シナリオ詳細
<Je te veux>終焉否定のlost chaosⅡ:傲慢と嫉妬の願い
オープニング
●願封じ(がんふうじ)
人は生きれば何かを願う。
願ったなにかのどれかは叶う。
けれどどれかの祈りは尽きず。
潰えたなにかも再び願う。
結局願いは渦を巻く。
願いと願いが反する時、どれかは叶いどれかは消える。
同じ願いの、違いはなあに。
違う願いの、同じはなあに。
やっと見つけた願いの礎。
人は他人(ひと)ゆえ交わらず。
交わらぬゆえ心を乱す。
願い続ける困難と。
邪魔され続ける災難を。
全て受け入れ眠れれば。
全て拒んで喰らえれば。
そんな極みは神にだけ。
なれば願いを捧げましょう。
譲れぬ思いを示しましょう。
だからどうか、その大いなる恩寵を。
我らが命にお与えください。
どうか、我らに。
どうか、我に。
●願いの審判Ⅱ
「今日のお仕事はなあに?」
つり目の少年が問いかければ。
「簡単だよ。ボク達はほとんど何もしなくていいからね」
たれ目の少年が答える。
「どうして?」
「祈りが尽きない傲慢と交われない嫉妬のお願いなんだけど。
きっと、本当の願いの行先でボク達じゃない人達がお願いと向き合うことになるからね」
「ふーん……」
「あれ、なにか気になった?」
「仕事をするためにここにいるのに、何もしないないならボク達の意味が無くなっちゃうと思って」
「そんなことはないよ。願いがなければ人は生きられない。
けれど本当の願いを知らない人はたくさんいる。
あの人達はまだ気づいてないみたいだから、それを教えてあげるのは大切な役目だよ」
「そうなの?」
「そうだよ。本当の願い同士がぶつからないと、人は滅ぼしあってくれないからね」
「そうだった。ちゃんと願いが伝わらないと、ただの殺し合いじゃ意味ないもんね」
「そうだね。じゃあ、頑張って演技しようか」
「うん」
頷きあって、子供達は強く手を握る。
●温もりのお裾分け
よく晴れた日であった、なのに。
後に振り返ればそう称されるであろうこの日は、文字通り太陽が幻想の大地を照らしていた。
「おっ、大地ー! こっちだこっち!」
遠くに友人である『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)の姿を見つけ、『世界で一番幸せな旦那さん』フーガ・リリオ(p3p010595)が手を振る。
その隣には、優しげな笑みを浮かべる『世界で一番幸せなお嫁さん』佐倉・望乃(p3p010720)の姿もあった。
「すまない、少し待たせてしまったか」
「わたし達も今着いたばかりですから。この前の大根パーティーぶりですね大地さん」
「あァ。食べ飽きるほど喰ったっけなァ」
『赤羽』もまた黄金海鮮出汁の染みたおでんを思い浮かべる。
「あとは……あ、来た! ジョシュアさーん!」
次に現れたのは『温もりと約束』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)。
合流しようと彼が急ぐ度、胸元の懐中時計が小さく揺れる。
「お待たせしました、皆様」
「よっしゃ。それじゃ揃った事だし、幸せになるお二人さんを祝いに行くとしようぜ!」
フーガは手にした招待状の手紙をヒラヒラと風に靡かせる。
これは先日彼が幻想郊外にて、終焉獣に襲われているところを救出したキャラバン隊の男性から送られたもの。
その男性は同じキャラバン隊に所属する女性と婚約まで済ませており、近々鉄帝で挙式の予定であった。
だが降りかかった命の危機に、大切な事はすぐにでもやるべきだと痛感。
急遽幻想で結婚することに決めたという。
そこで命の恩人であるフーガとその時一緒にいた大地へ声がかかり。
同伴者歓迎ということで、それぞれ望乃とジョシュアを誘ったことで今に至る。
「妻が、っていうからてっきりもう結婚してると思ってたぜ」
「ふふっ。そうですね。でも二人の心が通じ合っているなら式がまだでも夫婦で良いじゃないですか」
「ソウソウ。互いが良しとしていればもう結婚してるようなもんダ。
お互いの気持ちが大事です、ってやつだナ。
式も子供も、気付けば出来てるもんだロ」
「待て赤羽。普通式は段取り組んでやるものだし、子供だってそんな大根みたいに生えてきたりはしないからな?」
そう指摘はしてみるものの。
己の管理する図書館にいる二人を思い浮かべると、あまり強くは否定できない大地であった。
「……」
「ん? どうかしたか、ジョシュア?」
「あ、いえ」
大地の問いかけに、ジョシュアは逡巡してから答える。
「皆様は、家族と呼べるような人達がいて……。
やはりその幸せが続いたらいいな、と願っているのでしょうか」
「うーん。願った、とはちょっと違うかも知れないけどよ」
並び立つ大切な人の肩へ手を添える。
「誓ったからな。どんな運命になっても、ずっと傍にいたいって。
だからおいらは望乃と一緒に、これからもずっと幸せな時間を過ごしていきたいし。
そのためなら何だってするつもりだぜ」
「わたしも。フーガとおんなじ気持ちです」
交わす視線には、愛という名の信頼と確信が滲んでいて。
「……そうですか」
ジョシュアもまた二人が放つ暖かさを心地よく感じ、顔が綻ぶ。
「何にしても、どんな不安の中でも希望を持って行動することには意義はあるだろう。
その形の一つが願いであっても、俺は良いと思う。
ところでフーガ。今日のラップについてなんだが……」
「おいおい大地、確かに結婚式を盛り上げる余興を頼まれたけどよぉ!
あれやんのか!?」
「流石に俺達も歌詞の内容くらいは空気を読むサ」
赤羽はコートのポケットに忍ばせていた応援マイクをチラリとのぞかせる。
「あ。フーガからお話は聞いてますよ。生で聞けるのが楽しみです♪」
「……ったく。即興で合わせるこっちの身にもなってくれよな!」
明るく、楽しい、笑い声。
この世界に確かに存在する、温かな何か。
ジョシュアは思う。
他人(ひと)から温もりを奪ってしまう僕だとしても。
この世界に生きる命として、願ったっていいはずなんだ、と。
――僕は、滅びを止めたい……守りたいんです
●幸せのお裾分け
急遽予定された式であることや、先日の色欲魔種による侵攻も相まって一般的な結婚式場は用意することが出来ず。
そのため式は、商隊の頭がなけなしの小遣いと商売で得た縁を駆使して用意した森の中にある草原の一画にて行われる事となっていた。
「あれは、エーレン様?」
「むっ。ああジョシュアか。奇遇だな」
そこにいたのは『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。
先日の一件以来警戒を怠らない事を重要視しているキャラバン隊の頭に警備要員として今回雇われたのだという。
「折角の催しではあるが、生憎俺は武芸者故な。このような形でしか関われないという事だ」
「そんな事は……。この前も一番に飛び出して戦って下さっていましたし。
きっと、そんなエーレン様がいればキャラバンの皆様も安心できると思います」
「ふっ。ご配慮、痛み入る」
エーレンは大地達とも挨拶を交わすと、簡単に状況を説明する。
「見ての通り野外での式となるわけだが。
最低限の椅子や囲い、飾り等は用意してあるから仮設の式場としては問題なかろう。
その招待状、皆式を盛り上げるために呼ばれたのか。
なら武器はそこへ預けておいてくれ。
折角の幸せな時間、刃を煌めかせる等無粋だろう、という依頼主の配慮だ。
安心してくれ。何かあっても俺がこの刀にかけて皆を守ろう」
エーレンに促され、トランペットやマイクといったパフォーマンス用以外の手荷物を預けた一行は、式場とされる囲いの向こう側へと進み。
パフォーマンスの打ち合わせの後は、着席して式の始まりを待つ事となった。
●絶望のお裾分け
「す、すみません! 通して下さい!」
警備に当たるエーレンの前に『クロンデール』が現れる。
「どうした、そんなに焦って」
「と、とにかくジョシュアに伝えないと……!」
「ジョシュアの知り合いか。分かった、彼は中だ」
手短に礼を述べると、囲いを押しのけれる形で一気に中へ。
新郎新婦の入場を待っていた参列者の視線が刺さる。
「逃げてください、ジョシュア!」
「え?」
それはかつて聞いた言葉。
「クロンデール様!?」
蘇る痛みの記憶。
「二人の子供達から知らせを受けたんです! や、闇が、闇が来ます!」
刹那。
「あら。光を失ってもなお、闇は怖いのね。クロンデール」
幸せの象徴たる二人が立つべき場所に、いつの間にかそれがいて。
「き、キーラ……様」
『キーラ・ナハト・フルス』。
纏った滅びの気配は精霊種とは思えぬ禍々しさ。
けれどその言葉に根付く闇の深さはジョシュアが知る彼女そのもので。
「ジョセも。そんな顔をするにはまだ早いわ。滅びを止めるのでしょう?
毒の精霊種の分際で他者を救いたいのでしょう?」
だったら。そう言い指を鳴らせば。
キーラの身体に宿る影は空へ伸びると闇の結界となって式場を包み込み。
「やってみなさい。貴方ごときが幸せを願うなんて如何に烏滸がましいのか気づけるから。
そして思い出しなさい。貴方は私の可愛そうなジョセであることを」
~~~
クロンデールを通し暫く、改めて周囲を確認する。
(そろそろ式が始まる、客は彼が最後だろう。
それにしてもあの様子……大丈夫だろうか。
こうも早く封じた願いが叶うものかと驚き喜んですらいたが、警戒は怠れんな)
エーレンは先日封じた願いを思い起こす。
――縁があって世話になった皆、これから世話になる皆。
――それぞれ相応しい伴侶を見つけ、幸せになれるように。
(結婚、か)
結婚、婚姻。
好きな人、愛する人と共に、互いを支え合って生きていくという誓い。
(それは素晴しいことであろうが)
俺には、関係がない。
なぜなら俺に、そんな価値などないのだから。
――……アタシ、エーレン君が好き
──一族の恥晒し。
──どうしてあんなに何もできないんだ?
──搾り滓の末公子。
──ただ民のための己であれ。
「……うっ」
吐き気がする。
だがこんな所で他人の幸せに泥を塗るわけにもいかない。
必死に堪え、押さえ込むために意識を集中する。
彼の警戒が緩んだのは、そんな僅かな時間であった。
「……タダ……オノ……アレ」
「……何奴!?」
急ぎ刀へ手を添え声の方角を見やる。
「お、お前達は、終焉獣……なのか?」
森の方から迫る個体は16。
そのほとんどにエーレンは見覚えがあったが、一番先頭の個体のみは違った覚えを感じた。
「タダタミノタメノオノレデアレ」
「……くっ!」
握る力は極限まで強まっていく。
「何者であろうと、民を害するのならばこの刃にて斬り捨てる!」
エーレンが踏み出したその時。
空が、小さく黒く、割れた。
ーーーーー
※1分で分かるOP
●1(PL情報)
良く分からん言葉の羅列だぞ!
(関連シナリオ:https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10657)
●2(PL情報)
子供達が意味深な事を喋ってるけど良く分からんぞ!
●3(PC情報)
PC(大地さん、フーガさん、望乃さん、ジョシュアさん)は顔見知り!
皆揃って招待された結婚式に向かっているぞ!
●4(PC情報+GMコメント一部PC情報化)
結婚式場ではPC:エーレンさんが警備をしているぞ!
警備はエーレンさんに任せ(武器を預け)、他の4人は簡易的な式場の中へ入ったぞ!
●5(PC情報+GMコメント一部PC情報化)
ジョシュアさんの関係者のクロンデールさんが危険を知らせた途端、同じく関係者のキーラさんとバグ・ホールが出現!
エーレンさんの前にも特殊終焉獣があらわれたぞ!
※関連SS
以下を読んでいなくとも問題無く参加できますが、知っているとシナリオの解像度が上がります。
●ジョシュアさんとキーラの出会い
「ひとしずくのめざめ」(芳董NMご担当)
https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/5417
●キーラとクロンデールの過去
「風の追憶と一筋の光」(芳董NMご担当)
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5598
・エーレンさんの中に潜むなにか
「桜流し、さらさらと」(月熾NMご担当)
https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/5360
- <Je te veux>終焉否定のlost chaosⅡ:傲慢と嫉妬の願い完了
- GM名pnkjynp
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年02月22日 22時45分
- 参加人数9/9人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 9 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(9人)
リプレイ
●闇に沈む毒
「あら大変。……これが何か分かる? ジョセ」
笑顔で問いかける『キーラ・ナハト・フルス』を前にして『温もりと約束』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は身体が震え始めるのを感じていた。
さっきまであった温かな幸せが、急速に冷え切ってゆく。
あんなにも晴れた空が、一瞬で闇に覆われてしまう。
寒い、怖い。
それでもなんとか、言葉を紡ぐ。
「どうして、キーラ様がここに……」
「不思議がることもないでしょう? 今日は素敵な結婚式。友人として同伴したまでよ。
当然よね、私はジョセからかつてお友達になってくれと頼まれたんですもの。
そんなことより、私の質問に答えなさいな」
一行の真上、空に浮かぶ穴――『バグ・ホール』が僅かに拡張すれば。
生じる引力が身体を吸い上げようとし、対照的に不幸と足を止める魔力を振り下ろす。
「きゃっ!?」
「大丈夫か望乃!」
ふわり。その身に宿した翼で生み出すものとは異なる恐怖の浮遊感が全身を駆け巡る。
そんな『世界で一番幸せなお嫁さん』佐倉・望乃(p3p010720)の左腕を『世界で一番幸せな旦那さん』フーガ・リリオ(p3p010595)が掴み引き戻した。
「ジョシュアの知り合いか何だか知らないが、コイツはバグ・ホールだろ? アンタの仕業か!」
二人の薬指で煌めく指輪の輝きにキーラは微か眉を顰めるも、それを声色にはのせない。
「私にそんな力は無いわ。でもそうねぇ……強い絶望が生じ得る所なら、何処でも現れるんじゃないかしら?」
「だとしたら見当違いも甚だしいな」
「ここはこれから幸せに溢れる場所ダ。絶望なんて無縁のナ!」
『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)が『ダイヤモンド・セブン』の手を握ったまま立ち上がる。
他の参列者達も何とか互いに支え合い耐えたが、身体を巡る猛毒の魔力に咳き込みが止まらない。
「だった、が適切ではなくて? それよりもジョセ。貴方がここに来たせいでみんな苦しんでいるのよ? 癒してあげないの?」
「ぼ、僕は……」
そんな場合ではないというのに、過去の恐怖が、記憶が、彼の腕に重くまとわりつく。
「大丈夫ですよ、ジョシュアさん。私達が代わりに癒しますから……!」
落ち着きを取り戻した望乃は、周囲の人々の容態を確認すると、フーガの手を強く握りながら甘く切ないバラードを号令として周囲に不調を拭い去る魔力を展開。
フーガも手にしたトランペット『黄金の百合』で伴奏し、人々に立ち上がる魔力を授けていく。
「フーガさん……」
「しっかりしろ、アンタは今日の主役、新郎だろ? 大丈夫、この前と同じだ。
ヤバイ時こそ心の拍子で信じるモノを見つめ直し、愛するその人の手をひいて立ち上がれ。そうすれば、希望がやってくる!」
「……あらあら。怯えて癒す力も出せず、あろうことか他人に役目を押しつけるなんて。あの頃のまま、貴方は無力で惨めなのね。人を傷つける事はあっても、役に立つ事はないんだわ」
「やめて、やめてください……!」
「それもそうよね。ジョセ、貴方は『毒の精霊種』。人を蝕み傷つけるために生まれたのだもの!」
式場外周部まで聞こえるような大きな声で。
今度こそ、誰も聞き逃すことのないようはっきりと。
彼女は言う。
「ぁ、ぁぁ……嫌だ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
言葉が、痛い。
そして遂に、ジョシュアは蹲る。
葉から垂れる雫のように、地へ零れ落ちて。
だが。
「すまないダイヤ。動ける人と協力して避難を進めてくれ。埋め合わせは今度するからさ」
「仕方ないナァ。ほら、オレからの選別ダ!」
ダイヤはいわゆる曲芸師のような事ができる。
その余興で使う予定だったガラス製のインク瓶を大地の手へ押しつけると、軽やかな動きで足の悪そうな老人を優先して背負い、運び出す。
「オマエも手伝えヨ、動けるんだロ?」
「は、はい!」
ダイヤに呼びかけられ、ジョシュアに駆け寄ろうとしていた『クロンデール』も、救助活動に加わる事となる。
「ジョシュアさん……キーラさん……」
クロンデールの視線の先、闇と毒の狭間に二人で一人の魔術師は立つ。
「邪魔よ、貴方。早く逃げたら?」
「この場から逃げるのは容易いだろう。だがな」
「百の呪文を弄する魔術師ガ……」
「千の言葉を噛み締める本の虫が……」
「友を守る言葉一つも無く、このまま行けるものか(カ)!!」
●刃、煌めく
「くっ、よりにもよってこんなタイミングでバグ・ホールが開くか……!」
自身の不調とも異なる強大な嫌悪感。
ぞっとするような感覚の正体に『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は舌を打つ。
この穴が、眼前の終焉獣を呼び寄せたのだろうか。
刀を持った個体はこちらをじっと目視し、他の個体は式場へ向かってぞろぞろと進み始める。
「理屈は知らんが、民の身を絶望で濡らす露は払うのみ! 鳴神抜刀流、霧江詠蓮……参る!」
身体の調子はすこぶる悪くとも、流星の如く駆け抜け的の要を引き裂かんとする『散華』の型はそう易々と捉えられるものではない。
はずだった。
「ォォォ……!」
最初の一合。
刀の終焉獣はそれを見切り、居合抜き。
エーレンの太刀を払い、勢いのまま腹部を裂く。
「くっ?!」
何とか他数体の終焉獣には刃を当て後退するも、傷の浅い終焉獣達は止まらない。
「エーレンくん!」
そこへ騒ぎを聞きつけた『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)が向かってくる。
背後には同じく警備に当たっていた『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)、『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)、『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)も一緒だ。
「思ってたより大物が来ましたねぇ」
「結婚式からレディ達を救い出す、ってなら大得意なんだが、まさかバグ・ホールから新郎達を救う事になるとはなんというか」
「ならこの舞台から降りるか、サンディ・カルタ?」
カイトの冗談に、サンディは首を振る。
「今回巻き込まれた人たちは不運だけどさ。その場に俺たちがいた事は幸運にしてやらなきゃ、だろ? ま、やってみるさ」
「いいなそれ。お呼びでないものにご退場頂くだけのつもりだったが……全員助けてお客の皆様に本意遂げてもらう舞台をもう一度用意してやろうか!」
「そうですね、誰一人取りこぼしはしません!」
三人は頷くと一斉に行動。
鏡禍は一団から離れると、式場外周部にある繋ぎ場へ移動。
自分の足で避難してくる人々を乗せる馬車を用意にあたる。
サンディは直接黒い人型の終焉獣達の方へ、カイトは咲良と共に刀の個体に相対する。
「幸せの場所に……似合わないことしてくれるじゃない!」
怒りを込めた言葉と共に刀の前へ飛び出す咲良。
大切な人の傷ついた姿に、迷いなどなく。
むしろ高まった覚悟は、己の身を顧みぬを厭わない。
「カイトくん、お願い!」
「あまり好きな筋書きじゃねぇが、確実に犠牲を減らす方法を取らせてもらう!」
カイトは自身に雨の帳を纏わせると、バグ・ホールで暗く淀んだ空へ手をかざす。
「氷戒凍葬……『破軍星雨』!」
そうして呼び寄せるは光の五月雨。
その浄化の光は一帯の全てを濡らし溶かし尽くすが、正義の心を持つ咲良への影響は若干軽減されている。
「くぅぅ……!」
「さ、咲良!」
腹部を抑え跪くエーレン。
彼とて状況は分かっている。
今この瞬間にも止められなければ、終焉獣が守るべき民――会場へ辿り着いてしまうと。
「巻き添え覚悟など……止めるんだ、咲良。今、俺が……!」
「タダタミノタメノオノレデアレ」
終焉獣の発する音が、彼の刃を鈍らせる。
「うるさい!」
それを遮るは乙女の情熱。
「言葉は、人を幸せにするためにあるんだ! 民のための己……それがエーレンくんを縛る鎖なら、アタシは『エーレンくんのためのアタシ』になる! そしてアタシは、言葉だけじゃない、行動で示してみせる、大事な人を守るって!!」
何故、この少女はここまでしてこんな自分を気にかけるのだろう。
分からない。
はぐらかし続け、それでも告白を受け、挙げ句醜態をさらした。
普通なら幻滅こそすれど、あの子はなおも熱心に想いを届けようとする。
だとすればその気持ちは本当なのだろう。
だがだからこそ、受け取るわけには……。
「なぁエーレン。ここはアンタの舞台でもあるんじゃないか?
邪魔者は俺達も一緒に払ってやる。だからせめて、話くらい聞いてやれ」
「そうそう。咲良ちゃんも、中の奴もみんな命懸けだろ?
なら今ここは、俺にとっても命の賭け所として充分ってワケ。だから遠慮すんなよな。
盗賊ってのは、幸せに暮らす奴が世にいねーと首締まるからよ。
勿論、俺の命をくれてやるつもりはねーけどさ!」
波のように続くカイトの攻勢。
何とか逃れた個体も、サンディの致命の剣が狩り取っていく。
「それもそうよね。ジョセ、貴方は『毒の精霊種』。――生まれたのだもの!」
式場から声が聞こえる。
これが願封じの儀式によって生じた現象なら、恐らく中ではジョシュアが戦っているのだろう。
「……そうか」
民のためにあらねばならない。だから人一倍他者へ献身する。
何も出来ないと言われるままでは居られない。だから何か役目を求める。
恥曝しと揶揄されぬよう鍛えた剣の道は未だ途上。だからこそ鳴神抜刀流を名乗り続け己の居場所を定め続ける。
そんなエーレンの心に、過去に、未だ誰も踏み込む事は出来ぬけれど。
「アタシは過去のあなたを知らない。でも今のあなたを少しだけ知ってる!
かけられた期待が重いのかも知れないけど、今は目を瞑ったっていいじゃない。
誰があなたを否定しても、アタシはありの儘のあなたを受け止めるから!」
縁ある仲間達が幸せになれるよう願うのなら。
幸せを導くためにこそ、知らなければならない。
目の前の少女が叶うとも知れない未来の希望に全力をかける意味。
分からない。ならば知らねばなるまい。
知らなければ、それを守ってやることすら叶わなくなるのだから。
未知なる他者の思いを、願いを。生き延びて。
心を固めた武人は立ち上がると、その声を空に爆ぜさせた。
「式場に集いし民よ聞こえるか! この場はイレギュラーズが預かる! だからとにかく俺達を信じて走れ、逃げろ、生き延びろ! もしてもう一度、式を挙げるのだ!」
再び、構える。
「他人の心など計り知れぬ。時にそれが悩ましく、もどかしく、苦しくもある。
……だが俺は決めた。例えどんな道に至るとしても、知ることからは逃げ出さぬと!」
それはエーレンにとっての新しい門出。
吐き気は消えた。
今度こそ、刃は煌めく。
●光に浮かぶ薬
経験は、根拠のない確信となる。
時にそれは自信、慢心、確率の高い推測と名を変えるが、どれであっても感じる本人にとっては大きなものだ。
ジョシュアの場合、それは毒の精霊と知れた自身へ石が投げつけられる事であった。
(ああ、終わった……。今ので確実に、この場にいる全ての皆様に知られてしまった……!)
涙が止まらない。
それまでどんなに優しかった人も、知れば豹変する。
自身を理解し寄り添ってくれる人もいる。それは間違いなく心の支えだが、石を妨げるものではない。
世界には必ず不理解があり、他者を恐れ忌む限り、人は他人を傷つける。
「フーガ! 望乃!」
「任せろ! いってけソウルだ!」
「やりましょう。私達が出来ることを!」
大地はジョシュアの肩を掴み立ち上がらせる。
フーガと望乃も新郎新婦を。
ダイヤとクロンデールが人々を支え。
会場の外へと向かい歩き出す中、歌声に癒しの力を添えて。
応援マイクを片手に大地が叫ぶ。
「今、反証のSHOWTIME!」
なあなあ、そこ浮くDarker Hater!
ぎゃあぎゃア、粗雑なDowner Talker!
お前はジョシュアの何を知る?
オレはジョシュアの今を知ル!
冬の幻想、降り注ぐ冷豹
オマエは俯く、寒さに怯えテ
ジョセは上向く、輝き見据えて
誰しも心に隠し物あるサー
かくいう俺もネクロマンサー
それでも紡いだ、友情はサーガ。
外野がなんと、言おうがフーガ。
望乃ももちろン。
ジョシュアは常識。
何処の誰だか知らねぇガ。
どしても誰かを憎むなら。
ミルクでも飲んで。
真っ白になって出直しナ!
大地のラップが、投げつけた瓶から飛び出した虹のような光が、キーラを怯ませる。
一方で望乃の届ける歌は闇の精霊種である彼女の本質へ、そしてこの場にいる人や精霊、全てへ捧げる光だ。
(わたしには詳しいことは分からないけれど、でも、どこか悲しそう)
幸せな結婚式を、悲しみや絶望に染めない為に。
人々の命を救い、大切な友人を傷付けさせない為に。
望みをもって歌う。
それは彼女らしい慈愛に満ちた勇壮のマーチ。
感情の高ぶりに応えるよう、握りしめたペンデュラムは桃色の光を優しく放ち、光の精霊が集う道しるべとなる。
(微かに感じるキーラさんの感情。絶望と……喪失?)
全てが分かるはずもない。
けれど何一つ分からないとは言い切れない。
幼い頃は、身体が弱くて何も出来なかった望乃。
そんな彼女も歌の中では勇敢な竜の英雄にも、光り輝く星のお姫様にもなれた。
(歌はずっと、わたしの心の支えで、希望で……大切な人が愛してくれた宝物
だから)
愛するフーガとの、大切な愛の歌で、皆の心を照らしたい。
そんな望乃の思いは、ジョシュアの心にも辿り着く。
――誰かの幸福を願えるジョシュアさんの優しさは。
毒では無く、皆を救う温かな薬だと……。
ジョシュアさんの傍にいる皆は、知っていますもの。
フーガの演奏も同じくらい優しく、そして熱かった。
――何度も依頼や青薔薇隊で一緒になった。
ジョシュアは自前の力と薬学でおいら達や色んな人を命を確かに救ったんだ。
毒の精霊だろうがなんだ、人を癒す薬みたいに優しい友達……それがジョシュアだ!
おいらだって、嫌いだった声の大切さを望乃の愛と歌から教わった。
そして嫌いなその歌声でここにいる新郎新婦を救う事ができた!
どんな絶望だって、音楽が、愛が、希望が……仲間がいれば怖くない!
どうかこの温もりよ、届いてくれ!
「――もしてもう一度、式を挙げるのだ!」
届く声は何も音楽だけに限らない。外ではエーレンが奮い立つ雄叫びをあげ。
逃げる人々を迎えた鏡禍も魔力で召喚した鏡を用い、カイト達の抑える集団とは別にやってきた終焉獣から避難経路を確保する。
「僕たちはイレギュラーズです。必ずお守りしますので、どうか我を失わないで、手を取り合ってどうか安全な所まで!」
終焉獣とて黙ってそれを見ている訳ではない。
ダイヤやクロンデールに続々と連れ出される者達を引きずり込まんと、邪魔となる鏡を、鏡禍を攻撃し続ける。
「幾らでもかかって来て下さい。守ることは大得意なんですよ……!」
大地達の歌の魔力、そして望乃が呼び寄せた精霊の力が入り交じる空間は、少し離れた鏡禍の心すらも浮き彫りにして、ジョシュアの中へ流し込む。
――毒は時として人を苦しめますが、正しく使えば薬ともなるでしょう。
その性質を持つからといって嫌うなんて短絡が過ぎます。
嫌われてしかるべき存在、というのは僕みたいなのを言うんですよ。
最初からそうあるように思われ、語られ、言い伝えられる事で生まれた妖怪。
そんな僕ですら、場所が違えばこんな風に人を守れているんです。
誰かを愛して、共にあることができているんです。
僕が変われたのなら、ジョシュアさんだって……。
誰が何と言おうが、場所が変われば、己の決意があれば、何にだってなれると僕は信じていますよ!
「何度でも言います。僕の存在意義に、ジョシュアさんの存在意義にかけて……誰も傷つけさせはしません!」
鏡禍の纏う妖力――優しい光が剣を成し、聖なる光芒を人型に刻み込む。
「何を言っても無駄。だってジョセは知ってるわ。人を信じたところで、いつかは居なくなり裏切られる。それが不信でも寿命でも結果は同じ。
本当のジョセを知っているのは、私だけ。『リューン』もきっとそう言うわ」
「……」
「……何故顔を上げるのジョセ? 沈みなさい」
「……嫌、です」
届いた魔力は、月光のように優しく包み込む温もり。
強いるのではなく、寄り添う心の温度。
頬を伝う涙は、縁(よすが)を知らず抗う事も叶わなかった、過去との決別。
そして、心を巡る感謝の証。
「……あの森で、僕は最後まで仲間になれませんでした。
でも今は仲間と言ってくれる人達がいて、こうして勇気を、温もりを与えてくれました。そして……」
胸元に揺れる懐中時計に手を添え、優しく握る。
そうすれば、ここにいない彼女と、ネックレスを通して繋がれる気がしたから。
幸せへの祈りが、気付きかけている愛が、守ってあげたいという想いが。
確かにそこにあると実感できたから。
決意を胸に、歌に照らされた心が、涙を拭わせる。
「どうありたいかは僕自身が決められる……。例えそれが人から見れば傲慢だと思える願いだったとしても。
僕はこの力を病を治す薬にしたり、皆を守るために使いたいのです。
大地様と赤羽様の韻にのせられた友情への信頼が。
フーガ様と望乃様の愛が照らす未来への希望が。
エーレン様と鏡禍様が身体を張って示された在り方を貫く強さが。
心優しい魔女様が教えてくれた、永遠を願いたい温もりの時間が。
僕のここにあります」
懐中時計越しに、胸の奥を叩く。
「例え僕が毒の精霊だとしても……優しさの光に包まれる限り、薬となれる毒の精霊になります! そうなりたいと思える道が、今僕には見つかりました!」
冬は、凍えそうな寂しさは命を試す。
厳しければ厳しいほど、春が訪れれば、その命は大輪の花となるべく芽吹くのだ。
「キーラ様、貴方には心を照らすものがありますか? もし無いのなら……いつか僕とクロンデール様が、照らしてみせます」
「……」
ジョシュアが抱いた新たな決意を聞き遂げたキーラ。
暫く黙っていたが、やがてニヤリと笑うと溶けるように崩れ落ち始める。
「……リューンを喪った傷。癒やせなければ、貴方はまた友達を喪う事になるわ。
貴方のその願いが絶望になるかどうか……きっと本物の私が見届けてあげる」
そう言い残して、キーラだった何かは黒い血だまりとなって地面へ広がり。
闇の結界が消えていく。
「一体何が……?」
「分からない、だが確かに勝ったんだ。さぁ、皆を救おうジョシュア」
「へっ、もう泣くんじゃねぇゾ?」
「そうだな! 行くぞ新郎、新婦の手、離すんじゃねぇぞ!」
「無事に帰って、皆で一緒にいちごのショートケーキを食べましょうね」
「……はい!」
今度こそ、皆と一緒に前を向いて。
駆け出すジョシュアの胸で、懐中時計は未来への時間を刻んでいく。
●鎖、揺らぐ
ジョシュアの決意が芽吹き、遂に式場の結界を晴らす。
「さぁ、皆さん! 早くあちらの馬車に!」
避難する人々の列も、鏡禍の援護により式場外周部へ辿り着き始め、どんどんと馬車へ乗っては敷地外に避難していく。
後はこの命を守りきるだけ。
「オォォォォ!!」
「アンタが守ろうとしてきた人型はもう全滅だ。この舞台、とっとと幕引きにしようぜ?」
今度はカイトが振るう致命の剣。
素早く振るわれ、そして繰り返される技法は終焉獣の『足』を奪っていく。
「悪が栄えたためしはねぇんだよ! それが魔王だろうが、終焉獣だろうがな!」
継ぐは機動力を活かし後方を取ったサンディ。
闘気の棘が鎖の上から終焉獣の体を穿ち弱らせる。
「「今だ!」」
「お前が俺の鏡写しなら……選んだ仲間が悪かった!」
口から吹きこぼれんとする朱を押し殺し、渾身を込めてエーレンが放つは始まりの一閃。
ただの居合いが、決意の雷を纏いその身を裂いた。
「オ、ォォ、オォォォ!!」
されどこれも武人の在り方か。
死なば諸共の太刀が怒りの矛先――彼女へ迫る。
「やらせんと言っている!」
返しの刃。
再び動いたエーレンが受けた。
「咲良!」
「……オッケー!」
繋いだバトン、残るはゴールまでの一直線。
(エーレン。あなたは自分に価値がないって言うけど。
友達のために闘うあなたが好き。
悪事を許さない正義感が強いあなたが好き。
何より……あの時、アタシのことも大切にしようとしてくれた。
そんな、あなたが好き)
有りっ丈の力で拳を握り。
勝負服に身を包んだ正義の味方が、超新星となって駆け抜ける。
「アタシが皆の未来を……あなたの影を照らす星になる! なってみせる!!!」
「オオオォォォ……!!!」
外骨格に流した魔力。
必ず倒すという誓いが最後の終焉を打ち砕いた。
「はぁはぁ……おわ、った……」
「咲良、しっかりしろ!」
気を失うようにして後ろへ倒れ込む仲間を、エーレンは抱き留める。
「咲良ちゃん痛かったよな。だが大丈夫だ、痛みはその内治る。命さえありゃあな!」
駆け寄るサンディは咲良、エーレンの治療に当たり。
「だな。サンディ、二人は任せた。俺は鏡禍の方を手伝ってくる。
ここまで来てバグ・ホールに飲み込まれるんじゃ、話の〆として最悪だからな」
カイトもまた『裏方』として為すべき事を為し。
鏡禍の誘導や、ダイヤとクロンデールの活躍も相まって参列者は全員退避。
残る新郎新婦も、フーガと望乃が。
そして最後に大地とジョシュアも無事続き。
結果バグ・ホールは命無き物だけを飲み込み、やがて消え去るのであった。
●約束は果たすもの
あの事件から数日。
バグ・ホールの影響を長時間受けた者や、特に激しい戦闘を行った者、不調から立ち直るのに時間がかかる民間人の回復を待つ事にはなったものの。
どんな絶望にも諦めない希望を持った新郎新婦により、改めて結婚式が執り行われた。
流石にキャラバン隊の頭の貯蓄も尽きたので、集会場の片隅を間借りしてのなんとも侘しいものとなってしまったけれど。
大地のラップが、望乃が歌いフーガが奏でる流行歌が。
ダイヤの曲芸と、それら催し物に拍手を送るサンディ、カイト、咲良、クロンデールが。
「こちらをどうぞ。結婚式を乱してしまったお詫びと、僕からの心からの祝福を込めて」
ジョシュアが己に宿る力を薬として活用した栄養剤で、色鮮やかに咲いたガーベラの花束が添えられれば。
そこは既に最高の幸せに包まれていて。
「病めるときも健やかなる時も、貴方を愛すと誓います」
誓いの言葉、そして口づけ。
「どうですかエーレンさん?」
「ん、何がだ鏡禍?」
「今のこの光景は、貴方にとっての鏡写しとなりましたか?」
「それは……分からん。正直今はそう思わぬが」
エーレンも組んでいた腕を解き、祝福に拍手を送る。
「人が幸せになれるなら、それに越したことはない。だが譲れぬ信念もまたある。故に何が幸せかは……話してから決める」
「そうですか。もし何かお困りごとがあれば鏡で自分に問いかけると良いですよ。頭が整理されますし……もしかしたら、鏡の中の自分が答えを知っているかも知れませんから」
鏡禍もまたイタズラっぽい笑みと言葉を渡すと、温かな祝福の輪に加わるのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
※納品遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
冒険お疲れ様でした!
式場の中と外。
それぞれで繰り広げられた戦いは一旦の決着を見ました!
内外共に連携が非常に素晴しく、最高の結果を引き寄せられたかと思います!
滅びの未来から世界を救うこと。
縁ある者達が幸せになること。
その大きな願いを叶えるには、己自身も願いの輪に加わる必要があるのかも知れません。
未だ混沌に鎖が残る皆様は、それぞれの結末も近い事かと思います。
このシナリオが、どのような形であれ未来へ歩む一助となれれば幸いです。
皆様誰が欠けても為し得ない、素晴しいプレイングの数々でした。
その上で今回は見事仲間の想いに応えてみせた貴方にMVPを。
それでは、またどこかでお会いできることを願いまして。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
※相談日数4日です。状態異常などに注意してご参加下さい。
●目標(成否判定&ハイルール適用)
15ターン以内に結婚式場から避難する
●副目標(一例。個人的な目標があれば下記以外にも設定可)
心に宿る不安の種を消し去り花を芽吹かせる
心に残る過去の鎖を断ち斬る
民間人も全員無事に避難させる
●優先
※本シナリオは、以前に運用したシナリオ内プレイングに影響を受け制作されています。
合わせて関係者やアフターアクション、アフターアクションでのご招待も採用しておりますので、以下の皆様(敬称略)へ優先参加権を付与しております。
・『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)
・『温もりと約束』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
・『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)
・『世界で一番幸せな旦那さん』フーガ・リリオ(p3p010595)
・『世界で一番幸せなお嫁さん』佐倉・望乃(p3p010720)
●冒険エリア
【幻想内某地】
結婚式場の敷地3km四方とその上空(以後「式場」表記)
●冒険開始時のPC状況
選択肢機能をご用意しましたのでご活用下さい。
《依頼遂行に当たり物語内で提供されたPC情報(提供者:ジョシュアさん エーレンさん 情報確度B)》
●概要
結婚式の最中、上空にバグ・ホールが発生。特殊な環境となって人々が苦しんでいる。
バグ・ホールは徐々に巨大化しているため、式場から自分達と出席者達を避難させたいが、障害となる存在が複数確認されており、対処に協力してほしい。
●人物(NPC)詳細
【子供達】
つり目とたれ目の少年達。
意味深な事をいいつつ終焉獣を操ります。
とはいえ、現状は良く分からない存在です。
良く分からないということは、今は何をすべきか判断できない。
つまり無視して良いということです。
【キーラ・ナハト・フルス】
闇の精霊種。ジョシュアさん関係者その1。(シナリオ背景右側)
過去の経歴と自身の持つ性質から、可哀想そうな人を見るのが好きな人物。
ジョシュアさんは彼女に若干の違和感を持ったものの、それ以上に感じる恐怖が優位に立っている。
魔力で式場中心部全体に闇の結界を展開しています。
本来なら闇や影を用いた攻撃手段も持つようですが、今回は何故かそれをしてきません。
あくまで結界を維持し、言葉責めをしてきます。
【クロンデール(本名 ルシカ・クロンデール)】
風の精霊種。関係者その2。(シナリオ背景左側)
かつてキーラに名と光の力を奪われており、自身は所詮すきま風だと消極的に考えている。
それ故臆病な一面もありますが、ジョシュアさんが大変だった時に助けてくれた人物でもあります。
式場中心部で救助活動などを手伝ってくれます。
自力BS回復が可能。
●敵詳細
【キーラ・ナハト・フルス】
人物詳細にて解説。
【終焉獣】
黒い人型のような個体。
数は15体+1d??でランダム。
??の部分は、式場に居る人々が持つ不安の大きさと参加PC数で変わります。
(全員がアゲアゲパリピ気分ならば増援は出現しませんが、流石にそこまでは難しいので、順調にやれても数体は増援が出ます。裏を返せば順調に人々を避難させられたり励ましたり等ができれば、一桁台の追加なので少人数でも対処できそうです)
出現する個体は何故か【識別】/【不殺】が無効。
(正確に表現すれば、攻撃時のみ味方判定になりイレギュラーズや民間人との区別が出来ず。
体力が1割を切ると黒い血だまりの様に足元へ溶けた後、一定時間で消滅)
式場周辺の森からやってきて、捕まえた人を森へ連れ去ろうとします。
HPは異常に多いものの、機動力をはじめその他ステータスは低めです。
※とはいえ、一般人からすれば全力疾走でも逃げきれるか怪しいくらいの速度です。
接近すると抱きつくような行動を取りますが、(イレギュラーズ目線だと)大きなダメージやBSはありません。
(仮に抱きつかれた場合、火の粉が徐々に自身へ移ってくるような、チリチリとした不快感のある痛みを感じます。
一般人にとっては火事で焼かれるような気分です)
【特殊終焉獣】
※参考外見
https://rev1.reversion.jp/illust/illust/83872
1体のみ、他の終焉獣の援護をするように行動。
意思疎通はできないが「ただ民のための己であれ」と聞こえる音を発している。
刀を持ち、『鳴神抜刀流』と呼ばれる居合い戦法で戦います。
全般ステータスは高めですが、更に以下のような特徴を持ちます。
・EXA0、代わりに機動力・命中・回避・CT高め、EXF150
・攻撃全て【移】【物理】【必殺】【物無ブレイク】【出血系列BS付与】
・痺れ系列以外BS無効→痺れ系列付与時のみ、こちらの必殺が通ります。
●シナリオギミック詳細
【闇の結界】
この結界内にいる限り、HPを回復するスキルを使用した場合、実際に回復した数値ー100のHP即時ダメージ+回復量の1%分確定HP継続ダメージ(3ターン。BSと同様のタイミングで計算)を受ける。
例)HP5000回復するスキルで民間人を500回復した
→回復処理後、400即時ダメージ+50ダメージ×3ターン
PCがBSの存在に気付き回復した際に、仲間達や民間人の反応を見て結界の能力に気づくでしょう。
特に民間人は、数字上回復量が多くとも、回復を受ける度に痛みを感じるので、まるで毒を注入されているように認識することでしょう。
【バグ・ホール】
理屈や原理が一切不明の『穴』。
何かを試しても構いませんが、恐らく全て無意味となります。
ホールに飲み込まれた存在は問答無用で『死』にます。
シナリオ開始時既に、直径10m程度の球体が上空150mに発生しており、ターン経過毎に球の直径が10mずつ大きくなります。
(今回のみ、1ターンにおけるシナリオ内進行時間は長めです)
人々の不安が高まると球の巨大化が加速or数が増える可能性があります。
ホール発生後は、周囲200mに、毎ターン以下の効果を発生させます。
・ホールへ直径×1m引き寄せる
(10mにつき機動力1で抵抗可能。対象者が機動力0or飛行時引き寄せ1.5倍)。
・不特定デバフ1つ付与(猛毒、氷結、窒息、呪縛 の内、毎回1つを抽選し付与)
・特定デバフ2つ付与(塔、奈落、停滞、体制不利 の内、最初に選ばれた2つを毎回付与)
・特殊スキル発動(妖精殺し、ジャミング、ホール周辺の空間歪みによる物理的視界不良)
各種デバフは無効化で対処可。
一般人は無効化を持っていないので、回復し連れ歩くか、背負う/乗り物を利用する等で運搬する必要があります。
(運搬時、人数分だけ機動力に-補正)
ホールの反応値や行動回数は直径に比例して上昇します。
ホールの増加は予知できませんが、出現したかどうかは出た瞬間にぞっとするので分かります。
●エリアギミック詳細
<1:式場中心部(1.5km四方)>
多くの戦闘力を持たない人々がBSで苦しんでいます。
放置すると森から迫る終焉獣に連れ去られたり、巨大化したバグ・ホールに吸われます。
エーレンさん以外の優先者はこちらになります。
こちらに参加されたPCは、武装に当たる部分に装備しているアイテムは数値のみの参照となります。(公平性のため拳や体内内包型に特殊化されていても今回は使用できないものとします)
<2:式場外周部(中心部以外)>
終焉獣を倒しながら、逃げてくる民間人や仲間達の退路を確保します。
このエリアより外へ避難した民間人は無事に逃げ切れるでしょう。
エーレンさんはこちらになります。
エリア外の森から迫る終焉獣と特殊終焉獣がいます。
<全般(戦闘エリアのみ表記)>
光源:1・2問題なし
足場:1・2問題なし
飛行:1・2問題なし
騎乗:1近くまでなら可 2可
遮蔽:1・2なし
特記:特になし
《PL情報(提供者:GM プレイングに際しての参考にどうぞ)》
【主目標のために何すればよい?】
PCの皆様がバグ・ホールから逃げきれれば成功ではありますが。
民間人を助けたいと思い行動する仲間が多いかと思います。
【式場中心部】
やることは救助活動の一点です。
回復行動は他者へ痛みを与えますが、それでも機動力を確保する方が重要でしょう。
武器もないですし、キーラは守りが堅いので攻撃するだけ時間の無駄です。
何らかの方法で闇の結界を晴らせれば良いのですが……
不幸中の幸いでしょうか、終焉獣の攻撃はイレギュラーズにはあまり辛くはないので、その身を呈して守るのも作戦の一つです。
【式場外周部】
終焉獣の対処と避難誘導の協力等ができるでしょう。
終焉獣や特殊終焉獣の討伐は必須ではありませんが、特殊終焉獣さえ倒せれば救助へ注力する余裕ができそうです。
特殊個体は回避減衰を意識すれば攻撃を当てられるようになります。
研ぎ澄まされた刃といえど、1本では折れてしまうかもしれません。
【PC/NPCの心持ち】
人によって、心の中は様々です。
晴れ渡っている人もいれば、不安で暗雲が立ち込める方。
何かがきっかけとなって、雷雨の如く心を乱す方。
どのような心持ちであってもそれは自由ですが、自分を省み、仲間を通じて希望を得られた時、見える景色が違ってくるのかも知れません。
心が晴れている方は、心が澱みかける仲間へその温もりを分けてあげて下さい。
・その他
目標達成の最低難易度はN相当ですが、行動や状況次第では難易度の上昇、パンドラ復活や重傷も充分あり得ます。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
バグ・ホールが巨大化しきる前に必ず逃げて下さい。
冒険開始時のPC状況
シナリオ開始時の立ち位置や立場を選べます。
(指定がなくてもプレイング内容から判断し振り分けますので、よく分からなければ無視しても大丈夫です)
どこにいても、バグ・ホールの発生を認識しぞっとした所からスタートです。
【1】結婚を祝いに来た!(式場中心部)
結婚式の盛り上げ係に招待された。
何かお祝いムードだから混ざりに来た。
等々の理由で、式の参加(見学)者として来ています。
(ステータスとして装備品の数値は参照しますが、攻撃に用いることが出来る装備品は持っていない扱いとなります)
【2】結婚を守りに来た!(式場外周部)
滅びの気配を感じ取った。
ローレットから出た警護依頼を受けただけ。
等々の理由で、式の参加者を守るために来ています。
(こちらの場合、通常通り装備品を携帯しています)
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