというやせた男は手にいくらかのコインを乗せたまま、ひきつった笑いで数歩後じさりした。
「ハハハ、お嬢さんそんな、冗談ですよ。これで充分」
男は女衒といって、娼婦を売ることをなりわいとしていた。彼の紹介を通す形で、指定した特徴をもつ男にメリルナートを近づけさせようという考えである。
そうすれば怪しまれることはない。滅多なことがあっても、エリシアが乗り込むことで対処できるという寸法だった。
「あの男だ」
エリシアはメモを片手に、メリルナートへ目配せした。
聞き込み調査とおとり調査の中間。
メリルナートは僅かな手がかりから掴んだ売人らしき男に接触し、slowという薬があること、試してみたいのだということを遠回しに伝えた。
ただ接触するのと大きく違うのは、今現在メリルナートの肉体と行動に価値が生まれているということだ。相手はそれを買うほど価値を認めており、できるならそれを高めたいと考えている。そのための誘惑である。
slowは自警団が動くほどこのスラム街に出回っている薬だ。頼めば売ってくれる程度には、手に入れるのは容易だった。
けれど今すぐにと言うわけにはいかない。どこに行けば手に入るのか、その情報だけを、まずは獲得した。
同じ人間を連続で囮にするのは危険だ。
接触する時間が長いほど発覚のリスクがあがる上、イエローサインが出た時点でマークされてしまう恐れもある。
そしてある程度絞ることが出来た所で、数を打つことでヒット率を高めるのだ。
ガーグムドは『薬の噂を聞きつけた』という風に、薬が取引されているという場所へとやってきていた。
売人に、ではなく、買いに来た人間に声をかけるのがここでは重要だ。
ガーグムドは目を血走らせ、闘技場で連戦続きなのだという愚痴をこぼした。体力を増強させる『あぶないくすり』などを頻繁に服用したことを暗に語り、より強力な薬がないかと尋ねていく。
「おい兄ちゃん、それならいいもんがあるぜ。金があるなら譲ってやるよ。初回割引を効かせたっていい。どうだ、そこのあんたもかい?」
自然に話に加わったのは、咲耶であった。
「ラドバウで勝つ為に薬が欲しいんだ。この国は力こそ全て、可能なモノは試していきたいからね」
売人からすれば、薬が売れること自体にデメリットはない。
自分があとをつけられたり、相手に根掘り葉掘り聞かれることさえなければいいのだ。
「しかし、最近の薬の売り上げはどうだい?話によると良く売れているそうじゃないか。羨ましいねぇ。良い酒場とかあれば私にも教えて欲しいんだけどね」
咲耶はあくまで世間話の一環として、自分が相手にとって無害であることを示そうとしているかのように会話をもっていった。
しかし本当に獲得したいのは、相手の個人情報である。
売人の行動範囲を、間接的に探るのだ。
売人は必ず製造元とつながっている。
直でつながっていることもあれば、どこかで受け渡しが行なわれることもある。今回の広まり方からして、おそらくは後者。
売人をまずは尾行し、途中で接触した薬の受け渡し人へ尾行をシフトする。その際売人の方を見逃さないために、複数の尾行をつけ分散させる必要がある。
そのための張り込みにあたっていたのはジェイク、ェクセレリァス、鈴音の三人だった。
ェクセレリァスは売人の一人を、屋根などの影に隠れるようにして尾行した。
あまり注意深い人物ではなかったのか、警戒を高められることなく薬の受け渡し現場を発見。そこからはジェイクへとバトンタッチした。
ジェイクはメンバーの中でも特に尾行に適していた。
鼻がきくうえ、足音を消せる。死の危険を察知する能力にも優れているため、危ない場所にうっかり踏み込みにくい。
彼は目で相手を追うことをあえてせず、臭いの痕跡をたどるようにして対象を尾行していった。
そして……。
(あそこがアジト……ってとこか)
一端の目星をつけ、スマートにその場を去ったのだった。
アジトらしき場所を見つけたからと言って即座に踏み込むのは早計だ。
その場所が本当にアジトなのか。薬品が大量に保管されているのか。関係者、特にトップにあたる人物が出入りしており、襲撃時に確実にそこにいる保証ができるか。
そういった部分を押さえる必要があった。
役目を任されたのは鈴音だ。アジトらしき場所に数日間通い、様子を観察する。
殺気を完全に殺した鈴音に警戒するものは少なく、見つかっても流れ者のふりをしてやりすごすことができた。
そして、数日の記録によってついに。
「確認、完了」
襲撃の手はずが、完全に整った。
●逃げるが勝ち
「本当に、その作戦でいいのか?」
襲撃前、アジトへ徒歩で向かうイレギュラーズたち。
その中に混じり、ガリウムマンは問いかけた。
「ああ。奴らが知恵の回る連中じゃなければ引っかかるはずだ」
ガーグムドの説明した作戦は、敵がslowを服用して強化状態になっている間全員で逃げ回るというものであった。
それを聞いたガリウムマンは、暫く考えてから提案を加えてきた。
「連中はこの辺りの地理にかなり詳しい筈だ。まとまって逃げれば回り込まれる危険がある。逃走時は分散すべきだろう。また相手が手出しできないほどの速度で逃げれば、薬の効果時間を稼ごうとしていることに気づかれてしまう。アジトに籠もって籠城されればかえって不利になる。ある程度は戦闘を交えながら逃げ続けるようにしてみないか」
どのみち、このごみごみした町中で引き打ちをし続けるのは無理がある。
「100秒間逃げ切れれば私たちの勝ち。追いつかれれば覚悟を決めろ、ということだな。わかった」
「それじゃあ、まずは景気よく行ってみるか」
ジェイクは大口径の拳銃を、エリシアは真っ赤な炎を、ェクセレリァスは対神波動砲を、そしてガリウムマンはガントレットをそれぞれ構えた。
スッと手を翳し、合図を送る鈴音。
「今!」
彼らの一斉砲撃がアジトの扉を外から破壊する。
激しい物音に気づいた売人たちが飛び出し、拳銃を乱射してくる。
慣れた手つきでslowを摂取しているあたり、こうした襲撃を受けるのは初めてではないのだろう。
「あんた達が町でウワサの薬に頼るしかないクソ弱い連中か。ザコの集まりって評判だよ。そんなんでボクらに勝てるならかかって来なよ!」
リュカシスは相手を馬鹿にする文句を言い放つと、アジトから見て右側へと走って逃げ始めた。一緒に逃げ出すジェイクとガリウムマン。
一方で咲耶も売人たちを挑発するように手招きすると、今度は左側へと走り出す。つきそうように逃げる鈴音とェクセレリァス。
「お前らは連中を終え。俺はこいつらだ。俺らに喧嘩売ったんだ。逃がさねえぞ」
ポケットから取り出したピルケースより青白いカプセル錠剤を取り出すと、男は目を青く光らせた。
「どうぞ、捕まえられるものならー」
メリルナートは残る売人たちを引きつけるようにして、エリシアとガーグムドをつれて走り出した。
それぞれ三つに分かれ、待ちの中を走り出す。
裏路地を走るリュカシス。
大きなゴミ箱を蹴飛ばして、ジェイクは後ろ向きに銃を乱射。
飛来する銃弾をかわし、売人が拳銃で反撃してくる。
肩に銃弾をくらい、歯を食いしばるジェイク。
「走るのをやめるな。もうすぐだ!」
ガリウムマンが先行し、角を曲がる。
追いかけて角を曲がろうとした売人たちに、角で待ち構えていたリュカシスのパンチが炸裂した。
続けざまに手刀を繰り出すガリウムマン。
「今デス!」
リュカシスとガリウムマンはそれぞれ防御をかため、ジェイクの制圧射撃が浴びせられた。
高い建物に挟まれた通り。上階にはロープがわたされ、無数の洗濯物が下がっている。
そんな中を、咲耶とェクセレリァス、そして鈴音たちは走っていた。
「回り込まれてない?」
「追ってきてる人数そのままだ。心配ないよ」
鈴音はちらりと後ろを振り返り、打ち込まれる銃弾に対してヒールオーダーでカウンターヒールを仕掛けた。
ポケットから取り出す懐中時計。
「カウントダウン、5、4――」
売人たちはそろそろ鈴音たちの狙いに気づいた頃だろう。
だがこうして分散し、アジトから遠くへ離れてしまった今となっては、引き返すという選択肢はとりづらい。
「今だ!」
鈴音のコールに応じてきゅっとターンをかける咲耶。
同じくターンしたェクセレリァス。『ホーミングレーザー・虹雷』を発射し、先頭の売人を集中攻撃した。
薬の効果がきれてしまえばこっちのものだ。咲耶は飛びかかり、相手の顔面を蹴りつける。
残るはメリルナート組。
高い建物の中へと駆け込むと、ぐるぐると階段を駆け上っていく。
こうした場所では射撃もしづらい。メリルナートなりの機転である。
「そろそろですわー」
メリルナートはフロアの一つに飛び込み、驚いて飛び起きる住民に小さくごめんなさいのサインを出してからターン。
追いかけて部屋へ突入しようとした売人たちめがけ、氷の盾を顕現、反射した。
光にやられた売人たちに、壁際に張り付くようにして待ち構えていたガーグムドとエリシアがそれぞれ襲いかかる。
エリシアの放つ豪炎が売人を蹴り飛ばし、組み付いたガーグムドの絞め技によって売人は意識を失った。
それから。
再びアジトへやってきたイレギュラーズたちは、監禁されていた少年を助け出し、残されていた薬も残らず破棄してアジトを後にした。
「君たちのおかげで、またひとつ町を守ることが出来た。感謝する! 特にアジトを見つけ出すまでの手際……見事なものだった。ぜひまた、君たちの力を借りたい」
ガリウムマンはそう言って、イレギュラーズたちに握手を求めたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズの皆様。
聞き込みや張り込みまでの流れはとてもスムーズに進みましたね。
皆様の活躍によって薬の売人たちは倒され、薬とその製造施設は破壊されました。
GMコメント
科学合成魔薬『slow』売人グループのアジトを見つけ、突入します。
このシナリオは二つのパートに分かれており、それぞれ必要なプレイングが異なります。
【調査パート】
プアメタル・スラム街にて数日間にわたる調査を行ないます。
調査方法は以下の三通り。得意なものを選択してください。
三通りあるからといって全部に人員を置く必要はありません。極端な例で言うと『全員聞き込み調査』とかでもOKです。できることをやりましょう。
●聞き込み調査
売人グループに探りがバレない程度の人間に対し、売人グループの人相書きを見せ行動範囲を特定していきます。
中には対価を要求する者や、意図的に嘘を教えようとする者が現われるでしょう。
値切り交渉をしたり、嘘が混じってもいいように情報を整理する能力があるとはかどるはずです。
●張り込み調査
怪しいと思われる場所(売人グループが通るらしい場所など)でじっと張り込みをします。
気配を消せる能力は勿論、尾行する際に気づかれない能力などもあるとよいでしょう。
●囮調査
自ら薬品を求めているアウトローを装って売人に近づきます。
売人も(客とはいえ)アジトを知られればまずいので隠すでしょうが、近づき方によっては有力な情報を聞き出せるかも知れません。
売人に直接コンタクトをとれるのが一番のメリットなので、対人能力に優れていると便利です。
【戦闘パート】
アジトを特定してからは、一度しっかり集まり情報共有をはかり、準備を整えてから全員で攻め込みます。(この間のプレイングは不要です)
予測される戦力は『slow』によって強化された売人たちです。
人数は10。総合戦力はこちらと同じかちょっと強いくらいだと思われます。
フィールドデータは不明ですが、それなりに広い場所で戦える(レンジ4攻撃がマイナス補正なしで使える)と思ってください。
彼らは強い恍惚感や判断力の低下、そして強い依存性と引き替えにしばらく周囲がスローに見えるという薬品を自らに投与しています。
この間回避、命中、CTに高いボーナスがかかります。
効果は10ターン。よって相手は短期決戦を狙ってくる筈です。
対抗してガッツリ攻めるか、敵の猛攻をなんとかしのいで後半逆転するかはメンバーの能力次第で決めましょう。
●ガリウムマン
今回の味方NPC
大体イレギュラーズと同じくらいの戦闘能力がある。
クラス・エスプリ能力として全ての攻撃に『不殺』をつけることができます。
攻撃手段は主に『物至単【ブレイク】』『物超貫【凍結】【万能】』
スペックは全体的に高いですが、特に反応値が高く結構な割合で先手をとります。
【おまけ解説】
・プアメタル
鉄帝にある町のひとつ。首都からは結構離れており、色々な産業から取り残されたいわゆる貧困街。
犯罪者が多く、兵器の横流しなどが横行している。
警察的組織はあるが犯罪者がフットワークで大きく勝るため、それに対抗して自警団が組まれている。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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