シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>特異運命座標無双:Irregulars
オープニング
●進もう、この道の先へ
【ざんげ】は言った。
――遂に、その時が来るでごぜーます。
その時何を思ったかは、当然ながら十人十色だ。
大切な人を思い、世界を思い、未来を思う。
だがそれが如何なるとしても、根本には違わぬ覚悟がある。
伝説の神託の時を前にしてなお。
イレギュラーズとして、可能性の力を持つ者として。
誰一人だって、決められた運命なんかに従って、滅んでやるつもりなどないのだから。
~~~
鉄帝『コロッセウム=ドムス・アウレア』内『ヒライズミ』の層、城跡にて。
つい先日寡兵ながら気迫と戦略をもって合戦を制してみせたこの地にて『天下無双の大将』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は黙して期を待っていた。
「なぁイーリン。本当にこんな所で待ってていいのかよ?」
『天下無双の紅矛』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が言うのも一理ある。
鉄帝にある『ワーム・ホール』は、この階層よりももっと奥深く『玉座の間』に開いていた。
しかもそこではBad End 8の一角【全剣王ドゥマ】自らが強力な終焉獣を率いワーム・ホールの防衛に出向いているというではないか。
「確かにわたしも援護に行きたい気持ちはあるわ。でも何か考えがあるんでしょ?」
悩める矛を収めるは盾。
『天下無双の白盾』レイリー=シュタイン(p3p007270)はエレンシアの肩に手を添えるとイーリンを見やれば、大将の目が開いた。
「要はこの前の戦いと同じことが問題になってるわけ。目の前には多くの敵がいる。けれどワーム・ホールが開いている限り敵の本拠地たる『影の領域』から援軍が絶えずやってくる可能性は高い」
「正面からただやりあってはじり貧、ということですね」
『天下無双の道女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)の言葉にイーリンは小さく頷く。
「前回は入口を塞げば良かったけど、今回はワーム・ホールを確実に確保する必要があるわ。でも正面入口には門番がいて、なおかつ増援が来る。となれば?」
「照明の当たらぬ道――つまりは裏口。そこを通って影の領域へ至り、援軍となるであろう敵が表舞台に出てくる前に叩ければ、正面の部隊に楽をさせてやれるな」
『天下無双の軍師』カイト(p3p007128)が繋いだ。
「理屈は分かったが。ここが裏口ってやつになるとして、あまりそのような気配は感じられないが」
『天下無双の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が周囲を見渡すも、当然裏口になるような魔法陣は存在しない。
「今はね。そう思うでしょ、瑠璃?」
「ええ。あれは自分の安全や有利を確保しなければ戦えない臆病な根腐れ花。ですが積もり積もった怨みを忘れない雑草魂は染みついているようですから。こそこそこちらを伺っていることでしょう」
『天下無双のくノ一』志屍 瑠璃(p3p000416)の煽るような口ぶりに反応したのか、突如城壁の一部に魔法陣が出現した。
「Nyahahahaha!!! 我らが血肉を望み、敗者の汚名を雪がんとするか! 好い、実に滑稽だ。深淵を観測しているつもりで深淵に観測されていることすら解せぬまま死の舞踊に招くとはな。なれば貴様のその子供じみた心を抉りだし腸詰めにして喰らってくれよう!」
『天下無双の混沌』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)は勇んでその穴をくぐろうとするが、イーリンが止めた。
「待ってロジャーズ。今貴方がいってくれた通り、ここに裏口が開いたということは相手は準備万端用意してこちらを待ち構えているということよ」
イーリンは仲間達を見渡す。
感じるのだ、様々な終焉が近づいていることを。
当然ここに集った者達に、恐れなんてものはないけれど。
それでも、各々の意志を見定める。
「……だからこそ、忘れないで。どんな時だって、『騎兵隊』が掲げるのはいつも通り。全員生存、そして勝利よ!」
イーリンが旗を掲げた。
それはどこまでも強く未来を求める証。
それはどこまでも高く闘志を掻き立てる希望。
一行は気合いの声で応える。
「さぁ司書殿。麗しきレディの指揮下で戦えるとは野郎の誉れ。そして信頼できる大将の下で戦えるとは兵の誉れだ。とっく覚悟はできているが、おれ達に勝利と幸運をもたらす更なる誉れを与えてくれないか?」
ギターの音色を響かせる『天下無双の野郎』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)からのリクエスト。
「……ええ!」
『神がそれを望まれる』!
お決まりとなったかけ声を終え、一行は自身が信頼する相棒と共に続々と魔法陣へ飛び込んでいく。
その最後尾でイーリンは彼女の隣に並ぶ『天下無双の王子』トール=アシェンプテル(p3p010816)へ小声で囁いた。
「――の事、お願いね」
「えっ?」
それは自身の背中を託すという意味だったのか、それとも。
先んじて動き出し僅かに空いたイーリンとの間に、金糸の髪が揺らめいたような。
そんな違和感を彼は感じていた。
●終焉の舞台
ざんげの加護を纏った一行は魔法陣に突入。
かつて【破鎧終焉獣:狂姫】がこれを使ってワーム・ホールから終焉の部隊を引きこんでいたように。
今度はそれを利用する形で、目論み通り玉座の間を経由することなくワーム・ホール内部の空間に侵入できた。
「……どうやら、この入口は使い切りのようですね」
最後尾で後ろを振り返るトール。
自分達の進入口は既に魔力で出来た異次元空間に飲まれてしまってた。
つまり、仲間達が鉄帝のワーム・ホールを抑えてくれなければ、自分達は退路を完全に断たれたまま敵地に取り残される事となるのだ。
「元より承知よ。負けるつもりなんて無いでしょ?」
「ええ、勿論です」
トールの言葉に笑みを見せたイーリン。
そのままトンネルを抜ければ、そこは白い雪ではなく滅びの気配に満ちた影の国であった。
「随分薄暗いな。だがこの先に狂姫がいるってんなら、ぼっこぼこにするだけだ!」
相棒『フリームファクシ』を駆り先陣をきるエレンシア。
その行く手を阻むように、揺蕩う滅びのアークは結晶化し終焉獣となって襲いかかるが、彼女と続く仲間達がこの程度で止まるわけがない。
「待ってエレンシア、あれ!」
猛進する中でレイリーが見つけたもの。
もう見飽きたと、もう見たくないとも思われるような。
かつて絶望をまき散らした巨大終焉獣がそこにいた。
『来たねぇ、虫けら共』
終焉獣の横に浮遊するのは狂姫。
前回の戦いで傷つけられた鎧は、力を失ったのか色褪せている。
「その有り様でよく言えたものね」
イーリンの挑発に自称姫は一瞬顔を歪めるが、咳払いをすると扇子を広げ元の調子を取り戻してみせる。
『虫も群れれば存外厄介だったということさね。人間だって蜂の一刺しで簡単に死ぬだろう? だからわっちは……ちゃんと殺虫することにしたんだよ!!』
振るわれる扇。
その流れに沿うようにして、多数放たれた魔力線を一行は相棒の機動力を借りて回避する。
「さぁやるわよ! 各々回避を意識しつつ巨大終焉獣に接近、全力で落とす! あれに動かれたら面倒だわ!」
『そうかい。なら嫌がらせをしてやろうじゃないさ!』
狂姫は攻撃を続けながら同時に呪糸を射出。
「くっ、『ラムレイ』!」
イーリンはそれを回避していく。
だが。
(つっ……!?)
嗚呼、心も身体も魔力に変わる。
手綱を握る力が緩んでしまったイーリンは、馬からずり落ち。
「イーリンさん!」
トールの伸ばす手より早く、騎兵の象徴はその旗共々糸に絡め取られていく。
『おーっほっほっほ! 遂に、遂にやった! こやつの魔力で虫共を殺してくれるわ!』
狂姫は勝ち誇ったように高笑いをすると、そのまま巨大終焉獣の中へ溶け込むようにして消えていく。
「ちっ! ……まさか大将を取られちまうとは」
「……わたあめ。だからグルグルアイランドで渦巻く魔力を放出しておけと言ったのだ」
マカライトやロジャーズだけでなく、一行全員に大小はあれど動揺が走る。
だが、カイトは冷静に次の手を考えていた。
「想定外だが、取られたなら取り返すだけだ。皆何か案はないか?」
「それでしたら。先日の戦いで仲間が左腕部分に傷をつけています。恐らくですが、そこからなら内部に侵入できるかと」
欠損を残す終焉獣を見ながら、瑠璃は思い起こしていた。
あの時はそこに小型終焉獣を垂れ流す穴があったが、仲間の炎に焼かれ塞がれた。
今も左腕を欠損したままならば、同様に穴が塞がれているままの状態である可能性も高いのだ。
「突破口があるわけか。なら話は簡単だ。おれ達は騎兵隊にとって不可欠なレディを迎えに行くとしよう」
「そうですね。かつて無双の風となった我ら、此度は一騎当千の力をもって救いの翼となりましょう」
ヤツェクやアンジェリカの思いはここにいる誰しもが持つものと同じ。
一行は救出部隊と巨大終焉獣対処部隊に分かれ、再び行動を開始する。
●終焉の呪い
(こ、ここは……)
薄らいだ意識の中、謎の空間に横たわったイーリンは状況を整理する。
(ああ、確か……)
己の内なる魔力が燃えた。それだけは分かった。
単純に自身の限界が近づいていたのか。
狂姫の糸が持つ魔力に、先日の戦いで不本意ながら吸収してしまった破鎧の魔力が共鳴してしまったのか。
理由はどうあれ、何とか『イーリン・ジョーンズ』を保っていた魔力のバランスを乱されてしまい、その隙をつかれたのだ。
『お前はわっちに言ったねぇ? 一人ぼっちだから勝てないと。ならどうだい、同じ一人ぼっちならやっぱりお前は虫けらなのさ。
助けを待ったって無駄だよ。この空間は四感を司る終焉獣が鍵となって封じられてるからねぇ』
言い返してやりたいが、身体が言うことを聞かない。
今の乱れた魔力で無理に戦おうとすれば、人が崩れてしまうだろう。
(まも、らなきゃ……)
それでも微かな理性は、心を燃やすことを厭わない。
『とはいえ、虫にしては中々使えそうな魔力を持っているじゃないさ。わっちの終鎧の糧にしてやろうね』
狂姫は巨大終焉獣から供給される魔力とイーリンから放出される魔力をまとめて吸収。
破鎧の傷口に集約させれば、鎧は闇色の光を放ち始めた。
『あ、あぁ……これだよ、もっと強い力さえあれば……わっちは!』
負けない。
それだけが彼女の頭を支配し行動の原動力となっていた。
主への思いも何も消され、ただ復讐心を利用された捨て駒は、その事にすら気づけない。
『サァ、スベテクラッテヤル!』
鎧は女を蝕み、獣へと変えた。
獣はご馳走を前に手を伸ばす。
「――ある賢者はこう言ったわ。あらゆる愚鈍を汲みつくしてこそ、底にある英知に到達 できると」
その手を一人の女の剣が払った。
『ナニモノダ!?』
「【灰の騎士】。そう名乗ってきたけれど。……やっぱりどこの世界でも同じね」
横たわる『司書』を見て、灰の騎士なる仮面を付けた女はそう零す。
偽名を用いようが、どう足掻こうが、前に進む限り呪いは降りかかるのだ。
『イッタイドコカラハイリコンダ、コノネズミメ!』
「鼠? そう、天才を前にして鼠とはね」
女は剣を構えつつ、イーリンへ手をかざすと魔力を注いでいく。
「残念ながら私はもう燃え尽きる灰。ここへ来るのにもそれなりに苦労したわけだし、悪いけど多少手は貸してもらうわよ」
その魔力はイーリンの腹部、かつて刻まれたがほとんど薄れていた『蝕む魔を払い、喰われた空へ苦難の分だけ活を授けし護りの因果』に集約していく。
(あ、温かい……)
混濁する意識。
ぼやけた視界にはかつて自分が見送ってきた『仲間』達の姿があるように思えた。
「本当なら死ぬのだけは、死んでもゴメン……なのだけれど。まだ私は貴方の行く末も、真実に対する答えも見届けられていないから」
――あり得たかもしれないもう1人の私。
見せてみなさい、貴方の紡いできた希望が、真実であるかを。
私の残り火が絶える前に。
※優先参加のPC様はOPでは配布済称号にて表記しております。
リプレイ時には通常表記に致しますので、ご自身らしい称号を選んでご参加頂ければと思います。
但しプレイング提出時にスキルとしての称号装備だけは忘れずお願い致します。
- <終焉のクロニクル>特異運命座標無双:Irregulars完了
- GM名pnkjynp
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年04月06日 22時07分
- 参加人数13/13人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 13 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC17人)参加者一覧(13人)
リプレイ
●■■の記憶
――あはは! そろそろこれは、お説教受けちゃうかな。
彼女は小さな事にも目を輝かせる少女であった。
三度目の誕生日を迎える頃には誰もが驚く程聡明で。
試したいことはなんでも満足するまでやってみる。
『知っていた』が増えていく毎日だった。
――さぁ、今日はかの迷宮……竜の墓標を攻略に行きましょう!
少しの時を経た彼女は探検家でありローグであった。
未来への憧憬を宿す瞳は星のような煌めきを湛え、気の合う仲間と旅に出る。
他者と過ごす時間は友情や好意という感情を芽生えさせていった。
――生まれ、育ち、体格、種族。そんなもの、ただの個性に過ぎないわ。大切なのは、信頼し合う心でしょ?
彼女は少女(おとな)となった。
仲間に恵まれ。
金ではなく神と己の正義に信を置き。
夢を捨てず。
武も知も研鑽し。
世界各地で魔を払い悩める者へ手を差し伸べてきた彼女は、救世主として崇められた。
富も名声も集まってくるけれど。
心の内を素直にさらけ出すことは減り。
いつの日から肉体の成長が年齢に比例しなくなった。
誰もが羨む立場でも。
欠けていく自分自身に、正直疲れ果てていた。
――皆、頑張って! 私達の旅はこんな所で終わるものじゃないでしょう!
彼女は天才へ至ろうとしていた。
けれど一つだけ、弱点があった。
預けた背中を信じきること。
そんな彼女だから……長き時をかけ研ぎ澄まされた陰謀が突き刺さる。
裏切りと否定。
英雄ともて囃した国家は反逆の冠をのせて。
■■■■。
国民の抱く認識は歪められ、彼女の名は忌むべき呪いとなった。
それでも。
助けてくれる友はいた。
だから為し得る最善を尽くした。
なのに。
一人、また一人と欠けて。
彼女の掲げた理想は、泡沫の夢に帰す――つまりは失敗したのだ。
「■■■■」
「後にして! 今何か策を考えるから!」
「もう、いいよ」
誰も口にしなかった。
彼女の気持ちを裏切ると知っていたから。
けれど未来は絶望的だ。
ならせめて彼女だけでも。
そんな仲間の想いが透けたから。
覚悟を、決めた。
「……大丈夫よ。世界の全てをこの手にかけてでも、貴方達だけは……!」
不可能は、止まる理由にはならない。
願いを叶えるために、瞳を、心臓を燃やして二刀を振るい。
終ぞ正義無くば汚さなかったその手を。
人の血で染めた。
●絶望の檻をこじ開けん
「オオオォォォ!!!」
『流星の少女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)を救出すべく迫るイレギュラーズを感知した巨大終焉獣が、雄叫びを上げた。
同時に拡散する滅びの魔力――絶望の檻が一帯を包み込み、聴覚以外のあらゆる感覚を奪っていく。
「ふっ、二度と聴くことは叶わぬと思っていた……懐かしい歌じゃ」
だが【クレマァダ=コン=モスカ】は、一般的な感覚の概念を超えて絶望の中心に海神の巫女の絶唱を感じている。
『我』が戦姫を守らんと今なお歌うのならば、我もまた。
「我が騎士よ」
クレマァダの呼びかけに【フェルディン・T・レオンハート】が傅く。
「絶海の騎士よ、今こそ命を下す。我と共に眼前の檻を悉く打ち壊し――護ってみせようぞ。あの背中を」
片割れの歌が祭司の希望ならば、祭司の願いを叶えたいと思う心が騎士の希望だ。
「心得ました。必ずや護り通して見せましょう!」
蒼き宝剣を抜き放つ。
その煌めきは遣い手を絶望の先へ導く祈りが宿るコン=モスカの波濤。
駆け出す二人に仲間達も続く様は、可能性の大波か。
そんな仲間達の更なる希望にならんと意気込む【フォルトゥナリア・ヴェルーリア】。
「私達は絶望に負けたりなんかしない!」
願いにも等しい誓いは可能性の炎を燃やし、その姿を『黒竜魔人』へと変化させた。
これはかつての世界で抱いた弱い自分への恐怖と力への渇望が具現化したもの。
だが今ならば。
「私は、絶望と恐怖を払い希望と勇気をもたらす者! 希望の音をどこまでだって届かせてみせる!」
一対のタンバリンを構えると、思いきり打ち鳴らして。
どこからかバイオリンやオカリナ、ヴィオラの音を伴って戦場へ広がっていく。
「おっ、視界やらなんやらが戻ってきた! ヒュー、これが希望のバフってわけだね!」
【岩倉・鈴音】がどこかキメ顔でそう言った。
「オッケー、ここまでの流れは確認出来たよ。遅れてすまない。ポジションは……ディスペアクラッシャーだああぁぁ!!」
絶望の流れに裂け目を入れるべく、鈴音はどこからか褐色チアガール集団を召喚。
ヴェルーリアの楽曲に合いの手を入れつつ、更に希望の輪を大きくする。
そんな音色は『天下無双の白盾』レイリー=シュタイン(p3p007270)にも届いていた。
「イーリン、聞こえてるかしら? あの時みたいに戦場は希望で一杯よ。今度はわたしから助けに行くんだから、貴方もそれまでちゃんと待っていてよね!」
絶望の中でこそ、希望が輝く事を知る彼女。
己が信じるハッピーエンドを掴むべく決意を新たに。
「確かに大きいが……物足りんな。司書のお嬢さんを入れる鳥籠には!」
『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)もまた幸せな物語を思い描く。
「四感や象徴を奪われようと、おれ達には思いを通わせる言葉が、心震わせる歌が、未来へ運んでくれる相棒達の助けがある!」
ツインネックギター『アーデント・マドンナ』をかき鳴らし、陽気な音楽に詩を紡ぐ唇(まじない)を添えて。
「此度吟じるは凜々しいレディの救出劇だ。さぁ運命に選ばれしダチ共よ……壊しに行こうか! 終焉の檻を!」
「いいなそれ! イーリンが囚われの姫で、俺達が王子様ってわけだ。珍しい展開じゃねぇか!」
ニヤリ笑って『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)が矢をつがえる。
狙うは終焉獣の左腕部。
と言っても『天下無双のくノ一』志屍 瑠璃(p3p000416)の予想通り、左腕はなく。
人間で言う肩に当たる部分には瘡蓋のように色が異なる箇所が見えている。
ミヅハはそこへ一矢撃ち込むと、すかさず絶対必中の魔力を込めて連続攻撃。
穿つ槍となった矢が、巨大な檻への入口を開く。
「流石はミヅハ、狩人の腕ってやつだな! あたしも負けてられねぇぜ!」
『騎兵の先立つ赤き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が『滅刀アポカリプス』を構えれば、愛馬が嘶いた。
「行こうぜ皆! 飛べないヤツはあたしと『フリームフォクシ』が運んでやる!」
とはいえ全長30mにも及ぶ巨大終焉獣だ。
救出部隊が侵入するにもそれなりの時間を要するだろう。
「オオオ!!!」
終焉獣が救助部隊を払うべく右腕を振り上げた。
だがそこには既に【エマ】がいる。
「イーリンさん、そして皆さんのために……私もできるだけのことをします!」
得意の近未来予測に、騎兵の仲間達の姿はまだ見えない。
なればその未来が訪れるまで、絶望を盗み続けんと。
硬質化する腕に曲剣を突き立てては、振り落とされる前に相棒たる亜竜『ルベウス』へ飛び移る。
「ちっ、あのアホンダラは」
【バクルド・アルティア・ホルスウィング】がぼやいた。
イーリンの不調など気づいていた。
それでも手を差し伸べるのは彼女の勝手だ。
だというのに。
情を移すなと言っておきながら、我ながら焼きが回ったものだ。
「まぁいい、微力だろうがなんだろうが足止めぐらいはしてやらァな」
正確無比な一射がエマに気を取られ疎かとなった終焉獣の右足に小さな傷をつけ。
続く【夜式・十七号】が蒼き『海燕』の一刀をもって広げる。
「司書に以前世話になったのは……砂漠の星界獣の一件以来だったか。随分経ったな」
十七号は剣を振るしか能がないと自認している。
「いつかの礼だ。私もまた過酷な運命を打ち破る一助となろう」
故に彼女は自身の最大効率――未完の殺人剣をこれでもかと叩き付ける。
「え? 助けてやったら御礼に飯をたらふく食わせてくれるのか?!」
左足を攻撃していた【ニャンタル・ポルタ】が思わず耳をそばだてた。
いや、誰もそんなことは言っていないのだが。
「ふむふむ、良いことを聞いたぞい! 騎兵隊のことは気になっておったし、これを期に親睦を深めさせてもらうのじゃ!」
呼ばれて無くとも飛び出しては颯爽と飯を喰らい尽くすのがニャンタルだ。
さっさと敵も喰らってしまおうじゃないか。
「オオオオオ!!!」
終焉獣の咆哮、足裏に空いた穴から猛毒が噴出した。
ダメージそのものは不足しているにしても、対処させられたなら妨害としては充分だ。
「み、皆さん! 治療しますからこちらへ……!」
【ノルン・アレスト】が精一杯の声で呼びかける。
幼くして両親を失い、弱気な性格に育ったアレスト。
目の前の惨状に怖くないなんて言えやしない。
でも、だって。
(ボクは、こんなボクを迎え入れてくれたあの薄暗い書庫が好きだから……)
必ず助け出す。
その想いのどこが弱き心と言えようか。
「騎兵隊を、イーリンを想うなら……ここで踏ん張れなきゃ嘘ってもんだろ!」
想いの強さなら【赤羽 旭日】も負けるつもりはない。
燃やした可能性を滾らせ、赤い翼で流星が如く飛び上がると、終焉獣の顔面に
銃撃を撃ち込んでいく。
これだけ巨大な的だ。
外しはしないが人間でいうところの目を保護するゴーグル状の盾は砕けない。
それでも、旭日はその想い(こうげき)をとめはしない。
「失恋は……気持ちよくフラれて終わるべきなんだよ!
こんな形で喪失(しつれん)するくらいなら……胸を張り、その瞳に改めて伝えたい!
イーリン!
俺はあんたが好きなんだって!!」
「だってさ、ボス」
【フロイント ハイン】が白き杖を掲げた。
「何億人もの人類が、何千年も向き合って、未だ定義付けできない人が人を想う心。それを秘宝種の僕が口にしても信じられないだろうけどさ。僕が、皆が『愛』してるよ、ボス!」
ハインが地上から放つ浄化の光には、イーリンと過ごした日々の情報が含まれている。
それが旭日の純真な想いを後押しすれば、ゴーグルに僅か亀裂が走った。
「グウウウォ!」
終焉獣の胸が二つに割れた。
地獄の釜が開いたとするのが正しいか。
中には巨大な鉄鍋とその中で蠢く高純度の滅びのアーク。
それは巨竜の首を模し――名づけるなら滅竜か――目障りな旭日に迫る。
「しまっ――?」
「マジカル☆アハトアハト・インフィニティ――発射(フォイア)!!」
竜の牙を折ったのは【オニキス・ハート】の一撃であった。
超出力の魔力砲は爆音と共に大地を揺らし、オニキスの魔力を勢いよく喰らっていく。
初手必殺技が消耗面から見て危険なのは百も承知だ。
それでも彼女を助けるためなれば。
思い出のサンドイッチの味が火力に変わる。
「ほら、今のうちに下がるぞ」
飛行で近づいた【レイヴン・ミスト・ポルードイ】は消耗した旭日の腕を掴み地上へと誘導する。
(魔力を煮詰めた滅びの竜か。近づくだけでもこちらの命を削ってくるとはな)
『処刑人』としての命の灯火が消える瞬間に立ち会ってきた過去は、危険を直感させその身をパンドラの加護で包んだ。
(こんな状況だと言うのに、司書殿の元へ飛ぶこと叶わぬとは……)
口惜しく、恨めしい。
「だがな――」
横目で見やれば、救出部隊が丁度侵入を終えたところで。
「今やるべきは私達全員が願う未来を迎えるのみだ……!」
レイブンが空へ手を掲げれば、万物を砕く鉄の星が降り注ぐ。
●交錯するIrimo(もしも)
巨大終焉獣の体内に生成された異空間にて。
滅びの気配を纏った【狂姫】に【灰の騎士】が対峙する。
『チビスケメガ!』
体格差は圧倒的。
狂姫が左手で扇を振るえば激しい風圧が空間を駆け巡り、生じた魔力球が輝きを増していく。
灰の騎士は二刀の獲物を構えると、背に控える魔力体【遂行者】、【一般人B】、【シロイルカの海種】へ告げる。
「指示を出さないけれど勝手に利用させてもらうわ。だから貴方達も好きにやりなさい」
そう話した次の瞬間には、灰の騎士は刃に魔力を込め風を斬りながら飛び出していた。
彼女に若干遅れて、魔力球から光線が放たれる。
「……」
魔力体も各々に反応。
遂行者は倒れ込むイーリンを庇うようにして仁王立ち。
海種は遂行者の影、イーリンの隣で守護の祈りを込めた歌を奏で。
Bは灰の騎士に続き、光線の合間を飛行ですり抜け進む。
「魔力の無駄遣いね。当てる気あるのかしら?」
『ウルサイ!』
会話の合間にも、目まぐるしく攻撃と回避が交差している。
灰の騎士とBは飛び回りながらすれ違い様に斬りつけるが鎧の固さに効果は薄く。
四方八方から迫る魔力の帯が、二人の身体を掠め始めた。
手数の差もまた歴然。
回避の芽を摘ませぬため、守護の祈りを宿した遂行者が闘気をぶつけ狂姫の怒りを買う。
『オモチャノブンザイデ!』
右腕で振るうは巨大剣。
大きければ強い、強ければ良いと言わんばかりの粗雑な一品だが、実際膨大な魔力を纏わせ振り下ろせば充分な脅威だ。
遂行者はこれを受け止めるが海種の援護を加味しても、そう何度も受けられぬのは見て取れた。
(手間のかかる相手ね。とはいえ残り火を渡した私には、最初から時間などあってないようなもの)
灰の騎士が魔力を高めると、右腕の本が紫苑に発光する。
「見えているなら、学びなさい。これが貴方が到達し得た独力の到達点よ」
重なる剣閃は舞踏。ここが幻想なら既に敵は細切れだったろう。
リズムを遮る光線は結界で弾き、大剣は仮面に隠した魔眼で軌道を歪めた。
『ムダナコトヨ!』
しかし終焉の理に身を置く狂姫はそう簡単に揺るがない。
この鎧がある限り、己の傷よりも傷つけた者が壊れるのが早いのだ。
「……!」
海種の癒しを浴びながらBの翼は純白に、剣は蒼く澄み渡る。
本当かと。
こっちは千年の痛みを知っているのだと言わんばかりに。
そんな美しき灰人と死神の乱舞を、イーリンの瞳は見つめている。
(皆――)
無意識に伸ばす手が、戦旗を掴めば。
魔石は熱を高め、心臓が痛みだす。
(ごめんなさい、私――)
拒んでいる、身体が。
人間性諸共魔力化――願望器になってしまうことを。
(『死ぬ』かもしれない)
走馬灯が過ぎる。
殺しを選んだあの時、仲間達を絶望に残したまま『私』だけが召喚された。
転移を受け入れ忘れようとした時、暗殺者の裏舞台に立たされ逃れられない罪を思い知った。
だからこの世界の神に従おうと思ったのだ。
世界を守り、魔種を殺し。
元の世界へ帰ったなら、今度こそ仲間と死のうと。
だからそれまでは死なないと決めていた。
嗚呼、なのに。
「でもね、都合の良い終わりを求めたいのよ」
――保存された文化(おもいで)が、眩しい。
「そのためなら、こんな愚鈍……汲み上げてみせるから!」
守りたい。
想いに応える可能性が、人間性が、燃え。
少女を、戦場へ最適化した騎紫として再臨させる。
「自力で立つなんてね」
「覚悟なんてとっくに決まってるのよ。そっちこそ死ぬ気なの?」
「どうだか。別に私がアレを倒してしまっても構わないのでしょう?」
「……そうね」
イーリンの身体が黄金色に光り輝いた。海種の祈りだ。
彼女の隣に立つ今は亡き者達。しかしイーリンは目もくれない。
「英知を知らぬ貴方がついてこれるかしら?」
「この旗が紡いだ歴史が……私にはある! その言葉、そっくりお返しするわ!」
少女達は躍動する。
ただ、前だけを見つめて。
●天下無双の兵達
仲間達の手助けを受け無事に巨大終焉獣の体内へと侵入した一行。
各所に点在する強い滅びの気配に向かって、部隊を四つに分け進軍する。
最初に目的地へ辿りついたのは『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)の班であった。
「これは……狂姫の魔法陣のようですね。どこかに繋がるタイプではなく、この中に別個の異空間が形成されているみたいです」
「罠かもな。ともあれ我らが頭目の気配がどこにも感じられない以上、しらみ潰しに探すだけだろ」
『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が言えば、ヤツェクも頷く。
「あの強がりで死にたがりで強情この上ない司書さんを連れ戻そうとしているんだ。迷っていて迎えが遅れたとあれば、ぷいとそっぽを向かれてしまうだろうさ」
「決まりですね」
トールが輝剣『プリンセス・シンデレラ』を振り下ろせば、剣の軌跡が扉となって入口を開く。
飛び込んだ先に広がっていたのは巨大な砂場。
所々に石で作られた柱や壁が点在し、中央付近では味覚の終焉獣【ティストカスタム】が鉄鍋で滅びのアークを煮込み焉獣を生成する。
「あの人型を抑えないとキリが無さそうですね、僕が行きます!」
「サポートは任せてくれ。極光の王子と黒鎖の傭兵が渇いた砂漠に未来への虹を駆ける様、歌い上げようじゃないか」
「なら俺達は犬型の雑魚を狙おう。行くぞ『ティンダロス』! 格の違いを見せつける!」
『カヴァス』とティンダロス、それぞれ信頼する相棒へ騎乗するトールとマカライトは、砂地の悪影響を受けることなく前へと進み、少し後方ヤツェクが続く。
ティストは終焉獣達を向かわせると共に、透き通った黄色い魔力を戦場中へ乱れ撃ち。
ヤツェクがギターに仕込んだ刀を抜き放ちこれを斬り捨てれば。
「けほっけほっ! おいおい、何かと思えばこいつは酢か!」
斬って生じた残滓ですら痺れるような酸味で顔中を刺激するのだ。
歌い手にとって命である喉をやられぬよう、すぐさまもう一方のネックをかき鳴らし己を癒す。
「マカライト、トール! やっこさんはどうやらおれ達を料理する気らしい! 味付けは最悪おれが消してやるから、活きが良い一撃を叩き込んでやれ!」
「なるほどな、それで最強の味覚ってわけか」
続いては茶色と白と黒の魔力。
最初が酢、ならばこれは味噌塩醤油か。
「気合いを入れるぞ王子。美食家気取りに喰われるのはごめんだ」
「ええ、AURORAを最大稼働させて悪影響を無効化します」
二人は縦列に並ぶと、妨げとなる小さな終焉獣はマカライトが薙ぎ払い。
避けきれないティストの魔力はできる限りトールが引き受けることで、互いの消耗を抑えながら進行。
距離が詰まったところで、トールがカヴァスの上から飛び上がりティストへと肉薄する。
振るった輝剣は、鍋から取り出された巨大なへらで防がれるが、鍋の撹拌が止まった事により終焉獣の増加も打ち止めとなった。
「マカライトさん!」
「ああ!」
数を減らすなら今しかない。
マカライトは突き出す槍に自身の身体から出る鎖を巻きつけると、魔力を集中。
攻撃力と推進力へと転化させ、縦横無尽に終焉獣を貫いていく。
「――!」
勢いを削ごうと、麻痺の呪文を唱え始める援護兵。
「おっと、騎兵隊が誇る天下無双の傭兵に惚れる気持ちは分かるが……アンタじゃ釣り合わないな」
それも反発力を含んだヤツェクの一撃によって吹き飛び、トールを狙う攻撃兵にぶつかった。
「さぁ王子様! その心に煌めく想いで虹を架けてくれ!」
トールはAURORAとの接続を解除し、己の意識を極限まで無へと帰す。
三体もの敵を相手取る最中だ、当然無事では済まないが。
剣戟すら聞こえない寂静に至れば、長き道のりを経て結ばれた【ココロ=Bliss=Solitude】の想いが聞こえてくる。
(わたしのイーリン師匠様。あなたの最初の弟子になってから随分経つのに。
わたしはまだ何も返せていない。
なのに二度と会えなくなるなんて……そんなの絶対に嫌です!!!)
願いが流れ込んでくる。
(トール君……わたしは、わたしの一番大事な人を助けたいの! わたしが一番輝くところを、あの人に見て貰いたいの!! だから、おねがい……!!!)
仮面を外した、愛する人の素直な心。
約束したのだ。貴女だけの煌めくオーロラを見せると。
この手を掴んでくれたなら、誰もが羨む眩しくて輝かしい未来を捧げてみせると。
「――聞こえたよ、ココロ」
AURORA-Eos再稼働。
シンデレラの願いを受けた王子様。
色褪せない気持ちと誓いを矜持とする貴女だけの騎士。
約束した幸せな未来へと至るために。
想いは巨大な輝きを放つ刃となる。
「イーリンさん、貴女が育ての親として彼女を僕に託すというのなら喜んで。
けれど僕は貴女の騎兵である前に彼女の騎士。神が何を望もうとここを片付けて迎えに行きます。ですから……」
――彼女が素直に望んでいるんです。貴女も『あの子に為にも死んでも生きて帰る』ぐらい言ってのけてくださいよ。
~~~
右腕部まで移動した『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)、
レイリー、『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)の班もまた、魔法陣を通り砂場の異空間へと到着。
【ダーチカスタム】達と戦闘を繰り広げていた。
「Nyahahahaha!!! 被造も被造の貴様らはいつまで経っても学ばぬな? 本来なら赤点落第即廃棄だ。だがわたあめ撹拌の好機! あれの心臓に混沌を記し、脳髄にホイップクリームを継ぎ足し、天才になれなかった理由を人の枠に組み込まねばならんというなら、何度目かも解せん名乗りをしてやろう。いいか貴様ら、我こそが這い寄る混沌、ロジャーズ=L=ナイア!! 私こそが神であり、この混沌を平らげるもの!!!」
ロジャーズとて混沌にいる以上『肯定』を避けられない。
様々な書物を見てきた。
時に這い寄り、時に飲み干し、時に嘲笑い、時に情念を抱いた。
人間を深淵から見つめるはずが、同じだけ人間に見つめ返されていたのだ。
神でありながら、人間。
人間でありながら、神。
定義によって如何様にも生まれ変わる無貌は、言い換えれば全てたり得る同一奇譚。
矛盾をはらみつつも、傲慢に上層から見つめるが混沌なれば。
『神がそれを望まれる』だけである。
ロジャーズは選択を示すべく、ダーチの繰り出す強力な連打をレイリーが受け持っていた分すらも吸い寄せ始める。
「偶像よ! 紡ぎ手と共に強固な不倒で腸を茹ででやるがいい!」
とはいえ相手は騎兵が誇る鉄壁の二人と、癒し手でもあるアンジェリカの回復をもってして、やっと状況を膠着させられる程の火力だ。
この状況が長くは保てないのは誰もが承知していた。
「ロジャース殿……! 分かったわ。貴女の鎧の凄さ、わたしは信じているから! 行くわよ、アンジェリカ殿!」
「ええ!」
戦いは一刻を争う。
飛び出した二人は、まずダーチを強化する援護兵を狙うが、盾を構えた攻撃兵が割って入る。
「――!」
「当然そうくるわよね」
盾を穿つ時、矛はどうするか。
レイリーの脳裏には相棒たるエレンシアの勇姿が浮かぶ。
「わたしは不倒の盾。でも今だけは、白き矛となってみせるわ!」
騎士として鍛え上げた技は、槍を杖に変えても無駄になどならない。
敵の攻撃を注意深く見切り、守りが緩んだ所を突いて動きを遅らせる。
「レイリー様、伏せて!」
生じた隙を逃さず、アンジェリカが屈んだレイリーの頭上で巨大な十字架を盾に突き立てれば。
「我ら一騎当千の猛者也。森羅万象を須く穿つ矛となるも、艱難辛苦を須く砕く盾となるも自在である!」
怯んだ攻撃兵に注がれる圧搾の魔力。
盾の向こう側、鎧の中身たる滅びのアークそのものが穿たれ攻撃兵は膝をつき。
援護兵も戸惑うような様子を見せた。
「あら、所詮ヒーラーだとお舐めになられていました? 一瞬で傷を癒す無尽蔵の治癒……その力を破壊力に変えるだけでも殺傷力としては十分。終焉獣には真似できぬでしょうが」
「やるじゃないアンジェリカ殿! 貴女が誇る攻防一体の治癒の加護に感謝ね!」
「芯も残さぬ素晴しい茹で具合だ! その加減で料理してやるがいい」
「ありがとうございます、ですがその前に一旦ロジャーズ様の回復を……」
「否、それは貴様ではないもう一人の紡ぎ手の役目だ。偶像、貴様が抱く善の背信者を思い描くがいい!」
「え、ええ。分かったわ!」
レイリーが想いを寄せれば、外で巨大終焉獣と戦う【夢野 幸潮】の胸に電撃が迸る。
「はっ、この感覚は……我が美しく愛しきヒト!」
幸潮が目を凝らせば、僅かながら右腕の一部にかけがえのない温もりを感じた。
「紫髪の勇者様を救う傍ら、幻想の担い手の役目を課されるとは。ああ、これだから混沌は!」
嘆く言葉とは裏腹に、万年筆を走らせると英雄の再誕を描写した魔力を温もりへと届けていく。
『疾くと走れや英雄共、素晴らしきハッピーエンドを勇者様へ見せてやろう!』
「……幸潮!」
「灰かぶりがやってみせたのだ。あの出来たてポップコーンのように瑞々しく跳ねる時期ではなくとも、貴様らとて充分に想いとやらを蓄積したことだろう」
三人の傷が塞がっていく。
これならアンジェリカも攻撃に集中できそうだ。
「ロジャース様、レイリー様。幸潮様の言う通り、遠く隔たれた彼女へ届くまで、魂の雄叫びを轟かせましょう! そして更に前へ! この脚が駆け続ける限り!」
~~~
「面倒なことしてくれるじゃねぇか!」
脚部の空間では兵団と打ち合うエレンシアの声。
一度飛び退くと、戦神の加護で仲間達を癒し体制を整える。
「ふむ、やはりどうにかあの終焉獣が発する香りの霧を突破するしかないようだ」
戦闘の中で冷静に敵を分析する『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)。
眼前の【シィメルカスタム】が放出する多種多様な色と香りは、状態異常を引き起こすだけでは無く、終焉獣達に様々な効果を付与しているようで。
攻撃を幻に無駄撃ちさせたり、動き回ることで攻撃対象を切り替える時間稼ぎを徹底する。
「うぅ……! 私達は早く行って伝えなきゃいけないことがあるのです! さっさとやられるのですよ!」
『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)のイライラも爆発寸前。
とはいえ単純な目的論としても実際の戦術論としても、このまま粘りの戦いを続けられては無限に補給が続き、イーリンすらも吸収し得る相手が有利だ。
もう時間をかけたくない状況に焦りが加速する。
(くそっ! 考えるのは得意じゃねぇってのによ……!)
こんな時イーリンが居てくれたなら。
エレンシアはふと、彼女から貰った言葉を思い浮かべる。
――今まであらゆる艱難辛苦を共にしてきた私たちだもの。其れ以上の言葉なんて必要ないでしょ?
「そうか! 苦を共にするんだ!」
「エレンシアさん、何か思いついたのです?」
「え、あぁ。その……」
リリーの問いかけについ口ごもる。
確かに策が浮かんだ。だがそれは普段考えない己の案だ。
咄嗟の思いつきでもあるし、不安が過ぎってしまう。
「エレンシア。得意ではない事に挑戦する難しさは僕もそれなりに分かっているつもりだ。だが君がこれまでイーリンを信じ力を振るうことで勝利してきたように。僕も君の策を成立させるために全力で戦わせてもらう! だから聞かせてくれ」
「そうです! シューヴェルトさんとタイミング合わせるから、エレンシアさんにはド派手にやってもらいたいです!」
「シューヴェルト、リリー……」
――ね、エレンシア。君はもっと自信を持つべきだ。こんなにも私たちを祝福してくれる人が来てくれたんだから。
(ああ、そうだよな……)
ほんの少し意地悪な愛する人。
彼が捧げてくれた真っ直ぐな優しさが、背を押した。
「……わかった! 二人ともアタシに合わせてくれ! 次の攻めで絶対にこいつ等を抜くぞ!」
「ああ!」
「はいです!」
三人は同時にシィメルへ迫る。
しかしただの同時攻撃は既に試した後。
シィメルはまたかと思いつつ煙を出した。
「これは……幻影の霧!」
「よし、間違ったやつを攻撃して消耗しないよう、守りを固めて見極めるぜ!」
「分かったのです!」
まるで聞かせるように告げると、三人は背を合わせ幻影の霧の中でしっと周囲を見定める。
暫くは霧の維持に集中していたシィメルだが一向に動き出さない様に痺れを切らし、攻撃兵を差し向ける。
(来たな、だがまだだ)
霧の中から現れる刃。
防御に集中していると、刃は二つに増え。
刃が増えれば当然傷も増えるが耐え続ける。
これが仲間を信じ期を待つ盾役の気持ちか。
そして遂に。
「……!」
リリーを狙う三つ目の攻撃。
「ソイツだ!」
エレンシアが叫ぶ。
長く戦い、苦しめられた。
けれどその分、最高の一撃を放つ蓄えも充分であった。
「貴族騎士流秘奥義……『鬼気壊灰』!」
シューベルト必殺の一撃は、鬼人が如き力と共に放つ呪詛と怨念の衝撃波。
中空へ弾き飛ばされたのは、紛う事なき最強の嗅覚。
「リリー!」
「はあああっっ!!!」
エレンシアとリリー。
共に背負う翼をはためかせ煙の上へ飛び立ち、身動きの取れないシィメルを挟み込む。
「落とし前、きっちり付けさせてやらぁ!!!」
「絶対勝つです。勝ってイーリンさんを取り戻すです!!!」
極限の闘争心を纏う大太刀と赤き闘気を撃ち込むパイルバンカー。
二つの攻撃は一点で交わり、シィメルを粉砕するのであった。
「か、勝ったです……!」
「ああ。リリー、強くなったな」
「えへへ。エレンシアさんのおかげです!」
「流石だエレンシアさん。敵の戦い方から引きつける作戦と狙うべき順番を推測するとは」
「なぁに、ちょっとアイツらならどうするか、考えただけだ」
――ありがとな、イーリン。レイリー。
「シューヴェルトもナイス打ち上げだったぜ。流石は貴族騎士さんってとこだな」
「ありがとう、だか本番はこの先だ。イーリンを助け出すまでこの貴族騎士、騎兵隊の一人として力を尽くそう!」
「ああ、頼りにしてるぜ!」
残す敵は兵団のみ。
今度こそ、最速突破で彼女を迎えに行くのだ!
~~~
「これでは日が暮れてしまいますね」
石の壁を背に瑠璃が呟く。
「狙撃勝負はレンジの長さと狙撃場所の多さがものを言う……とはいえちょっと反則だぜ、ありゃ」
ミヅハが応じる。
二人がいるのは頭部に発生していた異空間。
既にある程度の戦闘を終えているが、ここの関門となる【イサートカスタム】は前回手痛くやられた経験から学習し、自由意志で空間内に障壁を作り出す能力を身につけていた。
更に無双撃以外はレンジが武器に依存してしまう呪いを課せられた影響でミヅハ以外は相手の方が上回る射程を持っているため、不用意に遠距離で姿を出せば動きを封じられ、そのまま蜂の巣にされ。
近づいたり遮蔽を壊したりすれば、素早い退避と新たな遮蔽でこちらを寄せ付けないという、姑息な戦術が展開されているのだ。
「このまま時間をかけても埒が明かねぇ。俺が飛び出して先に射抜いてやる!」
「待ってくれミヅハ」
意気込む彼を『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)が制止する。
「なんだよ軍師様」
「相手は素早い。避けられる保証もないのに先撃ちできるかの賭けまでやるのは博打が過ぎるだろ? あと俺は軍師じゃなくて役者な」
とはいえ、お誂え向きの舞台で大根役者と沈むつもりは毛頭無かった。
「兵団は狙撃手の強化、狙撃手は俺達の動きに集中している。そこで俺達が用意する『舞台』はこうだ」
カイトはここまでの戦いを見て、イサートの性格を分析。
かつ戦場を俯瞰して推察した敵の陣形や行動予測を二人へ伝える。
「さてと。そろそろ指していこう」
勝敗を分けるたった一つの事柄。
それは先に当てられるか。
封殺の極意であり役目でもあるが、決して一人で背負うものではない。
己も含め、手持ちの駒はこちらがずっと多いのだから。
――終末ギリギリの瀬戸際で哀れに勝ち誇ってる女王様。騎兵隊が頭の指示を失った程度で止まると勘違いするんじゃねぇぞ?
カイトは『凍鮫』と名付けたホバーバイクをフルスロットル。
何故か自分達の陣地にほど近い遮蔽を次々壊していく。
「刀より弓の方が良かったかも知れませんが、これはこれは作戦上動きやすいので良しとしましょう」
瑠璃が担当するのは陣地内の遮蔽破壊。
足に備えた練達型の改造ドローンは、魔力を用いれば『忍法瑞雲』。
地を、水を、空すら素早く駆けられる。
「……?」
イサートには全く意図が分からない。
けれど自身を狙うならともかく、無差別にも思える破壊行為はそれだけ動きの予測が難しく、放った銃撃も空を切っていた。
(あの辺りだな)
ミヅハは撃ち込みたい気持ちを抑え、敢えてイサートの居場所から少々外れた遮蔽を砕く。
やがて三人の隠れられる遮蔽は一つだけとなり、敵側もほとんど遮蔽が残っていない状況に。
(さて、カイトの話だとここまで持ってくりゃ……)
敵は遮蔽裏に隠れている間は撃ってこなかった。故に貫通はなく。
敵はこちらが攻めに来なければ守ることは無かった。故に遮蔽は増やされず.。
状況から言って、兵団かイサートかはともかく、残る遮蔽はどれもほぼ当たりであるのは歴然であった。
当然、相手もこの場所を狙い続けているはずで。
(あとは俺が鍛えたこの技で炙り出せば!)
背面穿ちの曲矢。
眼前の敵の背中を狙う神業は裏に隠れていた攻撃兵に命中、思わぬところからの攻撃に敵は遮蔽から飛び出してしまう。
「……御命頂戴!」
すかさず忍者刀『忍法霞斬』で斬り込む瑠璃。
ようやく晒された獲物の姿に、イサートは嬉々として銃を構えるも。
残された遮蔽裏は全てカイトの距離だ。
「アンタは自分の役割を間違えた」
放たれる舞台設営術。
完全に読み切った一撃は、敵の中心に当たり、その動きを封じこめる。
「アンタが狩人を選ぶ性格だから俺達の獲物になり」
舞台演出『氷戒凍葬』が一つ『黒顎逆雨』。
地から湧き出す黒き雨が、足掻くイサートの奇跡を覆う。
「一人で戦うから、仲間たる兵団はアンタを表舞台へ引き摺り出す道具になったんだ」
極めつけは『氷戒凍葬』が奥義『破軍星雨』。
もう一つの遮蔽から狙撃手に付着した黒い雨を洗う援護兵諸共、今度は白い雨が押し流していく。
「舞台に正しき幕引きを齎す光の乱舞だ、喰らっていけよ」
完璧だった。
「本当の必中必殺を見せてやるぜ!」
今度こそとミヅハが飛び出す。
だが、援護兵が破鎧の力で散り際にイサートの運を取り戻した。
「……!」
イサートが銃を向ける。
アドリブが舞台を壊す。
――その寸前だった。
「……!?」
イサートのゴーグルが割れ、動きが止まる。
これもまたアドリブか、演出か。
「狩人は、決して獲物を逃がさねぇ!!」
ミヅハの運命を定める一撃がイサートの心臓を射抜くのであった。
~~~
「よっしゃ! 雲雀兄さん見てた今の? 俺にもやれた!」
【火野・彩陽】が嬉しそうに伝えてくる。
「ああ、勿論見ていたさ。俺の可愛い弟弟子が放つ誰かの為を希う力が、あれの守りを砕いたところをね」
【刻見 雲雀】が笑んだ。
「このままボコって、ししょーの手伝いもイーリンはんの救出も絶対成功させたる!」
「頼もしくなったね。期待してるよ、彩陽」
雲雀が咒法の印を結ぶ。
(俺達は大切な誰かを信じていて、誰かもまた俺達を信じてくれている。
離れていても互いを支え合う強い結びつきがあるからこそ、俺達は神が望む一手を打ち続けてこれたんだ。そうでしょう、カイトさん?)
彼女を信じ、師匠を信じ、弟弟子を信じ、仲間を信じて突き進む。
それこそが、望む運命を手繰り寄せる最大の力になるのだから。
「絶えず運命は星と共に流転する――!」
~~~
「どうやらここは片付いたみたいですね」
「そのようだ。瑠璃もミズハも演出の協力に感謝する」
小さく頭を下げ、カイトはふと虚空を見た。
(お前達にもな)
「おい見ろよ! 俺達が入ってきた場所とは逆方向にまた魔法陣があるぜ!」
ミヅハが見つけたのは先程まで無かったもの。
今度こそ、天下無双の大将がいる場所へと繋がっていることだろう。
「なら早速本物の軍師様にモーニングコールと行こうか」
歩き出す二人に、瑠璃は続かなかった。
「この先にいるのは恐らく狂姫。何か情報がないか、私は死体を確認してから参ります」
仲間達の背を見送りながら、瑠璃はイーリンがするであろう事を考えていた。
(もしそうなら、助けとなるのは)
瑠璃は己に宿る可能性を見つめていた。
●集え、この旗の下に
『クダラヌワ!』
狂姫が嘲笑う。
たかが終焉獣如きである。
されど人間たるイレギュラーズ達が、力を結集することで滅海竜の怒りすらも押しとどめてみせたように。
かの俗物は桁外れの魔力を傍若無人に振りかざし、歴戦の戦士たる二人を前にしてもなお、姫として君臨する。
「くっ……!」
燃えていく。
消えていく。
変わっていく。
「……」
灰の騎士も己を見た。
完全に燃え尽きた分だけ、本も、剣も、身体も。
さらさら音を立て、灰が零れ落ちる。
遂行者の魔力体は先の攻撃に倒れた。
Bもまた満身創痍。
凡才の持つ契約も果たされてしまった。
自分がこれでは、恐らく次は受けきれない。
『サッサトマリョクヘカワッテシマエ!』
それでも。
灰に並ぶ少女の身体は未だ司書であり、イーリンであった。
嗚呼、これはきっと。
「――のよ」
『ナンダ?』
「皆が信じ、待ってくれてるのよ!」
とうに限界は超えている。
「でなければ、私は『この形で居られなかった』わ!!」
それでもこの身体を突き動かす、願い。
「嬉しくないわけないじゃない!!! 私だって皆と同じ時を過ごしたいと願っているに決まっているじゃない!!!」
だが、運命という鎖が彼女を縛り付けている。
ならばせめてあの時の仲間達に出来なかったことを。
絶望の中の死を、拒絶してみせるのだ。
「大切だから! 私は私の全てを賭けてでも!! この世界の、皆の未来だけは……掴んでみせる!!!」
叫び、走り出す。
『ナレバ、ソノネガイカラ、クッテヤロウ!』
大剣に払われる。
あと少し、届かない。
どうすれば。
天才に至らねば。
最後の鎖を解き放つ時がきた。
この決意を、言葉にすれば。
「神が――」
嗚呼、歴史は繰り返されるのか。
『オワリダ!』
集約された終焉の魔力が、少女を望みごと飲み込んでいく。
――はずだった。
「――望まれる『舞台』の結末はこうだ。光纏いし姫君は己の輝き故廻る星々の輝きに気づかなかった。だが知ることになる、光は重なり合ってこそ希望となり、運命すらも裏返す……なーんて、な」
「そうだぜイーリン。あの日憧れたアンタの背中を追ってここまで来たんだ。つまらねェ結末なんて認めてやるもんかよ……!」
決意の宣誓を。
絶望の光を遮る、声と形。
それらは膨大な魔力を受け止め膝をつく。
「……カイト? ミヅハ?」
耳に馴染んだ声に、イーリンの感情(くさり)にくべられた火が消え。
『ナゼ、ナゼコレヲトメラレル!? ナゼニゲダサヌ!?』
姫が思考を乱せば。
「……てめぇの一撃より豆腐の角のがまだ痛ぇぜ!」
獣となった狩人と。
「……逃げる、ものかよ」
想いの鎧を纏った紅蒼の役者が立ち上がる。
「二人ともなんて無茶を!」
駆け寄るイーリン。
嗚呼、どうして可能性を燃やしてまで!
「はっ、そりゃあ同じ時を過ごすためだろ」
傷つきながらも、ミヅハは笑う。
「ここへの入口を通じて聞こえたぜ。お前の言葉」
それが彼女の願いなら。
仲間は、集う。
「大将! そこの頭生クリームの講釈なんか真に受けたりしてないだろうな!」
マカライトがティンダロスと共に斬り込む。
「ふざけんじゃねぇぞイーリン! こっちはどんな苦難の中でも掲げられた『全員生存』について来たんだ! 最後の最後までてめぇがその旗を振りやがれ!」
エレンシアが吠える。
「フィナーレの時は近いでしょう! ですがカーテンコールに役者が揃わねば意味が無い! 天下無双が集ってこそ、万雷の喝采が生まれる。なれば勝鬨を上げるその時まで、振り上げた拳は天高き未来へ伸ばすべきです!」
アンジェリカが奇跡を身に纏い、癒しで包む。
「君の悲しみや後悔は簡単に癒えるものではないだろう。だが仲間達の想いを、届けられた声に向き合うことで、たどり着ける新たな未来があるはずだ!」
シューヴェルトが貴族騎士の剣技で浮遊する魔力球を寸断する。
「彼女の事を可愛い一番弟子だの言っておきながら、彼女の未来から貴女が欠けるなんてあまりにも無責任です。二人が積み重ねてきた関係は、その程度のものじゃないでしょう!」
トールの連撃が狂姫の扇を阻む。
「本当に『綿』を抉るのが下手糞だ。馬の糞に粘着する蠅の類よ! 哀れな獣。天啓を知らない哀れな者!! 今暫くの編纂を見届ける合間、我が血肉をくれてやろう、望むが好い!!!」
大剣の衝撃を、ロジャーズが肉壁となって受け止める。
「わたあめ……否。イーリン・ジョーンズ! 貴様は何方か、燃えかけの鎖に『友人』と記した者へ示してみよ!」
駆け寄るは、レイリー。
「お待たせ」
イーリンを抱きしめる。
「言ったでしょ。次は貴女が夢を叶える番なの。バチが当たるというなら、これからはわたしが全部防いであげるわ」
「レイ、リー……」
言葉が上手く、出てこない。
ただ、温かい。
「ありがとう、護ってくれて」
二人を見つめていた海種は、レイリーの言葉に笑顔を返した。
「繋げてくれる? わたし達の心の波を」
海種は頷き奏でる歌の調子を変える。
すると集いし騎兵とB、海種の身体から可能性の光が零れだし、イーリンの中へと流れ込んでいく。
「なぁ死神、アーカーシュは楽しかったな?」
ヤツェクがBに問えば、彼女は優しく頬を緩めた。
「私、私ね……? ずっと言いたかった言葉があるの」
リリーも涙を浮かべながら、震える声でBに語り掛ける。
「あなたが居なかったら、騎兵隊にも出逢えなかったし、きっと色々な事を、出会いを。楽しいと感じられなかったです! その感謝を、ずっとずっと伝えたくて」
Bと海種は可能性の魔力体。
光の全てがイーリンに戻れば、ここには何も残らない。
この機会を逃したら、もう二度と言えないだろうから。
「だから……ありがとうです! それと、私はあなたが大好き――ううん。大好き、だったよ」
Bの腕がリリーの頭へと伸び、触れる寸前、消えていく。
「ぐすっ」
溢れる涙を手で拭い。顔を上げれば百点満点の笑顔。
「どうか観ててね。私が強くなった姿を!」
リリーは敵へと向き直ると、臆することなく突き進む。
そしてBの光は全てイーリンの中へと還る。
レイリーはそれを優しげな表情で見つめていた。
(私がつくまで、もたせてくれてありがとう。あとはわたしが護るから)
――おやすみなさい、愛してるわ。
~~~
「こんなところでしょうか」
その頃瑠璃は魔術で創り出した杭を打ち立て、異空間への入口を中心とする六芒星の魔法陣を創り上げた。
「後は仕上げです」
長く美しい髪に刃を当てると、肩口にも届かぬところで大きく切り落とし、手際良く七等分。
瑞雲を使い各所へ配置する。
残った一束は、胸に隠していた『死せる星のエイドス』に結び付けた。
「密偵頭だの愛人だのと認定しておきながら、私を置いていこうとするんでしょうね。とんだ主です」
ぼやきつつも、瑠璃は笑っていた。
これも(当座の仕える相手として)惚れてしまった故の弱みか。
彼女は己に宿る魔力を最大限まで高め、石ころみたいな救いの欠片にこれでもかと注いでいく。
「さぁ、絶望を退ける……奇跡を願いましょう!」
目一杯の想いと力で、エイドスを穴へ投げ込めば。
「天を駆ける流星の乙女よ!」
印を刻み。
「兵を束ねる不変の誓いよ!」
詠唱し。
「この地に集いし数多の祈りを伴いて、彼の旗に掲げた全員生存の予言を貫き給え!」
後は、この可能性に全てを賭けるだけ。
「魔道開門!! 誓願伝達(プレイル・ペネト・プロフェシカ)!!!」
溢れ出す可能性の光が瑠璃の髪を、忍者装束『墨染月(すみぞめのつき)』を純白の太陽へと染め上げる。
切り放された髪もまた同様。
迸る光と光は陣を通じて結び付き周囲に勾玉を幻出させた。
そこに浮かぶは、怨念ではなく積み重ねてきた混沌での日々。
忘れられない温かな記憶は先行く星目がけ飛んでいく。
「騎兵の連携、遮る事能わず」
元の世界でもこの世界でも。
これまで幾度となく、屍の記憶――遺言を弄り出しては伝えてきた。
苦しみ、嘆き、憎しみ。
数多の情報に添えられた死に宿る負の感情はどれも薄汚くて。
それでも仕事(いばしょ)だったから。
納得のいかない命令をこなし、見たくないものを直視する。
そんな日々に擦り切れた心を癒してくれたのは、この世界での出会いであり騎兵の縁であったから。
記憶が今一度だけ鮮明に甦る。
『瑠璃』は言った。私はもう、大丈夫……と。
一人でも考え、歩み、生きていくことが出来るのだと。
なればこれはきっと、『私』が。
『志(こころ)』が願うとっておきの我が儘。
――皆が頼りすぎて、気づかぬ内に重荷を背負わせたのやも知れません。
ですが翻れば、誰にとっても代わりがいないという証明でもあります。
愛されてるんですよ、人として。貴女が思うよりずっと。
私だって燃え尽きた貴女の声なんか代行したくありません。
だから……ね?
声は伝わる、想いは届く。
どれほどの距離を隔てようと、どれほどの絶望にさらされようと。
希望を信じる仲間達がいる限り。
~~~
「そこで見てなさい。わたし達はあなたを死なせないし、何があっても最後まで一緒にいるんだからね」
可能性と魔力が同調するまでの間、イーリンを護るレイリー。
不倒と生存の覚悟を湛えた赤い瞳が狂姫を映す。
『キィ! マタソンナメヲ!!』
彼女は狂っていた。
求める願いに溺れ、姫たる理由を失った。
そこにいるのは、ただ力ある抜け殻だった。
力の果てに心を失うとはああいうものかとレイリーは思う。
(貴女はどうかこうならないで、イーリン。皆で力を合わせれば、この世界の平和を掴み取るくらい、絶対成し遂げられるわよ。今までだって、そうしてきたんだから)
どんな狂姫の攻撃も、白竜が守る限り戦旗を倒せない。
「さぁこの舞台、大盛況の幕引きまで演じ抜いてみせようじゃないか!」
ヤツェクの刻むビートが一段と熱くなる。
旅に別れはつきものだ。
だが振り返れど、死神やウィザードを喪った悲しみはとりわけ深いものだった。
あんな悲しみを生み出しかねない運命など、覆せなければ銀河中のロマンがすたる。
「皆の士気のおかげで、僕たちの力が再び溜まるまで後少しだ! 共に耐えてくれ!」
シューヴェルトが攻撃の合間に神聖なる剣戟を重ねていく。
硬い鎧にヒビすら入らずとも、諦めず続ける限りいつか穿つと信じて。
「正々堂々戦えない狂姫さん、弱っちくて可哀想ですね♪」
リリーが煽る。
大切な別れを終え備えた覚悟に、イーリンを傷つけられた怒りが交われば煽リリーの完成だ。
『ナニヲ!』
「そうじゃないなら、証明してみなよ。鎧に頼った臆病者」
『キィ!!』
リリーの予想通り、イーリンへ振るわれようとしていた大剣がこちらを向いた。
死ぬ気はない。
だが推しを守り、勝利を導く無双の意志を高めるなら最も効率的だ。
激しい攻撃にもパンドラの炎を燃やして立ち上がる。
「……証明失敗、だね」
これが強くなった彼女の、覚悟である。
『ホザケ! ソノキセキ、イチドキリダロウニ!』
四感が失われ、魔力の供給は極端に低下している。
だが巨大終焉獣はまだ稼働しており、自身に蓄えた魔力も充分だ。
過ぎ去りし戦いとは違い、しもべ達が充分に虫の力を削っている。
イレギュラーさえ無ければ、この戦いに負けるはずなどないのだ。
『サァ、オワリダ!』
狂姫が扇を大剣に取り込ませた。
次なる一撃は神物悉くを宿した終焉の凶刃。
『シネェ!』
その時、イサートが護っていた魔法陣から希望の星が飛び出すと、狂姫と仲間達の間で弾けた。
――瑠璃の願いだ。
『ナニッ!?』
異空間を満たす、純真な温もり。
「私の望みはイーリン・ジョーンズ……アンタが只の人として戻ってくることだ!」
レイブンが燃える可能性を添えて魔力を奔らせる。
「もうこれ以上ともだちを……親友を喪うなんて嫌ですから!」
エマが血を拭いながら立つ。
「ジョーンズ! とっとと起き上がれ! その旗槍は一体何のために翻るんだ!」
バグルドが最大火力を叩き込む。
「さぁ立って立って! ファイ!!」
鈴音が不安なき未来を信じている。
「要らぬ心配など、するんじゃないぞ!」
十七号が露払いに死力を尽くす。
(この声……)
星の光から聞こえてくるのは外で戦う仲間達の想いだ。
想いは更なる可能性の魔力となって、イーリンに溶けていく。
「イーリン。私は、まだあなたと食べたい物がいっぱいあるよ……!」
オニキスが感情をマジカル対戦車砲にのせる。
「生きてください、イーリンさん……!」
アレストが優しい想いで名前を呼ぶ。
「燃えてるなら、まだ灰じゃないだろ……イーリン!」
旭日が想いの価値を証明する。
「希望は潰えない、絶対勝つって信じてる!」
ヴェルーリアが絶望を希望で呑み込む。
「我は飯を喰らう為に生きとる! お主にも生きたいと願う理由があるはずじゃ! どこにあるか思い出してみよ!」
ニャンタルが心の根底を覗き込む。
「イーリンさんは盤面を返す一手を持ってる。こんな奴らぶっ飛ばしちゃいなよ!」
雲雀が運命を手繰る。
「ボス、思い出して。僕のコアに触れた感覚を! ボスのこれまではここにある、でももっと、ボスのこれからを刻んでほしい!」
ハインが最大の敬愛を捧げる。
「此なる世界、英雄等が突き進むにはイーリン、汝の瞳が必要だ。故に──失わせんよ」
幸潮が騎兵の最終生命線を維持する。
「イーリンはん。俺はあんさんのピンチとあれば参上するし、バンドの練習だってちゃんとやってるやろ? だから頼ってな」
彩陽が運命の嵐に洗い立ての傘をさす。
「……『あなた』を、信じてます」
ココロが胸を撃ち抜き届けた想いを信じて手を合わす。
(聞こえる、見える……)
ふと、目を閉じた。
どことも知れぬその場所に。
ただ波の音が聞こえている。
「イーリンよ。お主の価値は、間違いを糺すことではないのじゃ。その胸に我すら届かぬ我の声を抱くなら、歩みを止めるでないわ!」
クレマァダが祈る。
「出来すぎた理想だ。だがボク達はそれを信じて未来を紡いできたじゃないか!
だから死ぬなイーリン! どうか帰って来てくれ!!」
フェルディンの剣に宿る願いが、海洋に溶けた声を、いつかの寝物語に聞かせてくれた音を伝えてくれる。
『波は全てのものにあるんだよ、いーちゃん』
(――っ)
目を開ける。
そこにあるのは友情だった。
そこにあるのは親愛だった。
六年を超える歳月の中で、数多の運命は絡み合った。
この世に神が居るとしても、これだけの想いを操るなんて出来ないだろう。
それを成し遂げたのが、たった一つの旗に託された望みであったのだ。
「あんたら……勝手過ぎるのよ。誰も彼も」
だがどうだ。
仲間がエゴで望み。
仲間にエゴを望まれ。
神を名乗る者すら、望みの本質は同一だ。
救済を求める数多の命を救うため、人の鎖を断ち切ってきたように。
人でなくなるという決まりきった運命すらも断ち切って欲しいのだ。
あとは……ただ『■■■■』が望むだけ。
「……ねぇ、皆」
正直答えはまだ見つからない。
この私すら『知らない』のだ。
物語は急転直下が起こり得る。
昨日までの常識が今日には消えてしまうことがある。
それが今世界を覆う絶望だ。
それでも。
この想い達は消えないでいてくれると、そう思って信じてしまうのは。
行き過ぎた望みだろうか。
「始めましょうか。死なないための……戦いを!」
旗が、掲げられた。
高まる士気。
『全員生存』の誓いが無双者達に最大の力を与えれば。
誰からともなくパンドラの加護を解き放つ。
加護は可能性の提示でもあった。
もしも反転したら。
純なる願いの果てに辿りつく滅びの可能性を降ろすはずのそれは。
『いつも通り』のままでその身に力を与えてくれる。
先んじたカイトやミヅハもまた、元の姿に戻って。
『ムダダトイウノダ!!!』
狂姫が終焉の未来へと賽を振るう。
「成し遂げると言っているのよ!!!」
イーリンが仲間達との日常に賽を振るう。
ぶつかり合う魔力と魔力。
狂姫の大剣と天照狩を纏う長剣が拮抗するが。
「絶望なんかに、運命なんかに私の友を攫わせないわ!」
レイリーの希望を信じるかけ声が舞台となれば。
狂姫が纏う鎧を壊すまでのカウントダウンが始まった。
続くは天下無双の兵達。
「いい加減見苦しいぞ、雌豚。この結果は単にお前が大将としての器を持ち得なかったに過ぎない」
マカライトが鎖を束ねる。
『ワ、ワッチノコノチカラコソ、サイキョウニフサワシイ! カミスラコエルチカラダ!』
「……好きに言え。だがな、傭兵は雇い主の依頼をこなすのみだ。だから我らが対象がそう望まれるなら、それもまた神の望みすら超えるものなのさ。……ま、邪神もどきの俺が言えた口じゃないがな!」
黒龍の顎が大剣に噛みつけば、フィナーレまで一直線だ。
ロジャーズの魔皇が胸部の鎧を割った。
リリーの決意が杭となって左足を封じた。
エレンシアの感謝が友との更なる未来を願う一撃となって右足を砕いた。
カイトの魔術が大将に期待される仕事を果たした。
シューヴェルトの覚悟が遂に穿った。
ミヅハの一射がここにいる一人も例外なく生存させるべく狂姫の左目を潰した。
ヤツェクの勇敢にして苛烈な即興曲が剣舞となって鎧の傷を大きくした。
トールの誓剣が心に宿った願いの力を借りて、大剣を叩き折った。
「前回はお届けすることが出来ませんでしたからね。湧き上がる闘志を士気に変えて……稀代の醜い悪役にご挨拶を。私が誇る最大威力で退場させて差し上げましょう!」
アンジェリカの重撃が、狂姫が纏う鎧のあらゆる箇所をひずませた。
全員生存まで、ピースは残り一つ。
「……瑠璃!」
イーリンが名を呼んだ。
先程流れ込んできた魔力。
目には見えないけれど、どれもに声と顔が浮かんでいた。
その中には当然、生きた彼女のものも存在していたのだ。
「分かって……ますとも!」
黒髪と黒服へと戻っていた懐刀が最後の一撃を加えれば。
狂姫にとっての『Irregular』。
集う力の奇跡が、ここに成る。
『ソ、ソンナ!? バカナァァァ!??』
遂に、終焉の鎧は砕け散った。
●未来は分からないけれど
突如巨大終焉獣が足を止める。
「やったか……?」
誰かが言った。
『お決まりのその台詞は止めろ!』とツッコむ気力すら誰にも残されてはいなかった。
終焉獣が震え出す。
背後には鉄帝のワームホール。
次が来れば、後がない。
「オオオオオオオオッッッッ!!??」
だが未来はありふれた予想通りにはならなかった。
巨大終焉獣は弾け飛び、絶望の檻が希望によらずとも消えていく。
そう、イレギュラーズ達は勝ったのだ。
喜ばしい勝利。
だがそんな事よりも。
「みんな……ただいま」
異空間の出口から出てきた仲間達。
その戦闘に立つ紫髪の少女と折れぬ旗の存在に、歓喜が巻き起こる。
よく戻った。生きてて良かった。
ありとあらゆる労いと感謝。
勝手に死にかけるな。ふざけるな。おはぎよこせ。
そしてちょっぴりフランクが過ぎた言葉達がイーリンを出迎える。
「ねぇイーリン。泣いて笑って怒って……また笑う。こんな他愛ない日々を過ごせるのがハッピーエンドなら、目指してみてもいいと思わない?」
もみくしゃにされる中、レイリーは互いにしか聞こえぬ声で問いかける。
「……嫌いではないわ」
嘘偽りなき本心。
だが同時にイーリンは残してきた仲間達を思っている。
ふと身体を触り確かめれば、かつて遂行者に埋め込まれた聖なる魔力は完全に消えていた。
(死者すらも抱いて、生を覚え続ける……)
理想を掲げた男の覚悟。
それはかつての世界の仲間を思う彼女の心に似ていた。
だが事実として。
イーリンはその理想を否定し、今、この混沌を生きている。
(そうだ、灰の騎士!)
辺りを見渡せど、仲間達の姿で周囲の様子が分からない。
輝かしい未来においては、選ばれなかった昏き未来は可能性という炎が消えた、灰と化す。
(この結果は貴方の救いとなったのかしら……)
同じ宿命を背負ってずっと一人だった『私』。
定かではないが、今にして思えば、あの時仲間達と共に戦った未来を歩んだのが、彼女の真実であろうか。
だとすれば。
元の世界、同じ状況のあの場所に帰った時、私は――。
ふいに風が吹く。
目に入った塵を取ろうとすれば、一滴の涙が零れた。
もしこの時、風に乗った灰の声が聞こえたのならば。
きっと。
――大丈夫よ、答えは……得たわ。
「……さぁみんな」
ここから先も、いつも通り。
「これで鉄帝の戦いに余計な援軍が来ることは無くなったわ。ワーム・ホールから戻って『全剣王』と決着をつけましょう!」
少女は、総大将である。
彼女が戦旗を掲げれば、騎兵隊は集う。
可能性は重なり合って。
どこまでも強く、どこまでも高く。
未来に向かって突き進むことであろう。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
冒険お疲れ様でした!
最終決戦ということでどなたでも参加できるよう用意したサポート枠ではありましたが……。
メイン13人に対しサポートが17人!!
総勢30名+α登場の豪華なリプレイとなりました。
皆さんが紡ぎ合ってきた絆の力を、少しでも感じて頂けたなら幸いです。
MVPは愛じ……密偵頭として最高に士気を高めサポートの皆様の魔力も届けてみせた貴女へ。
積み重ねた経験なくやっていれば奇跡の強度が上がるので危なかったでしょう。
パンドラ消費について、今回は冒頭イーリンさんが命懸けで立ち上がって燃やした分は他参加者皆様全員から少しずつ補填された(流れ込んだ)形となっておりますので、通常の消費にそちらも加わる形となっております。
加護+大規模戦闘で消費量も高めとなっておりますので、それぞれご確認を宜しくお願い致します。
pnkが担当する通常シナリオはこちらで最終となります。
残るラリー決戦、ここで固めた決意の下に是非「全員生存」で勝利して下さいね!
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
※今回は多数の特殊判定が存在します。下記関連シナリオ内「GMコメント」の該当箇所だけはご確認頂くようお願い致します。
・メインPC向け
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10689
・サポートPC向け
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10619
●目標(成否判定&ハイルール適用)
全ネームド終焉獣(四感、狂姫)の撃破
巨大終焉獣のワーム・ホール到達阻止
●副目標(一例。個人的な目標があれば下記以外にも設定可)
『イーリン・ジョーンズ』の生存
●優先
※本シナリオは、以前に運用したシナリオ内プレイングに影響を受け制作されています。
そのため本シナリオに深い関連性を持つ以下の皆様(敬称略)へ優先参加権を付与しております。
・志屍 瑠璃(p3p000416)
・ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
・イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
・マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
・エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
・カイト(p3p007128)
・レイリー=シュタイン(p3p007270)
・ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
・アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)
・トール=アシェンプテル(p3p010816)
●冒険エリア
【鉄帝ワーム・ホール付近終焉内影の領域】
巨大終焉獣の体内とその周辺、並びに鉄帝ワーム・ホールの最終防衛ラインまで2km程度
各種情報は状況判断から得たもので、情報確度Bです。
●人物(NPC)詳細
【灰の騎士】
イーリンさんの関係者。彼女の事をずっと見つめてきた謎多き騎士。
これまで絶対に直接戦闘へ参加しないことを貫いてきましたが、今回ばかりは見過ごせなかったようです。
単独で戦い抜くことに長けているオールラウンダー。
NPCとしては強力なユニットですが、当然限界はあります。
【遂行者】
光輝く手甲を装備し戦う屈強な男の魔力体です。タンク&カウンタームーブ。
彼が撃破されるとイーリンさんのパンドラがー5されます。
【一般人B】
赤い翼が特徴的な剣士の魔力体です。死神と称する人も多いでしょう。アタッカームーブ。
彼女が撃破されるとイーリンさんのパンドラがー10されます。
【シロイルカの海種】
美しい歌声を奏でる魔力体です。ヒーラー&バッファームーブ。
魔力の波を整える力を持ちます。
彼女が撃破されるとイーリンさんのパンドラがー15されます。
NPCが全員撃破されると、イーリンさんは覚醒。
己が己に課した誓いを全うするために『全てを燃やして』狂姫と戦うでしょう。
●敵詳細
【終鎧終焉獣・狂姫(きょうき)】
見た目は体長5mくらいの遊女っぽいお姉さんでしたが、終焉に蔓延る無数の終焉獣を取り込み『終鎧』として纏っている今はその面影などありません。
(終鎧効果:破鎧効果から時限条件を除いたもの)
広範囲を高火力連撃できる神秘攻撃と終鎧が作り出した剣を用いた必殺系物理攻撃で戦います。
己の身を顧みないほどの滅びのアークに満ちているため、このシナリオ中は終焉獣でありながら複数体の魔種を思わせるほど強力。
終焉内の滅びのアークを四感を通じて吸収しているため、終鎧は破鎧効果に加えステータス大幅アップとHPAPの自動高回復を得ています。
ただし、終鎧はかなり肉体を蝕んでいますので、これが壊れれば塵へと還るでしょう。
【不毀の軍勢ー最強の四感】
※関連シナリオ
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10345
特徴により以下のように区分しますが、共通して人間サイズです。
但し終焉の力を得ているため強さは関連シナリオの比ではありません。
通常であれば3人で上手に連携しても五分五分。
士気を高め、迅速な撃破を目指しましょう。
・絶惨のティストカスタム
絶賛したくなるような味を求め、飯マズを至高と至った最強の味覚。
5種類の複数BS付与技と、犬型終焉獣を召喚して戦います。
ヒーラーや範囲アタッカー向きの相手です。
・柔破打のダーチカスタム
柔肌を極めようとした結果、何故か殴打向きの皮膚凝固能力を手に入れた最強の触覚。
物理攻撃を和らげる柔肌と強力な物理攻撃を繰り出す凝固を使い分けます。
タンク、神秘アタッカー向きの相手です。
・砲殉のシィメルカスタム
芳醇な香りに心を打たれ、様々な香りに触れる内に悪臭すらも愛した最強の嗅覚。
魔力で生成した香りの霧を周囲を散布する戦法で戦います。
匂いの種類によってバフデバフ攻撃回復全てをこなすため、一瞬の隙を逃さず倒したい相手です。
ヒーラー、高火力アタッカー、オールラウンダー向きの相手です。
・居狂哀のイサートカスタム
鷹の目――イーグルアイを持つと謳われた最強の視覚。
怖がりな性格は矯正され、敵の心臓を撃ち抜くのが趣味の怖い輩に。
高CT+高機動力で命中とレンジを確保しながら物理弾で攻撃が中心、厄介な付与は神秘弾でブレイクします。
物理弾の命中率によっては封殺を付与されてしまうので注意。
タンク、高反応、高機動向きの相手です。
【不毀の軍勢ー最強の兵団】
攻撃、援護の役割を持つ兵団です。
最強の四感に役割別で一体ずつ(計2×4=8体)帯同しています。
能力値は関連シナリオに登場した拠点兵長レベルです。
全員が破鎧を装備しており、通常攻撃に【仰け反り】が付与されます。
【巨大終焉獣】
※関連シナリオ
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10619
鉄帝のワーム・ホールを絶望の檻で飲み込んでしまおうと進行します。
メタ的に言えば、合体ロボです。
攻撃手段などは上記関連シナリオを参照して下さい。
特記事項として以下。
・機動力:10で毎ターン最後の主行動後必ず副行動で移動。
ターン毎、その時までのダメージ量に応じ段階的に機動力低下。
=一切邪魔がないと攻撃行動も取らないので、副移動+全力移動=250m移動。
最短8ターンでワーム・ホールへ到達してしまいます。
(とはいえメインPCの皆様が体内で戦うだけでダメージを負うので、機動力10を発揮する機会は少ないはずですが)
倒すに至らなくとも、火力をぶち込む&邪魔になるような行動をするだけで時間が稼げますので、騎兵隊に関わりがない皆様や、レベルが低い皆様でも充分に役立てる相手です。
サポート参加のPC様は全員ここになります。
●特殊判定
今回は特別に以下の特殊判定があります。
<終鎧の呪糸(メインPCのみ、通常回復不可)>
前回シナリオ破鎧の呪糸と同じ効果+一定時間毎に士気レベルが「1×戦闘可能メインPC」分低下。
<士気レベル(全体計算、最大100)>
士気レベルが上がるほど味方全員の能力値に上昇補正。
※全員で生き残るならばシナリオ終了時点で最低でも65は欲しいところです。
※上昇条件
1:戦闘行動、支援行動で活躍
2:仲間との声かけ、連携
3:終焉獣、ネームド終焉獣の撃破
4:サポートPCの奮闘、声かけ
5:称号効果「天下無双」(1~4の上昇量にプラス補正+「天下無双」保持者全員生存で一定時間経過毎メイン/サポートPC数分上昇。最大3回)
<無双レベル(メインPCのみ、個人計算、最大100)>
無双レベルを100消費し全てのアクティブスキルへ【カ特レ】を【特別瞬付】。
【終鎧の呪糸】効果を無視、かつ敵の攻撃の最中であってもスキルを1回使えます。
この際アクティブスキルを使用した行動を『無双撃』とします。
※無双撃で選んだスキルは、チャージ技では選択できません。
レンジ2以内の仲間の無双撃に合わせて無双撃を放つ場合、感情設定に関係なく連鎖行動を取れます。
※上昇条件
・時間経過
・攻撃を当てる、喰らう、回復する等通常の戦闘行動をする
・敵撃破時(倒した相手や数によって上昇量変化)
・味方全体で士気レベルを累積5上昇させる度、全員が50上昇。
※順当に戦闘できれば無双レベルがたまるのは一回きりではありませんが、リプレイ文字数的に描写は1~2回に留まります。
<Irregulars>
パッシブスキルです。今回のみ全PCに自動付与されています。
(メインPC効果)
・メインPCが無双撃命中時、パンドラを5消費することで終鎧に【特殊時限13】を付与可能。付与継続時間内に再度無双撃を当てた場合、時限数値が1減少する。
・終鎧の【時限】が0になった時、終鎧を破壊+全員の無双レベルを100上昇。
(サポートPC効果)
・各PC一度だけ、メインPCに声かけ+該当PCが戦闘している部位を攻撃した時、該当部位で戦う生存中のメインPC数×1(最大3)士気レベル上昇。
<パンドラの加護(全PC)>
このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。
→通常の戦闘結果のパンドラ消費に上乗せして消費されます。
変化しない場合は最小の消費です。また、本シナリオでは士気レベル75以上でいつもの姿のまま強化のみを選択するのも可能となります。
●特殊ギミック
【絶望の檻(サポートPCのみ)】
詳細は巨大終焉獣の関連シナリオをご確認下さい。
今回は士気レベルが30以上あれば全PCに【希望】が付与されます。
それまでは四感を奪われますが、希望の言葉を述べたり思いを形にすることで一瞬だけ【絶望】を解除できます。
【サポート参加】
解放してあります。
メインPC達が巨大終焉獣の体内で戦う間、巨大終焉獣と戦い足止めを行います。
希望を信じる言葉と共に、通常の戦闘プレイングをご提示ください。
(サポートPCはスキル使用に制約はありません)
四感は奪われるかもしれませんが、声だけは必ず届くのでメイン参加PC達へのエールなども可です。
《PL情報(提供者:GM プレイングに際しての参考にどうぞ)》
【主目標のために何すればよい?】
メイン参加PCの皆様は前回を参考にチャージ技、無双撃、対戦相手を指定。
サポート参加PCの皆様は狙う部位やかけ声を決め。
あとは己と仲間を信じて戦うのみです。
リプレイの流れとしては、
1:選択肢機能を用いて選択した相手と3人チームで戦闘+巨大終焉獣足止め
2:イーリンさんと合流
3:狂姫の撃破
を目指す形となります。
最も自分達らしい戦いを連携をもって決めることを意識した方が良い結果に近づくでしょう。
【狂姫】
狂姫とイーリンさんがいる空間への入口は四感を倒せば開きます。
狂姫が討伐されればサポートPCが一人も居なくとも巨大終焉獣は爆発四散します。
【プレイングのススメ】
具体的な戦闘方法に拘っても良いですが、士気レベルによるバフがないとメインサポート全員非常に苦しい戦いとなります。
同時に士気レベルは味方NPCにもバフを与えます。
負けないと誓う心の証明、互いを高め合う言葉、最終決戦に相応しい思いの咆哮が奇跡を引き起こすでしょう。
【イーリンさん】
OPにあるように、魔力がコントロールできない状態となり前半は行動不能です。
(味方NPCの戦闘はGM側で行いますが、本物だったらどんな気持ちでいてくれてるのかな、は想像して良いです)
仲間達が四感を倒し合流してくれたなら、魔力の波を同調してもらうことで立ち上がれるでしょう。
先にNPCが全滅した場合は、狂姫の攻撃に対して身体が勝手に反応し立ち上がるでしょう。
立ち上がった後のプレイングは自由で構いません。
その背に背負った『全員生存』を掴むため頑張って下さい。
【全PC】
連携が売りの騎兵隊、そこに課せられたのは連携と象徴の断絶です。
だからこそ。
敵にも、ここまで走り導いてくれた彼女にも、見せつけるべきものがあるはずです。
・その他
目標達成の最低難易度はH相当ですが、難易度の上昇、パンドラ復活や重傷も充分あり得ます。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
敵本拠地での戦闘です、油断せず戦って下さい。
討伐対象
メインPCの皆様は以下の選択肢の中から自分が狙う終焉獣を指定してください。
サポートPCに選択肢表示されるかは分かりませんが、もし表示されていれば巨大終焉獣の狙う部位を指定することとなります。
【1】味覚:ティストカスタム
遠距離神秘デバッファー&バッファーです。
巨大終焉獣の胸部にある戦闘空間で戦います。
【2】触覚:ダーチカスタム
近距離物理タンク&アタッカーです。
巨大終焉獣の右手にある戦闘空間で戦います。
【3】嗅覚:シィメルカスタム
近~中距離神秘オールラウンダーです。
巨大終焉獣の脚部にある戦闘空間で戦います。
【4】視覚:イサートカスタム
遠距離物理CT封殺屋です。
巨大終焉獣の頭部にある戦闘空間で戦います。
【5】狂姫
イーリンさんはこちらになります。
Tweet