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シナリオ詳細

<Je te veux>カルネと鉄帝里帰り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 さくり、さくりと、雪を踏んで歩く。膝まで埋もれるような雪は鉄帝のこの地方なら見慣れたものだ。
 ここはカルネの生まれ育った村。厳密には、その村へ続く道である。
 近くにワイバーンを停泊させ、村までの道を歩いている最中だ。
「ごめんね、ついてきて貰っちゃって」
 カルネが苦笑しながら振り返ると、雪道装備で可愛らしいコートを着たイーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が首を振る。
「ううん、なんてことないよ。この村……というか、『カルネのお母さん』とは色々あったからね」
「ほんと、つい最近の話みたいに感じるよなー」
 そう続けたのはダウンジャケットを着込んだ清水 洸汰(p3p000845)だ。いかにもスポーツ少年といった風情で、今すぐにでも走り回れそうな格好である。
「『ブランディーヌ・シャノワール』サン……か。そうだね、色々ありましたネ」
 リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)も話に加わり、上等そうなコートのポケットに入れていた手を出した。
 それはおよそ一念ほど前の冬。
 カルネは母と一度の決別を果たした。
 あまり良い母親ではなかったし、一度は敵にすらなった。けれど前へと、未来へと歩いて行くカルネを見せ付けたことでその関係はある意味氷解したと言って良かった。
 それからカルネはあちこちの土地や異世界を冒険し、見聞を広げて再び村へと戻ってきたのだった。
「また、お母さんとお話をするの?」
 リュカシスの問いかけに、カルネは暫く黙った後、小さくだけ頷いた。
「世界が『穴だらけ』になってから暫く経つし、このまま放っておくのもね……」
 そう、世界は崩壊へと近づいている。その足音は物理的な敵の群れとなって世界中に押し寄せていた。親子のすれ違いがあったとて、このまま別れっぱなしはどうなのだろう……と思えたのである。
「ま、大丈夫さ。お母さんともまたやりなおせる。人はいつだってやり直せるんだ」
 三國・誠司(p3p008563)が頼もしげに言うと、カルネは『そうだね』と小さく笑った。
 と、その時である。
 目の前に転移陣が出現。そこから終焉の気配を纏った巨躯が姿を現した。
 それだけではない。転移陣からは無数の終焉獣が姿を見せる。
「「――!」」
 リュカシスは腕部カスタムパーツを装着し、洸汰はバットを、イーハトーヴはビスクドールを、誠司は大砲をそれぞれ素早く装備する。
「こいつは?」
「小型ベヒーモスだ。僕たちのパンドラ収集器を狙って来たんだ!」

 冠位色欲の凶行をなんとか退けたローレット・イレギュラーズだが、世界は休むことを許さなかった。
 ラサ南部砂漠コンシレラにて現れた終焉の獣ベヒーモス。この背中よりぼろぼろと崩れるように現れた小型ベヒーモスたちは転移陣を用い世界各地へと飛んでいた。
 その目的はパンドラ収集器の強奪。ベヒーモスは集めたパンドラを喰らいその代わりに滅びのアークを吐き出しているという。
 一方で空中庭園の『空繰パンドラ』ではパンドラの蓄積が滞っているという。
 要するに、世界各地でイレギュラーズの持つパンドラ収集器が狙われているのだ。
 そしてその魔の手は、カルネたちにも向かっていたのである。

GMコメント

●シチュエーション
 一度は決別した母と再会すべく鉄帝の故里を訪れたカルネ。そんな彼らに小型ベヒーモスの一団が襲撃を仕掛けてきた。
 あなたは(リュカシス、イーハトーヴ、洸汰、誠司と同じく)カルネの友達として一緒に来ていたことにしてもいいし、ベヒーモス出現の報を受けて颯爽と駆けつけたことにしてもいい。
 イレギュラーズたちのパンドラ収集器を守るべく、小型ベヒーモスを撃退するのだ!

●フィールド
 雪深い街道です。除雪は進んでおらず雪をざくざく踏みながら戦うことになるでしょう。
 今回はこれによる戦闘への悪影響はないものとして扱います。

●エネミー
・小型ベヒーモス『ソルジャー』
 回避と攻撃に優れた小型ベヒーモスです。
 二足歩行する終焉の獣で、戦闘力はずば抜けて高いとみていいでしょう。
 通常の小型ベヒーモスに比べて若干ですがスリムな体型をしています。

・終焉獣×多数
 随伴として現れた多数の終焉獣です。
 形は様々ですが、狼型や鳥型など動物ベースが多いようです。
 放置すると小型ベヒーモスとの戦いをかなり不利にしてしまうので、序盤に範囲攻撃などで倒しておくのが良いでしょう。

●味方NPC
・カルネ
 撃って走って盾にもなれるオールラウンダーのイレギュラーズです。
 防御力がそこそこあり、連鎖行動ももっているため連携して戦うと有利に事を運べるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>カルネと鉄帝里帰り完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
三國・誠司(p3p008563)
一般人
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

サポートNPC一覧(1人)

カルネ(p3n000010)
自由な冒険

リプレイ


「ウワッ! たくさん来た!」
 襲いかからんとする終焉獣を鉄鋼千軍万馬で払いのけると、自分もぴょんと後ろに飛び退く。
「えっと、パンドラ収集器って奪われるとどうなるんだっけ?」
「よくはわからないけど、食べられて滅びのアークに変えられちゃうって聞いたよ」
 問いに答えるカルネに、リュカシスはぶるりと身体を震わせた。
「……そっか、大変だね。渡すつもりは全くないケレド」
 そう言いながらネクタイピンを服の内側へとしまい込む。これが彼のパンドラ収集器なのだろう。
 それを渡せと言わんばかりに小型ベヒーモス『ソルジャー』が襲いかかってくる。
 腕を大型ナイフのように鋭く変形させ、突きを繰り出すソルジャー。
 それを鉄鋼千軍万馬のシールド部分でギリギリ受け流し、至近距離から『慟哭のジ・アース』を叩き込む。具体的には鉄鋼千軍万馬に仕込まれたパイルバンカーがソルジャーへと撃ち込まれた。
 硬い外皮を破ってソルジャーに食い込む杭。
 それを嫌がって飛び退いたソルジャーは、狙いを今度はカルネへと移した。
「カルネくんの村へ行くんだから邪魔しないでほしいよね!」
「本当、タイミングが悪いんだから」
 リュカシスと連鎖行動で同時に動き出したカルネ。ソルジャーを引きつけるように動き始める。
 そこへ更に狼型終焉獣が加わり、カルネの腕や脚へと食らいついていった。
「やめろ!」
 『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)はそんなカルネを守るように前に出ると、ソルジャーの腕ナイフをバットでがしりと受け止めた。
 そして渾身の『OSK』。つまりは大声での自己紹介だ。
 その元気な姿に思わず注意を引かれた終焉獣たちは洸汰を狙って攻撃を開始する。
「オレの熱烈ファンとかだったら、サイン付であげても良いんだけどー……こいつはダメ! 絶対渡さないぞー!」
 ぶんと振り抜いたバット。それは彼の武器であり、同時にパンドラ収集器でもある。
「カルネのかーちゃんや、周りの人達が強いのは知ってっけど……何せ最近はバグ・ホールなんてのもある
 心配になっちゃう気持ち、わかるぜ!
 だからこいつ等サクッとぶっ飛ばして、かーちゃんを迎えに行こうぜ、カルネ!」
「うん、ありがとう洸汰! 一緒にこいつらを突破しよう!」
 互いに顔を見合わせ、頷き合う。
 そうしている間にも終焉獣たちは次々に洸汰へと襲いかかってくる。特に厄介なのは空中から攻撃してくる鳥型の終焉獣だった。
 バットで振り払っても届かない距離まで上昇し、急降下と共に攻撃してくるのだ。これが狼型終焉獣の噛みつきと合わさって地味にキツイ。
 そんな終焉獣たちを撃ち落とすべくクロスボウを撃ち込んだのは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)だった。
 空を飛ぶ鳥型終焉獣へ見事に命中したクロスボウの矢が、相手をそのまま墜落させる。
 バサッと翼を羽ばたかせて復帰しようとしたところに素早く近づき、ロングソードを突き立てることでトドメを刺した。
(またベヒーモスが出てきましたか。
 その付近にイレギュラーズが5人もいるのに、追加で派遣される訳ですね。
 念のためであれば良かったのですけれど、十中八九必要だからでしょう。忙しい日になりそうです)
 黙って終焉獣を処理するオリーブ。鉄帝では知らぬ者がいないほどの有名人である彼は、その特徴的な鎧姿で判別がつく。
「オリーブ! 来てくれたんだね、ありがとう!」
「いいえ」
 オリーブは短く言い切ると、今度は狼型終焉獣めがけてクロスボウを構えた。
 ジグザグに走ってくる狼型終焉獣。しかしその動きに惑わされることなくビュンと撃ち込んだ矢は見事に命中。そのまま他の終焉獣たちにも矢を放ち命中させていく。流石の腕前だ。
「その人にとって重要な品がパンドラの収集器になる……だったよね、カルネくん?
 世界の可能性の欠片をベヒーモスの今日のごはんにはさせられないし、俺達の大事なものを狙うのだって捨て置けないよ」
 そう言ってオフィーリアをぎゅっと抱きかかえる『キラキラを守って』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)。詰まった想いは語り尽くせないほどだろう。
「そうだね、イーハトーヴ。こいつらを倒して、大切なものを守ろう!」
「うん――行くよ、メアリ!」
 開いたアタッシュケースから踊るように飛び出したビスクドール。それは両手から操り糸のようなものを放つと狼型終焉獣たちの間を駆け抜けて行く。
 そしてピンとはった糸を握り込むと、それを力一杯引っ張った。
 ざくんと狼型終焉獣の身体が崩れ、破壊されていく。
 それを脅威とみたのだろう。鳥型終焉獣がイーハトーヴめがけ急降下突撃を仕掛けてくる。
 だが、それを見逃す『彼ら』ではない。
 ぴょんと跳躍したメアリがイーハトーヴの肩を踏み台にすると、ムーンサルトキックでもって急降下してくる鳥型終焉獣をはじき返したのだ。
 すたんと着地するメアリ。ぱちぱちと拍手を送るイーハトーヴ。
 その一方。
「別に私はカルネくんのお母さん……ブランディーヌさんの事は嫌いじゃないぞ。
 カルネくんの事など、対立する事が無ければ、仲良くなれそうな気さえしている。
 ……と語っている状況じゃなくなったな」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は携帯しているアタッシュケースをそっと地面に置くと、コートを脱ぎ捨ててそこへかける。
 襲いかかってくる狼型終焉獣の集団をにらみ付け、覚悟を決めたように言い放った。
「私のパンドラ収集器……調理に大切な包丁を奪われるわけにはいかない!」
 びゅん、と風を切る速度で走り出したモカの蹴りが狼型終焉獣へ命中。
 派手に蹴り飛ばしたと思ったところで、己の気を足に込めて蹴り抜くように放った。
 いくつもの気弾が作られ、狼型終焉獣たちへと命中していく。
 『デスティーノ・コイントス』と『狂イ梅、毒泉』で強化された力は流石の一言で、命中した狼型終焉獣が吹き飛んでいった。
 フウ、と息をついて更なる蹴りの構えをとるモカ。
 そんなモカを急な角度から襲う鳥型終焉獣が現れた。
 急角度かつ死角。流石にこれは攻撃を受けてしまうかとおもわれたその時。
 ズドンという凄まじい音と共に『一般人』三國・誠司(p3p008563)の御國式大筒『星堕』が放たれた。
 見事に命中した鳥型終焉獣が吹き飛び、羽根を散らして地面へと墜落する。
「カルネくんが行くってんならどこにでもいくさ
 それに確かにここ最近のどえらい現象……世界もいよいよ崩壊5秒前みたいな感じ醸し出してるし
 だからこそ、できること、やりたいことはやっておかないとね」
「誠司……ありがとう」
「一応、お義母さんの位置は把握しておこう。連中がそっちに行ったら大変だ」
「うん、そうだね。人助けセンサーに反応は?」
「ない。今のところは大丈夫そうだ」
 ここは村には至っていない道の真ん中だ。まだ村人も戦闘に気付いていないといったところなのだろう。
 ならばこのまま戦い、倒してしまうのでも構わない。
 誠司はジェットパックで大きく跳躍すると村と終焉獣たちを阻むように位置取りし、連続で『ベリアルインパクト』弾を乱射する。
 ドドドッと激しい音をたてて砲撃が放たれ、それは終焉獣たちへと猛烈に命中していく。
 一発も外すことなく撃ち込まれた砲弾が爆発し、込められた魔術が発動。土壁が生まれ狼型終焉獣を閉じ込めるように展開、のしかかるように包み込んでしまう。
(俺はベヒーモス出現の報で来たけど、あっちは多分他の目的で来てた人たちだよな)
 そんな人々を横目に眺め、『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)はケースから分解されたライフルを取り出す。それを組み立てるまでの速度は芸術的に速い。
「災難だな。でも一緒できるのは助かる」
「来てくれてありがとう、飛呂」
「手早く済ませて、そっちの本来の目的もちゃんと果たしに行こう」
「……うん!」
 カルネの頷きに応えるように親指を立てると、飛呂は『ソリッド・シナジー』と『ダニッシュ・ギャンビット』を発動。
 ライフル弾に込められた封殺の力を遺憾なく発揮すべく、『プラチナムインベルタ』による制圧射撃を叩き込んでいった。
 見事なまでに正確な射撃は狼型終焉獣の足を撃ち抜き動きを止め、鳥型終焉獣の翼を撃ち抜き動きを封じる。
 その中で厄介に思えるのは狼型終焉獣だ。空に逃げる鳥型終焉獣は射撃によって撃ち落とせば良いが、近接攻撃を積極的に仕掛けてくる狼型終焉獣は飛呂にとって苦手な相手だった。
 なので……。
「そっちは任せるよ」
「ああ」
 積極的に突っ込んでいった『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)が狼型終焉獣の顔面めがけて強烈な蹴りを繰り出した。
 筋肉によって純粋に鍛え上げられた蹴りは狼型終焉獣の顔面を歪め、サッカーボールのごとく吹き飛ばしてしまう。
「カルネやその母親に関して私は何も知らない。
 だからこそ面識のある皆がそれぞれの思いを遂げる事が出来るように。
 邪魔なものは私が排除しよう」
 その調子で狼型終焉獣たちの集団へと飛び込み、ガッと一匹の頭を掴む。強引につかみ取ったそれを振り上げると、ぐるぐると回転を始めた。
 群がろうとしていた狼型終焉獣たちが吹き飛ばされ、地面に次々と転がっていく。
 流石の攻撃力だが、防御は非常に弱い。だからこそ洸汰やカルネが引きつけた敵を優先して狙うアタッカーとなるのだ。
 だが中には【怒り】の付与がされていない個体が昴を狙うこともある。
 そんなときは正面突破だ。
 腕に思い切り噛みついてきた狼型終焉獣。その牙が届かぬように堅い筋肉で防御すると、その顔面めがけて拳を何度となく叩きつける。
 流石の狼型終焉獣も昴の鍛え上げられた拳を幾度も喰らえばタダでは済まないようで、口を離し地面へと落下した。
「フウ……さて、こんなところか」
 大方の終焉獣は倒しきった。
 残るは強敵、小型ベヒーモス『ソルジャー』だけだ。


「――ッ!」
 今度こそはとばかりに昴の蹴りが放たれる。
 それをソルジャーは跳躍によって回避。
 空中でぎゅるんと回転すると、昴めがけナイフのような腕を繰り出してくる。
 それをかわすことなく身体で、もとい筋肉で受ける昴。
 彼女の攻撃は幾度となくかわされているが、しかし決して当たらないということはない。
 ソルジャーの巧みな回避能力にはしかし、一瞬ながら隙があるのだ。
 それがこの攻撃のタイミング。昴は自らの気合いで致命傷だった攻撃を阻むと、ソルジャーの腹めがけて拳を繰り出した。
 そこへ『ラフィング・ピリオド』を撃ち込む飛呂。
 相手が回避に優れているならこちらは命中に優れたスナイパーだ。
 狙い違わずソルジャーの腕に命中させると、その動きを一次的に封じる。――いや、封じるには至らないが、牽制程度はできていたようだ。
(カルネさんが親と何あったのか詳しくは知らないし、親族だからって絶対やり直すべきとも思わないが……)
 スコープを覗き込み、もう一度撃ち込む。
「よく知らないけど、後悔しない為に行くってことだろ。なら手伝うよ」
 ずどんと撃ち込まれた弾丸は今度こそソルジャーの動きを封じた。
 腕を押さえ、グルッと唸るソルジャー。
 その忌々しげな声をかき消すかのように誠司の大砲が轟音を鳴らした。
「こっちに飛ばされてきてもう何年にもなる。
 僕には親も故郷も、もうないんだ。
 けれどカルネくんも、お義母さんも、まだ失ってない。
 なら、何度だってやり直せばいい。
 その手伝いもやるし……この世界の崩壊も止めてみせるからさ」
 『芒に月』を込めた『破式魔砲』を解き放つ誠司。
 あまりの衝撃にソルジャーは派手に吹き飛び、地面を転がる。
 が、すぐに起き上がって体勢を立て直した。そこへ素早く襲いかかるモカ。
 『残影百手』『ブルーフェイクIII』のコンボを素早く叩き込んだかと思うと『終局舞曲』の蹴り技を連続で叩き込んでいった。
 攻撃をなんとか耐えながら、反撃のナイフを繰り出すソルジャー。
 モカもかなりのダメージを受けているものの、与えるダメージもかなりのものだ。
 そんな姿を見ながら、イーハトーヴは想う。
(――ベヒーモス達の大元……デッカ君のことは忘れたことがない。
 優しい子だと少なくとも俺は思っていて、それでもコウを、どうしても守りたいものを守るために、自分自身の意思で戦うことを決めた相手だもの)
 メアリを走らせ、鋼の糸と光の翼で攻撃を仕掛けにかかる。
「今だって同じだ。
 カルネくんがお母さんと過ごす時間をそう易々とは奪わせない。
 分かり合えるかどうかは実際に行ってみないとわからない。
 それでも、もう一度話をしようってカルネくんが決めたんだから。
 その決断を応援したいし、邪魔はさせないよ! 友達だもの!」
 メアリの糸がソルジャーを縛り上げる。
 流石にここまで連続攻撃を受けてしまっては、回避に優れたソルジャーも動きを鈍らせるというもの。
 そこへ繰り出したのはオリーブの剣であった。
 『鋼覇の構え』から撃ち込む『鋼覇連閃』はソルジャーのナイフをすり抜けるようにして適切に撃ち込まれ、ソルジャーの肉体を切り裂いて行く。
 対して反撃にとくりだされたソルジャーの攻撃は、オリーブの翳した剣が見事にとらえ、払いのけた。
「カルネさん、今です」
「うん!」
 素早くソルジャーに組み付いたカルネはその動きを強引に鈍らせ、隙を作り出す。
 そうなれば命中精度の低い攻撃も通るようになるというものだ。
 洸汰のバットが思い切りソルジャーへと命中。ぴょんと飛び退いたかと思うと、『享楽のボルジア』と『アデプトアクション』の力を込めたボールとバットによる一人連携攻撃を繰り出していく。
「オレに気ー取られてたら、余所からデッドボール貰っちゃうぜー?」
「全力で参ります!」
 その瞬間、リュカシスが鉄鋼千軍万馬を変形させて巨大なナックルを作りだした。
 ゴウッと風を鳴らし撃ち込まれる巨大な拳。
 それはソルジャーの顔面を打ち抜き派手に吹き飛ばす。
 組み付いていたカルネはそのタイミングを見事にはかって飛び退き、雪の地面にザッと着地する。
 一方のソルジャーは……もう、動かなくなっていた。


「カルネくんがブランディーヌサンと会うの。
 もしもお母さんのほうが大丈夫じゃなかったらどうしよう……」
「まあ、心の準備はできてないだろうね」
 リュカシスの言葉に、カルネは苦笑で返した。
「けれどいいんだ。僕が今、会いに行こうと思ったんだから」
 やがて村へとたどり着く。
 雪の季節だからか人は外に出ておらず、見覚えのある建物がやがて見えてくる。
「まずは、僕だけで行ってみるよ」
 大丈夫? という視線を受けて、しかしカルネは微笑みでそれに応えた。
「僕だって、向き合わないとね」
 そう言って、家の扉を叩く。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 その後、カルネは母との再会を果たした。
 決してスムーズな再会とはならなかったけれど、親子の溝は埋まったようである。
 滅び行く世界を前に、カルネはまたひとつ、大人になったのだ。

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