PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Je te veux>奪われた大切なモノ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 冠位色欲を撃退するなど、イレギュラーズの戦いが続く中、
 ギルドマスター『レオン・ドナーツ・バルトロメイ』が失踪してしまう。
 その代理となるべく踏ん張っているのは、ユリーカ・ユリカだ。
「ボクたちはやれることをしましょう!」
 ユリーカはそこで、ラサ南部砂漠コンシレラの変化について語った。
 R.O.Oで観測されたでっか君……終焉の獣『ベヒーモス』。
 その背中から崩れ落ちた小型の終焉獣が転移陣を使い、混沌各地に現れているという。
「それらの狙いはパンドラ収集器であり、その収集だとみられています」
 アクアベル・カルローネ(p3n000045)は多忙になったユリーカを助けるべく、イレギュラーズへと説明を始める。
 空中庭園のざんげの持つ『空繰パンドラ』のパンドラ蓄積が滞っているとの情報もあり、ローレットはパンドラ収集器を回収、ざんげの元へと届けた後、収集器の役割を解いて持ち主に返すことにした。
 これもユリーカの配慮らしい。

 さて、アクアベルの依頼は練達の再現性東京での事件。
 すでに小型ベヒーモス……通称ちっさ君が暴れたことで、数名のパンドラ収集器が奪われてしまった状況だという。
「練達には、ローレットに属せず、元の世界の暮らしを望んだイレギュラーズも多くいます」
 力なき人々から回収するのが早いと終焉獣らもみて、この地を狙ったのかもしれない。
 ちっさ君の他にも、別の場所で出現が確認されている変容する獣やアトロポスといった存在もいるらしい。
 特に、アトロポスは寄生型終焉獣を生み出す可能性があり、放置できない。
 それらを取り纏めているのは顔面のような黒い体躯の終焉獣だとか。
「人体型の終焉獣にはさらなる上位種クルエラがいますが、今回その姿は確認されていません」
 混沌各地を回っているらしく、各地でその痕跡がみられるが……。
 今は目先の事件の対処に当たりたい。
「パンドラ収集器……」
 アクアベルは髪飾りがそうらしいが、練達の人々は大切にしているものが収集器となっているものもいる。
 今回の一件でそれが終焉獣らに奪われ、悲しんでいるのだという。
 是非とも取り返し、持ち主の元へと届けてあげたい。
「どうか、よろしくお願いします」
 アクアベルは改めて頭を下げ、この事件の解決を願うのである。


「ああっ!!」
「それ……返して!!」
 練達の街中、影の如き獣が瞬時に人々から物品をひったくり、そのまま逃走していく。
 持ち主は必死に追いかけたが、獣の速さは通常の人間にはとても追いつけるものではない。
 大切な物を奪われた者は泣き寝入りしていたようだ。
 獣の狙いは、いずれもパンドラ収集器。
 それを奪ってどこに持っていくのかは不明だが、獣共は人の少ない路地へと向かう。
 そこには、青白い小型の獣や、人型となった樹など、異形の集団がいた。
「……………」
 中でも人面を思わせる漆黒の終焉獣は微笑みを湛えており、一際不気味に思える。
 口元を吊り上げたそいつは裏路地を進み、マンホールへと連れの獣共を誘導する。
 おそらくは、下水道を使っていずこかへと逃げるつもりなのだろう。
 だが、そこに駆け付けるイレギュラーズがそうはさせない。
「「…………!」」
 メンバーの敵意を察した終焉獣どもは銘々に構えをとる。
 やや薄暗く、横幅の狭い戦場だが、敵も大柄な個体もちらほらおり、満足に動けぬものもいるはず。
 イレギュラーズは手早く作戦を練り、それらを殲滅すべく動き出すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <Je te veux>のシナリオをお届けします。
 練達へと現れし終焉の獣ベヒーモス。
 それが無数の終焉獣を生み出しており、パンドラ収集器を集めにかかっているようです。
 この群れの一団の掃討を願います。

●概要
 練達に住む人々から奪ったパンドラ収集器を無数抱え、去ろうとしている終焉獣を追跡します。

 街の路地から下水道へ向かうべくマンホールを開けていたようですが、その間際でイレギュラーズが駆けつけます。
 路地は道幅が狭く、
 マンホールへと逃げ込まれると追跡が困難になる為、その前に叩くべきでしょう。

●敵
〇終焉獣:愉悦の顔面×1体
 全長4m程。全身真っ黒な顔面。
 今回は以下の集団を率いています。
 気色悪い笑いでこちらの戦意を低下させ、異言を紡いで惑わしてきます。
 加えて、笑い声をあげて周囲を侵食してくるようです。
 なお、下水道に入る際などは変形もできるようです。

〇『終焉の獣』小型ベヒーモス(通称:ちっさ君)×2体
 全身2~2.5mほど。R.O.Oで登場した「でっか君」から零れ落ちた欠片から変形した存在です。
 四本足の獣で、どす黒い霧でこちらに封印を含む状態異常、咆哮と共に飛行対象への状態異常、狂化による自己強化、終焉をもたらす浸食と小さくなってもその攻撃は油断なりません。

〇変容する獣×3体
 全長1mほど。ちっさ君のさらにミニチュアサイズ。
 体の中身が透き通っている蒼白い終焉獣。
 こちらはちっさ君の姿を模倣しただけの存在で、食らいつきに腕での薙ぎ払いと力技で攻めてくるようです。

〇アポロトス×3体
 全長2m前後。
 足を根の如く変えて広範囲を絡めて締め付けたり、腕を太い枝へと変えて薙ぎ払ったり、槍の如く突き出したり、多数の枯れ枝を撃ち出してきたりと多彩な攻撃を行います。
 また、「終わりは遁れざる者である」と告げ、滅びのアークを周囲にばら撒く特徴が有ります。狂気状態や『寄生型終焉獣』を産み出す力を有しています。

〇寄生型終焉獣×?体
 全長1m弱。戦闘開始地点ではその姿は一切ありませんが、アトロポスが生み出す可能性があります。
 スライムのような姿をしており、取り付いた相手を狂気状態へと陥らせます。妖精達も例外ではありません。
 寄生状態の特効薬は『死せる星のエイドス』であることが分かっており、混沌でも利用することで寄生された人を無事に助け出せます。
 また、寄生終焉獣同志で引っ付き合い、強化個体になることも。
 スライム状の姿で戦う際は、身体の一部を弾丸のように飛ばしたり、近づいて相手の動きを止め、精神に作用してその体を乗っ取ろうとしてきます。

●【寄生】の解除
 寄生型終焉獣の寄生を解除するには対象者を不殺で倒した上で、『死せる星のエイドス』を使用することで『確実・安全』に解き放つことが出来ます。
 また、該当アイテムがない場合であっても『願う星のアレーティア』を所持していれば確率に応じて寄生をキャンセル可能です。(確実ではない為、より強く願うことが必要となります)
 解き放つことが出来なかった場合は『滅びのアークが体内に残った状態』で対象者は深い眠りにつきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <Je te veux>奪われた大切なモノ完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月16日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
シラス(p3p004421)
超える者
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
囲 飛呂(p3p010030)
きみのために

リプレイ


 練達、再現性東京。
 この地へと到着したイレギュラーズはすぐに現場へと急行する。
 合わせ、周囲の警戒を強めるべく、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)などは五感をフルに働かせ、警戒を強める。
 ヨゾラが人払い対策として、現場となる路地近くに工事中看板を置く傍らで、『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)がオルド・クロニクルによって強化した保護結界を展開、結界術を発動させて一般人が戦場となる路地へと迷い込まぬよう対策する。
 準備するメンバーの先で、敵を牽制すべく残りのメンバーが路地へと駆け込んでいく。
「間に合った!」
 真っ先に敵へと呼びかけた『無尽虎爪』ソア(p3p007025)は、暗がりでこちらを振り返る敵を見渡す。
 まず、目につくのは巨大な顔面。
 それが従えているのは、小柄なベヒーモスにそれを模したより小さく青白い『変容する獣』、そして、樹木をベースとしたような人型のアポロトスだ。
「次から次へと沸いて出やがって」
 キリなく現れる終焉勢力に、『竜剣』シラス(p3p004421)も悪態づく。
 それらの敵はそれぞれ小物らしきものを所持している。
 おそらくは、練達に住む人々のパンドラ収集器だろう。
「全く。厄介なことになったものよね」
「我が国でよくもやってくれたものだ」
 ルチアがこの状況に煩わしさを感じ、『記憶に刻め』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が静かに怒りを燃え上がらせる。
 終焉の手勢からすれば、パンドラの蓄積を阻みたいのも道理とルチアは勘繰るものの、収集器の奪取はそれだけは理由ではない気がすると唸っていた。
 そこで、『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は奪う側だった私が言えた義理ではないのですが、と前置きして。
「仲間の流した血と涙と、払った犠牲の積み重ねで溜めてきたものですから奪われればそれはむかつきますし、何としても奪い返します」
「何にしても、これ以上の被害を出すわけにはいかないわ」
 瑠璃もルチアも揃って戦闘態勢を取れば、敵もまた抵抗すべく身構える。
 だが、この場は収集器の奪取が優先なのだろう。
 その視線は時折、路地の向こうにあるマンホールへと向いている。
「これ以上奪わせてたまるかよ、全部取り返す」
 収集器の回収に強い意欲を見せる『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)はあの人……ユリーカの頑張る姿を思い出して。
(なら、俺は力になる)
 俺にできることは、あの人を支えることと、少しでも安心させることだと、飛呂は自らに言い聞かせる。
(普段は一般市民の救助を担うことの多い、人助けが得意なあたしっすが……)
 『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)は、この場のアポロトスが寄生型終焉獣を生み出す危険があり、対策として『死せる星のエイドス』も持ち込んではいるが。
「今回は明確な仕事、こっちに集中するっす」
 唸る獣どもが牙を剥く。
 収集器を簡単に返すものかと主張しているようだ。
「練達の人達の大切な物を奪うなんて……許せない。奴等を倒して取り戻すよ!」
 ヨゾラはすでに動き出す仲間を目にしながら、魔術紋を輝かせるのである。


 すでに、互いにぶつかりそうな状況だが、イレギュラーズは冷静にこの場の対処に当たる。
 路地での交戦だが、ウルズは奥のマンホールへと敵が向かうことも警戒して。
(今回の依頼目標はパンドラ収集器の奪還)
 敵を逃がさないことが肝要とみたウルズは、幸いこちらにはあたしがいると胸を張る。
 機動力の高いウルズを地上で振り切るのは不可能だと、彼女は豪語して。
「あの下水道にさえ入れさせなければ、目標は達成したも同然っす」
 ならば、ウルズの初手の目標は……、あのマンホールだ。
 頷く瑠璃も、素早くファミリアーの蝙蝠をマンホール内へと飛び込ませる。
 蓋が閉められるまでマンホール内に何も入らなければそれでよし。
 何かが入った場合は、戦闘後に後を追って処理する為、ファミリアーに追尾と瑠璃は万全を期す。
「それなら、ボクはサポートに回るよ」
 落ち着いた態度でソアは敵の抑えに当たる。

 さて、前線ではすでにシラスが仕掛けていて。
「舐めるなよ、逃がすわけねえだろうが!」
 やはり、マンホール内へと敵に直行されるパターンを防ごうとしていた彼はファイトスタイルをとり、気を解き放つ。
 それは汚れた水を思わせ、敵陣を捉える。
 獣どもがこちらへと意識を向けたなら、シラスの狙い通りだ。
 多少薄暗い場所での交戦だが、暗視で対処する飛呂は顔面の動きを気にかけながらも、自身を戦いに最適化した状態へと近づける。
(練達、再現性東京は俺の故郷だ)
 この地も人も、守りたい。
 強い想いを抱く飛呂は突撃戦術を取って。
「めちゃくちゃにする気なら、とっとと出ていけ!」
 狙撃銃を構えた飛呂は敵陣へと鉛をバラまく。
 素早く叩き込まれた銃弾に、獣どもも怯まざるを得ない。
(飛呂先輩、信じてたっすよ)
 その間に、ランナーズ・ハイで体を軽くしていたウルズがマンホールを目指す。
 一直線に走れたならば彼女もそうしただろうが、生憎と敵が立ち塞がっており、大きな動きを見せぬ愉悦の顔面が気になるところ。
(リーダー格があの顔面と決まったわけではないけど)
 仲間がうまく周りの敵を止めてはいる。
 まずは、ウルズはマンホールを閉じるべく敵の後方を目指す。
 そのウルズの進路を塞ごうとする敵を、瑠璃は見逃さない。
(アポロトス……好きにはさせません)
 狙いが仲間でも、寄生型の産み出しであっても、妨害すべき。
 瑠璃は周囲に漂う根源たる力からケイオスタイドを巻き起こし、敵陣へと浴びせかけていく。
 寄生型は一般人に取り付く危険もある。
 メンバーの攻撃はその脅威を産み落とす可能性のあるアポロトスへと集中して。
 魔術紋……自分自身を励起し輝かせるヨゾラもまた、さながら濁流の如く星空の泥を発生させる。
 一時、路地は星空の海を思わせるような光景が広がるが、もがく獣どもはそれらを振り払ってこちらへと飛び掛かってくる。
 仲間へと牙を剥き、太い腕で薙ぎ払い、槍の如く腕を突き出してくる敵。
 ルチアはそれらの攻撃にさらされる仲間の回復に当たるのだが、まずは祈りを捧げて奇跡を起こす。
 一度、鮮血乙女でアポロトス1体を魔空間へと一時閉じ込め、全身をくし刺しにした後は、ルチアも本格的に回復へと動き始めていた。
(この街は現実に馴染めなかった異世界の者達の拠り所)
 マニエラも一旦はコイントスで運命をつかみ取り、交戦態勢をとる。
 練達という街は故郷に戻れぬ者の拠り所。
 そんな彼らが大切な物を奪われれば、絶望して滅びのアークを溜める要因にもなるだろうとマニエラは推察して。
「その罪、裁きを受けてもらう」
 やはり、アポロトスを最優先撃破対象とするマニエラは、それらを中心に楽園追放――神聖秘奥の術式を発動させる。
 目の前に立ち並ぶ終焉の手勢は、マニエラにとっては邪であり、悪。
 その全てを打ち祓うべく、彼女は敵陣を光で覆う。
 ブオオオオオオォォォ……!
 その光に耐えたベヒーモス2体は少し遅れて、咆哮する。
 体から発せられる霧はこちらの力を封じてくると、事前資料で確認していたソアは。
「面倒だから、対策させてもらおうかな」
 敗れざる英霊の鎧、聖骸闘衣。
 ソアは手数を活かしてまずは自身をその闘衣で身を包む。
「ふふん、精霊の護りだよ」
 一人ずつ、前線に立つメンバーから、ソアはさら闘衣によって支援する。
 その一人、シラスがなおも泥の監獄で敵を覆い、さらに見えない糸を張り巡らせて敵の動きを制する。
 満足に動けぬ獣どもが力で押し切ろうともがくが、その場を動けずにいたようだ。
 それもあって、ウルズは悠然とマンホールへと近づいて。
 程なく、重い金属音が穴を塞いだ。
 …………。
 退路を断たれた終焉獣達だが、愉悦の顔面はなおも笑みを崩す様子はない。


 マンホールを封鎖したことで、イレギュラーズ一行の士気は高まる。
 続き、アポロトスの掃討に、力を尽くすメンバー達。
 ウルズは一時、マンホールを護るべく身構え、鼓動を高めて敵を誘う。
 …………!!
 アポロトスも躍起になり、枝の如き腕を振り払い、根の如き足を延ばしてこちらの動きを止めようとする。
 しかしながら、メンバーがその力を食い止め、動きも制しており、満足には動けない。
(今のところ、寄生型を産み落とす様子はありませんが……)
 動物の類などそうそういないと思うが、最悪仲間らに寄生することも想定する瑠璃だ。
 この後、どう動くかは読めぬ以上、1体ずつ数を減らすのみ。
 弱って動きの鈍ったアポロトスへ、瑠璃は精神力を高めた弾丸を撃ちだす。
 その一撃を叩き込まれたアポロトスは衝撃に耐えられず、体を崩していく。
 まずは1体。
 マニエラがすかさず、アポロトスや顔面を纏めて捕捉する。
 仲間を巻き込まぬなら、暴風を起こして敵を引き裂くこともできるが、今はマンホールを護るウルズを中心に敵は集まっている。
 ならば、再度パラダイスロストを展開し、マニエラは強く敵陣を照らす。
 仲間の攻撃で傷が深まっていたのだろう。
 別のアポロトスが空を仰ぎ、バラバラと体を崩壊していた。
 その後も、残る1体は枯れ枝を撃ちだすなどして抵抗を続けていたが、シラスが殲滅すべくそいつを見据えて。
「蹴散らす」
 後のことはさておき、まずは序盤の有利。
 暗器を飛ばして攻め立てていたシラスはここぞと威力ある一撃を繰り出す。
 必殺技は初めから使っていくのがシラスの信条。
 腕に纏わせた強力な魔力を持って、シラスはアポロトスの胴体を打ち貫く。
 さすがに胴体を穿たれたそいつは立っていられず、枯れ木のように倒れていった。

 寄生型が生み出される危険を真っ先に除外し、イレギュラーズは残りの終焉獣の掃討を狙う。
 飛呂はまだ多く残る敵に射撃を続ける。
 厄介な能力を持っているのはアポロトスだけではない。
 ちっさ君こと小型ベヒーモスは様々な異常をもたらす霧を発するし、愉悦の顔面の笑いはこちらの戦力低下、浸食まで行うという。
 それらの攻撃を減らすべく、飛呂はジャミル・タクティールを続けて終焉獣らを満足に立ち回らせない。
 さらに、飛呂は隙を見てちっさ君へとラフィングショットを見舞い、体力を削ぐ。
 ブオオオォォォォ……!!
 2体揃って嘶くちっさ君らは己を狂化し、狂ったように殴り掛かってくる。
 その威力はオリジナルから小さくなっているとしても、侮れない。
 前線で仲間が耐えている間に、ヨゾラは詠唱して。
「楽園追放……貴様等が奪った大切な物、返してもらうよ!」
 ヨゾラもまた、パラダイスロストを展開する。
 混沌において、終焉の獣は邪なる存在であり、滅ぼさんとする悪。
 瞬く強い光がベヒーモスの体を取り巻く。
 光が激しく爆ぜると、ちっさ君の片割れが煙を噴き、音を立てて地面へと伏していく。
 すぐにその体は砂のように崩れ、跡形もなく消し飛んでしまった。
 ブオオオォォォォ!!
 鼻息荒く、もう1体も殴り掛かってくるが、やはり力を封じられているのか、全力を出せずにいたようだ。
 ここでこの連中を野放しにすれば、無辜の命が散るかもしれない。
(そんなの、ローレットの意味なんてないわ)
 強く想うルチアは己の矜持にかけてでも彼らを絶対に救うと強く意気込み回復に当たる。
 仲間に慈しみの心で癒しへと当たる傍らで、仲間の連撃の合間を縫うように再度鮮血乙女で仕掛ける。
 ちっさ君と呼ばれてはいるが、それでもメンバーと比べれば大柄な相手。
 それでも、その体躯は異空間へと呑み込まれ、無数の牙に貫かれる。
 しばらく暴れていたベヒーモスだったが、やがて果てたのか、黒い靄のようなものが異空間から噴き出し、消えていった。
 ほぼ同じタイミング、変容する獣を狙っていたソアがそいつを追い込んで。
 跳躍したソアは頭上から敵を強襲する。
 相手はミニチュアサイズの蒼白いベヒーモスだ。
 剛腕をソアへと叩きつけようとしてくるが、頭上からの強襲には対処できず、そのまま頭を爪で薙ぎ払われて悶絶する。
 相手が大勢を崩したところで、ソアは一気に虎の爪を激しく振るい、斬閃乱れ咲きともいうべき乱舞。
 刹那妖華が咲いたかと思うと、終焉獣の蒼白い光が存在ごと消えてなくなってしまった。


 ここまでに、メンバーは敵の抱えていた収集器をいくつか取り返す。
 一気に敵を倒すだけとメンバーは奮戦するが、ここにきて敵も本気を出し始める。
 とりわけ、愉悦の顔面はここにきても笑みを崩さない。
 クク、ククク……。
 笑う顔面は残る獣を一気にけしかけてくる。
 小さくとも、変容する獣の繰り出す剛腕はかなりの威力。
 瑠璃へと攻め入り、激しく殴り掛かる。
 ソウルストライクで反撃する瑠璃だが、顔面は異言を紡いで彼女を追い込み、瞬く間にその体力を削いでしまう。
 続き、顔面はマニエラを捉えようとするが、ソアが追いすがって。
「マンホールなんかにこそこそ逃げようとするやつらに負けないから」
 戦いは少しずつ長引いてはいたが、まだ気力が持つと踏んだソアは激しく爪を薙ぎ払って顔面を傷つけていく。
「人々の大切なものを盗んだ事、そして我が国で好き勝手にやってくれた事。その罪により邪悪な面を粉砕する」
 狙われていたマニエラも奇怪な笑い声に若干怯むが、近くまで迫った敵へと的確に魔力を叩き込んでいた。
 なお、収集器より零れるパンドラを砕いていた瑠璃。
「誰も倒れさせないよ……!」
 仲間の危機を察したヨゾラが無穢のアガペーを与え、体力を幾分か取り戻させる。
 ルチアもまた重ねてフォローしており、機械仕掛けの神による『解決的救済』……デウス・エクス・マキナによって急激な癒しをもたらしていた。
 また、ルチアは幻想楽曲を奏でることで、メンバーの気力、魔力の枯渇を防ぐ。
 おかげで、メンバーは力の限り終焉獣の殲滅に力を尽くす。
 最後は通常攻撃も考えていたシラスも、ここにきてなお力を発揮し、殺意を持って残る獣へと魔力を纏わせた殴打を浴びせかけた。
 続き、飛呂が敵陣を掃射し、獣1体を完全に沈黙させる。
 …………!
 銃弾に撃ち抜かれてなお、もう1体の獣は鋭い牙で喰らいかかろうとしてくる。
 鼓動を高めていたウルズはそれを受けながらも、仲間の攻撃に続いて雷撃を叩き込むと、そいつは刹那体を焼かれた後で跡形もなく消滅した。
 同時に地面へと落ちる誰かの収集器。
 だが、メンバーは残る愉悦の顔面へと視線を走らせた。
 クク、ククククク……。
 取り巻きを失ってなお、笑い続けるその顔面。
 ウルズは最初からそいつが怪しいと踏んでいたこともあり、警戒度を高める。
「その頭、ぶち抜いてやる」
 すかさず、飛呂がその眉間へと銃弾を撃ち込む。
 ぶつぶつと呟くそいつは異言を紡いでおり、メンバーを惑わそうとする。
 すぐにソアやルチアが仲間を癒せば、皆、気力を振り絞ってそいつの撃破に注力する。
 幾度もメンバーの攻撃を受けていたはずの愉悦の顔面だが、一向に倒れる気配のない相手に、ヨゾラも業を煮やして。
「これで潰えろ……星の破撃ーーー!」
 しぶとい敵目掛け、魔術紋を光らせて魔力を高めたヨゾラが渾身の一打を見舞う。
 逃げると察したウルズは再度マンホールの上へと陣取り、逃走を防ぐ。
 実際、顔面は追い込まれていたはず。
 それだけに視線はあちらこちらへと向いていたのをメンバーは見逃さない。
 ――かくなる上は。
 そんな言葉が聞こえたかと思うと、顔面は体を変形させる。
 持ち運べぬ収集器が地面へと落ちる音に気を取られるメンバー達だが、顔面は長く変形して路地の隙間へと入り込んでいく。
「逃げんなよ、臆病者!」
 飛呂が挑発しつつ狙撃するが、敵はお構いなしとばかりに隙間へとその身を全て埋め込んでしまう。
 しばらく、ずぶずぶと音が聞こえていたが、それも程なく止んだ。
「どこに逃げようが、必ず地の果てまで追い詰め裁きを受けさせる」
 マニエラはこの場から消えた敵に、並々ならぬ怒りを燃え上がるのだった。


 愉悦の顔面のみ逃がしはしたが、イレギュラーズ一行は奪われたパンドラ収集器を全て取り返すことができた。
「回収できてよかった」
 ほっとするヨゾラの傍で、周囲で寄生型に巻き込まれた一般人がいないかとマニエラやウルズ、瑠璃がチェックする。
 最悪、寄生された者がいれば、優しく締め落とすことも考えていたソア。
 もっとも、今回はその必要もなさそうだが。
 ともあれ、無辜の命を守ることができたとルチアもまた安堵していたようである。
「そういえばパンドラ収集器を奪われたら、そいつはどうなるんだろうな?」
 ふと、素朴な疑問を口にするシラス。
 特異点でなくなるのかという疑問も考えるが、果たして。
 それはそれとして、シラスのパンドラ収集器は家族の形見とのこと。
「絶対に渡しはしない」
 己の収集器に強い想いを抱くのは、奪われた人々も、シラスも変わらない。
 皆、自身の収集器に視線を向けながらも、その場から撤収するのだった。

成否

成功

MVP

ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは収集器が持ち去られる可能性を考えて真っ先にマンホールを封鎖した貴方へ。
 今回もご参加、ありがとうございました。

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