PandoraPartyProject

シナリオ詳細

じゃっくおらんたん

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ファントム・ナイトの日の出来事
 此処幻想王都で御伽噺と魔法を合わせた、盛大なお祭り『ファントム・ナイト』が執り行われていた日の事である。
「とりっくおあとりーと!」
 カボチャの提灯が付けられた民家の一つに、お化けの仮装をした子供達の集団がやってきた。
 お菓子を求めてやってきたのだろうと、素朴な婦人がドアを開け放つ。
「はいはい、可愛い坊や達。お菓子なら、こちらにありますからね」
「おかしだー!」「とりーと!」「9枚でいい!」
 婦人は傍に置いてあったお菓子を敷き詰めておいた壷の蓋を開けてみるが、中身は空だ。どうやら他の子供らにあげてしまって品切れらしい。
「あぁ、ごめんよ坊や達。今お菓子切らしてるみたいで」
 婦人が申し訳なさそうに口にすると、子供達は被り物で一部分しか見えない表情をこれでもかとニンマリ歪めた。
「じゃあ、いたずらね!」「とりっく!」「深い悲しみにつつまれた!」
「えぇ、あぁ。ちょっと! 勝手に部屋に上がらないで!」
 この日、絹を割いた様な婦人の悲鳴が幻想の街に響き渡った。

●一方、ギルドでは
 『若き情報屋』柳田 龍之介(p3n000020)。彼は恨みがましげな顔つきで今回の事件について説明を始めていた。
「この祭りで使われたカボチャの付喪神、あるいは祭りを楽しみにしていた子供達の集合霊……いや、精霊って言った方が近いでしょうか。イヤ、決して悪い奴らじゃないんですが……イタズラがちょっと派手でしてね。テーブルにあった御馳走を全部生のカボチャに変えるとか、あるいはヒトの一張羅を動き辛い仮装コスプレに変えるとか……」
 ……カボチャが敷き詰められたテーブルを目の前に、似合わない仮装を身に纏ってブツブツ呟いている龍之介。その表情から察するに、そいつらに盛大にやられたらしい。曰く、依頼を持ってきた婦人も同様の被害を受けたそうだ。
 ひとしきり愚痴を吐いてから、咳払いしたのち依頼の話を続ける。
「……まぁ、おばけの仮装に混じってモノホンの幽霊がやってきたって事ですね。まったく、記念すべきファントム・ナイトなのに仮装じゃないなんてシャレになってませんよ」
 楽しみにしてる祭りを目前にして死んでしまった子供の霊も混じってるだろうから、それを考えると少しかわいそうだけど。そんな風に呟いてから、イレギュラーズに提案する。
「幸い、こいつらはただ単に遊んで欲しいだけみたいです。かなり大変なベビーシッターとも言えますが……相応の報酬は出ますし、どうでしょう?」

GMコメント

 稗田GMです。 
 イレギュラーズさんの子供好き・子供嫌いな一面を出すシナリオとして是非どうぞ。

●環境情報
 幻想の中心街。彼らは遊び相手を探し求めてそこらじゅうを駆け巡ってるとの事。
 時間は深夜なので、一般人の子供達は居ません。見間違える可能性はまず無いでしょう。

●エネミー情報
『イタズラ精霊』ジャックオー:
 見た目はカボチャ人間種の子供。一通り遊べて、満足したら退散する。満足出来なかったら一時的に服をカボチャにされたりなどのイタズラされる。
 今回相手するのは六人。遊び方はかくれんぼ、鬼ごっこ、料理、音楽……とにかくイレギュラーズの遊び方次第。
 非戦スキルやギフトなどの得意技を使った方が満足度高いです。各PCさん毎に違った遊びを提供すると楽しいかも。協力も可。

 プロレスごっこ(という名のガチバトル)で殴り合っても大丈夫。エネミーはHP半分になったら降参します。それ以上に追撃して消滅させる事も一応可能。
 回避能力が非常に高い。ただしHP半分で降参という事も考慮に入れると、耐久力はとても低い。

カボチャになっちゃえ!:中単・低威力・【石化】(厳密にはカボチャ化)
うなる黄金の右ストレート:至単・中威力
まいくぱふぉーまんす:特レ・2レンジ周囲へ【怒】・低命中(フレーバーな攻撃に近いので戦闘を行う方は子供じみた挑発に対する沸点が高いか低いか書いておくとGood)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • じゃっくおらんたん完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年11月24日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)
大悪食
レッド(p3p000395)
赤々靴
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
ワルド=ワルド(p3p006338)
最後の戦友

リプレイ

●好意的な邂逅
 ――いえー、いえぃ。われらはじゃっくおー。シャイネン・ナハトのお化けだよ。
 陽気な子供の声が街中に響く。これが祭りの最中なら微笑ましい限りなのだが、今は子供が寝静まるはずの深夜の事だ。
「こら、お前たち! 子供はもう寝る時間だ!」
 年端もいかない子供が夜更かしでもしているのかと、近くを見回っていた憲兵の一人が注意しに来た。
「あ、おとなのひとだー!」「とりっくおあとりーと!」「お菓子ちょーだい!」
 しかし彼らは悪びれもせずお菓子をせがむ。憲兵は毅然とそんな物は持っていないと断るが、すぐに彼らはむにゃむにゃ呟いて、憲兵の鎧は不格好なカボチャと化してしまった。
 魔物の類かと驚いた憲兵は剣を引き抜こうとするが、それすらもオモチャの類にすり替わっていた。その隙に、きゃあきゃあ黄色い声をあげて逃げ去る子供達であった。

「いたずら、大成功だねー」「見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない!」「この調子で他の奴にもイタズラするか?」
 軽々と裏路地に逃げた彼らは、口々にそう言い合う。新品のオモチャを手に入れる算段を立ててる子供の目だ。路地裏に人が通りかからないか目を光らせていた。
「よう! お前達、こんな所で何してんのー?」
 路地裏に一人の青年がやってきた。『悪夢LV1』清水 洸汰(p3p000845) だ。
 子供達は青年の振る舞いを見て特に警戒せず、むしろ友好的な様子で会話を始めた。
「いたずらの計画立ててたの!」「シャイネン・ナハトの楽しみ!」「みんなが俺にチューモクする!」
「そうか、オレは清水洸汰ってんだ! こっちはぴょんぴょんたろーとエマとナラと……」
 トビンガルーと野ロリババァ(ロバ)の、合計三匹を子供達に紹介する。子供達の内、男の子と見える三人が妙に目を輝かせてそれを見ていた。
「おうまさんだー」「ココーの騎士!」「これ、オマエのなのかー?」
 どうにも乗用動物は彼らの関心を引いた様である。それを見て、洸汰は思いついた様に話してみた。
「あ、そーだ! 皆もちょっと、うちのパカおとかに乗ってみない? 視線がいつもより高いとなー、色んなものが見えて楽しいぞー!」
 男の子達は、すぐに首を縦にぶんぶんと振る。女の子らしいジャックオー達が「男子って単純ねー」などと宣っているが、自分達も乗せて欲しいと言わんばかりにあからさまに視線を送っている。
「じゃあ順番に乗るんだぞー。一度に皆乗っかったら、パカおっちもくったくたになっちまうかんなー。特にエマは大事にしてやってなー?」
「はーい!」
 トビンガルー、野ロリババァに跨って、ジャックオー達は騎士かお姫サマ気取りで御満悦気味に深夜の街中を凱旋するのであった。

●正義の怪人達と出会いました
 さて、凱旋を続けて街中にある公園を通りかかる事になった。公園にはよくよく見れば仮装の為の衣服やシャイネン・ナハトの恩恵で姿を着飾っている者達が居るではないか。
「あれは……イレギュラーズだ」
 公園を取り囲む塀に隠れる様にしながら、洸汰がジャックオー達に耳打ちする。
「いれぎゅらーず?」「しってる。悪者退治する人達!!」「本能的に長寿タイプ!」
「あぁ、そうさ。だがオレ達はいわばバッドボーイズ……血も涙も無いイレギュラーズに退治されちまうんだ!」
 ジャックオー達は身震いをした。大人一人か二人程度なら軽くあしらえる彼らも、本気で退治しに来られたら一溜りもないのがその理由といったところか。
 そんな彼らは「逃げちゃう?!」と仲間同士で相談をし合っている。
「アー、こんな所に討伐対象が居たッスねー。げーへっへっへっへス」
「ぶはははっ、元気のいい子供達だぜ!」
 しかし途中からジャックオー達全員が大声で話していたせいか、相談の決着が付く前にイレギュラーズにバレていた。『簒奪者』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285) と『赤鬼系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が、”たった今気づいた”という素振りで大げさに塀を乗り上げてくる。特にゴリョウはノリが良いのか、子供達に向けてドスを利かせた声色だ。赤鬼の仮装をしているせいか、それがイヤに映えて見える。ヴェノムも、わざとらしく触腕を揺らめかしている。
「やや、出たな正義のイレギュラーズ! オレ達バッドボーイズを止めようったって、そうは行かねーぞー!」
「そうだぞ、カボチャにしちゃうぞー!」「お、女にテをだすのはオレをたおしてからだー!」「黄金の鉄の塊で出来た拳が火を吹く!」
 洸汰のノリにつられて、勇猛果敢な振る舞いをする男の子のジャックオー達。
「威勢の良い坊主達だ。そのカボチャ頭を、煮て食っちまうぞ!」
 両手を振り上げて、ジャックオーらを驚かせるゴリョウ。少年少女から軽い悲鳴が上がる。
 そんな芝居を続けていると、公園の高所から「そうはさせないわ!」と声が響いた。
 皆が振り返る。そこにはカボチャを被った新たな悪戯妖精……の仮装をした『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)。
「フッフッフッ、イタズラ妖精はローレットにもいるんだよ。これで戦力の差は互角ね」
「ろーれっとのいたずら妖精!」「これで勝つる!」
 予想外の参入者に、ジャックオー達は歓迎ムード。女の子達の方は察しがいいのか、何して遊んでくれるんだろうと期待の目をイレギュラーズに向けていた。
 ゴリョウはあくどい笑みを浮かべ、武器を取り出した。男の子達は身構えるが、どうやら取り出されたのはオモチャの水鉄砲の類である。中身もただのペンキの様だ。
「ぺんきー」「屋根塗り替え」「それともイタズラ?」
「そうだ、これでナワバリバ……もといペンキの塗り合いで勝ち負けを決める」
 そう持ちかけられて、ジャックオーらはきょとんとする。だが悪戯じみた遊びが出来ると理解するや、彼らは二つ返事でそれを受け入れたのであった。

●それぞれの楽しみ方
 それからチームの内訳やルールなどを互いに取り決める。水鉄砲でも何でも良いので、相手チーム全員にペンキを掛けたチームの勝ち。
 ジャックオーのチームにはイレギュラーズから洸汰とニーニアの二人が共闘する形となった。それ以外のイレギュラーズはジャックオーらの相手となる。
 仲間達と遮蔽物に隠れながら、少し考えた風にしているワルド=ワルド(p3p006338)。
「イタズラが趣味とは気が合いそうですね。折角ですし一人くらい持ち帰れないでしょうか」
 不穏な言葉に周囲の視線を集まった。
「……なんて思ってないですよ。一緒に道行く人にイタズラを仕掛けたら面白そうだなぁなんて微塵も考えてないです」
 あくまで冗談だという風に弁明した、ワルドが言う事は何処まで本気なのだろうか。
 そんな追求を避ける様に、彼が一番手として遮蔽物から顔を出す。
「ジャックオーさん達、かかってきなさい! この日の為に丹精を込め100年かけて改造した私の愛銃が火を……もといペンキを噴きますよ!」
「きゃあ!」
 ワルドはジャックオーのすぐ傍を掠める様にペンキを噴射してみせた。しかしあくまで遊びという事もあって、銃の扱いに慣れてる彼でもすぐに当てる事はない。
「いいぞもっとやってや、ぶわぁーっ!!?」
「アー、ット、ツイ手ガスベッテシマッター。申シ訳アリマセン」
 ただし、味方にはわざと当てる気満々。青ペンキ使ったせいで顔面が青鬼と化すゴリョウであった。

「とりっくおあ……とりっくっす!」
 遮蔽物を活用して戦うワルドとは別に、戦場へ躍り出てジャックオーらのペンキを次々に躱していくものが一人、『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)だ。
「さぁ勇者の武器を手に色塗れしにかかってくるがいいっす!」
 白いシーツで全身を覆って、典型的なゴーストの仮装をしている彼女であるが、そのせいか深夜でも存外、目立つ。ゆえにジャックオーらは狙いをつけているのだが、レッドの逃げ足が早いせいか当て辛い。
 ペンキが放たれたところに狙いを付けて、応射していくレッド。一人、二人とそれで撃ち抜かれていく。
「のぞみがたたれたー!」「想像を絶する悲しみがジャックオーを襲った!」
「ふははは! ボクはこの白色が全て染まらない限り負けないっす!」
 だが、三人目に狙いを定めて撃ち放った辺りですかさず洸汰が割って入った。
「バケツを盾に皆を守ってみせるぞ!」 
「お兄ちゃんかっこいいー!」
 庇われたジャックオーの女の子の黄色い声。洸汰は返事をしようと気が緩んだ隙に、受け止めた飛沫が目に入る、
「はは、なんたってバッドボー……って、目に、目にィィィィィ!?」
「やっぱりかっこわるいー!」
「隙あり、お命頂戴っす!」
 洸汰が怯んだのを見てすぐにペンキを浴びせる。大量の浴びせられて、彼は間延びした断末魔を上げた。
「ふっふっふ、追い詰めたッス……ボク達のナワバリに入ったのが運の尽き」
 残されたジャックオーの女の子を見て、不敵に笑うレッド。イヤイヤと首を振るジャックオーに構わず腹に銃口を突き付け、トドメを刺すべくトリガーを引いた。
 ……しかし何たる事か。空打ちである。立て続けに戦っていたせいかペンキの残弾が尽きていた。
「あ」
「お姉ちゃん弾切れだ。みんなかかれー!」
 それに勘付かれ、一斉にペンキを塗りたくられるレッド。あえなく、降参する形で懐に持っていた飴を彼らに差し出すのであった。

「こういう遊びは昔を思い出しますなぁ」
 『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)は、そんな風に懐かしんでいた。……シャイネン・ナハトの恩恵のせいで、謎の美少女化しているせいか事情を知らない人にとって奇妙な言葉だが。
 ともかく今はひとまず子供達を楽しませてやる方が先決だ。そう思って水鉄砲を片手に、のっそりと立ち上がろうとした。
「やーい、コスプレ騎士ー!」
 なんか挑発じみた言葉がジャックオー達から飛んできた。刀根を誘い出そうという魂胆であろう。
「はははは。ナイスジョーク」
 そうはわかっていても。挑発を行ったジャックオーに向けて全力疾走を始める刀根。
「よし、捕まえ……」
 ジャックオーの肩へ掴みかかる直前、突如として浮遊感が彼を襲った。そうして、そのまま地中へと前のめりに落下する。
 体の前面にべちょりと嫌な感覚が伝わったかと思うと、ペンキの溜まり場に落ちていたのであった。
「たいちょーどの。落とし穴に捕獲しました!」
「うん、よしよし。ただペンキかけあうだけじゃ刺激が足りないからね!」
 落とし穴の外からそんな事を言い合うジャックオーとニーニアの声。彼らが仕掛けていたトラップの様である。
 子供達にしてやられたわけである。刀根は苦笑を浮かべようとした。しかし鋭い刺激が、目鼻を襲う。
「痛……辛ッ!? ニーニア殿これ辛子じゃないです!!?」
「あ、バレちゃった? よーし、僕達でもっともっと楽しくしちゃおう!」
 辛子ペンキ塗れになりながら落とし穴の中で悶える刀根を横目に、次の獲物を狙いに行くニーニアであった。

「いやぁ、ジャックオーさん達はお強いですねぇ」
「まったく、何度も撃ち抜かれるとは……」
 誤射を繰り返している隙に、ニーニアとジャックオーの共闘にやられてしまったゴリョウとワルド。こうして、イレギュラーズチームは悪戯好きな精霊の前に壊滅してしまったわけだ。
「ばっとぼーいずは、かならずかつー!」「ばっとがーるずもいるー!」
 口々に喜び合うジャックオー達。ニーニアも喜ぼうとしたが、ふと何かに気づいて周囲を見回した。
「……あれ、一人足りない」
 そう口にした途端、彼女の顔面が射抜かれた。真紅の液体(ペンキ)が彼女の頭部を赤く染める。死角の射撃だ!
「たいちょーがやられたー!!」「何奴だー!? 卑怯者ー!!」
 そう言われ、物陰から這い出る触手。もといヴェノム・カーネイジ。
「卑怯? これは正々堂々というッス。僕は勝負事において子供だろうと容赦しないす。大人げなく徹頭徹尾勝ちに行くすよ!」
 推定年齢14歳、自称『大人』は有り余るペンキを武器におとなげない追撃を仕掛けていった。弾丸が枯渇していたジャックオーチームは一人、また一人とやられていく。
「なんて事だ……」
 そうして残ったのは男の子のジャックオー一人。このままでは勝てないとみた彼は、その場から一時撤退とばかりに茂みに隠れる事にした。しかしながらヴェノムのいう正々堂々というのは聴覚や嗅覚のギフトやスキルを活用するわけだ。特に対策も施してない状態では隠れてる意味が皆無に等しかった。
「その程度じゃ何処に居るのか丸わかりすよ」
「ちくしょーウォールハッカーめー!」
「なんとでも言うと良いッス」
 ヤケになったジャックオーは、そんな風に子供じみた挑発を次々にヴェノムに投げて来た。子供の語彙による挑発など、彼女も笑って流すに容易い。
 しかしジャックオーが次の言葉を発した途端、事態が急変した。

「安産型ー! 尻でか女ー!」

 ……ヴェノムは、余裕の笑みから表情が一変。何事か、そのまま引っ叩かんばかりに彼の隠れる元へ突撃をしていったのであった。
「え? え、ギャアァァァァー!!」

●ろしあん
「……騎士様だけでなく、その嬢ちゃんも罠にハメる為に挑発してたら、逃げ送れて二人とも巻き込まれたと」
 ローレットギルドに帰ってきた辛子塗れのヴェノムとジャックオーを見て、やれやれとタオルを用意する『聖女の小鳥』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941) 。
 だって突進してきたんだと喚くジャックオー。ベルナルドとゴリョウは、彼を鎮める為か手製らしきお菓子を持って来た。
 それは子供受けのよさそうなファンシーな見た目のマジパンやアイジングクッキーと、大量のシュークリーム?
「ぶはははっ、トリック&トリート! ロシアンシュークリームのお時間だぜ!」
「俺は見栄え担当だな」
「怖い顔のおじさんたち、可愛いお菓子作れるんだねー!」
「……仕事だから仕方無いだろ」
「ぶはっ、俺も怖い顔か!」
 快活に笑うゴリョウ。そうして、各自にシュークリームを配り始めた。

(……明らかに多くマトモじゃないもん混じってるッスよね)
 嫌な予感が的中した様な顔をするヴェノム。目の前のものを一口食べてみると中身については、多重に皮とクリームで包まれたマトリョーシカ構造であった。
「誰が作ったんスかこんな手の混んだもん……」
「あぁ、それ私で。ごほっ……」
「あぁーーーっす! あああぁぁっす!!」
 強烈なものを引き当てたのか、口にした途端蒸せるワルドと絶叫しているレッド。清涼感のある濃厚な匂いが場に漂う。
「ぶははっ! そういうもんがあるのもロシアンのだいご……んがぶぐッ!? こ、こいつはやべぇ……誰だ高菜とか入れたヤツは!?」
「あぁ、俺だ」
 ゴリョウが外れを引き当てたのを見て、軽く手を上げる。ベルナルド。彼の食べているものも見れば、クリームとピーマンがすり替えられたものを食んでいる。しかも「まぁこんなもんだろ」と大して動揺していない……。

「口直しの水ににがり混ぜたのに残念だねー」
「ざんねんー。あ、ゆずだー」
「へへ、そんな事もあるさ! ……お、チョコカスター」
 ジャックオーの女の子達とそんな事を話し合うニーニアと洸汰。ものの見事にマトモなものを引き当てたらしい。
 残るはジャックオーと刀根……。
「何故でしょうね。また両親の走馬灯が……」
「ちょっと洒レにならんでしょ……」
 口々に不安を言い合った。何故かといえば、既に辛子のクリームがはみ出ているのが見える。
 刀根は、何処か諦めた様な顔をしてフッと笑んだ。
「子供達……私に何かがあったら、故郷の両親にお伝え下さい……」
「さすがに騎士は格が違った」
 男の子は、刀根に敬礼を向ける。
 そうして、ローレットギルドに美少女と少年らの断末魔が響いたのであった。

●おつかれさま。ありがとう。さようなら。
 ……子供の体力には驚かされるものである。この後も夜通し遊びに付き合わされ、殆どのイレギュラーズが寝入ってしまった。
 ベルナルドもうつらうつら、と船を漕ぎ始めている。
「怖い顔のおじさーん!」
 油断している所に驚かす様に抱きついてくるジャックオーの女の子。
「な、おど、おどかすな! 俺ァオバケが苦手なんっ……」
 たじろぐベルナルドに、彼女は真面目な顔で話す。
「あのねあのね、わたしたちそろそろお家に帰らなきゃ」
 満足げにそう言う女の子。どうやら、彼らの欲望は満たせたらしい。
「大事な服をカボチャにされなくて何よりだ」
 されたほうがよかった? と、首を傾げる女の子。ベルナルドは無言で眉間に皺を寄せて応えた。
「んっとね、んっとね。イレギュラーズさん達、遊んでくれてありがとね!」
「ったく、ガキはさっさと帰んな。他の奴らも」
 そう言いながら部屋を見回した。他のジャックオー達は見当たらない。
 何処に行ったのかと女の子に聞いてみようとするが、既に彼女の姿も無かった。
 代わりに、シャイネン・ナハトで子供達に配る菓子入れのポットが六つ。
 中身はまるで何かのお礼とばかりに、大量のお菓子が敷き詰められていた。
「……手を焼いたが、たまにはガキのお守りも悪くなかったな」
 彼は菓子の一つ摘み、味わって食べる事にした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 稗田GMです。遅れてごめんなさい。お疲れ様でした。
 被害に遭った人達が彼らの討伐を強く要望して来なかったのは、そういう事なのかもしれません。

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