PandoraPartyProject

シナリオ詳細

己が勝つための手段

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ギルド・ローレット
「依頼よ。ちょっとアイアン・ブルーな内容だけど、聞いてくれるかしら?」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がイレギュラーズに提示した1枚の羊皮紙。そこには鉄騎種の男性について情報が纏められている。
「その人物を戦えなくしてほしいのですって。もちろんある程度の時期戦えなければ良いようだけれど、スモーキー・アクアな気持ちには変わりないわね」
 独特な感性による言葉に、しかしイレギュラーズたちは『良くない依頼である』ということは理解する。
「鉄帝国は力がものを言う国よ。弱者は強者に従う。……弱者であれど、1度はその場に立ってみたいのかもしれないわ」
 強者に何度も敗れ、敗北に塗れた弱者は思い立ってしまったのだ。
 ──もしあの強者さえいなければ。
 ──弱者たちにも、強者となるチャンスが回ってくるのでは?
「強者になれるとも限らないけれど、可能性は上がるでしょうね。最も、依頼人の意気込みはマーブル・グレイよ」
 曰く、強者を戦えないくらい痛めつけてほしい。しかし殺害は控えてほしいと言うのだ。
 狡い手段を取るものの、人の命までは背負いきれないらしい。
「けれど依頼として手続きを踏んだ以上、成功させなければいけないわ。
 標的は鉄帝国のジグラッドという男性。鉄騎種で、手足がスチール・グレイなのですって。体を武器として戦う姿が良く見られているわ。彼の強みは頑強な体と連撃よ。
 彼の元には弟子が4人。押しかけて隙あらば彼に稽古をつけてほしいと言っているようだから、あなた達と遭遇する可能性も高いでしょうね」
 プルーが出してきた地図でイレギュラーズ達はジグラッドの家や付近を確認する。
 不意に、イレギュラーズの1人がプルーに問うた。『幻想と鉄帝の国境はどうなっているのか』と。
 その問いにプルーは肩を竦めてみせる。
「ミストだわ。何か動きがあれば、私だけじゃなくてユリーカたちも教えてくれるはずよ」
 今回はその国境を避け、やや遠回りして鉄帝国へ入ると言う。イレギュラーズ達は再び地図と件の男について書かれた羊皮紙へ視線を落とし、作戦会議を始めた。

GMコメント

●成功条件
 ジグラッドを重症にする

●失敗条件
 敵を1人でも死亡させる

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『鉄帝』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ジグラッド
 鉄帝国のある地域では有名な強者です。鉄帝人らしく強さを追い求め、強者との戦いを楽しみとします。
 鉄騎種であり、四肢を機械化しています。
 防御技術・特殊抵抗・EXAに特化しており、回避はそれほどでもないようです。

●弟子×4人
 ジグラッドの元へ押しかけ、半ば無理やり弟子となった青年たちです。本当に隙あらば「稽古!」と言いだすので、ジグラッドの家までついてきます。
 全員人間種であり、片手剣と盾を装備しています。鉄帝人ということもあり、ジグラッドほどではありませんが戦える相手です。
 反応・回避に特化するものの、物理攻撃力はそれほどでもないようです。

●フィールド
 ジグラッドの家は森に囲まれぽつんと立っています。
 森とはいうものの、葉はほとんどついていません。葉の落ちた落葉樹を想定してください。
 ジグラッド達は日中は近くの空き地で稽古、夕方家に帰ってくることが確認されています。
 攻め入るタイミングはイレギュラーズに一任されています。

●ご挨拶
 愁と申します。
 鉄帝人としてあるまじき依頼、遂行すれば悪名つくこと間違いなし。ただしローレットが不利になるような言動はお気を付けください、
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • 己が勝つための手段完了
  • GM名
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月11日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
緋道 佐那(p3p005064)
緋道を歩む者
ケドウィン(p3p006698)
不死身のやられ役

リプレイ

●執念
 青年たちはふ、と足を止めた。
 道の先に女が立っていた。いや、少女だろうか。いずれにせよ、こんな場所を通りかかるなんて珍しい。
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は2人に気づくとにこりと微笑んで口を開く。
「こんにちは。道に迷ってしまったのだけれど……ここから1番近い町はどう行ったらいいかしら」
「あ、それなら」
 青年たちはレジーナの言葉に疑いを持たず、それは親切に町までの道を教えてくれた。
「ありがとう、これで夕暮れまでに着けそうだわ」
 にこり、と微笑んで青年たちに会釈をするレジーナ。顔を上げた瞬間、レジーナの瞳が妖しく煌めく。
「では」
 立ち去るレジーナを見送り、青年たちは別の方向へ歩き出した──が。
「……さっき誰かと会ったっけ?」
「さあ? てか、俺ら何しに行くんだっけ」
「それは……そう……あれだよ。ジグラッドさんに稽古つけてもらうんだろ!」
「あ、そうだった。なんで今忘れてたのかなぁ……」
 年か? まだそんな年じゃねーよ、なんて言い合いながら青年たちは去っていく。
 レジーナは木々の影からそれを聞き、頤に手を当てた。
(彼らの精神力……いいえ、稽古に対する執着というべきでしょうね。それは魔眼をも凌ぐ強さということ……)
 そこまでの意思があるからこそ、ジグラッドの家まで押しかけるのだろう。
 それにしても。
(強者狩り、ねぇ)
 実に鉄帝らしいといえばらしい依頼、だろうか。
 レジーナは仲間と合流すべく、無人となっているジグラッドの家へ向かった。


●待ち伏せ
(ナンの恨みがあるんダカ、それともソンナものもナイのかな)
 『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)はよいしょと屋根に登り、地上にいる仲間へ手を振った。
「ミンナ、屋根から見えるイチにいてくれると嬉シイな」
 仲間たちから返事代わりに軽く手を挙げられ、それを確認したジェックは気配を極限まで潜ませる。
「正々堂々がやっぱり一番だと思うけど……ま、私達はお仕事を依頼通りに粛々とこなすわ。
 卑怯な手を使って手に入れた強者の地位の虚しさか、こんなことをしても強者の地位に立てない現実かで、ゆくゆくは悔い改めてほしいけれど」
 小さく肩を竦めた『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)に 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の視線が向けられる。
「虐げられ、無力に苛まれ──追い詰められた奴は、手段も選ばねえってか。ま、気持ちは分かるがね」
 その言葉に『緋道を歩む者』緋道 佐那(p3p005064)は小さく目を伏せた。
「私は……その気持ち、分からないわ。強者の居ない場で上に立った所で、何の意味があるんだか」
 仮初の名誉、肩書き。それらを一時的に得た所で、後ろ指を指されるだけではなかろうか。
「ま、そう言ってやるなよ。依頼をこなせば、あとはどうなろうが知ったこっちゃない」
 『殺括者』ケドウィン(p3p006698)はにたりと笑みを浮かべてみせる。
(こういう荒事はアウトロー向きで大変いいな)
 適度に痛めつけ、しかし殺さない。実に平和的な破壊行為だ。
 そういえば、と首を傾げたのは『Code187』梯・芒(p3p004532)だ。
「強者を倒してくれ、しかし殺すな! ってこの手の依頼、鉄帝で2度目なんだけど流行ってるのかな?」
 首を傾げる芒にグドルフは「流行ってるのかもな」と返す。
 鉄帝は力が全てと言っても過言ない。卑劣な手に出る弱者も決して少なくはないのだろう。
(でも、前回は自分で止めを刺すためって覚悟の不殺だったけど。今回は覚悟が無いからって、達成しても依頼主の今後は御察しだね)
 まあ鉄帝的な考え方をするなら、ジグラッドもこんな手に敗北を喫するのであれば真に強者とは言えないのだろう。
「ブスイな気はするけれど、強者と戦えるキカイをノガス手はないよ」
 『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は拳を握りしめる。
 強さを磨くのならやはり強い者と勝負すべきだ。それに自分が有利な状況で攻めるというのも鉄帝流である。
 そんな中レジーナは戻ってきて、ギフトによる変装を試みる──だが、諦めた。うまくいかないようなら、動きを阻害してしまうだけだろう。夕暮れの近づくこの時間なら、斜陽が顔を見づらくしてくれるかもしれない。
 不意に、風が吹き抜けた。
(……来タネ)
 ジェックはガスマスク越しに微かな匂いの変化を感じ取る。これは──砂埃と汗の匂い、だろうか。
 地上でもエスラが植物たちの会話とファミリアーの視界でジグラッドたちを捉える。
 小さく影が見えてくると、グドルフは翁面を取り出した。
「さあて、これも仕事だ。キチッとこなしてやろうじゃねえか」
 ニヤ、と笑った笑みは翁面を被ったことで見えなくなる。
 ジグラッドたちはイレギュラーズたちの姿に気づき、怪訝な表情を浮かべて立ち止まった。
「……誰だ?」
「あなたが強いって評判のジグラッド先輩だね。どれくらい強いのか、実際に見せて見て欲しいんだよ」
 言うが早いか、芒は彼らの懐へ飛び込むと両手に握ったナイフを振るう。
 それは辛くも回避されてしまうが──。
「全力で、おアイテ願うよ!」
 芒と入れ違いざまにイグナートが相手の懐へ飛び込み、右拳を思い切り地面へと叩き込む。
 爆裂の1撃に、彼らは咄嗟に腕を交差させるとそれから逃げるように移動した。そこへすかさずイレギュラーズたちが立ちはだかる。
 弟子たちの前に陣取ったケドウィンは、その敵意が篭った眼差しに目を細めた。
「俺とどっちが早いか、いっちょ速さ比べといこうや」
 大型ナイフが振られ、紙一重で回避する弟子たち。はっと顔を上げれば、家の方から足元を狙って銃弾が放たれる。
 直撃を避けつつ弟子たちが一斉に目の前のケドウィンへ斬りかかるものの、練度が低いためか中々致命的な1撃とはなり得ない。
(かの鉄帝で名高い戦士、そしてその弟子達。真っ向勝負じゃないのは少々不満だけれど……こればかりは仕方ないわね)
 メインディッシュとなるジグラッドの強さに思いを馳せ、佐那は自然と好戦的に口端を上げた。
(……ふふ、どれほど楽しめるかしら?)
 地を蹴り一閃。後ろへ逃れた青年の服が裂かれ、大腿に一筋の赤が滲む。
「くっ……言え! お前たち、一体誰に命令を受けた!」
「何者か? 誰の差し金?
 残念だけど答えてあげられることは何もないわ。少なくとも私は今自分の意志でここに立ってる。分かるでしょ?」
 ──あなたたちを倒しに来たの。
 エスラがそう告げると同時、弟子たちの頭上から殺傷の霧が降りかかった。

「あんたらが俺の相手をしてくれんのか」
 最初は虚を突かれた表情だったジグラッドも、いまや好戦的な笑みを浮かべていた。
「俺に負けた誰かの差し金か……いや、そんなことはどうだっていい。あんたらは強そうだ!」
「おめえさんこそ、強ェんだってな。一丁お相手願おうか。拒否権なんざハナから無いがね」
 片手斧が振り上げられ──グドルフは思い切りぶちかます!
 金属と金属のぶつかる音が辺りに響き、ジグラッドはますます笑みを深めた。
「いい、これはいい! 楽しめそうだ!」
「オレもいること、ワスれられたら困るよ」
 防御姿勢のイグナートが拳を放つ。風を切るようなそれは再び金属の腕に阻まれ、当のジグラッドもほんの僅か表情を変えたかどうかというダメージだろう。
 ただ、酷く楽しげな彼は弟子の加勢に行く様子を見せない。
「オラァッ!!」
 ジグラッドが放つ渾身の一撃を、これまた屈強な身体で受け止めるグドルフ。翁面越しに嘲る笑いがジグラッドへ届く。
「ハッ。こんなモンか? 噂は所詮、噂だったか」
「何?」
 眉をひそめたジグラッド。しかしその口端はすぐに上がる。
「まあ、急ぐなよ。最終的に立ってたヤツが勝者だ」
「チガいないね」
 イグナートの牽制するような攻撃にジグラッドが離れる。2人と1人は互いに睨み合った。

 『か弱い』と自認する芒は気迫滾る突撃と後退を繰り返し、少しずつ弟子たちにダメージを与えていく。
 だが、追ってきた1人に剣を浴びせられた芒はぐらりと体を傾がせた。
(駄目なんだよ……殺す、ううん、殺さないで倒すんだよ)
 湧き上がる本能的な殺意を今ばかりは否定し、芒は自らのパンドラを消費することで戦闘続行を選んだ。
 そこへ飛来した召喚物が芒を支援し、癒す。弟子の青年ははっとそちらを向いた。
 遠目に見えるのは少女と思しき姿。レジーナと弟子の視線が交錯する。
 レジーナは小さく眉を寄せた。
(さっきの……まさか、思い出したのかしら、)
「回復手を狙え!」
「……っ!」
 青年の声に他の仲間たちが素早い動きで詰めてくる。
 ジェックの狙撃もケドウィンの牽制攻撃も、その他の向かってくる攻撃を掻い潜り、時に掠めさせながら弟子たちはレジーナに肉薄した。
 袈裟懸けに下ろされたそれらと共に、赤がレジーナの視界を濡らす。
 不意に背後から迫った一刀に、青年のうち1人が腕を負傷して盾を取り落とした。次いでエスラのマギシュートが飛来し、レジーナから彼らの気を逸らす。
「レジーナさん!」
 一刀を放った佐那がレジーナに駆け寄るも、その意識はすでに無い。
(……面倒ね)
 回復手を真っ先に潰され、しかもこちらは殺さぬよう手加減せねばならない。
 弟子たちは次の標的を佐那に定めたのか、一斉に襲いかかってきた。小さく舌打ちをしながら防御姿勢を取り、受け流しながら佐那は攻撃を凌ぐ。
 1人ずつの戦闘力はそうでもないが、束になるとこうも脅威になるとは。──だが。
「そうじゃないと楽しくないわ」
 避けられぬはずだった一刀を避け、佐那は鋭く青年の間合いへ踏み込む。
 剣を交え、銃弾が飛び。少しずつ弟子たちが押されていく。
(命を決して奪わないよう、注意しなくてわね)
 エスラは威嚇術に切り替えて弟子たちへ攻めた。本能を覚醒させた彼女のそれは、不殺でありながら脅威的なダメージを与える。
 未だ屋根の上で狙撃を行うジェックは、標準を青年たちの手足へ定めた。
(アタシは殺さナイ手段がナイからネ)
 柔い人間の体ということもあって、どうしても慎重にならざるを得ない。そうでなければ人殺しに適したこの銃は、容易に彼らの命を奪ってしまうことだろう。
 ジェックの弾が青年の足に吸い込まれ、彼の体勢が崩れる。
 そこへ佐那は肉薄して──。
「──暫く倒れていて貰いましょうか」
 与えられた衝撃に青年の意識が暗転した。
 ケドウィンもまた、ナイフで青年に襲いかかる──と思いきや、ナイフを反転させて柄で殴りつけた。
 不要な殺しはケドウィンの中のルールが彼自身を許さない。
(暴力を制御してこそのアウトローだ)
 イレジュラーズが残った弟子たちへ体を向けると、弟子たちは「くそっ」と歯ぎしりしながら剣を構えた。

 地にくずおれるグドルフの姿にイグナートは名を呼びかけ、慌てて口を紡ぐ。
「なんだ、終わりか。次はあんたか?」
 つまらなそうにグドルフを一瞥したジグラッドはイグナートへ向き直る。
 だが、不意に笑い声が上がった。
「クク、参ったね。ちょいと侮り過ぎたか──だがなあ、勝つためには手段を選ばねえ。おめえらもそうだろ?」
 起き上がれるはずがない。だが現実に、グドルフは起き上がっていた。大地を踏みしめるその姿にジグラッドがゆっくり視線を移す。
「……こりゃたまげたな。だが……面白い!」
 再び仕掛けにかかるジグラッド。しかしこれまでとは打って変わって、防戦一方のグドルフやイグナートに気分を害したらしい。
「あ? かかってこいよ、面白くねぇだろ」
「へえ? 相手にかかってこられなきゃ倒せないか?」
「ソレは強者とは言いガタいね」
 2人の煽りに乗せられるジグラッド。激しい攻撃を耐え忍びながら、イグナートは相手の手足にジャブやローキックを当てて牽制していく。
(もうそろそろだ。なにせおれたちは──)

 ──勝つためには手段を選ばねえからな。

 不意にジグラッドの後ろで黒髪が靡く。はっと振り向いたジグラッドは、歯をむき出しに笑みを浮かべる女と視線を交錯させた。
「──さ、貴方はもっと楽しませてくれるんでしょう?」
 咄嗟に体を腕で庇い、甲高い音が響く。その脇を素早く抜けたのはケドウィンだ。
 先ほどよりもさらに反応速度を上げたケドウィンは格闘戦をジグラッドに仕掛けていく。
(相当やると聞くからな)
 殺さないように、しかし本気で攻めなければ負けるだろう。
 そこへ彼らを援護するような射撃と術式攻撃。
 浴びる集中攻撃にジグラッドはようやく悟る。
「なるほど、これを待っていたか!」
「ソウだ。ここからは、コンシンの力を叩きつけさせてもらうよ!」
 そう、もはや彼を抑えておく必要はない。
 やっと全力を出せるとイグナートは笑みを浮かべ、握ったものを握りつぶせるほどの握力で拳を作った。叩き込まれたその1撃に、ジグラッドも肺の中の息を吐き出した。
 だが、その視線はすぐ好戦的にイグナートを射抜く。
「なんだ、いい1撃出せるじゃねぇか」
 ジグラッドは両拳を握り、イグナートへ全力で振り下ろす。それをイグナートも両腕で受け止め、楽しげな笑みを浮かべた。
「おれのことも忘れてもらっちゃあ困るぜ!」
 グドルフは片手斧を振り上げ、ジグラッドへ振り下ろす。ダメージは残るものの、勝手に少しずつ癒え始めた体は今動く分に支障はない。
 乱闘の中、放った銃弾がその腕に弾かれるのを見てジェックは「フむ」と小さく呟く。
(一気に削ロウとして殺しちゃうヨリは、ちまちま削って達成シタ方がいいカナーって思ってたケド)
 攻撃が通らぬなら仕方がない。その屈強な身体に通るほどの──貫通させてしまうほどの凶弾なら、どうだ。
 深く、強かに相手を貫き抉る凶弾はジェックのコールド・ブラッドから放たれ、一直線に飛んで行く。それは腕を貫通し、足元へ突き刺さった。
「ぐっ……」
 呻いたジグラッドは、しかしまだ止まらない。殴り、蹴り、蹴散らしていく。
 詰められて殴り飛ばされたエスラは、それでもキッと目を見開くと地面を踏みしめて術式を展開した。
 芒の撹乱するようなヒット&アウェイがジグラッドの体力を確実に削いでいき、そうでなくともジェックの凶弾を受けた腕は血を流し続ける。

 空が真っ赤な血色に染まる頃。
 ジグラッドと言う名の戦士は地に倒れこんだのだった。


●斜陽
(不意打ちに加減に、と。……強者相手とはいえ、少しばかり割に合わなかったかもしれないわねぇ……)
 ふぅ、と憂い気な溜息を漏らす佐那。そこに獰猛な一面はもう見られないが、吐かれた息は望んだような戦いでなかったと示すかのよう。
 さっさと撤収するぜ、と声をかけたケドウィンはジグラッドの傍にしゃがみ込む。
「どん底で生き延びるのも強さのうちだ。またひとつ強くなったな?」
 反応がないことに気を悪くするでもなく、ケドウィンはニタリと笑ってその場を後にする。ジェックは放置して去ることに一瞬迷う──こともなく。
(マア、鉄帝人ならスグにナオるでしょ)
 なんせ丈夫な体を持っている。それに闘技場などで傷くらい良く負っているだろう。
「ワルく思わないデネ」
 本人に聞こえるかも怪しいような声量で呟き、くるりと踵を返した。
 グドルフは地に伏したままのジグラッドを見て「けっ」と悪態をつく。
 名のある鉄帝人ならここで立ち上がり、イレギュラーズの前へ立ち塞がる程度のこともして欲しかったものだ。しかしながら、それはどうも望めない。
「期待外れだったな。行こうぜ」
 促す声にイレギュラーズたちは去っていった。
 夜の帳が下りようという最中、地に伏したジグラッドの指が小さく震えて力が篭る。しかし完全に起き上がることはできず、ジグラッドの体は──力なく、横たわったままだった。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)[重傷]
レジーナ・カームバンクル
グドルフ・ボイデル(p3p000694)[重傷]
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)[重傷]
黒撃

あとがき

 お疲れ様でした。お楽しみ頂けたら幸いです。

 またご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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