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シナリオ詳細

<永縁の森>雪迷宮のカレイドスコープ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――きらいよ。みんな、みんなきらい。

 ――きらい。だから……だから、こないで。


 精霊たちの噂を耳にすれば、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はどういう事だろうかと首を傾げることだろう。

 ――『銀の森』に入るなかれ。

 それは、幻想を中心に活動するユリーカにとっては『幻想のガイドブック』にも掲載される観光地だ。鉄帝とラサの国境に存在し、その風景美と平和な風貌よりユリーカにとっても憧れの場所だった。
「入る事なかれ、と先程精霊さん達とリヴィエールさんが言っていたのです。
 ローレットにも最近銀の森へと向かった冒険者の捜索依頼が多数寄せられ始めました」
 今まではそんな事なかったのに、とユリーカは肩を竦める。
 精霊たちは云う『精霊とは違う炎の気配を纏う存在』が迷宮の探索に向かったという噂があると。
 冒険者の捜索と森での『噂』を確かめるべく情報収集に別動隊が向かったため、それに追従する形でユリーカは『迷宮そのものの破壊』を特異運命座標へと依頼した。
『精霊(わたし)達も、ニンゲンも皆森からはでられない』という精霊たち。
 確かにその場所には『魔種』が存在していると森の中の精霊たちが口々に噂していたのだそうだ。
「ボクも色々調べてみたのです。
 精霊たちの噂と現状を見るにローレットの資料庫に寄せられた情報に酷似したものがあったのです」
 それは、『観光客』 アト・サイン (p3p001394)が寄せたデータ――周辺を飲み込む様に迷宮を作り出す魔種『メルカート・メイズ』の活動の情報だ。
「迷宮を作り出すというだけで、危険性が高くない事から、彼女の迷宮の対処に向かっても討伐までは及んでいなかった魔種なのですが……今回も彼女の作った迷宮が『銀の森』そのものの地形を変容させてるのではないかと推測されたのです」
 精霊たちが口々に噂を囁き合う中、『黒いワルモノ』が森を跋扈してる以上、迷宮そのものの放置は危険だとローレットでも結論つけられた。
「申し訳ないのですが、情報屋が入っても『森から出れない』事で、情報を持ち帰れないのです。
 頼りになるのは精霊の噂で……ボクも情報が少なくって本当に申し訳ないのですが……」

 ――森の中には黒いワルモノがいるらしいって言ってたわ!
 ――ワルモノを生み出す魔種がいるという噂です。
 ――その魔種が『雪泪』を中心に道を変化させてる見たいって聞いたわ。

 妖精たちが告げる言葉を信じれば、『雪泪』に向かうべきだろう。
 銀の森にある湖『雪泪』に黒い靄があり、そこから魔物がでてきている――精霊たちの噂を信じれば、其処が『迷宮』の入口だ。
 その中に入り込み最深部に向かえば資料の通りであれば、『黒き獣』が存在しているはずなのだ。
「黒き獣――ワルモノさえ倒してしまえば、迷宮は消滅するはずなのです」
 時間がかかれば外に向かって魔物たちが出ていってしまう。
 特異運命座標には速やかなる対処をお願いしたい。

GMコメント

 夏あかねです。

●成功条件
 ・銀の森よりの帰還
 ・『雪泪迷宮』の消滅

●<永縁の森>
<永縁の森>の冠を持つ依頼は『調査』『探索』が重要となります。
本冠を持つ依頼の達成により、世界に何らかの変化が訪れます。幸運を祈ります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。

●『銀の森』
 ゼシュテル鉄帝国とラサ傭兵商会連合の国境を跨ぐ様に存在する森です。
 溶けない万年雪に覆われた雪化粧の美しい森です。その姿とは掛け離れ砂漠地帯から流れ込んだ温暖な空気が優しく、観光地としてもよくガイドブックに掲載される場所です。
 森は中心部に『雪泪』と呼ばれる深い湖が存在し、その湖には鉄帝特有の『失われた古代兵器』の残骸が沈んでいます。もはや起動することのなくなった兵器は深い眠りについたまま一種のオブジェとして親しまれています。

●『雪泪』の迷宮
 湖に茫と浮かぶ黒き靄から迷宮には居ることができると精霊たちが噂していました。
 その迷宮より黒き獣が姿を現し、森はその道を変容させ惑わせ続けているために靄より迷宮深部に入り、探索が必要です。
 迷宮の内部には罠やモンスターが多く、非戦闘スキルなので工夫して進む事が推奨されます(非戦闘スキルがない状態での探索では難易度が跳ね上がります)
 また、この迷宮の成り立ちはローレットにアト・サインより寄せられた情報に酷似しており、「迷宮深部にいる黒い獣を倒せば迷宮は消滅する」という事が寄せられています。

●資料庫『メルカート・メイズ』
 “突如として建造物や洞窟、森林等の空間が捻じ曲がり、複雑な構造を取るという特異現象が発生した時に彼女は目撃される。
 内部には危険な罠やモンスターが出現する為、迷い込んだ一般人は死の危険に晒される。
 更にその迷宮は、極めて遅い速度であるが、周囲の空間を迷宮の一部として飲み込む為、発生した迷宮には早期の対応が必要とされる。”

●黒き獣たち
 それは魔種の生みだした黒き獣です。――と――。そして――の気配を感じさせます。
 ただ、――であるため、その力は弱く、何かを喰らわんと森をうろついているようです。

 情報精度はE。
 よろしくお願いいたします。

  • <永縁の森>雪迷宮のカレイドスコープ 完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月24日 22時10分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
憤怒をほどいた者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
アト・サイン(p3p001394)
観光客
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ニーニア・リーカー(p3p002058)
絆の手紙
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
風巻・威降(p3p004719)
瞬風駘蕩
不動・醒鳴(p3p005513)
特異運命座標

リプレイ


 その雪景色は季節が巡ろうとも変わる事無く。万年雪に覆われながらも砂漠地帯から流れ込む温暖な空気が銀に染まった葉を優しく揺らしている。
 ゼシュテル鉄帝国とラサ傭兵商会連合の何れであれど、ガイドブックに掲載される場所であり幻想国に住まう少女であれば期待に胸を躍らせる事だろう。
 そんな場所で『人』が行方不明なのだ。多量に、そして、忽然と。
「『一度入ったら二度と出られぬ迷いの森』か。
 恐ろしいけど冒険らしい冒険に血が騒ぐね」
『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)はくすくすと笑みを溢した。ガイドブックに掲載される情報からはかけ離れたその状況に、閉鎖的な銀の森に踏み込む事になったパーティーの耳に入ったのは『森をそうした元凶』たる魔種の情報であった。
「緊急事態でござるが、そもそも何の目的で迷宮を生み出したのでござろうな?」
 そういうものとして割り切るのであれば簡単ではあるが、『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)にはどうにも『彼女(ましゅ)』の事が気がかりである。
「行方不明時12歳の少女か、直接戦う必要は無いからやりづらくはないが……
 一人で寂しくないんだろうか。俺はギフトで息子を思い出せなかったら寂しさで死ぬ自信があるぞ」
 独り言ちて、周囲を見回す『養父は帰宅を決意する』ウェール=ナイトボート(p3p000561)。銀の森を迷宮と化した魔種の情報は『観光客』アト・サイン(p3p001394)が齎した資料庫での情報と酷似していた――いや、そのものなのであろう。
『闇之雲』武器商人(p3p001107)がこの森に赴く前にと調査した情報は以下である。
 銀の森の由来――それは誰が見ても明らかな程にこの森の外見故だ。
 古代兵器の情報、由来――古代兵器はゼシュテルには多く残されている。これについては余り本件とは関連はしないだろう。
 そして、雪泪の由来。一面の雪景色の中、泪の様な形をした湖をそう呼んだ。
 銀の森はメルヘンチックにもその由来を見た儘に名付けられている。大きく『調査する』必要はない情報だったと武器商人は肩を竦めた。
「さて、冒険と行こうか。出発前凍傷対策に衣服を工夫し、肌にはワセリンを……おっと、足りないなら下呂左衛門の蝦蟇油とか塗ろうか」
 冗談だと笑ったアトに下呂左衛門も舌をぺろりと見せる。
 南瓜ランタンを手に、ファミリアーの猫を伴いながら歩む『混沌の名所マップ作成人』ニーニア・リーカー(p3p002058)。周囲から聞こえる音の中には獣の息遣いが紛れており危機を回避するには十分だ。
「靴底に断熱材を入れたり長靴にワックスを使って水がしみこまないように注意な」
 森を往くことになるのだから、と淡々とそう告げた『特異運命座標』不動・醒鳴(p3p005513) 。無駄にセクシィな二股大根を伴い、樽に水を入れた彼に案史ゴーグルを手にした『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)は自身の直感に周辺の感情探査をプラスして森の中を進んだ。
 雪泪までは只、『その道を往く』だけだ。精霊たちのささやきが聞こえる異様な空間で、エネミーサーチに反応する『存在』を確認した醒鳴は只、一言呟いた。
「――『精霊』って、いるんだな」


 この世界には、様々な種族が存在している。
 オーソドックスな人間種を始めとし、獣や海の因子をその身に宿す者や空を自由に飛ぶ者、そしてその身に機械を宿すもの、自然と融和する長耳の種に竜の因子を宿すものも存在している――その中でも人々の生活と隣接する『良き隣人』足る存在が精霊だ。
 その彼女らのSOSとなれば人助けセンサーにも反応するというものだ。
 HMKLB-PMと共に歩むウェールは『梨が入った黒いシュトゥルーデル』と『秋の味覚! 箱パン』と言った食料の貯蔵を確認し、雪泪の周辺をぐるりと見回した。
「これが」
「迷宮……?」
 ぱちくりと瞬くニーニア。黑き靄の様なものが周囲には蔓延り、雪景色の中でも凍る事無く水面を揺らす湖が誘うように波紋を広げている。
「『資料庫』の迷宮かな?」
 黑き靄にも負けぬ落とし子の気配を身に纏う武器商人がふむ、と小さく呟いた。資料庫――アト・サインが寄せた情報である『メルカート・メイズ』の迷宮。
「恐らくね」
 アトがじっくりと確かめるようにそう言った。彼女、メルカートの感情は分かり易いほどの嫉妬と寂寞、そして恐怖に塗れている。
「拙者は隊列の殿を務めよう。今回は後方から襲われる危険も高そうでござるからな」
 迷宮に向け、進み出る前に下呂左衛門がそう言った。迷宮へと踏み出さんとした特異運命座標の脚を留めるように「待て」と誰ぞの声がする。
「……貴方、」
 竜胆はその声の主――炎を身に纏った『精霊』の姿にぱちりと瞬いた。
 その大きさは妖精たちとはまた違い、通常の青年と背丈は変わらない。どうしたものか自然界に存在する因子と結びつくようにしてその姿を顕現させたのであろう精霊は「来るなだとよ」と迷宮を指さしてそう言った。
「来るなって言われても」
 行かなくちゃいけないと威降が困った様に頬を掻いた。彼らに下されたオーダーは迷宮の破壊だ。アトの情報によれば『メルカート・メイズ』と呼ばれた魔種を倒すまでもなく、迷宮の最奥にある黑き獣を倒せばこの迷宮は霧散するはずなのだ。
「行くのか?」
「来るなと彼女は言う。だから僕は行くんだ――観光客だからね」
 アトが柔らかにそう告げれば炎を身に纏った青年はそうかよと小さく呟いて背を向けた。
「待って、あの、貴方は旅人……?」
 純種たるニーニアは自身のパーティーに自分と下呂左衛門しか『この世界の出身』がいない事を確認し、そう告げた。炎を身に纏った彼は静かに首を振る。
「ヒッヒ――じゃあ『純種』かい?」
 仮に焔の旦那、とそう呼んだ武器商人に青年は何も答える事無くゆっくりと去った。


 雪泪の迷宮の中に足を踏み入れて、武器商人が最初に行ったのは周辺の確認であった。足元から進行経路に至るまで。何所に罠が存在しているかは分からない――元より、この迷宮に対する情報は情報を生業とする者が入手したものではなく『精霊』達が調べて来たものだ。
 棒で進行方向を確かめるようにしながら最前線を歩むアトにニーニアは「それは?」と首を傾げる。
「探索の鉄則ってね」
「流石は『観光客』ね。旅慣れてる」
 竜胆が陽気に笑った声にアトは口元だけで笑みをゆったりと返した。
 笑っている、只、それだけで済めばいいのだが――そうもいかぬが迷宮の鉄則か。醒鳴が「何かの気配がする」と囁く言葉に下呂左衛門が頷く。
「相手が魔種とそれに連なるものだとすれば、いつもの冒険の常識には囚われない方が良いやもしれぬ……」
「ヒッヒ――魔種が作り出した迷宮というなら『胎の中』を歩いているようなもの」
 警戒心を露わにした下呂左衛門に対して武器商人が不吉を告げる。無論、その胎の中を滅茶苦茶に荒らして、不可解な迷宮を一つ破壊することこそが目的ではあるのだが――ふと、ウェールはアトを見遣る。
「『あの子』はどうして鉄帝とラサの国境に移動したんだ?」
「『観光客(いれぎゅらーず)』が幻想に増えたからかもしれない。それに、砂蠍とか厄介事も多かった……だろうしね」
 きっと、そう言う事なのだろうとアトが言うその言葉に呼応した様にじりじりと獣の気配が近づいてくる。
 ナビをする様に五感を共有させていた猫が合図をする。靄を纏ったかのような幻惑の獣がずるずると歩んでいると。
 穴抜けの情報を思い出したように、罠対処を用いて周辺の対応をしていたウェールは「精霊が言ってた情報の穴を埋めれないだろうか」と静かに告げる。
「ええと、『それは魔種の生みだした黒き獣です。――と――。そして――の気配を感じさせます。ただ、――であるため、その力は弱く、何かを喰らわんと森をうろついているようです』……それは迷宮の中でも同じという事、かな?」
 威降に頷くはエネミーサーチをしていた醒鳴。ごちゃ混ぜとなった感情を探知していた竜胆も「外よりたくさんの『同じような感情』が感じられる」と静かに呟いた。
 道中のマッピングをしているニーニアは「迷宮の路が、さっきと違っている」とマッピングの狂いを告げる。魔種は全ての飲み喰らうために道を変化させているのだろう。
「害がないって言うのは、迷宮に引きこもってるからって事か?」
「その通り。引き籠って居れば害なんて感じる必要がないからね」
 アトが口許で緩く笑ったその言葉にウェールは「息子に会えなさそうで害が大有りだ」と肩を竦める。
 ずるり、と何かを引き摺る様にして近づく音。敵の接近を予期していたことで、戦闘の準備は万全だ。
 顔を見合わせ全員で一度道を戻る。出来る限りの戦闘を避け、そして最奥を目指し続ける。メルカートが来ないでと言ったように道は『非常に曲がりくねり』何らかの対策が必要なのであろう。
 がむしゃらに歩くだけでは疲弊もしてしまうと休息を挟み、魔種『メルカート・メイズ』の話を口にするアトに威降は体を冷やすといけないからと毛布を手渡した。
「こういう旅は初めてなんだけど、無事に戻れるかと不安になるね」
 光を帯び、出来る限りの安穏を楽しむ様にそう言った威降。僅かな焦燥は、この迷宮に端する情報はあまりに少ないという事か――「携帯食や飲み水があってよかったわ……さっきウェールが言っていたけど、害があると言えばあるのよね」とメルカートを思い出す様に竜胆はそう呟いた。
「サーカスのクラリーチェみたいに呼び声のパンデミックを起こすわけでもなく、砂蠍のトレイリアスのようにとても強い訳でもない。情報だけ見れば非力な女の子……魔種って千差万別ね」
「確かに、絆の手紙を必要とするパターン以外にもいろいろあるんだね」
 ニーニアはほう、と暖かな白湯を手にしながら静かに呟いた。迷宮の中に入ってから狂ったのは『正確な時間を把握するという事』が一番だろう。元より銀の森は一面の雪景色と温暖な空気から空を覆う場所に居れば日中であるかどうかも分かりにくかった。
 アトの起こした火の前で寒さに耐えるように下呂左衛門は蛙には堪えるのだという様に手を擦り合わせていた。
「メルカートとの戦闘は絶対に避ける……というのはやはり魔種だからでござるか?」
「勿論。魔種と戦う事になると色々と不都合が出てくる――だろうからね」
 ぱちぱちと、爆ぜる火。最奥まではもう少しであろうか。少し眠れば、あと少しの探索に向かおう。


「cock-a-doodle-doo!」
 朝を告げる一声。ギフトで齎されるそれは強制的な目覚めをくれる。
 ダンジョンアタックをとじりじりと進みながら、アトは「迷宮をクリアするのは易い事だけど、手に入れた情報を先に纏めておこうか」とゴールが見える迷宮の奥を見遣った。
「銀の森、雪泪に関しては『外見から名付けられている』もの。
 自然物であることと――古代兵器は嘗ての鉄帝の名残だろうということで」
 武器商人の言葉に続けるように竜胆は「迷宮で感じれるのは『嫉妬』にも似ているけれど、全てを混ぜ込んだ『強欲』かしら」と感情の探査を続ける。
「気になったのはあの暖か炎の気配の青年でござるかな。
 精霊と言うには大きすぎて、確かな存在がありすぎた」
 下呂左衛門にニーニアは頷く。エーリカ・マルトリッツの友人と比べれば余りにも『確かな存在』であり、そして、彼女の友人たちのように常に傍らにある様な仄かな気配が感じられる。
「こうは考えられないかな」
 ふと、ウェールは息子に何となく用意したことのある絵本を思い出した様に言った。
「新しい『登場人物』だとか――」
 それはゲームで言えば新規キャラクターなのだと冗談めかしたウェールにはっと竜胆が弾かれた様に顔を上げた。混沌世界、影響を受けて新たに『事象が起こる』かもしれない闇鍋――もしも、こうして特異運命座標が増えた事が世界に何らかの影響をしていたならば……?
「……来た!」
 その声音に弾けるように武器を手に持つ。最奥に、黑き獣は確かに存在していた。
 直感が告げている、
 それは魔種の生みだした黒き獣です。『嫉妬』と『羨望』。そして『それ故の強欲』の気配を感じさせます。
 そうだ、それは『獣を探査する際に感じ取った感情』。メルカート・メイズはどういった魔種であるのかを感じさせる確かな証左。感情を探知する竜胆は確かにそれを察知し、醒鳴自身がそう認識していたではないか。
「『ただ、『まやかし』であるため、その力は弱く、何かを喰らわんと森をうろついているようです』――か?」
「正解のようですね?」
 武器商人が一投した攻撃が獣の靄を突き破る。そこには肉の感触もなく靄が霧散していく只その感覚だけが掌へと伝わった。
「つまり、」
 醒鳴は成程と小さく呟いた。後方を警戒する下呂左衛門が殿を務め、いざとならば仲間を此処から逃がさねばと常に意識を向けて居る方向に視線をやってウェールは頷く。
「迷宮を保つ大元の獣を倒さなければ『まやかし』は何度でもやってくる」
 最奥の獣に狙いを定め、全員で距離を詰める。無論、その奥に存在しているであろうメルカートとの戦闘は避け『あえて探査できている彼女を無視』する様に戦いを続けていく。
 獣は決して強いという訳ではないが、油断も大敵だ。しかし、ここまで戦闘を避けていたことと準備が万全であった事が好機となって居る。
「今だよ!」
 癒しの気配を送りながら短期決戦をと一斉攻撃を仕掛けるニーニアに竜胆は頷いた。
「――この刃で!」
 一刀両断してせん。竜胆が振り翳した一刃が深々と黑き獣に突き刺さる。
 メルカートは、と探し求めるように顔を上げた下呂左衛門。しかして、その場所に少女の姿は存在してはなかった。

 靄が晴れていく。どれ位の時間が経ったのかは分からない。ウェールは途方もない時間が過ぎた気がして息子の事を思い出す様に『大切な我が子を思い出せる能力』で心をホッと落ち着かせた。
「長い時間、ずっと迷宮に居た気がするけど――……」
「ああ、恐らくはそう時間は経ってないな」
 威降の言葉を繋げるようにアトはそう言った。メルカート自体は森のまた奥に逃げ果せ、砂蠍の一件で騒乱に見舞われる幻想に戻る日を夢想しているのだろう。
 彼女が自身の心を守るかのような箱庭。周囲から感じる仄かなる精霊の気配――その因子。
「……精霊って、実はあんまり見た事がなかったんだよね」
 郵便を配達しているニーニアにとっても不思議な事象は目の前で起こっていた。
「さっきの彼を追い掛けましょう。きっと何か情報を――」
 迷宮から出た竜胆の前には、もはや先程の『炎の気配』は何処にもなかった。
 雪泪の迷宮が壊れたその場所は、一時だけの平穏に包まれていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――続く、続くのです。

 銀の森、お疲れさまでした。
 本件では『<永縁の森>の冠を持つ依頼は『調査』『探索』が重要となります』という情報の許、で皆さんがどのように動くかで世界情勢を大きく揺さぶる事となっておりました。
 無論、成功条件にプラスアルファされるものですので、それは必要なものではありません。
 先ずは皆さんが『無事に帰ってきた』事をお喜び申し上げます。
 依然として謎の多いこの銀の森――その謎は深まるばかりです。

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