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シナリオ詳細

<ジーニアス・ゲイム>影が動くは曙に

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●密やかに
「はは、すんませんねーホント」
 軽い口調で謝罪の言葉を口にした青年。氷のように冷たい視線が注がれ、肩を竦める。
「まさか『彼』がやられるとは思わなかったんですって。話に聞いてはいたけど、ちょっと舐めてたなぁ」
「それに関しては同意だな」
 声を上げた男は苦々し気な顔を浮かべた。無理もない、彼ら──カメレオン盗賊団、もといカメレオン部隊は自他ともに認める実力の持ち主たちだ。しかしこれまでイレギュラーズと接触しなかったことは、果たして幸か不幸か。
 幻想へ侵入する代償として数名の戦力を失ったのは大きな痛手だ。

 ──故に、同士で協力することにした。
 橋頭堡となる町をイレギュラーズたちに奪還されたトープ部隊と、戦力を削がれながらも無事幻想へ侵入したカメレオン部隊。そしてさらに他の部隊でイレギュラーズに敗れ、逃げのびた者達も戦力に取り入れる。質はイマイチだが、量はまあまあと言ったところだろう。
 男が幻想の地図を広げた。彼らが今駐在する、占領した村の位置を男は指し示す。
「ここからさらに北を目指す。おそらく奴らも再び立ちはだかってくるだろうな」
 王都までの道のりに広がるのは草原。幾つかの分岐点は存在するが、最も早いのは草原を突っ切っていく順路だろう。
 しかし男はその道ではなく、手前の分岐点から続く森へ指を滑らせた。
「俺らはこの森を抜け、王都近くの町を陥落させる。森を抜けるまでの間はアルナブ、あんたに引き付けを頼みたい」
「引き付け……囮ってことですか」
 青年──アルナブは小首を傾げて問い返す。『確認を取る』という言葉が正しいのだろうが、彼の瞳は笑っていない──囮という役目に納得していない。
「不満か?」
「是か否かと言えば。あからさまな捨て駒だ」
 アルナブの言葉に男は小さく笑った。
「そりゃすまない、言葉が足りなかったな。俺は可能な限り戦力を手放さねぇ。あんたは極力奴らを引き付けて、良い感じの辺りで撤退すりゃいいのさ。その後は森を通って合流だ。なに、ウチからも何人か出す」
 男の視線がアルナブの横へ移る。そこにいるのは彼と共に幻想へ足を踏み入れた盗賊達だ。
「回復手がいれば、よほどの事態にはならんだろう。心配なら嘘の情報を流せばいい。向かってくる人数が減ればやりやすいさ」
「そんなに上手くいきますかねぇ。ローレット──イレギュラーズ相手に」
 アルナブの言葉に上手くいかなきゃ困る、と男は小さく肩を竦めてみせた。

 朝日も目覚めぬ曙に、彼らは外套を纏って動き出す。

●ローレットにて
「北部は加勢、南部は撃退……忙しいね」
 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は依頼書に目を通すと「ん、」とイレギュラーズへ差し出した。
 流し読みするに──これは砂蠍に関することのようだ。
「さっきショウに渡されたのさ。先日、幻想に侵入した盗賊団。彼らに動きがあったんだ」
 カメレオン部隊となのる盗賊達は険しい道とイレギュラーズを退け、幻想へ踏み込んできていた。彼らは削れた戦力を補うように他の盗賊団を誘い込み、近くの小さな村を占拠したのだ。
 そんな彼らに関する噂──いや、情報と言った方が良いか。

 『近々王都へ向けて動き出す。最短ルートである草原と、遠回りとなる山道の2手に分かれて挟み込むつもりだ』

 流れて来た情報に、しかしローレットの情報屋は鵜呑みにはしなかった。
「恐らく彼らは直接王都に向かわない。その前にある町や村……そうだな、この辺りをまた占拠しようとするんじゃないかって」
 シャルルは広げられた地図の、王都よりほんの少し離れた町や村を示した。
 王都には貴族達の私兵が王を守るため、駐在しているだろう。そこへ疲弊のあるまま襲撃しに行くとは考え難いようだった。
「なら、どこを通るのか? ってショウたちが怪しんだのがここ、赤い丸のとこ」
 地図に書かれた丸は、占拠された村から王都に向かう道の途中に描かれていた。とは言っても、大分道から逸れるのだが。
「ただ、2手に分かれる話は嘘じゃないみたいだ。草原の道を進む余所者っぽい男達と、予想通り森へ向かう影が幾つか。まだ気づかれてはいないみたい」
 どちらも迅速に、かつ確実に。離れているうちから迎撃するに越したことはない。
 シャルルは王都へ続く草原にも赤い丸を付ける。
「数が多いのは草原の方。でも、聞いた話だと寄せ集めっぽいらしいから……強いのはおそらく、森に行った方。草原の方は数が多いから、幻想貴族が助力してくれるって。あと、ボクも行く」
 その言葉に視線がシャルルへ注がれる。シャルルは顔を上げると目を瞬かせた。
「……そりゃ、アンタたちほどではないけれど。ボクも少なからず戦えるよ。得意なのは神秘系統。後ろからの攻撃ができる。傷を癒したりはできないけれど、少しは力になれるはずさ」
 派遣される貴族兵はシャルルと異なり前衛型。支給された剣と盾を持ち、イレギュラーズの作戦には基本的に従うと言う。
 イレギュラーズ10人のみで対処できる敵の戦力ではないが、貴族兵とシャルルも加わればある程度突破口も見えてくるかもしれない。
 誰がどう動くのか。イレギュラーズ達は視線を地図と依頼書に落とした。

GMコメント

●成功条件
 トープ部隊、及びカメレオン部隊の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報そのものは確かですが、不明点も多いため予期せぬ事態となる可能性があります。

●敵軍
カメレオン部隊
 『<刻印のシャウラ>危険区域を進む影』にてイレギュラーズを振り切り、幻想内へ侵入した盗賊達です。
 前作で脱落した者がいることにより、人数が減っています。全員飛行種です。
 警戒心が強く、周囲把握に長けています。連携する動きも目につきます。

・盗賊(片手剣)×3
 武器に毒が付与されています。また、小型の盾を装備しています。
 投げ道具を持っているとの証言もありますが、定かでありません。
 小柄で回避に優れます。

 攻勢(自付与):物理攻撃力と命中を上げます。【副】

・盗賊(槍)×2
 武器に毒が付与されています。
 防御技術に優れます。

 カウンター(P):至近、近距離で攻撃を受けた場合、30%の確立で相手へ通常攻撃を行います。【崩れ】

・盗賊(弓)×2
 矢に毒が付与されています。中~遠距離攻撃を主とします。
 命中に優れます。

 洞察力(自付与):反応を上げます。【副】

・盗賊(杖)×2
 杖を持っています。支援を主とします。
 神秘攻撃力・EXA・EXFが優れており、AP数値も高いです。物理攻撃力はそれほどでもありません。

 回復(神中単):1人を回復します。
 集団治癒(神遠範):範囲内の味方のみを回復します。回復量は単体回復より劣ります。
 守りのベール(神中列):味方に守りのベールを張ります。回避と防御技術が上がります。
 充填(P):APを一定量回復します。


トープ部隊の青年(銃)
 後衛物理型、トープ部隊の司令官です。OP中で『アルナブ』と呼ばれていた青年です。人間種。
 防御技術・回避に長けています。


雑兵×30程度
 名前のままです。トープ部隊の生き残りもいれば、逃げのびた所を拾われた者もいます。
 人間種と獣種で構成されており、剣や斧を持ちます。
 一般人よりは戦えますが、数に物言わせる戦い方です。
 HPやEXFの優れる傾向があります。

●ロケーションと敵位置
 以下のいずれも、イレギュラーズは王都側から向かって迎撃する形となります。

・草原側
 視界良好。隠れる場所もありません。
 雑兵とアルナブ、カメレオン部隊の片手剣持ちと杖持ちが1人ずついるようです。

・森側
 木々によりやや暗めですが、夜目が効かないなどでない限りは支障ありません。隠れる事もできます。
 森の出口から歩いて30分程度の場所に村や町が点在しています。
 草原側に加勢している者以外のカメレオン部隊は森へ進んだという情報がありますが、詳細な位置は不明です。

●友軍
・貴族私兵×30
 幻想貴族がローレットへ派遣した友軍となります。全員が片手剣と盾を装備しています。
 一般住民よりは戦えますが、イレギュラーズや盗賊たちには役不足といったところ。
 イレギュラーズの指示には基本的に従います。

・シャルル(p3n000032)
 イレギュラーズ。旅人であり、薔薇の精霊が姿を持ったモノです。
 実力は皆様に劣りますが、雑兵相手には引けを取らない程度です。
 後衛神秘型で、草原側にて雑兵迎撃に当たります。イレギュラーズの指示には無理の無い範囲で従います。

●ご挨拶
 愁と申します。
 前回の全体シナリオを読まなくても参加いただけますが、読むと敵の雰囲気を掴めるかもしれません。
 OP中の『●密やかに』はPL情報となります。PC情報に落とし込む際は予測等の形として下さい。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • <ジーニアス・ゲイム>影が動くは曙にLv:8以上完了
  • GM名
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2018年12月15日 22時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)
咎狼の牙
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
メルナ(p3p002292)
太陽は墜ちた
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊

リプレイ

●2手に分かれ
 侵入した砂蠍は今この瞬間、各地で争いを起こしている。王都でも賊の侵入があったと情報はあったが──受けた依頼(オーダー)をこなすのがイレギュラーズの仕事だ。
 王都から南へ。そこから更に草原へ向かう者と森へ向かう者に分かれる。
 その、ほんの少し手前で。
「シャルル」
 名を呼ばれた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は移動速度を落とさずに視線をそちらへ向けた。
「シャルルも、今回は戦うんだってなぁ……!」
 健闘を祈ってるぞと告げる竜の少女、『世界喰らう竜<ワールドイーター>』ヨルムンガンド(p3p002370)にシャルルは頷いてみせる。
「ヨルムンガンドこそ……」
 言いかけるものの、もう分かれ道がすぐそこに。
 刻一刻を争うこの最中、歩調を緩めるわけにもいかず。2人の視線は交錯しながらも、シャルルの常の声量では届かない距離になってしまった。
 口の形だけが『勝ってきなよ』と形作る。
「……聞こえたかな」
 いいや、聞こえていないだろう。
 軽く頭を振ったシャルルに『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が気遣わしげな声を上げる。
「シャルルさん、大丈夫ですか?」
「うん。問題ない」
 迷いのない口調にアルテミアは「そうですか」と短く返し、正面を向いた。
(……入り込んだ砂蠍が遂に動き始めて慌ただしくなってきたわね)
 慌ただしくなったのは砂蠍だけが理由ではないが──偶然か必然か、アルテミアには知る由もない。だが、北部を鉄帝に抜かれるわけにいかないのと同時に、幻想へ侵入を果たした砂蠍に好き勝手されるわけにもいかないのだ。
「シャルルさんと貴族兵の方は集まって頂けますか」
 草原の入り口を過ぎた辺りで1度足を止め、アルテミアは声を上げた。いつもと異なる状況に置かれた兵たちも、その凜とした声に彼女へ視線を注ぐ。
「皆さんを統率するアルテミア・フィルティスです。どうぞよろしくお願いします。
 今回ですが、鶴翼の陣で敵を迎え撃ちます。まず、防御に覚えがある方はいますか?」
 鶴翼の陣、という言葉にピンときているものはあまり多くない。薄く困惑の色が広がる中でパラパラと手が上がる。
「ありがとうございます。では次、攻撃に覚えのある方は?」
 こちらもパラパラと挙手が増えるが、数に大きな差は見られないようだった。
 アルテミアは兵たちが見やすい道の上に、剣で土を削って陣の形を書いていく。
「この形が鶴翼の陣です。
 防御に優れる方は敵を食い止めるように立ち回り、攻撃に優れる方は両側から敵を包み込むように包囲します」
「敵を逃がさない、って感じか。ボクはどうしたらいいかな。攻撃側に回る?」
「シャルルさんは遊撃として、貴族兵の方の援護をお願いします」
 わかった、と頷くシャルル。代わって貴族兵の1人が声を上げた。
「これで本当に大丈夫なのか? もし俺たちがやられたら王都に……」
「なにを言っておる。妾たちがいるのじゃよ」
 ずいっと兵の前に立ちはだかった『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)。少女から発せられたとは思えぬ声量が兵たちに確りと響く。
「お主らには妾たちイレギュラーズの助力もある。普段から主の力になるべく、鍛錬もしておるのじゃろう?
 自信を持て。存分にその力、見せつけるのじゃ!」
「私たちも力を尽くします。ですがこの先の町に被害を出さない為にも、協力をお願いします」
 デイジーの声が彼らの胸の内へすっと入り、またアルテミアの真摯な言葉が彼らの心を揺り動かす。
 兵たちはそれぞれ顔を見合わせ、やがてイレギュラーズを見て頷いた。──そこに先程まで見え隠れしていた不安は既にない。
 『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は正面よりやや視線を上げ、空に敵影を探す。
 くすんだ青色の空は不安を抱かせるようだが、幸いにして敵影と思しき姿はない。
 広く、隠れる場所もない草原。敵に飛ばれる可能性はあるが、足場を気にしなくて良いので谷での迎撃時よりは比較的楽な状況だろう。
(それにしても……ローレットの情報屋の分析力は大したものですね、本当に)
 谷での発見然り、ここでの別働隊然り。さすが、混沌の超広域を顧客対象とする何でも屋に所属するだけのことはある。
 別動隊の進んでいる森側はそちらへ向かった仲間を信じて任せるしかない。こちらもこちらで、全くもって不安がないわけではないが──。
(寄せ集めの盗賊では、集団同士の野戦にそこまで慣れてはいないでしょうね。此方の兵力も練度は低く事情は同様。
 ……とはいえ、やり様は幾らでもあります)
 士気も作戦もその1つ。敵がどう打って出てくるかわからないが、そこはアルテミアの統率力や仲間たちの支援、そして兵たちの動きによって変わるだろう。
 視線を下ろしたアリシスは地上に現れた複数の影に目を細めた。
「皆様、敵が向かってきたようです」
「わかりました。……説明の途中でなくて良かったわ」
 だが説明のための時間があった分、ここを突破されれば王都は目前と言ってもいい。負けるわけにはいかない戦いだ。

 ──ウオオォォォ……

 敵もこちらの影に気付いたのだろう。声を上げて向かってくる。
 アルテミアは味方前衛に立つと、すぅと息を吸った。
「砂蠍はここで殲滅します。──全員、突撃ッ!!」


●索敵

 ──ウオオォォォ……

「ん?」
「どうしたんだい?」
 ふとあらぬ方向を見た『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)に『魔法騎士』セララ(p3p000273)が問いかける。
「いや、大きな声が響いた気がして……もしかしたら、草原の方かも」
 ほんの微かに浮遊し、音を立てていないが故に気付いたものかもしれない。
 あちらはすでに戦いが始まったのだろうか。各地で戦いが起こっている以上、別の戦場という可能性も捨てきれない。
 だが、あちらはあちら。こちらはこちらだ。
「イレギュラーズを破って侵入してきた部隊……強敵相手だね」
 今回のメンバーには1度彼らと交戦した者も混じっている。彼らの話していた情報を思い出しながら呟く『兄の影を纏う者』メルナ(p3p002292)にルチアーノは頷いた。
「僕たちも頑張らないとね。強い上にチームを組まれるのは厄介だし、僕達はそれ以上の連携を取らないと」
「うん。盗賊団を通したら村が襲われちゃう。ボク達イレギュラーズが守ってみせようね」
 とは言っても、こちらは敵を見つけるところから。スキルに頼らぬ索敵をする3人は木の上を警戒し、罠や人の足跡などがないか観察しながら仲間の索敵情報を待つ。
「私達以外に余所者が森にいないかな?」
 傍の木にそう問うた『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。
 人間は森にとって余所者だ。そう考えての質問が功を奏し、ざわりと葉を揺らした木は素直に答える。
 ──イルヨ。
「何人いるかわかる?」
 ──ナンニン? イル ノハ ナナツ。
「それじゃあ、森のどのあたりにいるのか──」
 アレクシアが木と会話をする傍らで、ヨルムンガンドは枝の上の小動物にそっと声をかけた。
「教えて欲しいことがあるんだが、いいかぁ……?」
 枝の上で止まる動物。ヨルムンガンドはできるだけ簡単な言葉を選びながら、敵に関しての情報を集めていく。
「ありがとう。あと、できるなら一緒に戦ってほしいんだが、……そうか。いや、ありがとうなぁ」
 残念ながら、共に戦うことへの了承は得られなかった。捕獲や狩猟に踏み入る者もいるだろうし、動物にとって人間は恐怖の対象なのかもしれない。
 だがヨルムンガンドは諦めず、別の動物へ声をかけ始める。
 『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は透視と温度視覚を組み合わせ、見えないところに潜んでいないか探す。見上げて木の上も見るが──特にこれと言った反応はなさそうだ。
 周囲の地面や草木に侵入の痕跡がないことを確かめた『咎狼の牙』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)は膝に着いた土を軽く払い、やはり頭上を仰ぐ。
(やはり、まだこの周囲には辿りついていないのでしょうか?)
 セララたち同様に地道な索敵を行っているようにも見えるが、頭の中はフル回転させている。
 敵が目撃された時間と場所、ローレットで見た地図。襲撃されそうな村。彼らならばどう動くかと逆の立場から考え、ルートを考える。
「あっちの方、って言ってたなぁ」
「木々は池を通り過ぎたところって言ってたよ」
「この辺りには少なくともいなさそうだ」
「俺の考えるルートだとこう進むかと思いますが……アレクシア様の仰っていた『池』は地図に表示されていませんでしたね」
 記憶を頼りに簡単な地図を──とは言っても、元の地図が簡素なものだが──地面に書き、仮定のルートを示すリュグナート。
 だが、ヨルムンガンドの告げた『あっちの方』とは方角が合っているようだ。
 一同は一先ずそれを頼りに移動を始め、その先々で再び索敵を行う。
 何度も何度も繰り返した、その末に。
「……っ」
「メルナさん?」
 ルチアーノが訝し気に問うその前で、勢いよく振り向いたメルナがある方向を凝視する。
 嫌な感じがしたのだ。そう伝えるとリゲルが温度視覚で注意深くそちらを観察し──その表情に緊張が走る。
「……いた。こっちに向かってるみたいだ」
 ゆらり、と。赤く蠢く人影が、リゲルの瞳に映っていた。


●剣戟と怒号
 時を遡って。
 2つの勢力がぶつかり合う直前、片方の勢力へ突然の雹が襲い掛かった。どよめく雑兵の中、カメレオン部隊の男はデジャヴを感じて敵勢を見据える。
 敵兵たちの間から見える、黒き聖職者のような装いの女。見た事がある、あの姿は──谷で1度戦ったイレギュラーズ。
「また来やがったのか」
 足を向けようとする男の前に一陣の風が吹いた。月を思わせる銀髪が靡き、蒼玉のような瞳が男を射抜く。
「退きな」
「断ります。貴方たちをこれ以上、好き勝手させないわ!」
 男の前に立ちはだかったアルテミアは双刀を構えて肉薄した。同時にあちらこちらから剣を交える音が響き始め、静かな草原は戦場と化す。
「汝らは誇り高き貴族に仕える兵じゃ。王都への守護は汝らにかかっておる。平和を脅かす卑賎な盗人どもを必ずここで撃滅するのじゃ!!」
「「「おおーーー!!」」」
 貴族兵たちの一際大きな声が上がり、突撃してきた雑兵を中央で壁となった兵士たちが押し留める。
 デイジーはそれより少し離れた所にいた杖持ちの姿を見つけ、大きく息を吸った。
 歌われるのは絶望の海。昏く冷たい呪いを秘めながらも惹きつけられる歌。
 杖持ちと周囲の雑兵が苦しみ始め、また何人かが同士討ちを始める。近くにいたアルナブも眉間に深い眉を寄せ、戦場をぐるりと見回した。
「……いたよ、あの子供が歌い手だ!」
 アルナブの声に反応し、近づいてくる敵にデイジーは大壺を構える。
 だが、接近してくる敵も周囲も敵も纏めて再びの雹が降り注いだ。氷のつぶてが敵の肌を裂き、血を滲ませる。
 アリシスは戦場に視線を走らせると、その柔和な面立ちに眉根を寄せた。
(しぶといですね……)
 予想より彼らは頑強──否、運が良いらしい。倒れそうな者もそこそこ見受けられるが、踏ん張って持ちこたえている。
 だが、ここまでくれば友軍に任せても押し負けることは考えにくいだろう。
(それより危険なのはカメレオン部隊の兵ですか)
 谷で1度交戦した敵。その危険度は身を以って知っている。
 視線を走らせるアリシス。杖持ちはデイジーが少しずつ歌によるダメージを重ね、片手剣を所持した男はアルテミアが立ちはだかって進路を妨害している。トープ部隊の司令官は杖持ちの傍で交戦しており、デイジーの攻撃に巻き込まれながらも回復の恩恵を確りと受けているようだ。
 ならば、優先すべきは杖持ちか。
「加勢します」
 歌い続けるデイジーに声をかけながら、アリシスは漂う雑霊を光る蝶へと変性させた。
 淡い光の舞いは呪いを秘めながらカメレオン兵の元へ。敵は神秘のベールで直撃を免れつつ、杖をかざして回復を試みた。しかし、最早その表情に余裕はない。
 貴族兵たちは手筈通り、敵を外側へ漏らさぬよう陣を組んでくれている。しかし敵の攻撃を集中させるスタイルに、中央へ配置した兵が少しずつ倒れていっているのも現状だ。そろそろ陣形を動かすべきだろう。
 目視で陣形を確認したアルテミアは相手の剣を双刀で抑え込み、受け流した隙にテレパスによる指示を行おうとして──気づく。
(彼らではメッセージが受け取れないわね……)
「動きが鈍ったな」
「っ!」
 迫る剣。避けきれずに鮮血を散らしたアルテミアは顔を歪ませながら声を張り上げた。
 念話が届かぬなら、声で届ければいい。
「全周包囲! 総攻撃に移ります!」
 その声に貴族兵たちの列が雑兵を少しずつ押し込みながら──敵の後方へ伸びる。
「ちっ……総員、退路を守れ!」
 アルナブの命令に雑兵たちが踵を返し、追撃をものともせず狭まっていく退路へ向けて突っ込んだ。アルナブの銃弾が貴族兵1人の大腿部を撃ち抜くと同時、その影からシャルルが彼へ狙いを定めて妨害にかかる。
「急げ、敵を逃がしてはならぬのじゃ!」
 敵の退路を狭める。あと少し。敵が突っ込んでくる。

 ──ほんの僅かな差であった。

 両翼の兵が隣り合い、そこへ敵兵がなだれ込む。その勢いに最初こそ押され気味だったものの、耐え切ればあとは全力で叩くだけだ。
 どちらの勢力も決してダメージの蓄積は軽くない。少しずつ数を減らしていく中、デイジーの声が最後まで味方を鼓舞しようと響く。
「これを狙ってたか」
「ええ」
 舌打ちして睨みつけるカメレオン兵に微笑み、アルテミアはするりと彼の脇をすり抜けた。
 絶句する背後の気配をそのままに、アルテミアが肉薄するのは杖持ちの兵。デイジーの遠術にたたらを踏んだ兵は何とか倒れることなく、周囲ごと回復をかける。その懐へアルテミアは鋭く切り込んだ。
 身に纏うは戦乙女の加護。それは相手の運さえ味方へ引き込む必殺の1撃だ。
 杖持ちが倒される瞬間を目にした片手剣の男は、視界の端から迫ってくる黒鴉に横へ跳び退いた。
「またあんたか」
「以前と同じであれば、こちらがもっと危ぶまれたでしょうが……中途半端に戦力を分散したのは下策でしたね」
 新たな式符を手にするアリシス。男の視界の端で、アルテミアがこちらへ戻ってくるのが見える。

「退散だ! 1カ所を集中して破れ!」
「逃走は許さないのじゃ! 兵たちよ、何としても押し留めるのじゃー!」

 アルナブとデイジーの声。同時にカメレオン兵の男が踵を返し、雑兵たちの方へ向かって行く。だが、その後ろをアルテミアは追い上げた。
「逃がさないわ!」
 刃が鋭く煌めき、一閃。さらに一閃。ぎりりと歯ぎしりした男の肩に、幻のような光の蝶がとまる。
 アルナブもまた、追いつめられていた。
「くっ……そ!!」
 銃弾に貴族兵の1人が倒れるものの、突破口は開けない。雑兵たちも少なくなってしまった。
「逃がさないのじゃよ」
 背後からの声にはっと振り返れば突撃してくる妖精たち──デイジーの勇敢なる牙たちの姿。
 躱しきれずに傷を負うアルナブの前に立つのは、片割れだった彼を倒したイレギュラーズの1人だ。
「あーあ、また会っちゃった。負けるつもりはなかったんだけどなー」
 はは、と乾いた笑いがアルナブから漏れる。
「むかつくなぁ、イレギュラーズ」
「……言いたいことはそれだけかの」
「うん」
 清々しいほどの笑顔を見せ、アルナブは再び貴族兵たちへ向けて銃を発砲する。デイジーやその他の兵からの攻撃に反撃することすらなく、それは生きることに執念を持つように。
 けれども今や明確となった数の差に、いつしかアルナブの膝は地面についたのだった。

●交戦
 カメレオン部隊の纏う迷彩柄な外套は相手を惑わせるものの、確りと視界に捉えてしまえば問題ない。
「皆、罠とかはないみたいだよ!」
 セララは素早く辺りへ視線走らせ、片手剣を抜いた敵に向かって突きを放つ。薄皮1枚犠牲にそれを躱した敵へ、メルナはピトレイヤルを振り薙いだ。
 憎悪を纏う剣を受け、顔を顰めた敵はメルナへと剣を向ける。けれど、自己暗示をかけているメルナに大した恐怖心は起こらない。
 今心の中を占めるのは怯えではなく、決意だ。
(絶対に負けない。これ以上好きにさせて……犠牲者を出させる訳にはいかない)
 だから、此処で必ず止める。強き意思を瞳に宿したメルナは剣を防具で受けつつ敵を睨みつけた。
 アレクシアに祝福の囁きを受けたヨルムンガンドは前線へと飛び出し、槍持ち2人の前に立ちはだかる。たかが1人と侮った表情の敵たちだったが、すぐに顔を引きつらせた。
「生きてたら……そう言ったな?」
 女の身でありながら、放つ気配は人のそれではない。槍持ちたちは何故か、彼女に重ねて夜色の竜を見た気がした。
「前回のリベンジマッチだ! 今度はこれより先へ進めるとは思わない事だな……!」
 竜は姿が変わったが、その威圧感はなお健在。2人はヨルムンガンドの横を通り抜けることができない。
 ルチアーノは刺突や斬撃で剣持ちを攻める。小柄な相手だが、ルチアーノの攻撃は執拗に続いてとうとう敵の片腕を捉え、血を流させた。そこへコンビネーション攻撃を繰り出すリゲル。
 後衛からの回復を受けながら剣を構えた敵に、ルチアーノは口を開いた。
「何故盗賊なんてやってるの? 何か信念でもあるの?」
「信念? はは、そんなもんねぇよ」
 嘲るように笑った男は逆に問う。──何故お前たちは俺たちと戦っているのか、と。
 肉薄してきた敵の攻撃を受け止めながらリゲルは声を上げる。
「幻想は俺にとっての第2の母国だ。だから、護りきってみせる!」
「そりゃご立派だ」
 心底思ってない表情の男。そこへアレクシアに祝福の囁きを贈られたリュグナートがフレイムバスターを叩きこむ。
 火炎に包まれた男は身を焦がしながらもそこから抜け出し、3人の元へ肉薄する。
「俺が阻みます」
「ああ」「わかった」
 リュグナートの言葉に2人は頷き、武器を構えた。
 相手の剣を2振りの魔剣が受け止め、拮抗。その両脇からルチアーノとリゲルの攻撃が迫る。男は咄嗟に盾でリゲルの攻撃を阻んだものの、ルチアーノの攻撃まで防ぐには手が足りなかった。
 小さく舌打ちをして後退する男。そこへすかさず回復がかかるが──。
「おい、傷が癒えねぇぞ!」
 その声に敵後方で動揺する様子が見える。その間も与えられた傷は変わらず血を流し、地面へ斑点を描いた。
 ルチアーノは他の2人に目配せし、別の人物へ標的を切り替える。
「前回の仕返しだ……竜の力、その身を以って知るといい……!」
 ヨルムンガンドの巨大化した竜の腕による強烈な打撃。1人が槍を盾に凌ぐ中、もう1人がヨルムンガンドの脇腹を裂く。
 見えた素肌の上を黒炎が揺らめく。ちり、と星屑のような火の粉を散らして黒炎は相手に襲い掛かった。槍で庇う事も出来ず、黒炎は敵を小さく焦がして掻き消える。
「反射の呪いだ。私を傷つければ、どこまででも君たちを追っていく……。
 言っただろう? これ以上先には行かせないし、私たちはここで君たちを倒す!」
 ブオン、と竜の腕を振ると風が起こる。しかし敵はヨルムンガンドの言葉に好戦的な笑みを浮かべてみせた。
「へぇ……なら、俺たちはあんたを『また』倒して先に行く。あんたが先に倒れるか、俺たちがやられるか……いや、1対2なんだ。せいぜい足掻けよ!!」
 ヨルムンガンドの集中を掻くように上と下から襲い掛かろうとするカメレオン部隊の男たち。しかしその寸前、その脇からヨルムンガンドへの援護が回る。
 片やは致命傷を狙った刺突攻撃を。片やは相手の構えを崩す強烈な斬撃を。それらは確実な1撃にならずとも男たちの気を逸らし、ヨルムンガンドは軌道のままならぬ攻撃をかいくぐる。
「これで3対2、だね」
「加勢しますっ」
 ルチアーノとメルナがヨルムンガンドの隣に立ち、武器を向けた。後ろから「ヨル君!」という声と共にアレクシアのハイヒールが飛んでくる。ヨルムンガンドは一瞬そちらを振り返った。
 アレクシアの前に展開されている桜と梅の花弁を模した防御障壁へ、矢が当たったのが見えた。
「ヨルムンガンドさん、来るよ!」
 メルナの声に引き戻されるヨルムンガンド。
(なんとしても、通すわけにはいかない)
 また、を繰り返してはいけないのだ。
 ヨルムンガンドは竜の腕を振り上げ、敵へ襲い掛かった。
 セララスペシャルを敵にくらわせ、セララは木々の間をちょろちょろと逃げ回る。
「くそっ、逃げんなてめぇ!」
 邪魔な木の幹にイライラとした様子を隠さない男。しかしセララに怯んだ様子はない。当然だ、邪魔になるように立ちまわっているのだから。
「あまり離れるな!」
 遠くからの声に男がはっとするが、戻るにしてもやはり木々が邪魔をする。そこへ畳みかけるようにセララの剣が迫った。
 その男へ回復するためか、杖持ちが前に出て術を展開する。

 不意に、イレギュラーズたちの威圧が──通さないという姿勢が消えた。
 一瞬の油断をカメレオン部隊の面々は見逃さず、剣持ちと槍持ちの4人がイレギュラーズの視界から消え失せて彼らの後衛を狙う。
 後ろから狙われようと、先に回復手を潰してしまえば形勢は一気に傾くのだ。
 アレクシアは一瞬目を見開き、常時展開型の障壁を構えて耐え凌ぐ体勢を取った。
 振り下ろされ、突き出される武器。飛んでくる矢。それらから逃れ、障壁で防ぎ、或いは体で受ける。ハイヒールの対象を自分へと変更し──アレクシアは小さく笑みを浮かべた。
(そう、これでいい)
 その表情を見た敵が眉を寄せ、はっと後ろを振り返る。
 同時に聞こえてきたのは敵の悲鳴とルチアーノの怒号。全身全霊で吐き出された大喝が射手を物理的に吹き飛ばしたのだ。
「あなた達に、一瞬でも隙ができれば……一瞬があれば、私の仲間は必ず倒してくれる」
 誰を、なんて聞くまでもなかった。カメレオン兵は同じことを思ってアレクシアを狙ったのだから。
 敵の攻撃に膝を折りかけたアレクシアは自らの運命逆転力を使用し、視線を上げて立ち上がる。
「これ以上犠牲は出させない! ここで止めさせてもらうよ!」

 いち早くイレギュラーズに応戦しようとした射手。その動きにルチアーノも気付き、仲間とは違う位置で立ち止まってすぅと息を吸い込んだ。
「──邪魔をするなっ!!!」
 ルチアーノの大喝が射手の1人を吹き飛ばす。もう1人の射手は瞳を眇め、毒塗りの矢を放った。
 敵をかく乱しようと口を開いたセララ、しかし目の前に迫った矢に目を剥く。
「うわぁっ!?」
 間一髪、身を低くして回避。そこから慌てて距離を取って剣を構えると、再び矢が射かけられる。
 かく乱をするような余裕はなさそうだ。セララは素早く頭を切り替え、目の前の敵に集中した。
 ヨルムンガンドの竜の腕やメルナたちの攻撃に応戦し、リュグナートが自らの生命力と引き換えに刻んだ呪いに苦しみながらも自らへ回復をかけて生き延びようと足掻く。
 だが、限界があった。
 リゲルのアロガンスレフトに膝をついた杖持ちの元へ、自立自走式の爆弾が迫る。イレギュラーズが距離を取ると同時、戻って来たカメレオン兵が声を上げた。
「──逃げろ!」
 杖持ちは仲間の声に言われるまま、1歩を踏み出す。だが、もう遅い。
 1拍の後、爆発音と爆発による風が森を抜ける。杖持ちは体を黒く焦がし、ゆっくりと倒れた。
「遠くからでも殺せるんだよ。悪いね」
 ルチアーノはそれを横目で見ながら仲間たちの元へ。
 ヨルムンガンドはアレクシアの元へ駆け、未だ2人から集中攻撃をくらっていた彼女を庇う。
「アレクシア、今のうちに回復するんだ……!」
「うん、ありがとう!」
 耐え忍ぶヨルムンガンドの後ろで体勢を立て直すアレクシア。
 敵の放った渾身の1撃に、体を木へ打ち付けられたセララはぐっと土を踏みしめる。
(まだ、まだだ。だってボクは……)
「負けるもんか……ボクは正義の魔法騎士! 村を、そこに住む人達を守るんだ!」
 セララは守りを重視した体勢で剣を構え、そこへリゲルが加勢した。渾身の1撃は杖持ちが倒れる前にかけていた神秘のベールを打ち砕く。
 ギリギリで立ち上がっていたセララの元へ、アレクシアのハイヒールが飛んだ。
「この先の村を、この国を護るために……強敵だからこそ、ここで必ず食い止めないとな」
 セララはリゲルの言葉に頷き、2人の騎士は共に敵へ向かって行く。
 ルチアーノは射手に向けて飛ぶ斬撃を放ち、さらにリュグナートが髑髏の呪いをかけ畳みかける。彼らの攻撃を追いかけるようにメルナは駆け、射手の前で魔剣を振り上げる。
 射手はその瞬間、小さな呟きを耳にした。
「私は、殺すよ。殺せる。人相手でも、貴方たちの様な人なら……お兄ちゃんだって、きっと、」
 だって、太陽のようなあの人が、こんなことを許すはずないもの。
 口に出たのは無意識だろうか。
 心の中の『兄』に自らを重ね合わせ、メルナは剣を振り下ろす。
 敵の反撃を受けながらも、この場の形勢は確かにイレギュラーズたちへと傾いていた。そして──。


「メルナ、そっちはどうだ?」
 声をかけられたメルナはのろのろと顔を上げ、リゲルに首を振った。
「……そうか」
 戦いの最中に致命傷を負った者もいる。しかし殆どは負けを悟って自害していた。
 何らかの情報が得られればと考えていたが、死人に口なしとはまさにこのことだ。
 強いて言うとするなら、キング・スコルピオがこれだけ忠誠心の厚い部下を持っていた、ということくらいだろうか。
 何かしらの情報を集めたい所ではあるが、まだ戦いは終わっていない。
 イレギュラーズは草原側に向かった仲間の状況を確認するため、森を抜けたのだった。

成否

成功

MVP

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊

状態異常

アルテミア・フィルティス(p3p001981)[重傷]
銀青の戦乙女
ヨルムンガンド(p3p002370)[重傷]
暴食の守護竜
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)[重傷]
大樹の精霊

あとがき

 お疲れさまでした。
 恐らく参加者の皆様もリプレイと結果を緊張しながらお待ちいただいたものと思います。私自身もドキドキしながら執筆致しました。最後まで楽しんで読んで頂ければ幸いです。

 ハーモニアの貴女へ。敢えて隙を見せる作戦、見事でした。そして仲間を信じる心の強さに、今回のMVPをお贈りします。

 またのご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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