PandoraPartyProject

シナリオ詳細

脱出☆ドキドキ温泉タウン!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想において知る人ぞ知る、秘湯に巡り合える夢の温泉町、『パステラーン・マルミーエ』への招待状がローレットに届いた。
 しかも届けに来たのは見覚えのある酔った貴族三人組である。
「ふぅーふっふー!! 毎日悪党連中に天誅を下しているローレットのみんにゃには感謝してもしたりにゃりんよまったきゅぅ!」
「ちょこざいな連中のせいで、ひっく、最近はいそがしーもんなぁ!」
「俺ァーよォ、この間なんか……なんだっけぇ? うちのガキがちくわにぱんつ詰めて投げてくんだよなぁ、ひひ」
 この様な調子で酒臭すぎる息を振り撒き、ギルドにいた女性に絡んでは返り討ちに遭うを繰り返していた末に『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に8枚ほどのチケットを渡して行ったのだ。
 最近は寒くなって来た。体を整えるのも、それに適したチケットを時に配るのも情報屋の仕事。
 安定した依頼達成率と作戦相談を維持するには時としてエナジーを全身から吸収して疲れをパージするのも大切である。
 ならこの機会に日帰りで息抜き旅行させても良いのかもしれない。
 そう思ったユリーカは嬉々としてそのチケットをイレギュラーズにプレゼントしたのだった。

 そして後日、イレギュラーズ達は思い思いに静かな温泉町を練り歩き。様々な温泉施設を堪能して心身共に疲れを癒していた。
 種類に富んだ温泉、滝行温泉、間欠泉に飛ばされてそのまま水池にインするアドベンチャーに加え、温泉まんじゅう食べ放題、岩盤浴に定番の泥パック。フルーツポンチデラックス~レガド流パフェスマッシュ~等々。
 温泉タウンは長年、一部の『通』や貴族達に愛されて来ただけあってか。非常に過ごしやすいお疲れの皆様を癒す為だけに作られし夢のパラダイス……!
 しかし、やはり事件は起きてしまった。
「た、大変だ……! 町の唯一の出入口が山の土砂崩れで塞がれちまった!!」

●ODEN・HOUSE
 ここはおでん屋(作戦司令塔)。お野菜だけじゃなく牛筋の煮込み汁が香る疲れた人間を癒す優しい空間である。
「ミッションを説明しましょう。依頼主は温泉タウンの住民、そして同じくしてこの陸の牢獄に囚われてしまった忍びで来ている貴族達です。
 目的は秘湯湧き出る温泉洞窟を改造した、このパステラーン・マルミーエから脱出する事となります。
 現在の状況は洞窟の入口が向かいの山の土砂崩れによって埋まっており、時間こそかかるものの救助を待っていれば有毒ガスの充満か餓死かの二択でジ・エンドでしょう」
 俯き、疲れ切った様子で”がんも”を頬張る若い声をした壮年の男が屋台の卓に広げた地図を交えて説明する。
 ちなみに彼が誰なのかぶっちゃけ誰も知らない。なんで仕切ってるのかもよく分かってない。
「入口を塞ぐ土砂には岩や巨木も混じっており、私と私の上司で掘り進めて見ましたが1トン分しか除去できませんでした。
 硬さ、密度、掘っても押し返してくる土砂の厄介さはそれなり以上です。そのため、幸運にも共にこの災害に遭遇した皆様には除去して脱出口を目指していただくと同時に、
 疲労や空腹、またはリフレッシュも兼ねた休憩を望むようなら温泉タウンの各施設サービスを受けられる用意があります」
 手伝ってくれる人物は他にいないのか、とあなた達の誰かは首を傾げた。
「一般人にあれの撤去作業は酷でしょう。ですが、出口が見えてきそうなくらいに掘れたなら総出で手伝う事も可能でしょう。
 説明は以上です。今回もまた皆様を注目している人物はきっといるでしょう、くれぐれも、よろしくお願いしますね」

 壮年の男は屋台の店主にお勘定を、と言ってその場を後にした。
 漂って来る温泉卵用のつゆの香りが何とも甘く、イレギュラーズの鼻をくすぐるのであった。

GMコメント

 寒くなってきたら温泉に入ると良いと聞きました。

 以下、情報。

●依頼達成条件
 タウンのみんなを外へ出してあげる。

●情報精度A
 もう掘るしかありません。

●『パステラーン・マルミーエ』
 幻想のどこにあるかも教えられず、チケットを持って安い銭湯前で立っていると馬車が迎えに来る仕組み。
 着いた先には湯気があちこちから漂う夢の温泉町。
 お酒の美味しい料亭もあれば、秘湯に入れる温泉施設、スイーツを各種備えたお店も揃っている。
 OP冒頭で紹介されたモノ以外にも色々あるので『これ!』というものがあれば探してみても良いかも知れない。
 きっと何となく近い物が見つかるだろう。

●脱出作戦!
 掘る!! 掘りまくる!!!
 勢いで言うのは簡単だが、魔法をぶっぱなすにしても殴るにしても斬るにせよ。
 巨木や岩が土砂の中から飛び出して来ることもあるので注意していなければ思わぬ一発ダメージを受ける事も。
 時間経過と共に疲労ダメージ(HP・AP消費)が蓄積し、無理をすれば倒れる事も……そこで、お言葉に甘えて思いっきり温泉タウンを楽しみ疲れを癒しながら作業に励もう!
 ちなみに時間が経過し過ぎると大変な事になるので頑張ってください。

●住民・貴族その他
 のんびりと温泉タウンを楽しみつつ皆様にたまに応援しに来ます。条件を満たすと彼等総出で手伝ってくれます。

 以上。
 皆様の良い旅をお待ちしております。

  • 脱出☆ドキドキ温泉タウン!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年12月03日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
サブリナ・クィンシー(p3p002354)
仮面女皇
リジア(p3p002864)
祈り
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人

リプレイ

●MISSION.START
 おでんの香りがイレギュラーズの鼻をくすぐる。
 『百合烏賊キラー』エル・ウッドランド(p3p006713)は項垂れながら手元のちくわを頬張った。
 頬張って、暫しの間。『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)が屋台に広げられた地図を覗き込んでから小さく叫んだ。
「温泉旅行に釣られて来たらまさかのトラブルだよ!?」
「せっかく温泉に浸かっていたのに……穴掘りするのですか」
「ツ……ツイてないです……せっかくのんびりデーが……私もちくわに物を詰めて投げたり平和的に過ごしたかったなぁ」
「こんな所にきて土砂崩れ軟禁とは運のない……」
「……前にも似たような事があったな……あたし、なんか悪い事したっけか……?」
 温泉タウンに集いし女子達から滲み出るどんよりとした空気が重い。
 湯気立つおでんの鍋を眺め、『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)も見るからにどよーんとした雰囲気で突っ伏す。
 右に同じく。間の悪い事態に『仮面女皇』サブリナ・クィンシー(p3p002354)も俯き、コラーゲンたっぷりの牛筋を一口。
 更に右に同じく。『水面の瞳』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)は既視感のある状況に目を細めて呟いた。
 ユリーカからチケットを渡され。せっかくの休暇を楽しもうとしてトラブル、閉ざされたリゾート。
 脱出できなくば死……ニアには覚えがある。あり過ぎる。
「オーッホッホッホッ!! 崩落は不運でしたが、我々がここに居合わせたのは幸運の極み! そう、このわたくし!」
 軽快に打ち鳴らされる指ぱっちん。
 \『きらめけ!/\ぼくらの』!/
 \\\御天道・タント(p3p006204)様!!///
「―――が! 万事解決いたしますわー!!」
 エステから引き連れて来た店員達に髪をドライヤーされてブワァなっているタントが腰に手を当て、斜め32度の角度に曲げた体から溢れ出るビビッドエレガントブリリアントコンフォートなポーズ!!(詳細割愛)
 そんなこんなで始まるブリーフィング兼、エレガント作戦タイム・女子会。
「……土砂が、崩れて、大惨事……把握した」
 その様子を隣の温泉卵屋台から眺める『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)は納得した様に目を閉じた。
「なら、破壊すればいいだけだ。若干専門外だが問題ない、だが……災難だったな。ルミリア。お前ほど、こういう事に向いていない者もいないだろうに」
 チラと視線を横へ向ける。
 そちらでは美しい純白の翼を揺らしている友人の姿。
「本当に……せっかくの休暇というのに……
 とはいえ、この温泉街のサービスを受けられるみたいですし……無事に済ませてから、また少しだけゆっくりしましょうか」
 『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)は小さく溜息を吐いてリジアに頷く。
 彼女が辺りを見渡せば、そこは温泉宿等の施設が並ぶ秘密の大洞窟。
 湯気立つ。香り立つ。艶立つ。
 本来ならこの夢の様な街で身体を癒す筈だった彼女達は、今まさに秘湯から立ち昇る温泉ガスでピンチとなっていた。
 集いし乙女達は暫しの相談を経た後に立ち上がる、何としてもこの窮地を潜り抜けて温泉を楽しむのだ……!

●温泉! GOGO!!
 馬車で来た際に見上げた、大洞窟入口の背の高いトンネルが物の見事に埋まっていた。
「思ったより酷いねこれ……外まで何メートルあるんだろう?」
 惨状を前に苦い表情をニーニアは浮かべる。
 同時に。柵を立てた内側へ作業中に流れ込むであろう、土砂や瓦礫による二次被害を防ぐ為に土嚢を積み上げていく。
「幻想は今色々と立て込んでますし、他の客に極端に位の高い貴族も居ないようですから、早急な行政側による救助は見込めませんかねぇ……土木作業を手伝ってもらえそうな技術職の方も中に居なさそうですし」
 小屋からストレッチを終えて出て来たサブリナ達はニーニアの防波堤構築に協力しながら首を傾げる。
「あたしの運が悪いわけじゃないと思いたいね。取り敢えず保護結界は張ったよ、リジアから見てどうさね?」
「……少しはマシになった。だが、崩落はそう防げる物ではなさそうだ。ニーニアのバリケードは、強度として見るなら申し分無いレベルに思える」
 リジア達はそれぞれの能力を活かしながら、比較的安全性の高い状態を保とうと模索していた。
 彼女達がちょっとした崩落に巻き込まれるのはともかく、後ろに広がる温泉タウンへ被害が行くような状態は避けたかった。
「私たちの作業による余波で派手に崩落が起きる事が防げる……それだけでも良しとしましょう」
「その通り! 舞台裏で協力して下さっている方々の安全を確保するのも、わたくし達のミッションですわ!」
 キラッキラに輝くタントは後ろへ視線を巡らせて小さくウインクをする。
 ニーニア達の指示を仰ぎながら、せっせとトンネル近辺にある店舗の補強や避難を進めている男達。
 彼等はタントの呼びかけに応じた『愉快なお嬢様大好き(H.L.L)教会』の人間である。彼等はタントの号令に駆け付け、それぞれ見事な連携力を周囲に見せつけていた。イレギュラーズは彼等を訝し気な目で見ている。
「もきゅもきゅ……こうして一丸となって協力し合う姿を見せる事で、他の一般客やお店の方々にやる気を出して貰うという……はぐっ、はふっはふっ
 私は鉄騎なのと毒への耐性があるので多少マシではありますが、そうでない人達は……もぐ、ごくっ……それに私も餓死するのは嫌ですからね。本当に」
 片手に椀を持ち、片手で作業を手伝うエルはおでんつゆを染み込ませたパンをむしゃり。
 餓死する事を想像したのか、或いはこの後の作業に備えてか、彼女はモリモリ食べている。
「そろそろ作業に移れそうですね~……って、あぃたっ!? 小石が頭に……」
「ん? 小石?」
 リジアが上を見上げる。
 瞬間、彼女の『破崩ノ天眼』がトンネル上部の土砂に大きな綻びが亀裂のように出来つつあるのを捉える。
「……! 皆、ルミリア、下がれ!」
 咄嗟に退避を促した直後。静かな音とは裏腹に大岩を交えた小規模の雪崩が襲いかかる。
 土の中で岩同士が衝突したのだろう、鈍い破砕音を響かせながら転がり滑り落ちて来たそれらはニーニア達が作った柵に受け止められ積み上がっていく。
 その衝撃は冷やりとさせる物を感じさせたが、作戦が上手く行ったという手応えも感じていた。
 保護結界に護られている防塞壁は跳ね飛んできた石や土塊を受けても破損せず、健在であった。
「町への被害も無し。完璧ですね!」
「第一の作戦は成功ですわー! ここからがわたくし達の腕の見せ所ですわね!」
「安全地帯の製作完了、さっさと終わらせて温泉に……ぁあっ、眩しい!?」
 タントの後光で目が開けられない九鬼。
 しかし、これで最低限の土台は整った。後は憂いなく彼女達が全力で掘り進めるだけである。
「……定期的な土砂の崩落とはまた面倒な……まあいいだろう。特に役に立った覚えのないこの眼も、こういう機会ならば活かせるというもの」
 滅多に役に立った覚えは無い。そうポツリと呟くリジアは、この時ばかりは感謝を覚えるのだった。


 ~~アイキャッチ~~
「エルさんそれ美味しいんですか?」
「ひからびたパンがおでんによって輝いた味なのです……Lumiliaさんもどうですか!」
「……それ、おでんが100%勝ってるだけでは」


 濛々と吹き荒れる粉塵の最中、タントが続く。
「オーーッホッホッホッ! このわたくしの一撃が、今! 文字通り立ちはだかる壁を穿ち崩して魅せますわー!!」
 迸る雷撃。
 土砂を焦がしながら爆散させたそこへ、霊刀を手に飛び掛かる九鬼が一息に巨木を捌き、力任せの一撃を叩き付けて土塊を吹き飛ばす。
「発破かけますよー!」
 ちょっとした岩盤が土砂を食い止めているのを見つけたニーニアが小包爆弾を差し込み、仲間への合図の後に起爆。周囲に瓦礫が飛び交うが、しかしそこは予め用意していた防壁が被害を抑えている。
 暫しの間を空けて、今度は崩落の定点なる位置を補足した上でサブリナが魔法陣を展開する。
 彼女をよく観察していなくば認める事の出来ない一瞬、サブリナの華奢な体躯からぞわりとしたオーラが溢れ出る。
 共に放たれた閃光が不安定な個所を撃ち貫き、爆発。相応の風穴を開けたのと同時に小規模な崩落が起きて土砂が流れ込んで来る。
「さすが、リジアさんですね」
 仲間達に祝福を囁きながらのLumiliaから賛辞の声。
「負けてられないね、あたしもあの時とは違うんだ、全力でブロッ……シールドバッシュのほうが効率が良いな……」
 掘るだけ。
 その言葉がどれだけ技術を必要とするも、技量は問わないとする所をニアは分かっていた。というより気のせいか、少しだけ壁の様な土砂の山へ攻撃するのに慣れた感じがする自分に彼女は気付いてしまう。
「……悲しくなんて無いからな。さ、掘ろう……」
「?」
 良い感じでザックザック土の壁を抉り取って行くニアは耳を下げて、何処か哀愁漂う姿で掘り進めるのだった。


 ~~アイキャッチ~~
「そろそろ休憩ですね、足元の土砂を一通り運んだら行きます! 小包爆弾、あっちに置いておきますよっ」
「む……休憩か。ではルミリア、一緒に温泉へ……何? 別の班? ………別に気にしてないもん」


 塞がれた出口を掘り進めるにあたって、その規模と量では如何にイレギュラーズといえども限界はある。
 今、A班なる彼女達は。ある程度の引継ぎに類する始末を終え休憩時間となった。
「さぁさぁ、皆まずは体を綺麗にする為に汚れを落とさないとね!」
 ニーニアを筆頭に小屋へ入るや否や。早速汚れた服を変えると共に泥を洗い落とす事暫し。
 町に用意されている馬車へ乗り移動する事少々。
「休憩時間はやはり温! 泉! 入りますわよ! ……女湯に!」
 纏わりつく疲れは拭うのではない。
 洗い流してしまった方が癒されるという物。一同は近場の温泉施設へと繰り出す事にした。

●温泉タウン前後編
 土砂崩れのあった現場近辺に構えている店へとやって来た彼女達、イレギュラーズは施設の人間に歓迎され湯浴みへと興じていた。
 微かに香る甘い匂い。
 立ち昇る湯気に混ざる、浴場を構成する周囲に生えた薬草や鉱石に含まれる成分が肌に艶を与えてくれる……という触れ込み付きである。
「良い香りですわぁ……わたくしの美しさがまた一段と輝いてしまいますわよー!」
「こっちの露天も凄くリラックスできますよ~……あれ? タントさんはどこへ……」
「……あそこのジャグジーに差し掛かっている謎の光、あの向こうにいるんじゃないか……?」
「!?」
 一体何が起きているのか。ニーニアは記憶の中にタントが脱いだ姿だけ抜け落ちている事に気付いて、二度見から三度見して驚愕に震えた。
 次いで今度は花弁の浮く湯船へ、次にサウナ、渦潮風呂。
 流動的ながらも楽しむ事と休息を取る事を目的に、サブリナも共に施設を巡って行くのだった。


 ~~アイキャッチ~~
「ぷはぁっ! お風呂上りはやっぱりフルーツ牛乳だよね!」
「湯上がりに牛乳も良いですわね! 仁王立ちで一気飲みですわ!」
「……賑やかだ」
「後発組の皆さんにお土産買えたり貰えてよかったね、温泉饅頭を食べて元気いっぱいで掘っちゃおう!」


 掘削現場へと戻って来たA班は残っていた班と交代する。
 しかし、作業場近くの小屋では身綺麗にはなっているものの。疲れた様子でベンチで眠っているLumiliaの姿が在った。
「どうも全員の攻撃がクリティカルしたみたいで……派手な雪崩が起きた時に巻き込まれたのです。今は一足先に仮眠を取って貰っている所でして」
「……このまま寝かせておこう」
「勿論ですっ」
「じゃ、あたし達は食事でも取って来るよ。みんな気をつけてね」
 心配だが、そればかりで体力が回復するわけでもない。
 後ろ髪を引かれる思いの九鬼達を連れてニアはその場を後にするのだった。
 ────────
 ────
 ──
 ……そうしてやって来た近場の温泉宿。
 漂って来る木の香りは何とも落ち着く空気を醸し出しており、ニアと九鬼は自然と暖かい畳の座敷へと向かう。癒される。自然と漏れ出る感想は宿の食堂が如何に居心地良いかを物語っていた。
「おぉー……」
 エルと九鬼がメニューを覗き込んで首を傾げる。
 彩り豊かな品揃えはターゲット層が観光客だけではない証拠だ、思ったよりも本来は高級店なのかも知れないと彼女達は喉を鳴らす。
 だがそこで迷いはしないのが姐御系女子。
「スイーツだ! 時間が許す限り、メニューの端から端まで用意してもらおうか。れがど流ぱふぇすまっしゅ? も楽しみにしてたんだ。
 酒と一緒にお土産もたくさん包んで貰おう。郷の皆にも色々と持ち帰ってやらなきゃね。とりあえず、美味そうなのは確保だ!」
 直後に威勢よく響き渡る「オーダー!!」の一声。
 町の救い主でもあるイレギュラーズからの注文である、店員達はバタバタと品を掻き集め、用意して。駆け足でデザートを持って来る。
「フルーツポンチをお持ちしました。その他の御品物は包んで宜しいでしょうか?」
「お、おぉ……?」
 ニア達三人は卓上へ置かれた巨大フルーツでポンチなパフェっぽい物に目を奪われた。
 土台を制するナタデココとゼリー、プリンの上では覇を唱えるホイップクリームと三種のアイスが。囲むように飾られているのは赤いワカメとブルーベリーだった。
 問題なのはその物量。
 エルと九鬼の対面に座っていたニアの姿がすっぽり隠れる程である。
「…………あたし一人で食べるのも悪いしさ、みんなで一緒に食べないか?」
「さ、賛成ですけど……」
「腕が鳴りますねぇ! いただきまーす!」
 意気揚々とスプーンを構える。
 今度はエルの良い声が響き渡るのだった。
「んーっ! 美味しい!」
 ──
 ────
 ────────

「もうとっくに外に出ていてもおかしくありません! 既に温泉街の奥では酸欠で倒れる人が出て来ています……ここが正念場です!」
「トンネルは抜けていると九鬼様が言ってらしたわ! サブリナ様の魔法が飛ぶ直前まで、全力で掘り進めますわ!!」
「頑張って掘りましょう、お腹が空いたらパンあげますから……!」
「干からびたパンだよねそれ!?」
 轟音に続いて連続する掘削音、破壊、破砕、爆砕、爆散、粉砕、大喝采。きらめけボクらのタント様!
 土砂に塗れる事を恐れず掘りまくる彼女達イレギュラーズは、町の一般人達からの声援を背負いながら武器を振り下ろし、引き金を引き絞り、魔力を解き放つ。
『欠けたりはせんが……ううむ』
「文句言わない!」
 自身の刀に宿る霊が不機嫌そうに唸るのを抑え付け、九鬼がリジアの起こした崩落へ飛び込む。
 少しでも先へ。
 その想いを一つに、彼女達は全力で土の壁を抉り崩して行く。

 そして───

「……! 空気の流れ、光……外だ」

●休息の一時
 出口が開いた。
 換気と共に外界へ避難する者が出る中、未だ温泉街の入口付近の店はこんな時でも営業を続けていた。
 それは商売根性逞しいわけではない。
 恩人達へ一時のもてなしをするためだったのだ。

「はぁあぁぁ……っ、待ちに待ったのんびり温泉です……」
「皆さんお疲れ様でしたー。所でここの温泉、飲めるらしいですよ」
「ま、まだお腹空いてるんですか? エルさん……」
 首元のタオルを抑えながら肩まで浸かる九鬼が足を伸ばして湯に入っている仲間を眺める。
 ニーニアの背中を流すエルがほうと息を吐く。
 溜まった疲労が抜けていく感覚。貴族達が勧めるのも分かる気がした。

「今度こそ心からのんびりしますわよー! 皆様お疲れですもの、せっかくの温泉楽しまないとですわ!」
「みんなお疲れ……あたしは帰り、買い込んだ土産と街の人に貰ったお礼の品をどう運ぶかな……頑張ろう、あたし。気合だ」
「……良い湯ですね、土ぼこりと汗で汚れた体では流石に帰りたくありませんでしたし。素直に嬉しいものです」
 それぞれ思い思いに秘湯に浸かり、細かな傷に晒された肌が仄かに熱を含んで癒えて行く様を見つめていた。
 その横で。
「……なんというか、凄く賑やかな生き物と静かな生き物だ。ルミリアは……静かだからな……少し、新鮮だ」
 リジアとLumiliaの二人は肩を並べて露天風呂に浸かっていた。
 彼女達は元よりよく温泉を巡る仲だった。今回はまさか事件に巻き込まれるとは思わなかったが、結果的に目的は漸く達せられたと言えた。
「はぁ……くたくたです」
「ルミリアはだいぶ疲れているようだな。まあ、生き物には辛いか。私も少し体が重い」
「……すごく、暖かくて……なんだか眠くなってきました……のぼせては、いけません。ちゃんと出てから休まない……と………んぅ……」
コトン、と。濡れても尚サラサラとした白い髪を揺らし、リジアの肩にLumiliaが寄り掛かる。
 微かに聴こえて来た悩まし気な声。
 しかしその声の通りに行動が起こされることは無く。リジアにだけ静かな寝息が聞こえて来るのだった。

「……?……部屋に運ぶべきか……そういえば、生き物のこういう顔は初めて見るな。こういう時は……おやすみ、ルミリア……でいいのだろうか」


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
よいひとときをお過ごしくださいませ

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