PandoraPartyProject

シナリオ詳細

生きることと見つけたり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●仇討ちの老兵
「たの~もぉ~」
 それは或る晴れた日のこと。
 ローレットの門戸を叩く一人の隻眼の老人が現れた。
「ここが傭兵として働いてくれる、”ろうれっとう”で間違いないな?」
「傭兵というのは語弊があるけれど……報酬次第では色々お手伝いできるんじゃないかしら?」
 その場に居合わせた情報屋、『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が対応すると老人は大きな革袋一杯の貨幣を取り出し、出し抜けに言った。
「これで、我が仇討ちの手伝いをしてもらいたい! どうじゃ、足りるか!?」
 リリィとローレットの受付は顔を見合わせ――話を聞くことにした。


「こちらはタンゼイさん。今回の依頼人になるわ」
 テーブルで対面したタンゼイ老人は、その容姿に見合わぬ気迫があり、場には緊張がもたらされた。
「タンゼイさんは、或る魔物の討伐の手助けを欲しているの。その名は――」
「禍腕(マガツカイナ)じゃ」
 聞くだに恐ろしいその名の魔物に覚えがないイレギュラーズはリリィへを視線を向ける。
「禍腕は幻想北部に生息していると言われる怪物のことね。肥大化した禍々しい黒い腕を振るう三ツ目の怪物よ」
 大人の男性とさほど変わらない体長ながら、巨大な腕によってそのスケールが大きく見えるという。
 なぜ、そんな怪物を相手にするのか。問いただせばタンゼイ老人を眼光鋭く語り出した。
「儂とカルグ――今は亡き友人じゃが、儂らはその昔傭兵として各国を転々としておった。
 傭兵としての力を高めるために、多くの魔物に挑み、そして打ち倒してきたのじゃ。
 次々と強敵を倒し、そして次なる獲物を禍腕へと定めた」
 しかし――タンゼイは悔しそうに歯噛みすると、テーブルを叩いた。
「奴等は恐ろしい程に知能が高かったのじゃ。
 狙われていると気づいた奴等は、儂らのキャンプ地に夜襲をかけ――そしてカルグは奴等に貪り喰われてしもうた……」
 生きたままに食い殺される。あまりにも惨い結末は若かりし頃のタンゼイに復讐の火を灯らせた。
「今でも覚えとる。禍腕の群れの中、一際力強さを放っていた巨躯。カルグを喰らい、儂の左目を奪った大禍腕。
 奴だけは、奴だけは許せんのじゃ。儂が、儂の手で葬り去らねばな――!」
 怒気孕む老人の様子に、言葉をかけることができなかった。
 タンゼイは一つ目蓋を閉じると、今一度鋭き眼光を向ける。
「じゃが儂一人では大禍腕を討ち取ることはできん。
 故に、恥を忍んで頼みに来たのじゃ。
 幻想楽団なる魔種を打ち倒したという、”ろうれっとう”にな」
「報酬は十分な額が用意されているし、禍腕の根城も調査済み。
 あとは――貴方達次第ね」
 リリィが依頼書を滑らし、提示する。
「――我が仇討こそは、死ぬことと見つけたり。
 刺し違えてでも奴の素っ首を叩ききってくれるわ。
 頼む、儂の我が儘を叶える為、力を貸してくれ――!」
 頭を下げる老人と、依頼書を前に微笑むリリィ。
 二人を前に、さてどうしたものか、とイレギュラーズは思案を浮かべるのだった――

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 仇討ちを望む老兵がやってきました。
 老骨の侍は、仇討ちの果てに、何を悟るでしょうか。

●依頼達成条件
 タンゼイ老人の仇討ち完遂

■失敗条件
 タンゼイ老人の仇討ちが失敗する

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起こりません。

●大禍腕(オオマガツカイナ)について
 その三ツ目の大男の両腕は異常なまでに肥大化し、黒く禍々しい色に塗りつぶされています。
 恐るべき豪腕は高いCT値を誇り、一撃瀕死の場面もあり得るでしょう。
 また高耐久であることを良いことに、とにかく前進し相手を押しつぶしていきます。
 かなりしぶとい強敵です。

 大禍腕の周囲には付き従う禍腕が五体います。
 その能力傾向に大禍腕に近しいですが、それほど脅威ではありません。
 禍腕は、大禍腕を狙う者を優先して狙っていきます。

●タンゼイ老人について
 無骨な刀を振るう元傭兵。
 大禍腕によって左目を奪われた隻眼の侍。
 血気盛んで怖い物知らず。戦とみれば我先に飛び込む困った老人。
 仇である大禍腕を前にすれば誰よりも先に刀を振るいに突撃します。
 それなりの強さですが、大禍腕と一対一で戦えば勝ち目は薄いでしょう。
 自らが大禍腕を討ち取ったという実感を欲しています。
 仇討ちが成功したと思わせるには一工夫必要かもしれません。
 
●戦闘地域
 幻想北部にある禍腕の根城になります。
 時刻は零時。
 巨大な横穴の洞窟で、暗がりですが目立つ障害物等はありません。戦闘に集中出来るはずです。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 生きることと見つけたり完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月08日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
銀城 黒羽(p3p000505)
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
レイス・ヒューリーハート(p3p006294)
復讐鬼

リプレイ

●老兵斯く語りき
「主らが、儂の仇討ちに手を貸してくれる”ろうれっとう”の”いれぎらーず”とやらか」
 集まったイレギュラーズを前に、タンゼイ老人が右目を細める。
「おう、よろしくな!
 金払って自分で魔物退治とは、すげぇジジイだな」
 『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)の無遠慮な言葉に「ふん」と鼻をならすタンゼイ。
「儂の依頼はそう甘い物じゃないぞい。
 その若さで命知らずとは、小僧も相当なもんじゃな」
「これでも修羅場はくぐってるんでね」
 軽口を言い合いながら、握手を交わす。
「然りて、此度の依頼の目的をわかっておろうな?
 儂の仇討ち、その手伝いを頼む」
「かつての仲間の仇討ちか、涙ぐましいねぇ」
 『ただの人間』銀城 黒羽(p3p000505)はそう言いながらも、疑問を口に出す。
「ただ……うむ、自分の命を投げ出してまで復讐する必要はあるのかね?」
「なんじゃと?」
「若造の俺が言うのも変だが、命あっての物種だ。
 それに、復讐をしようってんならそれなりの覚悟がいる。
 ただ今までの過去を清算するだけじゃなく、復讐した奴の人生を背負っていく。魔物だろうが何だろうがそれは同じだ」
 復讐――殺すというのはそういうことだという黒羽。
 復讐して死ぬなどという考えは下の下だ。最低だ。黒羽の言葉にはどこか重みがある。
タンゼイ老人は目を伏せ聞き入れると、静かにその片目を開いた。
「若いの。難しいことを考えるの。
 言いたいことはわかる。じゃがな、儂は怖い。生への執着、復讐して生き抜いた先になにがあるのか。そしてそれらは刀を迷わす。
 故に、迷いは捨て、生きることは手放す。
 我が仇討ちは、死ぬことと見つけたり。――つまりはそう言うことじゃ。それを是とするわけではないが、今の儂にはそうするしか道がないんじゃよ」
 想いを語るタンゼイの言葉に、どこか場が暗くなる。雰囲気を変えるように マルク・シリング(p3p001309)が手を叩いた。
「でも仇討ちが上手くいったら祝勝会ですからね。
 もうお店も予約してありますから、ね河津君」
「うむ。酒と料理の美味い店を予約してあるでござるよ。
 いまから終わった後の話をするのもアレでござるが、タンゼイ殿の傭兵時代の話を聞きたいでござるな」
 『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が酒を一杯飲む仕草をすれば、タンゼイは嬉しそうに顔に皺を寄せる。
「かーっ、まったく”ろうれっとう”はそのようなサービスまで仕事のうちなのかっ。
 クク、こりゃ死ぬことと見つけたり、など言っちゃおれんのう」
 美味い酒が好きだというタンゼイは勝利の美酒を想像して、ならばこそ勝たねばならぬ、と笑った。
「まったく調子のよいことであるな。
 猪突猛進の猪武者で介護に苦労しそうではあるが、依頼である以上はしかたあるまい」
「しー! 聞こえちゃうよ!
 きっと、私達が難しく考えないように、調子合わせてくれてるんだよ。たぶん」
 『アマツカミ』高千穂 天満(p3p001909)のぼやきに、『ぷろふぇっしょなる!』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が指を立てて言葉を止める。
「改めて、お爺さんの仇討ちの手伝い、ね。引き受けましょう」
「ほう、こりゃべっぴんさんじゃの。ああ、よろしゅう頼む」
 妖艶な『ナインライヴス』秋空 輪廻(p3p004212)を前に、タンゼイ老人が他の者と変わらぬように握手を差し出す。
 返しながら、輪廻は言葉を続ける。
「但し、私が出来るのは本当に手伝うだけ。
 打ち倒せるか否かはお爺さん次第……そちらもしっかり頼むわよ」
「ふん承知しておるわ。
 まだまだ若いもんには負けられんからの」
 腰に携えた大太刀に手を当て鋭く言葉を走らせる。
 その心には、どんなにふざけても消えることない、復讐への火が灯っていた。
 その心の火を、 『復讐鬼』レイス・ヒューリーハート(p3p006294)は感じている。
(仇討を望む老人か…言わば俺にとって復讐者の先輩にあたる訳だ。
 何より仇討の為にそこまで人生を掛けてきた姿は尊敬に値する。
 タンゼイ老こそ俺の目指すべき姿であろう)
 ならば、手伝うのは当然といえた。先達を助けるのも後輩の務めなのだ。
「微力ながらご助力致そう」
「ああ、宜しく頼むぞい」
 こうして、全員と顔を合わせたタンゼイはイレギュラーズと共に、禍腕の根城へと向かった。自身の武勇伝を語りながら進むタンゼイは、自らの人生を振り返っているようにも思えた。
 時刻は零時。
 月明かりが冴える、よく冷えた夜だった。

●大禍腕との死闘
 その巨大な横穴の洞窟は、暗く静かだった。
 下呂左衛門が先行し、ハイセンスを用いて奇襲を警戒する。松明の明かりが弱々しげに揺れる。
 洞窟の奥、禍腕の食べ残しを発見する。禍腕達はいなかった。
「いないでござるな……」
「情報が間違っているとは思えないね。だとすれば、夜襲を察知して移動した? それとも――」
 マルクが思案を巡らせたとき、下呂左衛門の超感覚がそれを察知する。
「入口側でござる!」
 言葉通り、通ってきた入口側から、禍腕達が現れる。どこに潜んでいたのだろうか? なんにしてもイレギュラーズ達は禍腕の知能を甘く見ていたのかもしれない。
「ふん、やはりな。そう易々と奇襲はさせてくれんか」
 タンゼイ老人が大太刀を抜き放つ。肩に峰を乗せるように構えると、眼光鋭く禍腕達を見やった。
 視線の先――見開いた右目が、その存在を掴み取った。
「大禍腕――ッ!!」
 禍腕の先頭に現れた一際大きな異形。それこそがタンゼイ老人の仇に他ならない。
「みんな、いくよ!」
 タンゼイが飛び込むのを制するようにヒィロが声をあげる。イレギュラーズが武器を構え、タンゼイのフォローへと回る。
 期せずして戦いは始まった。
 タンゼイより先に動いたのは下呂左衛門、マルク、黒羽、レイスの四人だ。
「タンゼイ殿、慌てることなかれ! 冷静にいくでござるよ!」
「わーっておるわい! カエルに促されるじゃ冷静にもなるわい!」
 下呂左衛門の機先を制する言葉にタンゼイが突撃を踏みとどまる。今行けば確実に禍腕に袋だたきにされていただろう。
「露払いは拙者に任せるでござるよ。
 さぁさ、武者ガエル、河津下呂左衛門がお相手仕る!」
 この名乗り口上によって下呂左衛門は三体の禍腕をつり出すことに成功する。
「回復の必要はないからね、僕も攻撃させてもらうよ!」
 後衛より魔力を飛ばし、禍腕に傷を負わせるマルク。声を上げ、傷を付けたことを知らせて、その個体を最優先に倒すことを提案する。
「そら爺さん、フォローしてやるから行きな」
 不倒の闘気を燃やす黒羽は黄金の闘気と発光によって、洞窟内に輝きをもたらす。
 自ら攻撃することはない。だがその輝きは守られる側にとってみればこの上ない力と感じられるだろう。
「異形の怪物。だが四肢があって頭がある。俺にとってはいつもの獲物だ」
 マンハンターたるレイスの精密な射撃が禍腕の目や心臓といった急所を捕らえる。仲間が引きつけている禍腕を狙うダメージディーラーだ。
 そのエスプリ効果から、禍腕には効果的なダメージが期待できる。一撃一撃を大事に丁寧に当てていった。
「行くぞぉォォォ――ッ!!」
 裂帛の気合いと共に、タンゼイ老人が大地を蹴る。
 老人とは思えない爆発的な加速で大禍腕へと肉薄すれば、肩に置いた大太刀を上段から振り下ろす。
 大禍腕はこれを左腕で防ぐ。斬撃は硬い肉に阻まれ期待した効果を発揮しない。
「ぬぅ……浅いか――!」
 斬りつけられた大禍腕が前進する。異形の巨躯はそれだけでプレッシャーを与えるが、大禍腕のそれはあまりにも巨大。
 握りしめた拳を振り上げて、轟音伴う豪腕を振るう。
 迫り来る死の打突を前に、タンゼイは一瞬動きを止めてしまう。それを幻惑のステップを踏む黒羽が庇う。
「――! すまん、抜かったわ!」
「チッ、呆とするんじゃねぇ。
 死ぬんなら、死んでいった仲間の分まで、殺してった奴の分までキッチリ生きてそれから死ね。てめぇだけ楽になろうとしてんじゃねぇ」
「――ああ、わかっとるわいっ!」
 黒羽の叱責にタンゼイは気を取り戻す。
「さあ、こっちだよ! ボクが相手だ!!」
 大禍腕が攻撃されたことで、残る二匹の禍腕が迫るが、それをヒィロが溢れ出る勇気と、やる気満々の闘志をぶつけ、注意を引く。
 これは見事に成功して、二匹をつり上げることに成功する。
「仲間が見事禍腕をつり上げたようであるな。
 であれば、余も力を見せよう」
 天満が立ち位置を変えながら、仲間が攻撃している禍腕を捕らえると、青き衝撃波を打ち出す。
 相手を吹き飛ばす強い衝撃に禍腕が大禍腕から引き離される。
 天満は、そうして幾度となく衝撃波を飛ばし、大禍腕から禍腕を引き離していった。
「カエルもヒィロちゃんも役目は全うしてるな。
 なら、何のことはねぇ、集中攻撃の開始だ!」
 サンディが戦場を駆ける。禍腕の禍々しい腕を潜り抜け、距離を取れば懐より苦無を取り出す。
 そして禍腕達へと毒苦無を投げつけ、毒の付与を試みる。苦無自体のダメージはさしたる物は無いが、この毒が効果的で、禍腕達を苦しめることになる。
 サンディはさらに禍腕の位置取りが、味方を巻き込まないと見れば、SKOZ(そう来ると思ったぜ!)と、『ぶつけると爆発するワイン瓶』を取り出し投げつける。
 爆音とともに広がる衝撃が禍腕達に確かなダメージを与えていった。
「あれが大禍腕……ね。
 確かにあの巨大な両腕で押し潰されたら、お爺さんは一溜まりもないでしょうね」
「かーっ! わーっとるわい!
 で、なにか手はあるのか?」
「ええ、もちろんよ。
 お爺さんが潰されるようなことにはならないわ」
 タンゼイを庇う輪廻は、そういうとどこからともなく茨を呼び出して全身を覆う。茨の鎧は輪廻を守り、蝕み、触れる者を傷つける。
 そうして、大禍腕の豪腕をその身を盾に受け止める。叩きつけられた拳に、輪廻の身体が浮く。だが同時に茨が大禍腕の腕を蝕み刺突となってダメージを与える。
「お、お前さん方、そんなことをしてれば無事ではすまんぞ!?」
 タンゼイを庇い続ける黒羽と輪廻にタンゼイが声を上げる。だが――
「……良い?
 お爺さん、貴方は私達に何があろうと必ずアレを仕留めるの。
 私達が命懸けでサポートしてるのだから、後々満足出来なかったとか言わせないわよ?
 常に前だけ見て全力を叩き出すのよ」
「くっ……。ええぃ承知した!
 主らの覚悟に応えて見せるぞ――!」
 タンゼイが大太刀を構え突撃する。
 大禍腕、そして禍腕の立ち位置、戦況は大凡イレギュラーズの想定した通りとなっていた。
 なによりも禍腕を下呂左衛門とヒィロの二人が敵視を稼げたのが大きい。大禍腕とタンゼイの邪魔をさせることなく、維持することが出来ていた。
 そして、タンゼイを庇う二人。黒羽と輪廻の圧倒的な闘志。これが圧倒的な破壊力をもつ大禍腕の攻撃をして、崩されぬ壁となって立ちはだかっていた。
 二人合わせて実に三十ターンにも及ぶ長い時間を耐え凌ぐ。それでいて彼、彼女らはパンドラの輝きすらも併せ持つ。
 然しもの大禍腕もこの不死を思わせる二人に圧倒され恐怖すら覚えるだろう。その隙をさすが歴戦の傭兵たるタンゼイ。片目を失ったとしても変わらぬ動きで、大太刀を振るい大禍腕の分厚い肉を削ぎ落としていく。
 禍腕は耐久性に優れる魔物だ。
 本来であれば、大禍腕はここまで追い詰められる前に相手を蹂躙しているはずだった。
 現に禍腕の方を受け持つイレギュラーズは、若干の火力不足も相まって、いまだ全てを倒すまでには至っていない。
 当然受け持っていた二人もただでは済まない。すでにパンドラの輝きに縋っていたし、体力的に戦闘不能も近いだろう。
 禍腕のボスである大禍腕相手にこうもタンゼイ老人が善戦できたのは、一重に黒羽と輪廻による決して倒れることの無い二枚盾、そして取り巻きを受け持つメンバーの役割分担がしっかりと出来ていたからだろう。
 また、そんなイレギュラーズを支えるマルクの力も忘れてはならない。一人回復手として治癒の魔術を行使する彼の活躍なくして、この戦術は成り立たないのだ。
 追い込まれた禍腕達が我武者羅に暴れ出す。
「くっ……鼬の最後っ屁という奴でござるな!」
「攻撃されても無視して殴りつけてくるなんて、もうめちゃくちゃだよ!」
 禍腕の死にものぐるいの攻撃に膝をつく下呂左衛門とヒィロ。
 よくぞここまで耐えたというとこだが、限界はやはり向かえてしまう。
 だが二人の頑張りに応えるように、サンディ、天満、レイスの攻撃が次々と禍腕にヒットしていく。
「さぁこれで終わりだ――!」
「その位置……もらった!」
 サンディの投げたワイン瓶が爆発し、二体を巻き込むと、一体が絶命して倒れる。残る瀕死の一体を、逃すこと無くレイスが射撃し、止めをさした。
「さあ、最後の仕上げだよ。タンゼイさんがんばって!」
 マルクがタンゼイへと声を掛ける。
「ジジイ、がんばんな!」
 サンディの勇猛な戦いぶりは確かにタンゼイの戦闘士気をあげた。
 大禍腕の足下に銃弾が飛ぶ。レイスの足止めだ。
「復讐を――成し遂げてくれ」
 同じ復讐を志すものとして、その最後を見届けようと、しかと目を凝らした。
「拙者ら八人、全員合わせてもかつての相棒には及ばぬかもしれぬが、タンゼイ殿の戦友でござる。だから、全員で、勝利をつかむのでござるよ」
 太刀を支えに立ち上がる下呂左衛門の言葉にタンゼイは背を押される。
「お爺さん、行けるわね?」
「爺さん、ここまで来たんだ、生きて見せろ」
 輪廻と、黒羽の言葉を受けて――イレギュラーズの思いを受け取って――タンゼイは「カッ」と笑った。
 重心を低くし、右肩に乗せた大太刀を握りしめる。
「我が、仇討ちこそは、死ぬことと見つけたり――
 然りとて、我を支えるは、生きる者なり、か」
 一つ呼吸を整え右目を閉じる。疼く左目、そして脳裏を過ぎるカルグの死に様。
 今、自身の中に燦然と燃え上がる復讐の炎が揺らめいた――!
「我が、仇討ちこそは――」
 大禍腕が迫る、叩きつけられる両腕の一撃を、目を見開いたタンゼイが刹那の呼吸で身を疾駆させ紙一重で躱すと、大禍腕の首元まで跳ね上がる。
 力を溜め続けた肩に乗せた大太刀が袈裟斬りに振るわれる。
 洞窟内に響き渡るほどの音を立てながら血が噴き上がる。
 渾身の力を籠めた一撃はまさに一刀両断。巨大な大禍腕の肩口から硬い肉を切り裂いてその刀身は心臓を切り裂いていた。
 ぐらりと、大きく揺れて、大禍腕が倒れていく。
 タンゼイ老人は肩で息をしながら、その光景を然りと目に焼き付けた。
 絶命した大禍腕の血が溢れていく。
 ここに、老兵の悲願、友と左目を奪った仇敵を討ち果たすことが相成ったのだ。

●生きることと見つけたり
「乾~杯!!」
 戦い終えて、イレギュラーズは祝勝会へと参じていた。
「改めて、僕たちにこの仕事を依頼してくださり、ありがとうございます。
 おかげで我々は危険な魔物の存在を知り、こうして討伐する事が出来ました」
「何を言うか。礼を言うのは儂の方じゃ。大変世話になったのう」
 タンゼイの言葉にマルクは一つ頷き言葉を続ける。
「皆で大禍腕を倒し、脅威を排除できた。この成果こそ、タンゼイさんの果たした『復讐』だと、僕は思います」
 復讐がなにも生み出さないとは、マルクは思わなかった。
 けれど、仇討ちを終えたタンゼイに、生を諦めては欲しくなかった。
「仇討ちを行えて、今はどんな気持ちだ?」
 それはレイスが感じたい想いだろうか。感想を聞くのは少し怖かった。
「……そうじゃな。
 最初は興奮。成し遂げたという喜び。でもなすぐにそれらは消えて、亡くした者への想いが溢れてくる。取り返すことは叶わんという、そうある種のむなしさじゃな……」
 言葉を聞いて、レイスが抱えてた不安が零れ出す。
「俺は……ある魔種を追ってる。村を壊滅させ……妹を魔種にした憎き敵。
 俺は復讐者を自認してるが……未だ力は足りず、こんな俺でも仇は討てるのだろうか……」
「なぁに、お前さんはまだ若い。若さは武器じゃ。
 強くなれ。それこそが最善じゃよ」
 強く。その言葉を握りしめる。
「なーに難しい話してるの! 楽しまなきゃだめだよ! はい! かんぱーい!」
「ヒィロ殿ははしゃぎすぎでござるな」
「天満ちゃんそっちのとってくれ」
「余は神であるぞ。ちゃん付けで呼ぶでない」
 わちゃわちゃと、賑やかに祝勝会は進む。
「楽しいわね」輪廻が微笑む。応えるように黒羽が目を細めた。
「感謝するぞ。”ろうれっとう”の”いれぎらーず”。お主達のお蔭で儂の仇討ちは相成った。
 ――嗚呼、よかった。本当に……よかった」
 不意に流れる涙を拭わずに、タンゼイは嗄れた顔を綻ばせる。
 死んでも、死ぬまで、続けようと考えた仇討ち。
 然りとて、視線の彼方に広がる流転の空は、生への実感を魂に感じさせる。
 ああ、そうか。タンゼイは得心する。
 最後の一撃。仲間達に支えられたあの一撃は、生きるための一撃だ。生きて全てを背負い実感する。この想いを得るための戦いだった。
 ならば、そう――
 我が、仇討ち(人生)は、生きることとみつけたり――


成否

成功

MVP

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。

まさか倒れない肉壁が二枚もあるだなんて大禍腕さんも流石に泣いちゃいますよ。
しっかりと特性を活かした作戦に脱帽です。素晴らしい。
タンゼイ老人も思想を変えるくらいには満足したようですよ。

MVPは悩みましたが今回は総合判断でヒィロさんに贈ります。
庇い役の二人には同じものですが称号を贈らせて頂きます。

依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングありがとうございました!

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