シナリオ詳細
春を迎える蕎麦を食え
オープニング
●蕎麦が来る
蕎麦をご存じだろうか。比較的世界中で食べられている料理だが、蕎麦の実と呼ばれるものから作られている麺料理の一種だ。
ざっくり言うと蕎麦の実を粉にして生地にして切ったものが蕎麦だ。職人技やその他諸々については省略する。
とにかく、この蕎麦というのはそういう風にしてできており、蕎麦の実が重要であるということだ。
この蕎麦の実、夏や秋に収穫され多少の時期の差はあれど「新そば」としてこの時期に提供されていく。
しかし最近、熟成蕎麦という概念を聞く者も多いのではないだろうか?
蕎麦の実を熟成することで味が良くなるという、まあそういうものだ。なんだって熟成させれば美味くなる……蕎麦だって例外ではないということだろう。
しかし、ならばそれを更に美味くしてやろうじゃないかと考えるのが練達とか鉄帝とか、その辺にいる研究員である。
その辺の連中が余計なことを二連鎖でやらかしたせいで、蕎麦の実が変な風に変異したのが……もうずいぶん前のことだ。
独自の生態系を構築した蕎麦の実は、この時期になると超熟成蕎麦の実となって他の生物に食われるために戻ってくるという。
美味しくなるために生み出された魔法蕎麦としての矜持なのだろうか……?
ともかくこの時期、鉄帝では超熟成蕎麦が旬となるというわけなのだ……!
●熟成蕎麦狩り
「というわけで、蕎麦狩りです」
『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)が物凄く聞きなれない単語を口にする。
いや、鉄帝に長く住んでいる者であれば1度は聞いたことがあるかもしれない。
超熟成蕎麦……鉄帝の名物蕎麦だ。その成り立ちからして鉄帝らしい、そんな蕎麦だ。
しかし、もうそんな時期になったのか……と暖かい気持ちになる者だっているだろう。
何しろ超熟成蕎麦はとても美味しい。然程腕の良くない者でもそれなりの蕎麦に仕上がり、豊かな蕎麦の香りは食欲を増すという。この大変な時期にはぴったりな素晴らしい蕎麦だ。
しかしながら、材料となる熟成蕎麦の実を見た者はそんなには多くないだろう。
1粒あたりの大きさがチーサの頭くらいはある熟成蕎麦の実。それが浮遊して移動するのはこの時期の鉄帝の「いつもの光景」ではあるのだが……蕎麦の実だと思ってみなければそうだとは中々思わないだろう。
「その熟成蕎麦の実が、丁度この辺りに来ているですよ」
他の生物に食われるためにやってくる熟成蕎麦の実だが、誰でもいいというわけではない。
自分を食えるだけの強さを見せてみろとばかりに襲い掛かってくるので、それを倒さなければならないのだ。
倒せばそれを粉にするだけで素晴らしい蕎麦粉が出来上がる。
あとはこれを打って蕎麦にするだけでいい。そばつゆはチーサが皆が頑張っている間に仕上げてくれる。
勿論、こだわりがあるならば自分でそばつゆを作ってもいい。
「町を出た先の平原にそろそろ来るはずです。頑張ってくるですよ」
- 春を迎える蕎麦を食え完了
- 熟成蕎麦ってのがあるらしいんですよ
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年02月07日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●蕎麦の実を手に入れろ
「さて、今回の仕事は蕎麦を倒し、ソバを食べる事だ。蕎麦の実が自分で熟成して、食べられる為に飛んでくる、というのは随分と奇妙なこったが…まあ美味いならいいか」
『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)の言う通り、今日は飛んでくる蕎麦の実をどうにかして蕎麦を食べる仕事である。
飛んでくるというのは風にのってどうこうではなく飛来してくるという意味だが、本気でまあ鉄帝だなあという感じだ。
「おいしいお蕎麦が食べられるのは嬉しいね! 嬉しいけど……話を聞くとなんか生態系の中に新しい層を生んでない……?」
「ま、いつものこったろ」
「いつものことだねえ……」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)も義弘とそんなことを言い合うが、本当にいつものことである。
「蕎麦の実が巨大化して空を飛んで襲ってくる状況だ、こちらも攻撃をしかけて刈り取るとしよう。植物が意思を持って行動してて、しかも力を見せる事を強要してくるとはな……。研究者が何を想定して進化させようとしていたのか、分からねえな」
「そこなんだよね」
「ああ……」
しかし分からないものは分からない。それもいつものことだ。
「料理というと、とりわけ得意な訳ではない俺からすれば少し尻込みしそうだが蕎麦打ちはリズムが大事だと聞く。音の精霊種のプライドにかけて、美味しい蕎麦が用意できるよう頑張ろう」
「ああ。まあ、この手の仕事でやることは変わらん。いつも通りにやっていくとしようか」
『終音』冬越 弾正(p3p007105)と『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)もそう頷きあうが、実際やるべきことはハッキリしている。というかハッキリしすぎている。
「春はまだ遠いのになんか、生き様が鮭とかウナギみたいだね、超熟成蕎麦。しっかり仕留めておいしい蕎麦をいただきますか」
『冬結』寒櫻院・史之(p3p002233)などはすでに割り切っていて、弾正も「そうだな」と頷いている。こういうのは割り切りが大事だ。
だからこそ史之も高いところから蕎麦の実を観察してさ襲ってくる蕎麦の数がどれほどいるか事前にチェックしていた。
いちにいたくさん、くらいでいいだろう。相手は蕎麦の実だ。軌道を読んで先回りする形で布陣するよう仲間へ伝えていたが……なんかもう、そんな戦略は必要そうではない。
「蕎麦がゲシュタルト崩壊してきたよ、やだなあ」
そんな悲しいことを史之が言っていたが、さておいて。
「浮遊する蕎麦の実か……いやまあ、ツッコミは良しておこう。あれが、美味い蕎麦粉になる。それだけで、十分だろう」
「え、ええと……超熟成蕎麦の実……? <至高の美味を求めて>には……うわっ、載ってる……。とりあえずコレ読みながら必要数とか決めましょうか……」
『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)の横で『君よ強くあれ』安藤 優(p3p011313)も本を捲っているが、たぶんやる気満々だろう。そうに違いない。
「……ラド・バウでの修行が終わって最初の依頼がコレとは……ぼくはそういう星の下に生まれてきたとでも言うのでしょうか……」
きっとそうなのだろう。知らんけど。さておき蕎麦の実はすぐそこにいる。だからこそ優は壁役として赤鷹之心を発動させていく。
「そう簡単にやられたりはしませんよ……! ぼくだってやる時はやるんですから……!」
「その通りだ! 調理される覚悟が出来た奴からかかって来い!!」
「ぐあー!」
「優殿⁉」
優の顔面に巨大な蕎麦の実がぶつかっているが、痛いけど平気そうだ。さておき弾正と優が引き付けている間に義弘がワイルドキングストリームを繰り出していく。
「必要分でいいとは言うが、どの程度刈り取ればいいのかね」
「必要数、何個だろう……1人1~2個位かな? 多く倒した場合は……後で分ける等で何とかしようかな」
「そうだな。必要以上に狩るつもりは無いが、余った分は、後で近くの村か集落にでも届けよう」
義弘にヨゾラや一嘉もそんな現実的な意見を出していく。
「……蕎麦の実と戦うってすごい言葉だよね……」
蕎麦の実は全然強くない。だからどのくらいまで狩りたいかという話でしかない。しかしアクセルはそんな事実にふと正気に返ってしまうが……それはそれとして、しっかりケイオスタイドを発動させていく。
「楽園追放……するわけじゃないけどお蕎麦の為に頑張る! 僕のとっておき、食らった上で食らわれろー!」
むしろ、お蕎麦が楽園なのでパラダイスロストしつつもしっかり蕎麦の実をゲットするためヨゾラも攻撃を加えていく。
「あんまりぶん殴りすぎて割れてもあれだから……っと」
不殺できるようにしながら史之も斥力発生Ver.4を発動させる。もう凄く弱いから、一嘉のジャミル・タクティールでも一撃だ。
そうしてたっぷりと蕎麦の実を狩れば……いよいよ町に帰って蕎麦作りだ……!
●蕎麦を食べよう
「刈り取りが終わったら回収して、実を挽いてソバを打つ段階か。こんなデカイ蕎麦の実を挽く臼や機械なんてあるのかね」
「エッ、まさか製粉からやらないといけないやつでは……? このでかい実を……? ま、まあ、超熟成蕎麦の実はわりと有名っぽいので、専用の製粉機があるはず……ですよね? というかこの実。また練達が絡んでるんですか……もしかしてあの国、ファンキーな御人しかいらっしゃらない???」
「練達はともかく……あるぞ。此処は鉄帝だしな」
義弘と優にエーレンが頷き、機械を指し示す。その辺りは流石に鉄帝である。
「蕎麦打ちになったら俺の出番だ!」
そうして、そこに弾正が気合を入れて調理台の前に立つ。どうやら蕎麦打ちに対する情熱があるようだが、本人が言った通りに蕎麦打ちのリズムはやはり弾正が一番ということなのかもしれない。
「蕎麦を均等に伸ばす為には腰を入れてしっかり伸ばす事。音楽で、皆が力をしっかり入れて蕎麦をうてるよう支援する。ストリートビートのリズムに合わせて、のし棒を使って綺麗にのして厚みを均等にしていこう」
なるほど、確かにリズムでよい感じになってきている。勿論こしが出るようにするには体力も大事だが……弾正のリズムは、まるで蕎麦打ちのプロのようですらある。
「そばを切るのも気の遠くなるような作業。リズム感は大事だな。均等な細さになるよう注意しよう。俺は食いでが多い方がいいから、太めがいいな」
そんな弾正を見ていると、なるほどあれはプロの仕事だと義弘は思う。
「中々やるもんだ」
大胆ではあるが繊細。そんな作業だと義弘は専門外ながら感じていた。
「力仕事が必要なら手伝うが、流石にソバを打つなんてのは流石に経験ねえし、調理は下手に手伝わない方がいいかもな。その代わり薬味の準備やこまごました手伝いをしておこう」
「じゃあオイラを手伝う?」
アクセルは、早速調理を開始している。
「お蕎麦は戦闘で汚れたかもだから外側を綺麗にして、挽いて粉にしてつなぎを入れて練って……頭くらい大きいなら殻部分の比率が少ないとみて、実の中の白い部分が出てきた一番粉を使った更科そばにするね! 名前は練達の再現性東京で確認済み!」
更科蕎麦。勿論それが至高にして最高かどうかは議論はあるが、その中に必ず名前の挙がってくる蕎麦だ。
「つるっとした食感やのど越しを楽しめるお蕎麦だよ! お蕎麦の種類にお出汁に薬味に具に、あったかかったり冷たかったりで色々なバリエーションをつけて食べてみたいよね! 材料や施設もこうして借りられてるし、料理スキルで海老天を作ったり鴨肉の薄切りとネギを焼いた鴨南蛮の具を作るよ! 豪華でおすすめの具!」
鴨南蛮もまた、かなり人気の蕎麦だ……豪華になるだろう。そしてヨゾラも負けてはいない。
「蕎麦作りとおそばタイムだー! 僕は作るのも食べるのも両方楽しむよ!」
そう、作るのも食べるのも、どちらも素敵なことだ。
「熟成蕎麦の実からそば粉を作って、蕎麦を打って……打って……あれ、もしかして…蕎麦を打つのって結構体力と力が要る?」
必要だ。蕎麦打ちは技も必要だが体力勝負でもある。
「まぁ多分何とかなるなる! 頑張っておいしい蕎麦を打つよー!」
そのヨゾラの頑張りがダイレクトに蕎麦のコシに繋がるし、そういう意味では毎日蕎麦を打っている職人は凄いとしか言いようがない。
「で、さて、蕎麦ね。蕎麦はさ鴨だしが好きなんだよね」
やはり史之も鴨が好きであるようで、手慣れた様子で調理を始めていた。
「というわけで鴨で出汁をとります。それからめんつゆとみりんで味を調えちゃおう」
鴨の美味い出汁がつゆの味を引き立てるだろう……すでに良い香りが漂ってきている。
「この間に具の鴨肉と長ネギは軽くソテーしておく。鴨南蛮だねようするに」
アクセル同様に鴨南蛮だが、史之のこだわりが出ている良い鴨南蛮だ。
「とにかく製粉が終わったら蕎麦を打ちましょう。どうやら家庭用のボウルや丸棒(お菓子とか作る時の棒)でも代用可能なようですので、やってみるとしましょうか」
ちなみに優は、打つところから始めるようだ。中々に男気がある。
「まず蕎麦粉、つなぎ粉、水をボウルにブチ込んで、水分が均等に行き渡るように混ぜ、コネコネして生地を作りましょう。次に丸棒で生地を伸ばします。最初は円形に伸ばし、そこから丸棒に生地を巻き付けながら伸ばすことで、徐々に生地を四角くしていきましょう。あとは生地を洗濯物みたいに畳んで、包丁で切ることで麺の形にしていきます。均等な太さに切らないと麺を茹でる時にムラが出るそうなので、丁寧にやりましょうか」
この辺りは実に丁寧な作業である。優の真面目な性格が出ているかのようだ。恐らく蕎麦教室の講師も出来るかもしれない。
「さて、麺を切る……切る……切……斬る! チェストオオオオオオ!!!」
ダアン、とまな板を切りそうな一撃が蕎麦を切って。
「……あとはまあ普通に茹でて冷やして盛り付けですね」
スン、と真顔に戻る優だが、どうにも薩摩が出てきている。鉄帝だとそんなに違和感ないけど再現性薩摩で暮らす男は伊達ではない。さておいて。
「具材は、他の皆の持ち込みに任せて、かけ蕎麦を作るか」
一嘉も見なかったことにして蕎麦を作り始める。
「まずは自然薯をつなぎに、蕎麦粉9、自然薯1の割合で、蕎麦を打つ。スキルが有るとは言え、蕎麦職人という訳でもないので、流石に水回しは、一番神経を使うな」
とはいえ一嘉の手際も中々に丁寧だ。ちゃんと計算してやっているのが分かる動きだ。
「そして無事、蕎麦玉が作れたら、練りと延ばしの間に、蕎麦出汁を取っておく」
この辺りは実に無駄がない。事前にしっかりと準備をしてきたことがよく分かる。
「出汁は、味取りに血合いの入った厚削り、香り取りに血合いのない薄削りの鰹節を使う。昆布と圧削り鰹節を水から煮出し、沸騰前に昆布を取り、弱火で五分。薄削りを加えて、70〜50℃で更に五分煮立てたら、火を止めて蓋をし、一分蒸らす。みりんと醤油を合わせた煮立てたら、たまり醤油を加え、濾した出汁と合わせる。切り出した蕎麦を蒸篭で蒸し、出汁と共に器に盛ったら、刻み葱を加えて完成だ。では、食べてみてくれ」
「さあ、出来上がったら皆さんと一緒に食べましょう! うーん、手間暇かけただけあって、美味しさも格別のような気がしますねえ!」
優も早速蕎麦を食べ始めるが、やはり苦労すると更に味が上がるような気がするのは不思議なものだ。
「美味しく沢山、残さず食べよう。うむ、歯切れがよくコシもある。頑張って作った甲斐があったな!」
「ああ、美味いな」
弾正にエーレンも頷く。弾正は今回蕎麦打ちも全力で頑張っただけに、その苦労も人一倍分かるようだ。
「それじゃいただきます」
史之も手を合わせて蕎麦を食べる。自分のだけではなく、他の人の蕎麦も中々に美味しい。
妻へのお土産に持って帰るものも準備が出来ているし、とても良いことだ。
「やっぱり運動の後は食事だよね……それに食材が襲ってくるのは混沌ならではだね」
悟りを開いているのか諦めなのか。しかしその余裕もまた史之の強さなのだろう。
「そばがきもあるのかな。そうそう、別名かいもちとかいうやつ。あれ作るの結構大変なんだよね。もしなかったら俺が作ろうか。わさびもいいけれど、三つ葉と柚子を添えるのが俺風だよ」
そしてヨゾラと義弘はざるそばにしていた。基本に忠実で、確実に美味しいやり方だ。
まずは最初はそのままそばつゆで食べてみる。
「おいしい! そばつゆもお蕎麦にとても合ってる……!」
「ソバの風味と日本酒はいいぞ。……いや、本当に美味いな。こんだけ美味いソバはそうそうないだろう」
「だよね! 刻み海苔も入れてみるね、海苔もお蕎麦に合うんだ……! 他の薬味等と一緒に食べてもいいよね。お蕎麦、そのままでも色々入れても美味しい……!」
義弘もざるを食べ終わったらかけで温かいつゆと共に食べていく。そうすると、不思議と故郷を思い出すのだ。
「……向こうでもこんな風に飯食ったよなぁ」
そんなことを思い出すのも、蕎麦が美味しかったからだろうか?
「春を迎える蕎麦、とてもおいしかった。おそばの力も借りて、これからも頑張りたいな」
ヨゾラのそんな言葉の通り。これからも頑張っていかなければならない。けれど、きっと出来るだろう。
誰もがそう、信じている。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
というわけで蕎麦の実を倒して蕎麦打ちしましょう。
蕎麦の実は人間の頭くらいの大きさで大きいので、狙うのも簡単でしょう。
鉄帝の街近くに現れたくさん浮遊していますので、思う存分倒しましょう!
●超熟成蕎麦の実×たくさん
人間の頭くらいでっかい蕎麦の実。人間を見つけると体当たりしてきます。
結構痛いです。全部狩る必要はないので、必要な分を倒しましょう。
Q:もしかして討伐パートと料理パートですか?
A:その通りでございます
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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