PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<崩落のザックーム>ちょっとだけ最強で迷惑な花咲か一味

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●荒れ地に花を咲かせましょう
 傭兵(ラサ)南部に広がる砂漠地帯、通称『南部砂漠コンシレラ』。
 ここ数年のイレギュラーズ達の活躍もあり、覇竜領域との交易路としてより知られるようにはなってきては居るのだが。
「おーい婆さんや。このかめに貯めといた水はどうしたかのう?」
「もうお爺さんったら。昨日最後の分を飲んでしまったでしょう?」
「おお、そうじゃったそうじゃった。早く汲みに行かんとならんなぁ」
 人間の認識が変わっても変わらぬ本質がある。
 それは砂漠という厳しい自然環境に他ならない。
 点在するオアシスを拠り所として集落を作り生活を送る者達にとっては、水や食糧の問題は中々切っても切り離せない問題であった。
「前はよく家へ手伝いに来てくれていた若者が届けてくれていたんですけどねぇ」
「そういえば、最近彼の姿を見ないのう」
「なんでも、近くの荒れ地を耕して植物の栽培だかを始めたらしいですよ」
「植物とな? はー大したもんじゃな。こんな土もない砂だらけの場所じゃ大変じゃろうに」
「なんでもそういう植物を育てるのが得意な方がこのあたりに来ているそうで。
 その方の元へ行く時のあの若者の顔といったら。
 お婆さん達のために頑張る、なんて言ってくれた時は嬉しかったもんですよ。
 ただまぁ、ありがたいんですけどねぇ。その作業が忙しいみたいで全然顔も見せてくれなくなって」
「ほっほっほ。今はいつにも増して騒がしい世の中のようじゃからな。
 若者は未来へ夢を見とるくらいが丁度いいんじゃて」
 よっこらっしょ、のかけ声と共に、膝へ手を当て渾身の力を届けることで立ち上がる。
「ふぅ、儂も負けてられんわい」
 そして水かめを手にすると、ゆっくりとオアシスへの旅支度を始めるのであった。

~~~

 一方その頃。
 集落やオアシスから少し離れた荒れ地では、集落出身の8人の若者と不思議な3人組
が作業をこなしていた。
「すみません奥さん! ここ、中々鍬が入らなくて……」
「ったく、しょうがないねー」
 呼びかけられた女性らしき人影は、若い青年を押しのけると勢いよく獲物を振り下ろす。
「キエエエエイイイ!!」
 地面に打ち込む強烈な一撃。砂漠には似つかわしくない麦わら帽が激しく揺れる。
 それほどの威力を持って命無き土地へ突き刺さる鍬は、めり込んでいた大きな岩を弾き飛ばした。
「いやーさすが奥さんだ」
「あたしゃ最強の農家だからね。いいかい、腰の入れ方と気合いの込め方がコツなんだ。分かったね」
「はい!」
 若者の目はまるで幼き日に絵本の勇者へ向けたものと同じように。
 砂漠の開拓者となるこの存在への尊敬の意志を湛えていた。
「さぁみんな、食事が出来たよ」
「おっ、おじさんの特製スープ、楽しみに待ってたんですよ!」
 若者達の内、3人は嬉しそうに駆け寄るが。
(げぇ。おじさん良い人だけど、飯だけは死ぬほど不味いんだよなぁ)
 残りの5人は僅かに後ずさる。
「お兄ちゃん達、食べないの?」
 その後方を塞ぐように位置取り、子供のような人影が問いかける。
「あ、ああ。えっとほら。昼は集落にいるお年寄りの面倒を見る事になっててよ。
 そのついでに一緒に食べることになってるからよ」
「ふーん、そうなんだ」
 5人の若者は何とかその場をやり過ごすと、パカダクラに乗り集落へと向かう。
「お前ら、早く帰ってこいよ」
「分かってるって。お前こそ、たまには仲良かったあの老夫婦のところ、顔出してやれよな!」
 友人達を送り出し残った若者3人は、スープを囲みながら不思議な3人組と食事を続ける。
「それにしても、貴方達がここへ来てくれて助かりましたよ!
 この農地が完成すれば、きっと俺達の集落ももっと豊かになれる!」
「いやいや。あたしらも砂漠に一杯種を植えたかったからねぇ。好都合だったんだよ」
「種を沢山? 植物がお好きなんですね?」
「ああ、好きさ。特にあの花がねぇ」
 最強の農家を名乗る人影に促される形で見やれば、先日田畑の開墾作業よりも優先して作られた花壇と、そこに咲く色とりどりの花々が見えた。
「ほうせき、って言うんですよね。石の宝石と同じで、綺麗だなぁ。
 最初はこんなもの、なんて思いましたけど、心が和むのも大切ですもんね」
「そう。『滅石花(ほうせき)』はあたし達の宝物さ。
 こんな砂だらけで何にもない土地でも花が咲けば意味が生まれるからねぇ」
 そして緑が増えたなら。
 新しい世界が始められるから。
「さ、沢山食べたら仕事再開だよ! 砂漠全部に花を咲かせるんだからねぇ!」
「「「はい!」」」

ーーー

※1分で分かるOP

●1(PC情報(老夫婦会話)+PL情報(農地会話))
 砂漠の集落から少し離れた所で農作業をしている団体がいるぞ!
 団体は集落を豊かにしたいと願う熱心な若者3名とその友達の若者5名!
 それに加えて、彼らに開墾作業を教えている最強の農家とその連れ2名がいるぞ!
 農家は田畑を作るよりも滅石花『(ほうせき)』と呼ばれる綺麗な花を育てたいみたいだぞ!

GMコメント

●目標(成否判定&ハイルール適用)
 『滅石花(ほうせき)』を全て焼き払う
●副目標(一例。個人的な目標があれば下記以外にも設定可)
 寄生終焉獣から若者達を助け出す
 不毀の軍勢『最強の農家一味』の撃退

●冒険エリア
【ラサ内、南部砂漠コンシレラの某地】
 現在絶賛開墾中の荒れ地+農地3km四方程度(以後「荒れ地」表記)

●冒険開始時のPC状況
 基本的にオアシスを拠点として築かれた砂漠の集落にて、荒れ地開墾に関する噂を聞きつけやってきた所からスタートします。

《依頼遂行に当たり物語内で提供されたPC情報(提供者:村の老夫婦 情報確度B)》
●概要
 最近こんな砂漠にも関わらず農地開拓を試みている若者が増えてきた。
 良いことだなーとは思うが最近熱心すぎる者もいるようなので少し心配。
 どうやらたまたまこのあたりを訪れている『最強の農家一味』が関係しているらしいので様子を見てきて欲しい。

●人物(NPC)詳細
 特筆すべきネームドNPCは無し。

●敵詳細
【小型終焉獣】
 黒い豚のような個体。美味しそう(?)ですが、倒すと消滅するので食べられません。
 数は16。
 荒れ地に作られた田畑や花壇を守っており、犬やサソリといった害獣を追い払っています。
 (勿論、皆さんの事も害獣認定してきます)
 攻撃手段は突進と鼻先で掬いあげるようなもの(どちらも【飛】有)のみ。
 とってもかしこい(笑)ので狙った相手をどこまで追い続けます。
 それが大事な作物の上であってもです。

【寄生型終焉獣】
 若者3名の体内に寄生しています(寄生されていない若者も5名います)。
 (寄生対象からは滅びのアークの気配が漏れているので皆さんは直感的に分かります)
 特定のアイテムを所持し願う(パンドラ消費)またはアイテム使用で解放できます。
 不殺なし=寄生解除を試みず撃破した場合『石となり華を一輪咲かせて崩れ落ちていきます』。
 ※【寄生】の解除※
 寄生型終焉獣の寄生を解除するには対象者を不殺で倒した上で、『死せる星のエイドス』を使用することで『確実・安全』に解き放つことが出来ます。
 (体内にスープで溜まった滅びのアークも消し飛びます)
 また、該当アイテムがない場合であっても『願う星のアレーティア』を所持していれば確率に応じて寄生をキャンセル可能です。(確実ではない為、より強く願うことが必要となります)
 願う星のアレーティアを用いても解き放つことが出来なかった場合は『滅びのアークが体内に残った状態』で対象者は深い眠りにつきます。

【不毀の軍勢】
 個人的にギャグ要員化が否めないご存じ最強(笑)の皆様。
 若者達を指揮して開墾作業に打ち込んでいます。アットホームな職場です。
 『最強の農家一味』を名乗る個体が3体、イカしたメンバーを紹介します。
・最強の農家:鍬を使った耕しに自信を持ちます。人間でも畑でも何でも耕します。
・最強の主夫:農家を支える事が生きがいです。採れたて野菜のスープをぶっかけて仲間を癒します。
       (滅びのアークの煮汁的なものです。触れたくないですね)
・最強の跡取り:農家と主夫の子供のように振る舞います。若者から見れば可愛い弟です、仲良し。攻防対応オールラウンダー。

●ステージギミック詳細
 特になし

●エリアギミック詳細
<1:荒れ地と農地>
 砂漠のオアシスが如く、荒れ地の真ん中に農地があるイメージです。
 (農地に使われている水はオアシスのものを持ち込んでいますが、長時間触らない方が良いです)

<2:田畑と花壇>
 田畑は、現実世界でいうお米が実るあれそのものです。
 農家一味が頑張って耕しました。足を踏み入れると泥なので動きが鈍ります。
 花壇は、滅石花と呼ばれる『滅びへの種』から育った花が植えられています。
 色とりどり咲いていて綺麗ですが、花壇の回りの土は干からびています。
 花からは花粉のようなものが出ており、滅びのアークの気配を感じます。
 ※若者達は滅石花を綺麗な花、くらいにしか思ってません。

<全般>
光源:1・2問題なし
足場:1問題なし 2注意
飛行:1・2問題なし
騎乗:1問題なし 2注意
遮蔽:1・2なし
特記:特になし

《PL情報(提供者:GM プレイングに際しての参考にどうぞ)》
【主目標のために何すればよい?】
 危なそうな花をこの世から滅しましょう。
 燃やす引っこ抜く踏み潰す、何でも良いですよ。
 若者が悲しむ目を無視できるのであれば(暗黒微笑)

【滅石花】
 綺麗な花ですが、そういうものにはアレがあります。
 一応花は持ち帰れますが、引っこ抜いたら暫くして枯れるでしょう。
 少なくとも花壇からは完全に消し去る必要があります。
(主な敵は終焉獣や不毀の軍勢ですが、世界にとって一番厄介なのはこれです)

【若者】
 操られている3名もですが、残りの正気を保つ5名も頑張って開墾作業をしました。
 それを荒らされたら当然怒りますが、お話上手な方が事情を話せば分かってくれるでしょう。
 もしくは友達の中から終焉獣が剥がれ出たり友達が石となって崩れ落ちれば、現実を見てくれそうです。

【農家一味】
 開墾にプライドを持ってやっていますが、現状の戦闘能力は皆様と比べてしまうとからきし駄目です。
 普通に戦っても良いですが、農地作業等で『分からせて』も逃げ出します。

・その他
目標達成の最低難易度はN相当ですが、行動や状況次第では難易度の上昇、パンドラ復活や重傷も充分あり得ます。

【余談】
本作は魔女ファル夏……ファルカウ様が「とりま、世界滅ぼそうぜツアー」を企画され生まれた散発連動シナリオ群のひとつです。
GM陣一同真心を込めて滅ぼしますので、興味を惹かれたシナリオがあれば是非参加して世界を救って下さいね。

  • <崩落のザックーム>ちょっとだけ最強で迷惑な花咲か一味完了
  • GM名pnkjynp
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
冬越 弾正(p3p007105)
終音
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ

●寄り道の先に憂いあり
 南部砂漠コンシレラ。
 一行はその広大な砂の海に点在する一つ、名も無き集落を訪れていた。
 元々終焉獣の被害が覇竜領域に及んでいないか、調査へ向かう道中の休息程度と立ち寄ったのだが。
 出がけにも関わらず招き入れてくれた老夫婦の家で奇妙な噂を耳にする。
「荒れ地の開墾とは中々良いことをしているように聞こえるが……皆はどうみる?」
 『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が問いかける違和感。
 それは知識を渇望する故に何かと思慮が働く『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)にも過ぎったものだ。
「植物を育てるにしても、砂漠のど真ん中から手をつけるなんてちょっと変な気がするよね。その農家? って名乗る人達の育ててるのがとんでもない代物じゃなきゃ良いけど」
 頷く『終音』冬越 弾正(p3p007105)もまた思うところがあった。
「俺も態度が急変したという青年の話が気になる。こうして厄介になったご夫婦からの頼みでもあるし様子を見に行きたい」
「オイラは賛成。シューヴェルトさんは?」
「君達に同じだ。貴族騎士としてどんな小さな声も見過ごすつもりはない」
 そこへ老夫婦の代わりにオアシスまで水くみへ行った『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)、『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)、『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)も丁度戻り。
 同じ事を尋ねれば、全員が快く同意した。
「よっしゃ。それじゃあうまい飯でも喰わせつつ話を聞かせてもらおうぜ!」
 調理場を借り、老夫婦の昼食と自分達の旅の賄いを作っていた『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)の準備も整ったところで、一行は荒れ地へ向かい出立する。

~~~

「あ、あそこじゃないでしょうか!」
 教えて貰った方向へ進むこと暫く。
 涼花が指し示す先には中々の田畑、そして綺麗な花の咲いた花壇が幾つか見える。
「あたしも領地で麦とか葡萄育てたりするんすけど、こんな砂だらけの地を開墾するなんてすごいっすね! 農業の腕は確かみたいっす!」
 ウルズの言う通り、傍目には至極真っ当な開拓に思える光景だ。
 だが近づくにつれ、花壇の花から零れ出す滅びのアークの気配に一行は警戒を強める。
「チャロロさんの推測は残念ながら当たりのようだね。もしこの花が終焉勢力の策略なら、自然と人の営みに溶け込んだ上で滅びのアークをバラ撒けるってことになる。まだここで済んでるうちに何とかしないとね」
「ああ。開墾に挑むのは素晴らしい事だが、それで育てるのが滅びの花では本末転倒だからな。何とか止めさせたいところだ」
「放置するのは拙そうですしここで根絶やしにしないとですけど、おじいさんの言っていた若者さん達も放ってはおけないですよね」
 若者の安全確保と花の処理、どうやら為すべき課題は多そうだ。
 雲雀やイズマ、涼花を筆頭に皆が対応を検討する中、ウルズが大きく手を挙げた。
「後輩いいこと思いついたっす! 要は状況把握と花の処理を一遍にできれば良いんすよね? 先輩方も良かったら協力してほしいっす!」

~~~

 作戦を摺り合わせ農地へと乗り込んだ一行。
 田畑が広がる中心区域では若者達八名とラサらしからぬ農家スタイルの人型が三体、田畑へオアシスの水を注ぎ、柔らかくしたところへ鍬を打ち込んでいる。
「ほら若人、気合い入れな! 最強の農家の教えを受けてるんだ、アンタらなら出来るよ!」
(最強を顕示する態度にこの気配……不毀の軍勢だよね?)
 聞こえた声から最近お騒がせな存在がいると気づいた雲雀であったが、予想の斜め下を行く最強ぶりには流石に困惑を隠せない。
 とはいえ付近の若者の数名から漏れ出す寄生終焉獣の気配も感じ取り、気を引き締める。
「こんちはーっす」
「なんだいアンタら? 見ない顔だねぇ」
「あたしら旅商人とその護衛なんすけど、向こうの集落で砂漠に花咲かせちゃうすごーい人達がいるって聞いて、見に来たんすよ! ね?」
「ええ、そうでございますとも! こんな砂漠でも品質の良い野菜が取れるというなら、見逃す手はありませんからね!」
 ウルズに促される形で前に歩み出たのは『ジュムア・アズライール』。
 とある一件で弾正に助けられた旅人で、現在は主にラサで真っ当な商売をしながら生計を立てている。
 元々今回の旅にはオアシスに立ち寄れない場合の補給係として同行しており、後ろでパカラクダが牽く荷車には大量の物資。
 そして何よりも彼は立派な商人。接客を応用した演技で裏は無いと信用させる。
「我らがジュムア殿の希望もあるんだが、集落の老夫婦からも頼みを受けたんだ。君達が忙しいようだから、早く戻れるよう手伝って欲しいとな。というわけで作業は変わるからこっちで少し休んでてくれ」
「差し入れも持ってきてやったぞ。ほら、冷める前に喰っちまえよな!」
 気取られぬよう、かつ迅速に。
 弾正と牡丹は寄生されていない若者達をさりげなくこちら側へ引き寄せる。
「困るよ! この子らはさっき昼食休憩を終えたばかりだ。それに早く田おこしを終わらせないと一番成長に良い時期を逃しちまう」
「先の予定まで考えて作業を組み立ててるなんて、流石最強の農家さんっすね!」
「いやぁ、それほどでも……あるけどねぇ?」
 ウルズのおべっかに気を良くした様子の農家。
 ならばとチャロロ、シューヴェルトが仕掛けた。
「じゃあ早速オイラが手伝うよ!」
「僕も手を貸そう」
「ああちょっと、急に田んぼに近づいちゃ駄目ですよ!」
 農家の隣に立つ主夫風の人型が止めようとするも既に手遅れ。
 駆け寄るチャロロを畑を荒す害獣と認定した黒い豚を模した終焉獣が襲いかかる。
「ブヒィィィ!!!」
「うわぁ、豚さん驚かせちゃった!? ごめんよー!」
 慌てふためき、そのまま勢いで田畑へ入り込んでしまうチャロロ。
 だがそれも演出で、機械の身体が持つ能力を活かし泥に入り込まぬよう浮遊。
 そのまま逃げ回るようにして、田畑を荒しつつ花壇まで豚を誘導する。
「あ、そっちには行かな――」
「申し訳ない。今僕が止めるから、君はちょっとそこで黙って待っててくれるか?」
 行かないで。そう言おうとした子供風の人型も、鋭い眼光のシューヴェルトに凄まれたことで足止めを余儀なくされ。
「豚さん、どうか落ち着いて下さいー!」
 状況に混乱する若者達も、涼花のギターの演奏を通じて伝わる『何とか止めようとする』気持ちに、ただの事故だと納得させられた。
「そういえばこの花、見たことがないがどんな花なんだ? 随分綺麗だがこれも食用なのか?」
「違いますよ! これは『滅石花(ほうせき)』と呼ばれるもので、奥さん達が作業する僕らの心を癒してくれるために用意してくれたんです!」
 触れようとするイズマを遮るべく熱血漢な一人の若者が花と彼の間に立ち説明する。
「なるほど、確かに癒されるよな。だがまさか最強の農家さんがその為だけに花を植えるとは思えないが……ああ、そうか。これは焼畑農業の準備か!」
「焼畑農業?」
 今度はイズマが若者に答える番。
 話しながらゆったりと移動する彼の動きに視線が取られている隙を狙って、雲雀もまた若者の背後へと回り込んでいく。
「作物を栽培した後の農地を焼くことで、生じた灰や温度変化を用いて土壌の改良を図る手法だ。現環境でこれだけ綺麗に咲ける花の灰ならば、きっと良い肥料となるだろうな!」
「そんな方法が!? でも奥さんはこれを宝物だと……」
「そ、そうさ! その花はあくまで、こんな土地にでも花が咲けば価値がある。そういう意味を持たせて植えた大切なものであって――」
 余計な事を言われる前に、弾正が続ける。
「なるほど。花が咲くはつまり、人心の癒しと土地の価値を証明する美しき希望となるわけか! それを宝物に例えるとは、君達の師は作詞のセンスも持ち合わせているんじゃないか」
「そうだったのかよ~。でもそうなら最初に言って欲しかったぜ、おばちゃん。折角育てたのに焼いちまう運命だったなんて……何かもの悲しいじゃんか」
 別な糸目の若者がぼやく。
 その悲しそうな声色に罪悪感を覚える弾正。
 優しく肩へ手を添え自身の方に引き寄せるも、決して言いくるめを止めはしない。
 何かを信じたい、すがりたい。
 そうした思いは時に、危険な願いを抱きしめ続ける結果を生む。
 自身のこれまでと通じる部分を若者達に感じるからこそ。
 目の前の命から終焉の気配が漂うからこそ。
 これを放置した先に待つより悲しい運命を否定せねばならぬのだ。
「それに大切な花なら、種も当然残してあるっすよね? なら全滅することはないっすから是非やるべきっすよ! 農家さんの腕とちゃんとした土地があれば、この綺麗な花を砂漠全部に咲かせるのだって、きっと夢じゃないっす! あたし達もラサの人達も、きっとこの花をもっと見たいっす!」
 会話の流れに不穏が漂えばすかさずウルズがアシスト。
 かつて何百何千という嘘を貫き通し真実へと変えてみせた腕の見せ所だ。
「あ、いや、だから、その、ねぇ……」
 掛け違えられていく言葉のボタンにタジタジとなる農家。
 語るよりも背中で教える方が性に合っている性格は言い合いに向かないが。
「そう花を焼く事に拘らずとも良いのではないですか? 現に僕達の手だけでこうして田畑は開墾されつつありますし、花だけでなく土地も焼いてしまうのであれば、折角ここまで進めた米作りの悲願達成は更に遠ざかる事となる。再考の余地があるように思いますが」
 眼鏡をくいっと。
 寄生された最後の若者が代わりに立ち塞がる。
「……まぁ、なんだ。アンタらのやり方にいちゃもんをつける気はねぇが、ある程度効果が出てる今こそ、立ち止まり振り返るのも大事なんじゃねぇか?」
 相手が理論で来るなら、現実そのものこそが一番の武器となる。
 牡丹は手近な花壇から土を無理矢理掴み出すと若者へ突きつけた。
「見ろよこれ。花が咲いたは良いが、周りの土は干からびて死んじまってるぜ? こんな貧相な土で米作ったって、収穫できても一回くらいじゃねぇか。そうなってから後悔するよりも、今のうちに手を打った方が賢い選択だと思うがな」
 イレギュラーズである牡丹には、この枯れ具合は花から生じる滅びの花粉によるものだと察しがついていた。
 故に若者達の農法が至極真っ当だとしても、本来は関係のない事柄。
 とはいえ使える事実であることに変わりない。
「それは、否定しきれませんが……」
「なぁ。この人たち、行商中なのにわざわざ差し入れ届けて手伝いに来てくれてんだぞ。折角アドバイスされてるんだから、少しくらいやってみないか?」
 寄生されていない友人の説得に、若者の心は揺れる。
 何故こうも花を守らなければいけない気がするのか。
 胸に妙な靄を感じつつも、最後は眼鏡の若者も牡丹に道を譲った。
「さて、準備はもう十分だろう」
 イズマが愛用の細剣『メロディア・コンダクター』を抜き放つ。
「ここからは焼畑の時間だ!」


●ちょっとだけ激しくて有意義な焼畑農業
 イズマの一言が引き金となって、一行はそれぞれの為すべきを為すため動き出す。
「少し痛むかもしれないけど……我慢してもらうよ!」
 先陣をきったのは雲雀。
 咒法により感覚を強化すると、熱血漢の若者の背後から周囲の寄生された若者や農家を狙い神気に満ちた輝きを放つ。
「ぐあーっ!?」
「こ、この力……アンタらイレギュラーズだね……!」
 雲雀もそれなりに手心を加えたとはいえ、歴戦を戦い抜くイレギュラーズとただの若者では地力が違いすぎる。
 熱血漢な性格が、糸目が、眼鏡が特徴的な若者達が気を失って倒れ。
 若者達にとって尊敬すべき存在である農家の母は、彼の魔力を前に動きを封じられ、連鎖したウルズに組み伏せられる。
「なっ、お前らいきなり何するんだ!」
 信じた瞬間の手のひら返しに、先程説得に加わってくれていた者を中心として若者たちが抗議の声を上げる。
 その勢いのまま止めに入ろうとするが、涼花が身体を張って食い止めた。
「今の皆さんには、友人が辛い目にあっているように見えるかもしれません! でもそれは真実じゃないんです……最後までその目で見つめてもらえれば、きっと分かりますからっ……!」
 若者が友達を心配する心、それは優しさを知る者であれば誰しも相応の推測は出来るであろう。
 だが『涼花』は。
 あの日突如召喚され真実を見続ける事が、守る事が出来なかった彼女には。
 その気持ちだけは絶対に守りたいと思えたから。
 終焉の使徒がもたらす偽物の希望に、惑わされたままにはしておけなかったから。
 思いのこもった言葉は歌声のように響き。
 純なる感情を若者達の耳に、心に伝えていく。
「ブヒィィィ!!!」
「豚さんこちら、武器鳴る方へ~!」
 主人達のピンチ。本来なら頼みの綱となる家畜達はチャロロの武装――機煌重盾と機煌宝剣がぶつかり合う音にくびったけだ。
「よし、いい子だね」
 全員の注意が惹けたことを確認すると、チャロロは残りの武装も展開。
 花壇の上で花を踏みつけるように立ち、盾を構えた。
「ほらほら、まとめてきていいよ! もっともオイラの防御はそう軟じゃないけどね!」
「ブッッヒィィィ~~!!!」
 全力突撃。
 花壇が、花が弾け飛び。
 けれどチャロロの壁は、若者を守らんとする守護者は砕けない。
「もう終わり? それじゃあ、こっちの番だ!」
 今度は心の炎を、カムイの一撃と化して跳ね返していく。
「農家、今助けるぞ!」
「農家母! 主夫父!」
 残る二体の最強も、仲間を守らんと動き出す。
 それは友への信頼か、各々の『最強』を維持するためのパーツを守る為か。
 如何にしても。
「僕はあらゆる声を否定しないつもりだ。だが終焉の者……君達の声が善良なるものを惑わすのだとしたら、それは守るべき声ではなく呪いだ! ならば僕の呪いで貫いてやる!」
 シューヴェルトの『鬼士』となった一撃の。
「苦しい地でも、強く真っすぐに生きようとする人々の心。それを利用するやり方は気にくわない!」
 イズマの全身全霊の闘争の前に、為すすべもなく灰となる。
「あんたー! 小倅ー!」
(うーん、なんかやりづらい個体っすね……)
 押さえつける下で泣き叫ぶように見える農家。
 これまで確認されている不毀の軍勢は必ず人型取っているが、抱いた最強の影響を受けそれなりに化け物じみたルックスに思える場合も多い。
 だがこれは見た目だけなら何処から見てもこの道三十年の農家だ。
 しかも小規模とはいえ砂漠に農地を拓いた技術と努力を思えば、植物生育の難しさを知るウルズには多少の情も沸くというもの。
 もしもこれが滅びのアークそのものである終焉獣、その一形態でなければ。
 そして滅びの花を増やすような個体でなければ。
(罪を償ったり改心できるような存在なら、うちの畑でも耕せておきたい所だったっすけど)
 近々大切な二人を迎えに行こうという時期でもあるウルズに、そんな危険は犯せなかった。
 ならせめてもと、彼女自身の手で引導を渡す。
「よし、後は寄生終焉獣だな」
 最強の一味が消え去ったのを確認したイズマは、救いの欠片に願いを込める仲間達を見守っていた。
(自身が大切にしてきたことが無力に思えてくる……喪失とはそういうものだろう)
 弾正の心に灯る記憶の数々。
 それは自身の手から零れ落ちた、相棒や弟。
 そして死を深く知る純愛なる君。
(例え魂が巡るとしても、死はいつか来るものだとしても。
 残されたものは悲しみに暮れるんだ。
 あんな思いを、君の友人や家族にさせるわけにはいかない!)
 牡丹もまた眼鏡の若者に光を授ける。
(……騙すようなことして悪かったな。
 ただな、嘘から出た実とも言うだろ?
 てめぇらは騙されてたが、耕した農地も俺達の焼畑知識も嘘じゃねぇ。
 滅びのためじゃねぇ、本当の農業を、本当のてめぇらの夢を……この青空に魅せてやろうぜ!)
 最後の一人、熱血漢の若者を助けようとする雲雀の隣では、恐らく親しいのであろう友人が涼花の制止を振り切り飛び出すと、若者の手を握った。
「おい、しっかりしろよ、おい!」
「聞こえているだろう? 君を心配する声が。
 彼だけじゃない。おじいさんやおばあさんも、君が元気に顔を見せてくれる時を待っているんだよ」
 だから。
 彼らの希望から――出ていけ!
「ギャァァ?!」
 三つの願いはそれぞれ光となって身体に染みこむと、若者の中から黒き小鬼のような個体が表出し、完全に分離する。
「人々の希望を、夢を踏みにじろうとした罰だ!」
 怒りのリズムを鋭く刻みつけるように。
 イズマの嵐のような激しさを纏った音の一撃が、この戦いに終わりを告げた。

~~~

「ほんと……見た目はきれいだけど、近くにあると滅びの気配がして何だか気持ち悪いね」
 チャロロは豚に吹き飛ばされた花を花壇だった場所へ集めていくと、土に蒸留酒を染みこませ手から発した炎で焼いていく。
「違法植物みたいなものだろ。こんなのさっさと焼いて、今度こそ正しい夢のためにやっていける場所にしちまおうぜ」
 同様に火を扱える牡丹も手近な花壇から花を消し去っていき。
 その横を掠めるようにして、上空で見張りを続けていた涼花のファミリアーであるオオルリが彼女の下へと降りたつと、美しく鳴いた。
「今作業中のやつで最後みたいですよ!……良かったですね」
 最初は聞こえるように大声で。
 最後は治療中の気を失っている若者達へそっと囁いて。
「了解した! ジュムア殿。後はこの田畑だけだ。ここまで頑張って開墾した青年達の努力がちゃんと報われるようにするためにも、思いっきり投入してくれ!」
「はいはい、おじさんに任せなさいって!」
 弾正の心意気へのサービスも込みで、ジュムアは手持ちの松明や薪を有りっ丈田畑へ投入。
「火が回るかも知れない。危ないから君達は下がっていてくれ」
「心配する事はないっすよ! イズマ先輩とあたしの炎で、滅びは根こそぎ焼き尽くすっす!」
 こうして全ての農地と花壇を焼き終え、一行は各々持ち寄った『灰』を大地へ蒔いていく。
「いくぞ『シェヴァリオン』! ローレット式の農業技術で土地に灰を根付かせるんだ!」
 白馬に跨がったシューヴェルトが田畑を踏み均せば、残すはジュムアの持っていた植物の種を植えるだけ。
 少々変わった焼畑農業となったが、正しく生まれ変わったこの土地の未来は若者達が決めていくのだろう。
「……じゃあ皆、集落へ帰ろうか」
 雲雀の持つ邪眼は、混沌では本来の力を発揮出来ない。
 けれど彼には農地に芽吹く小さな緑が見えたように思えた。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

なし

あとがき

冒険お疲れ様でした!

これまで色々な最強が混沌世界で悪さをしてきたと思いますが、今回は少し変わった悪事でした。
そんな彼らに対し、有益となり得る要素や若者は守りつつ、主目標である焼き払いへとスムーズに繋げられる焼畑という手段をぶつけたことはとても上手いアイディアで、効果的に働いたと思います!

パンドラ消費に関して、寄生された若者3名に対し用意されたエイドスは4つ在りました。そのため、
1:アレーティア+エイドスを所持している方(パンドラ消費最小)
2:エイドスを所持している方の内、プレイング提出時にパンドラ残量の多かった方(パンドラ消費中量)
の基準で使用者を選択させて頂きました。ご了承下さい。
※消費量は、あくまで本シナリオにおける寄生状況に基づいて算出されております。
 他シナリオで寄生解除を行う場合、今回以上にパンドラを消費する場合もありますのでご注意下さい。
※今回はエイドスで事足りましたが、アレーティアのみで寄生解除を願う場合、不確定なだけでなく、成功したとしてもエイドス使用時よりパンドラ消費が多くなることが推測されますのでご注意下さい。

話術、道具の用意、実作業、若者のケア、火の手段。
どれをとっても今回参加して下さった皆様の個性が溢れたものとなっており、誰が欠けても成立しないものですので、そこに貴賤はございません。
その上で今回は、全ての事柄について気を配り、かつパンドラ残量も少ない中迷う事無く若者を救おうとされていた貴方にMVPを。

それでは、またどこかでお会いできることを願いまして。
ご参加ありがとうございました!

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