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シナリオ詳細

魁メタリカ女学園 生徒会総戦挙公開炎絶

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●乙女たるもの最強を目指せ。万難に勝利し、乙女心を突き通せ。
 蝶の舞う園。今日も蒼天に学園の鐘が鳴る。
 淑やかに歩む乙女たちは、『ごきげんよう』と言葉を交わし白き巌の校舎へと吸い込まれてゆく。
 ここは鉄帝にそびえる乙女心の総本山。魁メタリカ女学園!
 今この学園に、危険な風が吹いていた。

「あら、演説担当がまたダメになっちゃったの? 大変ね」
「いかにも。わたくしが応援演説をお願いするたびにその方が急病に倒れてしまいますの。おかしいですわ。皆一様に自堕落になって……」
 学園購買所で焼きそばパンを握りしめ、乙女は清楚に目を伏せた。
 時は雪降る冬の鉄帝。
 来年度生徒会員の選抜に向けた生徒会総戦挙(せいとかいそうせんきょ)が近づいていた。
 鉄帝にお住まいの皆様ならおわかりであろう。
 王を闘技で決めるのが本国のルール。ならば生徒会長も必然、拳と拳、乙女心と乙女心をぶつけ合わせて決めるが定め。
 それも全ての学園乙女が見守る中で行なわれる公開炎絶(こうかいえんぜつ)で決めるのだ。
 これまで行なわれた公開炎絶で勝ち抜いた最終候補者は二名。
 学園における正統流派である清楚派代表『月見草マツヨ』。
 対する候補者は学園支配をもくろむギャル派代表『黒百合リリー』。
 実直なる拳と清楚な乙女心によって対抗馬を粉砕し続けてきたマツヨに対してリリーは買収や脅迫、はては暗殺まで用いた黒い政治攻撃で追い上げを見せていた。
 先日の学級委員長の座を奪い学園の支配地図を塗り替えようとした事件は有名である。
「なら、今度も同じ手を使えば対処できるんじゃない?」
 可憐に首を傾げて語るパン屋の女性に、乙女は首を振る。
「そうもいきませんわ。だって相手の手口がまったく分かりませんの。
 応援演説担当者に接触したことだけは確かですのに……何をされたのか、その翌日から担当者は急に自堕落になってしまい……」
「そう……それは大変ね……」
 メタリカ女学園に毎日パンを納める鉄帝パン屋の美女。
 君は、彼女の名を知っている筈だ。
 彼女の過去を、聞いたことがあるはずだ。
「七草・ペン子さま。お友達に籠絡術にお詳しいかたがおられましたら、教えてくださいまし」

●元美少女生徒会長にしてベーカリー・シェパードパースの看板娘。『薺ダメンズ妖精拳』七草・ペン子!
「間違いないわね。『薺ダメンズ妖精拳』が、何者かにコピーされたみたい」
 メタリカ学園体育館裏。乙女たちが秘密の逢瀬(果たし合い)を行なうことで知られる場所より、黒い花弁のオーラを拾い上げた七草ペン子。
 彼女はその場に集まった『八人の転校生』および案内役の雷子へと振り返った。
「それも、派閥の中でも禁忌の外法として封じられていた『黒百合ダマリア妖精拳』として、ね」
「あの黒百合ダマリア妖精拳ですの!?」
「知っていますの雷子さま!」
「ええ、ペン子さまがかつての世界でお振るいになられた『薺ダメンズ妖精拳』は男を籠絡し堕落させその落差を美少女力へと変換する恐るべき流派。
 その対となる『黒百合ダマリア妖精拳』は同性の乙女を籠絡し堕落させることで乙女心を吸い上げるという邪道の拳!
 まさか、ペン子さまが闘技者時代にお見せになった技を悪しき形でコピーしたお方がいらっしゃるだなんて……!!」
 解説のためだけに存在してるかのような便利さをみせる雷子に、ペン子は悲しげに頷いた。
「これも私のまいた種。なら刈り取るのは私の役目……けれど、学園を退いてただのパン屋さんとなった私の出る幕じゃないわ。
 だから、ね?」
 ペン子の視線が『八人の転校生』……つまりあなたたちへと向けられた!
 あなたは今、ペン子の美少女メイク術『愛叉礼弧棲女』によってまごうことなき学園の乙女へと変わっていた。
 そして、八人の中に凜として聳え立つ、巌のごとき美少女、咲花・百合子(p3p001385)!
「やることはとってもシンプル。
 『公開炎絶』の応援演説者となって、ギャル派代表『黒百合リリー』を倒すの。
 きっと相手も精鋭を揃えてくる筈だわ。
 けれど――勝てるわよね? 深き乙女心を秘めた、あなたなら」
 百合子は深く、そして強く頷いた。
「応――ッ!!」

GMコメント

 このシナリオは!
 乙女シナリオである!
 全参加者は!
 強制的に!
 乙女と化すのだ!

【乙女の転校生】
 皆さんはメタリカ女学園の急な転校生となり、『生徒会総戦挙公開炎絶』に出場します。
 ペン子さまの美少女メイク術とJK制服やウィッグによりどういうわけか皆さんはやんごとなき美少女と化しています。
 元から美少女の方もJKバージョンとなり、元からJKだった人は実家のような安心感に包まれます。
 ここではできるだけ乙女らしさを演技しておきましょう。
 具体的にはできるだけ上品なことばを使い、折角なら名前の語尾に『子』をつけましょう。

【乙女のルール】
 メタリカ女学園は乙女の学園。
 乙女心を拳に込めて、降りかかる全ての難を打ち砕き、野望への道を突き進む。
 よって乙女心を失った者は即刻学園を追放されてしまうのだ!
 それゆえ全ての乙女はお上品に、そして乙女らしく振る舞うことが求められている!

【公開炎絶】
 清楚派『月見草マツヨ』VSギャル派『黒百合リリー』
 この二つの勢力がぶつかり合い、来期生徒会長を決する戦いをしています。
 これまではそれぞれの代表が己の拳と乙女心で勝ち抜いてきましたが、真の王とは臣を信じるもの。
 今回は『応援炎絶』といってそれぞれの代表を支持する八人の乙女が全乙女監視のもとでぶつかり合います。
 皆さんのお相手となるギャル派乙女は以下の八名。

・クラスファラオの妙光
 二台持ちしたスマホによるネットワーク魔術でクラスメイトを全てギャル派に染め上げた女。リーダーシップの化身。
 味方の強化能力に長ける。
・女騎士団長の善昌
 メタ女騎士道部を征服しギャル派の拠点とした女。
 クラスは姫騎士。精神耐性をもち狂気BSを用いる。
・乙女空手黒帯の徳善
 ギャル派道場にて乙女空手の黒帯をもつ格闘のエキスパート。
 防御無視攻撃を得意とする。
・ギャルスナイパー長天
 メタ女ライフル部をギャル派閥に染め上げた女。
 狙った獲物は逃がさないと評判でアンガーコールなどの厄介な狙撃スキルをもつ。
・乙女ロビンフット宝蔵
 メタ女アーチェリー部にて邪魔者を次々と暗殺した結果部長となった女。
 クリティカル性能の高い狙撃スキルを多く持つ。
・ギャル式お姉様の西福
 クラスはお姉様。ギャル力、乙女力、姉力のトライアングルパワーは無限の拳圧を生み出すという。
・乙女妹界のパイオニア宗川
 クラスは妹。ギャル力、乙女力、妹力のトライアングルパワーは未知の嵐を生み出すという。
・サークルクラッシャー勢至
 所属したサークル全てをクラッシュしてきた伝説の破壊神。通称桜姫。
 ブレイク攻撃や崩し系BSに優れる

【おまけ解説】
 魁メタリカ女学園とは!
 乙女たちが乙女心でぶつかり合う乙女たちの戦場である!
 乙女心を失った者に生徒たる資格はない!
 なお! 前回一度だけローレットはメタ女に潜入したことがあるのだ!

『魁、メタリカ女子学園! 命短し、鍛えよ乙女!』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1182

【アドリブ度(ハイ乙女)】
 この学園では乙女たることを求められ、たとえプレイングに乙女らしさが書かれていなくても例外なく乙女となります。
 けれど宗教上の理由でプレイングにないことをされちゃ困るよというかたはプレイングに『アドリブNG』と書いて送ってください。該当描写をカットします。
 逆に、我が乙女道に後悔無し。乙女の覚悟は完了せり。というかたはプレイングに『乙女歓迎』ないしは『美少女歓迎』と書き込む暴挙に出てください。

  • 魁メタリカ女学園 生徒会総戦挙公開炎絶完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月21日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
武器商人(p3p001107)
闇之雲
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
雛森・ケイ(p3p001624)
雛菊可憐徹甲拳
不破・ふわり(p3p002664)
揺籃の雛
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

リプレイ

●乙女とは! 世界を生き抜く力の名! 乙女心とは! 力を宿す器なり!
 七草・ペン子の美少女メイク術『愛叉礼弧棲女』によってまごう事なきメタリカの乙女となった『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
 彼女は鏡にうつる麗しき顔つきに目を細めた。
「吾的には美少女力を盛るのは不本意であるがー」
「文句言わないの。潜入捜査に虚偽はつきものでしょ」
「であるがー」
 ペン子に背中を叩かれ、渋々手鏡をしまう百合子。
「しかし、まさか子供の頃に聞いた冷酷非道の生徒会長がこんな所でパン屋の看板娘とは」
「意外?」
「で、あるが。清楚というのは吾の第一属性故。協力するのはやぶさかではないである――否、ですわ!」
「そう言ってくれると思った」
 ペン子七十七の必殺技、男をダメにする笑顔をデフォルトで使ってくる。
 が、それをはねのけてこそ乙女。
 『雛菊可憐徹甲拳』雛森・ケイ(p3p001624)は眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、コンパクトミラーのなかに映る自分をいまいちど眺めた。
「こちらの世界へ来た際に随分と未熟な体になってしまいましたが……なんだか背伸びをするようで楽しいですね」
 ぱたんと閉じるコンパクト。
「魁メタリカ女学園の生徒会総戦挙……その『文化』いかほどのものか。見せて貰いましょうか」

「え、え……?」
 『揺籃の雛』不破・ふわり(p3p002664)は困惑していた。
 美少女とか乙女とか急に言われても困るし。女学園に潜入とか言われていきなりJK服を着ている自分にもびっくりだし。
「ど、どうしましょう……とりあえず『乙女心』は持ってきましたが……」
「メイデンハートはスピリットにもつもの! ですわ!」
 『神格者』御堂・D・豪斗(p3p001181)が謎の後光をさしながら乙女ゴッドのポーズで現われた。コロンビアみたいなポーズである。
「フラワーズの火花散らす戦いというのもゴッドは楽しくウォッチングさせてもらっているが……このようなバトルもまた善きもの!」
「え、え……?」
「ゴッドも御堂・D(ですわ)・豪子として参戦させてもらおうではないかですわ! 無論、名をコールするはゴッドで善いがですわ!」
「え、ええっ……!?」
 他の理解を一切必要としないスタンドアロン発光体ゴッド。
 ふわりは乙女と美少女とゴッドという三つの存在感に気圧されていた。
「まあまあ。大丈夫、なんとかなるって」
 『美少女宣言!』イリス・アトラクトス(p3p000883)がにこやかに肩を叩いてきた。
「そ、そうですね……」
「美少女とは、あり方。今その真価が問われようとしているわけね」
「えっ」
「私にとっても、自分がどこまで美少女としてやっていけるかを試す場としては……ちょうどいいのかもしれないわね!」
「えっ……」
 だめだこの人もあっち側だ。

 ガン、と鋼の拳を打ち合わせる『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)。
(いつものトンチキ鉄帝シリーズかと思いきや、何だか雰囲気が物々しいでありますな。この威圧感……いやさ美少女感と申すべきか)
「なまなかな乙女心では吹き飛ばされてしまうでありますが……なめんじゃねーであります」
 エッダつよいこ鉄帝の子。
 闘志燃料を魂の炉にくべて、乙女心を燃やすのだ。
「本当の美少女とは如何なるものか、教育してやるでありますよ!」
「あらあら、ヒヒヒ……」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)はしゃんなりと『しな』を作ると、見事に乙女ざまを振る舞ってみせた。
「乙女心を燃やすのが早いですわ。エッダ子さま」
「えっだこさま!?」
「わたくしのことは武器子(武器庫のイントネーション)とお呼びくださいませ」
「ぶきこ!?」
「あらあら、うふふ」
 『名誉乙女』アオイ=アークライト(p3p005658)が短いスカートの裾をつまんでお行儀良く頭を垂れた。
 乙女は礼にはじまる。
 それは『我が首切り落として見せよ』の姿勢であり常在戦場の意志をあらわすものだ。
「葵子でございます。こうなってしまっては仕方ありませんね、乗りかかった船というものですわ。この公開炎絶、必ずや私達清楚派がギャル派を打倒して見せるのですわ……ですわ!」

●公開炎絶――開炎ッッッッ!
 打ち鳴らされる大太鼓。
 せり上がる円柱型ステージ。
 燃えさかる炎を背に、十六人の乙女が立ち並ぶ。
 観客席の中には七草・ペン子が美しくウィンクをしている。
「清楚派代表――月見草マツヨ、炎絶台へッ!」
 長い黒髪に清楚そのものといった風貌。周囲にはクローバーの葉のごときオーラが舞い自然と野ウサギが集まっている。
 その圧倒的乙女心に、百合子も息を呑んだ。
「ギャル派代表――黒百合リリー、炎絶台へッ!」
 対するは金髪に浅黒い肌。ピアスやルーズソックスという古代兵器を身に纏い、されど強烈な乙女心をもついにしえのギャル。
「チョベリバですわ」
 古代呪文を容易に操る彼女の口から、嫌悪と怒りが漏れ出た。
「月見草さま。よく応援者を集められましたわね……」
「持つべきは人脈。黒百合さまもよくご存じのはず」
 ババッとお互いに指を突きつける。
「今こそ学園をわける両派閥。その決着をつける時ですわ!」
「受けて立ちますわ。親衛隊――!」
「「お任せくださいお姉様ッ!」」
 ギャル派八神将とも恐れられる八人の乙女応援者がそれぞれの武器を構える。
 対するはイレギュラーズ。
 世界の特異点。
 それは乙女世界でも例外ではない。
「破滅を覆すその乙女心――ごらん遊ばせッ!」

「北に乙女が必要との声を聞けば飛び出さずにはいられない。ネオ・フロンティア産美少女、イリ子・アトラクトス――!!」
 イリス……いやイリ子は背後にアトラクトスのオーラを纏うと先陣をきって走り出した。
「よろしくお願いいたしますわ!!」
「ごめんあそばせッッッ!」
 瞬間ッ! 風圧ッ! 衝撃ッ! 爆破ッ!
 先頭にたったイリ子の心臓めがけ『乙女空手黒帯』徳善の乙女正拳突きが炸裂した。
 まるで身体が千切れるかと思うほどの衝撃。しかしイリ子は乙女アトラクトス護ノ型をとることで衝撃を鱗にはう水のごとく流した。
「必殺の拳が受け流された? あなたはもしや――」
 不敵に微笑むイリ子。
「何を遊んでるのよ!」
 そこへ飛びかかったのは『サークルクラッシャー』勢至。
「我が剣に崩れ去っちゃいなさい――詐狂暗囚!」
「なんのっ!」
 弾丸の如く割り込むエッダ。
 鋼の拳が勢至の流星フライングキックを受け止める。
 悪しき乙女心による崩壊の術がエッダの身体を走るが、エッダはそれを鋼の乙女心で打ち破った。
「なんですのっ。学園にメイド服などきてきて――メイドのつもりですの!?」
「即時訂正をもとめるであります、ですわ! しねぇ! ですわ!」
 エッダの鋼鉄拳と勢至の崩壊脚が交差。
 交わる乙女心が火花となって蒼天を刹那に赤く染めあげる。
「あの乙女。ただの乙女ではないでありますわね」
「それでも血は流れますわ。血が流れるなら、殺せますわ」
 『ギャルスナイパー』長天と『乙女ロビンフット』宝蔵。
 彼女たちによる集中スナイプがエッダへ迫る――が。
 ゆらりと割り込んだ武器商人……否、武器子の身体に直撃。ぐらりとゆらめくが、まるで何事もなかったかのように立ちなおし、スカートをつまんでしなをつくる。
「我(アタシ)如きか弱いモノの歩みを止められぬ様では御里が知れてしまいましてよ、麗しの乙女達」
「この乙女……!」
 礼儀作法と流派を貶められたことに、長天と宝蔵はぎりぎりと歯を鳴らした。
「死の舞踏を踊りあそばせっ」
 急所を打ち抜くスナイプ。心臓や頭へ突き刺さる矢。
 通常なら死に絶えてもおかしくない武器子はしかし、不死身の乙女心で立ち上がる。
「あらあら……ヒヒヒ……」
「目先の相手にとらわれては大局を見失いましてよ」
 アオイ……否、葵子はスカートを可憐に翻すと、踊るように星の光を集め始めた。
 星に祈るは乙女の作法。
 君が指さす夏の三角。
 集めて束ねた光の矢を、葵子はメカニカルワンドへつがえた。
 歯車の魔方陣が回り、架空の弦がおおきく満ちた。
「『乙女祈る流れ星(シューティングスター)』!」

 拳をぶつけるのみが戦にあらず。
 クラスカーストの頂点、『クラスファラオ』妙光はA&I二台持ちのスマホネットワーク魔術を展開。
「流派結束(グループライン)!」
「神格乙女絶唱歌(ゴッドウィズユー)!」
 対して! ゴッドは大きくのけぞった姿勢から後光を輝かせた。
 ゴッドが乙女と共にあるとき。ゴッドのブレスはソウルへ届く。
 スマホの輝きに照らされる妙光に対し、ゴッドは自らの輝きで対抗する。
「フッ――ギャル派の八人はパゥワーとリーンフォースによるクラッシュを目的としたチームだですわ! 対してこちらはヒールとディフェンスによるロングバトルを想定したチームですわ! 相性ではこちらが悪い。しかし――乙女心ではどうだですわ!?」
 カッと振り返ったゴッドに、ふわりは軽くおびえた。
「えっ、その」
「乙女心がスパークしている限りゴッドアンドメイデンは不滅なのだですわ!」
「は、はい!」
「ゆくのだですわ!」
「はい……!」
 ふわり……否、ふわり子は拳に乙女心を、胸に乙女心を、踏み出す踵に乙女心を抱いて飛び出した。
「目指すは乙女の一番星……魁メタリカ女学園初等部1年、不破・ふわり子。先輩方に挑ませて頂くのです」
「あの幼き乙女はわたくしにまかせてくださいまし」
 『女騎士団長』善昌は黄金の剣を抜いた。
 剣に刻まれた文字は『生涯乙女絶対不滅』。
「ギャル派騎士道部として、逢い引きを申し込みますわ!」
「逢い引きを……!?」
 乙女たるもの! 逢い引き(一騎打ち)を申し込まれれば引くことは恥!
「我が剣に狂うがよろしいっ!」
「ま、まけません……!」
 ふわり子は交差した腕の乙女心で善昌の剣を受け止めた。
 剣に込められた狂気の呪い。
 されど、呪いと共に生きたふわり子の眠れる乙女心には通用しない!
「乙女心……良い文化ですね」
 ケイは眼鏡をなおすと、『文化祭実行委員』と書かれた穴あきグローブを両手に握り込んだ。
「しかし他を堕落させ血塗られた玉座に座ろうという――ギャルは悪い文化です!」
 張りし出す、ケイ!
「文化祭実行委員長。雛森・ケイ。あなた方の文化を侵略させていただく所存です……ですわ」
 文化祭。文化砕を語源とし旧来の悪しき文化を砕き新たに創造する美少女たちの祭典。
 その実行部隊である彼女の拳は、レベル制限こそうけども込められた想いと使命は無傷。
 狙いは、相手のメインアタッカー徳善。
「雛菊可憐徹甲拳――突!」
「させませんわ、姉式抱擁拳!」
 西福の拳とケイの拳が正面から激突。
 マシンガンの如く繰り出される両者の拳が互いの空間に圧の壁を生み出していく。
 壁を削る、作る、更に削る。まるで戦争のごとき空間の奪い合い。
 その横腹を狙うは百合子の飛翔脚。
「ごきげんよう……!」
 空中にて鮮やかにカテーシーをかける百合子はまさしく乙女。
「ごきげんよう……!」
 対して荒々しく飛翔した宗川。
 乙女が向き合いカテーシーをされたならばカテーシーを返すが乙女の礼儀。「妹式奔放脚!」
「白百合清楚殺戮拳――流!」
 奔放に振る舞う妹の如く高速かつ連続で繰り出される蹴りに、百合子は清楚なる受け流しによって対抗していく。
 交差! 着地! 反転、激突!
 宗川と百合子の剣がととき手刀が交差し、鍔迫り合いのようにがちがちと震える。
「ただならぬ美少女――!」
「たらならぬ乙女――!」
「「相手にとって不足なし!!」」

●乙女たれ
 乙女アトラクトス喰ノ型。
 徳善の脇腹をえぐるように打ち抜くイリ子の右手が、徳善の乙女顔を打ち崩した。
「ぐはあっ!?」
 血を吐き、膝を突く徳善。
 乙女たるもの乙女であることを忘れてはならぬ。たとえ骨折れ臓物のすべてが潰れようとも、笑ってごきげんようと言えねば乙女たりえぬ。それがメタリカ女学園の定めなのだ!
「乙女――失格ッ!」
 スキンヘッドの巨乙女がラーメンどんぶりを片手に指をさした。
「そんな、まだ戦えますわ!」
「見苦しい。見苦しいですわ!」
 ナイフを抜いて飛びかかろうとする徳善に、イリ子は乙女アトラクトス爆ノ型による双掌打を打ち込んだ。
 血涙を流し崩れ落ちる徳善。
 が、イリ子とて満身創痍。徳善の防御を無視した乙女空手によって身体は限界にあった。
 胸を押さえ膝を突くイリ子。
「今ですわお姉様!」
「あれをやるわよ!」
 宗川と西福は同時に跳躍。
「「雷神姉妹脚!」」
「ムーブフォワード、キープムービングフォワード――」
 エッダ……否、エッダ子は両腕を翳した鉄壁のガード姿勢で二人のキックを受け止めた。
 浸透するダメージを大地へと受け流す。
「お姉様!」
「ええ……!」
 姉妹の誓いを交わした無限の連打がエッダ子を襲う。
 しかしエッダ子は微動だにせず。
「自分が何かとお思いか。ただの一歩を百度踏めば、敵は我が陣中に在り。……錬鉄徹甲拳のエッダ・フロールリジであります!」
 どころか! ずんずんと踏み込んでいくではないか。
 攻撃しているのは姉妹のほうだというのに、押されているのは姉妹側!
「ギャル派の姉妹は悪しき文化――粉砕します!」
 ケイの文化を帯びた拳が姉妹へと襲いかかる。
 さらには武器子のショットガンブロウが炸裂。
 姉妹を押し込んでいく。
 反撃を入れるも武器子はゆらゆらとかわすばかり。
(ぶん殴られながら戦うのが本領の、薺の如き乙女の戦いぶり。つまりは……)
「ぺんぺん草」
 観客席の誰かがぽつりと呟いた。
「「ぎゃあ……!?」」
 ケイ、エッダ子、武器子の拳がそれぞれ姉妹の乙女心を打ち払う。
 そこへ――!
「桜内部崩壊拳」
 三人のなかへするりと入り込んだ勢至の拳が流れるように命中。
 一瞬のことに心を奪われた三人は、ばたばたと倒れてしまった。
「無数のサークルを破壊してきた私にかかれば、このくらい――」
「あらあら……」
 背後。ゆらりと立ち上がる武器子。
 ハッとして振り返る勢至の首筋に、武器子の手刀が叩き込まれた。
「そんな、確かに壊した……は、ず……」
 白目をむいて崩れ落ちる勢至。
 素早い回復を求める武器子。だがそれよりも早く、長天のスナイプが武器子を打ち抜き、今度こそ倒れさせた。
「何――クイックドロウですわ!?」
 ゴッドは驚きに目を見開いた。
「ふせてくださいましっ!」
 ゴッドの腕を引き、強引にヘッドショットを回避させる葵子。
 狙った獲物は逃さない長天。そして暗殺のエキスパート宝蔵。
 彼らの存在は殆どの前衛メンバーを喪った今、非常に厄介だ。
 であると同時にゴッドと葵子は優秀なヒーラー。しかしその優秀さは長期戦にこそ生きるもの。相手の防御を崩し味方を強化し強引に破壊するギャル派八神将とは非常に相性が悪いのだ。
「どうすれば……」
「うろたえてはなりませんわっ!」
 ふわりが。否、大乙女ふわり子が声を上げた。
 眠れる乙女が覚醒し、カリスマ乙女へと進化したのだ。
「この乙女……戦いの中で進化するというのでありますか?」
「恐ろしい乙女……!」
「パワーをわたしに!」
 ふわり子は両腕を振りかざした。
 こくりと頷きあうゴッドと葵子。
「その乙女心――乗りましたわ!」
 葵子は星の光をあつめ、ふわり子へと降り注がせる。
 一方でゴッドは自らの神光をふわり子へと浴びせかけた。
「メイデンたちよ、パゥワーをふわり子に!」
「ふわり子――突貫ですわ!」
 拳に宿した聖なる光。
 拳に宿した星なる光。
 その二つを祈るように握り合わせ、ふわり子は突撃した。
「その程度の光、我が騎士道の前には――!」
 善昌が乙女黄金剣によって突撃する。
 激突!
 収縮!
 瞬光!
 爆砕!
 かくして残ったのは、祈るように組んだ拳を突き出すふわり子であった。
「ごめんあそばせ……」

 頂上決戦、とでもいおうか。
 跳躍し、繰り出された百合子の拳はクラスファラオ妙光のダブルスマホによって防がれる。
「チョベリバ……」
 百合子が乙女心を拳に込めたその途端、妙光のスマホの一つがひび割れる。
「わたくし一人きりになれば弱いとお思いかしら――『不協不和(ネガティブキャンペーン)』!」
 百合子を覆う悪しき気配。
 それを。
「清楚の道は揺るがず、ただただ己の高みを目指す孤高の道。例えその道に壁が立ちふさがろうとも砕き貫く剛の道。生徒会長とは全ての乙女の頂点! 頂点とは! 己の道を誇れる者をいうのである!」
 百合子は己の説得力のみで粉砕した。
「破ッ!!」
 続けて粉砕されるスマホ。
 妙光は悲鳴をあげて吹き飛び、ハッとして振り返る黒百合リリーにぶつかった。
 台から転げ落ち、燃えさかる眼下へと落ちていく。
「ふふふ、はははははは! ギャル派は必ずよみがえりますわ! 怠惰の名のもとに、ごきげんよう……みなさまァァァァァァァアアアアアア!!」

●第一部――完!
 かくして!
 メタリカ女学園生徒会長は清楚派代表月見草マツヨとなった。
 だが乙女たちはまだ知らない。
 学園に忍び寄る魔の影を……!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 第一部、完!
 第二部――魁メタリカ女学園『恋する乙女』を待て!

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