シナリオ詳細
にゃんにゃんにゃん
オープニング
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わがはいはねこである。
しもべたちはきょうもはしりまわっている。
にゃんともそうぞうしい。
●
「ねこグッズが目玉の会社からヘルプがきたよ」
もこもこのフードを被った『勿忘草』雨(p3n000030)がローレットに顔を出した。くしゅんとクシャミひとつすれば、寒そうに腕を擦る。
北部、南部戦線の騒動も一段落つき、幻想はひとまず落ち着きつつあった。日常へと戻りつつある。
そんなある日、雨の元に一通の手紙が届く。封蝋は肉球の形をしていた。
「なんか、『ねこつかいのひと』が風邪ひいて寝込んじゃったらしくて」
猫だけに。
誰かがそんな事を呟いたような気がしたが、雨はスルーした。
「毎年売り出してる、福を招くまねきねこの梱包が進んでないんだって」
これがただの梱包であれば間に合ったのかもしれない。
しかしこの会社、まねきねこを梱包する際に、本物の猫の肉球で、いわば手形ならぬ"肉球形"を押した紙を同梱するらしい。
その手形が欲しくてまねきねこをわざわざ毎年買う客もいるそうな。滅多な客もいるもんだ。
――もう、気付いただろうか。
「『ねこつかいのひと』がいないと、まともに作業出来ないみたいなんだよね」
猫とは本来自由気ままな存在である。そしてそれを諫める者は少ない。なぜなら猫愛好家たちは総じて『おねこさま』――つまり、猫の方が偉いと胸に刻まれているからだ。
また、猫愛好家たちは信じている。そう、猫に誘惑されない人類など存在しないのだと。
「だから、一般人には任せられない……そうだ、イレギュラーズに頼もうってワケ」
恐らくは強靭な精神の持ち主たるイレギュラーズならば、猫の誘惑に負ける事無く、会社のピンチを救ってくれるだろうという結論に至った。
「ねこかわいいもんね」
かくいう雨も猫愛好家のひとりである。
それはおいといて。
「君たちは、これから猫がたくさん――それはもう、たっくさんいる会社で、猫たちに仕事をしてもらうよう促す係をしてもらうよ」
どうやら社員たちもその日はいちにち会社を空けなければならないらしい。年越しの準備やら、有給の消化やら、緊急の用事やら、ゲームの発売日やらで気付いたらすっからかんになってしまう事が判明した。大丈夫かこの会社。
経営についての心配はあるが、報酬はちゃんと支払われる。
「まあ、たまにはこういう依頼があっても良いと思うな」
- にゃんにゃんにゃん完了
- GM名祈雨
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年01月05日 21時00分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「「「よろしゃーーす!!」」」
とても威勢の良い声で委託した社員たちは、にゃあんと鳴く猫に後ろ髪を引かれながら各々外回りに旅立った。
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が社員に尋ねた通りなら、自分で持ち寄ったカードに肉球を押して貰う事も可能のようだ。快諾を得れば『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)もそわそわ。おみやげにカードを持ち帰る気満々である。
『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)もおやつの許可を取れば、丁寧な社員から説明を受ける。一日ひとつ。健康管理も気を遣っている事が窺えた。
その後ろ、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は天にも昇る気持ちで両手を突き上げ、一人自分の世界に浸る。
(「嗚呼、長かった……やっとふわもこアニマルときゃっきゃモフフな依頼が巡ってきたのだ……!」)
飢えに飢えたゲオルグにはたまらん依頼であった。
てこてこと自由気ままに歩き回る猫を眺めながら、『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)も目を細める。
「猫ちゃん……」
あわよくば自分も肉球カードを貰うつもりである。
方向性は違えど猫好きに変わりはない特異運命座標』シラス(p3p004421)も近付いて来た懐っこい黒猫の喉を擽ってやる。
「オーッホッホッホッ!」
そこへ響く高笑い。
「本日は、このわたくし!」
パチィン。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!!///
「――の! 汚名返上の日ですわーー!!」
と、ド派手でブリリアントな伝説級のキャットポーズをキメた『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)。
ギフトに合わせて全力でタント様を湛えた『タント様FC会長』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)が片手を突き上げた状態のままはっと我に返る。
「タント様、にゃんこさんにはちょっと声が大きいのかも?」
「はっ」
そんなやりとりを横目に、それぞれが目的の猫を探し出してお仕事タイムに入るのであった。
●
ちこちこと短い足で歩くペルシャ猫が一匹、二匹、三匹、いっぱい……。
「ど、どの子とお仕事するか悩んじゃうよ~!」
嬉しい悲鳴をあげた焔はえいっと思い切って目があったペルシャを選んだ。
「こんにちはっ! ボクは炎堂焔っていうんだ、君のお名前は?」
挨拶をしたところで応えが返ってくるわけではないが、気持ちを伝える事は大事だ。よろしくねと続けると、なぁんと鳴き声を返ってきた。
焔がペルシャを抱え上げるとにょーんと猫ならではの伸び方をした。とりあえず膝の上に載せるようにすると、片手に『にくきゅうカード』の元となる白紙のカードを持ち、もう片手で猫をもふもふした。
「このカードに猫さんの肉球でペタンってしていけばいいんだよね」
ふんふんと仕事内容を確認する間ももふもふする手は止まらない。穏やかな気質を持つペルシャは撫でられ慣れているのか、あるいは仕方ないなあと撫でるのを許しているのか、大人しく膝の上に収まっている。
綺麗な毛にインクがつかないようにしなきゃ、とか。
もうなんか仕事よりももふもふしてたいなあ、とか。
「はっ」
傍らに白紙カードを追いやり、いつの間にか両手でなでもふしていた焔は我に返る。ぶんぶんと首を横に振って白紙カードを手に取った。
なにするの? とでも言いたげなペルシャと目がある。まん丸な眸がじいっと焔を見つめていて、焔の決意は容易く揺らぐ。
「ううぅぅぅ! こうなったら早くお仕事終わらせて遊んでもらおう!」
ぺたぺた。きゅっ。ぺたぺた。きゅっ。
モチツキのような阿吽の呼吸で、インクが毛につかないように気を付けながら『にくきゅうカード』を量産していく。焔の配慮により毛がごわつく心配もなくなったペルシャはぺたぺたと焔に付き合ってあげていた。
「終わって時間があったら、皆で遊びたいなあ」
ぺたぺたとインクを付けながら、焔はすでに終わった後へ想いを馳せる。
「見つめ過ぎず」
「目で頷く!」
シャルレィスがタント様へアドバイスをしながら、傍に寄ってきたソマリを撫でる。シャルレィスの足元に寄ってきてはうろうろと辺りを回っていたのでこの子だー! と運命を感じた次第であった。
頭を撫でたり喉を擽ったりしながら、シャルレィスは猫と対峙するタント様を見守る。タント様の目の前にはシェーデッドシルバーのミヌエットが座っていた。
あまり物怖じしないタイプなのか、ミヌエットはその距離をてってってっと簡単に詰めてみせる。
「あ、あっ、あっ」
慌てたような声を出してタント様がそうっとミヌエットを抱きかかえた。暴れる事もなく、みゃうんと一鳴きして前足を舐めるミヌエット。
「寄ってきましたわ! お猫と仲良くなれましたわーっ!」
「やったね、タント様!」
と、当社比控えめな声でシャルレィスに報告すれば、シャルレィスも我が事のように嬉しそうに頷いた。
早速『にくきゅうカード』作りへと入る二人。
「はあ……ねこつかいかぁ……。冒険者やめたらなろうかなぁ……」
ぺたぺた。ぺたぺた。
一面肉球まみれになる前に交換して、時折ねこじゃらしで気を引いて、シャルレィスは順調に『にくきゅうカード』を作っていく。
それもしばらくも経てば飽きてきて、ソマリはぺたぺたを止めてシャルレィスの手に頭を押し付けた。
「遊んでほしいの? うんうん、一緒に遊ぼう!」
シャルレィスは迷うことなくインクと白紙カードを退ければ、丁寧に足を拭いてあげてねこじゃらしを取り出す。もうすっかりソマリの虜だ。
じぃっと見つめられれば何がしたい? と手を止めて。
ぷいっと飽きられれば次々とおもちゃやおやつを取り出して。
ぽつんと取り残された『にくきゅうカード』セットがなんだか寂しい。
「ふっふっふ、わたくしの完璧な作戦にお猫もメロメロですわ!」
インクに染まった手をミヌエットに叩かれながら、タント様は得意げに胸を張る。しっかりと肉球にインクがついたなら、今度は猫パンチを白紙カードに取り換えて。
名付けて『お猫ハイタッチ作戦』は実に良い成果を叩き出していた。
できるだけ沢山のカードを作りたいと、タント様のペースはあがっていく。幸せの贈り物をどんどんと順調に量産し――
「って、ちょっ、ぷぎゃー!?」
おでこに、ぽん。
「あああ、肉球スタンプがおでこに……はっ!」
しかしそれで終わるタント様ではない。さっと取り出した白紙カードにおでこを押し付けて。
「どうかしら、でこきゅうカード!!」
「で、でこきゅうカード!?」
ててーんとタント様が掲げるカードを見て、シャルレィスが目を見開いて反応した。
「にゃんこさんとタント様の合わせ技なんて最高レアだよ! むしろ私が欲しいなぁ……!」
ぐっと拳を握りながらファン魂丸出しにするシャルレィスを傍目に、タント様はうーんと浮かない顔。
「商品価値はありませんわよね……」
今回の依頼は『にくきゅうカード』の作成だ。このカードは除外である。
持ち帰っても良いだろうかと頭を悩ませるタント様の後ろ、興味なさげに欠伸するソマリを抱えたシャルレィスはそわっそわと様子を窺っていた。
●
本日のおやつを手に入れたクラリーチェは、一目惚れしたまっくろくろすけに白い靴下を履かせたような猫を前にご機嫌取りをしていた。
金色の瞳がクラリーチェをじいと見つめて警戒している。それでもそうっと喉元に手を伸ばしてみれば嫌がらず、しまいにはくるくると喉を鳴らした。
手のひらに頭を押し付けられれば「ここですか?」と指先でくすぐってみたり、ころりと横になったまま見上げられれば優しくお腹を撫ででみたり。
ぺたぺたと『にくきゅうカード』を生み出す周りは気にせず、クラリーチェは自分と、そして何より目の前のくつしたにゃんこのペースを大事にした。
「にゃんこさん、おみ足をお借りしたいのですが……お願い、きいてくれますか?」
にゃあん。
返事のように鳴き声が返ってくるが、撫でろ撫でろと頭を擦るだけで意味は通じていないよう。動物疎通が出来ればまた違ったのかもしれないが、それでもクラリーチェは根気よく話しかけて撫でてみた。
「ねこさーん。あの子たちみたいに、ぺたぺた動いてみませんか?」
すっかりお寛ぎモードの猫を撫でながら、あっちと指差してみれば、くつしたにゃんこの視線が指先へ向く。ぺったんぺったんと楽し気にする猫がそこにいた。
ちらり。くつしたにゃんこがクラリーチェを見る。
仕方ないにゃあ。
――なんて、猫が喋る筈もないのだが、クラリーチェにはなんだかやる気を出した猫がそう言っているように見えた。
「ふふ、ありがとうございます」
ご褒美はこれです、とおやつを見せれば断然やる気を見せる。何でそれを早く言わなかった、とでも言うかの如くにゃあにゃあとクラリーチェを急かした。
ぺたぺた。『にくきゅうカード』を作りながら、クラリーチェはふと思う。
うちの猫たちのあしあとグッズを作って教会で配布すれば、皆さん喜んでくれるのかしら。
未来のライバル事業が芽生えつつあった。
どーん。もふもふ。ずずーん。
そんな擬音が似合いそうな女の子だった。
「かわいい……」
メイメイはそんな三毛猫の前にちょこんと座る。
「えと、本日は、よろしくお願い、します……!」
動物疎通で語り掛けたメイメイに対し、三毛猫は一瞥しただけで動かない。
どうしよう、と猫グッズをいくつか持ちだして手に取れば、ようやくにゃあんと猫が鳴いた。
ぴたり、止まる。メイメイはそっと床に置いて、また拾い上げる。思った通り、にゃあん、とまた猫が鳴く。
ぴーん、ときた。この子はしてほしい事を鳴いて教えてくれているのだ。
手に持ったブラシでそっと背中を梳いてみれば、くるくると喉が鳴る。手入れを終えれば次のもの。また、にゃあんと猫が鳴く。本日のおやつを口元へ差し出せばご機嫌に先を齧った。
においに気付いたか、他の猫たちも寄ってくる。メイメイの周りを歩いては、膝上によじ登っておねだりをした。
「こ、困ります……ふふ」
ああ、なんて楽園なのだろう。
おやつをお腹いっぱい齧ればいよいよ眠ろうなんて三毛猫が転って、はっとメイメイは思い出す。
そう、『にくきゅうカード』を作っていないのである!
「猫さん、猫さん。ぜひ、素晴らしいにくきゅうを、こちらにペタリ、と」
慌てて要件を切りだせば、うとうと眠気に誘われていた三毛猫が起きる。機嫌のいい猫は自ら進んで片足をあげた。
「すてき、です……!」
メイメイは秘書の如く、さっとインクをつけてはささっと白紙カードに肉球をぽんと押し付ける。ぽんぽん。ぺた。とても効率が良い。
「おつかれさま、でした」
お山になる『にくきゅうカード』を横に置き、メイメイはぺこりとお辞儀する。猫へのご褒美に、――そして、自分へのご褒美に、寝転がる猫のお腹をもふっとしてみれば撫でてみて。
すっかり心開いた三毛猫はメイメイにとてももふもふされながら、夢へと旅立っていった。
●
その男は、床に這っていた。
頭に猫ネコミミ型イヤーデバイスを装着した大男が、だ。
傍から見れば、壁際でぷるぷるしているマンチカンの子猫の前で、自分を猫だと思い込んでる大男が寝転がっているのだから怪しい。怪しすぎる。
しかしゲオルグは大真面目だった。
ゲオルグはまず視線の高さを意識した。どんな生物も、自らより大きい生物は脅威に感じるものだ。これは正しいだろう。
しかし、ゲオルグは致命的なミスを犯していた。
なるべく目線を合わせようと意識した結果、子猫にこれは警戒しているのだと感じさせた。
じりじり、じりじり、互いに窺っている。
ゲオルグはその子猫を見ているうちに、仕事の事などどうでもよくなってきていた。
あの、短い足でトコトコ懸命に歩く姿だとか。
あの、見た目によらずパワフルなところとか。
並べ立てればもはや止まらないレベルでもふもふへのラブが溢れ出してくる。それは表情にも出ていたか、強面が気付けばふにゃりとリラックスしていた。
ぴょーーん、と子猫が跳ねる。
ゲオルグの背中をてててっと駆けていく。あまりに長いスーツの道を走った後、社員の椅子に背から飛び乗る。
ばっと身体を起こしたゲオルグが見たのは、こちらを窺う子猫の姿だ。みゅう、とまだ高い声でゲオルグを呼ぶ。
近付くべきか、どうするべきか、悩むゲオルグを呼ぶように、マンチカンが再び鳴くとデスクの上へと飛び乗った。
――これは、もしかして遊びに誘われているのでは?
好意的解釈をしたゲオルグの読み通り、走り回るマンチカンは時折ちらりと振り返り鳴き声をあげた。
あっちへこっちへ、走り回る。急に始まった鬼ごっこを楽しんだ子猫は、途中でぷっつりと興味が切れてゲオルグの足元で丸くなった。
『にくきゅうカード』は作れていない。
が。
「マンチカン、可愛いなあ……」
ゲオルグはどこか満足そうであった。
たくさんの猫がいるその空間で、その猫だけは異質な空気を纏っていた。
まるで眼下で行われる『にくきゅうカード』作成を下に見るような、そう――いわば、ちょっと偉そうな猫だった。
波のように輝くグレーはきっちり整えられ、スマートな全身は無駄がない。
はい、出ました。俺が世界の中心だと言わんばかりの不敵な表情。
シラスは即決だった。この猫以外にはありえないと心に決めた。
あの猫に素直に『にくきゅうカード』を作ってくださいなどと言っても無駄だろう。また、機嫌をとってその流れでカードに肉球を押させることも、あの様子では難しそうに見えた。
しかし、シラスには作戦がある。
会社の一角、普段猫たちが遊んでいるのだろうキャットタワースペースや段ボール箱が置いてある事に気付いていた。そこへ似た色のインクを設置する。
勿論、猫たちの健康を害するようなものにはしない。不意にインクがついてしまい、それを舐めとっても大丈夫なように材料には気を遣ったものを用意した。
そう、万全の準備をしてきたのだ。
インクを設置すればその周りに白紙のカードを設置する。踏まれまくる事がなければ、きっと『にくきゅうカード』として有効なものになるだろう。
「さあ、来い」
〆はファミリアー。まるでこちらを気にしていないロシアンブルーの雄猫と視線が合わぬよう伺いながら、雌のロシアンブルーを召喚する。ぺろぺろと前足を舐める様はまさしく猫のそれだ。
(「きっと、持久戦になる」)
ファミリアーの猫をそっと放ち、経過を見守る。罠の傍で遊ぶ様を見せて誘ったり、あの孤高の雄の傍へと寄ってみたり。
共有した五感で作戦の行方を知りながら、シラスは会社のソファに腰かけた。後は任せるとばかりに横になると、ゆっくりと目を閉じた。
――作戦の行方は。
「猫ちゃん……かわいいよね、猫ちゃん……」
まるで戯言のように零すアイリスの前に、ふわふわの雄猫がちょんと座っている。ヒマラヤンだ。鼻の周りだけ黒い、白いもふもふがアイリスを見上げていた。
「もこもこもふもふ……」
すっかりもふもふに虜になっているアイリスははっと顔をあげる。そうだ、お仕事をしなくては。
「にゃー、にゃにゃー、にゃー……にゃー?」
動物疎通を使って話しかけるアイリスは、その片手に白紙のカードを持ってお願いしてみる。しかし、ヒマラヤンは首を傾げるだけだ。
はっ。疎通を使ってるのだから、別に猫語のしなくていいのでは?
気付きを得たアイリスはこほんと咳払いをする。
「あにゃたのおにゃまえはなんでしゅかー?」
どう考えても普通の言葉ではなかった。猫感が言葉の端々からあふれ出る。ヒマラヤンもまた逆方向に首を傾げるだけ。
が。
アイリスはなんだか幸せそうだった。
「もふもふ……かわいい……」
もはやお仕事の事など忘れてしまいそうになるほど、目の前の雄のヒマラヤンにメロメロになる。そうっと手を伸ばしてみれば自分からくるくると甘えにきた。
連れて帰れないかな、なんて思ってしまうのも仕方ない。
「猫ちゃん……猫さん? ここにぺたーっと、良い感じに、ね?」
白紙カードを示してみるが、雄猫の興味はアイリスにある。じーっと様子を窺うように見つめていた猫が、近付いたアイリスの顔に手をむぎゅうと押し当てた。
「私の顔はぺたぺたしなくても……。……ううん、もうちょっと……」
ぺたぺた。ぺたぺた。アイリスの顔に肉球が押し付けられる。
「お仕事、終わってないけど……一緒に、ねよ……?」
ふわあと欠伸をした猫に釣られ、アイリスもまた眠気に駆られる。膝上を貸せとばかりにアイリスの上によじ登り、ヒマラヤンは目を閉じる。
お仕事も、大事だけれど。
「もふもふ……」
猫の気持ちも大事なのだ。
●
「お、おおおお!! これは!!」
ブルーの足跡! と叫ぶのは社長である。満足気にたくさんの『にくきゅうカード』を見ていた社長は、急に立ち上がった。どうやら王者級のカードが生まれたらしいが、ここから先はまた別のお話。
だって、――語り始めた会長は半日は止まらないのだから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
にゃんにゃんにゃー。ねこだらけ依頼、ご参加ありがとうございました。
プレイングお疲れさまです! 猫を見て癒されていたらすっかり時間がかかってしまいました。
猫は……良いですね……。
もふもふなところはさながら、あの気ままな性格も何故か小悪魔的に映って「仕方ないな~~!!」となるのですが、あの魅力はなんなのでしょうね。
最近猫と触れ合ってないのでイマジナリーキャットと存分にきゃっきゃうふふさせて頂きました。
どこかで猫カフェに行きたいです。足蹴にされても良いです。
改めまして、シナリオ参加ありがとうございました! 楽しいシナリオになっていたら幸いです。
GMコメント
猫で暖をとりたい祈雨です。
以下、詳細を載せます。オープニングより長いとは。
●成功条件
『にくきゅうカード』を1枚以上製作する。
●『にくきゅうカード』とは?
その名前の通り、猫の肉球がスタンプされたカードです。
猫の肉球をインクにつけ、手形ならぬ"肉球形"を押したはがきサイズのカードで一部マニアから人気があります。肉球形の下には、担当した猫の名前を記載します。
ベースの『にくきゅうカード』はカードの中央に猫の肉球がぽんと押してあるのみです。
ただし、猫は自由なので、肉球が沢山押してあっても『にくきゅうカード』として同梱する事が可能です。マニアには喜ばれます。
猫の肉球だと判別がつかない、あるいは自分で肉球を描いたものは『にくきゅうカード』にカウントされませんのでご注意ください。
●猫について
この会社には猫が山ほどいます。社員すらも把握できていないのでは? と疑わざるを得ないぐらいの猫がいます。
あまりにも珍しいもの以外は恐らくそこらへんをほっつき歩いたり、日向で居眠りしていたり、いたるところで目にすることが出来るでしょう。
イレギュラーズは以下の指定が出来ます。
・お仕事させる猫の種類
・お仕事させる猫の扱いやすさ
お仕事させる猫の種類は、先ほども記載した通りあまりにも珍しい種類以外は会社の中をほっつき歩いています。好みの猫を選んでください。
このシナリオに限っては、祈雨が記載された猫を知らなくても検索して癒されにいきますので、遠慮なく好みの猫の種類をご記載ください。
例:黒猫、三毛猫のオス、ペルシャの子猫、メインクーンの成猫 など
お仕事させる猫の扱いやすさは以下の【A】~【C】からお選びください。
【A】仕事を嫌がらず、楽しそうにこなすタイプ
一番扱いやすいタイプです。
このタイプは肉球にインクがついても気にせず、ぺたぺたと紙に肉球を押し付けます。
しかし、ぺたぺたと沢山押すため、ある程度配慮しなければ一面肉球になってしまいます。
【B】おだてれば、しぶしぶながら仕事をこなすタイプ
気分屋で、扱いやすいとは言えないタイプです。
このタイプは肉球を押すという仕事までに時間がかかるタイプです。
しかし、一度気分が乗れば扱いやすく、模範のような『にくきゅうカード』を作りやすいです。
【C】仕事断固拒否タイプ
一番扱いづらいタイプです。ただし、レアカード扱いなので一番人気があります。
このタイプは何をどう頑張っても仕事をしたがりません。気難しいおねこさまなのです。入念な対策を練らなければ対応のしようがないでしょう。
しかし、マニアには人気が高く、社長にたいへん喜ばれます。
なお、猫たちは自由です。仕事していても構って欲しい時には突撃してきます。いかに猫たちの妨害を越えて『にくきゅうカード』を作るかが今回の課題です。
猫好き度が高いと判断されるプレイング、ステータスの場合、仕事にならない可能性もあります。
●祈雨からのお願い
猫の指定はプレイングの冒頭に記載頂けると助かります。
指定がない場合は祈雨が好きな猫を選び、ダイスを振って猫の扱いやすさを選定しますので、ご了承ください。
例:【A】真っ白なノルウェージャンフォレストキャット
【C】三毛猫のオスの子猫
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