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シナリオ詳細

<天鉄国境事件>鉄帝の思惑

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●国境線
 それは――『とある』山中の事であった。
「――失礼。『手が滑り』ました」
「あぁ……気にするな。こちらも『手が滑った』だけだ。失礼した」
 交戦する者がいた。片や白銀の鎧に身を包む騎士。片や軍服に身を包む偉丈夫。
 その周囲は剣撃と打撃の跡に見舞われておりとてもではないが『手が滑った』だけの様子には見えない。樹はへし折れ、あるいは薙ぎ倒され。しかし両者に大した負傷は無く、互いに『手が滑っただけ』と言っているのだ。『そういう事』なのだろう。
 少なくとも今、この瞬間までは。
「では天義の――いやゲツガ・ロウライト殿。繰り返しになるがもう一度だけ言わせてもらおう」
 そして軍服を着込む者……鉄帝軍人レオンハルト・フォン・ヴァイセンブルクは向かい合う天義の騎士ゲツガ・ロウライトへと言葉を紡ぐ。軽く吹く山風に、その美しき金の髪をなびかせながら。
「ここは『鉄帝』の国境内だ。こちらの国境へと逃げ込んだ犯罪者共に関しては、鉄帝に任せて頂こう……この場は退いてもらえないかね? 引き渡しを望むというのならば、然るべき外交ルートにて陳情してもらおう」
「否。ここは『天義』の国境内。鉄帝のご厚意は有難く思いますが……国内の事は天義で片をつけましょう。元より、奴らめに関しては天義で無法を振るっていた者達なのですから」
 互いに言う。ここは互いに『自国内』であると。故にこそ自国の者で片を付けると。
 そう、前述した『とある』山中とは――鉄帝と天義の国境線に存在する山中の事なのだ。今彼らはそのかなり微妙な所にて言い争いをしている。どちらがどちらの領域であるのか、その微妙な訳は。
「ほう? この山は、山頂を起点にして互いの国境線となっている……それは貴殿も承知している事の筈だ。そしてここは鉄帝側だとも。幾度かに渡る山崩れでハッキリとした山頂ラインが崩れていることは認めるがね。しかしそれを差し引いても、だ」
「法の定義云々をこの場にて議論するつもりはありませんな。微妙であるというならば、この地へと逃げ込んだ犯罪者共は我等で処理を。些かの時、目を閉じてさえ頂ければそちらへの負担なく円満の解決と相成りましょう――如何か?」
 そう。この山は山崩れの激しい地であり、定義された国境線のラインが今現在『あやふや』な状態であるのだ。山頂ラインはどこなのか? 崩れてズレた場合、崩れたラインを新領域とするのか? その辺りの話は今の所行われていない上に、さほど重要な地ではなかったため放置されていた。しかし。
「断る。望むのならば、あぁ引き渡しには応じるとも。だがね、明らかにここは鉄帝領だ。天義の勝手を……認める訳にはいかんのだよ。退きたまえ」
 放置されていたが故にこそ――今正に、国境線の問題が起こっていた。
 レオンハルトは言う。鉄帝領だと。
 ゲツガは言う。天義の犯罪者は、こちらで裁くと。
 互いに互いの道理を通そうと問答を重ねるがどちらかが折れぬ限り結論が出る様子は無さそうだ。ならば武をもって道理を押し通すか? いや、いや。彼らは互いにそれなりに立場のある者達だ。『手が滑った』以上の範囲で激突すればそれこそ面倒な事態を引き起こしかねない。先の小手調べで一蹴出来るような実力の開きは互いにないと悟ってもいる。
 ならばどうするか――

●鉄帝の依頼
「――と、まぁ。そういう事態でね。向こうは一旦退いたが……さて。
 あれは恐らくもう一度来るだろう」
 鉄帝領へ所用で訪れていたリリファ・ローレンツ(p3n000042)を前にレオンハルトは語る。ゲツガは、必ずやもう一度来るだろうと。
「えぇ? でも一度退いたんですよね?」
「諦めた、とはまた異なる訳だ。あの目は分かる。必ずや闘志を抱いてこちらの領域へ足を踏み入れて来るだろう。向こうにも何か退けぬ事情があるのかもしれないな」
「はぁ……でもそれならそれで、領域侵犯として鉄帝で事を成せばいいんじゃ?」
 そう。その辺りはリリファの言う通りである。
 ローレットの一員たるリリファに接触したのは無論、彼がローレットに依頼したい事があるからだろう。しかしレオンハルトは鉄帝の軍人だ。何かをやろうと思えば部下がいる。彼らに任せればいいのでは――
「それは困る。無論、戦うのは簡単だが……『鉄帝の者が戦う事』自体がまずいのだ」
「――天義と事を捩じらせたくないって事ですか?」
「然り。私はこの問題をあまり大事にはしたくない。事の是非、法の云々がともあれ……天義の騎士と鉄帝の軍人が本気の戦闘行動を国境線で交えた? 色々な、まずかろう。立場がなければ本気でやりあってもいいのだが……生憎、そういう訳にもいかん」
 だからローレットな訳か。鉄帝の部下でもなく、あくまで政治的に中立な者に対応させる。
 万一ゲツガとの戦闘が発生したとしてもその対応が鉄帝でなければ良しと。レオンハルトは心の奥底に鉄帝らしい感情を持ち合わせているものの、同時に冷静に事を見定める男でもある。何もかも武力で事をなせば良いなどとは思っていない。
「あぁ。つまり、諸君らに依頼を頼みたい。私と共に山中へ潜む犯罪者共を追い、奴らを捕縛・あるいは撃破。必要に応じてゲツガ・ロウライトの足止めを頼みたい。犯罪者共は聞き出したい事がある故捕縛が望ましいが……ま『望ましい』だけだ」
 レオンハルトが同行するは鉄帝として犯罪者の処分をする為、そしてその確認の為。
 そして重要な点としてゲツガに関しての『足止め』だ。そちらは撃破でも殺害でもない。
「繰り返すが私は大事にしたくない。同時に天義に勝手はさせたくない。総じて……殴れば済む、それだけでいい――という訳ではないのだ。ゲツガ・ロウライトに関しては『私と戦闘させない』『殺害しない』この二点を重要点として君達を雇いたい」
「成程了解です! では至急メンバーの選定を――」
「あぁそれと。これはあくまで希望なのだが」
 往こうとしたリリファ。しかしその寸前にレオンハルトの言が続いて。
「メンバーには私の娘、ハイデマリーを入れてもらいたい。出来ればいいがね」
「……ひょっとしてハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルクさんですか? どうして?」
「いや、なに。ゲツガ・ロウライトと交戦するにせよ犯罪者の討滅を行うにせよ」
 そこには、ヴァイゼンブルクの名を冠する者がいる方が好ましい。
「それにローレットに渡って、如何程成長したか……見てみたいものでもあるしな」

GMコメント

■依頼達成条件
1:犯罪者集団の捕縛・殺害(どちらかと言うと捕縛だが殺害してOK)
2:レオンハルトとゲツガが戦闘を行わない。

 両方の達成。

■戦場
 鉄帝と天義の国境線にある山中……にある犯罪者集団施設。

 小規模な施設です。東と西にそれぞれ出入口があり、小規模な部屋が多くあります。
 西は鉄帝側に近く東は天義側に近い形です。依頼開始はほぼ同時です。

 時刻は夜。満月が出ています。
 室内に入れば明かりがついています。意図的に破壊されない限りは視界に問題ないでしょう。
 逃げ道としての隠し通路の類があるかは不明です。

■犯罪者集団×25人
 天義において「パウダー・スノー」なる薬物を取り扱っていた集団。
 突出して強力な者はいませんが、追い詰められれば必死の抵抗をしてくるでしょう。
 現在は残存の麻薬や資料を取り集め脱出の準備を進めています。逃げる前に討伐を!


■レオンハルト・フォン・ヴァイセンブルク
 鉄帝の軍人。骨格が機械で形成されている鉄騎種。
 鉄帝人らしい気質を奥底に持ちますが、基本的には冷静な人物です。
 通常時は軍式格闘術による戦闘を行いますが、本気の際は剣を用いての戦闘に移行します。

 本件に関しては「迅速な解決」を目指しています。
 同時に鉄帝の領域である事が濃厚な地での天義の勝手を許すつもりはありません。

■『月光の騎士』ゲツガ・ロウライト
 天義の騎士。ロウライト家の初代であり、今なお騎士として活動する人物。
 神の正義を第一とする正しく「天義騎士」たる人物です。不正義がそこにあれば親族・友人・知人の区別なく断罪の刃を振るう、他者に厳しく自らにも厳しい気質を持ちます。

 『月下の審判』という「満月の夜」に「限定的な問い」に「強制的に答えさせる」というギフトを持ちます。今回の依頼の中でこのギフトが使われるかは不明です。

 具体的なステータスは不明ですが接近戦型です。
 聖剣【禍斬・月】を振るう、騎士として長年活動し続けている人物です。一人で押し留める事は難しいでしょう。レオンハルトとは違う心情を持っていることにも注意したほうがいいかもしれません。

 本件に関しては「強行であろうとも不正義の断罪」を目指しています。
 いざとなれば鉄帝との衝突もやむなしと考えています。

■天義の者?×八名
 どうやらゲツガの周囲には八名で編成されたの謎の部隊?がいるようです。
 彼らはゲツガを援護し、またレオンハルトの足止めを狙っている模様です。
 一体何ーレットなんだ……

 PL視点ではご存じだと思われますが『もう一つの依頼のメンバー』です。
 PC視点では当初知りませんが依頼の途中で遭遇する事もあるでしょう。協力して敵にあたって全く構いませんが『向こうの依頼のメンバーとプレイングを連動させる事は出来ません』
 リプレイでは『この依頼に参加しているメンバー』だけで判定・描写がされます。
 あくまでもフレーバーとしてお考え下さい。

■その他
 <天鉄国境事件>は排他処理がかかっております。
 両方に参加する事は出来ませんのでご注意ください。

 <天鉄国境事件>はそれぞれで結果(犯罪者集団の討伐)は連動しますが、判定はそれぞれで行われます。プレイングに関しましては依頼を飛び越えて連動させる事は出来ませんのでご注意ください。

  • <天鉄国境事件>鉄帝の思惑完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月12日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
七鳥・天十里(p3p001668)
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

リプレイ


「つまり――父上殿。不法入国者共の邪魔を排除しつつ犯罪者を潰せばよいのでありますね」
 胃が痛い。『鉄帝軍人魔法騎士』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)はお腹の奥がキリキリと。まさかの急遽のご指名。なんで。まぁ名目上は鉄帝軍人……いやローレットとして動くべきだろうかと思考して。
「そうだ。国境線は些か曖昧だが……ここは明らかに鉄帝の地。天義にも事情はあるのだろうが、国境内で勝手を許すわけにいかん。もし来れば、足止めを頼む」
「まあ鉄帝の領土の中である以上、鉄帝の仕事かな。当然の事ではあるね」
 レオンハルトの言に七鳥・天十里(p3p001668)が言を放つ。彼の言は尤もであり、そこに異論の余地はない、と。その上で『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)はただ、と言葉を繋いで。
「……願わくば。妥協点を探っているのは、双方同じと思いたいであります」
 零れるように言葉を紡ぐ。天義も、立場も事情が異なってもきっと目的は同じなのだからと。
「優しいなフロイライン。その心で誰しもが動ければ世はきっと最善であるのだが……惜しいかな。そうである世はまだ遠い」
「承知しております。お気遣いに感謝を」
 どうであれ今は鉄帝の騎士として動くのみ。エッダは返答し、闘争への覚悟を定めれば。
「しかし天義の聖剣使いか……面白い。死力を尽くして戦えたならさぞ楽しいことだろう」
 武具を構え『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)は訪れる闘争に笑みを携える。聖剣。ああ、勿論種類は違うが、ハロルドも『それ』は持っているのだ。そう呼ばれし物を持つ者同士全力で戦えたのなら――と、想いはするが。
「まぁ依頼が優先だがな。それに、依頼主が全力で戦えていないのに贅沢も過ぎる」
 抑えてはいるがレオンハルトもまた鉄帝人と、ハロルドは言葉を紡いで。
 それでは往くとしよう。施設の中にいる者らにこれ以上の時間的猶予を与えてやることもない。扉を突破し、中へと皆で踏み込んで。
「――内部は焦りに満ちているな。やはり、そうそう心理的余裕はないらしい」
 真っ先に奴らを探知したのは『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)だ。感情の探知。特に、焦りや苛立ちと言った種類の方向性を探ろうとした彼の思惑は当たった。追われている者側であるが故の感情。あちらこちらから反応が出ている。
 薬や書類。とにかく色々なモノを持ち出すのに平静ではいられないのだろう。
「麻薬か……あれは駄目だよ人を駄目にする。中には薬にもなるものもあるけどね」
 だけどこれは違うと。『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)は思考を繋げる。
 誰も得をしない。誰一人幸せにならない。そんな薬の存在価値などどこにもない。不幸を紡いでいくだけの罪深い薬物……やってはいけない事。
「何としてもここで止めないと……薬は、どんどん広がっていく」
 彼女もまた敵の探知を開始する。エネミーサーチ。敵対心を持つ者を探知する技術だ。しかし、そうであるが故にこちらに気付いていなかったり逃走の感情を優先している者は探知し辛い面もある。今の所は幾つかの反応を探れている為上手く行っているが。
「――とにかくまずもって迅速に片付けよう。逃げられる訳にはいかない」
 さすればその探知をもって敵を片付けるべしと『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が往く。通路を駆ける様は正しく疾風の如く。見つけた敵に巨大な光刃を展開して――斬り付けるのだ。
 立て直させる暇など与えない。殲滅ただあるべしとばかりに気を込める。だが勿論相手も無抵抗ではない。敵とみるや否や彼らも自衛の為の武器を取り出し応戦を。
 遠距離から銃と魔法の類が放たれる。こちらに来るなと、必死の抵抗に対して。
『――悪を滅する無限の彼方からの愛の光』
 瞬間。どこぞから声が響いて。あ、あれは!

『魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』

 キラッ! 『魔法少女インフィニティハートH』無限乃 愛(p3p004443)がそこに現れたッ。右手を振るい、敵を指差し。狙い穿つは蛍光ピンク色の――愛である。
 あらゆるモノを貫通するその物理的……違う。神秘的愛は敵を薙ぎ払い、そして。
「……さて。行きましょうか」
 真顔になるならなぜやったッ!! よく見てなかったのでもう一回やってくださいお願いしま。


「――ふむ。ローレットとは多様な者達が在籍しているのだな」
「ハハハ、ソウデアリマスナ」
 別に引いてる訳ではない。レオンハルトは本当に興味ありげに愛を見据えながら言葉を紡いでいた。魔法少女という存在が珍しかったのかどうなのか。しかし完全に想定していないようだが、まさか娘がローレットに在籍して以降、時として相棒と共に魔法騎士と言うか魔法少女やってるとはぁ思うまい。片言でハイデマリーは言葉を紡ぎながら。
「今の所天義の方々は見えませんね。しかし……同じ正義を持つ方々が擦れ違うとは頂けません。ですが心配は無用――愛は通じます。通じ合うものなのです」
 この地で愛無き犯罪者達を共に愛で穿つ事で、と愛は言う。
 愛は偉大だ。永遠だ。自分の道の先には愛がある。つまり、共に同じ方向を歩んでいるのならば彼らの先にあるのもまた愛だ。通じ合わぬ者も時折いるがそういうのは愛で叩き潰せば物理的に愛になるので問題ない。大丈夫。怖くない。完璧な理論を携えながら道を往く。
「何はともあれ電撃戦の要領だ。敵の対応が整う前に、徹底的に潰していくぞッ!」
 汰磨羈の言う通り電撃戦が重要な点となる。敵に逃げられてはお仕舞いだ。襲撃の混乱がまだ激しい内にどこまで内部に食い込んでいけるかが勝負となる。駆けて、敵を見据えれば問答無用とばかりに彼女は突っ込み――放ち穿つは験禳・灼空皞天竈。
「『使う』ぞ! 皆――巻き込まれるなよ!!」
 散布されるは木行のマナ。同時、強制的なプラズマ化を引き起こさせ敵を纏めて撃滅せんとする。強力ではあるが敵味方を区別出来かねる汰磨羈の秘儀の一つだ。使用を叫んだのも巻き込まれを避けるが故。敵を吹き飛ばし、戦闘不能だけを確認すれば次を往く。
 時間が無いのだから……と、その時レオンハルトが突如立ち止まって。
「……この先にいるな」
 突如呟き。レオンハルトは掌底の構えで扉を――ぶち破れば。その先には、いた。天義の者が。
 見える姿は白銀の騎士。情報にあったゲツガ・ロウライトの姿だろう。どうも別方向へと回る姿が見えた。その先に立つは……ん? どうやら天義の者、とは違うらしい。あれは。
「ほう。どうやら私に交渉があるらしい……彼らは天義ではないな。向こうも向こうで似たような事を考えていた訳か」
「……父上殿。どうであれ彼らは不法入国者には違いありません」
「ああ、だが無下にする訳にもいくまい。ここは私が。諸君らは別方向から追いたまえ」
 向こう側のローレット達か。何がしか交渉があるようで、会話をしようという姿勢が見える。
 優先順位はあくまで犯罪者共の殲滅。故にここの対応はレオンハルト一人で十分と、別通路から施設内を巡る様に会話を促す。奴らに逃げられてはどうしようもない故に。
「ゲツガさんはどっちの方に向かったのかな。流石に透視でも見えないね……」
「ああ。だが、彼は鎧を装備している。移動する際に特徴的な音を出している……筈だ。それを探知出来れば」
 おおまかにでも彼の位置が分かるかもしれないと、ゲオルグは天十里へと言葉を。互いにハイセンスを持つ二人は音で探れないかと耳を澄ます。とはいえ周囲は通路の壁があり、そこら中で駆ける様に急いでいる犯罪者の音も混じってかなり判別し辛い、が。
「――見つけた。恐らくこちら側だ……!」
 ゲオルグによる『怒り』の感情探知が引っかかった。幾つか似たような反応もある、が。先程見えた姿と大まかにではあるが探知出来た方向を合わせると――恐らくこれが正解であろうと。
 で、あれば後は足止め班の出番だ。ハロルドとエッダはそちら側へと方向転換。早急にそちら側へと到達せんと駆け抜ける。出来る事ならばハロルドは己が馬であるレックスで施設外から迂回しての接触か、施設内を駆け抜けたい所であったが。
 前者は天義側で来ているのが天義の兵なのかローレットであるのか彼の視点では判別できず、施設外ならまだしも施設内を馬で駆け抜けるのはあまりにも狭く困難であった為に己が足を優先とした。そして。
「待て――アンタがゲツガ・ロウライトだな」
 白銀の騎士をその目に捉える。
「アンタとは少し話し合いたい。つまり交渉だな――この場の犯罪者共の事について」
「……ほう。交渉?」
「今は犯罪者を制圧することが最優先……というのはゲツガ卿も御承知の通りかと。その上で、です。捕縛した犯罪者は天義側へ引き渡します故――隠し通路等の対処の協力体制を頂けないでしょうか」
 ハロルドとエッダの言がそれぞれゲツガへと重ねられる。
 このままでは犯罪者と鉄帝側の立場の者で挟み撃ちになると。レオンハルトとゲツガが鉢合わせになりさえすれば良く、これは双方共に願わしい事ではないか、と。何より戦うのは時間の無駄であり――無益である。
 天義の将として、国防上における鉄帝の道義も判って頂きたい。鉄帝は、天義を拒む訳ではないと言葉を紡げば。
「成程……そちらの配慮には感謝を。こちらをも汲んでいただけるお気持ちは有難いが――しかし犯罪者の引き渡しは、かの御仁に既に一度提案されその上で『断っています』故、不要と言いましょう」
「……天義の騎士を名乗るならば優先度を違えることなく皆に規範を示すべきではないか?」
「道理ですな。しかし、道理を優先するならば私は元より『ここ』にいないのです」
 道理。損益。正しさ――それらをゲツガは排していた。彼にあるのは己が内に込められし、民より託された願い。そして己が抱く正義。犯罪者共は己が裁くとする強き意思のみ。
 いかんとすれば彼を折れさせることが出来るのか……至難である。元より今回に関してはレオンハルトが一度折衷案を提案した上で発生している依頼。交渉を成功させるのは途方もなく難しい事であろう。こうなるのもやむなしであり、しかし。
「そうか。ま、俺は別に交渉決裂でも構わん。アンタの聖剣と俺の聖剣――競い合うのも一興だ」
 一方でハロルドは歓喜もしていた。心のどこかで『こうなっても』問題は無いと。
 故に激突する。邪魔をするべく。邪魔をするなら切り伏せるべく。両者の激突は激しく轟くのだ。纏いしは聖なる光――盾となる、ハロルドの術である。剣撃に合わせ召喚する無数のそれは、容易く叩き割られども威力を確かに削いで、彼の身を護り続ける。
 されば返す剣で銀色の斬撃を斜め下から上へ、放ち上げて。
「フッ――ハハ。依頼の筋を通した上でなら、俺もやりやすい」
「戦闘狂い……信念無くば落ち果てますが?」
「そういうのは聞き飽きた」
 平和の中で生き辛くなった頃に。誰だったか。いや、誰でも無く平和だったころの己からか?
 まぁどうでもいい。ハロルドはゲツガの剣を捌き続ける。先手を取れば防御を優先し、後手となれば攻撃の構えで。傷が増えども、ああ臆することは無い。その生死の狭間に立つ事こそが、戦闘なのだから。
「本音はともかく……自分は軍属であります故、ここでの戦闘に益はないと申し上げるであります」
 そして。分かっている事。それでも口に出さない訳にはいかぬと、エッダは言葉を。
「が、卿がそれで何かを得られると仰るのであれば、存分に」
 前進。構えるは両の拳、両の剛腕。防を主として挑むは老騎士。
「自分は不肖、エッダ・フロールリジ――貴殿に謹んで相対する者の名であります」
「覚えましょう。私はゲツガ・ロウライト――天に仕えし騎士なれば」
 炸裂する。防御を是とする彼女の戦いは、長年に渡り鍛えた熟練の剣技であろうと易々通さぬ。ハロルドへの一撃を防ぎ、彼の呼吸を整える一幕を作らんとして。
 さぁ幾何か。あと幾何か……まだこの老騎士には付き合ってもらうとしよう。


 犯罪者を追い立てるにあたって最大の問題は何か? それは隠し通路の存在だろう。
「外に出ようとしている人達は沢山いるけれど……隠し通路を使われようとしているかは分からないね……」
 移動しながら祝福の囁きを味方に与えているのはセシリアだ。エネミーサーチによりある程度の敵の位置は分かるものの、流石に具体的な部屋の構造。隠し通路の有無は分からない。全員が隠し通路を利用しているというなら話は別だが……その段階まで行かれたら手遅れだ。
 念のため資料保全の為保護結界も張っているが、意識的な攻撃。戦闘の余波により壊れる可能性はあるかもしれない。ないよりは断然いいが、さて。戦闘終了も急ぎたい所であるが。
「……そうでありますな。中々に、その存在は不確定要素です。あるのならば早々に見つけたい所ですが……」
 故にハイデマリーは己が思考を多数に分けながら高速で思考を重ねていた。
 ここに掛かっているまでの制圧時間。向こう側との接触……考える事は数多にある。通路の遥か向こう側に見えた敵影に対し、彼方であろうと放てる長大の一撃を放ち、戦闘も継続しながら。
 狙うは脚だ。なるべく殺すのは避けて捕縛を主とすべく。見える限り確認出来る限り、資料や情報を持っている人間を予測して――『ああこれは捕まえた方が良いな』と思考も重ねていれば。

「――あ。待って、なんだかこの近く……『音』が変だよ!」

 瞬間――天十里が気付く。刀身が爆発する特別製のナイフを敵に投擲しながら、『音が違う』と。彼女の放つ声の反響を捉える術……エコロケーションが妙な地点を探り当てたのだ。
 透視で見えず、音が妙――つまり、そう。地下だ! 地下に通じる道がある筈だ。どこか、この近くの部屋。見えぬ様に隠してあるのでは――
「と、敵だ! 数が纏まっているぞ……この近くに『それ』があるのは間違いではないかもしれん……!」
「吹き飛ばせそうなら――無限乃ちゃん!」
「ええお任せを」
 癒しの力を周囲に放つゲオルグの視線の先には四人か、五人程度の人影が見える。放たれる遠撃は中々に必死で、周囲に在りそうな隠し通路の存在を確かに臭わせるが――纏まっているなら愛の魔砲の餌食だ。天十里の合図と共に、愛は魔法陣の展開を開始する。
 攻撃による痛みが走りながらも展開された魔砲はあらゆるモノを穿って敵を撃ち滅ぼす。よく考えたらこれで隠し通路ごと吹っ飛ばした方が早いだろうか。いや流石に消費が激しいか……無駄撃ちは出来ない。それよりも。
「貴方には選択肢があります――右手の魔砲と左手のハイヒール、どちらが欲しいですか?」
 辛うじて生き残った犯罪者に言葉を。おらさっさと吐けや。情報を!
 乱暴に見えるがこれにも愛が詰まっているので問題ない。問題ないったら。信じよう。
「死ぬかどうかは貴様らの運次第だ。余波で死んでも自業自得と思え」
 薬を撒いたのだから、と汰磨羈は戦闘不能となった者へ言葉を。
 トドメはどうでもいい。他を動けなくするのが先だし、生きているのなら生きているで価値はあろう。後はここに首謀者、幹部級がいるかどうかだ。そいつらに関しては捕縛を前提として狙いたいが。
 彼女は身を低くし、味方の射線が通るべく意識しながら常に戦う。床を、壁をあるいは天井を蹴って多角的に相手を攻め立てながら、鴻翼楔をも用いて格闘術。無力・無効化を狙う。
「……だが一向に幹部級の姿は見えないな。優先的に守られている様な者もいない。不在なのか?」
「脱出のこの一連の流れを見ても、大分手間取っているというか要領が悪いというか……ま、こうなったら全員倒して主犯格は生きていたらラッキー程度にしようか」
 というかラッキー程度に思ってね? と敵へと言葉を紡ぐセシリア。回復の術も紡ぎつつ、余裕があれば遠術にて攻撃の手伝いを。敵を攻め立てていく。
「逃がさないよ絶対に。隠れてようとなんだって、見逃してあげたりしないよ……!」
 天十里は言う。僕は悪者が大嫌いなんだ、と。
「特に――お前たちみたいな犯罪者は、特に大嫌いだよ」
 他者を狂わせていく連中など虫唾が走る。ましてや、そのまま生きていれば狂わずに生きていけた連中を私欲で狂わすなど――絶対に許せることではない、と。
 そうしていれば相当数の数を減らしたか。天義側のローレットとも道中にて協力しながら、敵の数を減らしていく。双方の出口を抑え、隠し通路があると思われる地域も抑えているのだ。後はすり減らしを確実としていけばなんとかなりそうだ。
「やれやれ全く……天義との遺恨を減らす。犯罪者共はこちらで討伐する」
 両方やらなくちゃいけないのが鉄帝軍人ヴァイセンブルクの娘としての辛い所でありますが。
「――覚悟は出来てるのでありますよ」
 あぁ……全く。父上殿からのご指名は胃に悪かったが。
 これだけ捕縛すれば少しはその痛さを軽減出来るだろうか――

 やがて一連の流れは幕を迎える。
 天義は多数を断罪し、鉄帝は多数を捕縛し。しかし結局『公的』な立場の者らの接触は一切この場には無かった。レオンハルトはゲツガと血を流す事なく。かといって彼を十全にこの地で動かす事はさせず――目的を概ねやり遂げたのだ。
 夜が空ける。月は彼方へ消え去りて。
 鉄の朝がやってくる。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

申し訳ありませんお待たせしました。
依頼成功となります。おめでとうございます!!

資料と捕縛した犯罪者組織はレオンハルトさんへ引き渡されました。
勿論天義側が討伐した犯罪者もいますので全員捕縛出来た訳ではありませんが、レオンハルトさんとしては十分な成果として認識しているようです。今後も依頼をと考えているやもしれませぬ。

では、ご参加どうもありがとうございました!!

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